説明

振動移動の減少

本発明は、内側表面および外側表面を有するキャリアー(2)を含んでなる散逸性制振デバイス(1)であって、該キャリアーがその少なくとも1つの表面に結合層(3)を含み、キャリアー(2)が散逸性であり、少なくとも0.2の減衰率を有し、結合層(3)がキャリアー(2)よりも高い剛性を有する硬質材料からなるデバイスを開示する。また、このような散逸性減衰デバイスを使用する系および方法をも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生器によって発生する振動の移動を減少させることに関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、動的力発生器(例えば、エンジン、モーター、ポンプまたはギアボックス)によって発生する振動の構造要素を介する放射面(例えばパネル)への移動は、構造媒介騒音の放出を導く。
【0003】
このような構造媒介騒音を少なくとも減少させるために、異なる解決法が示唆されている。車両構築において、受動的な方策(例えば、制振材または制振マットに頼る方策)が提案されている。このような制振マットは、例えば、車両の床上またはドア中の振動しているパネルに適用されることが多い。このような方法の騒音減少の程度は満足しうるものであるが、その欠点も多い。
【0004】
通常の方法においては、ビチューメンまたはアルファルトと高い比重量の充填材との混合物をシートに押出し、これから適当な形状をパンチするかまたは切断する。次いで、これらのシートを、適当な金属シート部材に結合させ、ときには加熱によってシートの形状に適合させなければならない。これらのビチューメンシートは、その低材料コストのゆえに今なお多く使用されているが、これらは、特に低温で、非常に脆く、金属シートから剥がれる傾向がある。また、提案されることが多い添加剤の導入は、わずかな改善を与えるにすぎず、これは多くの適用に十分ではない。さらに、この予め成形したビチューメン部材を、機械または車両の複雑な形状の金属シート部材(例えば、自動車ドアの空洞の内側表面)またはほとんど接近できない金属シート部材に適用するのは全く不可能である。さらに、多くの場合に、いくつかのパンチされた部材が、1つの車両または器具だけのために必要とされ、従ってコストのかかる貯蔵を必要とするというさらなる欠点が存在する。
【0005】
従って、他のポリマー系を用いてビチューメンシートの欠点を排除しようとする試みを欠くことはなかった。例えば、充填材を含有するポリ酢酸ビニルまたはエチレン-酢酸ビニルコポリマーの水性ポリマー分散液が開発され、これを、必要な被覆厚みで金属シート部材に吹付けることができる。しかし、この系は、高い生産速度である場合に工業的に使用するのは不利である。その理由は、特に被覆がやや厚い場合に、吹付けた被覆から十分に速く水を除去することができないためである。
【0006】
ポリマー被覆の防音特性は、ポリマー系のガラス転移温度の範囲内で最良である。これは、この温度範囲におけるポリマーの粘弾性のゆえに、振動過程の機械的エネルギーが、分子流れ現象によって熱に変換されるためである。例えば、自動車構築において車体底面被覆として広く使用されているPVCプラスチゾルに基づく通常の吹付け可能な被覆材料は、−20〜+60℃の適用温度範囲において顕著な防音効果を持たない。これは、可塑剤の割合に依存して、ガラス転移の最大値が約−20〜−50℃であるためである。
【0007】
従って、これらの通常のPVCプラスチゾルが−20〜+60℃の適用温度範囲においてより良好な防音特性を有するように、これらプラスチゾルを修飾する試みが為されていた。通常のPVCプラスチゾル中に複数不飽和の化合物、例えばジまたはトリアクリレート、ペルオキシド架橋剤および無機充填材を含有する被覆材が、特許文献1から知られている。しかし、硬化した状態で、これらのプラスチゾルはガラス様に硬くかつ脆く、従って、特に低温において十分な柔軟性を持たないので、自動車構築において使用するのには現実的に適さない。これとは別に、これらの配合物は、極めて低い損失係数tanδを有しており、従って、防音効果は極めて顕著という訳ではない。
【0008】
PVCまたは塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、所望によりメタクリル酸メチルホモポリマーまたはコポリマー、可塑剤混合物および不活性充填材を含有する組成物が、特許文献2に記載されている。この可塑剤混合物は、メタクリル酸メチルポリマーと相溶性である可塑剤ならびに存在していることもあるメタクリル酸ポリマーと相溶性である塩化ビニルポリマーのための可塑剤を含んでなる。このようにして得られるプラスチゾルは、通常のPVCプラスチゾルと比較して、改善された防音特性を有する。しかし、特に約30℃を超える温度において、防音効果は再び低下する。個々の成分の相対量を変化させることによって、最大損失係数tanδの範囲をより高い温度にシフトさせる試みを行うと、被覆の冷間柔軟性が極めて甚だしく低下する。しかし、低下した冷間柔軟性は、まさに車両構築における欠点である。さらに、これらの配合物を用いると、比較的低い温度において損失係数が極めて甚だしく低下する。従って、これらのプラスチゾル組成物は、非常に狭い温度範囲においてのみ、十分に高い損失係数を有する。
【0009】
さらに、構造媒介騒音を減少させるための能動的な制御方法が開発されている。通常、これらの方法は、センサー、信号処理、アクチュエーターおよび動力源を用いて、対応する力または歪を生み出すことによって、振動の散逸を効果的に増加させるかまたは相殺する。
【0010】
能動的な制御方法は、構造媒介騒音を効果的に減少させることが示されているが、これらの方法は、精巧な技術装置、特に信号処理およびセンサーに関する装置を必要とする。これは、コストを増大させるだけでなく、故障リスクの増大にもつながる。
従って、系において、特に車両において、構造媒介騒音を効果的に減少させるための経済的な手段が求められている。
【0011】
未公開の特許文献3において、内側表面および外側表面を有するキャリアー(これは、多角形セクション、特に長方形、所望によりU字形を有する)を含み、その外側表面に被覆を含んでなる散逸性振動波バリヤーが開示されている(該被覆は、熱膨張可能な材料であって、膨張後および−10〜+40℃の温度において、0.1〜1000MPaのヤング率E、0.5〜1の損失率E''および0.1〜500MPaの剪断弾性率Gを有する材料から選択される材料を含んでなる)。これらの係数(特に損失率)は、通常、動的機械分析(DMA)によって測定される。
【0012】
既知の散逸性振動波バリヤーは、ある種の適用において優れた制振効率を示すが、減衰させる構造が非常に硬い場合に問題が存在する。減衰させる構造と少なくとも同等の硬さを有するべきである既知の散逸性振動波バリヤーにおける非常に硬いキャリアーの必要性のゆえに、これは非常に重いキャリアーの結果になり、特に自動車適用においてコストおよび軽量の理由から許容できないことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第3514753号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3444863号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第05292082.4号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、内側表面および外側表面を有するキャリアーを含んでなる散逸性制振デバイスであって、該キャリアーがその少なくとも1つの表面に結合層を含み、キャリアーが散逸性であり、少なくとも0.2の減衰率を有し、結合層がキャリアーよりも高い剛性を有する硬質材料からなる散逸性制振デバイスが提案される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の散逸性制振デバイスのキャリアーは散逸性要素であるので、該キャリアーは、処理される構造の振動によって変形し、振動を吸収および散逸させ、多くの場合に熱を発生する。これによれば、処理される構造が高い剛性を禁止する場合においても、そのように高い剛性を有するキャリアーを供する必要がなく、従って、非常に軽量かつ経済的に興味深い散逸性制振デバイスが導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】自動車の構造部材に結合させた本発明の散逸性制振デバイスの側面図である。
【図2】本発明の散逸性制振デバイスにおいて使用されるキャリアーの透視図である。
【図3】車体における構造媒介騒音の振動を、周波数の関数として表す3つの曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の散逸性制振デバイスの結合材料は、硬質材料からなり、散逸性制振デバイスを処理される構造に確実に結合するように働き、処理される構造から散逸性キャリアーに振動を移動させるように働く。
【0019】
本発明の散逸性制振デバイスのキャリアーは、要求される散逸特性を示す任意の適する材料からなっていてよい。
本発明の第1の好ましい態様によれば、キャリアーは、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)およびポリフェニレイミド(PPI)からなる群から選択される、所望により繊維強化された合成材料、特に熱可塑性合成材料からなり、該熱可塑性合成材料は所望により繊維強化されており、低吸水率および180℃までの寸法安定性を有する。
【0020】
本発明の第2の好ましい態様として、キャリアーは、少なくとも2つの層からなる粘弾性サンドイッチ材料からなる。
粘弾性サンドイッチ材料の例は、金属(特に、スチールまたはアルミニウム)からなる少なくとも1つの層および粘弾性ゴム材料に基づく少なくとも1つの層を含んでなる。
【0021】
粘弾性ゴム材料は、好ましくは、1.4〜1.8mmの厚み、および/または、−15〜+65℃の温度範囲内で少なくとも0.10のDIN53440に従う損失係数、および/または、1.0〜2.0kg/m2、好ましくは1.2kg/m2の面積重量を有する。
【0022】
優れた制振効率のために、本発明の散逸性制振デバイスのキャリアーは、少なくとも0.5の減衰率を有する。
一般に、系の損失係数は、以下の式のように定義することができる:
【数1】

[式中、ESEは歪エネルギーであり、ΔEは減衰によって散逸したエネルギーであり、ηは、考慮される周波数帯ωにおける減衰率である;従って、ηは、1周波あたりに散逸される歪エネルギーの割合に等しい]。
【0023】
例えば、減衰率ηが0.2に等しいときに、それは、材料を励起するために用いた当初エネルギーの20%が第1周波中に散逸することを意味する。1より大きい減衰率は、材料が1周波未満で全エネルギーを散逸することを意味するであろう。
【0024】
測定方法の1つは、DMA(動的機械分析)の使用であってよく、これによれば、一方の端部で試料を励起し、他方の端部でその応答を測定する。この場合、減衰率ηは、以下の式で表される:
【数2】

[式中、δは、励起と応答の間の位相差である]。
【0025】
キャリアーおよび処理される構造の両方への良好な付着ならびに振動の散逸性キャリアーへの良好な移動を伴って、硬い特性を供する任意の適する材料を、本発明に従って結合層として使用することができる。
【0026】
本発明に従う結合層の好ましい態様は、未硬化状態で0.75〜0.95kg/m3の密度および5%未満の吸水率を有する2成分エポキシ樹脂フォームを含んでなる。
十分な剛性のために、結合層は、好ましくは少なくとも10.5MPaの圧縮強度を有する。
【0027】
さらに、結合層は、加熱時に膨張可能であって、55〜65%の膨張率を有する材料からなることができる。このような膨張可能な結合層は、装着された構造の加熱時に結合層の膨張のゆえに閉じられるであろう隙間を伴って、本発明の散逸性制振デバイスを構造中に導入することまたは構造上に固定化することを可能にする。
結合層は、1〜10,000MPa、好ましくは500〜2,000MPaのヤング率を有していてよい。
【0028】
また、本発明は、構造要素(例えば自動車部材)および上記したような散逸性制振デバイスを含んでなる系であって、該散逸性制振デバイスが、散逸性制振デバイスの結合層によって構造要素に結合され、該散逸性制振デバイスのキャリアーが、有効な散逸工程のために構造要素の剛性よりも低い剛性を有する系に関する。
【0029】
また、本発明は、振動発生器から、構造要素を介して該振動発生器が結合されている位置への振動移動を減少させるための方法であって、振動発生器によって発生する振動エネルギーを散逸させるための手段を該構造要素に装着することを含んでなり、該振動エネルギーを散逸させるための手段が、上記したような本発明の散逸性制振デバイスを含んでなることを特徴とする方法に関する。
【0030】
振動発生器の例には、モーター、エンジン、ポンプ、ギアボックス、サスペンジョンダンパーおよびバネが含まれる。
【0031】
本発明の方法を、特に、自動車における構造媒介騒音を減少させるために適合させる。この場合、振動発生器を、構造要素を介して、該自動車の搭乗者区画の少なくとも1つの構成部材に結合させる。構造要素の形状は、多角形(好ましくは長方形)横断面を有する管状レールの形状である。
【0032】
本発明の方法は、連続して以下の工程を含んでなる:
・本発明の散逸性制振デバイスであって、構造要素中に挿入しうるか、またはその上に固定化しうる寸法を有し、キャリアーの剛性が構造要素の剛性よりも低い散逸性制振デバイスを選択する工程;
・振動発生器に近接する位置において、該散逸性制振デバイスを構造要素中に挿入するか、または該散逸性制振デバイスを構造要素上に固定化し、該散逸性制振デバイスを結合層によって構造要素と結合させる工程。
【0033】
有利には、結合層を、連続加熱工程における加熱によって膨張させる。
有利には、散逸性制振デバイスを、構造要素の表面に面して散逸性制振デバイスの表面との間に約1〜20mmの隙間が得られ、この隙間が加熱時に閉じるように選択する。
散逸性制振デバイスを、好ましくは、振動構造(これから音が発生する)の受入れ前に、振動発生器からできるだけ近く構造要素中に挿入する。
【0034】
膨張可能材料の膨張は、加熱工程によって得られる。
組立てラインにおけるライン条件および結合材料の性質に依存して、加熱工程を、130〜240℃、好ましくは150〜200℃の温度において、約10〜30分間のオーブン中の滞留時間で行う。
【0035】
一般的に使用されている電気被覆浴(E-コート浴)中に車両部材を通過させて結合層の膨張を引き起こすことからなる加熱工程の利点を採用するのが有利である。これは、通常、この加熱工程中の温度が、期待される膨張を引き起こすのに十分であるためである。
【0036】
キャリアーに適用される結合層の厚みは、膨張後にその体積が、キャリアーと構造要素の各表面の間の隙間を満たし、こうして確実な結合および散逸性キャリアーへの良好な振動移動が確保されるように選択する。
【0037】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、以下の好ましい態様の説明(添付の図面が参照される)から、より明らかになるであろう。
【0038】
図1に示す散逸性制振デバイス1は、内側表面2aおよび外側表面2bを有するU字形キャリアー2を含んでなる。2成分エポキシ樹脂フォームを含んでなる結合層3を、内側表面2aに適用する。結合層3の当初厚みは、例えば、結合層3の内側表面3aと処理される構造4との間に約2mmの隙間が残るように選択する。
【0039】
U字形キャリアー2(図2においてより詳しく見ることができる)は、積層配置で3つの層20、21、22を含んでなる粘弾性サンドイッチ材料からなる。
キャリアー2の外側層20、22は、それぞれ0.5mm厚みの金属シートからなる。好ましい金属は、亜鉛メッキスチールおよびアルミニウムである。
【0040】
キャリアーの中間層21は、1.5mmの厚みおよび約1.2kg/m2の面積重量を有する粘弾性ゴム材料からなり、外側層20、22にしっかりと結合されており、こうして3層構造を構成している。
【0041】
別法として、キャリアー2は、散逸特性を示す適当な合成材料を用いて単一層からなることもできる。合成材料を使用するときには、これは所望により繊維強化されていてもよい。合成材料は上記した材料から選択する。キャリアー2の厚みは約2.5mmである。
【実施例】
【0042】
以下に挙げる限定のためのものではない実施例は、本発明およびそれを実施する方法を説明するものである。
【0043】
図1に示すように、散逸性制振デバイス1は、車体の構造要素4上に、例えば、サスペンジョンレール41および傾斜防止ビーム40を有する後部サスペンジョン系上に、結合層3が構造要素4に面して固定される。散逸性制振デバイスは、ほぼU字形のキャリアー(2)を有し、このキャリアーは、適用した結合層3と上記した構造要素4との間の隙間(この場合、結合層3と構造要素4との間に約2mm)を維持しながら、構造要素4を部分的に取り囲むような寸法を有する。
【0044】
散逸性制振デバイス1を固定化した後、構造要素4を180℃の温度で20分間加熱して、キャリアー2の内側表面2aと構造要素4の外側表面との間の空間において、結合層3の膨張を引き起こす。加熱後に、結合層3は厚みが大きくなっているので、構造要素4と接触して結合している。この膨張は、電気被覆浴に車両部材を通過させる間に実現することができる。
【0045】
他の例において、散逸性制振デバイス1を、散逸性制振デバイス1の外側表面と構造要素4の表面との間の隙間が約1〜20mmであるように選択することができる。このような場合の全てにおいて、加熱後に、結合層3は全ての隙間を満たす。
【0046】
別法として、加熱過程を含まずに、例えば成分の化学反応によって膨張が可能な結合層3を使用することもできる。結合層3は、1〜10,000MPa、好ましくは500〜2,000MPaのヤング率を有しているべきである。
【0047】
図3は、自動車の実際の構造要素を用いて行った実験の結果を示す。この実験において、散逸性制振デバイスを、後部サスペンジョン系上に配置する。
動的振動機を振動発生器として使用し、構造部材の自由末端に取付け、20〜380Hzの低周波数範囲で励起する。
注入した振動を、入口点に配置した力センサーによって測定する。
応答を、構造減衰率の形式で加速度計によって測定する。
【0048】
3つの実験を以下のように行う:
・振動移動経路に減衰材料を全く追加せず(図3の曲線A);
・未公開の欧州特許出願第05292082.4号明細書(特許文献3)に従う散逸性振動波バリヤーを使用する(図3の曲線B);
・以下に記載する本発明の散逸性制振デバイスを使用する(図3の曲線C)。
【0049】
本発明の散逸性制振デバイスは、スチールからなる2つの外側層20、22(それぞれ0.5mm厚み)を含むキャリアー2を有していた。その間に、1.5mm厚みで粘弾性ゴム材料からなる層21が配置されていた。この散逸性キャリアーは、当分野で既知の通常の防音材料を含むことができる。その例は、本出願人の「TerophonR」製品範囲内で見つけることができる。
【0050】
例えば、適する防音材料は、以下の成分を含んでなる(重量%):
・8〜15%のブチルゴム;
・20〜40%のポリオレフィン、好ましくはポリイソブチレン、ポリブテンまたはこれらの混合物から選択されるポリオレフィン;
・10〜15%の脂肪族炭化水素樹脂;
・2〜10%のホルムアルデヒド樹脂;
・100%までの残りは、充填材、例えば硫酸ビスマス、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、白雲母、石英およびカーボンブラックから選択される充填材である。
【0051】
別法として、防音材料は、以下の成分を含んでなることができる(重量%):
・40〜70%のポリオレフィン、好ましくはポリイソブチレン、ポリブテンまたはこれらの混合物から選択されるポリオレフィン;
・100%までの残りは、充填材、例えば硫酸ビスマス、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、白雲母、石英およびカーボンブラックから選択される充填材である。
【0052】
さらに、欧州特許第697277号または欧州特許第617098号の実施例に記載されている防音材料を、本発明のために使用することができる。
【0053】
このように、図2に示される構造の3層粘弾性サンドイッチ材料を、キャリアー2として使用した。
層21は、1.2kg/m2の面積重量および−15〜+65℃で少なくとも0.10のDIN53440に従う損失係数を有していた。
キャリアー2は、構造要素4よりも低い剛性を示した。
【0054】
結合層3のための材料は、自動車製造において知られる通常の発泡可能な強化材料から選択することができる。例えば、このような材料は、商標名「TerocoreR」のもとで本出願人から入手することができる。通常、これは、エポキシ樹脂、改変剤、硬化剤、発泡剤および軽重量充填材の混合物である。適する材料の例は、国際公開WO03/054069、WO00/52086およびWO2004/065485の明細書および実施例中に見つけることができる。
【0055】
利用可能な態様において、本出願人の製品範囲内の商標名「TEROCORER」のもとで市販されている材料を使用した。この結合層3は、未硬化状態で約0.75〜0.95kg/m3の密度および硬化状態で約0.55〜0.65kg/m3の密度を示した。その吸水率は5%未満であり、圧縮強度は少なくとも10.5MPaであった。膨張時に、それは約55〜65%の膨張率を示した。
【0056】
曲線A、BおよびCから、本発明は、所与の周波数範囲において、大きく改善された振動減衰および有意の騒音減少を与えることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の主な利点は、次の通りである:
・比較的少ない材料が、処理される構造の振動を減衰させるために必要である;
・本発明の散逸性制振デバイスの使用が、先行技術の減衰材料の使用と比較して、自動車または機械製造のための方法コストの点で安価である;
・キャリアーが散逸性であり、従って、処理される構造よりも低い剛性を示すので、本発明の散逸性制振デバイスは非常に軽重量である。
【0058】
また、本発明の散逸性振動波バリヤーの使用は、処理される構造の硬さに寄与し、こうして車両の安全性および安心感を改善することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側表面および外側表面を有するキャリアー(2)を含んでなる散逸性制振デバイス(1)であって、該キャリアーがその少なくとも1つの表面に結合層(3)を含み、キャリアー(2)が散逸性であり、少なくとも0.2の減衰率を有し、結合層(3)がキャリアー(2)よりも高い剛性を有する硬質材料からなる散逸性制振デバイス(1)。
【請求項2】
キャリアー(2)が、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)およびポリフェニレイミド(PPI)からなる群から選択される、所望により繊維強化された合成材料、特に熱可塑性合成材料からなり、該熱可塑性合成材料が所望により繊維強化されており、低吸水率および180℃までの寸法安定性を有する、請求項1に記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項3】
キャリアー(2)が、少なくとも2つの層からなる粘弾性サンドイッチ材料からなる、請求項1に記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項4】
サンドイッチ材料が、金属、特にスチールまたはアルミニウムからなる少なくとも1つの層および粘弾性ゴム材料に基づく少なくとも1つの層を含んでなる、請求項3に記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項5】
粘弾性ゴム材料が、1.4〜1.8mmの厚みを有する、請求項4に記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項6】
粘弾性ゴム材料が、−15〜+65℃の温度範囲内で少なくとも0.10のDIN53440に従う損失係数を有する、請求項4または5に記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項7】
粘弾性ゴム材料が、1.0〜2.0kg/m2、好ましくは1.2kg/m2の面積重量を有する、請求項4〜6のいずれかに記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項8】
キャリアー(2)が、少なくとも0.5の減衰率を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項9】
キャリアー(2)が、多角形横断面、特に長方形、所望によりU字形を有し、その少なくとも1つの表面に結合層(3)を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項10】
結合層(3)が、未硬化状態で0.75〜0.95kg/m3の密度および5%未満の吸水率を有する2成分エポキシ樹脂フォームを含んでなる、請求項1〜9のいずれかに記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項11】
結合層(3)が、少なくとも10.5MPaの圧縮強度を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項12】
結合層(3)が、1〜10,000MPa、好ましくは500〜2,000MPaのヤング率を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項13】
結合層(3)が、加熱時に膨張可能であって、55〜65%の膨張率を有する、請求項1〜12のいずれかに記載の散逸性制振デバイス(1)。
【請求項14】
構造要素(4)および請求項1〜13のいずれかに記載の散逸性制振デバイス(1)を含んでなる系であって、該散逸性制振デバイス(1)が、散逸性制振デバイス(1)の結合層(3)によって構造要素に結合され、散逸性制振デバイスのキャリアーが、構造要素(4)よりも低い剛性を有する系。
【請求項15】
振動発生器から、構造要素を介して該振動発生器が結合されている位置への振動移動を減少させるための方法であって、振動発生器によって発生する振動エネルギーを散逸させるための手段を該構造要素に装着することを含んでなり、該手段が請求項1〜13のいずれかに記載の散逸性制振デバイスを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項16】
自動車中に含まれる振動発生器の1つから、多角形、特に長方形横断面の管状レールの形態を有する構造要素(4)を介して該振動発生器が結合されている搭乗者区画の少なくとも1つの構成部材への振動移動を減少させるための請求項15に記載の方法であって、連続して以下の工程を含んでなる方法:
・請求項1〜9のいずれかに記載の散逸性制振デバイス(1)であって、構造要素(4)中に挿入しうるか、またはその上に固定化しうる寸法を有し、キャリアー(2)の剛性が構造要素(4)の剛性よりも低い散逸性制振デバイス(1)を選択する工程;
・振動発生器に近接する位置において、該散逸性制振デバイス(1)を構造要素(4)中に挿入するか、または該散逸性制振デバイス(1)を構造要素(4)上に固定化し、該散逸性制振デバイス(1)を結合層(3)によって構造要素(4)と結合させる工程。
【請求項17】
結合層(3)が加熱時に膨張する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
散逸性制振デバイス(1)の寸法を、構造要素(4)の表面に面して散逸性制振デバイス(1)の表面との間に約1〜10mmの隙間が得られ、この隙間が加熱時に閉じるように選択する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
結合層(3)が、130〜240℃の温度、好ましくは150〜200℃の温度で膨張する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
散逸性制振デバイス(1)を装着した後、構造要素を電気プレーティング工程にかけ、こうして結合層(3)の膨張を引き起こす、請求項17〜19のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−545707(P2009−545707A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522098(P2009−522098)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007706
【国際公開番号】WO2008/014808
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】