説明

振動篩装置

【課題】超音波により篩網を微振動させるものにおいて、直径寸法が大きい篩網を用いた場合でも非常に微細な対象物を分離することができるようにする。
【解決手段】振動篩装置Mは、篩網22を有する分離枠20とこの分離枠20を振動させる振動付与手段と、前記篩網22に超音波による微振動を発生させる超音波発生装置31とを備えている。分離枠20は、環状フレーム21と、前記環状フレーム21に設けられ多数の金属製の線材を編み込んで形成された素材網に無電解ニッケルめっき処理を施すことにより構成された篩網22とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な粉体を分離することができる振動篩装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の振動篩装置には、微細な粉体を篩い分ける際の目詰まりを解消するために、篩網の上部或いは下部に配置させたタッピングボールで篩網を叩くようにしたものがある。ところが、このようにタッピングボールで篩網を叩くようにすると、篩網に大きな負荷が加わり篩網の寿命が低下するという問題や、タッピングボールの破損等により異物が混入するという問題がある。
【0003】
そこで、超音波を利用して篩網を微振動させることにより篩網の目詰まりを防止した振動篩装置が提供されている。
【非特許文献1】「振動ふるい機」、[online]、株式会社興和工業所、開発機械部、[平成17年10月4日検索]、インターネット<URL:http://www.at-kowa.co.jp/furui/catalog/sereis/sereis.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、粉体の微細化が進み、超音波を利用した振動篩装置においても、篩網の網目(目開き)の微細化が望まれている。また、篩い分け作業に要する時間の短縮化、作業効率の向上の観点から、篩網の直径寸法の大形化に対する要望が高まっている。
【0005】
ところが、直径寸法が200mm以上の大形の篩網を、超音波により良好な振動を得やすい金網から構成した場合は、網目の大きさを20〜30μmよりも小さくすることができない。一方、樹脂網から構成した場合は、網目の大きさを20μmよりも小さくすることができるが、この場合は超音波により良好な振動を得ることができないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、超音波により篩網を微振動させるものにおいて、直径寸法が大きい篩網を用いた場合でも非常に微細な対象物を分離することができるようにした振動篩装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振動篩装置は、枠本体と、前記枠本体に設けられ多数の金属製の線材を編み込んで形成された素材網に無電解ニッケルめっき処理を施すことにより構成された篩網とを有する分離枠と、前記分離枠を振動させる振動付与手段と、前記篩網に超音波による微振動を発生させる超音波発生手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記素材網を、ステンレス製の線材を編み込むことにより形成し、前記篩網を、前記素材網にニッケルストライクめっき処理を施した後、無電解ニッケルめっき処理を施すことにより構成すると良い。
【発明の効果】
【0009】
無電解ニッケルめっき処理は、めっき液と接触する素材部分であれば、どこでも一様に皮膜を形成することができる。しかも、処理浴中に線材を浸漬させる時間に応じた厚さの皮膜を形成することができる。従って、本発明によれば、金属製の素材網の表面に任意の厚さの皮膜を形成させて非常に微細な網目の篩網を形成することができる。従って、超音波による良好な微振動を篩網に発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化したいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1ないし図3は本発明の第1の実施形態を示している。振動篩装置Mの全体構成を示す図1において、架台1上には枠受スプリング2を介して本体枠3が振動自在に支持されている。前記本体枠3の下面部には振動体ベース4が取り付けられ、この振動体ベース4の中心部に固定された振動体ハウジング5に上部アンバランスウェイト6と下部アンバランスウェイト7とが回転可能に支持されている。前記下部アンバランスウェイト7は駆動スプリング8を介してVプーリ9に連結されている。
【0011】
また、架台1の右部にはモータ10が取付けられている。前記モータ10の回転軸(図示せず)にはVプーリ11が連結されており、前記Vプーリ9と前記Vプーリ11との間にVベルト12が掛け渡されている。上記構成により、上下部アンバランスウェイト6,7がモータ10によって回転駆動されて振動を発生する。上下部アンバランスウェイト6,7及びモータ10から振動付与手段が構成される。
【0012】
上記本体枠3は、下円筒枠14及び上円筒枠15を積み上げて構成されている。前記上円筒枠15の上面には、原料投入口16が形成されたテーパ状の蓋17が被せられている。上円筒枠15と蓋17との連結は断面略V字状のバンド19を締め付けることで行われている。
【0013】
上円筒枠15と下円筒枠14との間には分離枠20が挟み込まれている。図1及び図2に示すように、前記分離枠20は、断面L字状の環状フレーム21(枠本体に相当)と、前記フレーム21の上辺部に接着等により取付けられた篩網22とを備えて構成されている。また、前記フレーム21の内周部には前記フレーム21と略同心円状の共振リング23(環状部材に相当)が4本のリブ24を介して取付けられている。共振リング23及びリブ24は篩網22の下部に位置しており、特に前記共振リング23は篩網22の下面に接触するように構成されている。前記共振リング23の下部には円柱状の連結部25が一体的に設けられている。前記連結部25には変換器26が着脱可能に取付けられている。
【0014】
前記環状フレーム21にはケーブル27を介して変換器26に接続されたプラグ28がねじ込まれている。前記プラグ28は、振動篩装置Mの外部に設置された高周波発生装置29と高周波ケーブル30を介して接続されている。高周波発生装置29は例えば36kHzの高周波を発生するものであり、前記高周波発生装置29で発生した高周波は、高周波ケーブル30、プラグ28、ケーブル27を経て変換器26に供給されるようになっている。また、前記変換器26に供給された高周波は、変換器26内部のピエゾ素子(PZT、図示せず)により超音波に変換された後、連結部25を介して共振リング23に伝達されるようになっている。前記変換器26、ケーブル27、プラグ28、高周波ケーブル30、高周波発生装置29等から超音波発生装置31(超音波発生手段)が構成される。
【0015】
また、下円筒枠14の上端部及び上円筒枠15の下端部には、それぞれフランジ14a及び15aが溶接されている。前記分離枠20は、フレーム21の上辺部をフランジ15aとフランジ14a間にパッキン32を介して挟みこんだ状態で、前記フランジ部14a,15aにバンド33を締め付けることにより固定されている。
【0016】
上円筒枠14の外周部には篩網22上の残留物を排出するための排出口34が設けられている。また、下円筒枠14の外周部には篩網22を通過した対象物を排出するための排出口35が設けられている。前記下円筒枠14の内部には、前記排出口35に向かって下方に傾斜する受け部36が設けられている。
【0017】
ところで、本実施例では、前記分離枠20は以下の方法により製造されるようになっている。即ち、分離枠20は、線径が約25μmのステンレス(SUS)製の線材を目開きが約25μmとなるように綾織りすることにより素材網(図示せず)を成形する工程と、前記素材網にニッケルめっき処理を施すことにより篩網22を形成する工程と、前記篩網22をフレーム21に取付ける工程により製造される。前記素材網は、篩網22よりも大きな寸法を有しており、前記フレーム21よりも大きな直径寸法を有する円環状の冶具にテンションをかけて取付けられた状態でニッケルめっき処理工程が行われる。
【0018】
ニッケルめっき処理工程は、例えばアルカリ脱脂処理工程(第1工程)、ニッケル(Ni)ストライクめっき処理工程(第2工程)、無電解ニッケルめっき処理工程(第3工程)、湯上げ工程(第4工程)、乾燥工程(第5工程)から構成される。尚、第1ないし第4工程の各工程の間には水洗処理が行われる。
【0019】
第1工程は、素材網の表面に付着した油や汚れを取り除くために行われるものである。
第2工程は、素材網に対するニッケルめっきの密着性を上げるために行われる下地めっき処理であり、電気めっきの一手法である。ニッケルストライクめっき処理は、「ウッド浴」と呼ばれる塩化ニッケル及び塩酸からなる処理浴中で行われる。本実施例では、塩化ニッケルの濃度を1mol/lに、塩酸の濃度を1mol/lに、電流密度を4A/dm2に設定してニッケルストライクめっき処理を行っている。ニッケルストライクめっき処理により素材網の表面には非常に薄いニッケルめっきの皮膜が形成される。
【0020】
第3工程は、カニゼンめっき(登録商標)法と呼ばれる無電解ニッケルめっき処理が採用されている。本実施例では、金属塩としての硫酸ニッケル、還元剤としての次亜塩酸ナトリウムを含むめっき液(商品名「トップニコロンPAL」、奥野製薬工業(株)製)が用いられている。前記めっき液のPH調整剤には苛性ソーダが用いられている。無電解ニッケルめっき処理により、素材網の表面にはニッケル―リン合金めっきが形成される。
【0021】
第1ないし第3工程が行われた結果、素材網の表面にニッケルめっきの皮膜が形成されて篩網22となる。この場合、無電解ニッケルめっきの処理時間(素材網の処理浴槽浸漬時間)を調整することにより適宜の厚さのニッケルめっきの皮膜が素材網の表面に略均等に形成される。そして、皮膜の厚さ寸法が素材網の目開きの半分の長さ寸法よりも小さいときには、篩網22に微細な目開きを形成することができる。例えば、ニッケルめっきの皮膜の厚さが5μmとなるように処理時間を調整すると、篩網22の目開きが約15μmとなり、ニッケルめっきの皮膜の厚さが7〜8μmとなるように処理時間を調整すると、篩網22の目開きが約10μmとなる。
【0022】
第1〜第3工程を経てニッケルめっき皮膜が形成された篩網22は第4工程で約70℃の湯に浸漬された後、乾燥されることにより(第5工程)、全ての工程が完了する。
上記工程によって形成された篩網22は、冶具から取外された後、テンションを掛けた状態でフレーム21の上辺部に接着され、以って分離枠20が形成される。
【0023】
次に、上記振動篩装置Mの作用について説明する。ここでは、例えば直径が5〜10μm程度の微細な粒子から異物を取り除く場合を例に挙げて説明する。このため、篩網22として、目開きが約10μmのものが採用されている。また、篩網22は直径が約200mmのものが採用されている。
【0024】
まず、モータ10及び高周波発生装置29を駆動して振動篩装置Mを動作状態にする。すると、モータ10によって上下部アンバランスウェイト6,7が回転駆動され、この結果、篩網22が三次元運動をする。また、高周波発生装置31にて発生した36kHzの高周波が高周波ケーブル30、プラグ28、ケーブル27を経て変換器26に供給され、変換器26内部のPZTにより超音波に変換される。PZTにより変換された超音波は共振リング23に伝達され、この結果、篩網22が上下方向に微振動する。尚、共振リング23には変換器26で変換された超音波が右回り及び左回りに伝達するが、右回り及び左回りに伝達される超音波が互いに打ち消すことなく、ちょうど半周した地点で振動の波が重なるように共振リング23の長さ寸法が設定されている。
【0025】
続いて、振動篩装置Mの本体枠3内に投入口16から対象物を投入する。すると、篩網22上の対象物は中央から外周に向かって回転しながら移動しつつ超音波による微振動により直径が10μm以下の微細粒子は篩網22を通過する。この結果、篩網22上には異物のみが残留し、排出口34から外部に排出される。又、篩網22を通過した微細粒子は、受け部36に受けられた後、排出口35から外部に排出されて回収される。
【0026】
このように本実施例によれば、分離枠20の篩網22を無電解ニッケルめっき処理することにより構成した。従って、直径寸法が大きい篩網22であっても、前記素材網の処理浴浸漬時間を適宜調節することにより非常に微細な目開きの篩網22を形成することができる。しかも、ステンレス製の線材から素材網を構成したため、超音波による微振動を篩網22に効率良く発生させることができる。このため、大量の対象物をまとめて篩い分けることができ、篩い分け作業の効率化を図ることができる。
【0027】
図4及び図5は本発明の第2の実施形態を示すものであり、第1の実施形態と異なるところを説明する。尚、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付している。
この第2の実施形態では、下円筒枠14の上に円筒部41aを有するカバー41がバンド42を介して取り付けられている。円筒部41aは前記下円筒枠14の直径寸法よりも小さい直径寸法を有している。そして、前記円筒部41aの上に分離枠20及び上円筒枠15が載置されている。円筒部41a及び上円筒枠15は同じ直径寸法を有しており、分離枠20は円筒部41a及び上円筒枠15よりもやや大きい直径寸法を有している。
【0028】
カバー41上には一対の取付冶具43が固着されており、前記取付冶具43により円筒部41aと上円筒枠15との間に分離枠20が強固に挟持されている。
前記分離枠20は、枠本体としての共振リング44と、前記共振リング44の上部に固着された篩網(図示せず)とから構成されている。前記共振リング44には連結部45が一体的に設けられており、前記連結部45には変換器26が着脱可能に取付けられている。前記変換器26は、高周波ケーブル30を介して高周波発生装置31に接続されている。
【0029】
この第2の実施形態によれば、変換器26が分離枠20の外部に位置するため、変換器26を分離枠20に簡単に組み込むことができる。また、投入口16から投入される対象物、特に篩網を通過した対象物が変換器26に付着したり変換器26に入り込んだりすることがないため、汎用の変換器26を利用することができる。
尚、上記した以外の構成は第1の実施形態と同じであり、従って、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0030】
また、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような変形が可能である。
【0031】
素材網は、多数の線材を綾織りしたものに限らず、杉綾織りや平織り、平畳織りなどにより形成したものでも良い。
また、素材網は、ステンレス以外の金属からなる線材を織り込んで形成しても良い。ニッケルストライクめっき処理工程は、素材網を構成する線材の材料に応じて省略できる。
篩網の上面と接するように共振リングを設け、前記共振リングに変換器を取付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、振動篩装置の右半分を断面にて示す正面図
【図2】分離枠の上面図
【図3】分離枠のうち変換器周辺部分の縦断面図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図5】高周波発生装置を省略して示す上面図
【符号の説明】
【0033】
図面中、6は上部アンバランスウェイト(振動付与手段)、7は下部アンバランスウェイト(振動付与手段)、10はモータ(振動付与手段)、20は分離枠、21は環状フレーム(枠本体)、22は篩網、23は共振リング(環状部材)、26は変換器、27はケーブル、30は高周波ケーブル、31は超音波発生装置、44は共振リング(枠本体、環状部材)、Mは振動篩装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠本体と、前記枠本体に設けられ多数の金属製の線材を編み込んで形成された素材網に無電解ニッケルめっき処理を施すことにより構成された篩網とを有する分離枠と、
前記分離枠を振動させる振動付与手段と、
前記篩網に超音波による微振動を発生させる超音波発生手段とを備えることを特徴とする振動篩装置。
【請求項2】
前記素材網は、ステンレス製の線材を編み込むことにより形成され、
前記篩網は、前記素材網にニッケルストライクめっき処理を施した後、無電解ニッケルめっき処理を施すことにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の振動篩装置。
【請求項3】
超音波発生手段は、高周波発生装置と、篩網と接触するように設けられた環状部材と、前記環状部材に取付けられ高周波を超音波に変換する変換器と、前記高周波発生装置で発生した高周波を前記変換器に伝達するケーブルとを備えていることを特徴とする請求項1または2記載の振動篩装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−105629(P2007−105629A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298959(P2005−298959)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(591006520)株式会社興和工業所 (34)
【Fターム(参考)】