説明

振幅制御電圧センサ

【課題】信号の振幅レベルを制御して外部の機器へ出力可能な振幅制御電圧センサを得ること。
【解決手段】電力機器の中心導体1と筐体5との間に設置された検出電極3と、検出電極3と筐体5との間に設置され、検出電極3と筐体5との間で静電容量を有する絶縁物4と、検出電極3と筐体5との間で絶縁物4と並列に設置され、固定の静電容量を持つコンデンサ8と、検出電極3と筐体5との間で絶縁物4と並列に、また、コンデンサ8と直列に設置され、静電容量を変更可能な可変容量ダイオード9と、検出電極3で検出された信号を入力し、当該信号の振幅レベルに基づいて可変容量ダイオード9の静電容量を決定し、可変容量ダイオード9の静電容量を制御する電圧を出力する振幅制御部11、を備え、前記信号の振幅レベルを制御して外部の機器へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象機器の電圧を測定する振幅制御電圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変電機器を初めとする電力機器において、中心導体に印加されている電圧波形は、機器の健全性や、負荷の状況を知るための重要な情報の一つとされている。これらの情報は、最近のスマートグリッド関連での遠隔管理情報や、電力開閉用遮断器において、特定の電圧位相で遮断器を開閉する位相制御技術の活用のための情報として幅広く活用されており、正確な電圧波形情報を測定する技術は重要となっている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、遮断器等の電力機器において使用される電圧センサに関する技術が開示されている。電力機器の中心導体と電圧センサの検出電極との間は機器の構造によって決定される浮遊の静電容量C1で結合され、電圧センサの検出電極と電力機器筐体の間は絶縁物が形成する静電容量C2で結合されている。この結果、電圧センサの検出電極は、中心導体の電圧波形を静電容量C1と静電容量C2で容量分圧した電圧波形になる。位相制御装置では、この分圧した信号を基に開閉動作のタイミングを制御する。なお、上記構成より、電圧波形の測定精度は、静電容量C1と静電容量C2の精度によって決定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−186612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、静電容量C1は機器の三次元構造と、中心導体と電圧センサの検出電極との間の媒質(通常はSF6などの絶縁ガス)と、によって決定されるが、三次元構造の計算は複雑で実際に製作しないと正確な値が求まらない。また、電圧センサを別の機器に取付けると静電容量C1の値が変化する。そのため、電圧センサの出力信号線に接続される位相制御装置では、機器毎に位相制御装置にて信号の増幅率を変更しなければならない、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電圧センサの出力信号の振幅レベルを制御して外部の機器へ出力可能な振幅制御電圧センサを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電力機器の中心導体と筐体との間に設置された検出電極と、前記検出電極と前記筐体との間に設置され、当該検出電極と当該筐体との間で静電容量を有する絶縁物と、前記検出電極と前記筐体との間で前記絶縁物と並列に設置され、固定の静電容量を持つコンデンサと、前記検出電極と前記筐体との間で前記絶縁物と並列に、また、前記コンデンサと直列に設置され、静電容量を変更可能な可変容量ダイオードと、前記検出電極で検出された信号を入力し、当該信号の振幅レベルに基づいて前記可変容量ダイオードの静電容量を決定し、前記可変容量ダイオードの静電容量を制御する電圧を出力する振幅制御部と、を備え、前記信号の振幅レベルを制御して外部の機器へ出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、電圧センサの出力信号の振幅レベルを制御して外部の機器へ出力できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、電圧センサを機器に搭載したときの等価回路を示す図である。
【図2】図2は、電圧センサの構成例を示す図である。
【図3】図3は、本実施の形態の振幅制御電圧センサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる振幅制御電圧センサの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
まず、本実施の形態の振幅制御電圧センサと比較するために、振幅制御電圧センサにおいて特徴的な動作を行う構成を除いた電圧センサについて図面を用いて簡単に説明する。図1は、遮断器等の電力機器において活用される電圧センサ6を機器に搭載したときの等価回路を示す図である。また、図2は、電圧センサ6の構成例を示す図である。等価回路は、中心導体1と、絶縁ガス2と、検出電極3と、誘電率εの絶縁物4と、筐体5と、から構成される。このうち、絶縁ガス2、検出電極3、絶縁物4、筐体5で電圧センサ6を構成する。また、電圧センサ6の検出電極3には、図1では図示していないが、図2で示すように電圧センサの出力信号を出力する出力線7が接続されている。
【0012】
中心導体1は、電圧センサ6の電圧測定対象の電力機器の導体である。絶縁ガス2は、中心導体1と検出電極3の間にある媒質であり、仮想的に静電容量C1を持つコンデンサとみなすことができる。検出電極3は、電圧センサ6において電圧測定対象の電力機器の電圧を測定する電極である。誘電率εの絶縁物4は、検出電極3と筐体5の間にある媒質であり、仮想的に静電容量C2を持つコンデンサとみなすことができる。筐体5は、電圧測定対象の電力機器の筐体である。電圧センサ6は、電圧測定対象の電力機器の電圧を検出する。出力線7は、検出された電圧を電圧センサの出力信号として、図示しない外部の各種機器へ出力する。
【0013】
電力機器の中心導体1と検出電極3との間は、電力機器の構造によって決定する浮遊の静電容量C1で結合されている。また、検出電極3と筐体5の間は、誘電率εの絶縁物4が形成する静電容量C2で結合されている。この結果、検出電極3における電圧波形は、中心導体1の電圧波形を静電容量C1と静電容量C2で容量分圧した電圧波形になる。例えば、外部の機器である位相制御装置では、この分圧した信号を基に、開閉動作のタイミングを制御する。しかしながら、静電容量C1は電力機器の三次元構造と、中心導体1と検出電極3との間の媒質(絶縁ガス2)と、によって決定されるが、三次元構造の計算は複雑で実際に製作しないと正確な値が求まらない。また、電圧センサ6を別の機器に取付けると静電容量C1の値が変化する。
【0014】
つづいて、本実施の形態の振幅制御電圧センサについて説明する。図3は、本実施の形態の振幅制御電圧センサ30を示す図である。振幅制御電圧センサ30は、中心導体1と、絶縁ガス2と、検出電極3と、誘電率εの絶縁物4と、筐体5と、信号線7と、コンデンサ8と、可変容量ダイオード9と、ドライバ10と、抵抗12と、アンプ21と、制御部22と、アンプ23と、出力端子24と、から構成される。このうち、絶縁ガス2と、検出電極3と、絶縁物4と、筐体5と、信号線7と、コンデンサ8と、可変容量ダイオード9と、ドライバ10と、抵抗12で検出部31を構成する。また、アンプ21と、制御部22と、アンプ23と、出力端子24で振幅制御部11を構成する。ここでは、振幅制御電圧センサ30は、検出部31と振幅制御部11が一体となって構成され、測定対象の電力機器に設置される場合について説明する。なお、図1と同一の構成は同一の符号を付して説明を省略する。
【0015】
コンデンサ8は、絶縁物4と並列に接続された電子部品であり、固定の静電容量C3を持つ。可変容量ダイオード9は、絶縁物4と並列に、コンデンサ8と直列に接続された電子部品であり、変更可能な静電容量VCを持つ。ドライバ10は、信号線7から検出電極3で検出された電圧センサの出力信号を受信し、振幅制御部11へ供給する。振幅制御部11は、入力した電圧センサの出力信号の振幅を適正なレベルに制御するため、可変容量ダイオード9の静電容量VCを決定する電圧信号を出力する。抵抗12は、抵抗値R1を持つ抵抗であり、コンデンサ8と可変容量ダイオード9との間に電圧を印加する。検出部31では、検出電極3と筐体5との間の静電容量は、静電容量C2、C3、VCを合成した容量となるが、コンデンサ8と可変容量ダイオード9との間に印加される電圧によって、検出電極3と筐体5との間の静電容量を変化することができる。
【0016】
アンプ21は、制御部22でAD(Analogue/Digital)変換するために適した信号レベルに増幅する。制御部22は、電圧センサの出力信号の振幅を適正なレベルに制御する。アンプ23は、制御部22においてDA(Digital/Analogue)変換された出力を増幅する。出力端子24は、検出部31で検出された電圧センサの出力信号を図示しない外部の各種機器へ出力する。
【0017】
つぎに、振幅制御電圧センサ30において電圧センサの出力信号の振幅レベルを外部の各種機器へ出力するために適正レベルに制御する動作について説明する。中心導体1には、定格の電圧がかかっている状態とする。まず、振幅制御電圧センサ30の電源を入れると、振幅制御部11の制御部22が、DA出力端子から初期電圧信号を、アンプ23を通して抵抗12へ出力する。このとき、可変容量ダイオード9では、自身の静電容量VCを、抵抗12に出力された電圧に応じた静電容量に変化する。
【0018】
検出電極3では、静電容量C1と、静電容量C2、C3、VCの合成容量との比に応じた電圧センサの出力信号が発生する。ドライバ10は、この電圧センサの出力信号を低インピーダンス信号に変換し、振幅制御部11のアンプ21および出力端子24へ出力する。アンプ21では、受信した電圧センサの出力信号を制御部22でAD変換するために適正なレベルに増幅する。制御部22では、受信した電圧センサの出力信号をAD変換し、適正レベルと比較して受信した電圧センサの出力信号の振幅レベルが大きい場合は静電容量VCを大きくするためにDA出力し、適正レベルと比較して受信した電圧センサの出力信号の振幅レベルが小さい場合は静電容量VCを小さくするためにDA出力し、アンプ23を通して抵抗12へ出力する。可変容量ダイオード9は、抵抗12にかかる電圧に応じて静電容量VCを変化させる。検出部31および振幅制御部11では、上記動作を繰り返し実施し、振幅制御部11において受信した電圧センサの出力信号の振幅レベルが適正な振幅レベルになったところで制御部22から出力されるDA出力の電圧値を決定し固定する。これにより、出力端子24から各種機器へ出力される信号の振幅レベルを、適正な振幅レベルにすることができる。
【0019】
以上説明したように、本実施の形態では、検出部31の検出電極3と筐体5との間の静電容量を、振幅制御部11において、検出電極3で検出された電圧センサの出力信号の振幅レベルに基づいて変化させることとした。これにより、検出電極3で検出された電圧センサの出力信号の振幅レベルを適正レベルに制御でき、外部の各種機器へ出力される電圧センサの出力信号を適正レベルにすることができる。また、検出部31の構成する静電容量C1の容量が設計値から外れた場合や、異なる遮断器等に取り付ける場合においても、外部の各種機器へ適正レベルの電圧センサの出力信号を出力することができる。
【0020】
また、図3に示すように、検出部31と振幅制御部11を一体型とした構成にすることにより、後述する検出部31と振幅制御部11をそれぞれ別の機器に設置した隔離型と比較して、低コスト化を図ることができる。なお、振幅制御電圧センサ30では、静電容量C1は測定対象の電力機器によってばらつきがあることから、振幅レベルの微調整を行うことも可能である。
【0021】
実施の形態2.
本実施の形態では、振幅制御電圧センサ30において、検出部31が測定対象の電力機器に設置され、振幅制御部11が外部の機器に設置された場合について説明する。ここでは、一例として、外部の機器を位相制御装置として説明する。
【0022】
振幅制御部11が位相制御装置に設置された場合の振幅制御電圧センサ30の回路構成は、実施の形態1(図3参照)と同様である。このとき、振幅制御部11は、出力端子24と接続される位相制御装置に設置される。
【0023】
つづいて、振幅制御部11が位相制御装置に設置されたときの、振幅レベルを適正レベルに制御する動作について説明する。ここでは、まず、位相制御装置の電源を入れることにより、振幅制御部11の制御部22が初期電圧信号を出力する。電源を入れる装置が実施に形態1と異なるが、以降の動作は同様である。
【0024】
このように、振幅制御電圧センサ30において、検出部31と振幅制御部11を隔離して設置した場合においても、測定対象の電力機器と一体に設置した場合と同様の効果を得ることができる。また、実際の測定環境等に応じて、振幅制御電圧センサ30の回路配置を変更することができる。
【0025】
なお、外部の機器として位相制御装置の場合について説明したが、これに限定するものではない。他の外部機器として、例えば、電圧位相のどの部分で放電パルスが発生したかを判別する部分放電検出装置等がある。
【符号の説明】
【0026】
1 中心導体
2 絶縁ガス
3 検出電極
4 絶縁物
5 筐体
6 電圧センサ
7 信号線
8 コンデンサ
9 可変容量ダイオード
10 ドライバ
11 振幅制御部
12 抵抗
21 アンプ
22 制御部
23 アンプ
24 出力端子
30 振幅制御電圧センサ
31 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力機器の中心導体と筐体との間に設置された検出電極と、
前記検出電極と前記筐体との間に設置され、当該検出電極と当該筐体との間で静電容量を有する絶縁物と、
前記検出電極と前記筐体との間で前記絶縁物と並列に設置され、固定の静電容量を持つコンデンサと、
前記検出電極と前記筐体との間で前記絶縁物と並列に、また、前記コンデンサと直列に設置され、静電容量を変更可能な可変容量ダイオードと、
前記検出電極で検出された信号を入力し、当該信号の振幅レベルに基づいて前記可変容量ダイオードの静電容量を決定し、前記可変容量ダイオードの静電容量を制御する電圧を出力する振幅制御部と、
を備え、前記信号の振幅レベルを制御して外部の機器へ出力することを特徴とする振幅制御電圧センサ。
【請求項2】
前記振幅制御部は、前記信号の振幅レベルが適正レベルと比較して大きい場合は、前記可変容量ダイオードの静電容量を大きくし、前記信号の振幅レベルが適正レベルと比較して小さい場合は、前記可変容量ダイオードの静電容量を小さくする、
ことを特徴とする請求項1に記載の振幅制御電圧センサ。
【請求項3】
前記検出電極、前記絶縁物、前記コンデンサ、前記可変容量ダイオード、および前記振幅制御部を前記電力機器に設置する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の振幅制御電圧センサ。
【請求項4】
前記検出電極と、前記絶縁物と、前記コンデンサと、前記可変容量ダイオードと、から検出部を構成する場合に、
前記検出部を前記電力機器に設置し、前記振幅制御部を前記外部の機器に設置する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の振幅制御電圧センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−242331(P2012−242331A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114980(P2011−114980)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】