説明

挿入カテーテルをロックして消毒するための装置およびキット

【課題】次の使用までの間のカテーテルを閉じる前に挿入カテーテルの内部ルーメンを洗浄するための方法およびキットを提供すること。
【解決手段】挿入カテーテルが、低級アルコール、典型的にはエタノール、プロパノール、またはブタノール、最も好ましくはイソプロパノールと、添加剤とを含む溶液を用いてロックされ、添加剤は、抗菌剤、典型的にはタウロリジンおよびトリクロサン、または抗凝固剤、典型的にはリボフラビン、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸、およびクエン酸を含む。アルコールおよび添加剤溶液の使用は、カテーテルの汚損、特に血管内カテーテルでの詰まりおよび血栓を効果的に低減し、さらに感染の危険を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
1.発明の分野
本発明は、全体として医療方法および医療キットに関する。より詳細には、本発明は、次の使用までの間のカテーテルを閉じる前に挿入カテーテル(implanted catheter)の内部ルーメンを洗浄するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
挿入カテーテルは、多くの医療処置で広く使用されるようになっている。例え
ば静脈内(IV)療法は、患者に流体、薬物、および他の物質を注入するために
静脈カテーテルを長期間挿入する。血液透析と血液濾過はどちらも、血液を体外
で治療するために静脈内に挿入される個別の引出しカテーテルおよび戻しカテー
テルを用いる。対照的に、腹膜透析は、in situ透析を可能にするために
透析物を入れ、かつ引出すように腹膜内に挿入される単一カテーテルを用いてい
る。
【0003】
長期間にわたってカテーテルを挿入する必要性がいくつかの問題を生じる。例
えば、患者を治療し、かつカテーテルを何度か取外するので、カテーテルは感染
する可能性がある。これは、皮膚貫通が一般的な感染経路である経皮カテーテル
で特に問題となる。第2に、挿入カテーテルはしばしば、時間の経過と共に詰ま
る、または汚損される可能性がある。これは、カテーテル・ルーメン内部の詰ま
りおよび血栓形成が問題となる場合がある血管内カテーテルで特に問題である。
【0004】
血栓形成に関連する問題を低減するために、現在、次の使用との間に血管内アクセス・カテーテルを「ロック」(lock)するのが一般的である。ロックは、典型的には、まずカテーテルを食塩水で洗浄して、カテーテル・ルーメンから血液および他
の物質を除去することを含む。カテーテルが洗浄された後、次いで抗凝固溶液、
典型的にはヘパリンが、食塩水が除去されるように注入されて、ルーメンを満た
す。ヘパリンロック液は、ルーメンから血液を除外することと、ルーメン内部で
の詰まりおよび血栓形成を積極的に妨げることの両方を行う。いくらかの血栓が
依然としてカテーテルの遠位端に生じるが、この発生は通常最小限であり、問題
をほとんど生じない。さらに、様々な抗菌物質をロック溶液と組み合わせて、血
栓を妨げるのと同時に感染を妨げることが提案されている。
【0005】
概して効果的ではあるが、ヘパリンロックの使用はいくつかの欠点を有する。
あらゆるカテーテル治療セッションの終わりでのヘパリン溶液の調製の必要性は
、時間がかかるものであり、介護者が誤って操作する可能性を生じる。血液透析
および血液濾過患者は、週に少なくとも数回はそのようなヘパリンロックを受け
なければならず、IVでの患者は、日に数回そのようなヘパリンロックを受けな
ければならない。時間の経過と共に、ヘパリンロックを行う不便さおよび費用が
増す可能性がある。さらに、ヘパリンロック液中での個別の抗菌剤の組合せの必
要性が、処置をさらに複雑にし、費用を追加し、ヘパリンロックへの抗菌剤の追
加は通常、ルーメン内部およびルーメンからの開口部でのみ有効である。感染の
危険が最大である皮膚を介して貫通する点を含めた、挿入カテーテルを取り巻く
領域内での感染の危険がほとんど低減しない。
【0006】
これら全ての理由から、連続使用の間に挿入カテーテルをロックするための改
良型の方法、組成物、およびキットを提供することが望まれる。そのようなロッ
ク方法は、カテーテル・ルーメンの汚損を妨げ、かつ/または感染の可能性を低
減し、好ましくはその両方を行うべきである。特に、そのような方法、組成物、
およびキットは、実施が容易であり、調製の必要が最小限であるか、全くなく、
低コストであり、血液透析および血液濾過カテーテル、IVカテーテル、腹膜透
析カテーテルなどを含めたほとんどまたは全てのタイプの挿入カテーテルと共に
使用できる。これらの目的の少なくともいくつかが、本明細書で以後説明する発
明によって達成される。
【0007】
2.背景技術の説明
米国特許第4929242号が、静脈内カテーテルでのヘパリンロックを提供
するための、グリセロールを含み、血液の密度と同じ密度を有する溶液を説明す
る。米国特許第5077281号は、透析カテーテルおよび他の血管プロテーゼ
での凝固を妨げるためのタウロリン化合物を含む抗菌溶液を説明する。PCT
WO 00/01391は、タウリンアミド誘導体を含む抗菌ロックを説明する
。本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5807356号、5931829号
、5989239号、5997524号、6007516号、6120492号
、6132415号、および6193684号、ならびに同時係属出願09/0
03772号および09/161044号が、本出願に関連している。上述した
特許および係属出願の全てを参照により本明細書に組み込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4929242号明細書
【特許文献2】米国特許第5077281号明細書
【特許文献3】国際公開第00/01391号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5807356号明細書
【特許文献5】米国特許第5931829号明細書
【特許文献6】米国特許第5989239号明細書
【特許文献7】米国特許第5997524号明細書
【特許文献8】米国特許第6007516号明細書
【特許文献9】米国特許第6120492号明細書
【特許文献10】米国特許第6132415号明細書
【特許文献11】米国特許第6193684号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本発明は、皮下および経皮挿入可能カテーテルの改良型ロックおよび/または
消毒のための装置およびキットを提供する。カテーテルは通常、体腔に対して開
いた遠位端を有する。最も一般的には、カテーテルは、遠位端が血管、通常は静
脈、しかしいくつかの場合には動脈内に挿入するか、または取り付けられる血管
内カテーテルである。例示の血管内カテーテルは、血液透析および血液濾過カテ
ーテルや静脈内カテーテルなどを含む。静脈内カテーテルは、流体注入や薬物送
給などを含めた様々な目的で使用することができる。脈管構造以外に取り付けら
れるカテーテルには、腹膜腔などに対して開かれる腹膜透析カテーテルが含まれ
る。
【0010】
本発明のカテーテルは、経皮挿入可能または皮下挿入可能であってよい。「経皮挿入可能」(transcutaneously implantable)により、カテーテルの遠位端がターゲット体腔に取り付けられる、または体腔内部に挿入可能であり、カテーテルの近位端が患者の外部に位置することを意味する。したがって、カテーテルの中間部分が、患者の皮膚を通過または貫通し、カテーテルの近位端は通常、注入管、シリンジ、溶液バッグなどの選択的取付けを可能にするためのハブを有する。最も一般的には、近位取付ハブは、ルア・フィッティングを有する。「皮下挿入可能」(subcutaneously implantable)により、カテーテル全体が皮膚の下に挿入可能である場合があり、皮膚を介して延在するカテーテル部分が存在しないことを意味する。そのような皮下挿入可能カテーテルは通常、近位端で、完全に挿入されたハブに取り付けられる。ハブは、針または他の貫通要素を介する経皮的アクセスを可能にする。治療セッションが完了した後、針または他の貫通要素が取り除かれ、次いで、カテーテルおよび近位ハブの全ての部分が皮膚の下に配置される。そのような皮下挿入可能カテーテルおよび近位アクセス・ハブの例は、本発明の譲受人に譲渡された上述した同時係属出願、および米国特許第5807356号で説明されており、それらの開示全てを参照により本明細書に組み込んだ。
【0011】
上述した背景の項で説明したように、経皮挿入可能カテーテルと皮下挿入可能
カテーテルの両方が、特に、血管または他の体腔内に挿入可能である、または血
管または他の体腔に取り付けられた遠位端内、および遠位端の周りで汚損および
詰まりを受ける。そのような汚損の危険を低減するために、本発明は、カテーテ
ル、組成物、ならびに1つまたは複数のルーメン内に低級アルコールと添加剤の
溶液を有する挿入可能カテーテルを設けたキットを提供する。低級アルコールは
通常、エタノール、プロパノール、またはブタノール、好ましくはイソプロパノ
ールである。驚くべきことに、これらの低級アルコールは、ルーメンの汚損およ
び詰まりを妨げる、特に血管内カテーテルのルーメン内部の血塊形成を妨げるの
に効果的であることが判明している。ヘパリン溶液を調製して使用する必要なく
血塊形成を妨げることができることが重要な利点である。さらに、低級アルコー
ルが、感染を妨げることができる追加の能力を有する。添加剤が、抗菌物質(anti−microbial sunbstance)、典型的にはタウロリジンまたはトリクロサン、あるいは抗凝固物質、典型的にはリボフラビン、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸、またはクエン酸を含むことができる。低級アルコールと添加剤のこの溶液組合せは、アルコールが抗菌または抗凝固添加剤の効果を増大させ、一方、添加剤が、アルコールの生じ得る毒素効果を低減するので特に有効である。したがって、以下により詳細に説明するように、カテーテル汚損の低減と感染の妨げとの両方を、簡便な様式でカテーテル・ルーメンに導入される、一般的に利用可能であり広く受け入れられている材料の使用と共に達成することができる。
【0012】
挿入可能カテーテルの感染を妨げる、または防止することができる能力は、カ
テーテル本体の少なくとも一部が、低級アルコールおよび添加剤材料がカテーテ
ル本体に浸透し、好ましくはカテーテルを取り巻く組織領域内へ外側に進むこと
ができるようにするのに十分な孔を有するカテーテルを利用することによって改
善することができる。そのような有孔または部分有孔カテーテル本体の使用は、
開示全体を参照により本明細書に組みこむ米国特許第5077281号で教示さ
れるものなど、多くの抗菌ロック溶液で有用な場合があるが、本発明の低級アル
コールを用いると特に有用である。低級アルコールは比較的低い分子量および極
性構造を有し、これにより、低級アルコールが、多くの有孔材料内に容易に浸透
し、任意選択で有効材料を通ることができることを理解されたい。カテーテル本
体の構成に関する例示有孔材料は、シリコーンゴムや延伸PTFE(例えばGO
RE−TEX(登録商標)、医療用膜)などを含む。そのような材料は、管状カ
テーテル本体として形成しても、カテーテル本体内に個別構成要素として組み込
んでもよい。
【0013】
第1の態様では、低級アルコールと添加剤を含む溶液が、挿入可能カテーテル
をロックするための材料(薬剤の場合もある)の製造に使用される。カテーテル
のルーメンは体腔、典型的には血管や腹膜などに対して開いている。低級アルコ
ールは、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群から選択され
、現在好ましいアルコールはイソプロパノールである。低級アルコールは純粋で
もよいが、より一般的には水溶液であり、典型的には体積で1%〜99%、通常
は体積で5%〜95%である。添加剤は、タウロリジンおよびトリクロサンから
なる群から選択される抗菌剤、またはリボフラビン、クエン酸ナトリウム、エチ
レンジアミンテトラ酢酸、およびクエン酸からなる群から選択される抗凝固剤を
含むことができる。挿入可能カテーテルは、遠位端で血管や腹膜腔などに取り付
けられた経皮カテーテルであってよい。あるいは、挿入可能カテーテルは、遠位
端で血管や腹膜腔などに取り付けられた皮下挿入可能カテーテルであってよい。
【0014】
第2の態様では、抗菌溶液は、挿入可能カテーテルを消毒する材料の製造で使
用される。上述したように、例示の好ましい抗菌溶液は、少なくとも1つの低級
アルコール、好ましくはエタノール、プロパノール、またはブタノール、最も好
ましくはイソプロパノールと、少なくとも1つの他の抗菌剤、好ましくはタウロ
リジンもしくはトリクロサン、または抗凝固化合物、好ましくはリボフラビン、
クエン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸、もしくはクエン酸とを含む
。挿入可能カテーテルは、皮下挿入可能または経皮挿入可能であってよい。
【0015】
本発明の第3の態様では、挿入可能カテーテルを満たすためのロック組成物が
、少なくとも1つの低級アルコールと、少なくとも1つの他の抗菌または抗凝固
化合物とを含む。低級アルコールが、エタノール、プロパノール、およびブタノ
ールからなる群から選択され、現在好ましいアルコールはイソプロパノールであ
る。少なくとも1つの他の抗菌剤が、タウロリジンおよびトリクロサンからなる
群から選択され、少なくとも1つの抗凝固剤が、リボフラビン、クエン酸ナトリ
ウム、エチレンジアミンテトラ酢酸、およびクエン酸からなる群から選択される

本発明の第4の態様では、挿入可能カテーテルをロックするためのキットが、
低級アルコールと添加剤の溶液の体積を保持する容器(任意選択でシリンジ)と
、溶液でカテーテルのルーメンを満たすことを含む方法を示す取扱説明とを備え
る。キットはさらに、ボックス、トレイ、管、ポーチなど、容器と取扱説明の両
方を保持するためのパッケージを備える。低級アルコールは通常、エタノール、
プロパノール、およびブタノールからなる群から選択され、好ましくはイソプロ
パノールである。添加剤は、抗菌剤、典型的にはタウロリジンもしくはトリクロ
サン、または抗凝固剤、典型的にはリボフラビン、クエン酸ナトリウム、エチレ
ンジアミンテトラ酢酸、もしくはクエン酸である。容器内の溶液の体積は、典型
的には1ml〜20mlの範囲内にあり、好ましくは2ml〜10mlの範囲内
にあり、通常は約2ml〜4mlである。さらに、容器は通常、挿入可能カテー
テル内に溶液を直接導入することができるようにするシリンジを備える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】経皮カテーテルをロックし消毒するための本発明による方法を例示する図である。
【図1B】経皮カテーテルをロックし消毒するための本発明による方法を例示する図である。
【図2A】皮下挿入カテーテルをロックし消毒するための本発明による方法を例示する図である。
【図2B】皮下挿入カテーテルをロックし消毒するための本発明による方法を例示する図である。
【図2C】皮下挿入カテーテルをロックし消毒するための本発明による方法を例示する図である。
【図3A】腹膜透析カテーテルをロックし消毒するための本発明による方法を例示する図である。
【図3B】腹膜透析カテーテルをロックし消毒するための本発明による方法を例示する図である。
【図3C】腹膜透析カテーテルをロックし消毒するための本発明による方法を例示する図である。
【図4】抗菌ロック流体が挿入カテーテル本体内に、好ましくはカテーテル本体を取り巻く組織内に浸透する本発明の好ましい態様を例示する図である。
【図5】本発明の原理に従って構成されたキットを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(特定の実施形態の説明)
次に図1Aおよび図1Bを参照しながら、経皮挿入静脈カテーテル10をロッ
クする本発明による方法を説明する。静脈カテーテル10は、患者への注入のた
めに、患者の皮膚Sを介して静脈V内に挿入される。注入源から患者を切り離す
ことが望まれるとき、凝固によって生じる詰まりおよび汚損を妨げ、好ましくは
さらに感染の危険を妨げるようにカテーテルをロックする必要がある。図1Aに
示されるように、通常、IV溶液を含む管12が、カテーテル10の近位ハブ1
4に接続されている。IVライン12が切り離され、カテーテル10は通常、食
塩水または他の洗浄溶液を用いて洗浄される。洗浄が完了した後、低級アルコー
ルと添加剤の溶液を導入して、図1Bに示されるように、カテーテル10の内部
ルーメンを満たすことができる。通常、(上述した)十分な溶液体積が導入され
て、ルーメンを完全に満たし、カテーテルの遠位端16から流れる余剰分は最小
限である。しかし、血管またはほとんどの他の体腔内への余剰溶液の損失は通常
問題ではない。次いで、溶液の「カラム」が内部ルーメンを占有し、近位ハブ1
4が封止され、溶液を所定の位置に保つ助けをする。低級アルコールと添加剤の
溶液が、遠位端16での詰まりおよび凝固を効果的に妨げ、かつカテーテル全体
にわたって感染を妨げることが判明している。IV源に患者を再び接続すること
が望まれるとき、溶液が除去され、カテーテル・ルーメンが食塩水で洗浄される

【0018】
次に図2A〜2Cを参照しながら、血液透析アクセスに使用される皮下挿入カ
テーテル20のロックを説明する。カテーテル20は、ターゲット血管BV、典
型的には静脈と、挿入ポート22との間に挿入される。血液透析中、カテーテル
20を通し、ポート22を通し、ポート22に経皮的にアクセスするために使用
される針Nおよび接続ライン23を通して外部に血液を引き出すことができる。
あるいは、ポートおよびカテーテルを使用して、治療された血液を患者に戻すこ
とができる。上述した参照により組み込む同時係属出願で説明されているように
、ポートとカテーテルの組合せは、通常は対で使用されて、血液引出しと血液返
還の両方を可能にする。
【0019】
血液透析(血液濾過)治療を終了することが望まれるとき、図2Bに示される
ように、(典型的には、接続ライン23に取り付けられたシリンジから)針Nを
介して食塩水が導入されて、ルーメンを洗浄する。洗浄が完了した後、低級アル
コールと添加剤の溶液を含むシリンジ26などの容器が、ポート22/ライン2
3を介して、カテーテル20のルーメン内に注入されて、食塩水を除去し、カテ
ーテルをロックする。溶液は、針の端部が引き抜かれ、弁22が閉じてカテーテ
ル20の近位端を封止した後に、カテーテル20内部で所定の位置に留まる。特
定の利点として、針内の残余溶液が、針によって残された組織路TT内、および
内部弁の上流のポート22の部分に分散される。溶液中のアルコールまたは他の
抗菌添加剤の存在はさらに、ポートと組織路の両方での感染を妨げる。
【0020】
また、図3A〜3Cに示されるように、本発明の方法を使用して、腹膜透析カ
テーテル30などの非血管カテーテルをロックすることができる。腹膜透析治療
後、図3Aに示されるように、使用された透析物がカテーテル30から引き出さ
れる。透析物が十分に除去された後、図3Bに示されるように、透析カテーテル
30を任意選択で洗浄することができる。洗浄後、図3Cに示されるように、低
級アルコールと添加剤の溶液が腹膜透析カテーテル30に導入され、それにより
血管カテーテルに関して前述したようにカテーテルのルーメンを満たす。腹膜透
析カテーテルに対するアルコール・ロックと添加剤の使用は、感染を妨げるのに
特に有利である。
【0021】
次に図4を参照する。カテーテルをロックするための低級アルコールと他の抗
菌または抗凝固材料との使用は、少なくとも部分的に有孔材料から形成される挿
入カテーテルを利用することによって機能向上させることができる。有孔カテー
テル本体42のルーメン40が、低級アルコールと別の抗菌または抗凝固化合物
との溶液で満たされるとき、溶液は、図4の矢印によって示されるように、カテ
ーテル本体内に、かつ好ましくはカテーテルを取り巻く組織T内に外側へ浸透す
ることができる。したがって、溶液の抗菌性は、カテーテルの内部ルーメンに限
定されず、カテーテルの表面上、およびカテーテル本体を直に取り巻く組織領域
内でも効果的である。カテーテル本体に関して特に適した材料および有孔性は上
述した。
【0022】
挿入可能カテーテルを満たすためのロック組成物は、少なくとも1つの低級ア
ルコールと、少なくとも1つの他の抗菌または抗凝固化合物とを含む。好ましい
組成物は、約1%〜99%の範囲内にある低級アルコールと約1%〜99%の範
囲内にあるタウロリジン、約1%〜99%の範囲内にある低級アルコールと約1
%〜99%の範囲内にあるトリクロサン、約1%〜99%の範囲内にある低級ア
ルコールと約1%〜99%の範囲内にあるリボフラビン、約1%〜99%の範囲
内にある低級アルコールと約1%〜99%の範囲内にあるクエン酸ナトリウム、
約1%〜99%の範囲内にある低級アルコールと約1%〜99%の範囲内にある
エチレンジアミンテトラ酢酸、および約1%〜99%の範囲内にある低級アルコ
ールと約1%〜99%の範囲内にあるクエン酸を含む。抗凝固剤の好ましい濃度
は約4体積%である。最も好ましくは、ロック組成物の濃度が、イソプロパノー
ルを約17.5体積%と、クエン酸ナトリウムを約4体積%含む。食塩水、水、
または標準ヘプリン溶液も、任意の上述した組成物に加えることができる。
【0023】
次に図5を参照すると、本発明によるキットが、少なくとも、低級アルコール
と添加剤の溶液の体積を保持するためのシリンジなどの容器60を備える。体積
は通常、上述した範囲内にある。さらに、キットは、カテーテルの連続使用の間
に容器からカテーテル本体のルーメン内に溶液を導入することによって挿入カテ
ーテルをロックする、かつ/または消毒するための方法を示す取扱説明(IFU
)を含む。通常、キットはさらに、ボックス、管、トレイ、ポーチなどを含む任
意の従来の医療デバイス・パッケージなどのパッケージ62を含む。
【0024】
以上が本発明の好ましい実施形態の完全な説明であるが、様々な代替形態、修
正形態、および等価形態を使用することができる。したがって、上の説明は、頭
書の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲を制限するものとみなすべき
ではない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、例えば以下の使用などが提供される:
(項目1) 挿入可能カテーテルをロックするための材料の製造における
溶液の使用であって、前記溶液が、低級アルコールと添加剤とを含む使用。
(項目2) 低級アルコールが、エタノール、プロパノール、およびブタ
ノールからなる群から選択される項目1に記載の使用。
(項目3) 低級アルコールがイソプロパノールである項目2に記載の
使用。
(項目4) 添加剤が、タウロリジンおよびトリクロサンからなる群から
選択される抗菌剤である項目1から3のいずれかに記載の使用。
(項目5) 添加剤が、リボフラビン、クエン酸ナトリウム、エチレンジ
アミンテトラ酢酸、およびクエン酸からなる群から選択される抗凝固剤である請
求項1から3のいずれかに記載の使用。
(項目6) 挿入可能カテーテルを消毒するための材料の製造における溶
液の使用であって、前記溶液が、低級アルコールと添加剤とを含む使用。
(項目7) 低級アルコールが、エタノール、プロパノール、およびブタ
ノールからなる群から選択される項目6に記載の使用。
(項目8) 低級アルコールがイソプロパノールである項目7に記載の
使用。
(項目9) 少なくとも1つの他の抗菌化合物が、タウロリジンおよびト
リクロサンからなる群から選択される項目6から8のいずれかに記載の使用。
(項目10) 少なくとも1つの抗凝固化合物が、リボフラビン、クエン
酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸、およびクエン酸からなる群から選
択される項目6から8のいずれかに記載の使用。
(項目11) 少なくとも1つの低級アルコールと、
少なくとも1つの他の抗菌または抗凝固化合物と
を含むロック組成物で充填された挿入可能カテーテル。
(項目12) 低級アルコールが、エタノール、プロパノール、およびブ
タノールからなる群から選択される項目11に記載の挿入可能カテーテル。
(項目13) 低級アルコールがイソプロパノールである項目12に記
載の挿入可能カテーテル。
(項目14) 少なくとも1つの他の抗菌化合物が、タウロリジンおよび
トリクロサンからなる群から選択される項目11から13のいずれかに記載の
挿入可能カテーテル。
(項目15) 少なくとも1つの抗凝固化合物が、リボフラビン、クエン
酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸、およびクエン酸からなる群から選
択される項目11から13のいずれかに記載の挿入可能カテーテル。
(項目16) 低級アルコールが約1%から99%の範囲内にあり、少な
くとも1つの他の抗菌化合物が約1%から99%の範囲内にあるタウロリジンで
ある項目11から13のいずれかに記載の挿入可能カテーテル。
(項目17) 低級アルコールが約1%から99%の範囲内にあり、少な
くとも1つの他の抗菌化合物が約1%から99%の範囲内にあるトリクロサンで
ある項目11から13のいずれかに記載の挿入可能カテーテル。
(項目18) 低級アルコールが約1%から99%の範囲内にあり、少な
くとも1つの抗凝固化合物が約1%から99%の範囲内にあるリボフラビンであ
る項目11から13のいずれかに記載の挿入可能カテーテル。
(項目19) 低級アルコールが約1%から99%の範囲内にあり、少な
くとも1つの抗凝固化合物が約1%から99%の範囲内にあるクエン酸ナトリウ
ムである項目11から13のいずれかに記載の挿入可能カテーテル。
(項目20) 低級アルコールが約1%から99%の範囲内にあり、少な
くとも1つの抗凝固化合物が約1%から99%の範囲内にあるエチレンジアミン
テトラ酢酸である項目11から13のいずれかに記載の挿入可能カテーテル。
(項目21) 低級アルコールが約1%から99%の範囲内にあり、少な
くとも1つの抗凝固化合物が約1%から99%の範囲内にあるクエン酸である請
求項11から13のいずれかに記載の挿入可能カテーテル。
(項目22) 少なくとも1つの抗凝固化合物が約4体積%のリボフラビ
ンである項目11から13のいずれかに記載の挿入可能カテーテル。
(項目23) 少なくとも1つの抗凝固化合物が約4体積%のクエン酸ナ
トリウムである項目11から13のいずれかに記載の挿入可能カテーテル。
(項目24) 少なくとも1つの抗凝固化合物が約4体積%のエチレンジ
アミンテトラ酢酸である項目11から13のいずれかに記載の挿入可能カテー
テル。
(項目25) 少なくとも1つの抗凝固化合物が約4体積%のクエン酸で
ある項目11から13のいずれかに記載の挿入可能カテーテル。
(項目26) 低級アルコールが約17.5体積%のイソプロパノールで
あり、少なくとも1つの抗凝固化合物が約4体積%のクエン酸ナトリウムである
項目11に記載の挿入可能カテーテル。
(項目27) 挿入可能カテーテルをロックするためのキットであって、
低級アルコールおよび添加剤を含む溶液の体積を保持する容器と、
溶液でカテーテルのルーメンを満たすことを含む方法を示す取扱説明と
を備えるキット。
(項目28) さらに、容器と取扱説明の両方を保持するパッケージを備
える項目27に記載のキット。
(項目29) 低級アルコールが、エタノール、プロパノール、およびブ
タノールからなる群から選択される項目27に記載のキット。
(項目30) 低級アルコールがイソプロパノールである項目29に記
載のキット。
(項目31) 添加剤が、タウロリジンおよびトリクロサンからなる群か
ら選択される抗菌剤である項目27に記載のキット。
(項目32) 添加剤が、リボフラビン、クエン酸ナトリウム、エチレン
ジアミンテトラ酢酸、およびクエン酸からなる群から選択される抗凝固剤である
項目27に記載のキット。
(項目33) 体積が1mlから20mlの範囲内にある項目27に記
載のキット。
(項目34) 容器がシリンジを備える項目27に記載のキット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書および図面に記載の発明。

【図2C】
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【図4】
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【図5】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2010−279713(P2010−279713A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163450(P2010−163450)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【分割の表示】特願2002−508720(P2002−508720)の分割
【原出願日】平成13年7月9日(2001.7.9)
【出願人】(507173805)エクセルショール メディカル コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】