説明

捕捉追尾制御装置

【課題】粗駆動機構と精駆動機構との2種の駆動機構の協調制御を行うことにより目標に対して高速高精度に捕捉追尾を行なうことができ、小型軽量化を図れる捕捉追尾制御装置を提供する。
【解決手段】捕捉追尾制御装置10は、移動体の光通信等における光アンテナの指向角制御において、粗駆動機構21および精駆動機構15の2つの駆動機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標を捕捉追尾するアンテナの捕捉追尾制御装置に関し、特に機上と機上、あるいは機上と地上、あるいは宇宙衛星間の通信用アンテナの捕捉・追尾技術等に使用される捕捉追尾制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の捕捉追尾制御装置として、精駆動機構制御系が、捕捉・追尾センサにより検出したアンテナ指向角誤差信号が所定値より大きい場合に捕捉制御信号を出力する制御手段を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、制御手段が、アンテナ指向角誤差信号が所定値以下の場合に追尾制御信号を出力する。
特許文献1は、制御手段の出力によりアンテナの精駆動を行う精駆動制御用アクチュエータを備える。
特許文献1は、アンテナの高精度指向制御を可能とする精駆動機構ダイナミクスを備える。
特許文献1は、粗駆動機構制御系が、精駆動機構ダイナミクスの出力により制御される粗駆動制御用アクチュエータを備える。
特許文献1は、精駆動機構ダイナミクス全体を支持し、アンテナの広範囲指向制御を可能とする粗駆動機構ダイナミクスを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開閉11−1090121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、一体化した捕捉・追尾センサを有する精駆動機構制御系と、精駆動機構制御系が出力する指向角信号により動作する粗駆動機構制御系とを備える。
特許文献1は、精駆動機構制御系および粗駆動機構制御系の両系の出力の指向角信号を捕捉・追尾センサに入力するように構成した。
特許文献1は、捕捉・粗追尾用センサおよび精追尾センサを捕捉・追尾センサとして一体化した。
特許文献1は、一体化したセンサを精駆動制御用アクチュエータと組み合わせることにより捕捉および追尾制御をすべて単一の精駆動機構制御系において行うように構成した。
特許文献1は、粗駆動機構制御系では、精駆動制御用アクチュエータの動きを粗駆動制御用アクチュエータを用いて補償する役割を持たせた。
これにより、特許文献1は、粗駆動機構制御系と精駆動機構制御系との間での協調動作を実現できる。
【0005】
通常、光通信等に使用される捕捉追尾機構において、移動体搭載等により厳しい振動等の外乱を受ける中で高速で高精度な捕捉追尾性能は実現することは極めて厳しい。
また、移動体へ搭載する上で小型軽量化を図る要望がある。
しかし、特許文献1は、移動体搭載等により激しい振動環境のなかでは、高精度な捕捉追尾を実現することが困難である。
また、特許文献1は、捕捉追尾の高精度化を実現するために、モータの高性能化を図ることも考えられるが、そのために、モータの大型化や駆動機構の大型化につながってしまい、小型軽量化が困難となる。
【0006】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、粗駆動機構と精駆動機構の2種の駆動機構の協調制御を行うことにより目標に対して高速高精度に捕捉追尾を行なうことができる捕捉追尾制御装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、小型軽量化を図れる捕捉追尾制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る捕捉追尾制御装置は、移動体の光通信等における光アンテナの指向角制御において、粗駆動機構および精駆動機構の2つの駆動機構を有する。
【0008】
本発明に係る捕捉追尾制御装置は、前記粗駆動機構制御系の指令角生成後、協調制御オンオフのスイッチを有し、そのオンオフは前記精駆動機構制御系の捕捉追尾センサからの信号により切り替わる。
【0009】
本発明に係る捕捉追尾制御装置は、前記粗駆動機構と前記精駆動機構との協調制御により、前記精駆動機構の駆動範囲を小さくする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る捕捉追尾制御装置によれば、粗駆動機構と精駆動機構の2種の駆動機構の協調制御を行うことで目標に対して高速高精度に捕捉追尾を行なうことができるという効果を奏する。
また、本発明に係る捕捉追尾制御装置によれば、小型軽量化を図れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る一実施形態の捕捉追尾制御装置のブロック構成図である。
【図2】本発明に係る一実施形態の捕捉追尾制御装置の制御動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る一実施形態の捕捉追尾制御装置について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明に係る一実施形態の捕捉追尾制御装置10は、精駆動機構制御系11と、粗駆動機構制御系12とを備える。
精駆動機構制御系11は、捕捉・追尾センサ13と、精駆動機構制御装置14と、精駆動機構15と、精駆動ダイナミクス16とを備える。
粗駆動機構制御系12は、指令角生成手段(指令角生成)17と、協調制御スイッチ18と、指令角補正手段(指令角補正)19と、制御装置20と、粗駆動機構21と、粗駆動ダイナミクス22とを備える。
【0013】
精駆動機構制御系11において、捕捉・追尾センサ13は、分解能は低いが広範囲の検出が可能なセンサ、例えばCCDセンサおよび分解能が高いが検出範囲の狭いセンサ、例えばQDセンサのように性能の異なる光学センサを複数組み合わせて構成される。
捕捉・追尾センサ13は、粗駆動機構21の目標サ−チにより、信号を検出した場合、粗駆動機構制御系12の協調制御切替スイッチ18に信号を送り、粗駆動機構21と精駆動機構21の協調制御のスイッチをオンに切り替える。
【0014】
粗駆動ダイナミクス16は、精駆動機構ダイナミクス22全体を支持しアンテナの広範囲指向制御を可能とする。
精駆動ダイナミクス22は、アンテナの高精度指向制御を可能とする。
【0015】
捕捉追尾制御装置10は、粗駆動機構制御系12において、目標に対して捕捉するために指令角生成17を行い、制御装置20および粗駆動機構21により目標を捕捉、制御を行なう。
粗駆動機構制御系12において、目標を捕捉した場合、精駆動機構制御系11の捕捉・追尾センサ13が信号を感知し、精駆動機構制御系11により追尾制御を行なう。
【0016】
また、同時に捕捉・追尾センサ13からの出力により粗駆動機構制御系12の協調制御切替スイッチ18がオンとなり、指令角補正19を行なう。
指令角補正19では、粗駆動機構制御系12の指令角および精駆動機構制御系11からの精駆動系指向角信号S1および粗駆動系指向角信号(現在角)S2を用いて、さらに目標に近い真値となる指令角を生成する。
生成された指令角で、制御装置20によるフィードバック制御により、粗駆動機構21の追尾制御を行なう。
これにより、精駆動機構15における目標との誤差が小さくなるために、精駆動機構15は大きく動く必要はなく、小さな範囲での制御を行なう。
【0017】
上述したように、捕捉追尾制御装置10は、目標の捕捉・追尾のための指向角度制御を行なうための捕捉追尾において、粗駆動機構21および精駆動機構15を有し、各々が指向角度制御を行なうための制御装置20および精駆動機構制御装置14を備える。
そして、精駆動機構15は、精駆動機構制御装置14および精駆動機構15等から構成され、粗駆動機構21も、粗駆動機構制御装置20および粗駆動機構21から構成される。
捕捉追尾制御装置10は、粗駆動機構21の目標サ−チにより、精駆動機構制御系11の捕捉追尾センサ13が信号を検出した場合、粗駆動機構制御系12の協調制御切替スイッチ18に信号を送る。
そして、捕捉追尾制御装置10は、粗駆動機構21と精駆動機構15の協調制御のスイッチをオンに切り替えることができる。
捕捉追尾制御装置10は、協調制御切替スイッチ18がオンの場合、粗駆動機構制御系12の指令角および精駆動系指向角信号S1および粗駆動系指向角信号S2から指令角補正19を行ない、より真値に近い目標角度を精駆動機構制御装置14に送る。
【0018】
次に、捕捉追尾制御装置10の制御動作について説明する。
図2に示すように、制御が開始されると、協調制御切替スイッチ18がオンとなった後、粗駆動機構制御系12の指令角を読み込む(ステップS101)。
次に、粗駆動機構制御系12の指令角から目標値を算出する(ステップS102)。
続いて、精駆動系指向角信号S1を読み込む(ステップS103)。
そして、その角度が精駆動機構15での誤差角であるために、座標変換等により、その角度を粗駆動機構21の誤差角に変換する(ステップ104)。
次に、変換された誤差角度を使用して、より真値に近い目標角度(補正角度)を算出する(ステップ105)。
続いて、粗駆動機構系指向角(現在角)を読み込む(ステップ106)。
そして、読み込まれた補正角度と指令角との差を粗駆動機構系指向角に加算する(ステップ107)。
【0019】
以上、説明したように一実施形態の捕捉追尾制御装置10によれば、粗駆動機構制御系12および精駆動機構制御系11において、それぞれが目標とする捕捉追尾を行なう。
また、捕捉追尾制御装置10によれば、粗駆動機構制御系12の協調制御切替スイッチ18により粗駆動機構制御系12において、精駆動機構15の誤差角度信号等からより目標に近い補正された捕捉追尾が行われる。
そして、捕捉追尾制御装置10によれば、精駆動機構15は、大きな駆動範囲を必要とせず、小さい駆動範囲で高速、高精度での捕捉追尾が可能となる。
【0020】
また、一実施形態の捕捉追尾制御装置10によれば、精駆動機構15において、追尾の範囲として、狭い範囲とすることが可能であるため、精駆動機構15の小型・軽量化および装置全体の小型軽量化を図ることができる。
【0021】
そして、一実施形態の捕捉追尾制御装置10によれば、指令角補正において、粗駆動機構制御系12の指令角および精駆動機構制御系11からの精駆動系指向角信号S1および粗駆動系指向角信号(現在角)S2を用いて、さらに目標に近い真値となる指令角を生成する。
また、捕捉追尾制御装置10によれば、粗駆動機構21を制御することにより、精駆動機構21の追尾による激しい動きを抑制させることができるので、精駆動機構21において捕捉追尾を高精度化できる。
【0022】
なお、本発明の捕捉追尾制御装置は、前述した一実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形や改良等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上述べたように、本発明の捕捉追尾制御装置によれば、粗駆動機構と精駆動機構の2種の駆動機構の協調制御を行うことで目標に対して高速高精度に捕捉追尾を行なうことができるものである。
また、本発明の捕捉追尾制御装置によれば、小型軽量化を図ることができるものである。
以上の結果として、光等のさまざまな通信用アンテナやセンサ等に適用でき、本発明の産業上の利用可能性は大といえる。
【符号の説明】
【0024】
10 捕捉追尾制御装置
11 精駆動機構制御系
12 粗駆動機構制御系
15 精駆動機構
18 協調制御切替スイッチ(スイッチ)
21 粗駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の光通信等における光アンテナの指向角制御において、
粗駆動機構および精駆動機構の2つの駆動機構を有する捕捉追尾制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の捕捉追尾制御装置において、
前記粗駆動機構制御系の指令角生成後、協調制御オンオフのスイッチを有し、そのオンオフは前記精駆動機構制御系の捕捉追尾センサからの信号により切り替わる捕捉追尾制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の記載の捕捉追尾制御装置において、
前記粗駆動機構と前記精駆動機構との協調制御により、前記精駆動機構の駆動範囲を小さくする捕捉追尾制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−253484(P2012−253484A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123207(P2011−123207)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】