説明

捺染用インクジェットインクセット及びインクジェット捺染方法

【課題】発色工程や洗濯工程における布帛白地部分の着色を防止することができる捺染用インクジェットインクセットと、それを用いたインクジェット捺染方法を提供する。
【解決手段】防錆剤を含有する機能性インクと、色剤を含有する記録インクとから構成されることを特徴とする捺染用インクジェットインクセットであり、機能性インクが、アルカリ剤または酸化合物を含有し、防錆剤が、有機酸、有機酸の塩類、アミン類、亜硝酸塩類及びベンゾトリアゾール類から選ばれる少なくとも1種の化合物である捺染用インクジェットインクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の捺染用インクジェットインクセット及びこれを用いたインクジェット捺染方法に関し、詳しくは、防錆剤を含有する機能性インクと、色剤を含有する記録インクから構成されるインクジェットインクセットと、それを用いて布帛にプリントするインクジェット捺染方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のテキスタイルプリントは、版を用いてプリントする方法やスクリーン捺染方法を用いて行われている。一方、インクジェット方式を用いたテキスタイルプリント方法が知られている。このテキスタイルプリント方法は、無版であり、少量多品種対応に適しており、短納期でプリント物を作製することができるという特徴を備えている。
【0003】
布帛にインクジェット方式でプリントする場合、にじみが発生してしまうケースが生じる。通常、布帛にはにじみ防止や色剤と布帛との定着性向上を目的として、前処理が施される。具体的には、前処理剤として、にじみ防止の為の高分子化合物や、定着性向上の為の酸やアルカリ、ヒドロトロピー剤として尿素などを含有する水溶液を用い、布帛にディッピングあるいはコーティングした後、乾燥する処理が施されている。
【0004】
このような布帛の前処理工程は、インクジェット方式のテキスタイルプリントにはなくてはならないものであるが、現状の方法では、下記に示すような様々な課題を抱えている。
【0005】
1)前処理に時間を要し、プリントの納期が遅れる
2)前処理工程分のコストがかかる
3)前処理した布帛が経時により劣化を起こし、長期保存することができない
以上の様な各課題に対して、プリントの前工程で、布帛の前処理を行う方法が提案されている。例えば、特許文献1には、インクジェットヘッドを用いて、布帛に前処理剤等の機能性インクを付与した後、記録インクを付与するテキスタイルプリント方法が開示されている。この方法においては、記録インクのにじみ防止や、色剤を確実に安定して布帛に固着させる為、記録インクの付与される領域の周囲の白地の部分にも機能性インクを付与することが好ましいとされている。
【0006】
機能性インクには、アルカリや酸が含まれる為、記録インクの流路系に金属部材を使用すると、金属部材の腐食が起こることがある。金属部材の腐食に伴って、金属イオンが機能性インク中に溶出し、機能性インクと共に布帛に付与される為、その後の発色工程や洗濯工程で布帛の白地部分が着色してしまうことがある。
【0007】
記録インクのにじみ防止や、色剤をより確実にかつ安定して布帛に固着させる為の方法として、機能性インクを布帛に付与した後、プリンターに搭載した加熱手段により乾燥し、次いで記録インクを付与することが望ましいが、加熱手段の熱により機能性インクが加熱される為、金属部材の腐食が促進されて、前述の白地部分の着色の問題が起きやすい。また、加熱手段をインクジェットヘッドに装備されているキャリッジに搭載する方法は、機能性インクを布帛に付与した直後に乾燥することにより、記録インクのにじみ防止や、色剤をより確実に安定して布帛に固着させる為に有効であるが、機能性インク流路系と加熱手段が近接する為、機能性インクの加熱による金属部材の腐食より起こりやすく、白地部分の着色の問題がより起きやすい。
【0008】
特許文献2には、防錆剤であるベンゾトリアゾールを記録インクに含有させる例が記載されているが、この様な方法では、機能性インク流路系の金属部材腐食に起因する布帛白地部分の着色の問題を解決することはできない。また、色剤と防錆剤を共存させると、インク中で析出物が生じ、インクの保存安定性や出射安定性に支障をきたすことがある。
【0009】
特許文献3や特許文献4には、ベンゾトリアゾール系化合物と銅錯体色剤を共存させた場合、インク中で析出物が発生する旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−232633号公報
【特許文献2】特開2005−47990号公報
【特許文献3】特開2000−355665号公報
【特許文献4】特開2008−74885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、発色工程や洗濯工程における布帛白地部分の着色を防止することができる捺染用インクジェットインクセットと、それを用いたインクジェット捺染方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0013】
1.少なくとも、防錆剤を含有する機能性インクと、色剤を含有する記録インクとから構成されることを特徴とする捺染用インクジェットインクセット。
【0014】
2.前記機能性インクが、アルカリ剤または酸化合物を含有することを特徴とする前記1に記載の捺染用インクジェットインクセット。
【0015】
3.前記防錆剤が、有機酸、有機酸の塩類、アミン類、亜硝酸塩類及びベンゾトリアゾール類から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする前記1または2に記載の捺染用インクジェットインクセット。
【0016】
4.前記機能性インクが、防錆剤を0.1質量%以上、5.0質量%以下含有することを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の捺染用インクジェットインクセット。
【0017】
5.前記機能性インクが、2−イミダゾリジノンを含有することを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の捺染用インクジェットインクセット。
【0018】
6.前記1から5のいずれか1項に記載の捺染用インクジェットインクセットを用いるインクジェット捺染方法であって、インクジェットヘッドを用いて機能性インクを布帛に付与した後、記録インクを該布帛に付与することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【0019】
7.布帛に付与された前記機能性インクを加熱することにより乾燥した後、前記記録インクを布帛に付与することを特徴とする前記6に記載のインクジェット捺染方法。
【0020】
8.前記機能性インクを加熱乾燥する為の加熱手段が、インクジェットプリンターに搭載されていることを特徴とする前記7に記載のインクジェット捺染方法。
【0021】
9.前記機能性インクを加熱乾燥する為の加熱手段が、インクジェットヘッドが搭載されたキャリッジに搭載されていることを特徴とする前記8に記載のインクジェット捺染方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、発色工程や洗濯工程における布帛白地部分の着色を防止することができる捺染用インクジェットインクセットと、それを用いたインクジェット捺染方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】インクジェット捺染装置の構成の一例を示す部分概略図である。
【図2】図1に示すインクジェット捺染装置のキャリッジを上方から見た部分概略図である。
【図3】図1に示すインクジェット捺染装置のキャリッジを上方から見た部分概略図である。
【図4】インクジェット捺染装置の構成の他の一例を示す部分概略図である。
【図5】図4に示すインクジェット捺染装置のキャリッジを上から見た部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも、防錆剤を含有する機能性インクと、色剤を含有する記録インクとから構成されることを特徴とする捺染用インクジェットインクセットを用いることにより、発色工程や洗濯工程における布帛白地部分の着色を防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った次第である。
【0026】
以下、本発明の捺染用インクジェットインクセット及びそれを用いたインクジェット捺染方法の詳細について説明する。
【0027】
《捺染用インクジェットインクセット》
本発明の捺染用インクジェットインクセット(以下、単にインクセットともいう)は、防錆剤を含有する機能性インクと、色剤を含有する記録インクとから構成されることを特徴とする。
【0028】
〔機能性インク〕
本発明に係る機能性インクは、少なくとも防錆剤を含有することを特徴とする。その他に、記録インクを付与した際のにじみ防止を目的として高分子化合物や、色剤の定着性向上の為の酸やアルカリ、必要に応じてヒドロトロピー剤、水溶性有機溶剤やその他の添加剤等を含有させることができる。
【0029】
(防錆剤)
本発明に係る機能性インクに適用可能な防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、1)亜硝酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩等の様な金属表面に不動態膜を形成するもの、2)重合リン酸塩、亜鉛塩等の様なインク中のCaイオン等と結合して金属表面に不溶性の皮膜を形成するもの、3)メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール類等の様な金属面の金属イオンと結合して不溶性の皮膜を形成するもの、4)アミン類や有機酸及びその塩類等の様な金属表面に吸着して皮膜を形成するもの等が挙げられるが、本発明においては、防錆剤として、有機酸、有機酸の塩類、アミン類、亜硝酸塩類及びベンゾトリアゾール類から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。
【0030】
a)有機酸及びその塩類としては、下記有機酸類及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
【0031】
該有機酸類としては、例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ウンデカン二酸、ブラシル酸等の脂肪族(ジ)カルボン酸、安息香酸、アルキル安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、アルコキシ安息香酸、ニトロ安息香酸、アミノ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、アミノフタル酸等の芳香族(ジ)カルボン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸の様なアミノ酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸等が挙げられる。
【0032】
また、有機酸の塩類としては、上記有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリメチルアミン塩等が挙げられる。
【0033】
b)アミン類としては、例えば、メチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンの様なアルキルアミン、シクロヘキシルアミンの様な脂環式アミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンの様なアルカノールアミン、アニリン、フェネチルアミンの様な芳香族アミン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンの様な環状アミン、アルコキシアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミンの様なエーテルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンの様なジアミン、アルキルアミン塩、四級アンモニウム塩の様なカチオン性活性剤、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイドの様な両性活性剤等が挙げられる。
【0034】
c)亜硝酸塩類としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム等が挙げられる。
【0035】
d)ベンゾトリアゾール類としては、例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0036】
本発明に係る機能性インクにおいて、防錆剤の含有量は、機能性インク全質量の0.1〜5.0質量%の範囲であることが好ましい。防錆剤の含有量が0.1質量%未満であると、本発明の目的効果が得られにくくなり、逆に5.0質量%を超えても、それに見合った効果は得られず、コスト面で不利となる。
【0037】
(アルカリ剤)
本発明に係る機能性インクには、アルカリ剤を含有させることができる。記録インクが色剤として反応性染料を用いている場合に、特に好ましい。
【0038】
本発明に適用可能なアルカリ剤としては、有機塩基、無機塩基から選択することができるが、水溶性の無機塩基が、発色性、臭気、記録インクへの溶解性、排水負荷などの点で好ましい。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、第三リン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0039】
機能性インクを、インクジェット方式を用いて布帛に付与する場合は、アルカリ剤としてカリウム塩を用いると、機能性インクでの析出が起こり難く、インクジェットヘッドからの吐出が安定するため好ましい。
【0040】
本発明に係る機能性インクにおけるアルカリ剤の含有量としては、機能性インク全質量の1.0〜10質量%であることが好ましい。
【0041】
(酸化合物)
本発明に係る機能性インクには、酸化合物を含有させることができる。記録インクが色剤として酸性染料、分散染料及び顔料を用いている場合に、特に好ましい。
【0042】
酸化合物としては、各種の無機酸、有機酸から選択することができる。
【0043】
無機酸としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、亜塩素酸、硝酸、亜硝酸、亜硫酸、亜燐酸、燐酸、塩素酸、次亜リン酸等が挙げられる。
【0044】
有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、トリカルバリル酸、グリコール酸、チオグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、グルコン酸、ピルビン酸、オキサル酢酸、ジグリコール酸、安息香酸、フタル酸、マンデル酸、サリチル酸等が挙げられるが、その中でも、酒石酸、クエン酸及びリンゴ酸から選ばれることが好ましい。
【0045】
また、後工程で酸を発生する硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウムなどの酸アンモニウム塩も好ましく用いられる。
【0046】
酸化合物の含有量は、機能性インク全質量の1.0〜10質量%であることが好ましい。
【0047】
(高分子化合物)
本発明に係る機能性インクには、高分子化合物を含有させることができる。高分子化合物としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム等の天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ソーダ、ふのり等の海草類、ペクチン酸等の植物皮類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、焙焼澱粉、アルファ澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等の加工澱粉、シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム、アルギン誘導体、あるいは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊、エマルジョン等を用いることができる。
【0048】
機能性インクを、インクジェット方式を用い布帛上に付与する場合、高分子化合物として、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合物、グリセリンのポリエチレンオキサイド付加物、グリセリンのポリプロピレン付加物、ジグリセリンのポリエチレンオキサイド付加物、ジグリセリンのポリプロピレン付加物を用いることが好ましい。
【0049】
機能性インクにおける高分子化合物の含有量としては、1.0〜10質量%であることが好ましい。
【0050】
(ヒドロトロピー剤)
本発明に係る機能性インクには、ヒドロトロピー剤を含有させることができる。ヒドロトロピー剤としては、例えば、水溶性のアミド類、スルホンアミド類、尿素及びその誘導体、2−イミダゾリジノン及びその誘導体等が挙げられるが、2−イミダゾリジノン及びその誘導体を用いることが好ましい。2−イミダゾリジノン及びその誘導体は、例えば、尿素の様に加水分解されることがない為、機能性インクの保存安定性や出射安定性を劣化させることがない。
【0051】
2−イミダゾリジノン及びその誘導体の例としては、2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−イミダゾリジノン、1−エチル−2−イミダゾリジノン、1,1′−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,1′−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、4,5−ジメチル−2−イミダゾリジノン、4,5−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1−tert−ブチル−2−イミダゾリジノン、4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリジノン、4,5−ジエトキシ−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−4,5−ジエトキシ−2−イミダゾリジノン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、4−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、4,5−ジ(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1−アセチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、中でも2−イミダゾリジノンを用いることが好ましい。
【0052】
機能性インクにおけるヒドロトロピー剤の含有量としては、5.0〜30質量%であることが好ましい。
【0053】
(水溶性有機溶剤)
本発明に係る機能性インクには、水溶性有機溶剤を含有させることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールアルキルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、トリエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル、トリプロピレングリコールアルキルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0054】
水溶性有機溶剤の含有量は、機能性インク全質量の5.0〜40質量%であることが好ましい。
【0055】
(界面活性剤)
本発明に係る機能性インクには、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれのタイプの界面活性剤も用いることができる。
【0056】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0057】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0058】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0059】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、エマルゲン911、花王社製)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ニューポールPE−62、三洋化成工業社製)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0060】
これらの界面活性剤を使用する場合、単独または二種類以上を併用することができ、機能性インク全質量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲で添加することができる。
【0061】
(還元防止剤)
本発明に係る機能性インクには、還元防止剤を含有させることができる。還元防止剤としては、ニトロベンゼンスルホン酸塩を用いることが好ましく、メタニトロベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、特にナトリウム塩を用いることが好ましい。
【0062】
還元防止剤の含有量は、機能性インク全質量に対して、0.1〜7.0質量%であることが好ましい。
【0063】
(その他添加剤)
本発明に係る機能性インクには、防腐剤や防黴剤を添加することができる。防腐剤、防黴剤としては、例えば、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK、バイエル社製)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL、アビシア社製)等が挙げられる。
【0064】
(機能性インクの脱気)
本発明に係る機能性インクを、インクジェット方式を用いて布帛に付与する場合、機能性インク中に溶存気体が含まれていると、インクジェットヘッドから吐出させる際に機能性インク中に微細な気泡が発生し、吐出不良を引き起こす要因となる。そこで、そのような溶存気体を機能性インク中から除去することが好ましく、その脱気方法としては、大きく分けて、煮沸や減圧等の物理的方法により脱気する方法と、吸収剤を機能性インク中に添加混合させる化学的方法とがある。
【0065】
本発明においては、いかなる手段にて脱気を行うことも可能ではあるが、特に、気体透過性のある中空糸膜内に機能性インクを通液し、中空糸膜の外表面側を減圧することにより、機能性インク中の溶存気体を透過、除去する方法は、機能性インクの物性に悪影響を与えずに効率よく機能性インク中の溶存気体を除去することができ、好ましい。
【0066】
(機能性インクの付与)
本発明においては、インクジェットヘッドを用いて、本発明に係る機能性インクを布帛に付与する。この場合、機能性インクを付与する為のインクジェットヘッドをプリンターに搭載し、色剤を含有する記録インクとオンラインで布帛に付与することが好ましい。
【0067】
具体的には、(1)機能性インクを布帛に付与する、(2)付与した機能性インクを乾燥する、(3)記録インクを付与して画像を形成する、この一連の作業を1台のプリンター内で完結できるような構成を備えたインクジェット記録装置を用いることが好ましい。
【0068】
本発明に係る機能性インクをインクジェット方式を用いて布帛に付与する場合、機能性インクの粘度は、3〜20mPa・sであることが好ましい。また、表面張力は、25〜70mN/mであることが好ましい。粘度及び表面張力の調整は、前述の高分子化合物、水溶性有機溶剤及び界面活性剤により行うことができる、また、機能性インクの布帛に対する付与量としては、5〜20ml/mであることが好ましい。
【0069】
〔記録インク〕
次いで、本発明の捺染用インクジェットインクセットを構成する記録インクについて説明する。
【0070】
本発明に係る記録インクは、少なくとも色剤を含有し、必要に応じて水溶性有機溶剤やその他の添加剤等を含有させることができる。
【0071】
(色剤)
本発明に係る記録インクに適用可能な色剤としては、例えば、分散染料、反応性染料、酸性染料、直接染料、顔料、油溶性染料等を挙げることができるが、その中でも、分散染料、反応性染料、酸性染料あるいは顔料を用いることが好ましい。
【0072】
以下に、本発明に好ましく用いられる色剤の具体的化合物を示すが、本発明はこれら例示した化合物に限定されるものではない。
【0073】
〈分散染料〉
本発明に係る記録インクに好ましく用いられる分散染料としては、
C.I.Disperse Yellow;3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232、
C.I.Disperse Orange;1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142、
C.I.Disperse Red;1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328、
C.I.Disperse Violet;1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77、
C.I.Disperse Green;9、
C.I.Disperse Brown;1、2、4、9、13、19、
C.I.Disperse Blue;3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、167:1、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、
C.I.Disperse Black 1、3、10、24、
等が挙げられる。
【0074】
分散染料を用いたインクジェット捺染方法においては、高温処理で発色させる場合は、機械や布地の白場に染料が昇華することで汚染の原因とならないために、昇華堅牢度の良い分散染料を選定することが好ましい。
【0075】
〈反応性染料〉
本発明に係る記録インクに好ましく用いられる反応性染料としては、
C.I.Reactive Yellow;2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176、
C.I.Reactive Orange;1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107、
C.I.Reactive Red;2、3、3:1、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、226、228、235、
C.I.Reactive Violet;1、2、4、5、6、22、23、33、36、38、
C.I.Reactive Blue;2、3、4、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236、
C.I.Reactive Green;8、12、15、19、21、
C.I.Reactive Brown;2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46、
C.I.Reactive Black 5、8、13、14、31、34、39、
等が挙げられる。
【0076】
〈酸性染料〉
本発明に係る記録インクに好ましく用いられる酸性染料としては、
C.I.Acid Yellow;1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、40:1、42、44、49、59、59:1、61、65、67、72、73、79、99、104、110、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、219:1、220、230、232、235、241、242、246、
C.I.Acid Orange;3、7、8、10、19、22、24、51、51S、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、
C.I.Acid Red;1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、82、88、97、97:1、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415、
C.I.Acid Violet;17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126、
C.I.Acid Blue;1、7、9、15、23、25、40、61:1、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、127:1、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、258、260、264、277:1、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350、
C.I.Acid Green;9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109、
C.I.Acid Brown;2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413、
C.I.Acid Black;1、2、3、24、24:1、26、31、50、52、52:1、58、60、63、63S、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222、
〈直接染料〉
本発明に係る記録インクに好ましく用いられる直接染料としては、
C.I.Direct Yellow;8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、86、87、98、105、106、130、137、142、147、153、
C.I.Direct Orange;6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118、
C.I.Direct Red;2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254、
C.I.Direct Violet;9、35、51、66、94、95、
C.I.Direct Blue;1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291、
C.I.Direct Green;26、28、59、80、85、
C.I.Direct Brown;44、44:1、106、115、195、209、210、212:1、222、223、
C.I.Direct Black;17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169、
〈顔料〉
本発明に係る記録インクに好ましく用いられる顔料としては、
カーボンブラック、
C.I.Pigment Yellow;1、3、12、13、14、16、17、43、55、74、81、83、109、110、120、138、150、
C.I.Pigment Orange;13、16、34、43、
C.I.Pigment Red;2、5、8、12、17、22、23、41、112、114、122、123、146、148、149、150、166、170、220、238、245、258、
C.I.Pigment Violet;19、23、
C.I.Pigment Blue;15、15:1、15:3、15:4、15:5、15:6、29、
C.I.Pigment Brown 22、
C.I.Pigment Black;1、7、
C.I.Pigment White 6、
等が挙げられる。
【0077】
本発明において、記録インク中に含有される色剤の含有量としては、記録インク全質量の0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜13質量%がより好ましい。
【0078】
(水溶性有機溶剤)
本発明に係る記録インクに用いられる水溶性有機溶剤としては、前述の機能性インクに用いるものと同様のものを用いることができる。水溶性有機溶剤の含有量としては、記録インク全質量に対して10〜60質量%であることが好ましい。
【0079】
(界面活性剤)
本発明に係る記録インクにおいて用いられる界面活性剤としては、前述の機能性インクに用いるものと同様のものを用いることができる。
【0080】
これらの界面活性剤を使用する場合、単独または2種類以上を併用することができ、記録インク全質量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲で添加することにより、記録インクの表面張力を任意に調整することができ好ましい。
【0081】
(無機塩)
本発明に係る記録インクにおいては、インク粘度や染料を安定に保ち発色を良くするために、インク中に無機塩を添加することができる。
【0082】
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
(定着樹脂)
本発明に係る記録インクにおいて、色剤として顔料を用いる場合は、顔料を布帛に定着せる為の定着樹脂を含有させることができる。
【0084】
本発明に適用可能な定着樹脂は、インク溶解性樹脂であってもインク分散性樹脂でも用いることができ、また、両者を併用することも好ましい。併用する場合には、インク溶解性樹脂を2〜10質量%、及びインク分散性樹脂を1〜10質量%を含有させ、総量として、記録インク全質量の2〜15質量%とすることが好ましい。
【0085】
インク溶解性樹脂としては、少なくとも記録インクベヒクルに対して10質量%程度の溶解性を有する樹脂が好ましい。インク溶解性樹脂としては、画像の耐久性向上のためのバインダー樹脂としての機能があるため、記録インク中では安定に溶解しているが、布帛に付与、乾燥された後には、耐水性が付与される樹脂であることが好ましい。
【0086】
このような樹脂としては、樹脂中に疎水性成分と親水性成分を所定のバランスで有するものを設計して用いる。この際、親水性成分としては、イオン性のもの、ノニオン性のもののいずれであってもよいが、より好ましくはイオン性のものであり、更に好ましくはアニオン性のものである。特に、アニオン性のものを揮発可能な塩基成分で中和することで水溶性を付与したものが好ましい。
【0087】
本発明において特に好ましく用いることのできる定着樹脂は、カルボキシル基またはスルホン酸基を有する不飽和ビニルをモノマー成分として重合した重合体をアミン類により中和溶解した水溶性共重合物であり、更に、酸価が80〜300mgKOH/gである樹脂が好ましい。
【0088】
このような樹脂としては、例えば、アクリル系、スチレン−アクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系の各樹脂を例示することができる。
【0089】
本発明に好ましく用いられるインク溶解性樹脂としては、疎水性モノマーと親水性モノマーを共重合した樹脂を用いることができる。
【0090】
疎水性モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等)、スチレン等が挙げられる。
【0091】
親水性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等が挙げられる。アクリル酸のような酸性基を有するものは、重合後に塩基で中和したものを好ましく用いることができる。
【0092】
インク溶解性樹脂が有しているカルボキシル基のような酸性基は、部分的あるいは完全に塩基成分で中和することが好ましい。この場合の中和塩基としては、アルカリ金属含有塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等、あるいはアミン類を用いることができる。特にアミン類で中和する態様が好ましく、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジ−n−ブチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−メチルアミノエタノール等を好ましく用いることができる。
【0093】
特に、沸点が200℃未満のアミン類で中和することは、乾燥時にアミン類が揮発し易く、疎水性を速く高めて画像の耐久性向上に寄与することから更に好ましい。
【0094】
本発明において、水溶性共重合物の含有量は、記録インク総質量に対して、1.0〜10質量%であることが好ましく、2.0〜10質量%であると更に好ましい。特に、2.0質量%以上であれば、乾燥時の増粘の程度が十分であり滲みを防止して高画質画像を得ることができる。また、10質量%以下であれば、インクの保存安定性が高く、安定に射出が可能となり、長期に渡って安定にプリントを得ることができる。
【0095】
本発明で好ましく用いられる、酸性基を有するインク溶解性樹脂は、その酸価が80mgKOH/g以上、300mgKOH/g未満であることが更に好ましいが、これによって該樹脂の、乾燥時の粘度増加が顕著になるとともに、乾燥後も強固に固化して、色剤の定着性が良好になる。更に好ましい酸価は、90mgKOH/g以上、250mgKOH/g未満である。本発明でいう酸価は、JIS K0070に準拠して測定できる。
【0096】
インク溶解性樹脂の重合方法としては、溶液重合であることが好ましい。また、インク溶解性樹脂の分子量としては、平均分子量で3000〜30000のものを好ましく用いることができ、より好ましくは7000〜20000である。
【0097】
更に、インク溶解性樹脂のTgは、−30℃〜100℃程度のものを好ましく用いることができ、より好ましくは−10℃〜80℃である。
【0098】
インク分散性樹脂としては、水系で重合された分散物をそのまま、あるいは処理したものを用いてもよいし、溶媒系で重合されたポリマーを水系に分散したものを用いてもよく、アクリル系、ウレタン系、スチレン系、酢酸ビニル系、塩化ビニリデン系、塩化ビニル系、スチレン−ブタジエン系、スチレン−アクリロニトリル系、ポリブタジエン系、ポリエチレン系、ポリイソブチレン系、ポリエステル系等から選択することができる。
【0099】
記録インクの物性として、粘度に対するシェア依存性がないことが好ましく、この観点からポリマー微粒子の分散形態として活性剤などの乳化剤を極力低濃度にするか、乳化剤を用いないソープフリー型の水系分散型ポリマー微粒子が好ましい。
【0100】
好ましい水系分散型ポリマー微粒子は、カルボキシル基を有する不飽和ビニルを少なくとも単量体成分として重合した共重合体の自己分散型ディスパージョンであり、例えば、アクリル酸エチルなどのアクリル系モノマー単独もしくはアクリル系モノマーと共重合し得るエチレン性の不飽和モノマーからなる組成物にカルボン酸モノマーとしてアクリル酸やマレイン酸などを乳化重合もしくは懸濁重合して得られた分散液をアルカリで膨潤後、機械的せん断により粒子を分割して得られるアクリルヒドロゾルである。なお、アクリルヒドロゾルの中でも、樹脂の屈折率を高めて高い光沢感が得られる観点で、モノマー組成にスチレンを含有することが好ましい。
【0101】
前記アルカリとしては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジ−n−ブチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−メチルアミノエタノールなどのアミンであることが好ましく、アンモニア、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール及び2−メチルアミノエタノールを用いることが、水系分散型ポリマー微粒子の分散安定性において得に好ましい。
【0102】
前記アクリルヒドロゾルとしては、例えば、ジョンソンポリマー株式会社のジョンクリルなどが市販されている。
【0103】
水系分散型ポリマー微粒子のガラス転移温度(Tg)は、35℃以上であることが画像の耐擦過性を高める観点から好ましく、より好ましくは49℃以上である。Tgの上限は特に制限されるものではないが、概ね100℃未満であれば柔軟なインク皮膜を得ることができ、プリント物の折り曲げ等による画像のひび割れ故障を防止できる。水系分散型ポリマー微粒子の酸価は44mgKOH/g以上、より好ましくは60mgKOH/g以上であることが、インク乾燥皮膜の良好な再分散・溶解性が得られる点で好ましい。酸価の上限は特に制限されるものではないが、より安定な分散物を得やすい観点で、110mgKOH/g未満が好ましい。
【0104】
水系分散型ポリマー微粒子の平均粒子径は、インクジェットヘッドのノズルにおける目詰まりがなく、良好な光沢感が得られる点で300nm以下であることが好ましく、より好ましくは130nm以下である。平均粒子径の下限は、微粒子の製造安定性の観点から30nm以上が好ましい。なお、水系分散型ポリマー微粒子の平均粒子径は、光散乱方式やレーザードップラー方式を用いた市販の測定装置を使用して簡便に計測することが可能である。また、水系分散型ポリマー微粒子の分散物を凍結乾燥し、透過型顕微鏡で観察される粒子から平均粒子径を換算することもできる。該インク分散性樹脂の含有量は、インク総量に対して、1〜10質量%であることが好ましい。
【0105】
(その他添加剤)
本発明に係る記録インクにおいて、インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加することができる。防腐剤、防黴剤としては、例えば、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK、バイエル社製)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL、アビシア社製)などが挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
(色剤の分散)
本発明に係る記録インクにおいて、色剤として分散染料または顔料を用いる場合、色剤、分散剤、湿潤剤、媒体及び任意の添加剤を混合した後、分散機を用いて、微細粒子に分散することができる。分散機としては、従来公知の分散手段、例えば、ボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等が使用できる。
【0107】
分散染料または顔料の平均粒径としては、平均粒径として300nm以下、最大粒径として900nm以下が好ましい。平均粒径や最大粒径が上記で規定する範囲を超えると、微細なノズルより出射するインクジェット捺染方法において、目詰まりが発生しやすくなり、安定出射できなくなるためである。平均粒子径は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機により求めることができる。具体的粒径測定装置としては、例えばマルバーン社製ゼーターサイザーNano−S90等を挙げることができる。
【0108】
本発明に係るインクに好ましく用いられる分散剤は、例えば、クレオソート油スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物(例えば、デモールC、花王社製)、クレゾールスルホン酸ナトリウムと2−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、フェノールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β−ナフタリンスルホン酸ナトリウム(例えば、デモールN、花王社製)とβ−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩(例えば、バニレックスRN、日本製紙ケミカル社製)、パラフィンスルホン酸ナトリウム(例えば、エフコール214、松本油脂製薬社製)、α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合物(例えば、フローレンG−700、共栄社化学社製)、アクリル系の高分子活性剤(例えば、ジョンクリル・シリーズ、BASF社製)等が挙げられる。
【0109】
分散剤の使用量は、色剤に対して20〜200質量%が好ましい。分散剤が少ないと微粒子化が困難となり、また分散安定性も低下し、分散剤が多すぎると、微粒子化や分散安定性が劣り、粘度が高くなり好ましくない。これらの分散剤は単独で使用してもよいが、併用しても良い。
【0110】
本発明において、色剤の分散に好ましい湿潤剤とは、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、2−エチルヘキシルスルホ琥珀酸ソーダ、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、フェノールの酸化エチレン付加物、アセチレンジオールの酸化エチレン付加物等である。
【0111】
使用する色剤の構造により、分散中に、発泡したり、ゲル化したり、流動性が悪くなることがあるので、分散剤や湿潤剤の選択は、湿潤能力、微粒子化能力や分散安定性の他、分散時の発泡性、分散液のゲル化、分散液の流動性等を考慮して選定する必要がある。また、分散剤や湿潤剤は、布帛への染色性、染着率、均染性、移染性、色の冴え、堅牢度などに及ぼす影響や、高温で発色させる際には分散剤や湿潤剤のタール化により染色が不均一になること等も考慮して選定されることが好ましい。上記の要求を全て満たす分散剤は無いので、分散する色剤に合わせて、最適な分散剤を選定して、必要に応じて、消泡剤等を添加する必要がある。
【0112】
《布帛》
本発明において、インクジェット捺染方法で使用する布帛を構成する素材としては、色剤で染色可能な繊維を含有するものであれば、特に制限はないが、中でも、綿、絹、麻、羊毛、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維、ポリエステル繊維及びこれらの混紡から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。また、本発明で使用することのできる布帛としては、色剤で染色可能な繊維が100%であることが好適であるが、混紡織布または混紡不織布等も捺染用布帛として使用することができる。また、上記の様な布帛を構成する糸の太さとしては、10〜100dの範囲が好ましい。
【0113】
本発明においては、均一な染色物を得るため、布帛繊維に付着した天然不純物(油脂、ロウ、ペクチン質、天然色素等)、布帛製造過程で用いた薬剤の残留分(のり剤等)、汚れ等をあらかじめ洗浄しておくことが望ましい。洗浄に用いられる洗浄剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムといったアルカリ、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤といった界面活性剤、酵素等が用いられる。
【0114】
《インクジェット捺染方法》
本発明の布帛に印字を行うインクジェット捺染方法は、インク出射後、印字された布帛を巻き取り、加熱により発色し(発色工程)、布帛を洗浄、乾燥させることが望ましい。インクジェット捺染方法において、インクを布帛に印字した後、ただ放置しておくだけではうまく染着しない。また、長尺の布帛に長時間印字し続ける場合等は、布帛が延々と出てくるため、床等に印字した布帛が重なっていき場所を占めると共に、それは不安全でありまた予期せず汚れてしまう場合がある。そのために印字後に布帛を巻き取る操作が必要となる。この操作時に、布帛と布帛の間に紙や布、ビニルフィルム等の印字に関わらない媒体を挟む方法を採ることもできる。ただし、途中で切断する場合や短い布帛を用いる場合には、必ずしも巻き取る必要はない。
【0115】
インクジェット捺染方法における発色工程とは、プリント後、布帛の表面に付着したのみの状態で、十分に布帛に吸着・固着されていないインク中の色剤を、布帛に確実に吸着あるいは固着させることにより、そのインク本来の色相を発現させる工程である。その方法としては、蒸気によるスチーミング、乾熱によるベーキング、サーモゾル、過熱蒸気によるHTスチーマー、加圧蒸気によるHPスチーマー等が利用される。それらは、プリントする素材、インク等により適宜選択される。また、印字された布帛は直ちに加熱処理しても、しばらくおいてから加熱処理しても、用途に合わせて乾燥・発色処理すればよく、本発明においては、いずれの方法を用いてもよい。
【0116】
本発明のインクジェット捺染方法において、分散染料を用いた染色の際は、高温で発色させる方法だけではなく、キャリヤーを用いてもよい。キャリヤーとして用いられる化合物は、染色促進が大きく、使用法が簡便、安定で、人体や環境に対して負荷が少なく、繊維からの除去が簡単で、染色堅牢度に影響しないといった特徴を備えた化合物を用いることが好ましい。キャリヤーの例としては、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、メチルナフタリン、安息香酸アルキル、サリチル酸アルキル、クロロベンゼン、ジフェニルといったフェノール類、エーテル類、有機酸類、炭化水素類等を挙げることができる。これらは、ポリエステルのように100℃前後の温度で染色が難しい難染性繊維の膨潤と可塑化を促進し、分散染料を繊維内に入りやすくする効果を有する。キャリヤーは、インクジェットプリントに使用する布帛の繊維にあらかじめ吸着させておいてもよいし、機能性インクあるいは記録インク中に含まれていてもよい。
【0117】
色剤に染料を用いる場合、加熱処理後には洗浄工程が必要である。なぜならば、染着に関与しなかった染料が残留することで、色の安定性が悪くなり、堅牢度が低下するからである。また、布帛に施した機能性インクを除去することも必要である。そのままにしておくと堅牢性の低下ばかりでなく、布帛が変色する。そのため、除去対象物や目的に応じた洗浄が必須である。その方法は、プリントする素材、インクにより選択され、例えば、ポリエステルの場合、一般的には、苛性ソーダ、界面活性剤、ハイドロサルファイトの混合液により処理する方法が用いられる。この方法は、通常、オープンソーパーなどの連続型や液流染色機等によるバッチ型で実施されるもので、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
【0118】
洗浄後は、乾燥が必要である。洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。赤外線ヒーター等も使用できる。
【0119】
《インクジェット捺染装置)
本発明のインクジェット捺染方法に適用可能なインクジェット捺染装置の一例について説明する。
【0120】
(インクジェットヘッド)
本発明のインクジェット捺染方法においては、機能性インクをインクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう)を用いて布帛上に付与することができる。機能性インクをヘッドで付与することで、必要な部位に必要量を均一にムラなく付与することができる。
【0121】
機能性インクを布帛に付与するのに用いるヘッドは、記録インクを付与するヘッドを搭載したキャリッジと別キャリッジに搭載することもできるし、同一のキャリッジに搭載することもできる。別キャリッジに機能性インクを付与するヘッドを搭載する場合は、機能性インクを付与した後、記録インクを付与するまでの間に、布帛に付与した機能性インクを乾燥する乾燥装置を設けることが好ましい。また、同一のキャリッジに機能性インクを付与するヘッドと記録インクを付与するヘッドとを搭載する場合は、乾燥装置をキャリッジに搭載することが好ましい。
【0122】
機能性インク及び記録インクの吐出に用いるヘッドとしては、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式などさまざまな方法から選択することができる。ピエゾ方式、コンティニュアス方式は高分子材料を含むインクなどでも安定に射出する可能性が高く好ましい、特にピエゾ方式は小型で集積度が高く好ましい。
【0123】
(乾燥手段)
本発明に適用可能なインクジェット捺染装置においては、布帛上に機能性インクを付与した後、布帛を乾燥する乾燥手段を有していることが好ましい。
【0124】
本発明において、機能性インクの乾燥工程においては、付与された機能性インクの機能を最大限に発現する程度まで乾燥することが好ましい。多くの場合、機能性インクの付与により、後続の記録インクでの記録と合わせて、総インク量が増えて、それによりにじみが発生しやすくなるため、可能な限り、布帛に付与された機能性インクの水分及び有機溶剤を、記録インクを付与する前に、乾燥により除くことが好ましい。本発明においては、布帛の表面温度を30℃から80℃の範囲で、布帛や機能性インクの組成毎に適した温度設定をすることが好ましい。
【0125】
上記乾燥工程においては、乾燥により機能性インクが保持していた水分や有機溶剤がプリンター内部に充満すると、乾燥速度が低下するだけでなく、プリンター内部のセンサーなどの電気系統が腐食などを起こす可能性があるので、これらの揮発成分はプリンター外部に、順次排出することが好ましい。例えば、排気塔を設け、ファン等を利用し強制的に排出する方法を適用することが好ましい。
【0126】
本発明に使用するインクジェット捺染装置において適用可能な乾燥手段の具体的な方法としては、温度制御可能な風または温風による乾燥手段、ホットプレートを用いた乾燥手段、可視光或いは遠赤外光を用いた乾燥手段、ヒートローラーを用いた乾燥手段、マイクロ波を照射する手段を用いた乾燥手段等を適宜選択して用いることができる。
【0127】
(インクジェット捺染装置の構成)
以下、図を用いて上記説明した本発明に適用可能なインクジェット捺染装置の具体的な構成について説明するが、本発明は、これら例示する構成にのみ限定されるものではない。
【0128】
図1は、インクジェット捺染装置の構成の一例を示す部分概略図である。
【0129】
図1は、インクジェット捺染装置の粘着性ベルトと1、粘着性ベルトを駆動するローラー3と、機能性インクを付与するインクジェットヘッド5Aを搭載したキャリッジと、布帛に機能性インクを付与した後に布帛を乾燥する乾燥手段6Aと、布帛に記録インクを付与するインクジェットヘッドを搭載したキャリッジ5Bと、布帛に記録インクを付与した後に布帛を乾燥する乾燥手段6Bのみを示したものであり、本発明に用いることができるインクジェット捺染装置においては、その他に、機能性インク及び記録インクを付与するための制御手段等を備えている。
【0130】
図1において、粘着性ベルト1は、サポートロール2、搬送ロール3に保持され、無端基材ベルト上に粘着手段、特に好ましくは地貼り剤を有する粘着性ベルトである。
【0131】
右方向より搬送された布帛Pは、ニップロール4と粘着性ベルト1とで狭持され、粘着性ベルト1に固定される。次いで、機能性インクを、キャリッジ5Aに搭載された機能性インク吐出用ヘッドより布帛上に付与した後、温度制御可能な風または温風を吹き付ける手段であり、内部にファン7A及び発熱体8Aを備えた乾燥手段6Aにより、付与した機能性インクを乾燥する。次いで、記録インクを、キャリッジ5Bに搭載された記録インク吐出用ヘッドより布帛上に付与して画像形成を行った後、乾燥手段6Bにより布帛を乾燥する。
【0132】
図2は、図1に示すインクジェット捺染装置のキャリッジ5Aを上方から見た部分概略図である。
【0133】
図2において、図面では上側から搬送されてきた布帛に、機能性インク吐出用ヘッドにより機能性インクが付与される。図において、PTが機能性インク吐出用ヘッドを表し、X1はキャリッジの主走査方向を表し、X2は布帛の搬送方向を表す。
【0134】
図3は、図1に示すインクジェット捺染装置の記録インク吐出用のキャリッジ5Bを上方から見た部分概略図である。
【0135】
図3において、図面上側から搬送されてきた布帛に、記録インク吐出用ヘッドにより記録インクが付与される。C、M、Y、Kはそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックインクに対応した記録インク吐出用ヘッドを示す。X1は同じくキャリッジの主走査方向を表し、X2は布帛の搬送方向を表す。
【0136】
図4は、インクジェット捺染装置の構成の別の一例を示す部分概略図である。
【0137】
図4に示すインクジェット捺染装置は、上記図1に示したインクジェット捺染装置に対し、機能性インクを付与するインクジェットヘッドと、記録インクを付与するインクジェットヘッドを同一のキャリッジ5に搭載した例である。キャリッジ5が機能性インクを付与するインクジェットヘッドと、記録インクを付与する記録インク吐出用ヘッドを共に搭載している。この例では、キャリッジ5やその駆動手段等を1セット用意すれば済むため、インクジェット捺染装置の構造をシンプルかつコンパクトにすることができる。
【0138】
図5は、図4に示すインクジェット捺染装置のキャリッジ5を上から見た部分概略図である。キャリッジ上には記録インク吐出用ヘッドC〜Yと機能性インク吐出ヘッドPTが配置されている。
【0139】
図5において、図面上側から搬送されてきた布帛に、記録インク吐出用ヘッドより上流側に配置された機能性インク吐出用ヘッドにより、機能性インクが付与された後、キャリッジ両側に乾燥手段として設けられた遠赤外線ヒーターIRにより乾燥される。次いで、記録インク吐出用ヘッドにより記録インクが布帛に付与された後、機能性インクと同様に遠赤外線ヒーターIRにより乾燥される。尚、図において、X1は同じくキャリッジの主走査方向を表し、X2は布帛の搬送方向を表す。
【実施例】
【0140】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0141】
《記録インクの調製》
〔反応性染料インクの調製〕
(反応性染料インクRYの調製)
下記の各構成材料を攪拌、混合して溶解させた後、0.8μmフィルターでろ過し、次いで脱気処理を行って、反応性染料インクRYを調製した。
【0142】
Y染料:C.I.Reactive Yellow 95 13部
エチレングリコール 10部
プロピレングリコール 25部
グリセリン 3部
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製)
0.1部
イオン交換水 48.9部
(反応性染料インクRM、反応性染料インクRC、反応性染料インクRBkの調製)
上記反応性染料インクRYの調製において、反応性染料であるC.I.Reactive Yellow 95を、下記の各反応性染料に変更した以外は同様にして、反応性染料インクRM、反応性染料インクRC、反応性染料インクRBkの調製を調製した。
【0143】
〈反応性染料インクRM〉
M染料:C.I.Reactive Red 24
〈反応性染料インクRC〉
C染料:C.I.Reactive Blue 72
〈反応性染料インクRBk〉
Bk染料:C.I.Reactive Black 8
〔酸性染料インクの調製〕
(酸性染料インクAYの調製)
下記の各構成材料を攪拌、混合して溶解させた後、0.8μmフィルターでろ過し、次いで脱気処理を行って、酸性染料インクAYを調製した。
【0144】
Y染料:C.I.Acid Yellow 79 5部
ジエチレングリコール 15部
グリセリン 15部
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製)
0.3部
イオン交換水 64.7部
(酸性染料インクAM、酸性染料インクAC、酸性染料インクABkの調製)
上記酸性染料インクAYの調製において、酸性染料であるC.I.Acid Yellow 79を、下記の各酸性染料に変更した以外は同様にして、酸性染料インクAM、酸性染料インクAC、酸性染料インクABkを調製した。
【0145】
〈酸性染料インクAM〉
M染料:C.I.Acid Red 249
〈酸性染料インクAC〉
C染料:C.I.Direct Blue 87
〈酸性染料インクRBk〉
Bk染料:C.I.Acid Black 52:1
〔分散染料インクの調製〕
(染料分散液の調製)
〈染料分散液Y1の調製〉
下記各構成材料を、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で85%充填したサンドグラインダーを用いて分散して、染料分散液Y1を調製した。分散は、平均粒径が200nmに到達したところで停止した。
【0146】
Y分散染料:C.I.Disperse Yellow 127 25部
グリセリン 25部
イオン交換水 25部
分散剤A(リグニンスルホン酸ナトリウム、バニレックスRN、日本製紙ケミカル社製) 12部
分散剤B(フローレンG−700、共栄社化学社製) 3部
〈染料分散液M1、染料分散液C1、染料分散液K1の調製〉
上記染料分散液Y1の調製において、分散染料であるC.I.Disperse Yellow 127を、下記の各分散染料に変更した以外は同様にして、染料分散液M1、染料分散液C1、染料分散液K1を調製した。
【0147】
〈染料分散液M1〉
M分散染料:C.I.Disperse Red 32
〈染料分散液C1〉
C分散染料:C.I.Disperse Blue 27
〈染料分散液K1〉
K分散染料:C.I.Disperse Black 7
(分散染料インクDYの調製)
下記の各構成材料を攪拌、混合して溶解させた後、0.8μmフィルターでろ過し、次いで脱気処理を行って、分散染料インクDYを調製した。
【0148】
染料分散液Y1 40部
エチレングリコール 40部
ジエチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム 0.1部
防黴剤:プロキセルGXL S(アビシア社製) 0.1部
イオン交換水 19.8部
(分散染料インクDM、分散染料インクDC、分散染料インクDBkの調製)
上記分散染料インクDYの調製において、染料分散液Y1に代えて、それぞれ染料分散液M1、染料分散液C1、染料分散液K1を用いた以外は同様にして、分散染料インクDM、分散染料インクDC、分散染料インクDBkを調製した。
【0149】
〔顔料インクの調製〕
(顔料分散液の調製)
〈顔料分散液Y2の調製〉
下記各構成材料を、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で85%充填したサンドグラインダーを用いて分散して、顔料分散液Y2を調製した。分散は、平均粒径が120nmに到達したところで停止した。
【0150】
Y顔料:C.I.Pigment Yellow 74 15部
スチレン−アクリル酸共重合体(ジョンクリル678、分子量:8500、酸価:215mgKOH/g) 3部
ジメチルアミノエタノール 1.3部
イオン交換水 80.7部
〈顔料分散液M2、顔料分散液C2、顔料分散液K2の調製〉
上記顔料分散液Y2の調製において、顔料であるC.I.Pigment Yellow 74を、下記の各顔料に変更した以外は同様にして、顔料分散液M2、顔料分散液C2、顔料分散液K2を調製した。
【0151】
〈顔料分散液M2〉
M顔料:C.I.Pigment Red 122
〈顔料分散液C2〉
C顔料:C.I.Pigment Blue 15:3
〈顔料分散液K2〉
K顔料:C.I.Pigment Black 7
(顔料インクPYの調製)
下記の各構成材料を攪拌、混合して溶解させた後、0.8μmフィルターでろ過し、次いで脱気処理を行って、顔料インクPYを調製した。
【0152】
顔料分散液Y2 27部
水溶性共重合物水溶液(水溶性共重合物含有量:20質量%、下記参照)
17部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 8部
1,2−ヘキサンジオール 6部
ジエチレングリコール 12部
KF−351A(シリコン系界面活性剤、信越化学工業社製) 0.6部
イオン交換水 29.4部
〈水溶性共重合物水溶液の調製〉
滴下ロート、窒素導入官、還流冷却官、温度計及び攪拌装置を備えたフラスコにメチルエチルケトンの50gを加え、窒素ガスでバブリングしながら、75℃に加温した。そこへ、メタクリル酸n−ブチルの80g、アクリル酸の20g、メチルエチルケトンの50g、重合開始剤(AIBN:アゾビスイソブチロニトリル)の500mgからなる混合物を、滴下ロートより3時間かけ滴下した。滴下後、さらに6時間加熱還流した。放冷後、減圧下で加熱し、メチルエチルケトンを留去して、重合物残渣を得た。
【0153】
次いで、イオン交換水450mlに対して、モノマーとして添加したアクリル酸の1.05倍モル相当のジメチルアミノエタノールを溶解し、そこへ上記重合物残渣を添加して溶解した。次いで、イオン交換水で濃度を調整し、水溶性共重合物の含有量が20質量%である水溶性共重合物(酸価117mgKOH/g)の水溶液を得た。
【0154】
(顔料インクPM、顔料インクPC、顔料インクPBkの調製)
上記顔料インクPYの調製において、顔料分散液Y2に代えて、それぞれ顔料分散液M2、顔料分散液C2、顔料分散液K2を用いた以外は同様にして、顔料インクPM、顔料インクPC、顔料インクPBkを調製した。
【0155】
〔記録インクの保存〕
上記調製した各インクは、気体透過性のある中空糸膜(三菱レーヨン製)内にインクを通液し、中空糸膜の外表面側を水流アスピレータで減圧することにより、インク中の溶存気体を除去した。脱気後は、これらのインクを真空パックに充填し、空気の混入を防いだ。
【0156】
《機能性インクの調製》
〔反応性染料インク用の機能性インクPT−1〜PT−16の調製〕
表1の記載の構成からなる反応性染料インク用の機能性インクPT−1〜PT−16を以下の手順で調製した。
【0157】
所定量のイオン交換水に、炭酸カリウム、2−イミダゾリジノン、各防錆剤、プロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びポリエチレングリコール6000をこの順に溶解させた後、0.8μmフィルターでろ過し、機能性インクPT−1〜PT−16を調製した。
【0158】
【表1】

【0159】
〔酸性染料インク用の機能性インクPT−17〜PT−32の調製〕
表2の記載の構成からなる酸性染料インク用の機能性インクPT−17〜PT−32を以下の手順で調製した。
【0160】
所定量のイオン交換水に、トリポリリン酸ナトリウム、2−イミダゾリジノン、各防錆剤、プロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール6000及びレジスターリキッドをこの順に溶解させた後、0.8μmフィルターでろ過し、機能性インクPT−17〜PT−32を調製した。
【0161】
【表2】

【0162】
〔分散染料インク用の機能性インクPT−33〜PT−48の調製〕
表3の記載の構成からなる分散染料インク用の機能性インクPT−33〜PT−48を以下の手順で調製した。
【0163】
所定量のイオン交換水に、クエン酸、2−イミダゾリジノン、各防錆剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)−2Na、プロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びポリエチレングリコール6000をこの順に溶解させた後、0.8μmフィルターでろ過し、機能性インクPT−33〜PT−48を調製した。
【0164】
【表3】

【0165】
〔顔料インク用の機能性インクPT−49〜PT−64の調製〕
表4の記載の構成からなる顔料インク用の機能性インクPT−49〜PT−64を以下の手順で調製した。
【0166】
所定量のイオン交換水に、クエン酸、各防錆剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)−2Na、エチレングリコール及びグリセリンをこの順に溶解させた後、0.8μmフィルターでろ過し、機能性インクPT−49〜PT−64を調製した。
【0167】
【表4】

【0168】
なお、表1〜表4において、略称で記載した各添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0169】
〈一般添加剤〉
STP:トリポリリン酸ナトリウム(有効成分57質量%、関東化学社製)
PG:プロピレングリコール
TEGBE:トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチセノール30、協和発酵ケミカル社製)
EG:エチレングリコール
Gly:グリセリン
PEG:ポリエチレングリコール6000
RL:レジスターリキッド(メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液、センカ社製)
EDTA−2Na:エチレンジアミン四酢酸・2Na
〈防錆剤〉
W−410:キレスライトW−410(脂肪酸塩を主成分とする防錆剤、有効成分35質量%、キレスト社製)
W−511:キレスライトW−511(有機酸アミン塩を主成分とする防錆剤、有効成分45質量%、キレスト社製)
PL:ラウリン酸カリウム
SS:セバシン酸ナトリウム
OA・TEA:オレイン酸・トリエタノールアミン塩
SB:安息香酸ナトリウム(Sodium Benzoate)
防錆剤1:p−tert−ブチル安息香酸・トリエタノールアミン塩
SN:亜硝酸ナトリウム(Sodium Nitrite)
TEA:トリエタノールアミン
A308:アミート308(ポリオキシエチレンステアリルアミン、花王社製)
Q24P:コータミン24P(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、有効成分27質量%、花王社製)
A24B:アンヒトール24B(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、有効成分27質量%、花王社製)
BTZ:ベンゾトリアゾール
実施例1
〔機能性インクの準備〕
上記調製した機能性インクPT1〜PT16の各1Lを、ポリ瓶に分取し、各々に厚さ1mmで10cm×10cmサイズのSUS430片を入れて密栓し、60℃の恒温槽で2週間保管した。また、SUS430の代わりに42合金(42%のニッケルを含有するニッケル−鉄合金)を用いたものを同様に調製し、60℃の恒温槽で同じく2週間保管した。その後、それぞれを恒温槽から取り出し、各機能性インクを室温まで冷却した後、0.8μmフィルターでろ過し、次いで脱気処理を行った。脱気処理は、気体透過性のある中空糸膜(三菱レーヨン製)内にインクを通液し、中空糸膜の外表面側を水流アスピレータで減圧することにより、インク中の溶存気体を除去した。脱気後は、これらの機能性インクを真空パックに充填し、空気の混入を防いだ。
【0170】
〔プリント試料1〜16の作製〕
図1〜図3に記載の構成からなるインクジェット捺染装置を用いプリント試料を作製した。
【0171】
まず、図1に記載のキャリッジ5Aの機能性インク吐出用ヘッドに、上記方法に従って準備した各機能性インクを装填し、キャリッジ5Bの記録インク吐出用ヘッドに、記録インクとして前記調製した反応性染料インクRY、RM、RC、RBkを装填した。
【0172】
次に、布帛Pとしてコットン200を、図1の矢印方向に搬送しつつ、キャリッジ5Aの機能性インク吐出用ヘッドから各機能性インクを12ml/mの付量となるように布帛全面に一様に付与した後、温風付与手段6Aにより乾燥させた。
【0173】
続いて、キャリッジ5Bの記録インク吐出用ヘッドから各記録インクを布帛に付与して、白地部分の面積が布帛全体の50%となるよう絵柄をプリントした後、温風付与手段6Bにより乾燥させた。記録インクの付量は単色ベタ画像において9ml/mとなるよう、それぞれの記録インクの吐出量を調整した。また、機能性インクが布帛に付与されてから、同じ位置に記録インクが付与されるまでの間隔が、60秒となるように、キャリッジ5Aとキャリッジ5Bの間隔及び布帛Pの搬送速度を調整した。
【0174】
次いで、プリント済の布帛Pを、温度100℃で15分間のスチーミング処理を行った後、水洗し、60℃にてソーピング処理を行い、更に水洗を行った後乾燥して、プリント試料1〜16を得た。
【0175】
〔プリント試料の評価〕
各試料の作製において、上記スチーミング処理の直後、及びソーピング処理に次ぐ水洗の直後に、布帛白地部分の着色状態を目視観察し、下記評価基準に基づいて評価した。得られた結果を、表5に示す。
【0176】
◎:白地部分に全く着色が認められない
○:白地部分に僅かに着色が認められる
△:白地部分にやや着色が認められるが、実用上許容されるレベルである
×:白地部分に明らかな着色が認められ、実用上問題となる品質である
【0177】
【表5】

【0178】
表5に記載の結果より明らかなように、本発明の機能性インクと反応性染料インクを用いて作製したプリント物は、比較例に対し、金属部材腐食に起因する布帛白地部分の着色の発生が抑制されていることが分かる。
【0179】
実施例2
〔プリント試料17、18の作製〕
図4、5に示す機能性インク吐出用ヘッドと記録インク吐出用ヘッドを同一キャリッジ上に有するインクジェット捺染装置を用いプリント試料17、18を作製した。なお、図示されていないが、インクジェット捺染装置の機能性インク流路系の内、柔軟性を求められる部分以外はSUS430製の配管を使用した。
【0180】
はじめに、キャリッジ5の機能性インク吐出用ヘッドPTに機能性インクを導入し、記録インク吐出用ヘッドC、M、Y及びKに、記録インクとして前述の反応性染料インクRY、RM、RC、RBkを導入した。機能性インクとしては、前記調製した機能性インクPT−1とPT−16を使用した。
【0181】
次に、布帛Pとしてコットン200を使用し、布帛Pを図4に示す矢印方向に搬送しつつ、キャリッジ5の機能性インク吐出用ヘッドPTから機能性インクを、後述する記録インクにより形成する絵柄の輪郭よりも2〜3mm広くなる様に像様に付与した後、遠赤外ヒーターIRを用いて乾燥させた。機能性インクの付量は、布帛全面に均一に付与した場合に12ml/mとなるように調整した。
【0182】
続いて、記録インク吐出用ヘッドC、M、Y及びKから記録インクを布帛に付与して、白地部分の面積が布帛全体の50%となるよう絵柄をプリントした後、遠赤外ヒーターIRにより乾燥させた。記録インクの付量は単色ベタ画像において9ml/mとなるように調整した。また、機能性インクが布帛に付与されてから、同じ位置に記録インクが付与されるまでの間隔が10秒となるように、機能性インク吐出用ヘッドと記録インク吐出用ヘッドとの間隔aを調整した。
【0183】
この様な条件で、1日当たり8時間の稼働時間で、1ヶ月間連続してプリントを行った。なお、1時間当たりのプリント量は約20mとした。
【0184】
次いで、1ヶ月目のプリント済の布帛を温度100℃で15分間スチーミング処理を行い、水洗後、60℃にてソーピング処理を行い、更に水洗を行った後乾燥して、プリント試料を得た。
【0185】
〔プリント試料の評価〕
実施例1に記載の方法と同様にして、布帛白地部分の着色の評価を行い、得られた結果を、表6に示す。
【0186】
【表6】

【0187】
表6に記載の結果より明らかなように、本発明の機能性インクと反応性染料インクを用いて作製したプリント物は、比較例に対し、インクジェット捺染装置の機能性インク流路系に金属製の配管を用いても、布帛白地部分の着色の発生が抑制されていることが分かる。
【0188】
実施例3
〔機能性インクの準備〕
上記調製した機能性インクPT17〜PT32の各1Lを、ポリ瓶に分取し、各々に厚さ1mmで10cm×10cmサイズのSUS430片を入れて密栓し、60℃の恒温槽で2週間保管した。また、SUS430の代わりに42合金(42%のニッケルを含有するニッケル−鉄合金)を用いたものを同様に調製し、60℃の恒温槽で同じく2週間保管した。その後、それぞれを恒温槽から取り出し、各機能性インクを室温まで冷却した後、0.8μmフィルターでろ過し、次いで脱気処理を行った。脱気処理は、気体透過性のある中空糸膜(三菱レーヨン製)内にインクを通液し、中空糸膜の外表面側を水流アスピレータで減圧することにより、インク中の溶存気体を除去した。脱気後は、これらの機能性インクを真空パックに充填し、空気の混入を防いだ。
【0189】
〔プリント試料19〜34の作製〕
記録インクとして、前記調製した酸性染料インクAY、AM、AC、ABkを用い、実施例1に記載の方法と同様にして、各機能性インク及び記録インクを布帛に付与し、乾燥させた。
【0190】
次いで、プリント済の布帛を温度100℃で30分間スチーミング処理を行い、水洗後、40℃にてソーピング処理を行い、更に水洗を行った後乾燥して、プリント試料19〜34を得た。
【0191】
〔プリント試料の評価〕
上記作製した各プリント試料に対し、実施例1に記載の方法と同様にして、プリント試料の白地部の着色について評価を行い、得られた結果を表7に示す。
【0192】
【表7】

【0193】
表7に記載の結果より明らかなように、本発明の機能性インクと酸性染料インクを用いて作製したプリント物は、比較例に対し、金属部材腐食に起因する布帛白地部分の着色の発生が抑制されていることが分かる。
【0194】
実施例4
〔プリント試料35、36の作製〕
記録インクとして前述の酸性染料インクAY、AM、AC、ABkを、機能性インクとして前述の機能性インクPT−17とPT−32を用い、実施例2に記載の方法と同様にして、1ヶ月間連続してプリントを行った。
【0195】
次いで、1ヶ月目のプリント済の布帛を温度100℃で30分間スチーミング処理を行い、水洗後、40℃にてソーピング処理を行い、更に水洗を行った後乾燥して、プリント試料35、36を得た。
【0196】
〔プリント試料35、36の評価〕
実施例2に記載の方法と同様にして、上記作製したプリント試料35、36の評価を行い、得られた結果を表8に示す。
【0197】
【表8】

【0198】
表8に記載の結果より明らかなように、本発明の機能性インクと酸性染料インクを用いて作製したプリント物は、比較例に対し、インクジェット捺染装置の機能性インク流路系に金属製の配管を用いても、布帛白地部分の着色の発生が抑制されていることが分かる。
【0199】
実施例5
〔機能性インクの準備〕
上記調製した機能性インクPT33〜PT48の各1Lを、ポリ瓶に分取し、各々に厚さ1mmで10cm×10cmサイズのSUS430片を入れて密栓し、60℃の恒温槽で2週間保管した。また、SUS430の代わりに42合金(42%のニッケルを含有するニッケル−鉄合金)を用いたものを同様に調製し、60℃の恒温槽で同じく2週間保管した。その後、それぞれを恒温槽から取り出し、各機能性インクを室温まで冷却した後、0.8μmフィルターでろ過し、次いで脱気処理を行った。脱気処理は、気体透過性のある中空糸膜(三菱レーヨン製)内にインクを通液し、中空糸膜の外表面側を水流アスピレータで減圧することにより、インク中の溶存気体を除去した。脱気後は、これらの機能性インクを真空パックに充填し、空気の混入を防いだ。
【0200】
〔プリント試料37〜52の作製〕
記録インクとして、前記調製した分散染料インクDY、DM、DC、DBkを用い、実施例1に記載の方法と同様にして、各機能性インク及び記録インクを布帛に付与し、乾燥させた。
【0201】
次いで、プリント済の布帛を温度130℃で30分間スチーミング処理を行い、水洗後、80℃にてソーピング処理を行い、更に水洗を行った後乾燥して、プリント試料37〜52を得た。
【0202】
〔プリント試料の評価〕
上記作製した各プリント試料に対し、実施例1に記載の方法と同様にして、プリント試料の白地部の着色について評価を行い、得られた結果を表9に示す。
【0203】
【表9】

【0204】
表9に記載の結果より明らかなように、本発明の機能性インクと分散染料インクを用いて作製したプリント物は、比較例に対し、金属部材腐食に起因する布帛白地部分の着色の発生が抑制されていることが分かる。
【0205】
実施例6
〔プリント試料53、54の作製〕
記録インクとして前述の分散染料インクDY、DM、DC、DBkを、機能性インクとして前述の機能性インクPT−33とPT−48を用い、実施例2に記載の方法と同様にして、1ヶ月間連続してプリントを行った。
【0206】
次いで、1ヶ月目のプリント済の布帛を温度130℃で30分間スチーミング処理を行い、水洗後、80℃にてソーピング処理を行い、更に水洗を行った後乾燥して、プリント試料53、54を得た。
【0207】
〔プリント試料53、54の評価〕
実施例2に記載の方法と同様にして、上記作製したプリント試料53、54の評価を行い、得られた結果を表10に示す。
【0208】
【表10】

【0209】
表10に記載の結果より明らかなように、本発明の機能性インクと分散染料インクを用いて作製したプリント物は、比較例に対し、インクジェット捺染装置の機能性インク流路系に金属製の配管を用いても、布帛白地部分の着色の発生が抑制されていることが分かる。
【0210】
実施例7
〔機能性インクの準備〕
上記調製した機能性インクPT49〜PT64の各1Lを、ポリ瓶に分取し、各々に厚さ1mmで10cm×10cmサイズのSUS430片を入れて密栓し、60℃の恒温槽で2週間保管した。また、SUS430の代わりに42合金(42%のニッケルを含有するニッケル−鉄合金)を用いたものを同様に調製し、60℃の恒温槽で同じく2週間保管した。その後、それぞれを恒温槽から取り出し、各機能性インクを室温まで冷却した後、0.8μmフィルターでろ過し、次いで脱気処理を行った。脱気処理は、気体透過性のある中空糸膜(三菱レーヨン製)内にインクを通液し、中空糸膜の外表面側を水流アスピレータで減圧することにより、インク中の溶存気体を除去した。脱気後は、これらの機能性インクを真空パックに充填し、空気の混入を防いだ。
【0211】
〔プリント試料55〜70の作製〕
記録インクとして、前記調製した顔料インクPY、PM、PC、PBkを用い、実施例1に記載の方法と同様にして、各機能性インク及び記録インクを布帛に付与し、乾燥させた。
【0212】
次いで、プリント済の布帛を温度140℃で1分間加熱、乾燥して、プリント試料55〜70を得た。
【0213】
〔プリント試料の評価〕
上記作製したプリント試料55〜70に対し、実施例1に記載の方法と同様にして、プリント試料の白地部の着色について評価を行い、得られた結果を表11に示す。
【0214】
【表11】

【0215】
表11に記載の結果より明らかなように、本発明の機能性インクと顔料インクを用いて作製したプリント物は、比較例に対し、金属部材腐食に起因する布帛白地部分の着色の発生が抑制されていることが分かる。
【0216】
実施例8
〔プリント試料71、72の作製〕
記録インクとして前述の顔料インクPY、PM、PC、PBkを、機能性インクとして前述の機能性インクPT−49とPT−64を用い、実施例2に記載の方法と同様にして、1ヶ月間連続してプリントを行った。
【0217】
次いで、1ヶ月目のプリント済の布帛を温度140℃で1分間加熱乾燥して、プリント試料71、72を得た。
【0218】
〔プリント試料71、72の評価〕
実施例2に記載の方法と同様にして、上記作製したプリント試料71、72の評価を行い、得られた結果を表12に示す。
【0219】
【表12】

【0220】
表12に記載の結果より明らかなように、本発明の機能性インクと顔料インクを用いて作製したプリント物は、比較例に対し、インクジェット捺染装置の機能性インク流路系に金属製の配管を用いても、布帛白地部分の着色の発生が抑制されていることが分かる。
【符号の説明】
【0221】
1 粘着性ベルト
2 サポートロール
3 搬送ロール
4 ニップロール
5、5A、5B キャリッジ
7、7A、7B ファン
8、8A、8B 発熱体
6、6A、6B 温風付与手段
PT 前処理剤吐出用ヘッド
C、M、Y、K 記録インク吐出用ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、防錆剤を含有する機能性インクと、色剤を含有する記録インクとから構成されることを特徴とする捺染用インクジェットインクセット。
【請求項2】
前記機能性インクが、アルカリ剤または酸化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の捺染用インクジェットインクセット。
【請求項3】
前記防錆剤が、有機酸、有機酸の塩類、アミン類、亜硝酸塩類及びベンゾトリアゾール類から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の捺染用インクジェットインクセット。
【請求項4】
前記機能性インクが、防錆剤を0.1質量%以上、5.0質量%以下含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の捺染用インクジェットインクセット。
【請求項5】
前記機能性インクが、2−イミダゾリジノンを含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の捺染用インクジェットインクセット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の捺染用インクジェットインクセットを用いるインクジェット捺染方法であって、インクジェットヘッドを用いて機能性インクを布帛に付与した後、記録インクを該布帛に付与することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【請求項7】
布帛に付与された前記機能性インクを加熱することにより乾燥した後、前記記録インクを布帛に付与することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項8】
前記機能性インクを加熱乾燥する為の加熱手段が、インクジェットプリンターに搭載されていることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項9】
前記機能性インクを加熱乾燥する為の加熱手段が、インクジェットヘッドが搭載されたキャリッジに搭載されていることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット捺染方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−153754(P2012−153754A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11760(P2011−11760)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】