説明

排ガス処理方法および排ガス処理装置

【課題】有機ハロゲン化合物を長期にわたって効率的に処理することができる排ガス処理方法および排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】有機ハロゲン化合物を含有する排ガスを、排ガス配管12を介して、ガス処理塔24に供給して、有機ハロゲン化合物を分解する分解微生物が担体64に担持された微生物層25と接触させることで、有機ハロゲン化合物を生物学的に除去する。このとき、散布管26から液体76を散布して、微生物層25を湿潤させた状態で排ガス処理を行う。微生物層25に散布された液体76は、ガス処理塔24の底部のタンク28に回収され、脱イオン装置88において脱イオン処理が行われる。脱イオン処理が行われた液体76は、散布管26に循環され、再び微生物層25に散布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ハロゲン化合物を含有する排ガス処理方法および排ガス処理装置に係り、特に微生物を用いて有機ハロゲン化合物を生物学的に分解処理する排ガス処理方法および排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等から大気に排出される有機ハロゲン化合物、例えばジクロロメタン(DCM)を含有する排ガスを処理する方法としては、排ガスを燃焼して無害化する方法、活性炭塔にガスを通過させて活性炭に吸着させる方法等が一般的に知られている。
【0003】
しかし、排ガスを燃焼する方法は補助燃料等を必要としランニングコストが高くなると共に、活性炭吸着方法は定期的に活性炭を交換しなくてはならずメンテナンス上の問題がある。
【0004】
そこで、ランニングコストやメンテナンスの点で有利な排ガス処理方法として、微生物により有機ハロゲン化合物を分解することが考えられる。
【0005】
例えば、排ガス処理技術ではないが、特許文献1には、ジクロロメタンを特異的に分解する微生物を用いて、廃水中のジクロロメタンを生物学的に処理する方法が開示されている。また、特許文献1にはジクロロメタンを特異的に分解する微生物として、Hyphomicrobium sp. DM2、Methylobacterium sp. DM4、Pseudomonas sp.DM5Rが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、有機ハロゲン化合物ではないが、揮発性有機化合物(VOC)を含有する排ガスを、VOCを分解する微生物(VOC分解微生物)が担体に担持された微生物層を有するガス処理塔により処理する方法が開示されている。この方法は、ガス処理塔内の微生物層に排ガスを接触させることで、排ガス中のVOCを生物学的に処理するものである。また、VOC分解微生物の活性を維持するために、一定濃度に調節された栄養剤を含む循環水を微生物層に散布することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO93/22247号公報
【特許文献2】特開2008−114168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、有機ハロゲン化合物を含有する排ガスを連続的に処理すると、有機ハロゲン化合物に由来するハロゲン化水素酸(例えば、塩酸)が発生して、微生物の活性が低下してしまうため、排ガス処理運転を長期にわたって効率的に行うことは難しい。
【0009】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、有機ハロゲン化合物を長期にわたって効率的に処理することができる排ガス処理方法および排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る排ガス処理方法は、有機ハロゲン化合物を含有する排ガスの処理方法であって、前記有機ハロゲン化合物を分解する分解微生物が担体に担持された微生物層に前記排ガスを接触させて、前記排ガスに含まれる前記有機ハロゲン化合物を分解処理する工程と、前記微生物層を湿潤させる液体を、散布手段により前記微生物層に散布する工程と、前記微生物層に散布された前記液体をタンクに回収する工程と、前記タンク内の前記液体の脱イオン処理を行う工程と、前記脱イオン処理が行われた前記液体を前記散布手段に循環させる工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
有機ハロゲン化合物を含有する排ガスを連続的に処理すると、微生物層を湿潤させる液体中の有機ハロゲン化水素酸の濃度が徐々に高くなり、分解微生物の活性が低下してしまう。上記排ガス処理方法によれば、微生物層を湿潤させる液体中のハロゲン化水素酸(例えば、塩酸)を脱イオン処理により分離除去することで、分解微生物の活性低下を抑制して、排ガス処理運転を長期にわたって効率的に行うことができる。
【0012】
なお、排ガス処理の対象である有機ハロゲン化合物としては、例えば、工場等において溶剤として一般的に使用される難分解性のジクロロメタンを挙げることができる。排気ガス中のジクロロメタンを効率的に除去することは大気汚染防止の観点から重要である。
【0013】
上記排ガス処理方法において、前記脱イオン処理を行う工程の前に、前記タンクに回収された前記液体を中和してもよい。
【0014】
上記排ガス処理方法において、前記脱イオン処理は、前記液体の電気伝導度が10000μS/cm以下になるように行われることが好ましい。
【0015】
微生物層を湿潤させる液体の電気伝導度を脱イオン処理で上記範囲に維持することで、微生物層の活性低下を確実に抑制することができる。
【0016】
上記排ガス処理方法において、前記液体は前記分解微生物の培養液であることが好ましい。
【0017】
ガス処理塔の微生物層に分解微生物の培養液を供給することで、分解微生物を活性化して、有機ハロゲン化合物の分解性能を向上させることができる。
【0018】
この場合、前記培養液は、窒素濃度が100ppm以上4000ppm以下であり、リン濃度が100ppm以上3000ppm以下であることが好ましい。
【0019】
上記濃度範囲の窒素及びリンを含む培養液を微生物層に供給することで、分解微生物を効果的に活性化させることができる。
【0020】
上記排ガス処理方法において、前記担体は、活性炭を主成分として含むことが好ましい。
【0021】
分解微生物との親和性が高い活性炭を主成分とする担体を用いることで、有機ハロゲン化合物を効率的に分解することができる。
【0022】
上記排ガス処理方法において、前記分解微生物は、ハイホマイクロビウム(Hyphomicrobium)属の微生物を含むことが好ましい。
【0023】
これにより、ジクロロメタンに代表される難分解性の有機ハロゲン化合物を効率的に分解することができる。
【0024】
本発明に係る排ガス処理装置は、有機ハロゲン化合物を含有する排ガスの処理装置であって、前記有機ハロゲン化合物を分解する分解微生物が担体に担持された微生物層を有するガス処理塔と、前記ガス処理塔に前記排ガスを供給するガス供給手段と、前記微生物層を湿潤させる液体を前記微生物層に散布する散布手段と、前記微生物層に散布された前記液体を回収するタンクと、前記タンクに回収された前記液体に対して脱イオン処理を行う脱イオン手段と、前記脱イオン処理が行われた前記液体を前記散布手段に循環させる循環ポンプとを備えることを特徴とする。
【0025】
上記排ガス処理装置は、前記タンクに回収された前記液体を中和する中和手段を備え、前記脱イオン手段は、前記中和手段により中和された前記液体に対して前記脱イオン処理を行うことが好ましい。
【0026】
上記排ガス処理装置は、前記液体の電気伝導度を測定する測定手段と、前記測定手段の測定結果が10000μS/cm以下になるように、前記脱イオン手段の前記脱イオン処理を制御する制御手段とを備えることが好ましい。
【0027】
上記排ガス処理装置において、前記液体は前記分解微生物の培養液であることが好ましい。
【0028】
上記排ガス処理装置において、前記培養液は、窒素濃度が100ppm以上4000ppm以下であり、リン濃度が100ppm以上3000ppm以下であることが好ましい。
【0029】
上記排ガス処理装置において、前記担体は、活性炭を主成分として含むことが好ましい。
【0030】
上記排ガス処理装置において、前記分解微生物は、ハイホマイクロビウム(Hyphomicrobium)属の微生物を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、有機ハロゲン化合物を含有する排ガスの処理により発生するハロゲン化水素酸(例えば、塩酸)を、脱イオン処理により、微生物層を湿潤させる液体から分離除去することで、分解微生物の活性低下を抑制することができる。これにより、有機ハロゲン化合物を含有する排ガスの処理を長期にわたって効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】排ガス処理装置の一例を示す構成図である。
【図2】電気透析型の脱イオン装置の一例を示す構成図である。
【図3】図1に示す排ガス処理装置の変形例を示す構成図である。
【図4】図1に示す排ガス処理装置の他の変形例を示す構成図である。
【図5】図1に示す排ガス処理装置に、前処理手段の第1例を組み合わせた構成を示す図である。
【図6】図1に示す排ガス処理装置に、前処理手段の第2例を組み合わせた構成を示す図である。
【図7】図1に示す排ガス処理装置に、前処理手段の第3例を組み合わせた構成を示す図である。
【図8】図1に示す排ガス処理装置に、前処理手段の第4例を組み合わせた構成を示す図である。
【図9】培養液の成分組成の一例を示す図である。
【図10】実施例における実験条件と結果とを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る排ガス処理方法および排ガス処理装置について説明する。
【0034】
なお、本発明における有機ハロゲン化合物としては、例えばジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トランス−1,2−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、四塩化炭素、クロロエタン、クロロホルム、塩化ビニル、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、ジクロロブロモエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、ブロモジクロロメタン、クロロジブロモメタン、ブロモホルムなどが挙げられるが、本実施の形態ではジクロロメタンの例で以下に説明する。
【0035】
図1は、排ガス処理装置の一例を示す構成図である。なお、ジクロロメタンを分解する分解微生物をDCM分解微生物と言うことにする。
【0036】
図1に示すように、ジクロロメタンを含有する排ガスは、排ガス配管12を流れてガス処理塔24の下部に供給される。ガス処理塔24の高さ方向中央部には、ジクロロメタンを分解するDCM分解微生物が担体64に担持されたDCM微生物層25が設けられる。DCM微生物層25の下面に簀の子や金網等の多孔性部材を設けることで、DCM微生物層25を保持することができる。DCM分解微生物としては、ハイホマイクロビウム(Hyphomicrobium)属の微生物を好適に使用することができ、ハイホマイクロビウム(Hyphomicrobium)属の微生物を含むコンソーシアム(複数菌の集合体)を使用することが好ましい。
【0037】
担体64に担持されるDCM分解微生物は、純粋培養したものでもよいが通常はDCM分解微生物を含有する活性汚泥を使用すると簡便である。例えば、ジクロロメタンを含有する廃水を処理する処理場の活性汚泥、土壌、湖沼の底泥等を用いてDCM分解微生物を培養した汚泥を好適に使用することができる。
【0038】
DCM分解微生物を担持する担体64としては、表面積が大きく微生物が担持され易い性質、DCM分解微生物と親和性を有する性質のものであることが好ましい。例えば、活性炭や、活性炭と微生物に対して親和性を有するプラスチックとのコンパウンド等のように活性炭をベース材料とした担体が好適である。具体的には、生物親和性の高いPVA(ポリビニルアルコール)のスポンジを基幹としたマイクロブレスHGB10やマイクロブレスHLL10(アイオン(株)製)、同様に生物親和性のPVAを原料としたクラゲール((株)クラレ製)、多孔質プラスチックと活性炭のコンパウンド担体であるACP担体やBCP担体(デンカエンジニアリング(株)製)、活性炭繊維を加工したアドールFMI(ユニチカ(株)製)を好適に採用できる。
【0039】
排ガス配管12からガス処理塔24の内部に供給された排ガス中のジクロロメタンは、DCM微生物層25において、二酸化炭素と水と塩酸(塩化物イオン)とに分解除去される。DCM微生物層25においてジクロロメタンが除去された排ガスは、ガス処理塔24の頂部に設けられた処理配管34から排出される。
【0040】
なお、排ガス処理を長時間行うと、担体64に担持された微生物が増殖して、担体64の表面にバイオフィルム(生物膜)が形成される。バイオフィルムは、ある程度の厚さになると、担体64から自然に剥がれ落ちることもあるが、定期的に担体64の表面から剥離することが好ましい。例えば、図1に示すように、DCM微生物層25内に攪拌翼60を設けて、担体64を攪拌して互いに擦ることにより、バイオフィルムを剥離してもよい。このように、バイオフィルムを担体64から定期的に剥離することで、DCM微生物層25に排ガスの通気路を確保することができる。
【0041】
DCM微生物層25の上面にも簀の子又は金網等の多孔性部材を設けて、DCM微生物層25が一定の層厚みになるようにすることにより、DCM微生物層25の担体64の密度を調整することも好ましい。これにより、排ガスがDCM微生物層25を通気する通気抵抗が小さく、且つ排ガスが生物膜に効率的に接触されるように担体密度を保持することができる。
【0042】
ガス処理塔24の頂部には散布管26が設けられており、散布管26からDCM微生物層に液体76が散布され、DCM微生物層25において、DCM分解微生物の生存に必要な湿潤環境が作られる。なお、DCM微生物層25に散布された液体76は、ガス処理塔24の底部のタンク28に回収され、後述の脱イオン処理が行われた後、循環ポンプ32により、循環配管30を介して、散布管26に返送される。これにより、常にDCM微生物層25を湿潤状態に保つことができる。
【0043】
DCM微生物層25に散布される液体76は、水を含有するものであれば特に限定されないが、DCM分解微生物の培養液であることが好ましい。DCM分解微生物の培養液の組成としては、炭素、窒素、リンを主成分とした組成のものを使用することができる。かかる培養液中の成分として特に窒素濃度を100ppm以上4000ppm以下とし、リン濃度を100ppm以上3000ppm以下とすることが好ましい。これは、培養液中の窒素濃度を100ppm以上4000ppm以下とし、リン濃度を100ppm以上3000ppm以下とすることが、分解微生物の活性化に重要だからである。より好ましい培養液中の窒素濃度は200ppm以上3000ppm以下であり、特に好ましい培養液中の窒素濃度は300ppm以上2000ppm以下である。また、より好ましい培養液中のリン濃度は150ppm以上2000ppm以下であり、特に好ましい培養液中のリン濃度は200ppm以上1000ppm以下である。
【0044】
有機ハロゲン化合物であるジクロロメタンを含有する排ガスを連続的に処理すると、DCM微生物層25を湿潤させる液体76中の塩酸の濃度が徐々に高くなり、DCM分解微生物の活性が低下してしまう。そこで、本実施形態では、タンク28に回収された液体76に対して脱イオン処理を行う脱イオン装置88を、タンク28と散布管26との間(循環配管30)に設けている。これにより、脱イオン装置88において塩酸(有機ハロゲン水素酸)が除去された液体76を散布管26に循環させることができるため、DCM分解微生物の活性低下を抑制することができる。
【0045】
脱イオン装置88は、塩酸(有機ハロゲン水素酸)を除去可能な構成であれば特に限定されず、公知の透析装置を広く使用することができ、とりわけ、イオン交換膜を介して直流電圧を印加して透析を行う電気透析型の透析装置を好適に使用することができる。
【0046】
図2は、電気透析型の脱イオン装置の一例を示す図である。図2に示すように、脱イオン装置88は、直流電圧が印加される陽極72Aと負極72Bとの間に、陰イオン交換膜66A、陽イオン交換膜70A、陰イオン交換膜66Bおよび陽イオン交換膜70Bが、この順で互いに対向するように配置された構成を有する。
【0047】
また、陰イオン交換膜66Aおよび陽イオン交換膜70Aの間の流路96と、陰イオン交換膜66Bおよび陽イオン交換膜70Bの間の流路98とは、タンク28に回収された液体76が流れるように構成されている。一方、流路96及び流路98以外の流路99は、液体76中のイオンを受け入れるイオン回収液が流れている。
【0048】
上記構成の脱イオン装置88において、陽極72A及び陰極72Bに電圧が印加されると、陽極72Aと陰極72Bとの間に発生した電界の作用により、流路96及び流路98を流れる液体76中のイオン(水素イオンや塩素イオン)は、隣接する流路99を流れるイオン回収液に移動する。具体的には、液体76中のカチオン(水素イオン)は、負極72B側の隣接流路99を流れるイオン回収液に移動するとともに、液体76中のアニオン(塩素イオン)は、陽極72A側の隣接流路99を流れるイオン回収液に移動する。これにより、流路96及び流路98を流れる液体76からイオン(水素イオンや塩素イオン)が除去される。
【0049】
また、脱イオン装置88の電圧印加の有無および印加電圧の大きさは、液体76の電気伝導度が10000μS/cm以下(より好ましくは5000μS/cm以下、さらに好ましくは500μS/cm以下)になるように、決定されることが好ましい。散布管26からDCM微生物層25に散布される液体76の電気伝導度が上記範囲に収まるように脱イオン装置88を制御することで、DCM分解微生物の活性低下を確実に抑制することができる。
【0050】
脱イオン装置88の上記制御は、例えば、図1に示すように、タンク28内の液体76の電気伝導度を測定する電気伝導度計84と、電気伝導度計84の測定結果に基づいて、脱イオン装置88の電圧印加の有無および印加電圧の大きさを決定する制御装置90とにより実現することができる。なお、電気伝導度計84は、タンク28内ではなく、脱イオン装置88よりも後段の循環配管30に設けてもよい。
【0051】
脱イオン装置88により脱イオン処理が行われた液体76は、図1に示すように、循環ポンプ32により、循環配管30を介して、散布管26に返送される。
【0052】
上記構成のガス処理塔24では、脱イオン装置88による脱イオン処理が施された液体76を散布管26に循環させるため、DCM微生物層25を湿潤させる液体76中の塩酸(有機ハロゲン水素酸)濃度の上昇を抑制することができる。これにより、DCM微生物層25におけるDCM分解微生物の活性低下を抑制して、排ガス処理運転を長期にわたって効率的に行うことができる。
【0053】
なお、図1には、脱イオン装置88をタンク28の後段の循環配管30に設ける例を示したが、図3に示すように、タンク28内の液体76を循環させるバイパス配管80に脱イオン装置88を設けてもよいし、脱イオン装置88をタンク28内に直接設けてもよい。
【0054】
以上、本発明の一実施形態に係る排ガス処理方法及び排ガス処理装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0055】
例えば、DCM微生物層25の閉塞(目詰まり)を防止する観点から、担体64から剥がれ落ちたバイオフィルムを捕集する捕集材をタンク28に設けてもよい。
【0056】
捕集材は、バイオフィルムを構成するDCM分解微生物との親和性が高い材質のものを用いることが好ましい。例えば、活性炭や、活性炭と微生物に対して親和性を有するプラスチックとのコンパウンド等のように活性炭をベース材料とした担体が好適である。具体的には、生物親和性の高いPVA(ポリビニルアルコール)のスポンジを基幹としたマイクロブレスHGB10やマイクロブレスHLL10(アイオン(株)製)、同様に生物親和性のPVAを原料としたクラゲール((株)クラレ製)、多孔質プラスチックと活性炭のコンパウンド担体であるACP担体やBCP担体(デンカエンジニアリング(株)製)、活性炭繊維を加工したアドールFMI(ユニチカ(株)製)を好適に採用できる。
【0057】
また、上述の実施形態では、タンク28に回収された液体76をそのまま脱イオン装置88に送液しているが、脱イオン装置88による脱イオン処理を行う前に、タンク28に回収された液体76のpH調整を行ってもよい。
【0058】
図4は、脱イオン処理前に液体76のpH調整を行う排ガス処理装置の一例を示す図である。図4に示すガス処理塔54のうち、既に説明したガス処理塔24(図1参照)と共通する構成部材については同一の符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0059】
ガス処理塔54は、主に、タンク28内の液体76のpHを測定するpH測定計86と、アルカリ液タンク94からアルカリ液をタンク28に供給するpH調整ポンプ92とを備える点でガス処理塔24と異なる。
【0060】
pH測定計86及びpH調整ポンプ92は、制御装置90に接続されている。制御装置90は、pH測定計86の測定結果に基づいて、タンク28内の液体76のpHが7に近づくように、pH調整ポンプ92のアルカリ液供給量を制御する。なお、タンク28内の液体76の中和処理を高精度に行う観点から、タンク28に攪拌翼82を設けて、液体76を均一に攪拌することが好ましい。タンク28内の液体76は、アルカリ液により中和された後、脱イオン装置88に送られて、脱イオン処理が行われる。
【0061】
タンク28において中和された液体76は、中和処理に用いたアルカリ液に由来する金属イオン(例えば、NaやK)がカチオンとして多く含まれるとともに、塩素イオンがアニオンとして多く含まれている。
【0062】
中和処理後の液体76に含まれる金属イオン及び塩素イオンは、所定濃度よりも高い場合、DCM分解微生物の活性を低下させてしまう。そこで、ガス処理塔54では、タンク28において中和された液体76をそのまま散布管26に返送するのではなく、脱イオン装置88による脱イオン処理を行った後、散布管26に返送している。脱イオン装置88の脱イオン処理は、ガス処理塔24の場合と同様の手法で行うことができる。
【0063】
次に、上記構成のガス処理塔に、排ガス中のジクロロメタン以外の夾雑ガス成分を除去する前処理手段を組み合わせた態様を説明する。これは、ガス処理塔での生物分解処理を行う前に、排ガス中に含有されるジクロロメタン以外の夾雑ガス成分を前処理手段で除去するように処理装置を構成したものである。これにより、DCM分解微生物が夾雑ガス成分による悪影響を受けることがないので、高い処理効率で且つ長時間の安定処理を一層向上させることができる。
【0064】
なお、以下では、ガス処理塔24と前処理手段とを組み合わせる例について説明するが、ガス処理塔54と前処理手段とを組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0065】
[前処理手段の第1例]
図5は、図1に示す排ガスの処理装置に前処理手段の第1例を組み合わせた概念図であり、前処理手段としてスクラバー塔を設けた場合である。
【0066】
図5に示すように、ジクロロメタンを含有する排ガスは、排ガス配管12を流れて先ずスクラバー塔14の下部に供給される。一方、スクラバー塔14の上部には散布管16が設けられ、スクラバー塔14内を上昇する排ガスに対して水が散布される。散布された水はスクラバー塔14の底部に溜まり、循環配管18及び循環ポンプ20により再び散布管16に循環される。これにより、排ガスと水とが気液接触する前処理工程が行われ、排ガス中に含有されるジクロロメタン以外の夾雑ガス成分のうち水溶性の夾雑ガス成分(メタノール、エタノール等)が水中に溶解されて除去又は低減される。この場合、散布管16から散布する水としてアルカリ性の水又は酸性の水を散布することにより、夾雑ガス成分中の有機酸や有機塩基のような酸性成分やアルカリ性成分を効果的に除去することができる。また、排ガスと水との気液接触効率を高めるために、スクラバー塔14の高さ方向中央部に、ラシヒリングを充填したラシヒリング層(不図示)を設けることが好ましい。なお、スクラバー塔14による排ガスの水洗浄を継続すると、スクラバー塔14の底部に溜まった水の夾雑ガス成分濃度が高くなるので、水を定期的に交換または補充等で連続希釈するための手段を付設することが好ましい。
【0067】
夾雑ガス成分としては、工業的に通常使用される有機化合物を挙げることができる。例えば、メタノール,エタノール,フェノール等のアルコール類、エチルアミン,アニリン等のアミン類、アセトン,メチルエチルケトン等のケトン類、ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド等のアルデヒド類、メチルエチルエーテル,ジエチルエーテル等のエーテル類、ギ酸,酢酸等のカルボン酸類、及びメタンエタン,エチレン,ベンゼン等の炭化水素類を挙げることができる。
【0068】
次に、スクラバー塔14で前処理工程を行った前処理ガスは、スクラバー塔14の頂部から排出され、配管22を流れてガス処理塔24の下部に供給され、DCM分解微生物を利用した生物分解処理が行われる。ガス処理塔24では、既に説明したように、タンク28に回収された液体76の電気伝導度に応じて脱イオン処理を行う脱イオン装置88が設けられている。これにより、脱イオン装置88において塩酸(有機ハロゲン水素酸)が除去された液体76を散布管26に循環させることができるため、DCM分解微生物の活性低下を抑制することができる。
【0069】
以上説明したように、ガス処理塔24での生物分解処理工程の前段に前処理工程を設けて排ガスを多段処理することにより、DCM分解微生物のジクロロメタンに対する分解性能を向上させることができると共に分解性能の経時低下を小さくすることができる。したがって、高い処理効率で且つ長時間のメンテナンスフリー運転が可能となるので、ジクロロメタンを効率的且つ経済的に処理することができる。
【0070】
ジクロロメタン以外の夾雑ガス成分を除去する前処理工程を行うことでDCM分解微生物のジクロロメタンに対する分解性能を向上させることができる理由は、次の3つの理由であると考察される。
【0071】
(1)ジクロロメタンは難分解性の化合物であるため、排ガス中にジクロロメタン以外の夾雑ガス成分が多く存在すると、DCM分解微生物がジクロロメタンよりも分解し易い易分解性の化合物である例えばメタノール、エタノール等の夾雑ガス成分を分解してしまい、本来分解しなくてはならないジクロロメタンの分解率が低下する。
【0072】
(2)夾雑ガス成分がDCM分解微生物の代謝に悪影響を及ぼすために、DCM分解活性が低下する。
【0073】
(3)夾雑ガス成分を栄養源として代謝するDCM分解微生物以外の雑微生物が優先繁殖し易くなるため、DCM分解微生物の菌濃度が低下して分解性能が低下する。
【0074】
上記(1)〜(3)はジクロロメタンで説明したが、上記した他の有機ハロゲン化合物についても同様である。
【0075】
[前処理手段の第2例]
図6は、前処理手段の第2例を備えた排ガス処理装置10の場合である。なお、第1例と同じ部材や装置は同符号を付して説明する。
【0076】
図6の排ガス処理装置10は、前処理手段として水槽36を設けた場合であり、その他は図1と同様である。図6に示すように、ジクロロメタンを含有する排ガスは、排ガス配管12を流れて水槽36内に貯留された水中に供給される。これにより、排ガスは気泡となって水中を上昇し、水槽36内上部のヘッドスペース部38に溜まる。したがって、排ガスと水とが気液接触する前処理工程が行われ、排ガス中に含有されるジクロロメタン以外の水溶性の夾雑ガス成分が水中に溶解されて除去又は低減される。この第2例の場合も、水槽36内に貯留された水としてアルカリ性の水又は酸性の水を使用することが好ましい。
【0077】
水槽36において前処理工程が行われた前処理ガスは、配管22を流れてガス処理塔24に送られ、DCM分解微生物を利用した生物分解処理が行われる。
【0078】
[前処理手段の第3例]
図7は、前処理手段の第3例を備えた排ガスの処理装置10の場合であり、前処理手段として夾雑ガス成分を生物学的に除去するための前処理塔40を設けた場合である。
【0079】
前処理塔40の高さ方向中央部には、排ガス中に含まれる夾雑ガス成分を分解する複合微生物が担体68に担持された複合微生物層42が設けられる。担体68に担持される複合微生物として、夾雑ガス成分を構成する主たる化合物を予め検出して、検出した化合物を分解可能な微生物同士を寄せ集めたものを使用することが好ましい。具体的には、夾雑ガス成分を構成する主たる化合物の1つ又は複数を含有する廃水処理場の活性汚泥や、夾雑ガス成分が排気される工場周辺の土壌等を採取して分解微生物を培養し、担体68に担持する方法を採用できる。
【0080】
複合微生物層42の担体68は、担持される複合微生物との親和性が高いものを使用することが好ましい。また、複合微生物層42の担体68は、DCM微生物層25の担体64と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0081】
また、前処理塔40の上部には散布管44が設けられ、散布管44と前処理塔40底部の貯留タンク部46との間が循環配管48で連結されると共に、循環配管48には循環ポンプ50が設けられる。散布管44からは複合微生物層42を湿潤させるための液体78(水又は複合微生物の培養液)が散布される。
【0082】
上記の如く構成された前処理手段の第3例によれば、ジクロロメタンを含有する排ガスは、排ガス配管12を流れて前処理塔40の下部に供給される。前処理塔40に供給された排ガスは複合微生物層42を通気する際に複合微生物と接触して排ガス中の夾雑ガス成分を生物分解する前処理工程が行われる。
【0083】
前処理塔40において前処理工程が行われた前処理ガスは、配管22を流れてガス処理塔24に送られ、DCM分解微生物を利用した生物分解処理が行われる。
【0084】
[前処理手段の第4例]
図8は、前処理手段の第4例を備えた排ガスの処理装置10の場合であり、前処理手段として1段目に水槽36を設け、2段目に前処理塔40を設けた場合である。1段目の水槽36による水溶性の夾雑ガス成分の除去は前処理手段の第2例と同様であり、2段目の前処理塔40による夾雑ガス成分の複合微生物による除去は前処理手段の第3例と同様であるので、ここでの説明は省略する。符号52は水槽36と前処理塔40とをつなぐ配管である。
【0085】
このように、前処理手段として、水槽36と前処理塔40との両方を設けて予め排ガス中の夾雑ガス成分を水洗浄と複合微生物との両方で処理することで、単独で用いる場合に比べてガス処理塔24に供給される前処理ガス中の夾雑ガス成分濃度を一層低減することができる。
【0086】
前処理工程で処理された前処理ガスは、配管22を流れてガス処理塔24に供給され、DCM分解微生物を利用した生物分解処理が行われる。
【0087】
これにより、DCM分解微生物のジクロロメタンに対する分解性能を一層向上させることができると共に分解性能の経時低下を小さくすることができる。
【0088】
なお、第4例では前処理工程の1段目に水槽36を設け、2段目に前処理塔40を設けたが、1段目に前処理塔40を設け、2段目に水槽36を設けてもよい。また、第4例では水槽36の例で説明したが、水槽36に代えてスクラバー塔14を設けてもよいことは言うまでもない。
【0089】
なお、本実施の形態では、有機ハロゲン化合物の一例として、ジクロロメタンの例で説明したが、本発明が他の有機ハロゲン化合物を含有する排ガスにも適用できることは言うまでもない。また、他の有機ハロゲン化合物を含有する排ガスの場合、除去したい有機ハロゲン化合物が存在する土壌、廃水汚泥、湖沼の底泥等を採取して培養することで、分解微生物を得ることができる。
【実施例】
【0090】
以下に、本発明に係る排ガスの処理方法及び装置の実施例を、ジクロロメタンの例で説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0091】
本実施例では、排ガス(試料ガス)中のジクロロメタンをDCM分解微生物で分解するガス処理塔24において、脱イオン装置88による液体76の脱イオン処理の効果を調べた。なお、前処理手段は使用せずにガス処理塔24に排ガスを直接導入した。
【0092】
[実施例1]
実験に用いたジクロロメタン(DCM)含有排ガスは、ガスボンベ(容量47リットル:(株)巴商会製)から50ppmDCM濃度のDCMガスをガス混合装置MX−2S((株)ユタカ製)において空気と混合し、3〜5ppmDCM濃度に調製したものを使用した。そして、調製した排ガスを10リットル/分の流速でガス処理塔24に導入した。
【0093】
実験に使用したガス処理塔24は、内径10cmの透明塩化ビニル製の円筒のものを使用した。そして、穴明き塩化ビニル板から作製した簀の子をガス処理塔24内に設置し、その上にDCM分解微生物を含有する活性汚泥を付着させた担体を層状に敷きつめてDCM微生物層25を形成した。DCM微生物層25の容量(体積)は5リットルとした。ガス処理塔24の底部には、内容量40リットルのタンク28が設けられ、排ガスをタンク28と簀の子との間に導入した。ガス処理塔24の頂部には処理配管34が設置され、処理配管34とDCM微生物層25の上端との間に散布管26を設けた。そして、タンク28に貯留された培養液が循環配管30及び循環ポンプ32により散布管26からDCM微生物層25に散布されるようにした。
【0094】
処理配管34から排出される処理後の排ガス中DCM濃度の測定は、作業環境測定ガイドブック5有機溶剤関係((社)日本作業環境測定協会)に記載の個体捕集法(活性炭管)−ガスクロマトグラフ分析法に従って行なった。
【0095】
ガス処理塔24のDCM微生物層25を形成するためのDCM分解微生物担持担体は次のようにして作製した。即ち、富士フイルム神奈川工場足柄サイトの終末処理場内の排水貯水槽から採取した活性汚泥を図9に示す組成の培養液に分散し、DCMを約50〜200ppmの濃度になるよう随時添加しながら馴致培養した。この馴致培養によりDCM分解微生物が培養されていることは、ジクロロメタンが分解することにより発生する塩化物イオン(HCl)の濃度上昇等で確認した。そして、塩化物イオンの上昇等によりDCM分解微生物の培養が確認された後の培養液に担体を投入して、約1週間そのまま放置することにより、担体表面にDCM分解微生物が存在する活性汚泥の生物膜を形成し、DCM分解微生物が担持された担体64を作製した。なお、担体64として、活性炭系のBCP担体(デンカエンジニアリング(株))を使用した。
【0096】
DCM分解微生物が担持された担体64を、ガス処理塔24に5リットル充填してDCM微生物層25を形成した。
【0097】
ガス処理塔24下部のタンク28の培養液(液体76)の電気伝導度の測定には、ポータブル電気伝導測定計CM−21P(東亜ディーケーケー(株))を使用した。また、脱イオン装置88として、マイクロアシライザーS3型電気透析装置((株)アストム)を使用した。制御装置90として自作のコントローラーを用いて、タンク28内の培養液の電気伝導度が9000μS/cmになるように、脱イオン装置88の脱イオン処理を制御した。
【0098】
上記構成のガス処理塔24に試料ガス(排ガス)を一日あたり5時間通気するガス処理を行った。排ガス処理開始から2日目及び25日目のDCM除去率を測定した。
【0099】
なお、DCM除去率は、通気前の排ガス中のDCMガス濃度をAとし、通気後の排ガス中のDCMガス濃度をBとしたときに、DCM除去率(%)=[(A−B)/A]×100の式で表される。
【0100】
[実施例2]
タンク28の培養液の電気伝導度の設定値を4000μS/cmにした以外は、実施例1と同様の条件で排ガス処理実験を行って、排ガス処理開始から2日目及び25日目のDCM除去率を測定した。
【0101】
[実施例3]
タンク28の培養液の電気伝導度の設定値を1000μS/cmにした以外は、実施例1と同様の条件で排ガス処理実験を行って、排ガス処理開始から2日目及び25日目のDCM除去率を測定した。
【0102】
[実施例4]
タンク28の培養液の電気伝導度の設定値を400μS/cmにした以外は、実施例1と同様の条件で排ガス処理実験を行って、排ガス処理開始から2日目及び25日目のDCM除去率を測定した。
【0103】
[比較例1]
脱イオン装置88による脱イオン処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の条件で排ガス処理実験を行って、排ガス処理開始から2日目及び25日目のDCM除去率を測定した。なお、タンク28内の培養液の電気伝導度を測定したところ、排ガス処理開始から2日目は19000μS/cmであり、排ガス処理開始から25日目は28000μS/cmであった。
【0104】
(実験結果)
実施例1〜4及び比較例1における測定結果を図10の表に示す。
【0105】
図10に示すように、脱イオン装置88による脱イオン処理を行った場合(実施例1〜4)、排ガス処理開始から2日目と25日目とのDCM処理率に大差はなく、いずれも比較的高いDCM処理率であった。これは、タンク28に回収された培養液に対して脱イオン処理を行うことで、培養液中の塩酸濃度上昇が抑制され、DCM分解微生物の活性低下が防止されたからである。
【0106】
一方、脱イオン処理を行わなかった場合(比較例1)、排ガス処理開始から2日目のDCM処理率は48%、排ガス処理開始から25日目のDCM処理率は29%であり、いずれも十分な処理率ではなかった。また、排ガス処理開始から25日目のDCM処理率が、2日目のDCM処理率に比べて減少しており、排ガス処理を継続すると、DCM処理率が低下してしまうことが分かった。
【符号の説明】
【0107】
10…排ガス処理装置、12…排ガス配管、14…スクラバー塔、16、26、44…散布管、18、30、48…循環配管、20、32、50…循環ポンプ、22、52…配管、24…ガス処理塔、28…タンク、34…処理配管、36…水槽、38…ヘッドスペース、40…前処理塔、42…複合微生物層、46…貯留タンク部、60、62…攪拌翼、64、68…担体、66A、66B…陰イオン交換膜、70A、70B…陽イオン交換膜、72A…陽極、72B…陰極、76、78…液体、80…バイパス配管、84…電気伝導度計、86…pH測定計、88…脱イオン装置、90…制御装置、92…pH調整ポンプ、94…アルカリ液タンク、96、98、99…流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハロゲン化合物を含有する排ガスの処理方法であって、
前記有機ハロゲン化合物を分解する分解微生物が担体に担持された微生物層に前記排ガスを接触させて、前記排ガスに含まれる前記有機ハロゲン化合物を分解処理する工程と、
前記微生物層を湿潤させる液体を、散布手段により前記微生物層に散布する工程と、
前記微生物層に散布された前記液体をタンクに回収する工程と、
前記タンクに回収された前記液体に対して脱イオン処理を行う工程と、
前記脱イオン処理が行われた前記液体を前記散布手段に循環させる工程とを含むことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項2】
前記脱イオン処理を行う工程の前に、前記タンクに回収された前記液体を中和する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項3】
前記脱イオン処理は、前記液体の電気伝導度が10000μS/cm以下になるように行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス処理方法。
【請求項4】
前記有機ハロゲン化合物はジクロロメタンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の排ガス処理方法。
【請求項5】
前記液体は前記分解微生物の培養液であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の排ガス処理方法。
【請求項6】
前記培養液は、窒素濃度が100ppm以上4000ppm以下であり、リン濃度が100ppm以上3000ppm以下であることを特徴とする請求項5に記載の排ガス処理方法。
【請求項7】
前記担体は、活性炭を主成分として含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の排ガス処理方法。
【請求項8】
前記分解微生物は、ハイホマイクロビウム(Hyphomicrobium)属の微生物を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の排ガス処理方法。
【請求項9】
有機ハロゲン化合物を含有する排ガスの処理装置であって、
前記有機ハロゲン化合物を分解する分解微生物が担体に担持された微生物層を有するガス処理塔と、
前記ガス処理塔に前記排ガスを供給するガス供給手段と、
前記微生物層を湿潤させる液体を前記微生物層に散布する散布手段と、
前記微生物層に散布された前記液体を回収するタンクと、
前記タンクに回収された前記液体に対して脱イオン処理を行う脱イオン手段と、
前記脱イオン処理が行われた前記液体を前記散布手段に循環させる循環ポンプとを備えることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項10】
前記タンクに回収された前記液体を中和する中和手段を備え、
前記脱イオン手段は、前記中和手段により中和された前記液体に対して前記脱イオン処理を行うことを特徴とする請求項9に記載の排ガス処理装置。
【請求項11】
前記液体の電気伝導度を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果が10000μS/cm以下になるように、前記脱イオン手段の前記脱イオン処理を制御する制御手段とを備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の排ガス処理装置。
【請求項12】
前記有機ハロゲン化合物はジクロロメタンであることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項13】
前記液体は前記分解微生物の培養液であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項14】
前記培養液は、窒素濃度が100ppm以上4000ppm以下であり、リン濃度が100ppm以上3000ppm以下であることを特徴とする請求項13に記載の排ガス処理装置。
【請求項15】
前記担体は、活性炭を主成分として含むことを特徴とする請求項9乃至14のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項16】
前記分解微生物は、ハイホマイクロビウム(Hyphomicrobium)属の微生物を含むことを特徴とする請求項9乃至15のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−201315(P2010−201315A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48283(P2009−48283)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】