説明

排ガス処理装置

【課題】 湿式電気集塵機を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを一層低減することができる排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】 ボイラ2の燃焼排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置6と、集塵装置6から排出される排ガス中の硫黄酸化物を脱硫剤スラリを用いて除去する湿式脱硫装置8と、湿式脱硫装置8から排出される排ガス中のミストを捕集する湿式電気集塵機9とを備え、集塵装置6と前記湿式脱硫装置8との間の排ガス流路に、排ガス中のミストを荷電させる荷電装置7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置に係り、特に、ボイラの燃焼排ガス中に含まれるSOミストを効率よく低減する排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所などで用いられるボイラでは、化石燃料である例えば石炭を燃焼して生じる排ガスを排ガス処理装置でガス中に含まれる有害成分を除去してから大気に放出している。このような排ガス処理装置としては、ボイラの燃焼排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置と、脱硝装置から排出される排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、集塵装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物を脱硫剤スラリを用いて除去する湿式脱硫装置と、湿式脱硫装置から排出される排ガス中のミストを捕集する湿式電気集塵機とを備えたものが知られている。
【0003】
排ガス中に含まれるSOを低減するものとして、特許文献1には、活性炭素繊維にガス中の二酸化硫黄(SO)を吸着させてSOに酸化させた後、水を供給して希硫酸(HSO)にして除去する湿式脱硫装置が記載されている。特に、水を供給するノズルの吹出口の近傍に一対の帯電付与部を設けて、ノズルから供給される帯電した水滴にSOミストを吸収させることにより、SOミストの除去率を高くすることが提案されている。
【0004】
一方、特許文献2には、湿式脱硫装置の入口に電気集塵機を設けて、SO反応物を含む煤塵を電気集塵機で捕集することが提案されている。また、電気集塵機から排出された排ガスに水をスプレして排ガス中の帯電煤塵を吸着して、SOの除去率を高くすることが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−14931号公報
【特許文献2】特開平11−137954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、SOミストを一層高い効率で捕集することが要望されているが、従来の技術では十分でない。例えば、最終処理の湿式電気集塵機でSOミストを低減しようとすると、湿式電気集塵機が大型になるという問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、湿式電気集塵機を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOミストを一層低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様の排ガス処理装置は、ボイラの燃焼排ガス中の熱を回収するエアヒータ及びガスクーラと、該エアヒータ及びガスクーラで熱を回収された排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、該集塵装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物を脱硫剤スラリを用いて除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置から排出される排ガス中のミストを捕集する湿式電気集塵機とを備えた排ガス処理装置において、前記集塵装置と前記湿式脱硫装置との間の排ガス流路に、前記排ガス中のミストを荷電させる荷電装置を設けたことを特徴とする。
【0009】
すなわち、集塵装置から排出された排ガスの温度は、集塵装置上流のエアヒータ及びガスクーラでその熱の一部が回収されて、通常、酸露点以下であるのでSOのミストが含まれる。本発明によれば、集塵装置から排出された排ガスに含まれるSOミストは、荷電装置で荷電され、荷電したSOミストは、ガスと共に湿式脱硫装置に流入して、脱硫剤スラリに吸着して反応除去される。このとき、SOミストは電荷のクーロン力によって脱硫剤スラリの液滴に吸着されるので、湿式脱硫装置でのSOミストの除去率が高くなる。湿式脱硫装置で除去しきれなかったSOミストは、湿式電気集塵機で捕集されるので、排ガス中に含まれるSOを一層低減することができ、しかも、湿式電気集塵機に流入するガス中のSOミストの量が少ないことから、湿式電気集塵機の小型化を図れる。
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の第2の態様の排ガス処理装置は、ボイラの燃焼排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、該集塵装置から排出される排ガス中の煤塵を捕集する湿式集塵機と、該湿式集塵機から排出される排ガス中の硫黄酸化物を脱硫剤スラリを用いて除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置から排出される排ガス中のミストを捕集する湿式電気集塵機とを備えた排ガス処理装置において、前記湿式集塵機と前記湿式脱硫装置との間の排ガス流路に、前記排ガス中のミストを荷電させる荷電装置を設けたことを特徴とする。
【0011】
すなわち、湿式集塵機から排出された排ガスの温度は、通常、酸露点以下であるのでSOのミストが含まれる。本発明によれば、湿式集塵機から排出された排ガスに含まれるSOミストは、荷電装置で荷電され、荷電したSOミストは、ガスと共に湿式脱硫装置に流入して、脱硫剤スラリに吸着して反応除去される。このとき、SOミストは電荷のクーロン力によって脱硫剤スラリの液滴に吸着されるので、湿式脱硫装置でのSOミストの除去率が高くなる。湿式脱硫装置で除去しきれなかったSOミストは、湿式電気集塵機で捕集されるので、排ガス中に含まれるSOを一層低減することができ、しかも、湿式電気集塵機に流入するガス中のSOミストの量が少ないことから、湿式電気集塵機の小型化を図れる。
【0012】
本発明の第1または第2の態様の排ガス処理装置において、前記荷電装置が設けられる前記排ガス流路は、並列接続されると共に前記荷電装置がそれぞれ設けられる2つの分割流路を有し、該2つの分割流路に設けられる2つの前記荷電装置は、荷電の極性が正負又は同一にすることができる。これによれば、荷電の極性を正負に異ならせれば、SOミストの凝集効果が得られる。しかし、同一極性にしても湿式脱硫装置での除去率が高くなる。また、前記集塵装置は、2つのボイラの燃焼排ガス中の煤塵をそれぞれ個別に捕集すべく2つ備えられ、該2つの集塵装置から排出される排ガスの2つの排ガス流路は、前記湿式脱硫装置に接続された1つの排ガス流路にそれぞれ接続され、前記2つの排ガス流路に、排ガス中のミストを荷電させる荷電装置をそれぞれ設け、該2つの荷電装置は、荷電の極性が正負又は同一にすることができる。
【0013】
本発明の第1または第2の態様の排ガス処理装置において、前記湿式脱硫装置は、前記脱硫剤スラリをスプレさせるノズルの一部に荷電する荷電スプレ装置を設け、該荷電スプレ装置は、前記荷電装置とは異なる正又は負の電荷を荷電することが好ましい。これにより、湿式脱硫装置内にスプレされたスラリの液滴の一部は、荷電したミストと異なる電荷に帯電されているので、SOミストと脱硫剤スラリの液滴とが互いに近づいた場合には、互いのクーロン力によって引き合ってSOミストが脱硫剤スラリの液滴に吸着される。よって、湿式脱硫装置でのSOミストの除去率がより高くなる。
【0014】
また、本発明の第3の態様の排ガス処理装置は、ボイラの燃焼排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、該集塵装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置から排出される排ガス中のミストを捕集する湿式電気集塵機とを備えた排ガス処理装置において、前記湿式脱硫装置と前記湿式電気集塵機との間の排ガス流路に、前記排ガス中のミストを荷電させる荷電装置を設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、湿式脱硫装置で除去しきれなかったSOミストは荷電装置に流入して荷電され、荷電したSOミストは、湿式電気集塵機に流入して、湿式電気集塵機の例えば集塵板に捕集されて除去される。このとき、SOミストは電荷のクーロン力によって集塵板に吸着するので、湿式電気集塵機でのSOミストの除去率が高くなる。よって、排ガス中に含まれるSOを一層低減することができ、しかも、湿式電気集塵機でのSOミストの除去率が高いことから、湿式電気集塵機の小型化を図れる。
【0016】
この場合において、前記荷電装置と前記湿式電気集塵機との間の排ガス流路に、前記排ガス中に前記荷電装置とは異なる正又は負の電荷を荷電させた液をスプレする荷電スプレ装置を設けることが好ましい。これにより、荷電スプレ装置によってスプレされた水滴は、帯電されたミストと異なる電荷に帯電されているので、SOミストとスプレ水滴とが互いに近づいた場合には、互いのクーロン力によって引き合ってSOミストが粒径の大きなスプレ水滴に吸着する。よって、湿式電気集塵機でのSOミストの除去率がより高くなる。
【0017】
この場合において、前記荷電装置が設けられる前記排ガス流路は、並列接続されると共に前記荷電装置がそれぞれ設けられる2つの分割流路を有し、該2つの分割流路に設けられる2つの前記荷電装置は、荷電の極性が正負又は同一にすることができる。これによれば、荷電の極性を正負に異ならせれば、SOミストの凝集効果が得られる。しかし、同一極性にしても湿式脱硫装置での除去率が高くなる。また、前記荷電装置が設けられる前記排ガス流路は、並列接続されると共に前記荷電装置がそれぞれ設けられる2つの分割流路を有し、該2つの分割流路には、前記荷電装置とは異なる正又は負の電荷を荷電する荷電スプレ装置とがそれぞれ設けられる構成にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、湿式電気集塵機を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを一層低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る排ガス処理装置の実施形態を図1〜図13を用いて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、第1実施形態の排ガス処理装置1は、化石燃料である例えば石炭を燃焼し、その熱により蒸気を発生させる石炭焚ボイラ2から排出された排ガスを処理するもので、排ガスの上流側から順に、例えば、脱硝装置3、エアヒータ(A/H)4、ガスクーラ5、集塵装置6、荷電装置7、湿式脱硫装置8、湿式電気集塵機9、図示していない誘引送風機、煙突15等が設けられている。各装置は、排ガス流路を形成する例えば略矩形状の排ガスダクト11で互いに接続されている。
【0021】
脱硝装置3は、例えば、脱硝触媒を用いてアンモニアを還元剤とした選択的接触還元反応により排ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去するものである。エアヒータ4は、石炭焚ボイラ2の燃焼用空気を熱交換することによって加熱するものである。ガスクーラ5は、エアヒータ4出口の排ガスの温度を下げるためのものであり、例えば、回収した熱で湿式電気集塵機9から排出された排ガスを加熱して煙突15より発生する際の紫煙を防止するガスガスヒータのようなものでもよい。集塵装置6は、排ガス中の煤塵やミストを捕集するもので、ガス中の煤塵やミストを捕集できるものであれば特に限定されず、電気集塵機やバグフィルター等が用いられる。
【0022】
荷電装置7は、排ガス中のミストを荷電させるものであり、排ガス温度が酸露点以下の箇所に設けられることが好ましい。荷電装置7としては、排ガス中のミストを荷電させることができれば特に限定されず、例えば、放電極と対向電極とが所定の間隔をあけて対向して設けられ、放電極と対向電極との間にガスを流してガス中のミストを荷電させるもの等が用いられる。
【0023】
湿式脱硫装置8は、排ガス中の硫黄酸化物を脱硫剤スラリを用いて除去するものである。湿式脱硫装置8は、例えば、石灰石等の脱硫剤スラリをスプレするノズルが上下方向に所定の間隔で複数段設けられており、複数のノズルからスプレされた脱硫剤スラリの液滴が湿式脱硫装置8内を落下する過程で、湿式脱硫装置8内を上昇する排ガスと脱硫剤スラリとの接触により排ガス中の硫黄酸化物が脱硫剤と反応して吸収除去されるものである。
【0024】
湿式電気集塵機9は、湿式脱硫装置8から排出される排ガス中のミストや煤塵を捕集して除去するものであり、煙突15から大気に放出する排ガス中のSO濃度を所定値以下とするために必要なものである。湿式電気集塵機9としては、例えば、放電極と平板状又は円筒状の集塵極とが所定の間隔をあけて対向して設けられ、集塵極面に水を落下させながら放電極と集塵極との間に排ガスを流してガス中のミストや煤塵を例えば負の極性に荷電して正の極性の集塵極に捕集させて除去するものである。
【0025】
次に第1実施形態の排ガス処理装置1の作用を説明する。石炭焚ボイラ2から排出された高温の燃焼排ガスは、脱硝装置3で排ガス中のNOxが除去された後、エアヒータ4及びガスクーラ5でその熱の一部が回収されて、例えば110〜90℃に冷却される。排ガスが酸露点(およそ150〜160℃)以下の110〜90℃になると、ガス中のSOの一部がミストとなる。例えば、石炭が燃焼すると、石炭中の硫黄(S)がガス状に放出され、大部分は二酸化硫黄(SO)となるが、SOの一部は、エアヒータ4やガスクーラ5で排ガスの熱を回収する際に酸化されてSOとなる。SOからSOとなる割合は、炭種やボイラ2の運転条件(空気比、ガス温度等)により変化するが、およそ1〜3%程度である。また、排ガス中のSOは、脱硝装置3においてもSOの酸化反応が進行する。その割合は、脱硝装置3の種類によって変化するが、およそ0.5〜2%程度である。このSOはガス温度が酸露点以下となると、その一部がミストとなる。SOミストは、排ガス中を浮遊し、排ガスと共に流動し、SOミストを含む排ガスが集塵装置6に流入する。
【0026】
集塵装置6では、排ガス中の煤塵やSOミストの大分部が集塵装置6で捕集される。集塵装置6で捕集されなかったSOミストは排ガスと共に荷電装置7に流入し、そこで、正又は負の極性に荷電される。荷電したSOミストは、排ガスと共に湿式脱硫装置8内に流入し、湿式脱硫装置8内を上昇する。排ガスに含まれる硫黄酸化物(SO及びSO)は、ノズルからスプレされた脱硫剤スラリの液滴と接触して脱硫剤と反応して吸収除去される。
【0027】
SOミストは、湿式脱硫装置8内を上昇する間に脱硫剤スラリと衝突して吸収されて反応除去される。例えば、湿式脱硫装置8では、ガス温度が酸露点以下の50〜60℃程度まで低下しているため、SOは1μm以下の微細なミストとなり、このSOミストの除去率は、湿式脱硫装置8の構造によって変化するが、一般には、60〜80%程度である。しかし、本実施形態では、SOミストは、荷電装置7で荷電されていることから、静電吸引力によって脱硫剤スラリの液滴に吸着される。すなわち、SOミストは、脱硫剤スラリの液滴に近づいたときに静電吸引力によってその水滴に吸着される。よって、湿式脱硫装置8でのSOミストの除去率を60〜80%以上にすることができる。このように、湿式脱硫装置8でのSOミストの除去率が高くなるので、湿式脱硫装置8で除去されなかったSOミストの量が少なくなる。
【0028】
湿式脱硫装置8で除去しきれなかったSOミストは、排ガスと共に湿式電気集塵機9に流入して煤塵と共に捕集され、排ガスは煙突15から大気に放出される。湿式電気集塵機9では、SOミストの粒子径が大きければそれだけ、捕集されやすくなるので、湿式電気集塵機9での除去率が高くなる。例えば、湿式電気集塵機9でのSOミストの除去率(SO除去率)とSOミスト平均粒子径との関係は、図13に示すように、SOミストの粒子径が大きいほどSOミストの除去率が高くなることは知られていることからも分かる。
【0029】
このように、湿式電気集塵機9に流入するガス中のSOミストの量が少なく、かつ、除去率が高くなることから、湿式電気集塵機9の小型化を図れる。その結果、湿式電気集塵機9では、SOミストが集塵極に付着すると、排ガス中の水分と反応して強酸性の水溶液となるため、湿式電気集塵機9に使用する材料は耐腐食性材料を採用する必要があるが、湿式電気集塵機9を小型にすることができるので、設備費を安くすることができる。
【0030】
したがって、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よく一層低減することができる。例えば、SOの量はSOに対して数%程度であるが、SOは、有害物質であり、かつ、煙突15から排出される際に紫煙の原因となることから、排出濃度を例えば1ppm以下、すなわち、SOの除去率を90〜99%以上、例えば、99%以上にすることが可能となる。
【0031】
(第2実施形態)
図2は、本発明に係る第2実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。図2に示すように、第2実施形態の排ガス処理装置20は、第1実施形態の排ガス処理装置1における湿式脱硫装置8に、荷電スプレ装置21を設けた点のみ異なっている。それ以外の構成は同一であるので、同一機能部品については同一符号を付してその説明を省略する。
【0032】
荷電スプレ装置21は、脱硫剤スラリをスプレさせるノズルの一部に荷電して、ノズルからスプレされるスラリの液滴を荷電するものである。荷電スプレ装置21としては、スラリの液滴を荷電することができれば、どのように構成してもよい。また、荷電スプレ装置21は、荷電装置7とは逆極性の正又は負の電荷を荷電することが好ましい。また、荷電スプレ装置21の設置箇所は、特に限定されず、ガスの入口側でも出口側でもよく、例えば、図2の例では出口側に設置されている。すなわち、湿式脱硫装置8の最上段のノズルに荷電を行うように荷電スプレ装置21が配置されている。
【0033】
このように構成すると、湿式脱硫装置8内では、荷電スプレ装置21に荷電されたノズルからスプレされた脱硫剤スラリの液滴が含まれ、この液滴は、荷電装置7とは逆極性に帯電されている。このため、湿式脱硫装置8内を上昇する荷電したSOミストと逆極性の脱硫剤スラリの液滴とが互いに近づいた場合、互いのクーロン力によって引き合ってSOミストが脱硫剤スラリの液滴に吸着される。
【0034】
また、湿式脱硫装置8から排出されるSOミストの径は、図6に示すように、荷電をかけないブランクテストの場合に比べて荷電をかけることによりSOミストの径が大きくなるので、湿式脱硫装置8内では脱硫剤スラリの液滴と接触する確率が高くなる。
【0035】
よって、湿式脱硫装置8でのSOミストの除去率がより高くなる。また、SOミストは、湿式脱硫装置8で除去しきれなくても、湿式電気集塵機9で除去されるが、このとき、SOミストの径が大きければそれだけ、湿式電気集塵機9で捕集されやすくなるので、湿式電気集塵機9での除去率が高くなる。したがって、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よくより一層低減することができる。
【0036】
(第3実施形態)
図3は、本発明に係る第3実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。図3に示すように、第3実施形態の排ガス処理装置30は、第1実施形態の排ガス処理装置1におけるガスクーラ5を省略すると共に、集塵装置6の下流側(実際には集塵装置6と荷電装置7との間)に湿式集塵機12を設けた構成となっている。それ以外の構成は同一であるので、同一機能部品については同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
湿式集塵機12は、例えば、図5に示すように、排ガスダクト11内にスプレ水をスプレするノズル12aを備えたもの等が用いられる。具体的には、排ガスダクト11の大きさを漸次縮小して、この縮小部11aにガスの流れに対向してスプレ水をスプレするようにノズル12aを排ガスダクト11内に設置して、スプレ水によって煤塵やミスト等を集塵するようになっている。
【0038】
このように構成すると、例えば、集塵装置6に流入する排ガス温度は、約160℃で、集塵装置6で集塵処理された排ガスが湿式集塵機12で集塵処理されると、ガス温度は酸露点以下の温度に下がる。このため、湿式集塵機12から排出されたガスには、SOミストが含まれ、このSOミストが荷電装置7で荷電される。荷電したSOミストは前述と同様に湿式脱硫装置8内に流入して脱硫剤スラリに吸着して除去される。よって、湿式脱硫装置8でのSOミストの除去率が高くなるので、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よく一層低減することができる。
【0039】
(第4実施形態)
図4は、本発明に係る第4実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。図5は、本発明に係る第4実施形態の排ガス処理装置の要部を示す図である。図4及び図5に示すように、第4実施形態の排ガス処理装置40は、第3実施形態の排ガス処理装置1における湿式脱硫装置8に、脱硫剤スラリをスプレさせるノズル8aの一部に荷電する荷電スプレ装置41を設けた点が異なる。それ以外の構成は同一であるので、同一機能部品については同一符号を付してその説明を省略する。
【0040】
荷電装置7は、例えば、放電極板7aと対向電極板7bとが所定の間隔をあけて対向して設けられ、放電極板7aと対向電極板7bとの間に排ガスを流して排ガス中のミストを正又は負(図示例では正)に帯電させるものである。
【0041】
荷電スプレ装置41は、脱硫剤スラリをスプレさせるノズル8aの一部に荷電してノズル8aからスプレされるスラリの液滴を荷電するものである。荷電スプレ装置41としては、スラリの液滴を荷電することができれば、どのようなものでもよい。また、荷電スプレ装置41は、荷電装置7とは逆極性の正又は負の電荷図5に示す例では負の電荷を荷電することが好ましい。また、荷電スプレ装置41の設置箇所は、特に限定されず、ガスの入口側でも出口側でもよく、例えば、入口側に設置されている。すなわち、湿式脱硫装置8の下段のノズル8aに荷電を行うように荷電スプレ装置41が設けられている。
【0042】
このように構成すると、湿式脱硫装置8内では、荷電スプレ装置21に荷電されたノズルからスプレされた脱硫剤スラリの液滴が含まれ、この液滴は、荷電装置7とは逆極性の電荷に帯電されている。このため、湿式脱硫装置8内を上昇する荷電したSOミストと逆極性に帯電した脱硫剤スラリの液滴とが互いに近づいた場合、互いのクーロン力によって引き合ってSOミストが脱硫剤スラリの液滴に吸着される。
【0043】
また、湿式脱硫装置8から排出されるSOミストの径は、図6に示すように、荷電をかけないブランクテストの場合に比べて径が大きく、かつ、荷電のみを作用させた場合に比べてさらにSOミストの径が大きくなるので、湿式脱硫装置8内で脱硫剤スラリの液滴と接触する確率が高くなる。
【0044】
よって、湿式脱硫装置8でのSOミストの除去率がより高くなる。また、SOミストは、湿式脱硫装置8で除去されなくても、湿式電気集塵機9で除去されるが、このとき、SOミストの径が大きければそれだけ、湿式電気集塵機9で捕集されやすくなり、湿式電気集塵機9での除去率が高くなる。したがって、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よくより一層低減することができる。
【0045】
(第5実施形態)
図7は、本発明の第5実施形態の排ガス処理装置の要部を示す図である。図7に示すように、第5実施形態の排ガス処理装置50は、荷電装置7が設けられる排ガスダクト11内(排ガス流路)を2つに分割して2つの分割流路11b、11cにそれぞ荷電装置7を設けたことを特徴としている。第5実施形態の排ガス処理装置50は、前記第1〜第4実施形態の排ガス処理装置における荷電装置7を設ける場合の他の例を示すものであるので、図7に要部のみを示した。それ以外の構成は同一であるので、同一機能部品については同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
排ガスダクト11の途中の内部に、ガスの流れ方向に延びる仕切板13が設けられ、排ガスダクト11内が2つの分割流路11b、11cに分割されている。2つの分割流路11b、11cは、排ガスダクト11内に仕切板13を設けて並列接続したが、これに限定されず、例えば、排ガスダクト11を2つのダクトに分岐して再び合流するようにして形成するようにしてもよい。2つの分割流路11b、11cには、それぞれ荷電装置7が設けられている。
【0047】
2つの荷電装置7としては、例えば、分割流路11b、11cの略中央部に放電極7cを設けると共に、分割流路11b、11cを形成する内壁及び仕切板の内壁を対向電極として形成される。放電極7cは、例えば、ガスの流れ方向に延びる直線状の電極部7dを複数段(例えば6段)設け、これら電極部7dの両端部をそれぞれ連結して分割流路11b、11cを流れるミストを略均等に荷電するようにすることが好ましい。なお、放電極7cの構造は、特に限定されないが、他の構造例えば網目状の電極等を用いてミストを略均等に荷電することができる。2つの荷電装置7は、荷電の極性が同一でも正負逆であってもどちらでもよいが、荷電の極性が正負逆になるようにすることが好ましい。
【0048】
2つの荷電装置7の荷電の極性が同一の場合には、集塵装置6から排出された排ガスは、排ガスダクト11を流れる途中で2つに分かれて2つの分割流路11b、11c内にそれぞれ流入する。2つの分割流路11b、11cに流入した排ガスに含まれるミストは、各荷電装置7によって同一の極性にそれぞれ荷電され、そして、合流して湿式脱硫装置8に流入するために、前記の第1〜第4の実施形態の排ガス処理装置と略同一の作用効果を奏する。
【0049】
他方、2つの荷電装置7の荷電の極性が逆の場合には、2つの排ガスに含まれるミストは、2つの荷電装置7によって互いに逆極性に荷電される。そして、2つの排ガスが合流すると、逆極性のミストが互いに近づいたとき、互いのクーロン力によって引き合って凝集して粒子径が大きなミストとなる。粒子径が大きなミストは、排ガスと共に湿式脱硫装置8に流入して湿式脱硫装置8内を上昇する。ミストは粒子径が大きくなっているために、湿式脱硫装置8内を上昇する間に脱硫剤スラリと衝突して吸収除去される確率が高くなるので、湿式脱硫装置8でのSOミストの除去率がより高くなる。また、湿式電気集塵機9においてもミストは粒子径が大きいと、ミストの除去率が高くなる。したがって、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よくより一層低減することができる。
【0050】
なお、荷電装置7が設けられる排ガスダクト11内を2つに分割して2つの分割流路11b、11cにそれぞ荷電装置7を設けたが、これに限定されずに、排ガスダクト内等を3つ以上に分割し、3つ以上に分割した各分割流路にそれぞれ荷電装置を設けるようにしてもよい。
【0051】
(第6実施形態)
図8は、本発明の第6実施形態の排ガス処理装置の一部を示す図である。図8に示すように、第6実施形態の排ガス処理装置60は、2つの石炭焚ボイラ2から排出された燃焼排ガスをそれぞれ個別にガス中に含まれるNOx、煤塵を除去してから、1つに合流させて1つの湿式脱硫装置8で硫黄酸化物を除去するものである。前記実施形態の排ガス処理装置と同一機能部品については同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
第6実施形態の排ガス処理装置60は、2つの石炭焚ボイラ2から排出された燃焼排ガスを処理するもので、2つの石炭焚ボイラ2から排出された燃焼排ガスが流入する2つの第1排ガスダクト61及び第2排ガスダクト62と、第1排ガスダクト61及び第2排ガスダクト62が連結されて2つの排ガスを合流させて排ガスを案内する第3排ガスダクト63とを有する。第1排ガスダクト61及び第2排ガスダクト62には、それぞれ排ガスの上流側から順に、脱硝装置3、エアヒータ4、ガスクーラ5、集塵装置6、荷電装置7等が設けられている。また、第3排ガスダクト63には、湿式脱硫装置8、湿式電気集塵機9、図示していない誘引送風機、煙突15等が設けられている。2つの荷電装置7は、荷電の極性が同一でも正負逆であってもどちらでもよい。
【0053】
2つの荷電装置7の荷電の極性が同一の場合には、各集塵装置6から排出された排ガスに含まれるミストは、それぞれ各荷電装置によって同一の極性に荷電され、そして、合流して湿式脱硫装置8に流入する。このために、前記の第1〜第4実施形態の排ガス処理装置1、20、30、40と略同一の作用効果を奏する。
【0054】
他方、2つの荷電装置7の荷電の極性が逆の場合には、2つの排ガスに含まれるミストは、2つの荷電装置7によって互いに逆極性に荷電される。そして、2つの排ガスが合流すると、逆極性のミストが互いに近づいたとき、互いのクーロン力によって引き合って凝集して粒子径が大きなミストとなる。粒子径が大きなミストは、排ガスと共に湿式脱硫装置8に流入して湿式脱硫装置8内を上昇する。ミストは粒子径が大きくなっているために、湿式脱硫装置8内を上昇する間に脱硫剤スラリと衝突して吸収除去される確率が高くなるので、湿式脱硫装置8でのSOミストの除去率がより高くなる。また、湿式電気集塵機9においてもミストは粒子径が大きいと、ミストの除去率が高くなる。したがって、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よくより一層低減することができる。
【0055】
次に第6実施形態の排ガス処理装置60を用いてミストへの荷電の有無による湿式電気集塵機9でのSOの除去率を調べた。集塵装置(DEP)4出口のSO濃度と湿式電気集塵機(W−EP)9出口のSO濃度を計測し、集塵装置(DEP)4出口のSO濃度を1として、湿式電気集塵機(W−EP)9出口の値を求めた。2つの荷電装置7をONにした場合(2つの荷電装置7の荷電の極性が逆の場合)は、0.055でSO除去率が94.5%となった。これに対して、荷電装置7をOFFにした場合、0.090でSO除去率が89%となった。この結果、荷電装置7をONにすることにより、SO除去率を約1/2に低減できることが分かった。したがって、荷電装置を使用せずに同等のSO除去率を得るためには,湿式電気集塵機の大きさを40%増加する必要があり,本発明により荷電装置の設置により,湿式電気集塵機の大きさを低減できる効果を確認することができた。
【0056】
なお、2つの石炭焚ボイラ2からの燃焼排ガスの場合について説明したが、これに限定されずに、3つ以上の石炭焚ボイラからの燃焼排ガスを処理する場合についても第6実施形態の排ガス処理装置を適用できることはいうまでもない。
【0057】
(第7実施形態)
図9は本発明に係る第7実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。第7実施形態及び後述の第8〜10実施形態の排ガス処理装置は、前記の第1〜第6実施形態の排ガス処理装置とは異なる形態の排ガス処理装置である。図9に示すように、第7実施形態の排ガス処理装置70は、石炭焚ボイラ2から排出された燃焼排ガスの上流側から順に、例えば、脱硝装置3、エアヒータ4、集塵装置6、湿式脱硫装置8、荷電装置7、湿式電気集塵機9、図示していない誘引送風機、煙突15等が設けられている。各装置は、排ガス流路を形成する排ガスダクト11で互いに接続されている。
【0058】
荷電装置7としては、排ガス中のミストを荷電させることができれば特に限定されず、例えば、放電極と対向電極とが所定の間隔をあけて対向して設けられ、放電極と対向電極との間にガスを流してガス中のミストを荷電させるもの等が用いられる。荷電装置の荷電の極性は、正でも負でも特に限定されないが、例えば、コロナ放電によりミストが負に帯電されるようにする。これにより、湿式電気集塵機9が正の極性の集塵極でミスト等を捕集する構造の場合には、集塵極に捕集されやすくなる。
【0059】
湿式電気集塵機9としては、例えば、放電極と平板状又は円筒状の集塵極とが所定の間隔をあけて対向して設けられ、集塵極面に水を落下させながら放電極と集塵極との間に排ガスを流してガス中のミストや煤塵を例えば負の極性に荷電して正の極性の集塵極に捕集させて除去するものである。
【0060】
このように構成すると、石炭焚ボイラ2から排出された高温の燃焼排ガスは、脱硝装置3で排ガス中のNOxが除去された後、エアヒータ4でその熱の一部が回収されてから集塵装置6に流入する。集塵装置6では、排ガス中の煤塵やミストが捕集される。集塵装置6から排出された排ガスは、湿式脱硫装置8内に流入し、湿式脱硫装置8内を上昇する。排ガスに含まれる硫黄酸化物(SO及びSO)は、ノズルからスプレされた脱硫剤スラリの液滴と接触して脱硫剤と反応して吸収除去される。
【0061】
湿式脱硫装置8内ではガス温度が酸露点以下であるのでガスにはSOミストが含まれ、SOミストは、湿式脱硫装置8内を上昇する間に脱硫剤スラリと衝突して吸収されて反応除去される。例えば、湿式脱硫装置8では、ガス温度が酸露点以下の50〜60℃程度まで低下するため、SOは1μm以下の微細なミストとなり、このSOミストの除去率は、湿式脱硫装置8の構造によって変化するが、一般には、60〜80%程度である。
【0062】
湿式脱硫装置8で除去しきれなかったSOミストは、排ガスと共に荷電装置7に流入し、そこで、例えば負の極性に荷電される。荷電したSOミストは、排ガスと共に湿式電気集塵機9に流入して煤塵と共に捕集され、排ガスは煙突15から大気に放出される。湿式電気集塵機9では、放電極と集塵極との間にガスが流れてガス中のミストや煤塵が例えば負の極性に荷電して正の極性の集塵極に捕集される。このとき、SOミストは、負の極性に帯電しているために、電荷のクーロン力によって集塵板に効率よく捕集される。
【0063】
このように、SOミストの除去率が高くなることから、湿式電気集塵機9の小型化を図れる。その結果、湿式電気集塵機9では、SOミストが集塵極に付着すると、排ガス中の水分と反応して強酸性の水溶液となるため、湿式電気集塵機9に使用する材料は耐腐食性材料を採用する必要があるが、湿式電気集塵機9を小型にすることができるので、設備費を安くすることができる。したがって、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よく一層低減することができる。
【0064】
(第8実施形態)
図10は、本発明に係る第8実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。図10に示すように、第8実施形態の排ガス処理装置80は、第7実施形態の排ガス処理装置70における湿式脱硫装置8と湿式電気集塵機9との間の排ガスダクト11に、荷電スプレ装置10を設けた点のみ異なっている。それ以外の構成は同一であるので、同一機能部品については同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
荷電スプレ装置10は、排ガスダクト11内に液(例えば水)をスプレすると共にスプレした液が荷電しているならばどのようなものでもよい。また、荷電スプレ装置10は、スプレ液の極性が荷電装置7と同じでもよいが、荷電装置7とは逆の正又は負、例えば、正であることが好ましい。
【0066】
このように構成すると、荷電装置7で荷電されたSOミストが通る排ガスダクト11内に荷電スプレ装置10によって荷電装置7とは逆極性例えば正の極性に荷電された液がスプレされる。これにより、荷電したSOミストと逆極性に帯電したスプレ液滴とが互いに近づいた場合、互いのクーロン力によって引き合ってSOミストが粒子径の大きなスプレ液滴に吸収される。このように、SOミストは、粒子径の大きなスプレ液滴に吸収され、粒子径が大きくなった状態で湿式電気集塵機9に流入するために、湿式電気集塵機9で捕集されやすくなり、湿式電気集塵機9でのSOミストの除去率がより高くなる。したがって、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よくより一層低減することができる。
【0067】
(第9実施形態)
第9実施形態の排ガス処理装置は、荷電装置が設けられる排ガスダクト内を2つに分割して2つの分割流路を形成し、2つの分割流路にそれぞ荷電装置を設けたことを特徴としている。第9実施形態の排ガス処理装置は、前記第7及び第8実施形態の排ガス処理装置における荷電装置を設ける場合の他の例を示すもので、それ以外の構成は同一であるので、同一機能部品については同一符号を付してその説明を省略する。
【0068】
第9実施形態の排ガス処理装置90の要部は、例えば、図7と同じ構造であるので図7を用いて説明する。図7に示すように、排ガスダクト11の途中の内部に、ガスの流れ方向に延びる仕切板13が設けられ、排ガスダクト11内が2つの分割流路11b、11cに分割されている。2つの分割流路11b、11cは、排ガスダクト11内に仕切板13を設けて並列接続したが、これに限定されず、例えば、排ガスダクト11を2つのダクトに分岐して再び合流するようにして形成するようにしてもよい。2つの分割流路11b、11cには、それぞれ荷電装置7が設けられている。
【0069】
2つの荷電装置7としては、例えば、分割流路11b、11cの略中央部に放電極7cを設けると共に、分割流路11b、11cを形成する内壁及び仕切板の内壁を対向電極として形成される。放電極7cは、例えば、ガスの流れ方向に延びる直線状の電極部7dを複数段(例えば6段)設け、これら電極部7dの両端部をそれぞれ連結して分割流路11b、11cを流れるミストを略均等に荷電するようにすることが好ましい。なお、放電極7cの構造は、特に限定されないが、他の構造例えば網目状の電極等を用いてミストを略均等に荷電することができる。2つの荷電装置7は、荷電の極性が同一でも正負逆であってもどちらでもよいが、荷電の極性が正負逆になるようにすることが好ましい。
【0070】
2つの荷電装置の荷電の極性が同一の場合には、湿式脱硫装置8から排出された排ガスは、排ガスダクト11を流れる途中で2つに分かれて2つの分割流路11b、11c内にそれぞれ流入する。2つの分割流路11b、11cに流入した排ガスに含まれるミストは、各荷電装置7によって同一の極性にそれぞれ荷電され、そして、合流して湿式電気集塵機9に流入して捕集されて除去される。このとき、SOミストは、例えば負の極性に帯電しているために、電荷のクーロン力によって集塵極に捕集される。
【0071】
また、荷電装置7から排出されるSOミストの粒子径は、図11に示すように、荷電をかけない場合(OFF)に比べて粒子径が大きくなるので、湿式電気集塵機9で捕集されやすくなり、湿式電気集塵機9でのSOミストの除去率が高くなる。
【0072】
このように、SOミストの除去率が高くなることから、湿式電気集塵機9の小型化を図れる。その結果、湿式電気集塵機9では、SOミストが集塵極に付着すると、排ガス中の水分と反応して強酸性の水溶液となるため、湿式電気集塵機9に使用する材料は耐腐食性材料を採用する必要があるが、湿式電気集塵機9を小型にすることができるので、設備費を安くすることができる。したがって、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よくより一層低減することができる。
【0073】
他方、2つの荷電装置の荷電の極性が逆の場合には、2つの排ガスに含まれるミストは、2つの荷電装置7によって互いに逆極性に荷電される。そして、2つの排ガスが合流すると、逆極性のミストが互いに近づいたとき、互いのクーロン力によって引き合って凝集して粒子径が大きなミストとなる。例えば、荷電装置7から排出されるSOミストの粒子径は、図11に示すように、荷電をかけない場合(OFF)に比べて粒子径が大きく、かつ、同一の極性で荷電した場合に比べてさらにSOミストの粒子径が大きくなる。その結果、SOミストは、湿式電気集塵機9で捕集されやすくなり、湿式電気集塵機9でのSOミストの除去率が高くなる。したがって、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よくより一層低減することができる。
【0074】
なお、荷電装置が設けられる排ガス流路を2つに分割して2つの分割流路にそれぞ荷電装置を設けたが、これに限定されずに、排ガス流路を3つ以上に分割し、3つ以上に分割した各分割流路にそれぞれ荷電装置を設けるようにしてもよい。
【0075】
(第10実施形態)
図12は、本発明の第10実施形態の排ガス処理装置の一部を示す図である。図12に示すように、第10実施形態の排ガス処理装置100は、2つの石炭焚ボイラ2から排出された燃焼排ガスをそれぞれ個別にガス中に含まれるNOx、煤塵を除去してから、1つに合流させて1つの湿式脱硫装置8で硫黄酸化物を除去するものである。前記実施形態の排ガス処理装置と同一機能部品については同一符号を付してその説明を省略する。
【0076】
第10実施形態の排ガス処理装置100は、2つの石炭焚ボイラ2から排出された燃焼排ガスを処理するもので、2つの石炭焚ボイラ2から排出された燃焼排ガスが流入する2つの第1排ガスダクト61及び第2排ガスダクト62と、第1排ガスダクト61及び第2排ガスダクト62が連結されて2つの排ガスを合流させてガスを案内する第3排ガスダクト63とを有する。第1排ガスダクト61及び第2排ガスダクト62には、それぞれ排ガスの上流側から順に、脱硝装置3、エアヒータ4、ガスクーラ5、集塵装置6等が設けられている。また、第3排ガスダクト63には、湿式脱硫装置8、荷電装置7、湿式電気集塵機9、図示しない誘引送風機、煙突15等が設けられている。
【0077】
第3排ガスダクト63の途中の内部に、ガスの流れ方向に延びる仕切板64が設けられ、第3排ガスダクト63内が2つの分割流路63b、63cに分割されている。2つの分割流路63b、63cは、第3排ガスダクト63内に仕切板64を設けて並列接続したが、これに限定されず、例えば、排ガスダクトを2つのダクトに分岐して再び合流するようにして形成するようにしてもよい。2つの分割流路63b、63cには、それぞれ荷電装置7が設けられている。2つの荷電装置7は、例えば、分割流路の略中央部に放電極を設けると共に、分割流路を形成する内壁及び仕切板の内壁を対向電極としてなるものでもよい。2つの荷電装置は、荷電の極性が同一でも正負逆であってもどちらでもよい。
【0078】
2つの荷電装置7の荷電の極性が同一の場合には、湿式脱硫装置8から排出された排ガスに含まれるミストは、それぞれ各荷電装置によって同一の極性に荷電され、そして、合流して湿式電気集塵機9に流入する。このために、前記の第7及び第8実施形態の排ガス処理装置70、80と略同一の作用効果を奏する。
【0079】
他方、2つの荷電装置7の荷電の極性が逆の場合には、2つの排ガスに含まれるミストは、2つの荷電装置7によって互いに逆極性に荷電される。そして、2つの排ガスが合流すると、逆極性のミストが互いに近づいたとき、互いのクーロン力によって引き合って凝集して粒子径が大きなミストとなる。粒子径が大きなミストは、排ガスと共に湿式電気集塵機9に流入する。このため、湿式電気集塵機9で捕集されやすくなるので、湿式電気集塵機9でのSOミストの除去率が高くなる。したがって、湿式電気集塵機9を大型化することなく、排ガス中に含まれるSOを効率よくより一層低減することができる。
【0080】
なお、2つの石炭焚ボイラ2からの燃焼排ガスの場合について説明したが、これに限定されずに、3つ以上の石炭焚ボイラからの燃焼排ガスを処理する場合についても第10実施形態の排ガス処理装置を適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。
【図5】本発明の第4実施形態の排ガス処理装置の要部を示す図である。
【図6】SOミストの粒径の関係を示す図である。
【図7】本発明の第5実施形態の排ガス処理装置の要部を示す図で、(a)は概略斜視図、(b)は概略平面図である。
【図8】本発明の第6実施形態の排ガス処理装置の構成の一部を示す概略斜視図である。
【図9】本発明の第7実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。
【図10】本発明の第8実施形態の排ガス処理装置の全体構成を示す図である。
【図11】湿式電気集塵機におけるSO除去率の関係を示す図である。
【図12】本発明の第10実施形態の排ガス処理装置の構成の一部を示す概略斜視図である。
【図13】SO除去率とSOミスト平均粒子径との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 第1実施形態の排ガス処理装置
2 ボイラ
6 集塵装置
7 荷電装置
8 湿式脱硫装置
9 湿式電気集塵機
10 荷電スプレ装置
11 排ガスダクト
12 湿式集塵機
20 第2実施形態の排ガス処理装置
21 荷電スプレ装置
30 第3実施形態の排ガス処理装置
40 第4実施形態の排ガス処理装置
41 荷電スプレ装置
50 第5実施形態の排ガス処理装置
60 第6実施形態の排ガス処理装置
61 第1排ガスダクト
62 第2排ガスダクト
63 第3排ガスダクト
70 第7実施形態の排ガス処理装置
80 第8実施形態の排ガス処理装置
90 第9実施形態の排ガス処理装置
100 第10実施形態の排ガス処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの燃焼排ガス中の熱を回収するエアヒータ及びガスクーラと、該エアヒータ及びガスクーラで熱を回収された排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、該集塵装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物を脱硫剤スラリを用いて除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置から排出される排ガス中のミストを捕集する湿式電気集塵機とを備えた排ガス処理装置において、
前記集塵装置と前記湿式脱硫装置との間の排ガス流路に、前記排ガス中のミストを荷電させる荷電装置を設けたことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
ボイラの燃焼排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、該集塵装置から排出される排ガス中の煤塵を捕集する湿式集塵機と、該湿式集塵機から排出される排ガス中の硫黄酸化物を脱硫剤スラリを用いて除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置から排出される排ガス中のミストを捕集する湿式電気集塵機とを備えた排ガス処理装置において、
前記湿式集塵機と前記湿式脱硫装置との間の排ガス流路に、前記排ガス中のミストを荷電させる荷電装置を設けたことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
前記荷電装置が設けられる前記排ガス流路は、並列接続されると共に前記荷電装置がそれぞれ設けられる2つの分割流路を有し、
該2つの分割流路に設けられる2つの前記荷電装置は、荷電の極性が正負又は同一であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記集塵装置は、2つのボイラの燃焼排ガス中の煤塵をそれぞれ個別に捕集すべく2つ備えられ、該2つの集塵装置から排出される排ガスの2つの排ガス流路は、前記湿式脱硫装置に接続された1つの排ガス流路にそれぞれ接続され、前記2つの排ガス流路に、排ガス中のミストを荷電させる荷電装置をそれぞれ設け、該2つの荷電装置は、荷電の極性が正負又は同一であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記湿式脱硫装置は、前記脱硫剤スラリをスプレさせるノズルの一部に荷電する荷電スプレ装置を設け、該荷電スプレ装置は、前記荷電装置とは異なる正又は負の電荷を荷電することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
ボイラの燃焼排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、該集塵装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置から排出される排ガス中のミストを捕集する湿式電気集塵機とを備えた排ガス処理装置において、
前記湿式脱硫装置と前記湿式電気集塵機との間の排ガス流路に、前記排ガス中のミストを荷電させる荷電装置を設けたことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項7】
前記荷電装置と前記湿式電気集塵機との間の排ガス流路に、前記排ガス中に前記荷電装置とは異なる正又は負の電荷を荷電させた液をスプレする荷電スプレ装置を設けた請求項6に記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
前記荷電装置が設けられる前記排ガス流路は、並列接続されると共に前記荷電装置がそれぞれ設けられる2つの分割流路を有し、
該2つの分割流路に設けられる2つの前記荷電装置は、荷電の極性が正負又は同一であることを特徴とする請求項6又は7に記載の排ガス処理装置。
【請求項9】
前記荷電装置が設けられる前記排ガス流路は、並列接続されると共に前記荷電装置がそれぞれ設けられる2つの分割流路を有し、
該2つの分割流路には、前記荷電装置とは異なる正又は負の電荷を荷電する荷電スプレ装置とがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項6に記載の排ガス処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−69463(P2010−69463A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242956(P2008−242956)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】