説明

排ガス処理装置

【課題】還元剤、水銀塩素化剤を濃度ムラ無く均一に煙道内に供給し、水銀の除去性能、窒素酸化物の還元性能を維持することが可能な排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】本実施例に係る排ガス処理装置10は、ボイラ11からの排ガス12中に含まれるNOx、Hgを除去する排ガス処理装置であって、ボイラ11の下流の煙道13内に、NH4Cl溶液14を噴霧ノズル15により噴霧するNH4Cl溶液供給手段16と、NH4Clが気化する領域よりも後流側に設けられ、NH4Clが気化して生成されるHCl、NH3を排ガス12と混合させるのを促進する混合器17と、排ガス12中のNOxをNH3で還元すると共に、HCl共存下でHgを酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝装置18と、還元脱硝装置18において酸化されたHgを石灰石膏スラリー21を用いて除去する湿式脱硫装置22とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラなどから排出される排ガス中に含まれる水銀の酸化処理を行う排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚き排ガスや重質油を燃焼した際に生じる排ガス中には、煤塵、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)のほか、金属水銀(Hg0)が含まれることがある。近年、NOxを還元する脱硝装置、および、アルカリ吸収液をSOx吸収剤とする湿式脱硫装置と組み合わせて、この金属水銀を処理する方法や装置について様々な考案がなされてきた。
【0003】
排ガス中の金属水銀を処理する方法として、煙道中、高温の脱硝装置の前流側でアンモニウム(NH3)溶液を噴霧して還元脱硝すると共に、塩酸(HCl)溶液等の酸化助剤を噴霧し、脱硝触媒上で水銀を酸化(塩素化)させ、水溶性の塩化水銀にした後、後流側に設置した湿式の脱硫装置で水銀を除去するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、HClを供給する方法として、塩化水素(HCl)気化器を用いて塩酸(HCl)溶液を気化させ塩化水素(HCl)ガスとし、所定濃度のHClを含む混合ガスに調整した後、混合ガスを煙道内に分散させ、水銀を含有する排ガス中に均一に噴霧する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、他のHClを供給する方法として、脱硝装置の前流側の煙道内に塩化アンモニウム(NH4Cl)を粉体状として添加し、排ガスの高温雰囲気温度によりNH4Clを昇華させ、HCl、アンモニア(NH3)をそれぞれ気化させ、気化されたHClガス、NH3ガスを排ガスに混合する方法がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
上記のような排ガス中の金属水銀を処理する方法では、塩酸溶液を用いる場合、塩酸は危険物であるため、輸送、取り扱いなど手間及びコストを要するという問題がある。また、HCl気化器を用いた場合では、熱源としてスチーム等が必要となり、HCl気化器など設備、運転、メンテナンスなどの費用を要するという問題がある。更に、NH4Cl粉末を用いた場合では、粒径を細かくして分散させる必要があるため、ハンドリングが困難であり、噴霧量の制御が容易ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−230137号公報
【特許文献2】特開2007−167743号公報
【特許文献3】特開2008−221087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、近年、Hg0を脱硝触媒にて酸化させるために、脱硝装置の前流側で塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液を噴霧する方法が検討されている。従来のように、塩酸溶液を用いる方法に比べ、NH4Cl溶液は危険性が少ないため輸送、取り扱いが容易であり、なおかつ、液を噴霧するため気化器などの設備が不要であり、コストが低減できる。
【0009】
ボイラから排出される排ガスの排ガス処理システムの概略図を図34に示す。図34に示すように、排ガス処理システム100は、燃料として石炭を供給するボイラ101から排出されたNOx、Hg0を含有する排ガス102にNH4Cl溶液103を煙道104内に噴霧するNH4Cl噴霧装置105と、NOxを還元すると共に、Hg0を酸化する脱硝触媒を備える還元脱硝装置106と、排ガス102中の酸化されたHgClを除去する脱硫装置107とを有する。ボイラ101から排出された排ガス102中にNH4Cl溶液タンク108よりNH4Cl溶液103を噴霧ノズル109により噴霧し、NH4Cl溶液103が気化し、NH3ガス、HClガスを排ガス102に混合する。その後、排ガス102は還元脱硝装置106に供給され、還元脱硝装置106内の脱硝触媒によりNOxの還元を行なうと共に、Hg0を酸化する。その後、NOx除去後の排ガス102は空気予熱器(エアヒータ)110で空気111と熱交換され、熱回収された後、電気集塵器112に供給され、熱回収後の排ガス102中の煤塵が除去される。排ガス102は脱硫装置107に供給され、脱硫装置107に供給される石膏石スラリー113と気液接触させ、SOx、Hgが除去され、浄化ガス114として煙突115より外部に排出される。
【0010】
また、煙道104内の還元脱硝装置106の前流側に設置されたNOx測定計116により排ガス102中のNOx濃度を測定し、脱硫装置107の後流側に設置されたHg濃度計117によりHgの濃度を測定する。測定されたNOx濃度、Hg濃度の測定値に基づいて、NH4Cl溶液タンク108より供給するNH4Cl溶液103の供給量、濃度を演算部118により算出する。算出されたNH4Cl溶液103の供給量、濃度に基づいて、制御手段119により煙道104内に供給されるNH4Cl溶液103の供給量を制御する。
【0011】
また、脱硫装置107の塔底部に設置された酸化還元電位測定装置120により酸化還元電位を測定し、空気121の供給量を調整し、酸化水銀の還元防止と、放散防止を行なっている。
【0012】
このように、排ガス102中にNH4Cl溶液103を供給することで、排ガス102中のNOxを除去すると共に、Hgを酸化することができる。
【0013】
ここで、図34に示す排ガス処理システム100では、NH4Cl溶液103を噴霧する際に、NH4Cl溶液103が気化する前に煙道104の壁面や煙道中の構造物に付着すると、腐食、灰の堆積、ヒートショックによる破損などを生じる虞がある。そのため、図35に示すように、噴霧ノズル109は煙道104の壁面の端から一定距離離した位置に設置する必要がある。
【0014】
しかしながら、噴霧ノズル109を煙道104の壁際からある程度離した位置より噴霧すると、煙道104内にNH4Cl溶液103を均一に噴霧することはできず、NH4Cl溶液103から生じるNH3、HClが気化した後のNH3濃度が不均一となり、脱硝性能が低下する、という問題がある。
【0015】
本発明は、前記問題に鑑み、還元剤、水銀塩素化剤を濃度ムラ無く均一に煙道内に供給し、水銀の除去性能、窒素酸化物の還元性能を維持することが可能な排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するため、下記構成とすることができる。
1) 本発明の第1の発明は、ボイラからの排ガス中に含まれる窒素酸化物、水銀を除去する排ガス処理装置であって、前記ボイラの下流の煙道内に、気化した際に酸化性ガスと還元性ガスとを生成する還元酸化助剤を噴霧ノズルにより液体状で噴霧する還元酸化助剤供給手段と、前記還元酸化助剤が気化する領域よりも後流側に設けられ、前記還元酸化助剤が気化した際に生成される前記酸化性ガス及び前記還元性ガスを前記排ガスと混合させるのを促進する混合手段と、前記排ガス中の窒素酸化物を前記還元性ガスで還元すると共に、前記酸化性ガス共存下で水銀を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝手段と、該還元脱硝手段において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫手段と、を有することを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0017】
2) 第2の発明は、第1の発明において、前記還元酸化助剤が、塩化アンモニウムであることを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0018】
3) 第3の発明は、第1又は2の発明において、前記混合手段が、前記排ガスに旋回流を生じさせる旋回流誘起部材を前記排ガスの流れ方向と直交するように複数配置されたユニットであることを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0019】
4) 第4の発明は、第3の発明において、前記混合手段が、前記ユニットを前記排ガスの流れ方向に複数段設けられてなることを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0020】
5) 第5の発明は、第3又は4の発明において、前記旋回流誘起部材が、前記排ガスの入口側に対向面を有する一対の第1の旋回流誘起板と、前記排ガスの排出側に対向面を有する一対の第2の旋回流誘起板と、を有し、前記第1の旋回流誘起板と前記第2の旋回流誘起板とを連結する連結部において両方の対向面が異なるように各々連結されることを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0021】
6) 第6の発明は、第5の発明において、前記旋回流誘起部材の幅L、高さDが、下記式の範囲内であることを特徴とする排ガス処理装置にある。
MIN(B、H)/10≦L≦MIN(B、H)・・・(1)
MIN(B、H)/10≦D≦5×MIN(B、H)・・・(2)
但し、Bは設置位置における煙道の断面の一方の辺の長さであり、Hは煙道の断面の他方の辺の長さであり、MIN(B、H)は煙道の断面の一方の辺の長さB、煙道の断面の他方の辺の長さHのうちの何れか短辺側の長さの値である。
【0022】
7) 第7の発明は、第1又は2の発明において、前記混合手段が、前記煙道内に配設され、前記煙道内の前記排ガスのガス流れの上流側では平板状に形成されると共に、前記排ガスのガス流れの下流側に向かうに従って波形に形成される拡散旋回板であり、前記排ガスのガス流れの下流側に向かうに従って前記波形の振幅が大きくなるように形成されてなることを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0023】
8) 第8の発明は、第1乃至7の何れか一つの発明において、前記還元酸化助剤供給手段と前記還元脱硝手段との間に設けられ、前記煙道中にアンモニアガスを供給するアンモニアガス供給部、前記煙道内に塩化水素ガスを供給する塩化水素ガス供給部の何れか一方又は両方を有することを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0024】
更に上述の課題を解決するため、更に下記構成を採用することもできる。
【0025】
9) 即ち、噴霧ノズルが、前記還元酸化助剤を前記排ガスの流通する煙道の内壁に付着しないように供給するようにしてもよい。
【0026】
10) 少なくともガス流速、液滴初速、液滴径、排ガス温度、液滴温度から求められる液滴気化に要する距離Lと、噴射角度αに基づいて、前記噴射ノズルのノズル孔と前記煙道の内壁との最短距離xが、下記式を満たすように前記噴霧ノズルを配置するようにしてもよい。
x>L×sinα・・・(3)
【0027】
11) 前記噴霧ノズルのノズル孔は、前記煙道の壁面から0.5m以上離した位置に設けるようにしてもよい。
【0028】
12) 吹込み管が前記煙道内に複数設けられる場合、複数の吹込み管のノズル孔は下記式を満たすように配置するようにしてもよい。
a≦b/5・・・(4)
但し、aは吹込み管のノズル間距離であり、bは煙道の断面の長さのうちの長辺側の長さである。
【0029】
13) 前記吹込み管が、前記還元酸化助剤を噴霧するノズル孔を複数有するようにしてもよい。
【0030】
14) 前記吹込み管が、前記還元酸化助剤を噴霧するノズル孔を複数有する場合において、前記ノズル孔同士の間隔が0.3m以下とするようにしてもよい。
【0031】
15) 前記吹込み管が前記煙道内に複数設けられる場合、各々の前記吹込み管からの噴霧量を変更可能としてもよい。
【0032】
16) 前記煙道が前記煙道内に前記還元酸化助剤を供給する供給位置よりも後流側の前記煙道の内壁に突状部材を設けるようにしてもよい。
【0033】
17) 前記煙道が前記煙道内に前記還元酸化助剤を供給する供給位置よりも後流側に前記煙道内の通路を狭くするくびれ部を設けるようにしてもよい。
【0034】
18) 前記還元脱硝手段の上流側に設けられるガイドベーンに、気化した前記酸化性ガス、前記還元性ガスの前記排ガスへの混合を促進する混合促進補助部材が設けるようにしてもよい。
【0035】
19) 前記噴霧ノズルが、前記還元酸化助剤と、前記還元酸化助剤の噴霧用の空気とを噴射させる二流体ノズルとしてもよい。
【0036】
20) 前記還元酸化助剤を供給する供給位置よりも上流側に、前記排ガスの流速を測定する流量測定装置を設けるようにしてもよい。
【0037】
21) ボイラからの排ガス中に含まれる窒素酸化物、水銀を除去する排ガスの水銀除去方法であって、以下の工程を有するようにしてもよい。
前記ボイラの煙道内に気化した際に酸化性ガスと還元性ガスとを生成する還元酸化助剤を噴霧ノズルにより液体状で噴霧する還元酸化助剤供給工程、
前記還元酸化助剤が気化する領域よりも後流側に、前記還元酸化助剤が気化した際に生成される前記酸化性ガス及び前記還元性ガスを前記排ガスと混合させるのを促進する混合工程、
脱硝触媒で前記排ガス中の窒素酸化物を前記還元性ガスで還元すると共に、前記酸化性ガス共存下で水銀を酸化する還元脱硝処理工程、
該還元脱硝処理工程において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫工程。
【0038】
22) 前記還元酸化助剤として、塩化アンモニウムを用いるようにしてもよい。
【0039】
23) 更に前記還元酸化助剤を供給する供給位置よりも上流側に、前記排ガスの流速を測定する流量測定工程を有し、測定された前記排ガスの流速に基づいて前記還元酸化助剤の噴霧量、噴霧角度、噴霧初速度を調整するようにしてもよい。
【0040】
24) 前記還元脱硝処理工程の前工程側に、前記排ガス中の窒素酸化物の濃度を測定する窒素酸化物濃度測定工程と、前記還元脱硝処理工程の後工程側に、前記排ガス中の水銀の濃度を測定する水銀濃度測定工程とを含み、前記窒素酸化物濃度測定工程により得られた前記排ガス中の窒素酸化物の濃度と、前記水銀濃度測定工程により得られた前記排ガス中の水銀の濃度との何れか一方又は両方に基づいて、前記還元酸化助剤供給工程において供給する前記還元酸化助剤の供給量を調整するようにしてもよい。
【0041】
25) 前記還元酸化助剤供給工程と前記還元脱硝処理工程との間に、前記煙道中にアンモニアガスを供給するアンモニアガス供給工程、前記煙道中に塩化水素ガスを供給する塩化水素ガス供給工程の何れか一方又は両方を含み、前記流量測定工程により測定された前記排ガスの流速に基づいて前記アンモニアガス供給工程より供給する前記アンモニアガス、前記塩化水素ガス供給工程より供給する前記塩化水素ガスの何れか一方又は両方の噴霧量、噴霧角度、噴霧初速度を調整するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、還元酸化助剤が気化する領域よりも後流側に還元酸化助剤が気化した際に発生する酸化性ガス及び還元性ガスを排ガスと混合させるのを促進することで、酸化性ガス、還元性ガスを濃度ムラ無く均一に煙道内に供給することができる。このため、還元脱硝装置において水銀の酸化性能を有すると共に、窒素酸化物の還元性能を維持することができると共に、ヒートショックによる煙道や煙道内構造物の破損、腐食、排ガス中の灰の堆積などを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る排ガス処理装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、排ガス処理装置の構成の一部を示す図である。
【図3】図3は、噴霧ノズルから噴霧されるNH4Cl溶液の煙道に対する噴射角度を説明する図である。
【図4】図4は、NH4Cl溶液供給手段の構成の一例を示す図である。
【図5】図5は、煙道内への吹込み管の挿入の一例を示す図である。
【図6】図6は、煙道内への吹込み管の挿入の他の例を示す図である。
【図7】図7は、混合器の一例を示す平面図である。
【図8】図8は、混合器を構成する旋回流誘起部材の平面図である。
【図9】図9は、旋回流誘起部材の正面図である。
【図10】図10は、旋回流誘起部材の斜視図である。
【図11】図11は、混合器を煙道内に設置した時の排ガスのガス流れを模式的に示す図である。
【図12】図12は、図11の部分拡大図である。
【図13】図13は、混合器を煙道内に設置していない場合の排ガス中のNH3ガスの濃度分布の一例を模式的に示す図である。
【図14】図14は、混合器を煙道内に設置した場合の排ガス中のNH3ガスの濃度分布の一例を模式的に示す図である。
【図15】図15は、混合器の圧損と混合器の寸法の関係を示す図である。
【図16】図16は、本発明の実施例2に係る排ガス処理装置の煙道を排ガスの流れ方向から見た時の断面を示す図である。
【図17】図17は、本発明の実施例3に係る排ガス処理装置の煙道を排ガスの流れ方向から見た時の断面を示す図である。
【図18】図18は、吹込み管の構成を簡略に示す図である。
【図19】図19は、吹込み管の部分拡大図である。
【図20】図20は、本発明の実施例4に係る排ガス処理装置の煙道を排ガスの流れ方向から見た時の断面を示す図である。
【図21】図21は、本発明の実施例5に係る排ガス処理装置の煙道の短辺方向から見た時の図である。
【図22】図22は、煙道の長辺方向から見た時の図である。
【図23】図23は、本発明の実施例6に係る排ガス処理装置の煙道の短辺方向から見た時の図である。
【図24】図24は、煙道の長辺方向から見た時の図である。
【図25】図25は、煙道の短辺方向から見た時の図である。
【図26】図26は、煙道の長辺方向から見た時の図である。
【図27】図27は、本発明の実施例7に係る排ガス処理装置の一部を示す図である。
【図28】図28は、図27中の符号Zを示す部分拡大斜視図である。
【図29】図29は、本発明の実施例8に係る排ガス処理装置の煙道内の拡散旋回板を示す模式図である。
【図30】図30は、図29中のA−A断面を簡略に示す図である。
【図31】図31は、旋回拡散板の斜視概略図である。
【図32】図32は、他の旋回拡散板の設置状態を示す図である。
【図33】図33は、本発明の実施例9に係る排ガス処理装置の構成を簡略に示す図である。
【図34】図34は、ボイラの排ガス処理システムの概略図を示す図である。
【図35】図35は、煙道の排ガスの流れ方向から見た時の噴霧ノズルの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0045】
本発明による実施例1に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る排ガス処理装置の構成を示す概略図であり、図2は、排ガス処理装置の構成の一部を示す図である。
図1、2に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置10は、ボイラ11からの排ガス12中に含まれる窒素酸化物(NOx)、水銀(Hg)を除去する排ガス処理装置であって、ボイラ11の下流の煙道13内に、還元酸化助剤として塩化アンモニウム(NH4Cl)を含む塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液14を噴霧ノズル15により液体状で噴霧する塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給手段(還元酸化助剤供給手段)16と、NH4Clが気化する領域よりも後流側に設けられ、NH4Clが気化した際に生成される酸化性ガスとして塩化水素(HCl)ガス及び還元性ガスとしてアンモニア(NH3)ガスを排ガス12と混合させるのを促進する混合器(混合手段)17と、排ガス12中のNOxをNH3ガスで還元すると共に、HClガス共存下でHgを酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝装置(還元脱硝手段)18と、脱硝された排ガス12を熱交換する熱交換器(エアヒータ)19と、脱硝された排ガス12中の煤塵を除去する集塵器20と、還元脱硝装置18において酸化されたHgをアルカリ吸収液として石灰石膏スラリー21を用いて除去する湿式脱硫装置22と、を有するものである。
【0046】
なお、本実施例に係る排ガス処理装置10においては、還元酸化助剤としてNH4Clを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、還元酸化助剤は気化した際に酸化性ガスと還元性ガスとを生成するものであれば用いることができる。
また、本発明においては、還元酸化助剤とは、酸化性ガス共存下で水銀(Hg)を酸化するのに用いられる酸化助剤と、還元性ガスによりNOxを還元する還元剤として機能するものをいう。
本実施例では、酸化性ガスとしてHClガスが用いられ、還元性ガスとしてNH3ガスが用いられている。
【0047】
ボイラ11から排出される排ガス12には、NH4Cl溶液供給手段16よりNH4Cl溶液14が供給される。NH4Cl溶液供給手段16は、NH4Cl溶液14を液体状で煙道13内に供給する塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給管25と、煙道13内にNH4Cl溶液14を圧縮して噴霧させる空気26を煙道13内に供給する空気供給管27と、塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給管25及び空気供給管27の先端部に取り付けられ、NH4Cl溶液14及び空気26を噴射する噴霧ノズル15とを有している。
【0048】
NH4Cl溶液14は塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液タンク28内で所定濃度に調整される。また、NH4Cl溶液供給管25から供給されるNH4Cl溶液14の流量はバルブV1により調整される。NH4Cl溶液14は、NH4Cl溶液タンク28からNH4Cl溶液供給管25内を通過して噴霧ノズル15より煙道13内に噴霧される。
【0049】
NH4Cl溶液供給手段16は、噴霧ノズル15がNH4Cl溶液14を排ガス12の流通する煙道13の内壁13aに付着しないように供給するように配置している。NH4Cl溶液14を排ガス12が流通する煙道13の内壁13aに付着しないように供給する配置としては、噴霧ノズル15が煙道13内において、煙道13の内壁13aから一定以上の距離を置いて配置される構造であることが好ましい。一定以上の距離とは、噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴が噴霧ノズル15から煙道13の内壁13aに到達する前に気化するのに十分な距離である。
実際の煙道寸法、実際の処理条件を考慮すると、噴霧ノズル15のノズル孔は、例えば煙道13の壁面から0.5m以上離した位置に設けるのが好ましい。
【0050】
噴霧ノズル15のノズル孔の位置が、煙道13の壁面から0.5m以上離した位置とするのは、以下に示すように、排ガス12のガス流速、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴初速、液滴径、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の煙道13に対する噴射角度、排ガス12の排ガス温度、NH4Cl溶液14の液滴温度などを考慮する必要があるためである。その一例として、例えば以下のように決定できる。
【0051】
即ち、煙道13内の排ガス12のガス流速が15m/s程度、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴初速が300m/s程度、排ガス12のガス温度が350℃程度、NH4Cl溶液14の液滴温度が20℃程度である場合、NH4Cl溶液14の液滴径に応じて、推定されるNH4Cl溶液14の液滴が噴霧から蒸発するまでの時間と、NH4Cl溶液14の液滴が蒸発するまでの移動距離とは異なる。
NH4Cl溶液14の液滴径と、液滴が噴霧から蒸発するまでの時間と、液滴が蒸発するまでの移動距離との関係の一例を表1に示す。表1中、tはNH4Cl溶液14の液滴が噴霧から蒸発するまでの時間を表し、Lは液滴が蒸発するまでの移動距離を表す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示すように、NH4Cl溶液14の液滴径が40μm程度の時、この液滴が噴霧から蒸発するまでの時間tは0.032s程度であり、NH4Cl溶液14の液滴が蒸発するまでの移動距離Lは、噴霧ノズル15から排ガス12の流れと平行の向きに0.76m程度であると計算される。また、NH4Cl溶液14の液滴径が60μm程度の時、この液滴が噴霧から蒸発するまでの時間tは0.068s程度であり、NH4Cl溶液14の液滴が蒸発するまでの移動距離Lは、噴霧ノズル15から排ガス12の流れと平行の向きに1.6m程度であると計算される。また、NH4Cl溶液14の液滴径が80μm程度の時、この液滴が噴霧から蒸発するまでの時間tは0.119s程度であり、NH4Cl溶液14の液滴が蒸発するまでの移動距離Lは、噴霧ノズル15から噴霧方向に2.7m程度であると計算される。
【0054】
次に、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の煙道13に対する噴射角度を検討する。
図3は、噴霧ノズルから噴霧されるNH4Cl溶液の煙道に対する噴射角度を説明する図である。図3中、噴霧ノズル15のノズル孔から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴の煙道13の壁面に対する噴射角度をαとし、煙道13から噴霧ノズル15のノズル孔までの距離をxとする。
図3に示すように、噴霧ノズル15は、噴霧ノズル15のノズル孔から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴の煙道13の壁面に対する噴射角度αに応じて、下記式(i)を満たすように設置することで、NH4Cl溶液14から噴霧される液滴が煙道13の壁面に衝突しないようにすることができる。
L×sinα < x・・・(i)
但し、Lは、NH4Cl溶液の液滴が蒸発するまでの移動距離を表す。
【0055】
噴霧ノズル15のノズル孔から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴の煙道13の壁面に対する噴射角度αが、排ガス12のガス流れ方向に対して10°程度とした時の煙道13から噴霧ノズル15までの距離xの一例を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
表2に示すように、NH4Cl溶液14の液滴径が40μm程度の時、煙道13から噴霧ノズル15のノズル孔までの距離xは0.13m程度である。また、NH4Cl溶液14の液滴径が60μm程度の時、煙道13から噴霧ノズル15のノズル孔までの距離xは0.28m程度である。また、NH4Cl溶液14の液滴径が80μm程度の時、煙道13から噴霧ノズル15のノズル孔までの距離xは0.47m程度である。
【0058】
よって、噴霧ノズル15のノズル孔から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴の煙道13の壁面に対する噴射角度αが、排ガス12のガス流れ方向に対して10°程度である時、NH4Cl溶液14の液滴径が40μm程度の場合には、噴霧ノズル15は煙道13から0.13m以上離して設置する必要がある。また、NH4Cl溶液14の液滴径が60μm程度の場合には、噴霧ノズル15は煙道13から0.28m以上離して設置する必要がある。また、NH4Cl溶液14の液滴径が80μm程度の場合には、噴霧ノズル15は煙道13から0.47m以上離して設置する必要がある。
【0059】
従って、噴霧ノズル15のノズル孔は、例えば煙道13の壁面から0.5m以上離した位置に設けるようにする。これにより、噴霧ノズル15の設置位置は、排ガス12のガス流速、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴初速、液滴径、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の煙道13に対する噴射角度、排ガス12の排ガス温度、NH4Cl溶液14の液滴温度などに応じて、噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴が噴霧ノズル15から煙道13の内壁13aに到達する前に気化するのに十分な距離とすることができる。この結果、噴霧ノズル15がNH4Cl溶液14を排ガス12の流通する煙道13の内壁13aに付着しないように供給することができる。
【0060】
また、噴霧ノズル15は、NH4Cl溶液14と圧縮用の空気26とを同時に噴射する二流体ノズルで構成されている。空気26は、空気供給部31から空気供給管27を介して噴霧ノズル15に送給され、噴霧ノズル15からNH4Cl溶液14を噴霧する際の圧縮用の空気として用いられる。これにより、噴霧ノズル15から噴射されるNH4Cl溶液14を空気26により煙道13内に微細な液滴として噴霧することができる。
【0061】
また、空気供給管27から供給される空気26の流量はバルブV2により調整される。空気供給管27から供給される空気26の流量により、噴霧ノズル15のノズル孔から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴の大きさを調整することができる。
【0062】
また、噴霧ノズル15から噴射される空気26の流量は、例えば気水比100以上10000以下(体積比)とするのが好ましい。これは、噴霧ノズル15から噴射されるNH4Cl溶液14を微細な液滴として煙道13内に噴霧させるようにするためである。
【0063】
図4は、NH4Cl溶液供給手段の構成の一例を示す図である。図4に示すように、NH4Cl溶液供給手段16は、NH4Cl溶液供給管25を内管とし、空気供給管27を外管とした二重管構造とし、NH4Cl溶液供給管25及び空気供給管27の先端部に噴霧ノズル15が連結されている。空気供給管27がNH4Cl溶液供給管25を囲うように煙道13内に挿入することで、空気26はNH4Cl溶液供給管25と空気供給管27との間を流れるため、煙道13内の排ガス12の熱が空気26によりNH4Cl溶液14に伝達されるのを防ぐことができる。よって、NH4Cl溶液14が排ガス12の熱により加熱されるのを防ぐことができるため、NH4Cl溶液14が噴射される直前まで液体状態を維持することができる。
【0064】
また、NH4Cl溶液供給手段16は、煙道13内にNH4Cl溶液供給管25及び空気供給管27を囲うように煙道13内に挿入された吹込み管32と、吹込み管32内に空気33を供給する空気供給管34とを有している。また、噴霧ノズル15は、吹込み管32の先端部の側壁面の噴射孔35に設けられている。
【0065】
空気33は、NH4Cl溶液14の液滴を更に煙道13内に分散させるために用いられる。空気33は空気供給部36から空気供給管34を介して吹込み管32に送給され、吹込み管32の噴射孔35と噴霧ノズル15との隙間37から噴射される。隙間37から空気33を噴射することで、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴を煙道13内に分散させることができる。また、図1に示すように、空気供給部31から供給される空気33の流量はバルブV3により調整される。
【0066】
また、空気33は、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14のNH4Clが吹込み管32に付着するのを防止するためと、吹込み管32内の温度上昇を抑制しNH4Cl溶液14の沸騰及び塩化アンモニウム粒子の析出を防止するために用いられる。図4に示すように、吹込み管32がNH4Cl溶液供給管25及び空気供給管27を囲うように煙道13内に挿入され、空気33は吹込み管32とNH4Cl溶液供給管25との間を流れるため、空気33はNH4Cl溶液14の冷却用の空気として働く。このため、煙道13内の排ガス12の熱が吹込み管32の外側からNH4Cl溶液供給管25内に伝達されるのを防ぐことができる。よって、吹込み管32内の温度上昇を防止し、NH4Cl溶液14が加熱されるのを防ぐことで、吹込み管32内でNH4Cl溶液14が沸騰するのを防止することができ、NH4Cl溶液14が噴射される直前まで液体状態を維持することができる。また、噴霧ノズル15の腐食も防止することができる。
【0067】
また、吹込み管32内の温度上昇を防止できるため、NH4Cl溶液供給管25、空気供給管27を構成する材料として金属材料を用いることができる。NH4Cl溶液供給管25、空気供給管27を構成する材料として、例えば、NH4Cl溶液供給管25には耐食金属例えばハステロイCなどのニッケル基耐熱・耐食合金、樹脂ライニング鋼管(低温度部)を例示できる。空気供給管27には炭素鋼、ステンレス等を例示することができる。
【0068】
また、噴霧ノズル15は、NH4Cl溶液14の噴霧用として二流体ノズルを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、通常の液体噴霧用の一流体ノズルを用いてもよい。
【0069】
また、NH4Cl溶液供給管25、空気供給管27は吹込み管32内に設け、NH4Cl溶液14を噴霧ノズル15から煙道13内に噴霧するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。NH4Cl溶液供給管25内のNH4Cl溶液14は空気供給管27により囲まれているため、NH4Cl溶液14が排ガス12の熱により加熱されるのを防ぐことができるため、吹込み管32を用いずに噴霧ノズル15からNH4Cl溶液14を煙道13内に噴霧するようにしてもよい。
【0070】
NH4Cl溶液供給管25は空気供給管27内に設けられているが、NH4Cl溶液供給管25は空気供給管27内に設けず、空気供給管27の外側に設けるようにしてもよい。
【0071】
また、空気26は空気供給部31から供給され、空気33は空気供給部36から供給され、各々別々の供給源から空気を供給するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、同一の供給源から空気を供給するようにしてもよい。即ち、空気33は空気供給部31から供給される空気を用いてもよい。また、空気26は空気供給部31から供給される空気を用いてもよい。
【0072】
また、噴霧ノズル15より煙道13内に噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴は、排ガス12の高温雰囲気温度により蒸発することで微細なNH4Clの固体粒子を生成し、下記式(1)のように、HClとNH3とに分解し、昇華する。よって、NH4Cl溶液14を噴霧ノズル15から噴霧することにより、噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴から、HCl、NH3を生じ、NH3ガス、HClガスを煙道13内に供給することができる。
NH4Cl → NH3+HCl・・・(1)
【0073】
また、煙道13内の排ガス12の温度は、例えば320℃以上420℃以下であり、高温である。NH4Cl溶液供給管25は、吹込み管32内に設けられ、空気33がNH4Cl溶液14の冷却用として用いられている。このため、噴霧ノズル15より噴射される直前までNH4Cl溶液14は液体状態を維持し、噴霧ノズル15からNH4Cl溶液14を液滴状で噴霧することで、排ガス12の高温雰囲気温度により噴霧したNH4Cl溶液14の液滴を気化させることができる。
【0074】
また、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴径は、平均して1nm以上100μm以下の微細な液滴とするのが好ましい。平均して1nm以上100μm以下の微細な液滴を生成することで、噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴から生じるNH4Clの固体粒子を排ガス12中に短い滞留時間でNH3、HClに分解し、昇華させることができる。これにより、NH4Cl溶液14を予め加熱しておく必要がないため、煙道13、噴霧ノズル15の低級化、腐食を防止することができる。
【0075】
NH4Cl溶液14は、塩化アンモニウム(NH4Cl)粉末を水に溶解させて生成することができる。NH4Cl粉末、水の各々の供給量を調整することで所定濃度のNH4Cl溶液14を調整することができる。NH4Cl溶液14は、HCl溶液とNH3溶液とを所定濃度の割合で混合させて生成するようにしてもよい。
【0076】
また、NH4Cl溶液14の濃度は、例えば液滴の温度が20℃の場合、20wt%以上30wt%以下とするのが好ましい。表3は、NH4Cl溶液14の液滴の温度と、溶解度、温度との関係を示す。表3に示すように、NH4Cl溶液14の溶解度は液滴の温度に応じておおよそ決まっているためである。
【0077】
【表3】

【0078】
また、煙道13内の排ガス12の温度は、ボイラ11の燃焼条件にもよるが、例えば320℃以上420℃以下が好ましく、320℃以上380℃以下がより好ましく、350℃以上380℃以下が更に好ましい。これはこれらの温度帯において脱硝触媒上でNOxの脱硝反応と、Hgの酸化反応とを同時に効率的に生じさせることができるためである。
【0079】
よって、噴霧ノズル15より液体状態のNH4Cl溶液14を噴霧することで、NH4Cl溶液14を排ガス12の高温雰囲気温度によりHClガス、NH3ガスに分解し、煙道13内に供給することができるため、排ガス12中のHClガス、NH3ガスの濃度分布を均一にすることができる。
また、NH4Cl溶液14が気化する前に煙道13の壁面に付着するのを防止することができるため、煙道13の腐食等に起因して発生する煙道13の破損を防止することができる。
【0080】
また、図5は、煙道内への吹込み管の挿入の一例を示す図である。本実施例に係る排ガス処理装置10においては、図5に示すように、吹込み管32を煙道13内に垂直に挿入し、吹込み管32の先端部の側壁面に設けた噴霧ノズル15からNH4Cl溶液14を排ガス12ガス流れ方向に噴霧するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。図6は、煙道内への吹込み管の挿入の他の例を示す図である。図6に示すように、吹込み管32を煙道13内に所定角度斜めにして挿入し、吹込み管32の先端部に噴霧ノズル15を設け、吹込み管32の先端部に設けた噴霧ノズル15からNH4Cl溶液14を噴霧するようにしてもよい。
【0081】
排ガス12は、NH4Cl溶液供給手段16より噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴から生じたHClガス、NH3ガスを含んだ後、混合器17に送給される。混合器17で排ガス12を攪拌することで、排ガス12にHClガス、NH3ガスの混合を促進することができ、排ガス12におけるHClガス、NH3ガスの濃度分布を均一にすることができる。
【0082】
本実施例の混合器17は、噴霧ノズル15から噴霧されたNH4Cl溶液14が気化する領域よりも後流側に設けられる。一般的なプラント運転条件においては、混合器17は、NH4Cl溶液14を供給する供給位置よりも1m以上後流側に設けるのが好ましい。これは、現実的なプラント運転条件においては、混合器17がNH4Cl溶液14の供給位置より1mより小さいと、NH4Cl溶液14の液滴が気化する前に混合器17と接触してしまうケースが多いためである。よって、混合器17をNH4Cl溶液14を供給する供給位置よりも1m以上後流側に設けることで、排ガス12におけるHClガス、NH3ガスの混合を更に促進させることができる。また、混合器17は現実的な機器配置の観点からNH4Cl溶液14の供給位置より10m程度までとする。
【0083】
また、混合器17の構成を図7〜図10に示す。図7は、混合器の一例を示す平面図であり、図8は、混合器を構成する旋回流誘起部材の平面図であり、図9は、旋回流誘起部材の正面図であり、図10は、旋回流誘起部材の斜視図である。
尚、図7〜図10中、符号42については符号46の部材との違いを明確にするためハッチングを加えて示している。
図7に示すように、本実施例の混合器17は、排ガス12に旋回流を生じさせる旋回流誘起部材41を排ガス12の流れ方向と直交するように六個配置されたユニットで形成されるものである。図8〜図10に示すように、旋回流誘起部材41は、排ガス12の入口側に対向面42aを有する一対の第1の旋回流誘起板42と、排ガス12の排出側に対向面43aを有する一対の第2の旋回流誘起板43と、を有し、第1の旋回流誘起板42と第2の旋回流誘起板43とを連結する連結部として平板状の中間部材44において第1の旋回流誘起板42の対向面42aと第2の旋回流誘起板43の対向面43aとが異なるように各々連結されている。本実施例においては、第1の旋回流誘起板42の対向面42aと第2の旋回流誘起板43の対向面43aとが約90°異なるようにして配置されている。
【0084】
第1の旋回流誘起板42と第2の旋回流誘起板43とは、各々、略三角形状に形成されている。また、第1の旋回流誘起板42は排ガス12の入口側に設けられ、第2の旋回流誘起板43は排ガス12の排出側に設けられるため、旋回流誘起部材41を正面から見たとき、第1の旋回流誘起板42は第2の旋回流誘起板43より下側に位置している。また、中間部材44は平板であり、第1の旋回流誘起板42と第2の旋回流誘起板43とを連結するかなめとして機能している。また、第1の旋回流誘起板42には下部支持板45が設けられ、第2の旋回流誘起板43には上部支持板46が設けられている。下部支持板45、上部支持板46により隣接する旋回流誘起部材41同士を連結するようにしている。
【0085】
図10に示すように、排ガス12が旋回流誘起部材41に流入すると、排ガス12は第1の旋回流誘起板42の対向面42aの裏面側に衝突してガス流れが変化し、第2の旋回流誘起板43の方向に流れる。その後、排ガス12は第2の旋回流誘起板43の対向面43aの裏面側に衝突して更にガス流れが変化する。このため、排ガス12は、第1の旋回流誘起板42、第2の旋回流誘起板43によりガス流れが変化し、第1の旋回流誘起板42、第2の旋回流誘起板43を迂回するようにして流れ、旋回流誘起部材41の排ガス12の流入方向から排ガス12の排出方向に向かって旋回しながら流れる。
【0086】
また、本実施例においては、第1の旋回流誘起板42の対向面42aと第2の旋回流誘起板43の対向面43aとを約90°異なる向きとなるように配置しているが、本発明はこれに限定されるものではない。第1の旋回流誘起板42の対向面42aと第2の旋回流誘起板43の対向面43aとの向きは、旋回流誘起部材41に流入した排ガス12を旋回流誘起部材41の排ガス12の流入方向から排ガス12の排出方向に向かって旋回させながら流すことができる角度であればよい。
【0087】
また、本実施例においては、混合器17は、図7に示すように、旋回流誘起部材41を排ガス12の流れ方向と直交するように六個配置されたユニットとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、煙道13の面積等に応じて旋回流誘起部材41を設置する数は適宜変更する。
【0088】
また、本実施例においては、混合器17は排ガス12の流れ方向に旋回流誘起部材41が6個配置されたユニットを1段として構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、排ガス12の流れ方向に旋回流誘起部材41が複数配置されたユニットを複数段設置するようにしてもよい。また、本実施例の混合器17は排ガス12の流れ方向と直交する方向に旋回流誘起部材41が複数配置されたユニットを設けると共に、排ガス12の流れ方向に旋回流誘起部材41が複数配置されたユニットを複数設けるようにしてもよい。
【0089】
図11は、混合器を煙道内に設置した時の排ガスのガス流れを模式的に示す図であり、図12は、図11の部分拡大図である。
なお、図11、12中には、図7同様、旋回流誘起部材41を煙道13の幅方向に六個設けている。
図11、12に示すように、排ガス12は、旋回流誘起部材41を通過する際、第1の旋回流誘起板42及び第2の旋回流誘起板43に衝突してガス流れが変化し、第1の旋回流誘起板42、第2の旋回流誘起板43を迂回するようにして流れることで、排ガス12を旋回しながら煙道13の下側から上側に向かって流すことができるため、排ガス12とHClガス、NH3ガスとの混合を促進することができる。
【0090】
また、混合器17は、噴霧ノズル15から噴霧されたNH4Cl溶液14が気化する領域よりも後流側に設けられているため、NH4Cl溶液14の液滴が気化する前に混合器17と接触するのを防止できるため、ヒートショックによる混合器17の破損、混合器の腐食、排ガス11中の灰の堆積などを防止することができる。
【0091】
図13、14は、図2におけるA−A断面図であり、図13は、混合器を煙道内に設置していない場合の排ガス中のNH3ガスの濃度分布の一例を模式的に示す図である。図14は、混合器を煙道内に設置した場合の排ガス中のNH3ガスの濃度分布の一例を模式的に示す図である。
【0092】
図13、14に示すように、混合器17を設置していない場合の方が還元脱硝装置18に流入する直前の排ガス12中のNH3ガスの濃度分布のばらつきは、煙道13内に混合器17を設置している場合に比べ還元脱硝装置18に流入する直前の排ガス12中のNH3ガスの濃度分布のばらつきよりも大きくなっている。
【0093】
よって、噴霧ノズル15から噴霧されたNH4Cl溶液14が気化する領域よりも後流側に混合器17を設けることで、煙道13内における排ガス12にNH3ガスの混合を促進させることができるため、排ガス12中のNH3ガスの濃度分布のばらつきは抑えられ、NH3ガスの濃度分布のばらつきは例えば5%程度の範囲内とし、ほぼ均一とすることができる。このため、還元脱硝装置18において脱硝触媒でのNOxの還元効率を向上させることができる。
【0094】
また、噴霧ノズル15から噴霧されたNH4Cl溶液14が気化する領域よりも後流側に混合器17を設けることで、煙道13内における排ガス12にNH3ガスの他にHClガスの混合も促進することができる。このため、排ガス12中のHClガスの濃度分布のばらつきは抑えられ、HClガスの濃度分布のばらつきについても例えば5%程度の範囲内とし、ほぼ均一とすることができる。このため、還元脱硝装置18において脱硝触媒でのHgの酸化性能を向上させることができる。
【0095】
また、図7〜図10に示すように、旋回流誘起部材41の幅L、高さDが、下記式(2)、(3)の範囲内であることが好ましい。
MIN(B、H)/10≦L≦MIN(B、H)・・・(2)
MIN(B、H)/10≦D≦5×MIN(B、H)・・・(3)
但し、Bは設置位置における煙道の断面の長辺であり、Hは煙道の断面の短辺であり、MIN(B、H)は煙道の断面の長辺B、煙道の断面の短辺Hのうちの何れか短い方の辺である。煙道の断面の長辺B、短辺Hが同じ長さである場合にはどちらでもよい。
【0096】
旋回流誘起部材41を上記式(2)、(3)の範囲内とするのは、以下に示すように、混合器の圧損の条件、排ガス12中のNH3の濃度のバラツキ、製造する際の加工性の観点、現実の運転条件の観点、メンテナンス性の観点などを考慮して定める必要があるためである。
図15は、混合器の圧損と混合器の寸法の関係を示す図である。図15に示すように、混合器17の圧損が25mmAq以下であるためには、下記式(4)を満たす必要がある。また、排ガス12中のNH3の濃度の濃度バラツキを5%以下とするためには、下記式(5)を満たす必要がある。
MIN(B、H)×D/L2≧2・・・(4)
MIN(B、H)×D/L2≦5・・・(5)
【0097】
即ち、圧損の条件として、混合器の圧損が25mmAq以下であるためには、上記式(4)を満たす必要がある。また、混合器の効果として排ガス12中のNH3の濃度の濃度バラツキを5%以下とするためには、上記式(5)を満たす必要がある。
【0098】
また、混合器は製造する際の加工性の観点、現実の運転条件の観点、メンテナンス性の観点から上記式(2)、下記式(6)を満たす必要がある。
MIN(B、H)/10≦L≦MIN(B、H)・・・(2)
MIN(B、H)/10≦D・・・(6)
【0099】
上記式(4)、(5)より、Dは下記式(7)のように表せる。
2L2/MIN(B、H)≦D≦5L2/MIN(B、H)・・・(7)
【0100】
上記式(7)に上記式(2)を代入すると、Dは下記式(8)のように表せる。
MIN(B、H)/50≦D≦5×MIN(B、H)・・・(8)
【0101】
そして、上記式(8)に上記式(6)を考慮すると、Dは上記式(3)のように表される。
MIN(B、H)/10≦D≦5×MIN(B、H) ・・・(3)
【0102】
このように、旋回流誘起部材41の幅L、高さDが、上記式(2)、(3)の範囲内にあることで、複数の旋回流誘起部材41を煙道13内に設置することができるため、排ガス12にHCl、NH3の混合を促進させることができる。
【0103】
また、第1の旋回流誘起板42および第2の旋回流誘起板43の形状は、下部支持板45及び上部支持板46から中間部材44にかけて形成される三角形状に限定されるものではなく、排ガス12に旋回流を発生させ、排ガス12のHClガス、NHガスとの混合を促進させることができる形状であればよい。例えば第1の旋回流誘起板42および第2の旋回流誘起板43の形状は、第2の旋回流誘起板43及び第1の旋回流誘起板42の一端側から他端側にかけて曲線型、波型などとしてもよい。
【0104】
よって、本実施例に係る排ガス処理装置10によれば、混合器17として煙道13の断面方向に旋回流誘起部材41を複数設けることで、排ガス12中にHClガス、NH3ガスの混合を促進させることができるため、噴霧ノズル15より噴霧されたNH4Cl溶液14が気化して生じるNH3及びHClの濃度の分布の均一化を図ることができる。これにより、還元脱硝装置18において脱硝触媒によりHgの酸化性能およびNOxの還元性能を向上させることができると共に、ヒートショックによる煙道13や混合器17など煙道内構造物の破損、煙道13の腐食、排ガス11中の灰の堆積などを防止することができる。
【0105】
また、NH4Cl溶液14の液滴から生じたHClガス、NH3ガスは、図1に示すように、排ガス12に同伴して還元脱硝装置18に送給される。図2に示すように、還元脱硝装置18は、3つの脱硝触媒層47−1〜47−3で構成されている。また、排ガス12は還元脱硝装置18を通過する前に整流板48でガス流れを均一にする。NH4Clが分解して生じたNH3ガスは還元脱硝装置18でNOxの還元脱硝用に用い、HClガスはHgの酸化用に用いてNOx及びHgを排ガス12から除去する。
【0106】
即ち、還元脱硝装置18に充填されている脱硝触媒層47−1〜47−3の脱硝触媒上でNH3ガスは下記式(9)のようにNOxを還元脱硝し、HClガスは下記式(10)のようにHgを水銀酸化する。
4NO+4NH3+O2 → 4N2+6H2O・・・(9)
Hg+1/2O2+2HCl → HgCl2+H2O・・・(10)
【0107】
また、還元脱硝装置18は、3つの脱硝触媒層47−1〜47−3で構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、還元脱硝装置18は、脱硝性能に応じて脱硝触媒層の数を適宜変更することができる。
【0108】
また、図1に示すように、排ガス12は、還元脱硝装置18において排ガス12中のNOxの還元とHgの酸化がされた後、エアヒータ19、集塵器20を通過して湿式脱硫装置22に送給される。また、エアヒータ19と集塵器20との間には熱回収器を設けるようにしてもよい。
【0109】
湿式脱硫装置22では、排ガス12を装置本体49内の底部の壁面側から送給し、アルカリ吸収液として用いられる石灰石膏スラリー21を吸収液送給ライン50により装置本体49内に供給し、ノズル51より塔頂部側に向かって噴流させる。装置本体49内の底部側から上昇してくる排ガス12と、ノズル51から噴流して流下する石灰石膏スラリー21とを対向して気液接触させ、排ガス12中のHgCl、硫黄酸化物(SOx)は石灰石膏スラリー21中に吸収され、排ガス12から分離、除去され、排ガス12は浄化される。石灰石膏スラリー21により浄化された排ガス12は、浄化ガス52として塔頂部側より排出され、煙突53から系外に排出される。
【0110】
排ガス12の脱硫に用いられる石灰石膏スラリー21は、水に石灰石粉末を溶解させた石灰スラリCaCO3と、石灰と排ガス12中のSOxが反応し更に酸化させた石膏スラリCaSO4と、水とを混合させて生成される。石灰石膏スラリー21は、例えば湿式脱硫装置22の装置本体49の塔底部65に貯留した液を揚水したものが用いられる。装置本体49内で排ガス12中のSOxは石灰石膏スラリー21と下記式(11)のような反応を生じる。
CaCO3 + SO2 + 0.5H2O → CaSO3・0.5H2O + CO2 ・・・(11)
【0111】
一方、排ガス12中のSOxを吸収した石灰石膏スラリー21は、装置本体49内に供給される水54と混合され、装置本体49の塔底部65に供給される空気55により酸化処理される。このとき、装置本体49内を流下した石灰石膏スラリー21は、水54、空気55と下記式(12)のような反応を生じる。
CaSO3・0.5H2O + 0.5O2 + 1.5H2O → CaSO4・2H2O ・・・(12)
【0112】
また、湿式脱硫装置22の塔底65部に貯留される脱硫に用いた石灰石膏スラリー21は酸化処理された後、塔底部65より抜き出され、脱水器56に送給された後、塩化水銀(HgCl)を含んだ脱水ケーキ(石膏)57として系外に排出される。脱水器56として、例えばベルトフィルターなどが用いられる。また、脱水したろ液(脱水ろ液)は、例えば脱水ろ液中の懸濁物、重金属の除去、脱水ろ液のpH調整などの排水処理が行われる。この排水処理された脱水ろ液の一部は湿式脱硫装置22に返送され、脱水ろ液の他の一部は排水として処理される。
【0113】
また、アルカリ吸収液として石灰石膏スラリー21を用いているが、排ガス12中のHgClを吸収できるものであれば他の溶液をアルカリ吸収液として用いることができる。
【0114】
石灰石膏スラリー21はノズル43より塔頂部側に向かって噴流させる方法に限定されるものではなく、例えばノズル43から排ガス12と対向するように流下させてもよい。
【0115】
<NH4Cl溶液の噴霧量の制御>
噴霧ノズル15の上流側には、排ガス12の流量を計測する流量計61が設けられている。流量計61により排ガス12の流量が測定される。流量計61により測定された排ガス12の流量の値は制御装置62に送られ、排ガス12の流量の値に基づいて噴霧ノズル15から噴射するNH4Cl溶液14の流量、角度、初速度などを調整することができる。
【0116】
また、湿式脱硫装置22の出口側には、NOx濃度計63が設けられている。NOx濃度計63で測定された浄化ガス52中のNOx濃度の値は、制御装置62に伝達される。制御装置62はNOx濃度計63で測定された浄化ガス52中のNOx濃度の値から還元脱硝装置18におけるNOxの還元割合を確認することができる。よって、NOx濃度計63で測定された浄化ガス52中のNOx濃度の値からNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度、供給流量などを制御することで、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度を所定の脱硝性能を満足するようにすることができる。
【0117】
また、煙道13にはボイラ11から排出される排ガス12中のHg含有量を測定する水銀(Hg)濃度計64−1、64−2が設けられている。Hg濃度計64−1は、ボイラ11と噴霧ノズル15との間の煙道13に設けられ、Hg濃度計64−2は、還元脱硝装置18と熱交換器19との間に設けられる。Hg濃度計64−1、64−2で測定された排ガス12中のHCl濃度の値は、制御装置62に伝達される。制御装置62は、Hg濃度計64−1、64−2で測定された排ガス12中のHCl濃度の値から排ガス12中に含まれるHgの含有量を確認することができる。Hg濃度計64−1、64−2で測定された排ガス12中のHg濃度の値からNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度、供給流量を制御することで、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度、供給流量を所定の脱硝性能を満足すると共に、Hgの酸化性能を維持するようにすることができる。
【0118】
また、湿式脱硫装置22の塔底部65には、石灰石膏スラリー21の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定制御装置(ORPコントローラ)66が設けられている。このORPコントローラ66により石灰石膏スラリー21の酸化還元電位の値を測定する。測定された酸化還元電位の値に基づいて湿式脱硫装置22の塔底部65に供給される空気55の供給量を調整する。塔底部65に供給される空気55の供給量を調整することで、湿式脱硫装置22の塔底部65に貯留する石灰石膏スラリー21内に捕集されている酸化されたHgが還元されるのを防止し、煙突53より放散されるのを防止することができる。
【0119】
湿式脱硫装置22内の石灰石膏スラリー21の酸化還元電位は、石灰石膏スラリー21からのHgの再飛散を防止するためには、例えば150mV以上600mV以下の範囲内にあることが好ましい。これは酸化還元電位が上記範囲内であれば石灰石膏スラリー21中にHgCl2として捕集されたHgが安定な領域であり、大気中への再飛散を防ぐことができるためである。
【0120】
また、本実施例に係る排ガス処理装置10においては、還元酸化助剤として、NH4Clを用いているが、NH4Cl以外の臭化アンモニウム(NH4Br)、ヨウ化アンモニウム(NH4I)などのハロゲン化アンモニウムを還元酸化助剤として用い、水に溶解した溶液を用いてもよい。
【0121】
このように、本実施例に係る排ガス処理装置10によれば、還元脱硝装置18の上流側で煙道13内に噴霧したNH4Cl溶液14のNH4Clが気化する領域よりも後流側にNH4Clが気化した際に生成されるHCl、NH3を排ガス12と混合させるのを促進することができる。このため、HCl、NH3を濃度ムラ無く均一に煙道13内に供給することができるので、還元脱硝装置18においてHgの除去性能すると共に、NOxの還元性能を維持することができると共に、ヒートショックによる煙道13や混合器17など煙道内構造物の破損、煙道13や混合器17の腐食、排ガス11中の灰の堆積などを防止することができる。
【実施例2】
【0122】
本発明による実施例2に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
本発明の実施例2に係る排ガス処理装置は、図1に示す本発明の実施例1に係る排ガス処理装置10の構成と同様であるため、本実施例においては、煙道における噴射ノズルの構成を示す図のみを用いて説明する。
図16は、本発明の実施例2に係る排ガス処理装置の煙道を排ガスの流れ方向から見た時の断面を示す図である。なお、実施例1に係る排ガス処理装置の構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0123】
図16に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置は、複数の噴霧ノズルである吹込み管70のノズル孔が、下記式(13)を満たすように煙道13内に配置してなるものである。
a≦b/5・・・(13)
但し、aは吹込み管のノズル間距離であり、bは煙道の断面の長さのうちの長辺側の長さである。
【0124】
上記式(13)を満たすように複数の吹込み管70を煙道13内に配置することで、煙道13内に設置する吹込み管70の数を従来よりも多くすることができ、煙道13内に噴霧ノズル15を適切に配置することができる。このため、排ガス12中に噴霧されるNH3、HCl量を更に多くすることができるため、排ガス12中へのNH3ガス、HClガスの混合を促進することができる。
【0125】
また、複数の吹込み管70のノズル孔は、好ましくは、下記式(14)を満たすように煙道13内に配置する。
a≦b/10・・・(14)
【0126】
よって、本実施例に係る排ガス処理装置によれば、上記式(13)を満たすように複数の吹込み管70を煙道13内に配置することで、排ガス12にNH3の混合を促進させることができる。このため、HClガス、NH3ガスを濃度ムラ無く均一に煙道13内に供給することができ、還元脱硝装置18においてHgの酸化性能を向上させると共に、NOxの還元性能を向上させることができる。
【実施例3】
【0127】
本発明による実施例3に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
本発明の実施例3に係る排ガス処理装置は、図1に示す本発明の実施例1に係る排ガス処理装置10の構成と同様であるため、本実施例においては、煙道における噴射ノズルの構成を示す図のみを用いて説明する。
図17は、本発明の実施例3に係る排ガス処理装置の煙道を排ガスの流れ方向から見た時の断面を示す図であり、図18は、噴霧ノズルの構成を簡略に示す図である。なお、実施例1、2に係る排ガス処理装置の構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0128】
図17、18に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置は、噴霧ノズル71が、NH4Cl溶液14を噴霧するノズル孔71aを四つ設けるようにしたものである。噴霧ノズル71のノズル孔71aを増加させることで、1本の噴霧ノズル71から煙道13内に噴霧されるNH4Cl溶液14の量を増加させることができるため、排ガス12にHClガス、NH3ガスの混合を促進することができる。
【0129】
このため、還元脱硝装置18においてHgの酸化性能、NOxの還元性能を更に向上させることができる。
【0130】
また、ノズル孔71a同士の間隔cは、0.3m以下であるのが好ましい。液滴が40μm程度と仮定した場合、表2より液滴の水平方向の移動距離は0.13mとなる。液滴は蒸発、昇華した後はガス流れ方向に流れるため、濃度分布の均一化のためには、蒸発・昇華までに2つのノズル孔71aから噴霧された液滴が重なるのが望ましい。噴霧ノズル71の部分拡大図を図19に示す。図19に示すように、2つのノズル孔71aから出る液滴が蒸発までに水平方向に進む間隔の和が、0.26m(=0.13×2)である。そのため、ノズル孔71a同士の間隔cは0.3m以下とすることで2つのノズル孔71aから噴出される液滴を重ねることができる。また、現実的に用いられる液滴径は、制御性、装置寸法の関係から液滴が40μm以上80μm以下のものを採用する場合が多く、その液滴径の下限値として40μm程度の場合、ノズル孔71a同士の間隔cは0.3m以下とすることで2つのノズル孔71aから噴霧された液滴同士を重ねることができる。
【0131】
また、本実施例に係る排ガス処理装置においては、各々の噴霧ノズル71はノズル孔71aを四つ設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、2、3、又は5つ以上設けるようにしてもよい。
【実施例4】
【0132】
本発明による実施例4に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
本発明の実施例4に係る排ガス処理装置は、図1に示す本発明の実施例1に係る排ガス処理装置10の構成と同様であるため、本実施例においては、煙道における噴射ノズルの構成を示す図のみを用いて説明する。
本発明の実施例4に係る排ガス処理装置は、吹込み管70が煙道13内に24本設けられる場合、各々の吹込み管70−11〜70−24からの噴霧量を変更可能としたものである。
図20は、本発明の実施例4に係る排ガス処理装置の煙道を排ガスの流れ方向から見た時の断面を示す図である。なお、実施例1乃至3に係る排ガス処理装置の構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0133】
図20に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置では、煙道13の短辺側に設けられる吹込み管70−1、70−11〜70−13、70−23、70−24の噴霧量が、煙道13の長辺側に設けられる噴霧ノズル70−2〜70−10、70−14〜70−22の噴霧量より多くしたものである。
例えば、吹込み管70−2〜70−10、70−14〜70−22の噴霧量を1としたとき、吹込み管70−1、70−11〜70−13、70−23、70−24の噴霧量は1.5とする。
【0134】
煙道13の短辺側に設けられる吹込み管70−1、70−11〜70−13、70−23、70−24から噴霧されるNH4Cl溶液14の噴霧量を煙道13の長辺側に設けられる吹込み管70−2〜70−10、70−14〜70−22から噴霧されるNH4Cl溶液14の噴霧量よりも多くすることで、煙道13の端部にまで効率良くNH4Cl溶液14を噴霧することができる。このため、煙道13の端部近傍を流れる排ガス12にまでHClガス、NH3ガスを供給することができ、還元脱硝装置18においてHgの酸化性能、NOxの還元性能を更に向上させることができる。
【0135】
また、本実施例に係る排ガス処理装置においては、煙道13の長辺側に設けられる吹込み管70−2〜70−10、70−14〜70−22の噴霧量を1とした時、煙道13の短辺側に設けられる吹込み管70−1、70−11〜70−13、70−23、70−24の噴霧量は1.5としたが、本発明はこれに限定されるものではない。煙道13の短辺側に設けられる吹込み管と、煙道13の長辺側に設けられる吹込み管との比は、排ガス12中のNOx濃度、Hg濃度、NH4Cl溶液14の噴霧量などに応じて適宜調整する。
【0136】
本実施例に係る排ガス処理装置においては、煙道13内に24本の吹込み管70−11〜15−24を設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、煙道13内の設置面積等に応じて吹込み管を複数本設けるようにしてもよい。
【実施例5】
【0137】
本発明による実施例5に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
本発明の実施例5に係る排ガス処理装置は、図1に示す本発明の実施例1に係る排ガス処理装置10の構成と同様であるため、本実施例においては、煙道の構成を示す図のみを用いて説明する。
図21は、本発明の実施例5に係る排ガス処理装置の煙道の短辺方向から見た時の図であり、図22は、煙道の長辺方向から見た時の図である。なお、実施例1乃至4に係る排ガス処理装置の構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0138】
図21、22に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置は、煙道13が煙道13内にNH4Cl溶液14を供給する供給位置よりも後流側で、かつNH4Cl溶液14の液滴が気化している領域の煙道13の内壁に突状部材72を設けてなるものである。突状部材72を煙道13の内壁に設けることで、排ガス12が流通可能な煙道13の開口幅が小さくなるため、煙道13の壁面近傍に排ガス12のガス流れによる渦を生成することができる。このため、煙道13の壁面近傍を流れる排ガス12におけるHClガス、NH3ガスの混合を促進することができ、還元脱硝装置18においてHgの酸化性能、NOxの還元性能を向上させることができる。
【0139】
また、突状部材72の設置位置は、NH4Cl溶液14の液滴が突起部材72と衝突しないようするため、噴霧ノズル15から噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴が気化した後の領域に設けるようにするのが好ましく、特に噴霧ノズル15から1m以上後流側の離れた位置に設置するのが好ましい。
【0140】
また、本実施例に係る排ガス処理装置においては、突状部材72の形状を板状としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、箱型、三角形状など他の形状としてもよい。
【実施例6】
【0141】
本発明による実施例6に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
本発明の実施例6に係る排ガス処理装置は、図1に示す本発明の実施例1に係る排ガス処理装置10の構成と同様であるため、本実施例においては、煙道の構成を示す図のみを用いて説明する。
図23は、本発明の実施例6に係る排ガス処理装置の煙道の短辺方向から見た時の図であり、図24は、煙道の長辺方向から見た時の図である。なお、実施例1乃至5に係る排ガス処理装置の構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0142】
図23、24に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置は、煙道13内にNH4Cl溶液14を供給する供給位置よりも後流側に煙道13内の通路を狭くするくびれ部73を設けてなるものである。煙道13の壁面に煙道13内の通路を狭くするくびれ部73を設けることで、煙道13の壁面近傍に排ガス12のガス流れによる渦を生成することができるため、煙道13の壁面近傍を流れる排ガス12におけるHClガス、NH3ガスの混合を促進することができる。このため、排ガス12中のHClガス、NH3ガスの濃度ムラを抑制することができ、還元脱硝装置18においてHgの酸化性能、NOxの還元性能を向上させることができる。
【0143】
また、本実施例に係る排ガス処理装置においては、煙道13の通路を狭くしてくびれ部73を形成するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図25、26に示すように、くびれ部73と同じ形状のくびれ部材74を煙道13の壁面に設けるようにしてもよい。これにより、くびれ部材74の近傍に排ガス12のガス流れによる渦を生成することができるため、煙道13の壁面近傍を流れる排ガス12におけるHClガス、NH3ガスの混合を促進することができる。
【0144】
また、くびれ部73の設置位置は、実施例5における突状部材72の場合と同様に、NH4Cl溶液14の液滴がくびれ部73と衝突しないようするため、噴霧ノズル15から噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴が気化した後の領域に設けるようにするのが好ましく、特に噴霧ノズル15から1m以上後流側の離れた位置に設置するのが好ましい。
【実施例7】
【0145】
本発明による実施例7に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
本発明の実施例7に係る排ガス処理装置は、図1に示す本発明の実施例1に係る排ガス処理装置10の構成と同様であるため、本実施例においては、煙道の構成を示す図のみを用いて説明する。
図27は、本発明の実施例7に係る排ガス処理装置の一部を示す図であり、図28は、図27中の符号Zを示す部分拡大斜視図である。なお、実施例1乃至6に係る排ガス処理装置の構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0146】
図27、28に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置は、還元脱硝装置18の上流側に設けられるガイドベーン75に、HClガス、NH3ガスの排ガス12への混合を促進する混合促進補助部材76が設けられてなるものである。
混合促進補助部材76は、複数のガイドベーン75同士を連結するリブ77と直交する方向に伸びる複数の板状部材である。ガイドベーン75同士を連結するリブ77に混合促進補助部材76を設けることで、排ガス12のガス流れを乱すことができるため、混合器17において排ガス12におけるHClガス、NH3ガスの混合が十分でない場合でも、還元脱硝装置18の上流側で排ガス12におけるHClガス、NH3ガスの混合を促進することができる。このため、排ガス12中のHClガス、NH3ガスの濃度ムラを抑制することができ、還元脱硝装置18においてHgの酸化性能、NOxの還元性能を向上させることができる。
【実施例8】
【0147】
本発明による実施例8に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
本発明の実施例8に係る排ガス処理装置は、図1に示す本発明の実施例1に係る排ガス処理装置10の構成と同様であるため、本実施例においては、煙道の構成を示す図のみを用いて説明する。
図29は、本発明の実施例8に係る排ガス処理装置の煙道内の拡散旋回板を示す模式図であり、図30は、図29中のA−A断面を簡略に示す図であり、図31は、旋回拡散板の斜視概略図である。
尚、本実施例に係る排ガス処理装置は、実施例1乃至7に係る排ガス処理装置の構成と同様であるため、同一部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0148】
図29〜図31に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置では、煙道13内にガス拡散促進手段として拡散旋回板78が配設されている。拡散旋回板78は、煙道13内の排ガス12のガス流れの上流側では平板状に形成されると共に、排ガス12のガス流れの下流側に向かうに従って波形に形成され、排ガス12のガス流れの下流側に向かうに従って波形の振幅が大きくなるように形成されている。
即ち、拡散旋回板78は、煙道13内の排ガス12のガス流れの上流側に平板で形成される平板部78aと、排ガス12のガス流れの下流側に向かうに従って波形に形成される波板部78bとで構成されている。
【0149】
また、図30に示すように、拡散旋回板78と煙道13との間には拡散旋回板78を支持する支持部材79が設けられ、拡散旋回板78は支持部材79を介して煙道13の内壁に平板部78aと波板部78bとで連結されている。拡散旋回板78を煙道13の内壁から所定間隔を持たせて設けることができるため、煙道13の内壁付近のHClガス、NH3ガスの濃度が低い低濃度領域と煙道13の中心部分のHClガス、NH3ガスの濃度が高い高濃度領域の境界付近に、拡散旋回板78を設けることができる。
【0150】
煙道13の内壁から所定間隔を持たせた状態で拡散旋回板78を設けることができるため、煙道13内の排ガス12が上昇すると、図29〜図31に示すように、拡散旋回板78の出口側で排ガス12のガス流れ方向に排ガス12の縦渦流を形成させることができる。即ち、本実施例では、NH4Cl溶液14を噴霧する噴霧ノズル15の噴流軸に縦渦を発生させることができる。
【0151】
この縦渦流によって、煙道13の内壁近傍を流れるHClガス、NH3ガスの濃度が低い低濃度排ガス12aと、煙道13の中心部分を流れるHClガス、NH3ガスの濃度が高い高濃度排ガス12bとを互いに巻き込んで混合することができる。拡散旋回板78の出口側の下流域では、低濃度排ガス12aと高濃度排ガス12bとが混合した混合排ガス12cは、この縦渦の遠心力により、半径方向に拡げられることとなる。これにより、拡散旋回板78の出口側の下流域では、拡散旋回板78により発生した縦渦流が崩壊し、混合排ガス12cの拡散が急激に促進することができる。
【0152】
従って、煙道13の内壁から所定間隔を持たせた状態で拡散旋回板78を設けることで、拡散旋回板78の出口側の下流域では、低濃度排ガス12aと高濃度排ガス12bとの混合を更に促進し、HClガス、NH3ガスの拡散を更に促進することができるため、煙道13内にHClガス、NH3ガスを更に均一に拡散させることができる。また、煙道13内にHClガス、NH3ガスを均一に拡散することができるため、NH4Cl溶液14を噴霧する噴霧ノズル15を設置する数を削減し、ノズル同士の間隔を広げても煙道13内におけるHClガス、NH3ガスの濃度の均一性を確保できる。
【0153】
また、拡散旋回板78は、排ガス12のガス流れ方向から見ると、図31に示すように、排ガス12のガス流れの閉塞率は小さく、ガス流れの偏向度も小さいため、圧力損失を小さくすることができると共に、排ガス12の送風用に用いるファンなどの負荷を低減することができる。
【0154】
また、本実施例においては、拡散旋回板78は排ガス12のガス流れの上流側から下流側に向かうに従って平板状から波形となるように形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。図32は、他の拡散旋回板の設置状態を示す図である。図32に示すように、拡散旋回板78の形状を矩形の互い違い形状としてもよい。
【実施例9】
【0155】
本発明による実施例9に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
図33は、本発明の実施例9に係る排ガス処理装置の構成を簡略に示す図である。
尚、本実施例に係る排ガス処理装置は、実施例1乃至8に係る排ガス処理装置の構成と同様であるため、同一部材には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0156】
図33に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置80は、NH4Cl溶液供給手段16と還元脱硝装置18との間に設けられ、煙道13中に還元剤としてアンモニア(NH3)ガス81を供給するアンモニア(NH3)ガス噴射手段82を有するものである。NH3ガス噴射手段82は、NH3ガス81を貯蔵しているNH3ガス供給部83と、NH3ガス81を煙道13に送給するアンモニア(NH3)ガス送給通路84と、煙道13内にNH3ガス81を噴射する噴射ノズル85とで構成されている。また、噴射ノズル85から噴射されるNH3ガス81の噴射量はバルブV4により調整される。NH3ガス81はNH4Cl溶液14のような液滴と異なり煙道13に衝突しても煙道13を損傷するなどの被害がないため、煙道13の壁面領域にもNH3ガス81を噴射することができる。このため、煙道13の壁際の低濃領域でのNH3濃度を上げることができ、排ガス12中のHClガス、NH3ガスの濃度ムラを抑制することができる。
【0157】
また、噴射ノズル85より煙道13内に供給する位置は、NH4Cl溶液14の噴霧位置より1m以上後流側とするのが好ましい。これは、噴射ノズル85にNH4Cl溶液14の液滴が衝突するのを防ぐためである。
【0158】
よって、本実施例に係る排ガス処理装置80によれば、NH4Cl溶液14を煙道13内に噴霧した後、NH3ガス噴射手段82より煙道13内にNH3ガス81を噴射することで、煙道13の壁際の低濃領域でのNH3濃度を上げることができるため、排ガス12中のHClガス、NH3ガスの濃度ムラを抑制することができ、還元脱硝装置18においてHgの酸化性能を維持すると共に、NOxの還元性能を向上させることができる。
【0159】
<NH3ガスの噴射量の制御>
噴霧ノズル15の上流側には、排ガス12の流量を計測する流量計61が設けられ、排ガス12の流量が測定される。流量計61により測定された排ガス12の流量の値に基づいて制御装置62は噴射ノズル85から噴射するNH3ガス81の流量、角度、初速度などを調整することができる。
【0160】
よって、ボイラ11等の燃焼設備から排出される排ガス12中のNOx濃度のバランスが通常よりも異なり、高く、NH4Cl溶液14を煙道13内に噴霧するだけでは、必要量のNH3を供給することができない場合には、噴射ノズル85からNH3ガス81を煙道13内に噴射することで、排ガス12にNOxを還元するのに必要な分のNH3ガスを供給することができると共に、煙道13内における排ガス12中に供給されるHClガス、NH3ガスの濃度分布のばらつきを低減することができる。このため、排ガス12中のHClガス、NH3ガスの濃度ムラを抑制することができ、還元脱硝装置18においてHgの酸化性能を向上させると共に、NOxの還元性能を維持することができる。
【0161】
また、NH3ガス供給部83より供給されるNH3ガス81の供給量は、NOx濃度計63の値を用いて制御するようにしてもよい。
【0162】
また、本実施例に係る排ガス処理装置80においては、NH3ガス供給部83のみを設け、NH3ガス81を煙道13内に供給できるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。NH3ガス供給部83に代えて煙道13内に酸化性ガスとして塩化水素(HCl)ガスを供給する塩化水素(HCl)ガス供給部を設け、煙道13内にHClガスを供給するようにしてもよい。これによりHgを酸化するのに必要量のHClガスを供給することができる。また、流量計61により測定された排ガス12の流速に基づいて前記HClガス供給部より供給するHClガスの噴霧量、噴霧角度、初速度を調整することができる。
【0163】
更に、NH3ガス供給部83と前記HClガス供給部の両方を設けるようにしてもよい。流量計61により測定された排ガス12の流速に基づいてNH3ガス供給部83および前記HClガス供給部より供給するNH3ガス81およびHClガスの噴霧量、噴霧角度、初速度を調整することができる。これにより、排ガス12に別途NH3ガス及びHClガスの供給を行なうようにしているので、排ガス12中のNOx又はHg濃度の変動が生じるような場合においても適切な対応が可能となる。
【0164】
酸化性ガスに用いられる酸化助剤としては、HClに限定されるものではなく、HCl以外の臭化水素(HBr)、ヨウ化水素(HI)などのハロゲン化水素を酸化性ガスとして用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0165】
以上のように、本発明に係る排ガス処理装置は、煙道内に噴霧したNH4Cl溶液の微細な液滴から生じるHClガス、NH3ガスと排ガスとの混合の促進を図ることができるので、排ガス中のHg、NOxを除去する排ガス処理装置に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0166】
10、80 排ガス処理装置
11 ボイラ
12 排ガス
13 煙道
14 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液
15 噴霧ノズル
16 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給手段(還元酸化助剤供給手段)
17 混合器(混合手段)
18 還元脱硝装置(還元脱硝手段)
19 熱交換器(エアヒータ)
20 集塵器
21 石灰石膏スラリー
22 湿式脱硫装置
25 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給管
26、33、55 空気
27、34 空気供給管
28 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液タンク
31、36 空気供給部
32、70、71 吹込み管
35 噴射孔
37 隙間
41 旋回流誘起部材
42 第1の旋回流誘起板
43 第2の旋回流誘起板
44 中間部材(連結部)
45 下部支持板
46 上部支持板
47−1〜47−3 脱硝触媒層
48 整流板
49 装置本体
50 吸収液送給ライン
51 ノズル
52 浄化ガス
53 煙突
54 水
56 脱水器
57 石膏
61 流量計
62 制御装置
63 NOx濃度計
64−1、64−2 水銀(Hg)濃度計
65 塔底部
66 酸化還元電位測定制御装置(ORPコントローラ)
72 突状部材
73 くびれ部
74 くびれ部材
75 ガイドベーン
76 混合促進補助部材
77 リブ
78 拡散旋回板
78a 平板部
78b 波板部
79 支持部材
81 アンモニア(NH3)ガス
82 アンモニア(NH3)ガス噴射手段
83 NH3ガス供給部
84 アンモニア(NH3)ガス送給通路
85 噴射ノズル
V1〜V4 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの排ガス中に含まれる窒素酸化物、水銀を除去する排ガス処理装置であって、
前記ボイラの下流の煙道内に、気化した際に酸化性ガスと還元性ガスとを生成する還元酸化助剤を噴霧ノズルにより液体状で噴霧する還元酸化助剤供給手段と、
前記還元酸化助剤が気化する領域よりも後流側に設けられ、前記還元酸化助剤が気化した際に生成される前記酸化性ガス及び前記還元性ガスと前記排ガスとの混合を促進する混合手段と、
前記排ガス中の窒素酸化物を前記還元性ガスで還元すると共に、前記酸化性ガス共存下で水銀を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝手段と、
該還元脱硝手段において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫手段と、
を有することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記還元酸化助剤が、塩化アンモニウムであることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記混合手段が、前記排ガスに旋回流を生じさせる旋回流誘起部材を前記排ガスの流れ方向と直交するように複数配置されたユニットであることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記混合手段が、前記ユニットを前記排ガスの流れ方向に複数段設けられてなることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記旋回流誘起部材が、
前記排ガスの入口側に対向面を有する一対の第1の旋回流誘起板と、
前記排ガスの排出側に対向面を有する一対の第2の旋回流誘起板と、を有し、
前記第1の旋回流誘起板と前記第2の旋回流誘起板とを連結する連結部において両方の対向面が異なるように各々連結されることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記旋回流誘起部材の幅L、高さDが、下記式の範囲内であることを特徴とする排ガス処理装置。
MIN(B、H)/10≦L≦MIN(B、H)・・・(1)
MIN(B、H)/10≦D≦5×MIN(B、H)・・・(2)
但し、Bは設置位置における煙道の断面の一方の辺の長さであり、Hは煙道の断面の他方の辺の長さであり、MIN(B、H)は煙道の断面の一方の辺の長さB、煙道の断面の他方の辺の長さHのうちの何れか短辺側の長さの値である。
【請求項7】
請求項1又は2において、
前記混合手段が、前記煙道内に配設され、前記煙道内の前記排ガスのガス流れの上流側では平板状に形成されると共に、前記排ガスのガス流れの下流側に向かうに従って波形に形成される拡散旋回板であり、
前記排ガスのガス流れの下流側に向かうに従って前記波形の振幅が大きくなるように形成されてなることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一つにおいて、
前記還元酸化助剤供給手段と前記還元脱硝手段との間に設けられ、前記煙道中にアンモニアガスを供給するアンモニアガス供給部、前記煙道内に塩化水素ガスを供給する塩化水素ガス供給部の何れか一方又は両方を有することを特徴とする排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2011−50941(P2011−50941A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278759(P2009−278759)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】