説明

排ガス処理装置

【課題】排ガス処理装置のガスライザの数を大幅に減らしてもフロス層で溶存酸素濃度およびpHを所定範囲の値に維持できるようにして構造の簡素化を図る。
【解決手段】排ガス処理装置は密閉槽21を有する。密閉槽21は、隔壁22より上下2段のスペースに区切られる。隔壁22より下側が吸収液貯留部24とされ、隔壁22より上側が排ガス導入部26とされる。隔壁22には、吸収液貯留部24の上部空間24aから処理済の排ガスを導出するためのガスライザ30が設けられる。また、隔壁22のガスライザ30が設けられていない部分である有効領域には、多数の垂設管29が吸収液貯留部24内に貯留された吸収液内に至るように設けられている。当該有効領域に垂設管29が設けられていない非噴出領域を設ける。非噴出領域では、フロス層が形成されず、その周囲のフロス層から発泡した吸収液が流下することで、吸収液を循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排煙(燃焼排ガス)中の硫黄酸化物を除去する排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電所等の燃焼排ガスとしての排煙を生じる設備においては、亜硫酸ガス(SO2)等の硫黄酸化物(SOx)を含む排煙による大気汚染を防止するために排煙の排ガス処理装置(脱硫装置)が設けられている。
このような、排ガス処理装置の一種として、排ガス中に含まれる亜硫酸ガス(SO2)を、石灰石(CaCO3)を溶解または懸濁した水溶液(亜硫酸ガス中和剤スラリー溶液)からなる吸収液と接触させて、吸収液中に反応吸収するものが広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は従来のこの種の脱硫装置の主要部の構成を示す。この脱硫装置の主要部をなす密閉槽(吸収塔)1は、内部空間内に、上下方向に間隔をおいて配された上段デッキ(上段隔壁)3と下段デッキ(下段隔壁)2を有する。これらデッキ2、3は、密閉槽1の入口ガス導入空間を画成する隔壁として設けられており、下段デッキ2の下側空間が吸収液貯留部(貯留槽)4、上段デッキ3と下段デッキ2間の空間が排ガス導入部6、上段デッキ3の上側空間が排ガス導出部8となっている。吸収液貯留部4の内部には、石灰石の水性スラリーからなる吸収液Kが所定の液面レベルで貯留されている。また、排ガス導入部6には、密閉槽1内に排ガスを導入する入口ダクト5が接続され、排ガス導出部8には、密閉槽1内の処理済み排ガスを外部に導出する出口ダクト7が接続されている。また、入口ダクト5には、吸収液Kの一部をポンプ13によって冷却ライン11から循環供給し、導入されてくる排ガスに吸収液を冷却水として噴霧して冷却するためのスプレーノズル16を備えたガス冷却部17が設けられている。
【0004】
前記下段デッキ2には多数の開口(透孔)が分散的に穿設されており、各透孔には、下段デッキ2の下面に垂下されたスパージャーパイプ(垂設管9)の上端部が接続されている。垂設管9は、下方に延出し、下端部が吸収液貯留部4内の吸収液K中に挿入されており、吸収液Kの液面下において排ガスを噴出して分散するようになっている。
【0005】
また、下段デッキ2と上段デッキ3間には、吸収液貯留部4の吸収液の液面より上の上部空間4aを排ガス導出部8側に連通させるガスライザ10が、排ガス導入部6を貫通する形で設けられている。さらに、吸収液貯留部4の底部側には、酸化用空気を噴出させる空気の供給管(図示せず)と、吸収液Kを攪拌するための攪拌機(図示せず)が設けられ、前記供給管の基端側は、空気を圧送するためのブロア(図示せず)に接続されている。
また、密閉槽1には、補給用の吸収液(吸収剤としての石灰石)を密閉槽1内に供給するための供給ラインが接続されている。
また、後述のようにガスライザ10の表面に付着する石膏や、ガスライザ10から垂設管9に落下した石膏の塊りを洗い流すために、垂設管9の上にスプレーノズル18が配置されるとともに、ガスライザ10の周囲にスプレーノズル19が配置されている。そして、これらスプレーノズル18,19には、配管を介して後述のように吸収液から石膏を分離した際のろ液が供給されて、間欠的に噴霧される。
【0006】
以上の構成の密閉槽1においては、供給管を介して吸収液K中に酸素(空気)を供給しつつ、入口ダクト5から排ガスを排ガス導入部6に圧送すると、当該排ガスが、各垂設管9の下端部の噴出孔から噴出し、吸収液Kと激しく混合して、液相連続のフロス層(ジェットバブリング層)を形成する。この際、攪拌機を回転させて吸収液Kを攪拌すると共に、供給管から供給された酸化用空気を当該供給管の先端部のノズルから吸収液K中に連続的に供給する。これにより、前記フロス層において高効率な気液接触が行われ、SO2+CaCO3+1/2O2+H2O→CaSO4・2H2O↓+CO2↑で示されるように、排ガス中に含まれる亜硫酸ガス(SO2)が酸化されると共に、吸収液K中の石灰石によって中和される反応が行われて、前記亜硫酸ガスが吸収・除去される。このようにして、脱硫された排ガスは、吸収液貯留部4の液面上(フロス層上)空間からガスライザ10を介して排ガス導出部8に至り、排ガス導出部8から出口ダクト7を経て煙突から外部に排気される。出口ダクト7には、上述のスラリーを含むミスト(水滴)を除去するエリミネータ(図示せず)が設けられている。
【0007】
また、下段デッキ2には、上述のように多数の透孔がほぼ均等分散して配置されるとともに各透孔に垂設管9が設けられ、ほぼ所定数となる垂設管9毎にガスライザ10が配置されるように当該ガスライザ10がほぼ均等分散して配置されており、垂設管9よりは一桁程度少ないがたとえば数百本のガスライザ10が設けられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−206435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述の脱硫装置(排ガス処理装置)においては、下段デッキと上段デッキとの間に吸収液貯留部の上部空間に連通する多くのガスライザが設けられ、当該ガスライザにより上段デッキ上の排ガス導出部に脱硫された排ガスが流入し、排ガス導出部から排ガスが密閉槽の外側となる出口ダクトに排出され、出口ダクトに設けられたエリミネータでミストを除去される構造となっている。
【0010】
したがって、多くのガスライザを有することと、多くのガスライザから排出されるガスが排ガス導出部に集められて横方向に延出する出口ダクトのエリミネータを通って煙突等に導出されることから、複雑な構造となり、建造コストの低減が困難なものとなっている。
また、密閉槽内の部材には、排ガスや吸収液が金属に対して腐食性を示すことから、例えば、合成樹脂を用いたFRP(繊維強化プラスチック)が多く用いられており、高温の排ガスがそのまま導入されると、FRP製の部材が熱による影響を受けてしまうので、入口ダクトのガス冷却部に石膏を含むスラリー状の吸収液を循環供給するとともに、この吸収液(循環液)をスプレーノズルにより噴霧することで、密閉槽に導入される排ガスの増湿および冷却を行っている。
【0011】
しかし、冷却に用いられる吸収液には、多くの粒子状の石膏等が含まれていることから、排ガス導入時に排ガス導入部のガスライザの表面に、噴霧された吸収液に含まれる石膏が付着してしまうという問題があった。ガスライザの数が多く、かつ、数が多いことにより、互いの間隔が狭いことから、上述の付着した石膏の除去が難しくなるという問題があった。また、石膏の除去のために、上述のスプレーノズルが配置されるが、その配管等が複雑な構造となり、建造コストを増大する要因となっている。また、このような構造としても、石膏を完全に除去することは困難であった。
【0012】
そこで、ガスライザ10の断面積を多くするとともに、ガスライザ10の数を大幅に減らすことで、上述の問題点の多くを解消することができる。
【0013】
ここで、吸収液には、上述のように酸化用の空気が供給されるとともに、石灰石が供給され、上述のように硫黄酸化物を吸収するようになっているが、フロス層においては、常時下側の気泡により押し上げられて下側に下降できない部分があると、フロス層の吸収液の一部が下側の吸収液の液層側に循環移動することができず、フロス層の吸収液の溶存酸素濃度およびpHを硫黄酸化物の吸収に適した所定範囲の値に維持できない可能性がある。
【0014】
それに対して、従来、多くのガスライザ10が配置されることで、たとえば、数10本以下の垂設管9毎にガスライザ10が配置され、ガスライザ10の配置位置においては、下段デッキ2の領域がガスライザ10に占有されることにより、ほぼ均等に分散配置される垂設管9が複数本配置されない部分が生じる。
すなわち、下段デッキ2において、ガスライザ10が配置される部分には、垂設管9が設けられておらず、この部分では、垂設管9から噴出する排ガスによる気泡が発生しない。この気泡が発生していない領域に隣接する垂設管9が配置された領域のフロス層から吸収液側にフロス層を形成する気泡含んだ吸収液が流下する状態となる。
【0015】
これによりフロス層に含まれる吸収液と、フロス層の下側の液層の吸収液とが循環し、フロス層の溶存酸素濃度およびpHを所定範囲の値に維持できるが、ガスライザ10の数を大幅に減らしてしまうと、吸収液の循環が不十分となり、フロス層の吸収液の溶存酸素濃度およびpHを所定範囲の値に維持できず、脱硫率が低下する虞がある。
【0016】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、ガスライザを大幅に減らすことで、排ガス処理装置の構造を簡素化して建造コストの低減を図った際に、フロス層で溶存酸素濃度およびpHを所定範囲の値に維持できなくなるのを防止することができる排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の排ガス処理装置は、排ガスが導入されて処理される密閉槽と、当該密閉槽内部を上下に分割する隔壁と、前記密閉槽の前記隔壁の下側に設けられ、排ガスから硫黄酸化物を吸収する脱流用吸収液が貯留された吸収液貯留部と、前記密閉槽の前記隔壁の上側に設けられ、前記密閉槽の外部から排ガスが導入される排ガス導入部と、前記排ガス導入部に連通するとともに、前記隔壁から下方の前記吸収液貯留部に貯留された吸収液内に延出して前記排ガス導入部から吸収液内に排ガスを噴出して分散することにより吸収液の液層上にフロス層を形成する複数の垂設管と、前記吸収液貯留部の吸収液より上側の空間に連通するとともに、前記隔壁から上方に延出して前記排ガス導入部を貫通するガスライザとを備えた排ガス処理装置であって、前記隔壁のガスライザの設置領域を除いた前記垂設管を配置可能な有効領域に、前記垂設管を所定範囲内の間隔で配置することにより吸収液に排ガスを噴出する噴出領域と、前記所定範囲内の間隔より広い間隔に渡って前記垂設管を配置しないことにより排ガスを吸収液に噴出せず、前記フロス層の吸収液を前記液層側に下降させる非噴出領域とが設けられ、複数の前記非噴出領域が前記隔壁の有効領域に分散して設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項1に記載の発明においては、隔壁のガスライザが設けられていない有効領域に、当該隔壁の噴出領域の各垂設管どうしの所定範囲内の間隔より広い範囲に渡って垂設管が配置されていない非噴出領域が分散して設けられており、各非噴出領域の下側の吸収液貯留部では、垂設管により排ガスが吹き込まれていないので、排ガスの気泡が生じることがなく、フロス層が形成されない状態となるが、隣接する噴出領域の下側で形成されたフロス層の排ガスの気泡を含む吸収液が下側に流れ込む状態となり、フロス層に含まれる吸収液と、吸収液貯留部の液層の吸収液とが循環して混合することにより、フロス層の溶存酸素濃度およびpHを所定範囲の値に維持することができる。
【0019】
したがって、ガスライザの数を減らしても、非噴出領域を増やすことにより、フロス層において溶存酸素濃度等が不足するのを防止することができる。よって、ガスライザの本数を大幅に減らすことが可能であり、ガスライザの本数を数10本以下、たとえば、20本以下や10本以下とすることが可能であり、さらにガスライザを一本としてもよい。
【0020】
請求項2に記載の排ガス処理装置は、請求項1に記載の発明において、前記隔壁の有効領域の面積S1に対する複数の前記非噴出領域の面積を合計した合計面積S2の比であるS2/S1が0.05〜0.25となっていることを特徴とする。
【0021】
請求項2に記載の発明においては、隔壁の有効領域の面積S1に対する複数の前記非噴出領域の面積を合計した合計面積S2の比であるS2/S1が0.05〜0.25となっていることにより、ガスライザの数を上述のように少なくしても効率的に排ガスの脱硫を行うことができる。
すなわち、S2/S1を0.05以上とすることで、ガスライザの数が少なくもフロス層への溶存酸素濃度等を脱硫に支障がない値に維持することができる。逆にS2/S1が0.05より小さい場合には、溶存酸素濃度等が不足する虞がある。
【0022】
S2/S1を0.25以下とすることにより、フロス層が形成される面積が減少して排ガスの処理能力が低下するのを防止することができる。換言すれば、S2/S1を上述の範囲とすることで、隔壁の有効領域の単位面積当たりに対応する排ガスの処理量を最適にすることができ、スペース効率を向上して、密閉槽の小型化を図ることができる。
なお、隔壁における噴出領域と、非噴出領域との境界は、たとえば、噴出領域の最も非噴出領域側に設けられた垂設管からの前記所定範囲内となる間隔の半分までが噴出領域となり、それより垂設管から離れた部分が非噴出領域となる。
【0023】
請求項3に記載の排ガス処理装置は、請求項1または2に記載の発明において、前記隔壁の有効領域に前記垂設管が配置される複数の透孔をほぼ均等に設け、前記透孔を閉塞することにより前記非噴出領域を設けることを特徴とする。
【0024】
請求項3に記載の発明においては、排ガス処理装置の建築において、隔壁を構成する部材に噴出領域、非噴出領域のいずれかにかかわらず、有効領域にほぼ均等に透孔を設ける構成とすることで、隔壁となる部材の加工を単純化して、コストの低減を図ることができる。また、同様の構造の排ガス処理装置において、排ガス組成の違いなど排ガス処理状況に応じて、非噴出領域の位置や範囲を容易に変更することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、隔壁の垂設管が設けられるべき部分に分散して垂設管を設けない部分を設けることにより、ガスライザの数が少なくなってもフロス層で溶存酸素濃度の不足が生じるのを防止できる。よって、ガスライザの数を大幅に減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排ガス処理装置を示す概略図である。
【図2】前記排ガス処理装置の隔壁を示す平面図である。
【図3】前記隔壁を構成するデッキパネル示す平面図である。
【図4】従来の排ガス処理装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の排ガス処理装置を示す概略図であり、図2は前記排ガス処理装置の隔壁を示す平面図であり、図3は、隔壁を構成するデッキパネルを示す平面図である。
従来の排ガス処理装置の密閉槽が上下二段の隔壁で上下3段のスペースに区切られていたのに対して、図1に示すように、この例の排ガス処理装置の密閉槽21は、1段の隔壁(デッキ)22により上下2段のスペースに分離されている。
なお、この例の密閉槽21は、たとえば、有底有蓋の円筒状に形成されているが、有底有蓋の角筒状(直方体状や正方体状)であってもよい。
【0028】
密閉槽21の隔壁22より下側が吸収液貯留部24とされ、隔壁22より上側が排ガス導入部26とされている。吸収液貯留部24の下側は、密閉槽21の底部31であり、排ガス導入部26の上側は密閉槽21の天板部(蓋部)32となる。
そして、隔壁22は、この例において、円板状に形成されるとともに、中央部に一つのガスライザ30が接続される大きな開口部23が形成され、たとえば、開口部23の面積は開口部23を含む隔壁22の全体の面積のたとえば1/3程度とされている。円板状の隔壁22の外周と当該隔壁22の内周(開口部23の外周)とは、同軸上(同心円状)に配置されている。
【0029】
また、隔壁22には、開口部23の外側となる部分に図示しない多数の透孔がほぼ均等に分散して形成され、当該透孔に垂設管(スパージャーパイプ)29が隔壁22から下方に向かって延出するように垂設されている。これら垂設管29は、隔壁22から隔壁22の下側の吸収液貯留部24内に貯留された吸収液K内に至るように設けられている。なお、図1において、垂設管29の一部だけが図示されており、実際には、隔壁22の開口部23を除くほぼ全面に分散して垂設管29が設けられている。
また、隔壁22には、後述の撹拌機37の駆動軸39が貫通する貫通孔39aが設けられている。
【0030】
また、隔壁22の円板状の開口部23の部分には、開口部23と下端部が重なるようにガスライザ30が設けられている。ガスライザ30は、円筒状に形成されており、その下端部が隔壁22に固定されて開口部23を隔壁22の上側で塞いだ状態に配置され、開口部23を介して、吸収液貯留部24の吸収液の液面より上の上部空間24aと連通した状態となっている。
また、ガスライザ30の上端部が、排ガス導入部26を通り抜けた状態で、密閉槽21の天板部32を貫通して、天板部32より上側に突出している。
【0031】
ガスライザ30の内部は、排ガス導入部26と隔離され、かつ、隔壁22の開口部23により吸収液貯留部24の上部空間と連通している。
ガスライザ30の密閉槽21の天板部32より上側にある上端部には、エリミネータ35が接続されている。エリミネータ35は、ガスライザ30とほぼ同じ大きさに形成され、ガスライザ30の開口全体を覆った状態となっている。エリミネータ35は、ガスライザ30により密閉槽21の外側に導出される処理済の排ガスのミストを除去する。
【0032】
また、密閉槽21には、撹拌機37が設けられており、撹拌機37は、密閉槽21の天板部32上に配置される駆動源38と、当該駆動源38から排ガス導入部26、隔壁22を越えて吸収液貯留部24内に至る駆動軸39と、駆動軸39の先端部に設けられる撹拌羽40とを供える。なお、撹拌機37は、ガスライザ30の周囲に配置される。
なお、図示していないが、従来と同様に、密閉槽21の吸収液貯留部24の吸収液Kに酸素を供給する機構と、吸収液貯留部24に吸収剤を供給する機構と、吸収液貯留部24から吸収液Kを抜き出して石膏等の固形分を吸収液Kから分離するための固液分離機構等を備えている。
【0033】
このような排ガス処理装置においては、排ガス導入部26に連通する入り口ダクト25から排ガスが密閉槽21に導入され、導入された排ガスは、排ガス導入部26の底部となる隔壁22に設けられた垂設管29から吸収液貯留部24の吸収液内に噴出されて吸収液K内に分散されるとともに、フロス層を形成し、吸収液Kと気液接触する。
気液接触して脱硫された排ガスは、吸収液Kの上側の上部空間24aに排出される。
【0034】
次いで、隔壁22の一つだけのガスライザ30の下端部が接続された開口部23から処理済の排ガスがガスライザ30内を上昇する。
そして、ガスライザ30内を上昇した処理済の排ガスは、エリミネータ35に至り、処理済の排ガスは、エリミネータ35で液滴(ミスト)を除去されて、排ガス処理装置の外側に放出されることになる。
【0035】
このような排ガス処理装置において、上記隔壁22は、この例において、円形状で中央に円形の開口部23を有する隔壁22をその半径方向に沿った複数の分割線で分割した上辺と底辺が円弧の概略台形状(扇形状)の複数のデッキパネル(隔壁分割体)51を備える。すなわち、隔壁22は、複数の扇状のデッキパネル51周方向に並べて接続することにより円環板状に形成されている。
各デッキパネル51には、垂設管29を取り付けるための多数の前記透孔52が設けられている。各透孔52は、所定の間隔をあけて縦横に並んで配置されている。なお、透孔52は、基本的に等間隔で縦横に配置されるが、各間隔に多少のずれがあってもよく、所定範囲内の間隔で縦横に配置されていればよい。
【0036】
また、図3においては、各透孔52の横の列と縦の列が直線状に並んだ状態となっているが、かならずしも横の列や縦の列が一直線上ではなく、ジグザグになっていてもよいし、六角形の領域をハニカム状に並べて、各領域の中央部分に透孔52があるような配列でもよく、できるだけ均等に分散して透孔52が配置されることが好ましい。
そして、この例においては、隔壁22を構成するデッキパネル51に設けられた透孔52の全てに垂設管29を設けるのではなく、垂設管29を設けることなく、閉塞部材(キャップ部材)54により閉塞された透孔52がある。
【0037】
この閉塞された透孔52がある部分が隔壁22(デッキパネル51)において、垂設管29が設けられないことにより、隔壁22の下側の吸収液貯留部24の吸収液Kに向かって排ガスが噴出されることがない非噴出領域55となっている。一方、隔壁22(デッキパネル51)の透孔52が閉塞部材54に閉塞されず、当該透孔52に垂設管29が設けられた領域が、隔壁22の垂設管29から吸収液貯留部24の吸収液Kに向かって排ガスが噴出される噴出領域56となる。
【0038】
また、隔壁22においては、ガスライザ30が配置される開口部23の部分には、透孔52を設けることがでず、隔壁22の主に開口部23を除いた部分が透孔52を形成して、垂設管29を取り付け可能な有効領域59となっている。したがって、開口部23部分を含まないデッキパネル51は、基本的に全ての領域が有効領域となるが、外周部分の一部に透孔52の配列にもよるが、透孔52を設けられない領域が生じる。
なお、この透孔が設けられない領域を非有効領域としてもよいが、当該領域を非噴出領域55とみなしてもよい。
【0039】
そして、この有効領域59内に前記非噴出領域55および噴出領域56が設けられる。噴出領域56と非噴出領域55との境界は、噴出領域56と非噴出領域55とが隣接し、垂設管29が設けられた透孔52と閉塞部材54に塞がれた透孔52とが隣り合う部分において、これら垂設管29が設けられた透孔52と閉塞部材54に塞がれた透孔52との間の中央となる位置を線状につなげた部分である。
【0040】
なお、基本的に、噴出領域56の中に複数の非噴出領域55が設けられた状態となっているので、前記境界は、非噴出領域55内に設けられた閉塞部材54に閉塞された複数の透孔52を囲むようになっている。
そして、非噴出領域55には、複数の閉塞された透孔52が含まれるものとなっており、さらに3つ以上の閉塞された透孔52が含まれることが好ましい。
【0041】
また、有効領域59に対して複数の非噴出領域55は、ほぼ均等に分散した状態に設けられている。
このように隔壁22の有効領域59の全体を噴出領域56とするのではなく、噴出領域56内に対して複数の非噴出領域55を分散してほぼ均等に設けた場合に、隔壁22の下側の吸収液貯留部24の吸収液において、噴出領域56の下側では、垂設管29から排ガスが噴出されることによりフロス層が形成され、フロス層においては、常時下側で発生する気泡により発泡した状態の吸収液が浮上する状態となっている。
【0042】
一方非噴出領域55の下側では、隣接する噴出領域56の下側のフロス層からフロス層を形成する発泡した状態の吸収液が流下する状態となる。
これにより、噴出領域56の下側では、発泡した吸収液が吸収液の液面より上側に上昇してフロス層を形成し、非噴出領域55の下側では、フロス層から発泡した吸収液が流下して吸収液の液面下に戻ることになり、フロス層の発泡した吸収液がその下の吸収液と常時循環し、フロス層の発泡した吸収液における溶存酸素濃度およびpHが所定範囲の値に維持された状態となる。
【0043】
このような隔壁22において、前記有効領域の全面積(噴出領域の面積と非噴出領域の面積との和)S1に対する複数の非噴出領域55の面積を合計した合計面積S2の比(S2/S1)が0.05〜0.25であることが好ましく、更に0.1〜0.2であることが好ましい。
ここで、S2/S1が小さいほど、上述のフロス層を形成する発泡した吸収液の循環が起こり難くなり、大きいほどフロス層が形成される領域の面積が減少することになる。
すなわち、S2/S1を0.1より小さくすると、上述の吸収液の循環が不十分になる虞があり、0.05より小さくすると循環がさらに不十分となる虞がある。
【0044】
また、S2/S1を0,2以上とすると、フロス層が生成する面積が上述の有効領域の面積に対して少なくなり効率的に排ガスを処理することが難しくなる虞があり、0.25以上とするさらに非効率となる虞がある。
S2/S1が小さすぎても大きすぎても密閉槽1の大きさあるいは隔壁22の有効領域59の大きさに対して、排ガス処理能力の低下を招くことになり、S2/S1を適切な値とすることで、密閉槽1の大きさあるいは隔壁22の有効領域59の大きさに対して最も高い排ガス処理能力を実現することが可能となる。これにより、必要とされる排ガス処理能力に対して、S2/S1を上述の値の範囲とすることで、密閉槽1の面積を小さくして小型化を測ることができる。
【0045】
さらに、ガスライザ30の数を従来に比較して極端に少なくしても、上述のように隔壁22のガスライザ30が設けられていない有効領域59に、垂設管29が設けられていない非噴出領域55を分散して設けることにより、上述のようにフロス層を形成する吸収液と、液層の吸収液とを循環させてフロス層の溶存酸素濃度およびpHを所定範囲の値に維持することができる。
【0046】
これにより、ガスライザ30の数を減らしても脱硫の効率が悪化するのを防止することができ、ガスライザ30の数を減らすことができる。ガスライザ30の数を減らした場合に、排ガス処理装置の構造を極めて簡単なものとすることができる。
特に、従来数百本あったガスライザを一つのガスライザ30とすることで、構造を極めて簡略にすることができる。
また、ガスライザ30の数を減らすことによりガスライザ30表面に付着する石膏等を除去する構成が簡略化され、さらに建造コストの低減を図ることができる。
また、ガスライザ30の数が極めて少なくなったことにより、付着した石膏を落とす構成を簡略化しても石膏を十分に落とせる構造とすることが可能であり、メンテナンスの簡略化を図ることができる。
【0047】
また、この例において、従来、多くのガスライザが配設された状態の隔壁22上の排ガス導入部26は、中央にガスライザ30が配置されているだけであり、メンテナンス時に容易に立ち入ることが可能であり、メンテナンスが極めて容易となる。
また、この例では、密閉槽21に、従来の排ガス導出部となる層を必要とせず、隔壁の数を減らすことができるとともに、密閉槽21の高さを低くし、密閉槽21の容量を減少させて、建造コストの低減を図ることができる。
また、処理済の排ガスを排ガス処理装置の外側への導出する構造が、ガスライザ30により密閉槽21の横側ではなく、上側に設けられるようになっており、エリミネータ35もガスライザ30の上部で密閉槽21の上方に配置されるので、密閉槽21に占有される部分にエリミネータ35が配置されるとともに密閉槽21に占有される部分で排ガスの導出が行われることになり、排ガス処理設備のスペース効率を向上することができる。
【0048】
また、上述のように排ガス導出部が設けられない分だけ、密閉槽21の高さを低く抑えることができ、撹拌機37を配置した場合に、密閉槽21上の駆動源38と、吸収液貯留部24の撹拌羽40との距離が短くなり、駆動軸39を短くして、駆動される部分の重量を低減して、駆動源38における駆動力の低減を図ることができる。なお、駆動軸39は、短くなることで、強度を低くしても使用可能となり、長さを短くするだけではなく、太さを細くしたり、管状の場合に肉厚を薄くしたりすることで、さらなる駆動軸39の軽量化を図ることも可能である。
以上のことから排ガス処理装置の建造コストの低減を図ることができる。
【0049】
なお、上記例では、密閉槽21およびガスライザ30の横断面形状を円としているが、これらの断面形状は円に限られるものでは、四角や多角形としてもよい。また、一つの密閉槽21にガスライザ30を一つ設けるものとしたが、上記例の一つの隔壁22と一つのガスライザ30との組み合わせを、複数個つなげた状態に設計し、これら複数組の隔壁22とガスライザ30とから一つの密閉槽21を構成することで、排ガスの処理能力を複数倍に高めるような構成としてもよい。この場合に一つの密閉槽21に複数本のガスライザ30を有する構造することができる。
この場合には、一つの密閉槽21に対するガスライザ30の数を数十本以内とすること、たとえば、20本以内とすることが好ましい。
また、従来と同様に密閉槽21を上下二段の隔壁で上下三層に分離し、最も上の層に排ガス導出部を設ける構成としてもよく、従来の構造において、隔壁22に非噴出領域55を分散して設けることで、ガスライザ30の数を大幅に減少させた構造としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
K 吸収液
21 密閉槽
22 隔壁
24 吸収液貯留部
26 排ガス導入部
29 垂設管(スパージャーパイプ)
30 ガスライザ
52 透孔
54 閉塞部材
55 非噴出領域
56 噴出領域
59 有効領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが導入されて処理される密閉槽と、
当該密閉槽内部を上下に分割する隔壁と、
前記密閉槽の前記隔壁の下側に設けられ、排ガスから硫黄酸化物を吸収する脱流用吸収液が貯留された吸収液貯留部と、
前記密閉槽の前記隔壁の上側に設けられ、前記密閉槽の外部から排ガスが導入される排ガス導入部と、
前記排ガス導入部に連通するとともに、前記隔壁から下方の前記吸収液貯留部に貯留された吸収液内に延出して前記排ガス導入部から吸収液内に排ガスを噴出して分散することにより吸収液の液層上にフロス層を形成する複数の垂設管と、
前記吸収液貯留部の吸収液より上側の空間に連通するとともに、前記隔壁から上方に延出して前記排ガス導入部を貫通するガスライザとを備えた排ガス処理装置であって、
前記隔壁のガスライザの設置領域を除いた前記垂設管を配置可能な有効領域に、前記垂設管を所定範囲内の間隔で配置することにより吸収液に排ガスを噴出する噴出領域と、前記所定範囲内の間隔より広い間隔に渡って前記垂設管を配置しないことにより排ガスを吸収液に噴出せず、前記フロス層の吸収液を前記液層側に下降させる非噴出領域とが設けられ、
複数の前記非噴出領域が前記隔壁の有効領域に分散して設けられていることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記隔壁の有効領域の面積S1に対する複数の前記非噴出領域の面積を合計した合計面積S2の比であるS2/S1が0.05〜0.25となっていることを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記隔壁の有効領域に前記垂設管が配置される複数の透孔をほぼ均等に設け、前記透孔を閉塞することにより前記非噴出領域を設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−88112(P2011−88112A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245480(P2009−245480)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【Fターム(参考)】