説明

排ガス処理触媒、排ガス処理方法および排ガス処理装置

【課題】摩耗および被毒による性能低下を抑制した排ガス処理触媒を提供することにある。
【解決手段】排ガスに含まれる一種以上の汚染物質を除去する排ガス処理触媒であって、前記汚染物質を除去するSO3還元触媒粉11と、SO3還元触媒粉11または排ガス成分と試薬との反応用の触媒でない希釈粉12とからなり、希釈粉12内にSO3還元触媒粉11を分散させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスに含まれる一種以上の汚染物質を除去する排ガス処理触媒、排ガス処理方法および排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ、ガスタービンおよび燃焼炉等から排出される排ガス中の窒素酸化物(NOX)を除去する方法として、窒素酸化物除去触媒(以下「脱硝触媒」と略す)の存在下で、アンモニア(NH3)を還元剤としNOXを無害な窒素および水に分解するアンモニア接触還元法が実用化されている。
【0003】
上述したボイラ等では、硫黄分の高い石炭あるいはC重油などを燃料として利用するものがある。このような燃料を燃焼させて生じる排ガスには高濃度の二酸化硫黄(SO2)および三酸化硫黄(SO3)が存在する。
【0004】
このような排ガスを上述したアンモニア接触還元法を用いて処理すると、NOXを還元して除去するNOX還元除去反応と同時に、SO2から三酸化硫黄(SO3)への酸化反応が生じて、排ガス中のSO3が増加する。このSO3と、前記NOx還元除去反応にて還元剤として使用され未反応分のNH3とが、低温領域で容易に結合して、酸性硫酸アンモニウム等の化合物が生成する。この酸性硫酸アンモニウム等の化合物およびSO3により、後流に配置されている熱交換器等の各種装置の内部や配管が腐食して、目詰まりや一部閉塞等が生じ圧力損失を上昇させてしまう。
【0005】
そのため、上述した排ガスを処理する場合には、優れた脱硝性能と、SO2からSO3への酸化反応が生じにくい低SO2酸化能とを有する脱硝触媒として、チタニア−バナジウム−タングステン触媒などが用いられている。
【0006】
一方、上述した排ガス処理触媒としては、図4に示すように、触媒全体がSO3還元性能を有する粉末41で構成される触媒40などがある。
【0007】
また、上述した、排ガス中の三酸化硫黄(SO3)の濃度を低減する技術として、種々提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−249163号公報
【特許文献2】特開平11−267459号公報
【特許文献3】特開2006−136869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した、脱硝触媒であるチタニア−バナジウム−タングステン触媒を用いても、0.1%オーダでSO2からSO3への酸化反応が生じることが知られており、上述したように酸性硫酸アンモニウムなどが生成してしまう。
【0010】
ここで、図5を用いて、上述した排ガス処理触媒40にてNH3の濃度が低下したときの反応機構を説明する。この図において、各線がガス流れに直交する触媒40の厚さ方向における各成分の濃度を示し、実線はNH3の濃度、1点破線はNOxの濃度、2点破線はSO3の濃度を示す。
【0011】
この図5に示すように、NH3およびNOxの濃度は、触媒40の表面では高いものの、その内部に向かうに従い低下して一定となることが分かる。一方、SO3の濃度は、触媒40の表面から表面近傍に向かうに従い低下するものの、その後は内部に向かうに従い高くなることが分かる。すなわち、触媒40の表面近傍では、下記(1)式に示すような脱硝反応、下記(2)式に示すようなSO3還元反応および下記(3)式に示すようなアンモニアの自己分解反応が促進されることが分かる。また、触媒40の内部では、下記(4)式に示すようなSO3生成反応が促進されることが分かる。具体的には、触媒40において、その表面近傍では、脱硝反応領域S1およびSO3還元反応領域S2、これにアンモニアの自己分解反応も同じ領域となる一方、その内部では、SO3生成反応領域S3のみとなることが分かった。
【0012】
4NO + 4NH3 + O2 → 4N2 + 6H2O ・・・・・ (1)
SO3 + 2NH3 + O2 → SO2 + N2 + 3H2O ・・・・・ (2)
4NH3 + 3O2 → 2N2 + 6H2O ・・・・・ (3)
2SO2 + O2 → 2SO3 ・・・・・ (4)
【0013】
上述した、NH3濃度が低下してもSO3の生成を抑制した構造として、図6に示すように、コージェライトなどの基材51の表面にSO3還元性能を有するSO3還元触媒部52を設けた触媒50や、図7に示すように、脱硝触媒61の表面にSO3還元性能を有するSO3還元触媒部62を設けた触媒60などが考えられる。
【0014】
しかしながら、図6に示すような触媒50であっても、基材51の表面近傍のみにSO3還元触媒部52があるために、排ガスにアッシュを含有する場合には、このアッシュによりSO3還元触媒部52が摩耗されてその触媒性能が低下してしまう。また、砒素などの被毒成分が排ガスに含有する場合には、基材51とSO3還元触媒部52との成分が異なるため、この被毒成分がSO3還元触媒部52のみに拡散し、この触媒部52のみを被毒してしまう。
【0015】
また、図7に示すような触媒60であっても、SO3還元触媒部62が表面近傍のみに存在するために、排ガスにアッシュを含有する場合には、このアッシュによりSO3還元触媒部62が摩耗されてその触媒性能が低下してしまう。また、砒素などの被毒成分が排ガスに含有する場合には、脱硝触媒61とSO3還元触媒部62とが同一成分を含有するため、この被毒成分がSO3還元触媒部62および脱硝触媒61に拡散し、触媒60の全体を被毒してしまう。
【0016】
このような問題は、三酸化硫黄の還元反応および窒素酸化物の還元反応を促進する触媒に限らず、NOx還元触媒やSOx還元触媒などのように、排ガスに含まれる一種以上の汚染物質を除去する排ガス処理触媒であっても生じる。
【0017】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みて提案されたもので、摩耗および被毒による性能低下を抑制した排ガス処理触媒、排ガス処理方法および排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決する第1の発明に係る排ガス処理触媒は、
排ガスに含まれる一種以上の汚染物質を除去する排ガス処理触媒であって、
前記汚染物質を除去する触媒成分と、
排ガス反応用の触媒または排ガス成分と試薬との反応用の触媒でない希釈成分とからなり、
前記希釈成分内に前記触媒成分を分散させた
ことを特徴とする。
【0019】
上述した課題を解決する第2の発明に係る排ガス処理触媒は、
第1の発明に記載された排ガス処理触媒であって、
前記触媒成分はアンモニア試薬で三酸化硫黄を還元する
ことを特徴とする。
【0020】
上述した課題を解決する第3の発明に係る排ガス処理触媒は、
第2の発明に記載された排ガス処理触媒であって、
前記触媒成分がチタニア−酸化タングステンまたはシリカとルテニウムとを有する
ことを特徴とする。
【0021】
上述した課題を解決する第4の発明に係る排ガス処理触媒は、
第3の発明に記載された排ガス処理触媒であって、
前記ルテニウムが、前記チタニア−酸化タングステンまたは前記シリカ100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下である
ことを特徴とする。
【0022】
上述した課題を解決する第5の発明に係る排ガス処理触媒は、
第1乃至第4の発明の何れか一つに記載された排ガス処理触媒であって、
前記希釈成分がシリカである
ことを特徴とする。
【0023】
上述した課題を解決する第6の発明に係る排ガス処理触媒は、
第1乃至第5の発明の何れかに記載された排ガス処理触媒であって、
前記触媒成分の含有量が、1%以上50%以下である
ことを特徴とする。
【0024】
上述した課題を解決する第7の発明に係る排ガス処理方法は、
排ガスに含まれる窒素酸化物および三酸化硫黄を除去する排ガス処理方法であって、
第3乃至第6の発明の何れかに記載された排ガス処理触媒にアンモニアを添加した前記排ガスを接触させて、前記三酸化硫黄を還元させると共に、前記窒素酸化物を還元させた
ことを特徴とする。
【0025】
上述した課題を解決する第8の発明に係る排ガス処理装置は、
排ガスに含まれる窒素酸化物および三酸化硫黄を除去する排ガス処理装置であって、
アンモニアを添加した前記排ガスに接触して配置され、第3の発明乃至第6の発明の何れかに記載された排ガス処理触媒を有し、前記排ガス処理触媒にて前記三酸化硫黄を還元させると共に前記窒素酸化物を還元させた
ことを特徴とする。
【0026】
上述した課題を解決する第9の発明に係る排ガス処理装置は、
第8の発明に記載された排ガス処理装置であって、
前記排ガス処理触媒の下流に配置された脱硝触媒をさらに有し、前記脱硝触媒にて前記窒素酸化物をさらに還元させる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る排ガス処理触媒によれば、排ガスに含まれる一種以上の汚染物質を除去する排ガス処理触媒であって、前記汚染物質を除去する触媒成分と、排ガス反応用の触媒または排ガス成分と試薬との反応用の触媒でない希釈成分とからなり、前記希釈成分内に前記触媒成分を分散させたことにより、耐摩耗性および耐被毒性が向上する。
【0028】
本発明に係る排ガス処理方法によれば、排ガス処理触媒に、アンモニアを添加した、窒素酸化物および三酸化硫黄含有の排ガスを接触させて、前記三酸化硫黄を還元させると共に、前記窒素酸化物を還元させたことで、これらの還元が触媒全体にて生じることとなり、三酸化硫黄の生成が抑制される。また、前記触媒成分が前記希釈成分内に分散されることから、耐摩耗性および耐被毒性が向上する。
【0029】
本発明に係る排ガス処理装置によれば、アンモニアを添加した、窒素酸化物および三酸化硫黄含有の排ガスに接触して配置された排ガス処理触媒を有し、前記排ガス処理触媒にて前記三酸化硫黄を還元させると共に前記窒素酸化物を還元させたことで、三酸化硫黄の還元反応および窒素酸化物の還元反応が触媒全体にて生じ、三酸化硫黄の生成反応を抑制することができる。これにより排ガス処理装置の小型化や低コスト化を図ることができる。また、前記触媒成分が前記希釈成分内に分散されることから、耐摩耗性および耐被毒性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る排ガス処理触媒の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置の概略図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る排ガス処理装置の概略図である。
【図4】従来の排ガス処理触媒の一例を示す概略図である。
【図5】従来の排ガス処理触媒における触媒層におけるSO3還元反応および脱硝反応の挙動の模式図である。
【図6】従来の排ガス処理触媒の他の例を示す概略図である。
【図7】従来の排ガス処理触媒のさらに他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る排ガス処理触媒、排ガス処理方法、および排ガス処理装置の第一の実施形態について、図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態では、三酸化硫黄の還元反応および窒素酸化物の還元反応を促進する触媒に適用した場合について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス処理触媒の概略図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置の概略図であり、図3は、本発明の他の実施形態に係る排ガス処理装置の概略図である。
【0032】
本実施形態に係る排ガス処理触媒10は、図1に示すように、三酸化硫黄を還元する、触媒成分からなるSO3還元触媒粉(触媒粉)11と、アンモニアガス添加後の排ガス成分との反応性が無いと共に、SO3還元触媒粉11との反応性が無い希釈成分からなる希釈粉12とを含有し、希釈粉12内にSO3還元触媒粉11が分散する。前記触媒成分からなるSO3還元触媒粉11としては、チタニア−酸化タングステンまたはシリカとルテニウムとからなる粉末などが挙げられる。前記希釈粉12としては有害反応や試薬であるアンモニアの消費を引き起こさない物質であれば良く、例えばシリカからなる粉末などが挙げられる。このような構造の排ガス処理触媒10であることにより、ボイラ、ガスタービンおよび燃焼炉等から排出され、硫黄酸化物(SOX)および窒素酸化物(NOX)を含有する排ガスに試薬であるNH3を添加することで、触媒10の全体にて、三酸化硫黄の還元反応(下記(5)式参照)が生じると共に窒素酸化物の還元反応(下記(6)式および(7)式参照)が生じ、またアンモニアの自己分解反応(下記(8)式参照)も緩和され、三酸化硫黄の生成反応(下記(9)式参照)が抑制される。また、SO3還元触媒粉11が希釈粉12内に分散されることから、耐摩耗性および耐被毒性が向上する。
【0033】
SO3 + 2NH3 + O2 → SO2 + N2 + 3H2O ・・・・・ (5)
4NO + 4NH3 + O2 → 4N2 + 6H2O ・・・・・ (6)
NO + NO2 + 2NH3 → 2N2 + 3H2O ・・・・・ (7)
4NH3 + 3O2 → 2N2 + 6H2O ・・・・・ (8)
2SO2 + O2 → 2SO3 ・・・・・ (9)
【0034】
チタニア−酸化タングステンまたはシリカ100重量部に対して、ルテニウムを0.1重量部以上10重量部以下とし、好ましくは、1重量部以上4重量部以下とする。このような重量比とすることで、脱硝反応と三酸化硫黄の還元反応とをバランス良く発現させることができる。なお、チタニアと酸化タングステンとからなる触媒粉では、チタニア100重量部に対し、酸化タングステン量を0.1重量部以上25重量部以下とする。
【0035】
排ガス処理触媒10における触媒成分の割合を1%以上50%以下、好ましくは5%以上25%以下の範囲とすることで、三酸化硫黄の生成反応(下記(9)式参照)が抑制される。
【0036】
上述したSO3還元触媒粉11は、例えば、チタニアと酸化タングステンとを含有する触媒粉またはシリカ粉末と塩化ルテニウム溶液とを混合してスラリーを調製し、このスラリーをスプレードライ(噴霧乾燥)することで得られる。
【0037】
排ガス処理触媒10は、例えば、SO3還元触媒粉11と希釈粉12と無機バインダーであるガラス繊維、有機バインダーであるポリビニルアルコールとを混錬した後、ハニカム形状に成型し、例えば100℃で5時間乾燥(予備乾燥)し、次いで、500℃で5時間焼成し、有機バインダーを除去することで得られる。
【0038】
従来の、SO3還元触媒を基材表面に70μmの厚みにて塗布した触媒では、アッシュを含む排ガス中に15,000時間配置すると、前記アッシュにより摩耗してその厚みが60μmとなり、触媒性能が低下するのに対して、上述した排ガス処理触媒10では、アッシュにより触媒10の表面が摩耗しても、SO3還元触媒粉11が希釈粉12内に分散して存在するため、触媒性能の低下を抑制することができる。
【0039】
SO3還元触媒粉11と希釈粉12の同時押出は、被覆された触媒より耐浸食性が高い触媒を製造できる。
【0040】
高価なSO3還元触媒粉11が希釈粉12とともに同時押出できるので、貴金属のような高価な触媒成分で一般的に行われるような、押し出しされた基材を被覆する際の製造コストを避けることができる。
【0041】
よって、上述した排ガス処理触媒10によれば、排ガスに含まれる一種以上の汚染物質を除去する排ガス処理触媒であって、前記汚染物質を除去するSO3還元触媒粉11と、排ガス反応用の触媒または排ガス成分と試薬との反応用の触媒でない希釈粉12とからなり、SO3還元触媒粉11が希釈粉12内に分散することから、耐摩耗性および耐被毒性が向上する。また、上述した構成の排ガス処理触媒10とし、排ガスにNH3を添加することで、触媒10の全体にて、三酸化硫黄の還元反応が生じると共に窒素酸化物の還元反応が生じ、三酸化硫黄の生成が抑制される。
【0042】
ここで、本発明に係る排ガス処理装置としては、図2に示すように、上述した排ガス処理触媒10のみを有する排ガス処理装置20や、図3に示すように、上述した排ガス処理触媒10と、この排ガス処理触媒10に直列に配置される脱硝触媒31とを有する排ガス処理装置30などが挙げられる。これら排ガス処理装置20,30に流入する排ガス21には、アンモニア22が添加される。排ガス処理装置30では、排ガス処理触媒10はアンモニア22が添加された排ガス21に接触して配置され、脱硝触媒31は排ガス処理触媒10の下流側に配置される。脱硝触媒31としては、従来から用いられる触媒やルテニウムを含む触媒が使用される。排ガス21にアンモニア22を添加してなるガスを排ガス処理装置20,30に流入させることにより、排ガス中のSO2からSO3への酸化作用が抑制され、排ガス中のSO3からSO2への還元処理および脱硝処理が同時に行なわれる。すなわち、排ガス処理触媒10にて排ガス中のSO3が還元されてSO2を生成すると共にNOxが還元されて窒素が生成する。さらに、脱硝触媒31では、排ガス中のNOxがさらに還元され窒素が生成する。
【0043】
よって、上述したように、1台の排ガス処理装置20,30にて、三酸化硫黄の還元反応および窒素酸化物の還元反応を触媒10の全体にて生じさせることができ、三酸化硫黄の生成反応を抑制することができる。これにより排ガス処理装置の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、三酸化硫黄の還元反応および窒素酸化物の還元反応を促進する触媒に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えばNOx還元触媒やSOx還元触媒等、排ガスに含まれる一種以上の汚染物質を除去する排ガス処理触媒であれば、本実施形態の場合と同様に適用することが可能である。
【実施例1】
【0045】
[触媒調製法1]
100重量部のチタニア(TiO2)当たり、10重量部の酸化タングステン(WO3)を含有する触媒粉末(TiO2−WO3)と塩化ルテニウム(RuCl3)溶液とを混合してスラリーを調製した後、このスラリーをスプレードライ(噴霧乾燥)して、100重量部のチタニア−酸化タングステン粉末当たり2重量部のルテニウムを該粉末に担持させ、500℃で5時間焼成する。得られたチタニア−酸化タングステン−ルテニウム粉末を粉末触媒(No.1)とした。
【0046】
粉末触媒(No.1)11重量部にSiO2(富士シリシア化学社製)79重量部、無機バインダーであるガラス繊維10重量部さらに有機バインダーとしてポリビニルアルコール、水を添加して、ニーダーで混錬した。
【0047】
次いで、この混錬物をハニカム押出ノズルを備えたスクリュー付き真空押出機によって、ハニカム成型体に押し出し成形した。この成形体を自然乾燥させた後、100℃で5時間通風乾燥した。
【0048】
この後、500℃で5時間焼成し、有機バインダーを除去した。
外径28.4mm×28.4mm、軸方向長さ600mm、セルピッチ6.7mm、外壁厚さ1.1mm、内壁厚さ0.6mmのハニカム形状の排ガス処理触媒(No.1)を得た。
【0049】
得られた排ガス処理触媒(No.1)は、チタニア−酸化タングステン−ルテニウムを11重量%、シリカを89重量%含有する。
【実施例2】
【0050】
[触媒調製法2]
触媒調製法1にて調製した粉末触媒(No.1)6重量部にSiO2(富士シリシア化学社製)84重量部、ガラス繊維10重量部さらに有機バインダーとしてポリビニルアルコール、水を添加して、ニーダーで混錬した。
【0051】
以下、触媒調製法1と同様に操作してハニカム形状の排ガス処理触媒(No.2)を得た。得られた排ガス処理触媒(No.2)は、チタニア−酸化タングステン−ルテニウムを6重量%、シリカを94重量%含有する。
【実施例3】
【0052】
[触媒調製法3]
触媒調製法1にて調製した粉末触媒(No.1)22重量部にSiO2(富士シリシア化学社製)68重量部、ガラス繊維10重量部さらに有機バインダーとしてポリビニルアルコール、水を添加して、ニーダーで混錬した。
【0053】
以下、触媒調製法1と同様に操作してハニカム形状の排ガス処理触媒(No.3)を得た。得られた排ガス処理触媒(No.3)は、チタニア−酸化タングステン−ルテニウムを22重量%、シリカを78重量%含有する。
【実施例4】
【0054】
[触媒調製法4]
100重量部のチタニア(TiO2)当たり、10重量部の酸化タングステン(WO3)を含有する触媒粉末(TiO2−WO3)と塩化ルテニウム(RuCl3)溶液とを混合してスラリーを調製した後、このスラリーをスプレードライ(噴霧乾燥)して、100重量部のチタニア−タングステン粉末当たり4重量部のルテニウムを該粉末に担持させ、500℃で5時間焼成する。得られたチタニア−酸化タングステン−ルテニウム粉末を粉末触媒(No.2)とした。
【0055】
粉末触媒(No.2)11重量部にSiO2(富士シリシア化学社製)79重量部、ガラス繊維10重量部さらに有機バインダーとしてポリビニルアルコール、水を添加して、ニーダーで混錬した。
【0056】
次いで、この混錬物をハニカム押出ノズルを備えたスクリュー付き真空押出機によって、ハニカム成型体に押し出し成形した。この成形体を自然乾燥させた後、100℃で5時間通風乾燥した。
【0057】
この後、500℃で5時間焼成し、有機バインダーを除去した。
外径28.4mm×28.4mm、軸方向長さ600mm、セルピッチ6.7mm、外壁厚さ1.1mm、内壁厚さ0.6mmのハニカム形状の排ガス処理触媒(No.4)を得た。
【0058】
得られた排ガス処理触媒(No.4)は、チタニア−酸化タングステン−ルテニウムを11重量%、シリカを89重量%含有する。
【実施例5】
【0059】
[触媒調製法5]
シリカ(SiO2)粉末と塩化ルテニウム(RuCl3)溶液とを混合してスラリーを調製した後、このスラリーをスプレードライ(噴霧乾燥)して、100重量部のシリカ粉末当たり2重量部のルテニウムを該粉末に担持させ、500℃で5時間焼成する。得られたシリカ−ルテニウム粉末を粉末触媒(No.3)とした。
【0060】
粉末触媒(No.3)11重量部にSiO2(富士シリシア化学社製)79重量部、無機バインダーであるガラス繊維10重量部さらに有機バインダーとしてポリビニルアルコール、水を添加して、ニーダーで混錬した。
【0061】
次いで、この混錬物をハニカム押出ノズルを備えたスクリュー付き真空押出機によって、ハニカム成型体に押し出し成形した。この成形体を自然乾燥させた後、100℃で5時間通風乾燥した。
【0062】
この後、500℃で5時間焼成し、有機バインダーを除去した。
外径28.4mm×28.4mm、軸方向長さ600mm、セルピッチ6.7mm、外壁厚さ1.1mm、内壁厚さ0.6mmのハニカム形状の排ガス処理触媒(No.5)を得た。
【0063】
得られた排ガス処理触媒(No.5)は、シリカ−ルテニウムを11重量%、シリカを89重量%含有する。
【実施例6】
【0064】
[触媒調製法6]
シリカ(SiO2)粉末と塩化ルテニウム(RuCl3)溶液とを混合してスラリーを調製した後、このスラリーをスプレードライ(噴霧乾燥)して、100重量部のシリカ粉末当たり4重量部のルテニウムを該粉末に担持させ、500℃で5時間焼成する。得られたシリカ−ルテニウム粉末を粉末触媒(No.4)とした。
【0065】
粉末触媒(No.4)11重量部にSiO2(富士シリシア化学社製)79重量部、ガラス繊維10重量部添加し、さらに有機バインダーとしてポリビニルアルコール、水を添加して、ニーダーで混錬した。
【0066】
次いで、この混錬物をハニカム押出ノズルを備えたスクリュー付き真空押出機によって、ハニカム成型体に押し出し成形した。この成形体を自然乾燥させた後、100℃で5時間通風乾燥した。
【0067】
この後、500℃で5時間焼成し、有機バインダーを除去した。
外径28.4mm×28.4mm、軸方向長さ600mm、セルピッチ6.7mm、外壁厚さ1.1mm、内壁厚さ0.6mmのハニカム形状の排ガス処理触媒(No.6)を得た。
【0068】
得られた排ガス処理触媒(No.6)は、シリカ−ルテニウムを11重量%、シリカを89重量%含有する。
【0069】
(比較例1)
[比較触媒調製法1]
100重量部のチタニア(TiO2)当り、10重量部の酸化タングステン(WO3)を含有するハニカム触媒に対し、塩化ルテニウム(RuCl3)溶液を含浸して、100重量部のチタニア−酸化タングステン触媒当り、1重量部のRuを該粉末に含浸担持させる。例えば、チタニア−酸化タングステンハニカム触媒の含水量が触媒1g当り0.25mLのとき、チタニア−酸化タングステンハニカム触媒100重量部に対し、ルテニウム1重量部を含浸担持させるには、塩化ルテニウム溶液濃度は以下の通り計算される。
【0070】
【数1】

【0071】
したがって、塩化ルテニウム(RuCl3)溶液中のRu濃度を40g/Lに調製した液に触媒を1分間含浸させることにより、ハニカム触媒100重量部に対し、ルテニウム1重量部含浸することになる。
【0072】
続いて、ルテニウムを含浸担持したチタニア−酸化タングステン触媒を乾燥した後、500℃で5時間焼成する。
【0073】
得られたチタニア−酸化タングステン−ルテニウム触媒は実施例と同一形状で比較排ガス処理触媒(No.1)とした。
【0074】
(比較例2)
[比較触媒調製法2]
上述した触媒調製法1にて調製した粉末触媒(No.1)11重量部にTiO2(石原産業社製、MC−90)79重量部、ガラス繊維10重量部さらに有機バインダーとしてポリビニルアルコール、水を添加して、ニーダーで混錬した。
【0075】
以下、上述した触媒調製法1と同様に操作して、実施例1と同一形状の比較排ガス処理触媒(No.2)を得た。
【0076】
得られた比較排ガス処理触媒(No.2)は、チタニア−酸化タングステン−ルテニウムを11重量%、チタニアとガラス繊維を89重量%含有する。
【0077】
(比較例3)
[比較触媒調製法3]
上述した触媒調製法1にて調製した粉末触媒(No.1)に水を加えて湿式ボールごと粉砕を行い、コート用スラリーを調製した。
【0078】
次に、基材として用いる100重量部のチタニア(TiO2)当り、9重量部の酸化タングステン(WO3)を含有するハニカム触媒を前記スラリーに浸漬し、乾燥後500℃で5時間焼成を行った。
【0079】
粉砕スラリーのコート量(塗布量)は、基材の表面積1m2当たり100gで上述した実施例1と同一形状の比較排ガス処理触媒(No.3)を得た。
【0080】
[評価実験]
[SO3還元性能および脱硝性能の評価]
上述した排ガス処理触媒(No.1〜No.6)および比較排ガス処理触媒(No.1、No.2)をそれぞれ表1に示す形状、すなわち28.4mm(4穴)×28.4mm(4穴)×600mm長さの触媒に形成し、このように形成した触媒を直列に2本連結させる。このような形状の排ガス処理触媒(No.1〜No.6)および比較排ガス処理触媒(No.1、No.2)に対して、下記の表1に示す条件で排ガスを流通させて、当該触媒の1本目出口(AV=37.2(m3N/m2・h))、2本目出口(AV=18.6(m3N/m2・h)において、SO3還元率および脱硝性能をそれぞれ測定した。表1において、Ugsは空塔速度(流体の流量/ハニカム触媒断面積)を示し、AVは面積速度(ガス量/触媒での全接触面積)を示す。
【0081】
【表1】

【0082】
上記表1による測定結果を下記表2に示す。
表2において、SO3還元率および脱硝率は、下記式にてそれぞれ表される。
SO3還元率(%) = (1−出口SO3濃度/入口SO3濃度)×100
脱硝率 (%) = (1−出口NOX濃度/入口NOX濃度)×100
【0083】
【表2】

【0084】
上記表2に示される結果から、本発明に係る排ガス処理触媒は、SO3還元性能および脱硝性能あるいはSO3還元性能を有することが分かった。上述した排ガス処理触媒および上述した比較排ガス処理触媒の測定結果から、SO3還元性能のあるTiO2−WO3−Ru粉のみからなる触媒は、SO3をSO2に還元する反応よりもSO2をSO3へ酸化する反応の方が大きくなり、SO3還元性能は無くなることが分かった。また、アナターゼ型チタニアのように脱硝性能がある粉末で希釈してもSO3還元性能は無くなることが分かった。
【0085】
[砒素による被毒性能の評価]
ここで、本発明の第1の実施例に係る排ガス処理触媒(No.1)と、比較排ガス処理触媒(No.3)とについて、触媒の砒素に対する被毒性能をそれぞれ評価し、その性能を比較した。
【0086】
すなわち、上述した排ガス処理触媒(No.1)および上述した比較排ガス処理触媒(No.3)を上述した表1に示す排ガス条件下でSO3還元性能および脱硝性能を測定した後、排ガス中に酸化砒素(As23)を4ppmの濃度で8時間注入し(特殊な条件下での処理を行い)、再びSO3還元性能および脱硝性能を測定した。この測定結果を下記表3に示す。
【0087】
【表3】

【0088】
上述した表3の結果から、本発明に係る排ガス処理触媒は比較排ガス処理触媒(No.3)に比べ、砒素被毒前のSO3還元性能および脱硝性能は劣るものの、砒素被毒後においては被毒前のSO3還元性能を維持しているのに対し、一般的な条件下では被毒性を有する比較排ガス処理触媒(No.3)は上述した特殊な条件による処理によりSO3還元性能が無くなることが分かった。よって、本発明に係る排ガス処理触媒が砒素被毒に対し、影響が小さく排ガス中に砒素が存在する場合においても、SO3還元性能および脱硝性能を十分に発現するため、排ガス処理に用いて好適であることが判った。
【0089】
すなわち、上述した排ガス処理触媒10によれば、SO3還元触媒粉11と希釈粉12とからなり、希釈粉12内にSO3還元触媒粉11を分散させたことにより、希釈粉12が排ガスから毒物を吸着し、SO3還元触媒粉11に対する毒物の影響を弱めることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、排ガス中のSO3濃度およびNOX濃度を減少させることができ、硫黄分の高い石炭あるいは重質油等を燃料として燃焼させるボイラの排ガス処理に適用して有用である。
【符号の説明】
【0091】
10 排ガス処理触媒
11 SO3還元触媒粉
12 希釈粉
20 排ガス処理装置
21 排ガス
22 アンモニア
30 排ガス処理装置
31 脱硝触媒
S1 脱硝反応領域
S2 SO3還元反応領域
S3 SO3生成反応領域
F ガス流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスに含まれる一種以上の汚染物質を除去する排ガス処理触媒であって、
前記汚染物質を除去する触媒成分と、
排ガス反応用の触媒または排ガス成分と試薬との反応用の触媒でない希釈成分とからなり、
前記希釈成分内に前記触媒成分を分散させた
ことを特徴とする排ガス処理触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス処理触媒であって、
前記触媒成分はアンモニア試薬で三酸化硫黄を還元する
ことを特徴とする排ガス処理触媒。
【請求項3】
請求項2に記載の排ガス処理触媒であって、
前記触媒成分がチタニア−酸化タングステンまたはシリカとルテニウムとを有する
ことを特徴とする排ガス処理触媒。
【請求項4】
請求項3に記載の排ガス処理触媒であって、
前記ルテニウムは、前記チタニア−酸化タングステンまたは前記シリカ100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下である
ことを特徴とする排ガス処理触媒。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の排ガス処理触媒であって、
前記希釈成分はシリカである
ことを特徴とする排ガス処理触媒。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の排ガス処理触媒であって、
前記触媒成分の含有量は、1%以上50%以下である
ことを特徴とする排ガス処理触媒。
【請求項7】
排ガスに含まれる窒素酸化物および三酸化硫黄を除去する排ガス処理方法であって、
請求項3乃至請求項6の何れかに記載の排ガス処理触媒にアンモニアを添加した前記排ガスを接触させて、前記三酸化硫黄を還元させると共に、前記窒素酸化物を還元させた
ことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項8】
排ガスに含まれる窒素酸化物および三酸化硫黄を除去する排ガス処理装置であって、
アンモニアを添加した前記排ガスに接触して配置され、請求項3乃至請求項6の何れかに記載の排ガス処理触媒を有し、前記排ガス処理触媒にて前記三酸化硫黄を還元させると共に前記窒素酸化物を還元させた
ことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の排ガス処理装置であって、
前記排ガス処理触媒の下流に配置された脱硝触媒をさらに有し、前記脱硝触媒にて前記窒素酸化物をさらに還元させる
ことを特徴とする排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−179296(P2010−179296A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197729(P2009−197729)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(509244134)コーメテック インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】