説明

排ガス分析装置

【課題】簡易な構成で、排ガスの成分濃度を精度よく、かつ安定して測定することができる排ガス分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】エンジン20の排ガスを排出する排気経路3に取り付けられ、排気経路3中の排ガスの成分濃度を測定する排ガス分析用センサ5を備えたガス分析装置において、排ガス分析用センサ5は、エンジン20からの排ガスが通過される排ガス通過孔51・51・・・が長手方向に沿って複数穿設されたセンサ本体50と、各排ガス通過孔51・51・・・を横断する方向に向けてレーザ光を照射する照射部6と、照射部6から照射されたレーザ光を受光する受光部7とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス分析装置の技術に関し、より詳細には、内燃機関の排ガスを排出する排気経路に取り付けられ、該排気経路中の排ガスの成分濃度を測定するセンサ部を備えた排ガス分析装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の成分濃度や温度を測定し、分析するための装置として、排気経路(配管)に、光源や検出器部等からなるセンサ部が直接に配設され、かかるセンサ部によって排気経路を流れる排ガス中を透過したレーザ光を検出する等して、排ガス中の成分濃度等をリアルタイムで測定するように構成された排ガス分析装置の構成が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述した特許文献1に開示される排ガス分析装置は、内燃機関より排出された排ガスが通過する排ガス通過孔に向けてレーザ光を照射し、反射鏡によりレーザ光を多重反射させた後に、排ガス中を透過したレーザ光を検出するセンサ部が設けられている。そして、このセンサ部は、センサ本体の排ガス通過孔内で対向する一対の反射鏡によってレーザ光を多重反射させて、レーザ光が排ガス中を透過する距離(測定長)をより長く確保することで、その測定精度を向上するように構成されている。
【特許文献1】特開2006−184180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示される排ガス分析装置は、上述したセンサ部をエンジンのシリンダヘッドとエキゾーストマニホールドの間に配置して、エンジンから排出された直後の排ガスがエキゾーストマニホールドで合流される前の段階で排ガスの温度やガス濃度を測定する構成が開示されている。
【0005】
なるほど、エンジンの各気筒から排出される排ガスの温度やガス濃度を直接測定することで、気筒ごとに排出される排ガスを分析できるため、エンジンの燃焼状態を気筒ごとに確認することができる。特に、近年のエンジン開発においては、商品力の高い製品とするために燃費やエミッションの性能向上が課題となっているところ、瞬時燃費評価やエミッション評価を行うためにエンジン給排気ガスを精度よく測定することができるのが好ましいとされているところである。
【0006】
しかしながら、上述した排ガス分析装置の構成では、センサ部において、排ガス通過孔に向けて照射されるレーザ光の光路長を確保するために反射鏡を用いた多重反射方式が採用されていたことから、次のような課題があった。
すなわち、センサ部がエンジンのシリンダヘッドとエキゾーストマニホールドの間に配置されることで、エンジンからの排出直後の高温排ガス(800℃〜1000℃)の影響(熱輻射や熱伝達)を受けて、センサ部に設けられた反射鏡において、比較的耐熱温度(500℃〜600℃)の低い計測用レーザ光を多重反射させるための反射コートが損傷等してしまい、排ガスの測定精度に劣るといった課題があった。
【0007】
また、センサ部において、エンジンからの排出直後の高温排ガスの影響を受けて、センサ本体や当該センサを構成する各部材が温度変形(熱歪みや熱変形)してしまう恐れがあった。そして、センサ本体や当該センサ部を構成する各部材が温度変形してしまうと、反射鏡の固定に緩みが生じ、照射部から照射されたレーザ光の反射角度がずれて、受光部にてレーザ光を受光できないといった計測不良の原因となっていた。
【0008】
さらに、そもそも、センサ部において反射鏡が用いられることで、センサ部の構成が複雑化してメンテナンス性に劣るとともに、製造コストがかかるという課題があった。
【0009】
そこで、本発明においては、排ガス分析装置に関し、前記従来の課題を解決するもので、簡易な構成で、排ガスの成分濃度を精度よく、かつ安定して測定することができる排ガス分析装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
すなわち、請求項1においては、内燃機関の排ガスを排出する排気経路に取り付けられ、該排気経路中の排ガスの成分濃度を測定するセンサ部を備えたガス分析装置において、前記センサ部は、前記内燃機関からの排ガスが通過される排ガス通過孔が所定方向に沿って複数穿設されたセンサ本体と、前記各排ガス通過孔を横断する方向に向けてレーザ光を照射する照射部と、前記照射部から照射されたレーザ光を受光する受光部とを備えてなるものである。
【0012】
請求項2においては、前記センサ本体は、前記照射部より照射されるレーザ光の光路に沿って、隣接する前記排ガス通過孔の間を連通する通光孔が設けられるものである。
【0013】
請求項3においては、前記センサ本体は、前記通光孔に、前記排ガス通過孔内の領域と前記通光孔内の領域とを区画するレーザ光透過用のレンズ部材が設けられるものである。
【0014】
請求項4においては、前記センサ本体は、前記通光孔内の領域にイナートガスを給排するガス給排経路が設けられるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1に示す構成としたので、簡易な構成で、排ガスの成分濃度を精度よく、かつ安定して測定することができる。
【0017】
請求項2に示す構成としたので、センサ本体に対して一対の照射部及び受光部を取り付けることで、全ての排ガス通過孔を横断するようにレーザ光を照射させることができ、センサ構造を簡易に構成することができる。
【0018】
請求項3に示す構成としたので、排ガス通過孔内の排ガスが通光孔内の領域に滞留するのを防止でき、本来の排ガスの濃度計測の結果に滞留ガスの成分濃度が重複し、または滞留ガスの成分濃度が変動して濃度計測の際に生じるノイズによって、測定精度が低減するのを防止できる。
【0019】
請求項4に示す構成としたので、イナートガスによって通光孔内の滞留ガスを機外に排出することができ、本来の排ガスの濃度計測の結果に滞留ガスの成分濃度が重複し、または滞留ガスの成分濃度が変動して濃度計測の際に生じるノイズによって、排ガスの測定精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る排ガス分析装置の全体的な構成を示した側面図、図2は本実施例の排ガス分析用センサの構成を示した斜視図、図3は本実施例の排ガス分析用センサの取付状態を示した斜視図、図4は本実施例の排ガス分析用センサの正面断面図、図5は照射部の取付構造を示した拡大断面図、図6は受光部の取付構造を示した拡大断面図、図7は通光孔付近を拡大して示した断面図、図8は別実施例の排ガス分析用センサの通光孔付近を拡大して示した断面図である。
【0021】
まず、本実施例の排ガス分析装置1の全体構成について、以下に概説する。
図1に示すように、本実施例の排ガス分析装置1は、自動車2に配置された内燃機関であるエンジン20から排出される排ガス中の成分濃度や温度を測定し分析するものである。具体的には、排ガス分析装置1は、エンジン20から延出された排ガスの排気経路3の複数箇所に、該排気経路3中の排ガスの成分濃度を測定するセンサ部としての排ガス分析用センサ4・5と、この排ガス分析用センサ4・5に接続されたレーザ発信・受光用のコントローラ10と、コントローラ10に接続されたコンピュータ装置11等とで構成されている。
【0022】
自動車2には、エンジン20からの排ガスを機外に排出する排気経路3が敷設され、排気経路3は、エキゾーストマニホールド30、排気管31、第一触媒装置32、第二触媒装置33、マフラー34、排気パイプ35等とから構成されている。また、排気経路3の各構成機器は、断面円形状の配管3aによって連結されている。
【0023】
排気経路3においては、エンジン20の排ガスが、まずエキゾーストマニホールド30で合流され、排気管31を通じて第一触媒装置32及び第二触媒装置33に導入され、その後マフラー34を通じて排気パイプ35から大気中に放出される。このような排気経路3が形成されることによって、エンジン20からの排ガスは、二つの触媒装置32・33によって浄化され、マフラー34によって消音・減圧されて大気中に放出される。
【0024】
排気経路3においては、排ガス分析用センサ4が4箇所に配置されており、具体的には、第一触媒装置32の上流側の排気管31と第一触媒装置32の間、第一触媒装置32と第二触媒装置33との間、第二触媒装置33とマフラー34との間、排気パイプ35の末端部に配設されている。また、本実施例では、排ガス分析用センサ5が、エンジン20とエキゾーストマニホールド30との間に配置されている(図4参照)。
【0025】
本実施例の排ガス分析装置1では、各排ガス分析用センサ4・5において、コントローラ10によって赤外線レーザ光が照射され、かつ排ガスを透過した後のレーザ光が受光されることで得られたデータが、コントローラ10からコンピュータ装置11に送られて排ガス中の成分が分析される。
【0026】
コントローラ10は、複数の波長の赤外線レーザ光を照射する照射装置であり、レーザ光の波長は、検出する排ガスの成分に合わせて設定される。また、コントローラ10には、排ガス分析用センサ4・5に接続された図示せぬ差分型光検出器等が設けられており、排ガス分析用センサ4・5により受光された信号光が導光され、排ガス中を透過して減衰したレーザ光と排ガス中を透過していないレーザ光との信号光が接続されたコンピュータ装置11に出力される。
コンピュータ装置11では、コントローラ10からの出力信号を解析して、排ガスの成分濃度や排ガスの温度を算出する等して、排ガスの分析が行われる。
【0027】
このように、本実施例の排ガス分析装置1では、各排ガス分析用センサ4・5による排気経路3の一断面におけるスポット的な排ガスの測定が可能となっている。特に、本実施例のように、排ガス分析用センサ4・5が排気経路3の複数箇所に設けられることで、排ガスが排気経路3の所定断面でどのように変化するかを瞬時に測定することができ、排ガスの状態をリアルタイムに連続して測定することができる。
【0028】
次に、排ガス分析用センサ5の構成について、以下に詳述する。
図2乃至6に示すように、本実施例の排ガス分析用センサ5は、平面視略矩形の長板状部材より形成され、排ガスが通過する円形の排ガス通過孔51・51・・・が所定方向(図2において左右方向)に沿って複数穿設されたセンサ本体50と、排ガス通過孔51・51・・・と直交する一断面に沿って、各排ガス通過孔51・51・・・を横断する方向に向けてレーザ光を照射する照射部6と、照射部6から照射されたレーザ光を受光する受光部7等とを備えてなり、エンジン20とエキゾーストマニホールド30との間に配置される。
【0029】
まず、センサ本体50の構成について、以下に詳述する。
図2に示すように、センサ本体50は、排ガス分析用センサ5を構成する機台として形成され、具体的には、平面視略矩形に形成された長板状の金属部材より構成され、排ガスの流れ方向と直交する対向面を貫通するようにして、円形の排ガス通過孔51・51・・・が複数箇所(本実施例では4箇所)に穿設されている。各排ガス通過孔51は、それぞれ同一平面上に開口され、隣接する排ガス通過孔51・51が所定の離間を有するようにして、センサ本体50の長手方向(図2において左右方向)に沿って平面視略同一線上に位置するように穿設されている。
【0030】
以下、センサ本体50に穿設された排ガス通過孔51は、長手方向の一端面(図2において最左側の端面)から見て順に長手方向に沿って位置P1〜P4の排ガス通過孔51として区別することとする。ただし、各位置P1〜P4の排ガス通過孔51は略同一に形成される。
【0031】
図3に示すように、本実施例の排ガス分析用センサ5は、4気筒のエンジン20のシリンダヘッド20aとエキゾーストマニホールド30との間に取り付けられ、具体的には、センサ本体50が両面に図示せぬガスケットが当接された状態でシリンダヘッド20aとエキゾーストマニホールド30との間に挟まれて固定される。エキゾーストマニホールド30は、排気経路3の上流側端部のフランジ部30aがシリンダヘッド20aに対して図示せぬボルト等によって締結される。また、エキゾーストマニホールド30の排気経路3の下流側端部は、上述した管継手36と連結されて排気経路3が形成される。
【0032】
そして、本実施例の排ガス分析用センサ5は、センサ本体50において、エンジン20の気筒数、すなわちシリンダヘッド20aに設けられた4つの排気孔20bに対応する位置に、排ガス通過孔51・51・・・が穿設されている。かかる位置に排ガス通過孔51が穿設されることで、シリンダヘッド20aとエキゾーストマニホールド30との間に取り付けられた排ガス分析用センサ5によって、各排気孔20bから排出される排ガスが対応する位置に設けられた排ガス通過孔51を通過する際に成分濃度を測定することができる。
【0033】
図2及び図4に示すように、センサ本体50は、照射部6より照射されるレーザ光の光路に沿って、隣接する排ガス通過孔51を連通する複数の通光孔52・52・・・が設けられている。具体的には、通光孔52は、隣接する排ガス通過孔51の離間毎に、隣接する排ガス通過孔51の空間を連続するように貫通されている。各通光孔52は、排ガス通過孔51と直交する一断面に沿うようにして穿設される。本実施例では、各通光孔52は、照射部6より照射されるレーザ光の光路に沿って、すなわち、センサ本体50において排ガス通過孔51と直交する一断面に沿ってそれぞれが同一線上に位置するようにして設けられる。
【0034】
図4乃至図6に示すように、センサ本体50は、位置P1・P4の排ガス通過孔51を長手方向の両端面側の外部空間と連通する通光孔53が設けられており、通光孔53を介して、位置P1・P4の排ガス通過孔51がセンサ本体50の外側と連通されている。本実施例の通光孔53は、上述した通光孔52と同一線上、すなわち、センサ本体50において排ガス通過孔51と直交する一断面に沿って横断する同一線上にそれぞれ位置するようにして設けられる。
【0035】
通光孔53には、最奥部(排ガス通過孔51側の奥部)から外側方向に向けて順に、ガスケット54とレーザ光透過用のレンズ部材55とが配設されている。レンズ部材55は、通光孔53の内壁に密接されており、排ガス通過孔51と外部空間とが遮蔽されており、排ガス通過孔51内の排ガスが通光孔53を介して外部に漏出しないように構成されている。
【0036】
ガスケット54及びレンズ部材55は、同軸ボルト56によってセンサ本体50に位置決め固定されている。また、ガスケット54及び同軸ボルト56の軸中心であってレーザ光の光軸上に位置する箇所には、レーザ光通過用の穴が穿設されている。後述する照射部6より照射されたレーザ光は、レンズ部材55を介して排ガス通過孔51内に導入されるとともに、レンズ部材55を介して排ガス通過孔51外に導出されて受光部7により受光される。
【0037】
次に、照射部6及び受光部7の構成について、以下に詳述する。
図4及び図5に示すように、照射部6は、赤外線送信用の光ファイバ60と、光ファイバ60をセンサ本体50に位置決めして取り付ける接続ブロック61等とで構成されている。光ファイバ60は、一端が接続ブロック61に設けられた入光コリメータ61aに接続されるとともに、他端が上述したコントローラ10に接続されており、コントローラ10から射出されたレーザ光が光ファイバ60を介して入光コリメータ61aより照射される。
【0038】
接続ブロック61は、セラミック板より形成されるアライメント調整板62及びセラミック素材より形成される断熱板63を介して、センサ本体50の一方の端面に面接された状態で、ボルト64によって締結される。接続ブロック61には、センサ本体50の一方の端面に穿設された通光孔53に取り付けられた状態で、通光孔53と直線状に接続される通光孔65が穿設されている。
【0039】
そして、本実施例の照射部6は、光ファイバ60の照射面が通光孔65・通光孔53を介して排ガス通過孔51に対向され、通光孔65・通光孔53を介してレーザ光が排ガス通過孔51と直交する一断面に向けて照射可能であって、かつ、各排ガス通過孔51・51・・・を横断する方向に向けて照射可能にセンサ本体50に取り付けられている。
【0040】
図4及び図6に示すように、受光部7は、上述した照射部6と略同一に構成され、レーザ光を検出するディテクタ70と、ディテクタ70をセンサ本体50に位置決めして取り付ける接続ブロック71等とで構成されている。ディテクタ70は、一端が接続ブロック71に設けられた受光コリメータ71aに接続されるとともに、他端が上述したコントローラ10に接続されており、排ガス中を透過したレーザ光がディテクタ70に受光されて、受光信号がコントローラ10に入力される。
【0041】
接続ブロック71は、セラミック板より形成されるアライメント調整板72及びセラミック素材より形成される断熱板73を介して、センサ本体50の他方の端面に面接された状態で、ボルト74によって締結される。接続ブロック71には、センサ本体50の他方の端面に穿設された通光孔53に取り付けられた状態で、通光孔53と直線状に接続される通光孔75が穿設されている。
【0042】
本実施例の受光部7は、ディテクタ70の受光面が通光孔75・通光孔53を介して排ガス通過孔51に対向され、上述したように、照射部6より排ガス通過孔51と直交する一断面に沿って、各排ガス通過孔51を横断する方向に照射されたレーザ光を、通光孔53・通光孔75を介して受光可能となるように、照射部6と同一線上に位置するようにしてセンサ本体50に取り付けられる。
【0043】
このように、本実施例の排ガス分析用センサ5は、照射部6及び受光部7により、排ガス通過孔51と直交する一断面に沿って、排ガス通過孔51・51・・・を横断する方向に向けてレーザ光の光路が形成されている。そして、排ガス分析用センサ5のセンサ本体50には、このレーザ光の光路に沿って、上述した通光孔52及びその他の通光孔53等が設けられている。
【0044】
本実施例の排ガス分析装置1において、排ガス分析用センサ5にて各排ガス通過孔51を通過する排ガスの成分濃度を測定する際には、まず、照射部6から排ガス通過孔51と直交する一断面に沿って、各排ガス通過孔51・51・・・を横断する方向に向けてレーザ光が照射され、通光孔53等を通って位置P1の排ガス通過孔51内に導入される。
そして、位置P1の排ガス通過孔51内に導入されたレーザ光は、排ガス中を透過しながら、各通光孔52・52・・・を介して隣接する位置P2・P3の排ガス通過孔51へと長手方向に横断し、やがて位置P4の排ガス通過孔51に到達される。
通光孔53等を通って位置P4の排ガス通過孔51内から導出されたレーザ光は、照射部6と同一線上に配置された受光部7にて受光される。
【0045】
次に、通光孔52に設けられるレンズ部材90について、以下に説明する。
図4及び図7に示すように、本実施例の排ガス分析用センサ5は、センサ本体50の各通光孔52・52・・・に、排ガス通過孔51内の領域(排ガス領域D1)と通光孔52内の領域(センサ内部領域D2)とを区画するレーザ光透過用のレンズ部材90・90がそれぞれ設けられている。具体的には、通光孔52内の排ガス通過孔51側の両開口端に、排ガス通過孔51と通光孔52との境界を区画するようにしてレンズ部材90・90がそれぞれ配設される。
【0046】
レンズ部材90は、通光孔52の開口端であって、排ガス通過孔51側の開口端から見てセンサ本体50の内部側に、ガスケット91を介して固定ボルト92によって位置固定されている。このように、一対のレンズ部材90・90が通光孔52に取り付けられることで、センサ本体50において排ガス通過孔51と通光孔52により形成される空間が、排ガス領域D1と内部領域D2とに複数に区画される。
【0047】
照射部6より照射されたレーザ光は、各通光孔52を通過する際には、排ガス領域D1から一方のレンズ部材90を介して内部領域D2に導入され、内部領域D2を通過した後は、他方のレンズ部材90を介して内部領域D2から排ガス領域D1へと導出される。
【0048】
なお、各レンズ部材90は、通光孔52の内壁に密接されており、排ガス通過孔51と通光孔52内部、すなわち、排ガス領域D1と内部領域D2とを遮蔽して、排ガス通過孔51内(排ガス領域D1)の排ガスが通光孔52内(内部領域D2)に漏出することがないように構成されている。
【0049】
以上のように、本実施例の排ガス分析装置1は、エンジン20の排ガスを排出する排気経路3に取り付けられ、排気経路3中の排ガスの成分濃度を測定する排ガス分析用センサ5を備えたガス分析装置において、排ガス分析用センサ5は、エンジン20からの排ガスが通過される排ガス通過孔51・51・・・が長手方向に沿って複数穿設されたセンサ本体50と、各排ガス通過孔51・51・・・を横断する方向に向けてレーザ光を照射する照射部6と、照射部6から照射されたレーザ光を受光する受光部7とを備えてなるため、簡易な構成で、排ガスの成分濃度を精度よく、かつ安定して測定することができる。
【0050】
すなわち、本実施例の排ガス分析装置1は、排ガス分析用センサ5において、従来のように排ガス分析用センサ5に反射鏡を設けてレーザ光を多重反射させることで、排ガス中を透過するレーザ光の光路長を確保するような構成ではなく、反射鏡を設けることなく、照射部6より照射されたレーザ光をセンサ本体50に穿設された複数の排ガス通過孔51・51・・・を横断させることで、排ガス中を透過するレーザ光の光路長を確保するような構成とされている。
【0051】
このように、本実施例の排ガス分析装置1は、排ガス分析用センサ5において、レーザ光を複数の排ガス通過孔51・51・・・を横断させることで、排ガス分析用センサ5に反射鏡を設けることなく排ガス中を透過するレーザ光の光路長を確保しつつ、反射鏡の破損等に基づく測定精度の低減を回避することができるため、排ガスの成分濃度を精度よく測定できる。また、センサ本体50の温度変形による光軸のずれを低減することができ、高温条件下であっても安定して排ガスの成分濃度を測定することができる。さらに、排ガス分析用センサ5を簡易に構成することができ、製造コストやメンテナンスコストを低減できる。
【0052】
また、本実施例の排ガス分析用センサ5を用いることで、高温条件での排ガスの成分濃度測定が可能となることから、エンジン20とエキゾーストマニホールド30との間に排ガス分析用センサ5を配置することで、例えば、エンジン20の性能評価(燃費やエミッション)や排気経路3に配設される各触媒装置32・33の触媒性能を精度よく評価することができる。特に、一対の排ガス分析用センサ5・5をシリンダヘッド20aの各吸気ポート及び排気ポートに対応する位置にそれぞれ取り付けることで、エンジン20の詳細な性能を評価することができる。
【0053】
また、本実施例の排ガス分析用センサ5において、センサ本体50は、照射部6より照射されるレーザ光の光路に沿って、隣接する排ガス通過孔51・51の間を連通する通光孔52が設けられるため、センサ本体50に対して一対の照射部6及び受光部7を取り付けることで、全ての排ガス通過孔51を横断するようにレーザ光を照射させることができ、センサ構造を簡易に構成することができる。
【0054】
特に、本実施例の排ガス分析装置1では、排ガス分析用センサ5において、通光孔52に、排ガス通過孔51内の領域(排ガス領域D1)と通光孔52内の領域(内部領域D2)とを区画するレンズ部材90が設けられるため、排ガス通過孔51内の排ガスが、通光孔52内の余剰空間としての内部領域D2に滞留したり、隣接する排ガス通過孔51の間で通光孔52を介して排ガスが流出したりするのを防止でき、本来の排ガスの濃度計測の結果に滞留ガスの成分濃度が重複し、または滞留ガスの成分濃度が変動して濃度計測の際に生じるノイズによって、測定精度が低減するのを防止できる。
特に、エンジン20の性能評価(燃費やエミッション)を評価する際には、通光孔52内に排ガスが滞留してエンジン20の性能が低下することを防止して、正確な実エンジンを計測することができる。
【0055】
なお、本実施例の排ガス分析装置1の構成は、上述した実施例に限定されない。
【0056】
すなわち、上述した実施例の排ガス分析装置1における排ガス分析用センサ5では、通光孔52にレンズ部材90・90が配設されて、排ガス領域D1と内部領域D2とを区画するように構成されているが、さらに排ガス分析用センサ5において、センサ本体50に内部領域D2に対してイナートガス(不活性ガス)を給排するガス給排経路93が設けられてもよい。
【0057】
具体的には、図8に示すように、ガス給排経路93は、センサ本体50の通光孔52に開口するように設けられ、通光孔52内の内部領域D2にイナートガスを供給する供給路93aと、通光孔52内の内部領域D2にイナートガスを機外に排出する排出路93bとが設けられている。供給路93aは、一端が通光孔52内に設けられた一方のレンズ部材90の近傍位置に開口され、他端がイナートガスのガス供給装置94と接続されている。一方、排出路93bは、一端が通光孔52内に設けられた他方のレンズ部材90の近傍位置に開口され、他端がガス回収装置95と接続されている。
【0058】
ガス供給装置94から送出されたイナートガスは、供給路93aを介して通光孔52内に送り込まれる。通光孔52内に送り込まれたイナートガスは、通光孔52のレンズ部材90・90のレンズ表面を冷却しながら、やがて排出路93bからガス回収装置95へと排出される。このように、排ガス分析用センサ5のセンサ本体50にガス給排経路93が設けられることで、イナートガスが、ガス供給装置94→供給路93a→通光孔52(内部領域D2)→排出路93b→ガス回収装置95に送られる。
【0059】
以上のように、本実施例の排ガス分析用センサ5は、センサ本体50に、通光孔52内の領域(内部領域D2)にイナートガスを給排するガス給排経路93が設けられるため、イナートガスによって通光孔52内の滞留ガスを機外に排出することができ、本来の排ガスの濃度計測の結果に滞留ガスの成分濃度が重複し、または滞留ガスの成分濃度が変動して濃度計測の際に生じるノイズによって、排ガスの測定精度を向上できる。
【0060】
ただし、ガス給排経路93はセンサ本体50に設けられた全ての通光孔52にイナートガスを給排可能に設けられる必要はなく、例えば、一部の通光孔52にのみイナートガスが給排されるように設けられてもよい。特に、センサ本体50にはガス給排経路93が、隣接する排ガス通過孔51の離間、すなわち通光孔52の長さや径が大きい通光孔52に対してイナートガスが給排可能となるように構成されるのが好ましい。
【0061】
また、通光孔52に設けられるレンズ部材90やガス給排経路93は、通光孔52の長さや径に応じて必ずしも設けられなくてもよい。
【0062】
また、センサ本体50において、通光孔53に設けられるレンズ部材55や通光孔52に設けられるレンズ部材90の配置近傍に、各レンズ部材55・90のレンズ面の結露を防止するためのヒータ等の加熱装置が設けられてもよい。
【0063】
本実施例の排ガス分析装置1を用いて測定可能な内燃機関としては、上述したように4気筒のエンジン20の構成だけではなく、例えば、3気筒エンジンやV型6気筒エンジン等に対しても測定可能であり、かかる場合には、排ガス分析用センサ5においてセンサ本体50に3つの排ガス通過孔51・51・・・が連設するようにして穿設される。
このように、排ガス通過孔51は、センサ本体50においてエンジン20の気筒数(又はシリンダヘッド20aの排気孔20b)に対応する個数及び位置に適宜設けることができる。
【0064】
また、本実施例の排ガス分析装置1は、排ガス分析用センサ5をエンジン20のシリンダヘッド20aとインテークマニホールドとの間に取り付けて、上述したように排ガス中の成分濃度等を測定する場合と同様に、吸気ガスを測定する吸気ガス分析装置として用いることも可能である。具体的には、排ガス分析装置1は、内燃機関(エンジン20)への吸気ガスを供給する吸気経路に取り付けられ、吸気経路中の吸気ガスの成分濃度を測定するセンサ部を備えた吸気ガス分析装置として、センサ部が、内燃機関からの吸気ガスが通過される吸気ガス通過孔が所定方向に沿って複数穿設されたセンサ本体と、各吸気ガス通過孔を横断する方向に向けてレーザ光を照射する照射部と、照射部から照射されたレーザ光を受光する受光部とを備えるように構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施例に係る排ガス分析装置の全体的な構成を示した側面図。
【図2】本実施例の排ガス分析用センサの構成を示した斜視図。
【図3】本実施例の排ガス分析用センサの取付状態を示した斜視図。
【図4】本実施例の排ガス分析用センサの正面断面図。
【図5】照射部の取付構造を示した拡大断面図。
【図6】受光部の取付構造を示した拡大断面図。
【図7】通光孔付近を拡大して示した断面図。
【図8】別実施例の排ガス分析用センサの通光孔付近を拡大して示した断面図。
【符号の説明】
【0066】
1 排ガス分析装置
3 排気経路
5 排ガス分析用センサ(センサ部)
6 照射部
7 受光部
20 エンジン(内燃機関)
50 センサ本体
51 排ガス通過孔
52 通光孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガスを排出する排気経路に取り付けられ、該排気経路中の排ガスの成分濃度を測定するセンサ部を備えた排ガス分析装置において、
前記センサ部は、
前記内燃機関からの排ガスが通過される排ガス通過孔が所定方向に沿って複数穿設されたセンサ本体と、
前記各排ガス通過孔を横断する方向に向けてレーザ光を照射する照射部と、
前記照射部から照射されたレーザ光を受光する受光部とを備えてなることを特徴とする排ガス分析装置。
【請求項2】
前記センサ本体は、前記照射部より照射されるレーザ光の光路に沿って、隣接する前記排ガス通過孔の間を連通する通光孔が設けられることを特徴とする請求項1に記載の排ガス分析装置。
【請求項3】
前記センサ本体は、前記通光孔に、前記排ガス通過孔内の領域と前記通光孔内の領域とを区画するレーザ光透過用のレンズ部材が設けられることを特徴とする請求項2に記載の排ガス分析装置。
【請求項4】
前記センサ本体は、前記通光孔内の領域にイナートガスを給排するガス給排経路が設けられることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の排ガス分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−232848(P2008−232848A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73251(P2007−73251)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】