排ガス浄化用触媒
【課題】 貴金属元素を使用することなく、排ガス浄化性能の向上を図ることができる排ガス浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】
本発明の排ガス浄化用触媒は、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有し、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合を、それらの全量に対して、１．０質量％以下とする。
【解決手段】
本発明の排ガス浄化用触媒は、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有し、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合を、それらの全量に対して、１．０質量％以下とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、排ガス浄化用触媒、詳しくは、内燃機関などから排出される排気ガスを浄化するための排ガス用浄化触媒に関する。
【背景技術】
【０００２】
自動車などの内燃機関から排出される排気ガスには、炭化水素（ＨＣ）、一酸化炭素（ＣＯ）、窒素酸化物（ＮＯｘ）などが含まれており、これらを浄化するための排ガス浄化用触媒が知られている。
【０００３】
これらを浄化するための触媒として、活性成分である貴金属元素（Ｒｈ（ロジウム）、Ｐｄ（パラジウム）、Ｐｔ（白金）など）が、セリア系複合酸化物、ジルコニア系複合酸化物、ペロブスカイト複合酸化物またはアルミナなどの耐熱性酸化物に、担持または固溶している排ガス浄化用触媒が種々知られている。
【０００４】
しかし、貴金属元素は、一般的に高価であるため、排ガス浄化用触媒において、貴金属元素の使用量を削減することが求められている。
【０００５】
そこで、貴金属元素に代えて、例えば、遷移金属であるＣｕが活性成分として、触媒担体（アルミナ）に担持された触媒が提案されている。（例えば、特許文献１参照。）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開平５−３２９６３６９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
一方、近年の環境負荷低減の観点から、排ガス浄化用触媒の浄化性能の向上がますます望まれている。
【０００８】
そこで、本発明は、貴金属元素を使用することなく、排ガス浄化性能の向上を図ることができる排ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
上記目的を達成するために、本発明の排ガス浄化用触媒は、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有し、前記アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合が、それらの全量に対して、１．０質量％以下であることを特徴としている。
【００１０】
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、前記アルミナが、さらに、遷移金属を担持していることが好適である。
【００１１】
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、Ｃｕを含有する化合物と、アルカリ金属を含有する化合物および／またはアルカリ土類金属を含有する化合物と、アルミナとを混合して前駆体を調製し、前記前駆体を、酸化条件下において、熱処理することにより得られることが好適である。
【発明の効果】
【００１２】
本発明の排ガス浄化用触媒は、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有し、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合が、それらの全量に対して、１．０質量％以下であるため、排ガス浄化性能の向上を図ることできる。
【００１３】
したがって、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、貴金属元素を使用しなくても、排ガス浄化性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】実施例８およびθ−Ａｌ２Ｏ３のＸＲＤデータである。
【図２】実施例２，３および比較例１のＥＸＡＦＳデータである。
【図３】実施例および比較例の６００℃におけるＴＨＣ、ＮＯｘおよびＣＯの浄化率を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
本発明の排ガス浄化用触媒は、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有する。
【００１６】
すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、Ｃｕとアルカリ金属との組み合わせ、Ｃｕとアルカリ土類金属との組み合わせ、または、Ｃｕとアルカリ金属とアルカリ土類金属との組み合わせのいずれかを担持するアルミナを含有する。
【００１７】
アルカリ金属としては、例えば、Ｌｉ、Ｎａ、Ｋ、Ｒｂ、Ｃｓ、Ｆｒなどが挙げられる。
【００１８】
これらアルカリ金属は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【００１９】
これらアルカリ金属のなかでは、好ましくは、Ｋが挙げられる。
【００２０】
アルカリ土類金属としては、例えば、Ｂｅ、Ｍｇ、Ｃａ、Ｓｒ、Ｂａ、Ｒａなどが挙げられる。
【００２１】
これらアルカリ土類金属は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【００２２】
これらアルカリ土類金属のなかでは、好ましくは、Ｃａ、Ｂａが挙げられ、さらに好ましくは、Ｂａが挙げられる。
【００２３】
また、排ガス浄化用触媒における、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合は、触媒全量（すなわち、アルミナと、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属との総和）に対して、１．０質量％以下、好ましくは、０．９質量％以下であって、例えば、０．０５質量％以上、好ましくは、０．１質量％以上である。
【００２４】
このような排ガス浄化用触媒を製造するには、まず、Ｃｕを含有する化合物（以下、Ｃｕ含有化合物という。）と、アルカリ金属を含有する化合物（以下、アルカリ金属含有化合物という）および／またはアルカリ土類金属を含有する化合物（以下、アルカリ土類金属含有化合物という）と、アルミナとを混合して混合物（前駆体）を調製する。
【００２５】
Ｃｕ含有化合物、アルカリ金属含有化合物およびアルカリ土類金属含有化合物としては、例えば、それら各元素（Ｃｕ、アルカリ金属、アルカリ土類金属）の塩、それら各元素（Ｃｕ、アルカリ金属、アルカリ土類金属）のアルコキシドなどが挙げられる。
【００２６】
各元素の塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化塩、りん酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。
【００２７】
また、各元素のアルコキシドとしては、例えば、各元素と、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシなどのアルコキシとから形成されるアルコラートや、下記一般式（１）で示される各元素のアルコキシアルコラートなどが挙げられる。
【００２８】
Ｍ［ＯＣＨ（Ｒ１）−（ＣＨ２）ｉ−ＯＲ２］ｊ （１）
（式中、Ｍは、Ｃｕ、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。Ｒ１は、水素原子または炭素数１〜４のアルキル基を示し、Ｒ２は、炭素数１〜４のアルキル基を示し、ｉは、１〜３の整数、ｊは、２〜４の整数を示す。）
アルコキシアルコラートは、より具体的には、例えば、メトキシエチレート、メトキシプロピレート、メトキシブチレート、エトキシエチレート、エトキシプロピレート、プロポキシエチレート、ブトキシエチレートなどが挙げられる。
【００２９】
このようなＣｕ含有化合物、アルカリ金属含有化合物およびアルカリ土類金属含有化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、あるいは、複数種類を併用することもできる。
【００３０】
また、このようなＣｕ含有化合物、アルカリ金属含有化合物およびアルカリ土類金属含有化合物のなかでは、好ましくは、各元素の硝酸塩などの無機塩が挙げられる。
【００３１】
アルミナとしては、例えば、α−アルミナ、θ−アルミナ、γ−アルミナなどが挙げられる。
【００３２】
α−アルミナは、結晶相としてα相を有する。α−アルミナの具体的な市販品としては、例えば、住友化学社製の「ＡＫＰ−５３ 高純度アルミナ」などが挙げられる。このようなα−アルミナは、例えば、アルコキシド法、ゾルゲル法、共沈法などの方法によって得ることができる。
【００３３】
θ−アルミナは、結晶相としてθ相を有し、α−アルミナに遷移するまでの中間（遷移）アルミナの一種である。θ−アルミナの具体的な市販品としては、例えば、プロキャタリゼ社製の「ＳＰＨＥＲＡＬＩＴＥ ５３１Ｐ」などが挙げられる。このようなθ−アルミナは、例えば、市販の活性アルミナ（γ−アルミナ）を、大気中にて、９００〜１１００℃で、１〜１０時間熱処理することによって得ることができる。
【００３４】
γ−アルミナは、結晶相としてγ相を有する。γ−アルミナとしては、特に限定されず、例えば、排ガス浄化用触媒などに用いられている公知のものが挙げられる。
【００３５】
これらアルミナは、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【００３６】
また、これらアルミナのなかでは、好ましくは、θ−アルミナが挙げられる。
【００３７】
このようなアルミナは、例えば、粉末状であることが好ましく、その比表面積は、例えば、１〜１００ｍ２／ｇ、好ましくは、７０〜１００ｍ２／ｇである。なお、比表面積は、ＢＥＴ法により測定することができる。
【００３８】
Ｃｕ含有化合物と、アルカリ金属含有化合物および／またはアルカリ土類金属含有化合物と、アルミナとを混合する方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、Ｃｕ含有化合物、アルカリ金属含有化合物および／またはアルカリ土類金属含有化合物を、溶媒に溶解して金属溶液を調製し、この金属溶液をアルミナに含浸させた後、乾燥させる方法などが挙げられる。
【００３９】
金属溶液としては、例えば、各元素の塩を水に溶解した含塩水溶液、各元素のアルコキシドを有機溶媒に溶解したアルコキシド溶液などが挙げられる。
【００４０】
含塩水溶液は、例えば、上記した各元素の塩に、水を加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
【００４１】
アルコキシド溶液は、例えば、上記した各元素のアルコキシドに、有機溶媒を加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
【００４２】
有機溶媒としては、各元素のアルコキシドを溶解できれば、特に制限されないが、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類などが挙げられる。
【００４３】
これら有機溶媒は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【００４４】
また、これら有機溶媒のなかでは、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
【００４５】
このような金属溶液のなかでは、好ましくは、各元素の塩を水に溶解した含塩水溶液が挙げられる。
【００４６】
金属溶液をアルミナに含浸させる条件としては、温度が、例えば、１０〜４０℃、時間が、例えば、１〜１０分である。
【００４７】
含浸させた後、乾燥させる条件としては、乾燥温度が、例えば、５０〜２５０℃、好ましくは、８０〜２００℃、乾燥時間が、例えば、１〜４８時間、好ましくは、５〜３０時間である。
【００４８】
以上のように、Ｃｕ含有化合物と、アルカリ金属含有化合物および／またはアルカリ土類金属含有化合物と、アルミナとを混合することによって、Ｃｕ含有化合物と、アルカリ金属含有化合物および／またはアルカリ土類金属含有化合物と、アルミナとの混合物（前駆体）が得られる。
【００４９】
次いで、混合物を、大気中（酸化条件下）において、所定の加熱温度で熱処理（焼成）して、排ガス浄化用触媒を調製する。
【００５０】
熱処理温度としては、例えば、５００〜８００℃、好ましくは、６００〜７００℃である。
【００５１】
熱処理する時間としては、例えば、０．５〜５時間、好ましくは、０．５〜３時間である。
【００５２】
得られた排ガス浄化用触媒は、酸素存在下において、熱処理されるため、Ｃｕが酸化銅としてアルミナに担持される。
【００５３】
また、排ガス浄化用触媒における、アルミナに担持されるＣｕの割合は、Ｃｕとアルカリ金属および／またはアルカリ土類金属との総和に対して、５０質量％を超過し、好ましくは、５５質量％以上であって、例えば、９５質量％以下、好ましくは、７０質量％以下である。
【００５４】
また、排ガス浄化用触媒のアルカリ金属の含有割合は、Ｃｕ１００質量部に対して、例えば、１０〜８０質量部、好ましくは、１５〜３０質量部である。
【００５５】
また、排ガス浄化用触媒のアルカリ土類金属の含有割合は、Ｃｕ１００質量部に対して、例えば、１０〜８０質量部、好ましくは、１５〜３０質量部である。
【００５６】
また、排ガス浄化用触媒のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有割合は、Ｃｕ１００質量部に対して、例えば、１０〜８０質量部、好ましくは、３０〜７０質量部である。
【００５７】
また、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、例えば、０．１〜１５質量％、好ましくは、０．５〜３質量％である。
【００５８】
また、このような排ガス浄化用触媒の比表面積（例えば、ＢＥＴ比表面積）は、例えば、１〜１２０ｍ２／ｇ、好ましくは、３０〜１１０ｍ２／ｇである。
【００５９】
排ガス浄化用触媒に含有されるアルミナは、好ましくは、Ｃｕ、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属に加え、さらに、遷移金属を担持する。
【００６０】
遷移金属としては、例えば、Ｃｒ、Ｍｎ、Ｆｅ、Ｃｏ、Ｎｉなどが挙げられる。
【００６１】
これら遷移金属は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【００６２】
これら遷移金属のなかでは、好ましくは、Ｍｎ、Ｆｅ、Ｃｏ、Ｎｉが挙げられ、さらに好ましくは、これら遷移金属を２種以上併用することが挙げられる。
【００６３】
このような遷移金属を、アルミナに担持させるには、例えば、遷移金属を含有する化合物を上記した金属溶液に溶解することにより、上記混合物に混合した後、大気中（酸化条件下）において、所定の加熱温度で熱処理（焼成）すればよい。
【００６４】
遷移金属を含有する化合物としては、上記と同様に、遷移金属元素の塩、遷移金属元素のアルコキシドなどが挙げられ、好ましくは、遷移金属元素の塩が挙げられる。
【００６５】
金属溶液における遷移金属の濃度は、例えば、０．０５〜１０質量％、好ましくは、０．１５〜０．５質量％である。
【００６６】
このような排ガス浄化用触媒の遷移金属の含有割合は、触媒全量に対して、例えば、０．０５〜３質量％、好ましくは、０．１〜２質量％である。
【００６７】
そして、本発明の排ガス浄化用触媒は、そのまま、触媒として用いることもできるが、通常、触媒担体上に担持させるなど、公知の方法により、触媒化合物として調製される。
【００６８】
触媒担体としては、例えば、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス担体など、公知の触媒担体が挙げられる。
【００６９】
触媒担体上に担持させるには、例えば、まず、上記により得られた排ガス浄化用触媒に、水などを加えてスラリーとする。そして、これを触媒担体上にコーティングし、乾燥させ、その後、３００〜８００℃、好ましくは、３００〜６００℃で熱処理する。
【００７０】
これにより、本発明の排ガス浄化用触媒を、触媒担体上に担持させることができる。
【００７１】
このような排ガス浄化用触媒は、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有し、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合が、それらの全量に対して、１．０質量％以下であるため、排ガス浄化性能の向上を図ることできる。
【００７２】
したがって、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、貴金属元素を使用しなくても、排ガス浄化性能の向上を図ることができる。
【実施例】
【００７３】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例により限定されるものではない。
実施例１
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部とを、水１００００質量部に溶解して、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％）を調製した。
【００７４】
次いで、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末９８２．０質量部に、水５００００質量部を添加した金属溶液１００６３質量部を混合し、混合物を調製した。その後、１８０℃で攪拌しながら乾燥させ、電気炉にて、大気中、６５０℃で１時間熱処理（焼成）することにより、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、比表面積は、９４．１ｍ２／ｇであった。
実施例２
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸カリウム（カリウム３８．６質量％）６．７質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｋ濃度０．０３質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７７．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｋの含有割合は、０．３質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、比表面積は、９４．０ｍ２／ｇであった。
実施例３
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７７．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、比表面積は、９５．０ｍ２／ｇであった。
実施例４
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸マンガン（ＩＩ）・６水和物（マンガン１８．８質量％）１６．０質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｍｎ濃度０．０３質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７９．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｍｎの含有割合は、０．３質量％、比表面積は、９４．３ｍ２／ｇであった。
実施例５
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸鉄（ＩＩＩ）・９水和物（鉄１３．７質量％）５４．８質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｆｅ濃度０．０７質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７５．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｆｅの含有割合は、０．７５質量％、比表面積は、９５．２ｍ２／ｇであった。
実施例６
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸カリウム（カリウム３８．６質量％）６．７質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部と、硝酸ニッケル（ＩＩ）・６水和物（ニッケル１９．９質量％）１５．０質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｋ濃度０．０３質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％、Ｎｉ濃度０．０３質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７７．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｋの含有割合は、０．３質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、Ｎｉの含有割合は、０．３質量％、比表面積は、９４．６ｍ２／ｇであった。
実施例７
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸鉄（ＩＩＩ）・９水和物（鉄１３．７質量％）５４．８質量部と、硝酸マンガン（ＩＩ）・６水和物（マンガン１８．８質量％）１６．０質量部と、硝酸ニッケル（ＩＩ）・６水和物（ニッケル１９．９質量％）１５．０質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｆｅ濃度０．０７質量％、Ｍｎ濃度０．０３質量％、Ｎｉ濃度０．０３質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９６９．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｆｅの含有割合は、０．７５質量％、Ｍｎの含有割合は、０．３質量％、Ｎｉの含有割合は、０．３質量％、比表面積は、９４．７ｍ２／ｇであった。
実施例８
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸カリウム（カリウム３８．６質量％）６．７質量部と、硝酸鉄（ＩＩＩ）・９水和物（鉄１３．７質量％）５４．８質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｋ濃度０．０３質量％、Ｆｅ濃度０．０７質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９６９．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｋの含有割合は、０．３質量％、Ｆｅの含有割合は、０．７５質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、比表面積は、９４．０ｍ２／ｇであった。
実施例９
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸カリウム（カリウム３８．６質量％）６．７質量部と、硝酸カルシウム（ＩＩ）・４水和物（カルシウム１６．６質量％）１７．９質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｋ濃度０．０３質量％、Ｃａ濃度０．０３質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７１．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｋの含有割合は、０．３質量％、Ｃａの含有割合は、０．３質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、比表面積は、９８．４ｍ２／ｇであった。
比較例１
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部のみを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９８５．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、比表面積は、９７．９ｍ２／ｇであった。
比較例２
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９８０．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、比表面積は、９５．１ｍ２／ｇであった。
比較例３
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸ニッケル（ＩＩ）・６水和物（ニッケル２０．１質量％）１５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｎｉ濃度０．０３質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９８２．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｎｉの含有割合は、０．３質量％、比表面積は、９４．６ｍ２／ｇであった。
【００７５】
評価試験
１．ＸＲＤの測定
Ｘ線回折（Ｘ−Ｒａｙ Ｄｉｆｆｒａｃｔｉｏｎ：ＸＲＤ）装置を用いて、上記実施例８により得られた排ガス浄化用触媒を測定した。測定により得られたＸＲＤデータを図１に示す。なお、図１では、対照としてθ−Ａｌ２Ｏ３の測定データを併せて示している。
【００７６】
図１から、実施例８の排ガス浄化用触媒において、θ−Ａｌ２Ｏ３は変化していないことがわかる。
２．ＥＸＡＦＳ
Ｘ線吸収微細構造分析(Ｘ−ｒａｙ ａｂｓｏｒｐｔｉｏｎ ｆｉｎｅ ｓｔｒｕｃｔｕｒｅ：ＸＡＦＳ)装置を用いて、上記実施例２、３および比較例１により得られた排ガス浄化用触媒のＣｕのＫ吸収端を測定した。測定により得られた広域エックス線吸収微細構造（Ｅｘｔｅｎｄｅｄ Ｘ−ｒａｙ ａｂｓｏｒｐｔｉｏｎ ｆｉｎｅ ｓｔｒｕｃｔｕｒｅ：ＥＸＡＦＳ）を図２に示す。
【００７７】
図２から、実施例２および３の排ガス浄化用触媒において、Ｃｕの分布状態は、Ｃｕ単独の場合（比較例１）と同様であり、合金を形成していないことがわかる。
３．ＴＨＣ、ＮＯｘおよびＣＯ浄化率
上記実施例１〜９および比較例１〜３により得られた各排ガス浄化用触媒を、ペレット化して（０．５〜１ｍｍサイズ）、常圧固定床流通反応装置内に配置した。前処理として、表１に示すリッチガス（ガス条件Ａ）中で、６００℃１０分間保持した後、室温まで一度冷却した。
【００７８】
次いで、触媒床温度を室温から６００℃まで１８００秒で昇温させた後、ガス条件ＢでのＴＨＣ、ＮＯｘおよびＣＯ浄化率を測定した。測定結果を図３に示す。
【００７９】
【表１】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、排ガス浄化用触媒、詳しくは、内燃機関などから排出される排気ガスを浄化するための排ガス用浄化触媒に関する。
【背景技術】
【０００２】
自動車などの内燃機関から排出される排気ガスには、炭化水素（ＨＣ）、一酸化炭素（ＣＯ）、窒素酸化物（ＮＯｘ）などが含まれており、これらを浄化するための排ガス浄化用触媒が知られている。
【０００３】
これらを浄化するための触媒として、活性成分である貴金属元素（Ｒｈ（ロジウム）、Ｐｄ（パラジウム）、Ｐｔ（白金）など）が、セリア系複合酸化物、ジルコニア系複合酸化物、ペロブスカイト複合酸化物またはアルミナなどの耐熱性酸化物に、担持または固溶している排ガス浄化用触媒が種々知られている。
【０００４】
しかし、貴金属元素は、一般的に高価であるため、排ガス浄化用触媒において、貴金属元素の使用量を削減することが求められている。
【０００５】
そこで、貴金属元素に代えて、例えば、遷移金属であるＣｕが活性成分として、触媒担体（アルミナ）に担持された触媒が提案されている。（例えば、特許文献１参照。）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開平５−３２９６３６９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
一方、近年の環境負荷低減の観点から、排ガス浄化用触媒の浄化性能の向上がますます望まれている。
【０００８】
そこで、本発明は、貴金属元素を使用することなく、排ガス浄化性能の向上を図ることができる排ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
上記目的を達成するために、本発明の排ガス浄化用触媒は、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有し、前記アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合が、それらの全量に対して、１．０質量％以下であることを特徴としている。
【００１０】
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、前記アルミナが、さらに、遷移金属を担持していることが好適である。
【００１１】
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、Ｃｕを含有する化合物と、アルカリ金属を含有する化合物および／またはアルカリ土類金属を含有する化合物と、アルミナとを混合して前駆体を調製し、前記前駆体を、酸化条件下において、熱処理することにより得られることが好適である。
【発明の効果】
【００１２】
本発明の排ガス浄化用触媒は、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有し、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合が、それらの全量に対して、１．０質量％以下であるため、排ガス浄化性能の向上を図ることできる。
【００１３】
したがって、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、貴金属元素を使用しなくても、排ガス浄化性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】実施例８およびθ−Ａｌ２Ｏ３のＸＲＤデータである。
【図２】実施例２，３および比較例１のＥＸＡＦＳデータである。
【図３】実施例および比較例の６００℃におけるＴＨＣ、ＮＯｘおよびＣＯの浄化率を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
本発明の排ガス浄化用触媒は、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有する。
【００１６】
すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、Ｃｕとアルカリ金属との組み合わせ、Ｃｕとアルカリ土類金属との組み合わせ、または、Ｃｕとアルカリ金属とアルカリ土類金属との組み合わせのいずれかを担持するアルミナを含有する。
【００１７】
アルカリ金属としては、例えば、Ｌｉ、Ｎａ、Ｋ、Ｒｂ、Ｃｓ、Ｆｒなどが挙げられる。
【００１８】
これらアルカリ金属は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【００１９】
これらアルカリ金属のなかでは、好ましくは、Ｋが挙げられる。
【００２０】
アルカリ土類金属としては、例えば、Ｂｅ、Ｍｇ、Ｃａ、Ｓｒ、Ｂａ、Ｒａなどが挙げられる。
【００２１】
これらアルカリ土類金属は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【００２２】
これらアルカリ土類金属のなかでは、好ましくは、Ｃａ、Ｂａが挙げられ、さらに好ましくは、Ｂａが挙げられる。
【００２３】
また、排ガス浄化用触媒における、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合は、触媒全量（すなわち、アルミナと、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属との総和）に対して、１．０質量％以下、好ましくは、０．９質量％以下であって、例えば、０．０５質量％以上、好ましくは、０．１質量％以上である。
【００２４】
このような排ガス浄化用触媒を製造するには、まず、Ｃｕを含有する化合物（以下、Ｃｕ含有化合物という。）と、アルカリ金属を含有する化合物（以下、アルカリ金属含有化合物という）および／またはアルカリ土類金属を含有する化合物（以下、アルカリ土類金属含有化合物という）と、アルミナとを混合して混合物（前駆体）を調製する。
【００２５】
Ｃｕ含有化合物、アルカリ金属含有化合物およびアルカリ土類金属含有化合物としては、例えば、それら各元素（Ｃｕ、アルカリ金属、アルカリ土類金属）の塩、それら各元素（Ｃｕ、アルカリ金属、アルカリ土類金属）のアルコキシドなどが挙げられる。
【００２６】
各元素の塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化塩、りん酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。
【００２７】
また、各元素のアルコキシドとしては、例えば、各元素と、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシなどのアルコキシとから形成されるアルコラートや、下記一般式（１）で示される各元素のアルコキシアルコラートなどが挙げられる。
【００２８】
Ｍ［ＯＣＨ（Ｒ１）−（ＣＨ２）ｉ−ＯＲ２］ｊ （１）
（式中、Ｍは、Ｃｕ、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。Ｒ１は、水素原子または炭素数１〜４のアルキル基を示し、Ｒ２は、炭素数１〜４のアルキル基を示し、ｉは、１〜３の整数、ｊは、２〜４の整数を示す。）
アルコキシアルコラートは、より具体的には、例えば、メトキシエチレート、メトキシプロピレート、メトキシブチレート、エトキシエチレート、エトキシプロピレート、プロポキシエチレート、ブトキシエチレートなどが挙げられる。
【００２９】
このようなＣｕ含有化合物、アルカリ金属含有化合物およびアルカリ土類金属含有化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、あるいは、複数種類を併用することもできる。
【００３０】
また、このようなＣｕ含有化合物、アルカリ金属含有化合物およびアルカリ土類金属含有化合物のなかでは、好ましくは、各元素の硝酸塩などの無機塩が挙げられる。
【００３１】
アルミナとしては、例えば、α−アルミナ、θ−アルミナ、γ−アルミナなどが挙げられる。
【００３２】
α−アルミナは、結晶相としてα相を有する。α−アルミナの具体的な市販品としては、例えば、住友化学社製の「ＡＫＰ−５３ 高純度アルミナ」などが挙げられる。このようなα−アルミナは、例えば、アルコキシド法、ゾルゲル法、共沈法などの方法によって得ることができる。
【００３３】
θ−アルミナは、結晶相としてθ相を有し、α−アルミナに遷移するまでの中間（遷移）アルミナの一種である。θ−アルミナの具体的な市販品としては、例えば、プロキャタリゼ社製の「ＳＰＨＥＲＡＬＩＴＥ ５３１Ｐ」などが挙げられる。このようなθ−アルミナは、例えば、市販の活性アルミナ（γ−アルミナ）を、大気中にて、９００〜１１００℃で、１〜１０時間熱処理することによって得ることができる。
【００３４】
γ−アルミナは、結晶相としてγ相を有する。γ−アルミナとしては、特に限定されず、例えば、排ガス浄化用触媒などに用いられている公知のものが挙げられる。
【００３５】
これらアルミナは、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【００３６】
また、これらアルミナのなかでは、好ましくは、θ−アルミナが挙げられる。
【００３７】
このようなアルミナは、例えば、粉末状であることが好ましく、その比表面積は、例えば、１〜１００ｍ２／ｇ、好ましくは、７０〜１００ｍ２／ｇである。なお、比表面積は、ＢＥＴ法により測定することができる。
【００３８】
Ｃｕ含有化合物と、アルカリ金属含有化合物および／またはアルカリ土類金属含有化合物と、アルミナとを混合する方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、Ｃｕ含有化合物、アルカリ金属含有化合物および／またはアルカリ土類金属含有化合物を、溶媒に溶解して金属溶液を調製し、この金属溶液をアルミナに含浸させた後、乾燥させる方法などが挙げられる。
【００３９】
金属溶液としては、例えば、各元素の塩を水に溶解した含塩水溶液、各元素のアルコキシドを有機溶媒に溶解したアルコキシド溶液などが挙げられる。
【００４０】
含塩水溶液は、例えば、上記した各元素の塩に、水を加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
【００４１】
アルコキシド溶液は、例えば、上記した各元素のアルコキシドに、有機溶媒を加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
【００４２】
有機溶媒としては、各元素のアルコキシドを溶解できれば、特に制限されないが、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類などが挙げられる。
【００４３】
これら有機溶媒は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【００４４】
また、これら有機溶媒のなかでは、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
【００４５】
このような金属溶液のなかでは、好ましくは、各元素の塩を水に溶解した含塩水溶液が挙げられる。
【００４６】
金属溶液をアルミナに含浸させる条件としては、温度が、例えば、１０〜４０℃、時間が、例えば、１〜１０分である。
【００４７】
含浸させた後、乾燥させる条件としては、乾燥温度が、例えば、５０〜２５０℃、好ましくは、８０〜２００℃、乾燥時間が、例えば、１〜４８時間、好ましくは、５〜３０時間である。
【００４８】
以上のように、Ｃｕ含有化合物と、アルカリ金属含有化合物および／またはアルカリ土類金属含有化合物と、アルミナとを混合することによって、Ｃｕ含有化合物と、アルカリ金属含有化合物および／またはアルカリ土類金属含有化合物と、アルミナとの混合物（前駆体）が得られる。
【００４９】
次いで、混合物を、大気中（酸化条件下）において、所定の加熱温度で熱処理（焼成）して、排ガス浄化用触媒を調製する。
【００５０】
熱処理温度としては、例えば、５００〜８００℃、好ましくは、６００〜７００℃である。
【００５１】
熱処理する時間としては、例えば、０．５〜５時間、好ましくは、０．５〜３時間である。
【００５２】
得られた排ガス浄化用触媒は、酸素存在下において、熱処理されるため、Ｃｕが酸化銅としてアルミナに担持される。
【００５３】
また、排ガス浄化用触媒における、アルミナに担持されるＣｕの割合は、Ｃｕとアルカリ金属および／またはアルカリ土類金属との総和に対して、５０質量％を超過し、好ましくは、５５質量％以上であって、例えば、９５質量％以下、好ましくは、７０質量％以下である。
【００５４】
また、排ガス浄化用触媒のアルカリ金属の含有割合は、Ｃｕ１００質量部に対して、例えば、１０〜８０質量部、好ましくは、１５〜３０質量部である。
【００５５】
また、排ガス浄化用触媒のアルカリ土類金属の含有割合は、Ｃｕ１００質量部に対して、例えば、１０〜８０質量部、好ましくは、１５〜３０質量部である。
【００５６】
また、排ガス浄化用触媒のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有割合は、Ｃｕ１００質量部に対して、例えば、１０〜８０質量部、好ましくは、３０〜７０質量部である。
【００５７】
また、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、例えば、０．１〜１５質量％、好ましくは、０．５〜３質量％である。
【００５８】
また、このような排ガス浄化用触媒の比表面積（例えば、ＢＥＴ比表面積）は、例えば、１〜１２０ｍ２／ｇ、好ましくは、３０〜１１０ｍ２／ｇである。
【００５９】
排ガス浄化用触媒に含有されるアルミナは、好ましくは、Ｃｕ、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属に加え、さらに、遷移金属を担持する。
【００６０】
遷移金属としては、例えば、Ｃｒ、Ｍｎ、Ｆｅ、Ｃｏ、Ｎｉなどが挙げられる。
【００６１】
これら遷移金属は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【００６２】
これら遷移金属のなかでは、好ましくは、Ｍｎ、Ｆｅ、Ｃｏ、Ｎｉが挙げられ、さらに好ましくは、これら遷移金属を２種以上併用することが挙げられる。
【００６３】
このような遷移金属を、アルミナに担持させるには、例えば、遷移金属を含有する化合物を上記した金属溶液に溶解することにより、上記混合物に混合した後、大気中（酸化条件下）において、所定の加熱温度で熱処理（焼成）すればよい。
【００６４】
遷移金属を含有する化合物としては、上記と同様に、遷移金属元素の塩、遷移金属元素のアルコキシドなどが挙げられ、好ましくは、遷移金属元素の塩が挙げられる。
【００６５】
金属溶液における遷移金属の濃度は、例えば、０．０５〜１０質量％、好ましくは、０．１５〜０．５質量％である。
【００６６】
このような排ガス浄化用触媒の遷移金属の含有割合は、触媒全量に対して、例えば、０．０５〜３質量％、好ましくは、０．１〜２質量％である。
【００６７】
そして、本発明の排ガス浄化用触媒は、そのまま、触媒として用いることもできるが、通常、触媒担体上に担持させるなど、公知の方法により、触媒化合物として調製される。
【００６８】
触媒担体としては、例えば、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス担体など、公知の触媒担体が挙げられる。
【００６９】
触媒担体上に担持させるには、例えば、まず、上記により得られた排ガス浄化用触媒に、水などを加えてスラリーとする。そして、これを触媒担体上にコーティングし、乾燥させ、その後、３００〜８００℃、好ましくは、３００〜６００℃で熱処理する。
【００７０】
これにより、本発明の排ガス浄化用触媒を、触媒担体上に担持させることができる。
【００７１】
このような排ガス浄化用触媒は、Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有し、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合が、それらの全量に対して、１．０質量％以下であるため、排ガス浄化性能の向上を図ることできる。
【００７２】
したがって、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、貴金属元素を使用しなくても、排ガス浄化性能の向上を図ることができる。
【実施例】
【００７３】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例により限定されるものではない。
実施例１
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部とを、水１００００質量部に溶解して、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％）を調製した。
【００７４】
次いで、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末９８２．０質量部に、水５００００質量部を添加した金属溶液１００６３質量部を混合し、混合物を調製した。その後、１８０℃で攪拌しながら乾燥させ、電気炉にて、大気中、６５０℃で１時間熱処理（焼成）することにより、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、比表面積は、９４．１ｍ２／ｇであった。
実施例２
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸カリウム（カリウム３８．６質量％）６．７質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｋ濃度０．０３質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７７．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｋの含有割合は、０．３質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、比表面積は、９４．０ｍ２／ｇであった。
実施例３
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７７．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、比表面積は、９５．０ｍ２／ｇであった。
実施例４
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸マンガン（ＩＩ）・６水和物（マンガン１８．８質量％）１６．０質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｍｎ濃度０．０３質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７９．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｍｎの含有割合は、０．３質量％、比表面積は、９４．３ｍ２／ｇであった。
実施例５
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸鉄（ＩＩＩ）・９水和物（鉄１３．７質量％）５４．８質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｆｅ濃度０．０７質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７５．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｆｅの含有割合は、０．７５質量％、比表面積は、９５．２ｍ２／ｇであった。
実施例６
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸カリウム（カリウム３８．６質量％）６．７質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部と、硝酸ニッケル（ＩＩ）・６水和物（ニッケル１９．９質量％）１５．０質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｋ濃度０．０３質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％、Ｎｉ濃度０．０３質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７７．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｋの含有割合は、０．３質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、Ｎｉの含有割合は、０．３質量％、比表面積は、９４．６ｍ２／ｇであった。
実施例７
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸鉄（ＩＩＩ）・９水和物（鉄１３．７質量％）５４．８質量部と、硝酸マンガン（ＩＩ）・６水和物（マンガン１８．８質量％）１６．０質量部と、硝酸ニッケル（ＩＩ）・６水和物（ニッケル１９．９質量％）１５．０質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｆｅ濃度０．０７質量％、Ｍｎ濃度０．０３質量％、Ｎｉ濃度０．０３質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９６９．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｆｅの含有割合は、０．７５質量％、Ｍｎの含有割合は、０．３質量％、Ｎｉの含有割合は、０．３質量％、比表面積は、９４．７ｍ２／ｇであった。
実施例８
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸カリウム（カリウム３８．６質量％）６．７質量部と、硝酸鉄（ＩＩＩ）・９水和物（鉄１３．７質量％）５４．８質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｋ濃度０．０３質量％、Ｆｅ濃度０．０７質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９６９．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｋの含有割合は、０．３質量％、Ｆｅの含有割合は、０．７５質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、比表面積は、９４．０ｍ２／ｇであった。
実施例９
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸バリウム（ＩＩ）（バリウム５２．５質量％）５．８質量部と、硝酸カリウム（カリウム３８．６質量％）６．７質量部と、硝酸カルシウム（ＩＩ）・４水和物（カルシウム１６．６質量％）１７．９質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｂａ濃度０．０３質量％、Ｋ濃度０．０３質量％、Ｃａ濃度０．０３質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９７１．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｂａの含有割合は、０．３質量％、Ｋの含有割合は、０．３質量％、Ｃａの含有割合は、０．３質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、比表面積は、９８．４ｍ２／ｇであった。
比較例１
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部のみを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９８５．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、比表面積は、９７．９ｍ２／ｇであった。
比較例２
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸コバルト（ＩＩ）・６水和物（コバルト２０．２質量％）２５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｃｏ濃度０．０５質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９８０．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｃｏの含有割合は、０．５質量％、比表面積は、９５．１ｍ２／ｇであった。
比較例３
硝酸銅（ＩＩ）・３水和物（銅２６．０質量％）５７．６質量部と、硝酸ニッケル（ＩＩ）・６水和物（ニッケル２０．１質量％）１５．２質量部とを用いて、金属溶液（Ｃｕ濃度０．１５質量％、Ｎｉ濃度０．０３質量％）を調製した点、および、θ−Ａｌ２Ｏ３粉末を９８２．０質量部用いた点以外は、実施例１と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。なお、排ガス浄化用触媒のＣｕの含有割合は、触媒全量に対して、１．５質量％、Ｎｉの含有割合は、０．３質量％、比表面積は、９４．６ｍ２／ｇであった。
【００７５】
評価試験
１．ＸＲＤの測定
Ｘ線回折（Ｘ−Ｒａｙ Ｄｉｆｆｒａｃｔｉｏｎ：ＸＲＤ）装置を用いて、上記実施例８により得られた排ガス浄化用触媒を測定した。測定により得られたＸＲＤデータを図１に示す。なお、図１では、対照としてθ−Ａｌ２Ｏ３の測定データを併せて示している。
【００７６】
図１から、実施例８の排ガス浄化用触媒において、θ−Ａｌ２Ｏ３は変化していないことがわかる。
２．ＥＸＡＦＳ
Ｘ線吸収微細構造分析(Ｘ−ｒａｙ ａｂｓｏｒｐｔｉｏｎ ｆｉｎｅ ｓｔｒｕｃｔｕｒｅ：ＸＡＦＳ)装置を用いて、上記実施例２、３および比較例１により得られた排ガス浄化用触媒のＣｕのＫ吸収端を測定した。測定により得られた広域エックス線吸収微細構造（Ｅｘｔｅｎｄｅｄ Ｘ−ｒａｙ ａｂｓｏｒｐｔｉｏｎ ｆｉｎｅ ｓｔｒｕｃｔｕｒｅ：ＥＸＡＦＳ）を図２に示す。
【００７７】
図２から、実施例２および３の排ガス浄化用触媒において、Ｃｕの分布状態は、Ｃｕ単独の場合（比較例１）と同様であり、合金を形成していないことがわかる。
３．ＴＨＣ、ＮＯｘおよびＣＯ浄化率
上記実施例１〜９および比較例１〜３により得られた各排ガス浄化用触媒を、ペレット化して（０．５〜１ｍｍサイズ）、常圧固定床流通反応装置内に配置した。前処理として、表１に示すリッチガス（ガス条件Ａ）中で、６００℃１０分間保持した後、室温まで一度冷却した。
【００７８】
次いで、触媒床温度を室温から６００℃まで１８００秒で昇温させた後、ガス条件ＢでのＴＨＣ、ＮＯｘおよびＣＯ浄化率を測定した。測定結果を図３に示す。
【００７９】
【表１】
【特許請求の範囲】
【請求項１】
Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有し、
前記アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合が、それらの全量に対して、１．０質量％以下であることを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
【請求項２】
前記アルミナが、さらに、遷移金属を担持していることを特徴とする、請求項１に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項３】
Ｃｕを含有する化合物と、アルカリ金属を含有する化合物および／またはアルカリ土類金属を含有する化合物と、アルミナとを混合して前駆体を調製し、
前記前駆体を、酸化条件下において、熱処理することにより得られることを特徴とする、請求項１に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項１】
Ｃｕと、アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属とを担持するアルミナを含有し、
前記アルカリ金属および／またはアルカリ土類金属の含有割合が、それらの全量に対して、１．０質量％以下であることを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
【請求項２】
前記アルミナが、さらに、遷移金属を担持していることを特徴とする、請求項１に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項３】
Ｃｕを含有する化合物と、アルカリ金属を含有する化合物および／またはアルカリ土類金属を含有する化合物と、アルミナとを混合して前駆体を調製し、
前記前駆体を、酸化条件下において、熱処理することにより得られることを特徴とする、請求項１に記載の排ガス浄化用触媒。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１２−１１５７３１（Ｐ２０１２−１１５７３１Ａ）
【公開日】平成２４年６月２１日（２０１２．６．２１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−２６５６８４（Ｐ２０１０−２６５６８４）
【出願日】平成２２年１１月２９日（２０１０．１１．２９）
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】（出願人による申告）平成２２年度 文部科学省科学技術振興費 元素戦略プロジェクト『脱貴金属を目指すナノ粒子自己形成触媒の新規発掘』研究による成果
【出願人】（０００００２９６７）ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年６月２１日（２０１２．６．２１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１１月２９日（２０１０．１１．２９）
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】（出願人による申告）平成２２年度 文部科学省科学技術振興費 元素戦略プロジェクト『脱貴金属を目指すナノ粒子自己形成触媒の新規発掘』研究による成果
【出願人】（０００００２９６７）ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Ｆターム（参考）】
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