説明

排ガス浄化用触媒

【課題】低温活性が高く、且つ耐熱性に優れ、安定した排ガス浄化性能を得ることができる排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】一般式(Aa−w−xM')(Si6−y)O27−z(式中、AはLa及びPrの少なくとも1種の元素の陽イオン、MはBa、Ca及びSrの少なくとも1種の元素の陽イオン、M'はNd、Y、Al、Pr、Ce、Sr、Li及びCaの少なくとも1種の元素の陽イオン、NはFe、Cu及びAlの少なくとも1種の元素の陽イオン、6≦a≦10、0<w<5、0≦x<5、0<w+x≦5、0≦y≦3、0≦z≦3、A≠M'、AがLaの陽イオンである場合にはx≠0である)で示される複合酸化物と、該複合酸化物に固溶体化しているか又は担持されている貴金属成分とからなる排ガス浄化用触媒、並びにセラミックス又は金属材料からなる担体と、該担体上に担持されている該排ガス浄化用触媒の層とからなる排ガス浄化用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス浄化用触媒に関し、より詳しくは、低温活性が高く、耐熱性に優れ、安定した排ガス浄化性能を得ることができる触媒、例えば、自動車等の内燃機関から排出される排ガスに含まれる有害成分を浄化する触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)等の有害成分が含まれている。それで、従来から、これら有害成分を浄化して無害化する三元触媒が用いられている。
【0003】
このような三元触媒として、Pt、Pd、Rh等の貴金属とアルミナ、セリア、ジルコニア又はこれらの複合酸化物とを任意に組み合わせて、セラミックス又は金属等のハニカム担体上に塗布したものがある。例えば、アパタイト型構造を有する複合酸化物を含む排ガス浄化用触媒が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
しかしながら、従来の三元触媒では、一般的に、比較的高温にならないと排ガス中の有害成分の浄化が開始されないため、低温側では有害成分を十分に浄化できないという問題がある。例えば、自動車等のエンジン始動直後は、比較的低温状態であるので、排ガス中の有害成分を十分に浄化しきれないという問題がある。
【0005】
また、従来の三元触媒においては、一般的に、比較的高温域での使用で劣化して排ガス浄化性能が低下するという場合もあり、低温域から高温域に亘って安定した排ガス浄化性能が得られないという問題もある。
【0006】
従って、比較的低温状態でも排ガスの浄化効果が達成され、高温域でも三元触媒としての浄化性能が達成される触媒が求められている。本発明者らは先に、(Laa−x)(Si6−y)O27−zで示される複合酸化物と、該複合酸化物に固溶体化しているか又は担持されている貴金属成分とからなり、低温活性が高く、且つ耐熱性に優れ、安定した排ガス浄化性能を得ることができる排ガス浄化用触媒を提案している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−055075号公報
【特許文献2】特開平11−197507号公報
【特許文献3】特開2007−144412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は低温活性が高く、且つ耐熱性に優れ、安定した排ガス浄化性能を得ることができ、先に提案した(Laa−x)(Si6−y)O27−zを用いる場合よりも更に高い排ガス浄化性能を有する排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、AサイトにMの他に更に第三成分としてM'を置換させた複合酸化物、即ち、一般式(Aa−w−xM')(Si6−y)O27−zで示される複合酸化物、又はAサイトがPrである場合にはM'で置換されていなくてもよい複合酸化物と、貴金属成分とを用いることにより上記の目的が達成されることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明の排ガス浄化用触媒は、一般式
(Aa−w−xM')(Si6−y)O27−z
(式中、AはLa及びPrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、MはBa、Ca及びSrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、M'はNd、Y、Al、Pr、Ce、Sr、Li及びCaからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、NはFe、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、6≦a≦10であり、0<w<5であり、0≦x<5であり、0<w+x≦5であり、0≦y≦3であり、0≦z≦3であり、A≠M'であり、AがLaの陽イオンである場合にはx≠0である)で示される複合酸化物と、該複合酸化物に固溶体化しているか又は担持されている貴金属成分とからなることを特徴とする。
【0011】
また、他の形態の本発明の排ガス浄化用触媒は、セラミックス又は金属材料からなる担体と、該担体上に担持されている上記の排ガス浄化用触媒の層とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排ガス浄化用触媒は、低温活性が高く、且つ高温域において優れた耐熱性を有するので、安定した排ガス浄化性能を発揮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】Cの吸着状態の観察において300℃まで昇温させた場合の実施例1の排ガス浄化用触媒の吸着状態を示す。
【図2】Cの吸着状態の観察において300℃まで昇温させた場合の比較例1の排ガス浄化用触媒の吸着状態を示す。
【図3】Cの吸着状態の観察において300℃まで昇温させた場合の比較例2の排ガス浄化用触媒の吸着状態を示す。
【図4】Cの吸着状態の観察において400℃まで昇温させた場合の実施例1の排ガス浄化用触媒の吸着状態を示す。
【図5】Cの吸着状態の観察において400℃まで昇温させた場合の比較例1の排ガス浄化用触媒の吸着状態を示す。
【図6】Cの吸着状態の観察において400℃まで昇温させた場合の比較例2の排ガス浄化用触媒の吸着状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の排ガス浄化用触媒は、一般式
(Aa−w−xM')(Si6−y)O27−z
(式中、AはLa及びPrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、MはBa、Ca及びSrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、M'はNd、Y、Al、Pr、Ce、Sr、Li及びCaからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、NはFe、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、6≦a≦10であり、0<w<5であり、0≦x<5であり、0<w+x≦5であり、0≦y≦3であり、0≦z≦3であり、A≠M'であり、AがLaの陽イオンである場合にはx≠0である)で示されるアパタイト構造の複合酸化物と、該複合酸化物に固溶体化しているか又は担持されている貴金属成分とからなるものである。
【0015】
本発明の排ガス浄化用触媒を構成する複合酸化物において、AがLaの陽イオンである場合には、複合酸化物は一般式
(Laa−w−xM')(Si6−y)O27−z
(式中、MはBa、Ca及びSrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、M'はNd、Y、Al、Pr、Ce、Sr、Li及びCaからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、NはFe、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、6≦a≦10であり、0<w<5であり、0<x<5であり、0<w+x≦5であり、0<y≦3であり、0≦z≦3である)で示される。
【0016】
本発明の排ガス浄化用触媒を構成する複合酸化物において、AがPrの陽イオンである場合には、複合酸化物は一般式
一般式
(Pra−w−xM')(Si6−y)O27−z
(式中、MはBa、Ca及びSrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、M'はNd、Y、Al、Ce、Sr、Li及びCaからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、NはFe、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、6≦a≦10であり、0<w<5であり、0≦x<5であり、0<w+x≦5であり、0≦y≦3であり、0≦z≦3である)で示される。
【0017】
上記の一般式(Aa−w−xM')(Si6−y)O27−zで示されるアパタイト構造の複合酸化物が化学量論組成を持つ場合にはa=10であり、非化学量論組成を持つ場合にはa<10である。非化学量論組成を持つ上記の一般式の複合酸化物については現実的に容易に入手できる複合酸化物のaの範囲は6≦a<10である。従って、本発明の排ガス浄化用触媒においては6≦a≦10、好ましくは7≦a<10の複合酸化物を用いる。
【0018】
本発明の排ガス浄化用触媒においては、好ましくは0.1≦w≦4、より好ましくは0.5≦w≦3.5であり、AサイトがLaである場合には好ましくは0.1≦x≦4、より好ましくは0.5≦x≦3.5であり、AサイトがPrである場合には好ましくは0≦x≦4、より好ましくは0≦x≦3.5であり、好ましくは0.1≦w+x≦4、より好ましくは0.5≦w+x≦3.5であり、且つ(又は)好ましくは0≦y≦2.5、より好ましくは0≦y≦2であり、好ましくは0≦z≦2.5である複合酸化物を用いる。
【0019】
本発明の排ガス浄化用触媒は、自動車等のエンジン始動直後の比較的低温状態においても触媒活性が充分に高く、低温域において優れた排ガス浄化性能が得られると共に、高温域において優れた耐熱性を有するため、低温域から高温域に亘って安定した排ガス浄化性能が得られるものである。従って、本発明の排ガス浄化用触媒は、例えば、自動車等の内燃機関において排出される排ガスの浄化に好適に用いられる。
【0020】
このような本発明の排ガス浄化用触媒の貴金属成分としては、例えば、ロジウム、パラジウム又は白金であることが好ましく、特に白金又はパラジウムであることがより好ましい。
【0021】
本発明の排ガス浄化用触媒中の貴金属成分は、排ガス浄化用触媒を構成する複合酸化物中に固溶体化して存在していても担持されて存在していてもよい。複合酸化物中への貴金属成分の導入は、例えば、粉末又はスラリー状態の複合酸化物を貴金属含有溶液(塩基性又は酸性の貴金属塩の溶液)に浸漬又は混合して貴金属成分を複合酸化物に吸着させ、得られたものを焼成することで行ってもよく、上述の複合酸化物の製造過程において複合酸化物のスラリーに貴金属成分を混入して得られたものを焼成することで行ってもよく、あるいは貴金属成分を酸化物等に担持させて得られる貴金属担持体と上述の複合酸化物とを混合して得られたものを焼成等することで行ってもよい。
【0022】
また、本発明の排ガス浄化用触媒は、上述したような複合酸化物と貴金属成分とからなるものであってもよいが、一般的には、セラミックス又は金属材料からなる担体と、担体上に担持されている排ガス浄化用触媒の層とからなるものである。
【0023】
なお、上記のような排ガス浄化用触媒においては、セラミックス又は金属材料からなる担体の形状は、特に限定されるものではないが、一般的にはハニカム、板、ペレット等の形状であり、好ましくはハニカム形状である。また、このような担体の材質としては、例えば、アルミナ(Al)、ムライト(3Al−2SiO)、コージェライト(2MgO−2Al−5SiO)等のセラミックスや、ステンレス等の金属材料が挙げられる。
【0024】
このような担体上に排ガス浄化用触媒の層を形成したものである排ガス浄化用触媒は、例えば、貴金属成分が固溶体化しているか又は担持されている複合酸化物のスラリーを担体に塗布して排ガス浄化用触媒の前駆体層を形成し、これを焼成して製造してもよく、複合酸化物のスラリーを担体に塗布して複合酸化物の層を形成した後、これを貴金属含有溶液に浸漬して複合酸化物の層に貴金属成分を吸着させてこれを焼成して製造してもよく、あるいは貴金属成分を酸化物に担持させた貴金属担持体と上述の複合酸化物とを混合して得られるスラリーを担体に塗布して排ガス浄化用触媒の前駆体層を形成し、これを焼成して製造してもよい。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明する。
実施例1
最初に、La7.33BaNdSi25.50の所定比となるように秤量した硝酸ランタン、硝酸バリウム、硝酸ネオジウム及びコロイダルシリカを純水に加え、攪拌して透明溶液を得た。この透明溶液をアンモニア水と炭酸アンモニウムとの混合溶液中に滴下して沈殿物を得た。得られた沈殿物を40℃で24時間熟成させた後、水洗し、ろ過し、100℃で乾燥させて前駆体を得た。この前駆体を900℃で6時間焼成して所望のLa7.33BaNdSi25.50を得た。次に、このLa7.33BaNdSi25.50に対して1質量%Ptとなるようにジニトロジアンミン白金を含浸させた後、蒸発乾固させ、600℃で3時間焼成することにより1質量%Pt/La7.33BaNdSi25.50からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0026】
実施例2
最初に、La7.33BaNdSi4.5Fe1.524.75の所定比となるように秤量した硝酸ランタン、硝酸バリウム、硝酸ネオジウム、硝酸鉄及びコロイダルシリカを純水に加え、攪拌して透明溶液を得た。この透明溶液をアンモニア水と炭酸アンモニウムとの混合溶液中に滴下して沈殿物を得た。得られた沈殿物を40℃で24時間熟成させた後、水洗し、ろ過し、100℃で乾燥させて前駆体を得た。この前駆体を900℃で6時間焼成して所望のLa7.33BaNdSi4.5Fe1.524.75を得た。次に、このLa7.33BaNdSi4.5Fe1.524.75に対して1質量%Ptとなるようにジニトロジアンミン白金を含浸させた後、蒸発乾固させ、600℃で3時間焼成することにより1質量%Pt/La7.33BaNdSi4.5Fe1.524.75からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0027】
実施例3
実施例1で用いた硝酸ネオジウムを硝酸イットリウムに変更した以外は実施例1と同様にして1質量%Pt/La7.33BaYSi25.50からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0028】
実施例4
実施例1で用いた硝酸ネオジウムを硝酸プラセオジムに変更した以外は実施例1と同様にして1質量%Pt/La7.33BaPrSi25.83からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0029】
実施例5
実施例2で用いた硝酸ネオジウムを硝酸イットリウムに変更した以外は実施例2と同様にして1質量%Pt/La7.33BaYSi4.5Fe1.524.75からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0030】
実施例6
実施例2で用いた硝酸ネオジウムを硝酸プラセオジムに変更した以外は実施例2と同様にして1質量%Pt/La7.33BaPrSi4.5Fe1.525.08からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0031】
比較例1
活性化アルミナに対して1質量%Ptとなるようにジニトロジアンミン白金を含浸させた後に蒸発乾固させ、600℃で3時間焼成することにより1質量%Pt/Alからなる比較例の排ガス浄化用触媒を得た。
【0032】
比較例2
最初に、La8.33BaSi4.5Fe1.524.75の所定比となるように秤量した硝酸ランタン、硝酸バリウム、硝酸鉄及びコロイダルシリカを純水に加え、攪拌して透明溶液を得た。この透明溶液をアンモニア水と炭酸アンモニウムとの混合溶液中に滴下して沈殿物を得た。得られた沈殿物を40℃で24時間熟成させた後、水洗し、ろ過し、100℃で乾燥させて前駆体を得た。この前駆体を900℃で6時間焼成して所望のLa8.33BaSi4.5Fe1.524.75を得た。次に、このLa8.33BaSi4.5Fe1.524.75に対して1質量%Ptとなるようにジニトロジアンミン白金を含浸させた後、蒸発乾固させ、600℃で3時間焼成することにより1質量%Pt/La8.33BaSi4.5Fe1.524.75からなる比較例の排ガス浄化用触媒を得た。
【0033】
<排ガス浄化性能試験>
貴金属がPtであり、AがLaである実施例1、2及び比較例1、2の各々の排ガス浄化用触媒をそれぞれ20〜60メッシュにふるい分けした後、各々の0.1gをそれぞれ固定床流通反応装置の反応器に充填し、下記第1表に示す組成のモデルガスを0.5L/minで流通させ、200〜600℃の温度条件下での排ガス浄化性能を評価した。その結果は下記の第2表〜第3表に示す通りであった。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
第2表〜第3表に示すデータから明らかなように、実施例1、2の本発明の排ガス浄化用触媒は、比較例1の排ガス浄化用触媒と比較して、約300℃以下の低温域側でC及びNOの浄化性能が共に優れているとともに、高温域においても安定したC及びNOの浄化性能が得られている。実施例1、2の本発明の排ガス浄化用触媒は、比較例2の排ガス浄化用触媒と比較して、C浄化性能はほぼ同等であるものの、350℃を超える高温域で高いNO浄化性能が得られている。
【0038】
実施例7
最初に、Pr7.33CaSi25.00の所定比となるように秤量した硝酸プラセオジム、硝酸カルシウム、及びコロイダルシリカを純水に加え、攪拌して透明溶液を得た。この透明溶液をアンモニア水と炭酸アンモニウムとの混合溶液中に滴下して沈殿物を得た。得られた沈殿物を40℃で24時間熟成させた後、水洗し、ろ過し、100℃で乾燥させて前駆体を得た。この前駆体を900℃で6時間焼成して所望のPr7.33CaSi25.00を得た。次に、このPr7.33CaSi25.00に対して1質量%Ptとなるようにジニトロジアンミン白金を含浸させた後、蒸発乾固させ、600℃で3時間焼成することにより1質量%Pt/Pr7.33CaSi25.00からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0039】
実施例8
実施例7で用いた硝酸カルシウムを硝酸ストロンチウムに変更した以外は実施例7と同様にして1質量%Pt/Pr7.33SrSi25.00からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0040】
実施例9
実施例7で用いた硝酸カルシウムを硝酸バリウムに変更した以外は実施例7と同様にして1質量%Pt/Pr7.33BaSi25.00からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0041】
実施例10
最初に、Pr6.33BaNdSi25.00の所定比となるように秤量した硝酸プラセオジム、硝酸バリウム、硝酸ネオジム、及びコロイダルシリカを純水に加え、攪拌して透明溶液を得た。この透明溶液をアンモニア水と炭酸アンモニウムとの混合溶液中に滴下して沈殿物を得た。得られた沈殿物を40℃で24時間熟成させた後、水洗し、ろ過し、100℃で乾燥させて前駆体を得た。この前駆体を900℃で6時間焼成して所望のPr6.33BaNdSi25.00を得た。次に、このPr6.33BaNdSi25.00に対して1質量%Ptとなるようにジニトロジアンミン白金を含浸させた後、蒸発乾固させ、600℃で3時間焼成することにより1質量%Pt/Pr6.33BaNdSi25.00からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0042】
実施例11
実施例10で用いた硝酸ネオジムを硝酸イットリウムに変更した以外は実施例10と同様にして1質量%Pt/Pr6.33BaYSi25.00からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0043】
<排ガス浄化性能試験>
貴金属がPtであり、AがPrである実施例7〜11の各々の排ガス浄化用触媒をそれぞれ20〜60メッシュにふるい分けした後、各々の0.1gをそれぞれ固定床流通反応装置の反応器に充填し、前記第1表に示す組成のモデルガスを0.5L/minで流通させ、200〜600℃の温度条件下での排ガス浄化性能を評価した。その結果は下記の第4表〜第5表に示す通りであった。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
第4表〜第5表に示すデータから明らかなように、実施例7〜11の本発明の排ガス浄化用触媒は、前記の比較例1の排ガス浄化用触媒と比較して、約350℃以下の低温域側でC及びNOの浄化性能が共に優れているとともに、高温域においても安定したC及びNOの浄化性能が得られている。実施例8〜11の本発明の排ガス浄化用触媒は、前記の比較例2の排ガス浄化用触媒と比較して、C浄化性能はほぼ同等であるものの、350℃を超える高温域で高いNO浄化性能が得られている。
【0047】
実施例12
La7.33BaNdSi25.50に対して1質量%Pdとなるように硝酸パラジウムを含浸させた以外は実施例1と同様にして1質量%Pd/La7.33BaNdSi25.50からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0048】
実施例13
実施例1で用いた硝酸ネオジウムを硝酸イットリウムに変更し、La7.33BaYSi25.50に対して1質量%Pdとなるように硝酸パラジウムを含浸させた以外は実施例1と同様にして1質量%Pd/La7.33BaYSi25.50からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0049】
実施例14
実施例7で用いた硝酸カルシウムを硝酸バリウムに変更し、Pr7.33BaSi25.00に対して1質量%Pdとなるように硝酸パラジウムを含浸させた以外は実施例7と同様にして1質量%Pd/Pr7.33BaSi25.00からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0050】
比較例3
比較例1で用いたジニトロジアンミン白金を硝酸パラジウムに変更した以外は比較例1と同様にして1質量%Pd/Alからなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0051】
比較例4
最初に、La9.33Si26.00の所定比となるように秤量した硝酸ランタン及びコロイダルシリカを純水に加え、攪拌して透明溶液を得た。この透明溶液をアンモニア水と炭酸アンモニウムとの混合溶液中に滴下して沈殿物を得た。得られた沈殿物を40℃で24時間熟成させた後、水洗し、ろ過し、100℃で乾燥させて前駆体を得た。この前駆体を900℃で6時間焼成して所望のLa9.33Si26.00を得た。次に、このLa9.33Si26.00に対して1質量%Pdとなるように硝酸パラジウムを含浸させた後、蒸発乾固させ、600℃で3時間焼成することにより1質量%Pd/La9.33Si26.00からなる比較例の排ガス浄化用触媒を得た。
【0052】
<排ガス浄化性能試験>
貴金属がPdである実施例12〜14及び比較例3、4の各々の排ガス浄化用触媒をそれぞれ20〜60メッシュにふるい分けした後、各々の0.1gをそれぞれ固定床流通反応装置の反応器に充填し、前記第1表に示す組成のモデルガスを0.5L/minで流通させ、200〜600℃の温度条件下での排ガス浄化性能を評価した。その結果は下記の第6表に示す通りであった。
【0053】
【表6】

【0054】
第6表に示すデータから明らかなように、実施例12〜14の本発明の排ガス浄化用触媒は、比較例3、4の排ガス浄化用触媒と比較して、約350℃以下の低温域側でNOの浄化性能が共に優れている。
【0055】
<担体に担持させた排ガス浄化用触媒の製造>
実施例15
実施例1と同様に処理して製造したLa7.33BaNdSi25.5045部(質量部、以下同じ)、CeZrO45部、アルミナゾル10部及び水130部をボールミルで混合してスラリーAを得た。また、活性化アルミナ30部、CeZrO60部、アルミナゾル10部及び水150部をボールミルで混合してスラリーBを得た。
【0056】
コージェライト製のハニカム基材をスラリーA中に浸漬し、引き上げて過剰なスラリーを吹き払った後、90℃で10分間乾燥させ、600℃で3時間焼成してコート層を形成させた。このコート層の量はハニカム基材1L当り100gであった。得られたコート層付きハニカム基材を所定濃度のジニトロジアンミンPt水溶液中に浸漬し、引き上げて余分な液滴を吹き払った後、90℃で10分間乾燥させ、600℃で3時間焼成して、コート層の量100g(ハニカム基材1L)当り0.60gのPtを担持させて第一貴金属担持層を形成させた。
【0057】
次いで、上記の第一貴金属担持層の形成されたハニカム基材をスラリーB中に浸漬し、引き上げて過剰なスラリーを吹き払った後、90℃で10分間乾燥させ、600℃で3時間焼成してコート層を形成させた。このコート層の量はハニカム基材1L当り100gであった。得られたハニカム基材を所定濃度の硝酸ロジウム水溶液中に浸漬し、引き上げて余分な液滴を吹き払った後、90℃で10分間乾燥させ、600℃で3時間焼成して、コート層の量100g(ハニカム基材1L)当り0.20gのRhを担持させて第二貴金属担持層を形成させて、担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0058】
実施例16
実施例15で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例3と同様にして製造したLa7.33BaYSi25.50に変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0059】
実施例17
実施例15で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例4と同様にして製造したLa7.33BaPrSi25.83に変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0060】
実施例18
実施例15で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例2と同様にして製造したLa7.33BaNdSi4.5Fe1.524.75に変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0061】
実施例19
実施例15で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例5と同様にして製造したLa7.33BaYSi4.5Fe1.524.75に変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0062】
実施例20
実施例15で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例6と同様にして製造したLa7.33BaPrSi4.5Fe1.525.08に変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0063】
実施例21
実施例15で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例7と同様にして製造したPr7.33CaSi25.00に変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0064】
実施例22
実施例15で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例8と同様にして製造したPr7.33SrSi25.00に変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0065】
実施例23
実施例15で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例9と同様にして製造したPr7.33BaSi25.00に変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0066】
実施例24
実施例15で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例10と同様にして製造したPr6.33BaNdSi25.00に変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0067】
実施例25
実施例15で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例11と同様にして製造したPr6.33BaYSi25.00に変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる本発明の排ガス浄化用触媒を得た。
【0068】
比較例5
活性化アルミナ45部、CeZrO45部、アルミナゾル10部及び水130部をボールミルで混合してスラリーCを得た。
【0069】
コージェライト製のハニカム基材をスラリーC中に浸漬し、引き上げて過剰なスラリーを吹き払った後、90℃で10分間乾燥させ、600℃で3時間焼成してコート層を形成させた。このコート層の量はハニカム基材1L当り100gであった。得られたコート層付きハニカム基材を所定濃度のジニトロジアンミンPt水溶液中に浸漬し、引き上げて余分な液滴を吹き払った後、90℃で10分間乾燥させ、600℃で3時間焼成して、コート層の量100g(ハニカム基材1L)当り0.60gのPtを担持させて第一貴金属担持層を形成させた。
【0070】
次いで、上記の第一貴金属担持層の形成されたハニカム基材を、活性化アルミナ30部、CeZrO260部、アルミナゾル10部及び水150部をボールミルで混合して得たスラリーB中に浸漬し、引き上げて過剰なスラリーを吹き払った後、90℃で10分間乾燥させ、600℃で3時間焼成してコート層を形成させた。このコート層の量はハニカム基材1L当り100gであった。得られたハニカム基材を所定濃度の硝酸ロジウム水溶液中に浸漬し、引き上げて余分な液滴を吹き払った後、90℃で10分間乾燥させ、600℃で3時間焼成して、コート層の量100g(ハニカム基材1L)当り0.20gのRhを担持させて第二貴金属担持層を形成させて、担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0071】
比較例6
La7.33BaNdSi25.50をLa8.33BaSi4.5Fe1.5Oに変更した以外は実施例15と同様にして担体上に担持された排ガス浄化用触媒の層からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0072】
<排ガス浄化性能試験>
実施例15〜25及び比較例5、6の各々の排ガス浄化用触媒について、10容量%の水蒸気を含有する大気中、電気炉で900℃で25時間の耐久処理を行った。その後、15ccにコアリングしたそれらの排ガス浄化用触媒をそれぞれ別個に評価装置に充填し、下記の第7表に示す組成の排気モデルガスを空間速度100000/hで流通させながら、20℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、CO、HC、NOの浄化率を連続的に測定した。モデルガスが50%浄化される温度(T50)(℃)及び400℃におけるモデルガスの浄化率(η400)(%)は第8表に示す通りであった。
【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
第8表に示すデータから明らかなように、CO、HC及びNOについてのT50(排ガスを50%浄化する時の温度であり、温度が低いほど低温活性に優れた排ガス浄化用触媒といえる)及びη400(排ガス温度400℃における浄化率である)の何れにおいても本発明の実施例15〜25の排ガス浄化用触媒は比較例5、6の各々の排ガス浄化用触媒よりも優れており、本発明の排ガス浄化用触媒は低温活性が高く、耐熱性に優れ、安定した排ガス浄化性能を得ることができるものである。また、実施例15〜17と実施例18〜20との比較から明らかなように、Aサイトを3元系とした場合には、BサイトにFeを置換することによる効果は小さかった。
【0076】
<アパタイトの機能性評価>
実施例26
実施例1と同様に処理して製造した1質量%Pt/La7.33BaNdSi25.50100部、Al固形分として10部に相当する量のアルミナゾル及び水110部をボールミルで混合してスラリーを得た。このスラリー中にハニカム基材を浸漬し、引き上げて過剰なスラリーを吹き払った後、90℃で10分間乾燥させ、600℃で3時間焼成してコート層を形成させて排ガス浄化用触媒を得た。このコート層の量はハニカム基材1L当り110gであった。
【0077】
実施例27
実施例26で用いたLa7.33BaNdSi25.50を実施例2と同様にして製造したLa7.33BaNdSi4.5Fe1.524.75に変更した以外は実施例26と同様にして排ガス浄化用触媒を得た。
【0078】
比較例7
実施例26で用いたLa7.33BaNdSi25.50をAlに変更した以外は実施例26と同様にして排ガス浄化用触媒を得た。
【0079】
比較例8
実施例26で用いたLa7.33BaNdSi25.50を比較例2と同様にして製造したLa8.33BaSi4.5Fe1.524.75に変更した以外は実施例26と同様にして排ガス浄化用触媒を得た。
【0080】
<排ガス浄化性能試験>
実施例26、27及び比較例7、8の各々の排ガス浄化用触媒について、10容量%の水蒸気を含有する大気中、電気炉で900℃で25時間の耐久処理を行った。その後、15ccにコアリングしたそれらの排ガス浄化用触媒をそれぞれ別個に評価装置に充填し、下記の第9表に示す組成の排気モデルガスを空間速度100000/hで流通させながら、20℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、HCの浄化率を連続的に測定した。モデルガスが50%浄化される温度(T50)(℃)及び400℃におけるモデルガスの浄化率(η400)(%)は第10表に示す通りであった。
【0081】
【表9】

【0082】
【表10】

【0083】
第10表に示すデータから明らかなように、アパタイトを用いた本発明の排ガス浄化用触媒はHCに対して高い酸化力を有しており、中でも実施例26の排ガス浄化用触媒は低温活性が高く、耐熱性に優れ、安定した排ガス浄化性能を得ることができる。
【0084】
<貴金属分散度>
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の各々の排ガス浄化用触媒について、公知手段であるCOパルス吸着法(T.Takeguchi、S.Manabe、R.Kikuchi、K.Eguchi、T.Kanazawa、S.Matsumoto、Applied Catalysis A:293(2005)91.)に基づいて貴金属分散度を測定した。この貴金属分散度は式
貴金属分散度=CO吸着量に相当する白金量(モル)/含まれている白金の総量(モル)
により計算される値である。測定結果は第11表に示す通りであった。
【0085】
【表11】

【0086】
貴金属分散度は排ガスとの接触確率の高低を間接的に表しており、貴金属分散度が高い方が排ガスとの接触効率が高いといえる。第11表に示すデータから明らかなように、比較例1の触媒のPt分散度に比べて実施例1、実施例2及び比較例2の各々の触媒のPt分散度は低い。
【0087】
<Cの吸着状態の観察>
実施例1、比較例1及び比較例2の各々の排ガス浄化用触媒について、株式会社堀場製作所製のFT−720を用いてIRスペクトル測定を行った。まず、試料が充填されている装置試料室にHeを175ml/minの流速で流通させながら400℃まで昇温させた後、HeをHに変えて10分間保持し、その後再度Heに変え、50℃まで降温させることで試料に吸着している物質を除去する前処理を行った。引き続きHe雰囲気中で300℃まで又は400℃まで昇温させ、バックグランド測定を行った後に1%C+99%Heの混合ガスに切り換えて1分後、5分後、10分後及び15分後の試料表面上のCの吸着状態を測定した。
【0088】
300℃まで昇温させた場合の実施例1の排ガス浄化用触媒のCの吸着状態は図1に示す通りであり、比較例1の排ガス浄化用触媒のCの吸着状態は図2に示す通りであり、比較例2の排ガス浄化用触媒のCの吸着状態は図3に示す通りであった。
【0089】
また、400℃まで昇温させた場合の実施例1の排ガス浄化用触媒のCの吸着状態は図4に示す通りであり、比較例1の排ガス浄化用触媒のCの吸着状態は図5に示す通りであり、比較例2の排ガス浄化用触媒のCの吸着状態は図6に示す通りであった。
【0090】
図1〜図3から明らかなように、300℃においては、実施例1及び比較例1の各々の排ガス浄化用触媒では2000cm−1付近にPtに吸着されたCO(Pt−CO)に帰属するスペクトルが得られているが、比較例2の排ガス浄化用触媒では2000cm−1付近にスペクトルは得られていない。また、実施例1の排ガス浄化用触媒では試料から脱離したと考えられるGas phase COに帰属するスペクトルが得られ、比較例1の排ガス浄化用触媒ではGas phase COに帰属するスペクトルが得られている。実施例1の排ガス浄化用触媒では時間の経過とともにPt−CO並びにGas phase COに帰属するスペクトルの強度が強まっているのに対して、比較例1の排ガス浄化用触媒では時間の経過とともにPt−COに帰属するスペクトルの強度が弱まる一方でGas phase COに帰属するスペクトルの強度が強まる傾向を示している。
【0091】
図4〜図6から明らかなように、400℃においては、実施例1及び比較例1の各々の排ガス浄化用触媒では300℃の場合と同様のスペクトルが得られ、時間の経過に伴うスペクトルの強度の変化の傾向も同様であった。また、比較例2の排ガス浄化用触媒では実施例1の排ガス浄化用触媒と同様のスペクトルが得られ、得られたスペクトル強度は時間の経過とともに強まる傾向を示している。
【0092】
Pt上でCからCOへの酸化が生じるためにはPtへの酸素の供給が必要である。しかしながら、上記の測定条件下では酸素が存在していないので、Pt−COに帰属するスペクトルが得られているということはキャリアからPtへ酸素が供給されていることの証明になる。
【0093】
上記した結果に基づいて考察すると、実施例1及び比較例2の各々の排ガス浄化用触媒ではアパタイトの格子酸素がPtへ供給され続けるとともに生成したCOはそのまま脱離(部分酸化反応)しており、比較例1の排ガス浄化用触媒ではPtへの酸素の供給がほとんどないとともにPt上に吸着された僅かのCOはCOまで酸化(完全酸化反応)されていることを示している。
【0094】
以上の結果から、本発明の排ガス浄化用触媒は貴金属分散度が低いにもかかわらず、本発明の排ガス浄化用触媒を構成する貴金属と複合酸化物との相互作用(SMSI:Strong Metal Support Interaction)が発現する。この相互作用の発現は炭化水素の部分酸化反応を促進し、生成する一酸化炭素及び窒素酸化物の還元反応も促進する。従って、本発明の排ガス浄化用触媒は内燃機関から生成する排ガスに対して低温域から高温域まで高い浄化作用を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
(Aa−w−xM')(Si6−y)O27−z
(式中、AはLa及びPrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、MはBa、Ca及びSrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、M'はNd、Y、Al、Pr、Ce、Sr、Li及びCaからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、NはFe、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、6≦a≦10であり、0<w<5であり、0≦x<5であり、0<w+x≦5であり、0≦y≦3であり、0≦z≦3であり、A≠M'であり、AがLaの陽イオンである場合にはx≠0である)で示される複合酸化物と、該複合酸化物に固溶体化しているか又は担持されている貴金属成分とからなることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
一般式
(Aa−w−xM')(Si6−y)O27−z
(式中、AはLaの陽イオンであり、MはBa、Ca及びSrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、M'はNd、Y、Al、Pr、Ce、Sr、Li及びCaからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、NはFe、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、6≦a≦10であり、0<w<5であり、0<x<5であり、0<w+x≦5であり、0<y≦3であり、0≦z≦3である)で示される複合酸化物と、該複合酸化物に固溶体化しているか又は担持されている貴金属成分とからなる請求項1記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
一般式
(Aa−w−xM')(Si6−y)O27−z
(式中、AはPrの陽イオンであり、MはBa、Ca及びSrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、M'はNd、Y、Al、Ce、Sr、Li及びCaからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、NはFe、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンであり、6≦a≦10であり、0<w<5であり、0≦x<5であり、0<w+x≦5であり、0≦y≦3であり、0≦z≦3である)で示される複合酸化物と、該複合酸化物に固溶体化しているか又は担持されている貴金属成分とからなる請求項1記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
セラミックス又は金属材料からなる担体と、該担体上に担持されている請求項1、2又は3記載の排ガス浄化用触媒の層とからなることを特徴とする排ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−39575(P2013−39575A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−251591(P2012−251591)
【出願日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【分割の表示】特願2010−98268(P2010−98268)の分割
【原出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】