説明

排ガス浄化装置

【課題】耐久性に優れ極微小サイズの粒子状物質をも捕集することができる排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】複数の排ガス流路23を有するとともに当該排ガス流路23を構成する隔壁22に前記粒子状物質を捕集するための複数の細孔21が形成されたフィルタ部材20と、フィルタ部材20の上流に設けられて、放電することで前記粒子状物質を負に帯電させる放電部材30と、フィルタ部材20と放電部材30との間に設けられて、これらの間に電場を発生させることで帯電した粒子状物質に静電気力を付与し、当該静電気力によって粒子状物質をその大きさに応じてフィルタ部材20の外周側に吸引する電場発生部材40とを設け、フィルタ部材20の外周部側に形成される細孔21の孔径が、前記フィルタ部材20の略中心部に形成される細孔21の孔径よりも小さくなるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排ガスに含まれる粒子状物質の外部への放出を抑制するための排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような排ガス浄化装置として、前記粒子状物質を捕集し当該捕集した粒子状物質を所定の条件下で燃焼除去する装置が各種開発されている。具体的には、前記粒子状物質を帯電させ当該粒子状物質を所定の電極表面に捕集する装置や、前記粒子状物質をフィルタに捕集する装置が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、その内部に排ガスが流入するよう配置された筒状電極と、この筒状電極の内側に挿入された線状電極とを有する装置が開示されている。この装置では、前記筒状電極および線状電極にそれぞれ触媒が担持されており、これら電極間での放電によって前記粒子状物質を帯電させて前記筒状電極に捕集するとともに、前記触媒によってこの捕集された粒子状物質を燃焼除去させる。
【0004】
また、特許文献2には、前記粒子状物質をフィルタに捕集する装置として、複数の細孔が形成された隔壁によって多数の排ガス流路が形成されたハニカム状のフィルタを有する装置が開示されている。この装置では、前記隔壁に触媒が担持されており、前記細孔に前記粒子状物質を捕集するとともに、前記触媒によってこの捕集された粒子状物質を燃焼除去させる。
【特許文献1】特開2004−239197号公報
【特許文献2】特開2004−19534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示される従来の電極を用いた装置では、前記筒状電極内に線状電極が挿入された状態で前記粒子状物質の燃焼が行われるため、この燃焼によって電極が高温に晒される結果、電極が早期に劣化してしまい粒子状物質を十分に捕集することができなくなる可能性がある。
【0006】
また、最近では、前記粒子状物質の環境に与える影響等から、外部に放出される粒子状物質の質量に加えて個数そのものを抑制することが望まれており、大きなサイズの粒子のみならずナノメートルオーダーの極微小サイズの粒子の放出の抑制が望まれている。これに対して、前記従来のフィルタでは、前記細孔の孔径を小さくして前記極微小サイズの粒子のすり抜けを防止し、当該極微小サイズの粒子をフィルタ内に捕集することが考えられるが、単純に細孔の孔径を小さくしただけでは短時間でフィルタが目詰まりしてしまい、当該粒子状物質を十分に捕集することができなくなるとともにエンジンの出力低下や燃費悪化を招いてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、耐久性に優れ極微小サイズの粒子状物質をも捕集することができる排ガス浄化装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明は、エンジンから排出される排ガスに含まれる粒子状物質の外部への放出を抑制するための排ガス浄化装置であって、前記エンジンの排ガス通路に設けられて、複数の排ガス流路を有するとともに当該排ガス流路を構成する隔壁に前記粒子状物質を捕集するための複数の細孔が形成されたフィルタ部材と、当該フィルタ部材の上流に設けられて、放電することで前記粒子状物質を負に帯電させる放電部材と、前記フィルタ部材と前記放電部材との間に設けられて、当該フィルタ部材と放電部材との間に電場を発生させることで前記帯電した粒子状物質に静電気力を付与し、当該静電気力によって前記粒子状物質をその大きさに応じて前記フィルタ部材の外周側に吸引する電場発生部材とを備え、前記フィルタ部材の前記排ガス通路と垂直な断面における外周部側に形成される細孔の孔径が、前記フィルタ部材の前記排ガス通路と垂直な断面における略中心部側に形成される細孔の孔径よりも小さいことを特徴とする排ガス浄化装置を提供する(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、サイズの小さい粒子状物質をフィルタ部材のうち主に前記小径の細孔が形成された外周部側に分離捕集することができるので、このフィルタ部材の外周部側の目詰まりを抑制しつつ前記サイズの小さい粒子状物質を前記小径の細孔により効率よく捕集することができる。しかも、フィルタ部材の中央部側の比較的大径の細孔によりサイズの大きい粒子状物質をも捕集することができるので、広範囲にわたるサイズの粒子状物質をより確実に捕集することが可能となる。
【0010】
すなわち、粒子径が小さくその質量が小さいものほど前記静電気力の影響を強く受けるので、前記のように放電部材によって粒子状物質を帯電させ、この帯電した粒子状物質に前記電場により静電気力を付与することで、このサイズの小さい粒子状物質をフィルタ部材の外周側に分離することができる。そして、このサイズの小さい粒子状物質を前記小径の細孔が形成された前記フィルタ部材の外周部側に導くことで、この細孔内に粒子状物質を捕集させることが可能となる。
【0011】
さらに、本発明では、前記放電部材および電場発生部材を前記フィルタ部材の上流側に設けているので、フィルタ部材の内部で前記粒子状物質を燃焼除去させた場合に、前記放電部材および電場発生部材がこの高温の燃焼場に晒されるのを回避することができるので、これらの部材の耐久性を向上させることが可能となる。
【0012】
また本発明において、前記放電部材を放電させるために当該放電部材に所定の放電用電圧を供給するとともに、前記フィルタ部材と前記放電部材との間に電場を生じさせるために前記電場発生部材に所定の電場用電圧を供給するための電圧供給手段を有し、当該電圧供給手段は、前記放電用電圧あるいは前記電場用電圧の少なくとも一方の電圧を、前記エンジンの回転数あるいはエンジンの負荷の少なくとも一方に基づいて決定するのが好ましい(請求項2)。
【0013】
この構成によれば、前記エンジンの回転数あるいはエンジンの負荷によって変化する前記粒子状物質の排出量および流速等に応じて、当該粒子状物質に適度な静電気力を付与することができるので、より効率よくこの粒子状物質を分離、捕集することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、フィルタの目詰まりを抑制しつつエンジンから排出される粒子状物質を効率よくフィルタ内に捕集することができるとともに、耐久性に優れた排ガス浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る排ガス浄化装置10の概略構成図である。この図1に示すように、本排ガス浄化装置10は、排気ガス中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter:フィルタ部材)20と、放電部材30と、電場発生部材40と、電圧供給手段50と、エンジン回転数を検出するための回転数センサ60とを有している。この図1は、前記DPF20、放電部材30、電場発生部材40を、図示しないエンジンの排気マニホールド等に連結された当該エンジンの排気通路(排ガス通路)100に組み付けた状態で示している。この図において、エンジン本体から排出される排ガスは、白抜き矢印で示すように排気通路100中を左側から右側へ流れる。
【0016】
前記放電部材30は、コロナ放電することで、前記排気通路100を流れる排ガスに含まれる前記PMを負に帯電させるためのものである。この放電部材30は、前記排気通路100内であって、前記DPF20および電場発生部材40よりも上流側に配置されている。また、この放電部材30は、図6に示すように、筒状の誘電体32と、棒状の電極34と、コイル36とを有している。そして、バッテリー54等に接続された電圧発生装置38に接続されている。具体的には、前記誘電体32の内側に前記電極34が挿入されるとともに誘電体32の外周面にコイル36が巻きつけられた状態で、前記電極34とコイル36とが電圧発生装置38に接続されている。
【0017】
この放電部材30は、前記電極34とコイル36との間に前記電圧発生装置38によって所定の放電用電圧が印加されることで放電を開始し、その周囲にストリーマコロナを発生する。そして、このストリーマコロナが発生している領域を前記エンジンから排出されたPMが通過することで、このPMを負に帯電させる。
【0018】
ここで、前記のようにストリーマコロナを発生させるためには電極の大きさを十分に保つ必要があるため、図1に示すように複数の放電部材30を排気通路100に沿って配設するのが好ましい。また、前記電極34とコイル36に印加される放電用電圧は、後述するようにエンジンの運転条件等により異なるが、5〜40kV程度の電圧が5〜20kHzで加えられるのが好ましい。特に高周波で印加すれば、前記ストリーマコロナを効率よく安定して発生させることが可能である。また、前記誘電体32としてはアルミナや石英を用いることができる。
【0019】
前記電場発生部材40は、前記DPF20の上流側に電場を発生させ、前記負に帯電したPMをDPF20の外周部に向けて吸引するものである。この電場発生部材40は、DPF20とほぼ同等の外径を有する筒状を有しており、前記放電部材30と前記DPF20との間に設けられて、その内側にエンジンからの排ガスが流入するよう構成されている。そして、この電場発生部材40は電圧発生装置42に接続されており、この電圧発生装置42により所定の電場用電圧を印加されることによってその内側に所定の電場を発生させる。このように電場発生部材40の内側に電場が発生し、内周面が正に帯電すると、この内側を通る前記帯電したPMに静電気力が付与されるので、これらPMは電場発生部材40側すなわち径方向外側に吸引されることになる。
【0020】
ここで、前記PMに加えられる静電気力Fは以下の式(1)のように表すことができる。
【0021】
【数1】

【0022】
ここで、qはPMのクーロン量であり、qは前記電場発生部材40の内周面のクーロン量であり、rは前記電場発生部材40の内周面の半径であり、εは空気の誘電率である。
【0023】
また、この静電気力Fを受けたPMの径方向外側への移動速度vは以下の式(2)のように表すことができる。
【0024】
【数2】

【0025】
ここで、mは前記PMの質量である。
【0026】
この式(2)に表されるように、PMが径方向外側に向かって移動する速度はPMの質量mが小さくなるほど大きくなる。従って、前記帯電されたPMは、そのサイズが小さくその質量mが小さいほど、径方向外側に大きく移動することになり、これらPMはこの電場発生部材40によってそのサイズに応じて径方向に分離されることになる。具体的には、サイズの小さいPMが径方向外側に分離されサイズの大きいPMが中央部付近に残された状態となる。
【0027】
前記電圧供給手段50は、電圧制御手段52とバッテリー54とからなる。この電圧供給手段50は、前記放電部材30および電場発生部材40にそれぞれ放電用電圧と電場発生用電圧とを供給するためのものである。具体的には、後述するように前記電圧制御手段52にて前記放電部材30および電場発生部材40に供給する電圧値を決定し、当該電圧分だけバッテリー54から電圧を供給する。
【0028】
前記DPF20は、前記PMを捕集するためのものである。このDPF20は所謂ウォールフロータイプのフィルタであって、図4等に示すように複数の細孔21を有する複数の隔壁22を有している。そして、これら隔壁22が排ガスの流れ方向と略平行に設置されることにより区画された複数のセル23(排ガス流路)を有するハニカム状に形成されている。また、前記セル23の排ガス導入側端部または排ガス導出側端部のいずれか一方は目封じ材24(図3参照)によって閉塞されている。すなわち、このDPF20は、セル23の導入側端部から流入した排ガスが前記隔壁22の細孔21を通過することで外部に排出されるよう構成されており、セル23に流入した排ガスは、前記細孔21にPM等が捕集された状態で外部に放出されることになる。
【0029】
前記DPF20は、多数の細孔21を有するコージェライトやSiC、Siセラミックス等により構成されている。また、前記隔壁22には、前記PMの燃焼を促進するパティキュレート酸化触媒がコーティングされることにより、酸化触媒層25が形成されている。
【0030】
この酸化触媒層25は、PMの燃焼を促進する触媒貴金属とこの触媒貴金属を担持する担体としての複酸化物とを有している。この触媒貴金属としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd),ロジウム(Rh)等を用いることが可能である。また、前記複酸化物としては、例えば、ランタン(La)等の希土類元素を含有するアルミナやセリウム(Ce)を主成分とするセリウム系複酸化物を用いることが可能である。
【0031】
ここで、本DPF20は、図1および図2に示すように、中央付近に設けられた複数の第一セグメント26aとこれら第一セグメント26aの外周に設けられた複数の第二セグメント26bとによって構成されている。
【0032】
前記第一セグメント26aは主にサイズの大きいPMを捕集するためのセグメントであり、図4に示すように、その隔壁22aには比較的径の大きな細孔21aが形成されている。一方、前記第二セグメント26bは主にサイズの小さなPMを捕集するためのセグメントであり、図5に示すように、その隔壁22bには比較的径の小さな細孔21bが形成されている。ここで、前記第一セグメント26aにサイズの小さなPMが流入してしまうと、そのPMは前記細孔21aで捕集されずに下流側へすり抜けてしまう可能性がある。そして、前記第二セグメント26bにサイズの大きなPMが流入してしまうと、この第二セグメント26bの細孔21bが目詰まりしてしまう可能性がある。しかしながら、本排ガス浄化装置10では、前述のように前記DPF20の上流にて前記電場発生部材40によりサイズの小さなPMを径方向外側に、サイズの大きなPMを径方向外側に分離している。そのため、前記第一セグメント26aにサイズの小さなPMが流入するのが抑制されて、この第一セグメント26aにて主にサイズの大きなPMが効率よく捕集されることになる。また、前記第二セグメント26bにサイズの大きなPMが流入するのが抑制されるので、この第二セグメント26bにて主にサイズの小さなPMが効率よく捕集されることになる。
【0033】
前記のようにしてDPF20の各細孔21に捕集されたPMは、所定の運転条件下において燃焼除去される。例えば、DPF20に所定量以上のPMが捕集された場合に、エンジンの燃焼室に燃料をポスト噴射することで排ガス中のHC成分を増量させ、このDPF20の排ガス上流部に配設される別の酸化触媒(所謂、DOC。不図示)でこのHC成分を燃焼させることで、このDPF20に、PMが着火可能な程度の温度の排ガスを供給する。そして、DPF20内を高温化することで前記酸化触媒25を活性化させ、前記PMと酸素との反応を促進してこれらPMを燃焼除去し、DPF20を再生する。なお、前記酸化触媒(DOC)は前記放電部材30よりも排ガス上流側に配設されるのが好ましい。
【0034】
次に、前記電場発生部材40にて、サイズの小さなPMを径方向外側に分離してこのPMを前記第二セグメント26bに流入させるのに必要な電場発生用電圧Eの算出方法について説明する。この電場発生用電圧Eは、電場発生部材40に流入したPMをこの電場発生部材40の下流端にて前記第二セグメント26bが配設された位置まで径方向外側に移動させることのできる値であればよい。換言すれば、電場発生部材40に流入したPMが第二セグメント26bの位置まで径方向外側に移動する時間が、このPMが電場発生部材40の下流端に到達するまでの時間よりも小さくなるような値であればよい。ここで、図7に示すように、前記第二セグメント26bの径方向の中心からの最短距離をdとすると、前記電場発生部材40に流入したPMが第二セグメント26bの位置まで径方向外側に移動する時間tは、前記式(2)等より以下の式(3)で表される。
【0035】
【数3】

【0036】
ここで、qはPMのクーロン量であり、qは前記電場発生部材40の内周面のクーロン量である。一方、このPMが電場発生部材40の下流端に到達するまでの時間tは、電場発生部材40の排ガス流れ方向の長さをLとし、PMの排ガス流れ方向の速度すなわち排ガスの流速をvcとすると式(4)で表される。
【0037】
【数4】

【0038】
従って、t<tにするためには、電場発生部材40の内周面のクーロン量qは式(5)のようになればよい。
【0039】
【数5】

【0040】
この式(5)に基づいて、電場発生部材40に加えるべき電場発生用電圧Eの最小値を算出した結果例を図8に示す。この図8は、横軸をPMの直径φ[nm]とし縦軸を電場発生用電圧[EV]として示しており、各サイズのPMを第二セグメント26b側に分離するために必要な最小限の電場発生用電圧Eを表したものである。ここで、式(5)から明らかなように、前記電場発生用電圧Eは排ガスの流速vcによっても異なる。そこで、図8には、前記PMの直径φと電場発生用電圧Eとの関係を、この排ガスの流速vcとの関係が深い排気流量(具体的にはDPF20の単位容積あたりの排気流量であるS.V.(Space Velocity))毎に示している。また、図8に示す結果例は、前記電場発生用電圧Eを、前記第二セグメント26bの中心からの距離dを5cmとし、電場発生部材40の排ガス流れ方向の長さLを5cmとし、DPF20の容量を2.5lとし、PMの重さmを式(6)のようにして算出し、PMのクーロン量qを電子1個あたりの電荷量1.9×10−19Cに等しいとして算出している。
【0041】
【数6】

【0042】
ここで、ρはPMの密度であり、ここではグラファイトの密度を用いてρ=2.26×10−21g/nmとしている。
【0043】
この図8より、例えば、前記電場発生部材40に電場発生用電圧Eを30V加えるよう構成すれば、S.V.160000/hr以下の運転条件下で第二セグメント26bに直径約200nm以下の極微小サイズのPMを分離することが可能となる。
【0044】
前述のように、電場発生部材40に加えるべき最小限の電場発生用電圧Eは排気流量毎に異なる。また、この排気流量はエンジン回転数およびエンジン負荷によって変化することがわかっている。そこで、本実施形態では、この電場発生用電圧Eをエンジン回転数およびエンジン負荷毎に変化させることで効率よく電場を生じさせるように構成している。具体的には、前記電圧供給手段50の電圧制御手段52に、エンジン回転数およびエンジン負荷毎に予め作成した最適な電場発生用電圧値のマップを与えておく。そして、回転数センサ60により検出されたエンジン回転数と実噴射量等から算出されたエンジン負荷に基づいて前記マップから最適な電場発生用電圧を抽出し、電場発生部材40に接続される前記電圧発生装置42にこの電圧分だけ印加するよう指令信号を出力する。これにより、運転条件毎に電場発生部材40に最適な電圧発生用電圧が印加されることになり、過剰な電圧供給を回避することが可能となる。
【0045】
一方、前記放電部材30におけるPMの帯電量は、この放電部材30の周囲を通過するPM量により異なる。そして、このPMの排出量も、図9に示すように、エンジン回転数NEおよびエンジン負荷Qによって異なることがわかっている。そこで、本排ガス浄化装置10では、このエンジン回転数およびエンジン負荷に応じて放電部材30に印加する放電用電圧の値を変化させ、前記放電部材30の周囲を通過する全てのPMを効率よく帯電させるよう構成している。所定の車両において運転条件を変化させた場合の極微小サイズのPMの排出量の検出例を図10に示す。この図10において、横軸はPMの直径φ[nm]であり縦軸はPMの個数N[個]を示しており、複数のエンジン回転数におけるこれらの関係を示している。この図から明らかなように、300nm以下の極微小サイズのPMの排出数は運転条件毎に異なる。
【0046】
具体的には、前記電圧供給手段50の電圧制御手段52に、エンジン回転数およびエンジン負荷毎に予め作成した最適な放電用電圧のマップを与えておく。そして、回転数センサ60により検出されたエンジン回転数と実噴射量等から算出されたエンジン負荷に基づいて前記マップから最適な電圧を抽出し、前記放電部材30に接続される前記電圧発生装置32にこの電圧分だけ印加するよう指令信号を出力する。
【0047】
このようにして、前記放電部材30および電場発生部材40に所定の電圧を印加する要領を図11のフローチャートを用いて説明する。
【0048】
まず、ステップS1にて前記DPF20を再生中であるかどうかを判定する。すなわち、DPF20内に高温の排ガスが供給されDPF20内に堆積したPMが燃焼除去されている最中であるかどうかを判定する。この判定がYESの場合は、前記放電部材30および電場発生部材40に電圧を印加することなく処理を終了する。一方、前記判定がNOであれば、前記回転数センサ60および実噴射量等からエンジン回転数とエンジン負荷とを読み込む(ステップS2)。そして、前記電圧制御手段52にて、この読み込まれたエンジン回転数およびエンジン負荷に基づいて、前記放電部材30および電場発生部材40に供給する放電用電圧および電場発生用電圧を各マップから抽出する(ステップS3)。次に、これら放電部材30および電場発生部材40に電圧を印加するバッテリー54の充電量が所定値以下であるかどうかを判定する(ステップS4)。この判定がYESの場合は、このバッテリー54の充電量が各部材に電圧を印加するのに十分でないので、そのまま処理を終了する。一方、この判定がNOの場合は、前記マップから抽出された放電用電圧および電場発生用電圧分だけ前記放電部材30および電場発生部材40に電圧を印加して、排ガス中のPMをそれぞれそのサイズに応じて前記第一セグメント26aと第二セグメント26bとに捕集する(ステップS5)。
【0049】
以上のように、本排ガス浄化装置10では、放電部材30にてPMを帯電させ、電場発生部材40にて前記帯電したPMをその大きさに応じて径方向に分離するとともに、DPF20の外周部側の細孔21bの孔径を小さくする一方DPF20の中央部側の細孔21aの孔径を大きくすることで、前記分離されたサイズの小さなPMをDPF20の外周部側で捕集する一方サイズの大きなPMをDPF20の中央部側で捕集している。従って、前記サイズの大きなPMにより細孔21が目詰まりするのを抑制することができるとともに、広範囲にわたるサイズのPMをより確実に捕集することが可能となる。しかも、前記放電部材30および電場発生部材40を前記DPF20の上流側に設けているので、DPF20の再生中にこのDPF20内部の温度が高温になったとしても、前記放電部材30および電場発生部材40がこの高温場に晒されるのを回避することができるので、これらの部材の耐久性を向上させることが可能となる。
【0050】
また、前記実施形態のように、前記電圧制御手段52にて、前記放電部材30および前記電場発生部材40に印加する放電用電圧および電場発生用電圧をそれぞれエンジン回転数およびエンジン負荷に基づいて決定するよう構成すれば、運転条件毎に最適な電圧を印加することができ、前記PMをより効率よく捕集することが可能となる。
【0051】
ここで、本実施形態では、前記のように放電部材30および電場発生部材40に印加する放電用電圧および電場発生用電圧をいずれもエンジン回転数およびエンジン負荷に基づいて決定するよう構成しているが、それぞれ一定の電圧としてもよい。また、いずれか一方の電圧のみを前記エンジン回転数等に基づいて決定するようにしてもよいし、エンジン回転数とエンジン負荷のいずれか一方に基づいて決定するようにしてもよい。
【0052】
また、前記放電部材30の構造は前記に限らず、例えば図12〜図14に示すような部材130であってもよい。すなわち、少なくとも一方が誘電体でコートされた2つの電極134,136を有し、これらを所定量だけ離間した状態で電圧を印加し、これら電極134,136間に放電するようにしてもよい。
【0053】
また、DPF20の構造は前記に限らず、例えば、第一セグメント26aと第二セグメント26bにわけることなく、前記第二セグメント26bが配設される外周部側に相当する部分の隔壁22bに担持する触媒量を多くすることでこの外周部側の細孔21bの孔径を小さくするよう構成してもよい。また、前記電場発生部材40の構造も前記に限らない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る排ガス浄化装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すDPFの正面図である。
【図3】図2に示すDPFの断面図である。
【図4】図2に示すDPFの中央部付近の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】図2に示すDPFの外周部付近の一部を拡大して示す断面図である。
【図6】図1に示す放電部材の概略側面図である。
【図7】図1に示す排ガス浄化装置の一部の概略断面図である。
【図8】PMの直径と電場発生部材に印加する電圧との関係を示す演算結果例である。
【図9】運転条件毎のPM排出量を示すデータである。
【図10】運転条件毎のPMの直径とPMの排出数との関係を示す実験データである。
【図11】放電部材および電場発生部材に電圧を印加する際の演算要領を示すフローチャートである。
【図12】図1に示す放電部材の変形例を示す説明図である。
【図13】図12に示す放電部材の一方の電極を示す正面図である。
【図14】図12に示す放電部材の他方の電極を示す正面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 排ガス浄化装置
20 DPF(フィルタ部材)
21 細孔
22 隔壁
23 セル(排ガス流路)
26a 第一セグメント
26b 第二セグメント
30 放電部材
40 電場発生部材
50 電圧供給手段
52 電圧制御手段
54 バッテリー
100 排気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出される排ガスに含まれる粒子状物質の外部への放出を抑制するための排ガス浄化装置であって、
前記エンジンの排ガス通路に設けられて、複数の排ガス流路を有するとともに当該排ガス流路を構成する隔壁に前記粒子状物質を捕集するための複数の細孔が形成されたフィルタ部材と、
当該フィルタ部材の上流に設けられて、放電することで前記粒子状物質を負に帯電させる放電部材と、
前記フィルタ部材と前記放電部材との間に設けられて、当該フィルタ部材と放電部材との間に電場を発生させることで前記帯電した粒子状物質に静電気力を付与し、当該静電気力によって前記粒子状物質をその大きさに応じて前記フィルタ部材の外周側に吸引する電場発生部材とを備え、
前記フィルタ部材の前記排ガス通路と垂直な断面における外周部側に形成される細孔の孔径が、前記フィルタ部材の前記排ガス通路と垂直な断面における略中心部側に形成される細孔の孔径よりも小さいことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化装置において、
前記放電部材を放電させるために当該放電部材に所定の放電用電圧を供給するとともに、前記フィルタ部材と前記放電部材との間に電場を生じさせるために前記電場発生部材に所定の電場用電圧を供給するための電圧供給手段を有し、
当該電圧供給手段は、前記放電用電圧あるいは前記電場用電圧の少なくとも一方を、前記エンジンの回転数あるいはエンジンの負荷の少なくとも一方に基づいて決定することを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−231932(P2008−231932A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68491(P2007−68491)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】