説明

排出機構および画像形成装置

【課題】正円柱のローラ部材に比べて排出能力を向上させ、周面に凹凸を有するローラ部材に比べて媒体を傷つける可能性を低減する排出機構を提供する。
【解決手段】回転軸と、回転軸を中心とする周面を有し、当該回転軸とともに回転して当該周面に接する媒体を排出するロール部材と、媒体のうち周面に接しない部分が、周面よりも回転軸に近い位置を通過するように、当該媒体を変形させる変形手段とを備える排出機構を画像形成装置に設ける。ロール部材が有する周面は、このロール部材が回転させられたときに、媒体に接する部分が回転軸の軸方向および回転方向に沿って連続して変位するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出機構および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において記録材の排出性能を向上させるためのさまざまな技術が開発されている。特許文献1には、周面に蹴り出し部を設けた排出ローラが記載されている。特許文献2には、搬出ローラから突出した部材であって、原稿のこしの保持力により弾性変形し、復元するときにその原稿を掃き出す原稿掃出部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国公開2006/0157922号公報
【特許文献2】特開平3−111370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、正円柱のローラ部材に比べて排出能力を向上させ、かつ、周面に凹凸を有するローラ部材に比べて媒体を傷つける可能性を低減させる排出機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る排出機構は、回転軸と、前記回転軸を中心とする周面を有し、当該回転軸とともに回転して当該周面に接する媒体を排出するロール部材と、前記媒体のうち前記周面に接しない部分が、前記周面よりも前記回転軸に近い位置を通過するように、当該媒体を変形させる変形手段とを備え、前記周面は、前記ロール部材が回転させられたときに、前記媒体に接する部分が前記回転軸の軸方向および回転方向に沿って連続して変位することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る排出機構は、請求項1に記載の態様において、前記ロール部材とともに前記媒体を挟むロール体を備え、前記ロール体と前記ロール部材とが前記媒体を挟む領域の前記軸方向の長さは、当該ロール部材が回転しても変わらないことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る排出機構は、請求項1又は2に記載の態様において、前記ロール部材は、前記軸方向の異なる位置に2つ設けられ、当該2つのロール部材は、回転させられるときに前記媒体にそれぞれ接する各部分の前記軸方向の間隔が連続的に変化することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る排出機構は、請求項3に記載の態様において、前記回転軸のうち、前記2つのロール部材に挟まれ、かつ、前記間隔が最も広くなった位置よりも前記回転方向における後方の半周以内の領域から突起している突起部を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る排出機構は、請求項3に記載の態様において、前記回転軸のうち、前記2つのロール部材に挟まれていない領域であって、前記間隔が最も広くなった位置と前記軸方向に並ばない領域から突起している突起部を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る排出機構は、請求項4または5に記載の態様において、前記回転軸の中心から前記突起部の先端までの距離は、当該中心から前記周面までの距離より短い、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7に係る排出機構は、請求項4から6のいずれかに記載の態様において、前記突起部は、前記回転方向の側に突出した部位を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項8に係る排出機構は、請求項1から7のいずれかに記載の態様において、前記ロール部材は、前記回転軸を中心とし、当該回転軸に対して傾斜した部分を端面に含む円柱の形状を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項9に係る排出機構は、請求項8に記載の態様において、前記ロール部材は、前記回転軸を中心とする斜円柱の形状を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項10に係る画像形成装置は、媒体に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部により画像が形成された媒体を排出する請求項1から9のいずれかに記載の排出機構とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、8、9に記載の排出機構によれば、正円柱のローラ部材に比べて排出能力を向上させ、かつ、周面に凹凸を有するローラ部材に比べて媒体を傷つける可能性を低減させることができる。
請求項2に記載の排出機構によれば、ロール体とロール部材とが媒体を挟む領域の軸方向の長さが回転に伴って変化する場合に比べて、媒体が傷つく可能性を低減させることができる。
請求項3に記載の排出機構によれば、2つのロール部材によって媒体を軸方向に沿って挟んで排出することができる。
請求項4に記載の排出機構によれば、排出方向の後ろ側であるほど幅が狭くなる形状を含む後端を有する媒体を排出することができる。
請求項5に記載の排出機構によれば、変形させられた媒体をもとに戻す部材が媒体を傷つける可能性を低減させることができる。
請求項6に記載の排出機構によれば、回転軸に設けた突起部が媒体を傷つける可能性を低減させることができる。
請求項7に記載の排出機構によれば、回転方向の側に突出した部位を突起部が有しない場合に比べて媒体の排出能力を高めることができる。
請求項10に記載の画像形成装置によれば、正円柱のローラ部材に比べて排出能力を向上させ、かつ、周面に凹凸を有するローラ部材に比べて媒体を傷つける可能性を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体構成を説明する図である。
【図2】第1実施形態に係る排出部とその周辺の構成を示す図である。
【図3】排出ロールの形状を示す図である。
【図4】排出部と補助部とを示す図である。
【図5】排出ロールに載った媒体にコルゲーションが付与される様子を示す図である。
【図6】媒体が排出ロールと補助ロールとに挟まれる点を通過した状態を示す図である。
【図7】排出ロールと媒体との接点が排出ロッドの延びる方向に変位する様子を示す図である。
【図8】排出ロールにより媒体の後端が排出される様子を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の排出部を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態に係る排出部とその周辺の構成を示す図である。
【図11】封筒の構成を示す図である。
【図12】突起部の軸方向の配置を示す図である。
【図13】閉封片と、排出ロールおよび各突起部の軸方向の間隔との関係を示す図である。
【図14】鉤部が設けられていない突起部の作用について説明する図である。
【図15】鉤部が設けられている突起部の作用について説明する図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置の排出部を示す斜視図である。
【図17】第3実施形態に係る排出部とその周辺の構成を示す図である。
【図18】鉤部を有する突起部の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態
1−1.全体構成
以下に説明する実施形態において、媒体とは、画像形成部500により画像が形成されるためのシート状のものをいう。媒体は、典型的には、いわゆる用紙や紙製の封筒であるが、プラスチックのシートであってもよい。
【0018】
なお、本明細書および図面においては、互いに直角に交わるX軸、Y軸およびZ軸で方向を表す。このX軸、Y軸およびZ軸で表されるXYZ座標系は右手系である。X軸はX成分を表し、X軸に沿ってX成分が増加する方向をX(+)方向、X軸に沿ってX成分が減少する方向をX(−)方向と呼ぶ。Y,Zについても同様とする。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を説明する図である。図1には、Z(−)方向に沿って見たときの画像形成装置1内部の概略が示されている。供給部600は、用紙や封筒などの媒体を収容する容器を備える。この容器を画像形成装置1の筐体800に設置することで、容器内部に収容された媒体は供給可能になる。
搬送部700は、供給部600から媒体を1枚ずつ取り出して画像形成部500に搬送する。
【0020】
画像形成部500は、現像材を用いた電子写真プロセスにより、媒体の表面に画像を形成する。具体的には、画像形成部500は、潜像を保持する感光体と、感光体を露光して潜像を保持させる露光装置と、感光体の潜像に現像材を供給する現像材供給装置、および感光体から媒体へ現像像を転写する転写装置を備える。現像材は、例えば黒色のトナーを含む。画像形成部500は、媒体に画像を形成する画像形成部の一例である。
【0021】
定着部400は、画像形成部500により媒体とともにこの媒体の表面に付着させられたトナーを加熱・溶融して、画像を定着させる。
排出部100は、定着部400により画像を定着させた媒体を補助部200とともに挟持して積載部300へ排出する。排出部100は、画像形成部により画像が形成された媒体を排出する排出機構の一例である。
積載部300は、排出部100が排出した媒体を積載して保持する。
【0022】
1−2.排出部の構成
図2は、第1実施形態に係る排出部100とその周辺の構成を示す図である。図2(a)には、X(+)方向に見た排出部100および補助部200の概要が示されている。図2(b)には、図2(a)の矢視IIb−IIbからZ(−)方向に沿ってこれらの構成および積載部300を見たときの様子が示されている。排出部100は排出ロッド101と排出ロール102を備える。排出ロッド101は、軸Oを中心として図示しない駆動部により回転させられる棒状部材である。すなわち、この駆動部は、排出ロッド101(回転軸)を媒体の排出方向に応じた回転方向に回転させる回転駆動手段の一例である。
【0023】
排出ロッド101の周りには軸方向に離れた2つの排出ロール102a、102b(以下、特に区別の必要がない場合は、これらを総称して「排出ロール102」と記す)が設けられている。排出ロール102は、排出ロッド101(回転軸)を中心とする周面を有し、この排出ロッド101とともに回転して周面に接する媒体を排出するロール部材の一例である。また、排出ロール102は、後述する補助部200の補助ロール202とともに媒体を挟持し、排出ロッド101の軸Oを中心に矢線D0方向に回転することにより、挟持した媒体を積載部300へ排出する。
【0024】
図3は、排出ロール102の形状を示す図である。図3に示すように、排出ロール102は、軸に沿って半分に分割した2つの斜円柱を分割面に関して互いに面対称になるように分割面を貼り合わせた形状をしている。図3に示す斜面SLは排出ロール102の端面の一部であり、軸Oに対して傾斜している。したがって、排出ロール102は、側面の或る方向から見ると端面がひらがなの「く」の字状に見え、また、その方向から90度ずれた方向から見ると端面が扇状に見える。排出ロール102の一方の端面は他方の端面に沿った形状をしている。そのため、排出ロール102の側面は、軸方向の長さがどの位置であっても変わらない。
【0025】
排出ロール102は、実際に半分に分割された斜円柱を貼り合わせて製作されてもよいし、素材をこの形状に削り出して製作されてもよい。この場合、排出ロール102の素材は特に制限がなく、例えば樹脂でもよいしゴムでもよい。また、排出ロール102は、排出ロッド101とともに射出成型されて製作されてもよい。以下の例において、排出ロッド101および排出ロール102はともに樹脂を素材とし、射出されることにより一体に成型される。排出ロール102を排出ロッド101と一体成型することにより、排出ロール102を排出ロッド101にはめ込む工程が省かれ、排出ロッド101の形状についての制限が減る。
【0026】
また、排出ロール102aと排出ロール102bとは、排出ロッド101において、軸方向の異なる位置にそれぞれ設けられ、軸に垂直な平面に関して互いに面対称の形状である。したがって、排出ロール102aと排出ロール102bとは、回転させられるときに媒体にそれぞれ接する各部分の軸方向の間隔が連続的に変化する2つのロール部材の一例である。
【0027】
図2に戻って説明を続ける。補助部200は、補助ロッド201、補助ロール202、コルゲーションロール203を備える。補助ロッド201は、排出ロッド101のY(+)方向に定められた距離をあけて、その軸方向が排出ロッド101の軸方向に沿って並ぶように設けられた棒状部材である。補助ロール202は、補助ロッド201を中心に回転するロールであり、補助ロッド201の排出ロール102a,102bに対向する位置にそれぞれ設けられている。補助ロール202の直径は、補助ロッド201の直径よりも長い。
【0028】
コルゲーションロール203は、補助ロッド201に設けられ、この補助ロッド201を中心に回転するロールである。図4は、排出部100と補助部200とを示す図である。図4には、図2(a)に示した一方の排出ロール102(具体的には排出ロール102b)とその周囲を拡大して見た様子が示されている。
【0029】
コルゲーションロール203は1つの排出ロール102につき2つ、補助ロッド201に設けられている。各コルゲーションロール203は、これに対応する排出ロール102を軸方向の両側から挟む位置に設けられている。
【0030】
補助ロール202は、対向する排出ロール102に従って動き、この排出ロール102とともに媒体Pを挟んで積載部300へ排出する。図4に示す点PNは、排出ロール102と補助ロール202とがそれぞれの側面で媒体Pを挟む(ニップする)位置である。図4に示す点PCは、点PN、すなわち、排出ロール102の側面の位置よりも、排出ロッド101に近い。すなわち、補助ロール202は、排出ロール102(ロール部材)とともに媒体を挟むロール体の一例である。
【0031】
そして、上述したように、排出ロール102の側面は、軸方向の長さがどの位置であっても変わらないので、補助ロール202(ロール体)と排出ロール102(ロール部材)とが媒体Pを挟む領域の軸方向の長さは、排出ロール102が回転しても変わらない。
【0032】
コルゲーションロール203は、点PCまで媒体Pを排出ロッド101に向けて押すため、媒体Pはその排出方向に延びる波状の筋(以下これをコルゲーションと称する)が形成される。
【0033】
図5は、排出ロール102に載った媒体Pにコルゲーションが付与される様子を示す図である。排出ロール102と補助ロール202とが媒体Pを挟んだ状態でコルゲーションロール203が媒体Pを押すため、図5に示すように、媒体Pのうち、排出ロール102に接している部位はY(+)方向に突き出た形状(凸状)となり、排出ロール102に接していない部位はY(−)方向に凹んだ形状(凹状)となる。このように、媒体Pには、コルゲーションロール203によりその排出方向に延びる筋が付与される。以下、この凸状の頂点を凸状部位CVと呼び、凹状の頂点を凹状部位CCと呼ぶ。すなわち、コルゲーションロール203は、媒体のうちロール部材の周面に接しない部分が、その周面よりも回転軸に近い位置を通過するように、その媒体を変形させる変形手段の一例である。
【0034】
図2に戻る。図2(b)に示す積載部300は、1枚の板材が稜303で折り曲げられて、底面部301と側面部302とに区画されている部材を含む。排出ロール102と補助ロール202とによって挟持され排出された媒体は、底面部301に積み上げられる。底面部301は、重力方向(Y(−)方向)に対して傾斜しているため、底面部301に積み上げられた媒体は、矢線D1方向に滑り落ちようとする。側面部302は、媒体の端部を押さえることにより、媒体が矢線D1方向に滑り落ちることを防止する。
【0035】
1−3.排出部の動作
排出部100の動作を説明する。図6は、媒体Pが排出ロール102と補助ロール202とに挟まれる点PNを通過した状態を示す図である。図6には、媒体Pの後端EPが点PNを通過したため、媒体Pが補助ロール202から離れ、排出ロール102の上に載っている状態が示されている。ここで媒体Pは、その先端EAが点PAで積載部300の底面部301に突き当たり、排出方向であるX(−)方向に反して、底面部301からX(+)方向の反力を受けている。媒体Pは、コルゲーション付与により、排出方向に延びる筋である凸状部位CVと凹状部位CCとが形成されているため、図6に示すようにX軸方向に曲がり難くなっている。
【0036】
図7は、排出ロール102と媒体Pとの接点が排出ロッド101の延びる方向に変位する様子を示す図である。説明を簡略にするため、この図7において、排出ロール102aと排出ロール102bとは図5に示したよりも軸方向に近い位置に設けられているものとして表す。
【0037】
図7(a)に示すように、媒体Pの凹状部位CCはこの部位を挟む点P1−P1で支えられている。排出ロール102が矢印D0方向に90度回転すると、図7(b)に示すようにその配置が変化する。すなわち、排出ロール102が矢印D0方向に90度回転する間に、2つの排出ロール102の各端面におけるY(+)方向の頂点はZ軸に沿って変位して、点P1よりも凹状部位CCに近づく。つまり、排出ロール102の周面は、排出ロール102(ロール部材)が回転させられたときに、媒体Pに接する部分が排出ロッド101(回転軸)の軸方向および回転方向に沿って連続して変位する周面の一例である。
【0038】
図7(b)に示す点P1−点P2aは、回転前の媒体Pと回転後の排出ロール102とが重なる部分であるから、排出ロール102の回転により点P1−点P2aに存在した媒体Pが追い出される。すなわち、排出ロール102の回転により、媒体Pは移動する。
【0039】
図7(c)に示す点P2b−点P2bは、排出ロール102の回転に抗して媒体PがX(−)方向に全く動かず、Y(+)方向に動いた場合における、排出ロール102と媒体Pとの接点である。各排出ロール102の対向する端面のうち、図7(c)に示した斜面SLと回転方向である矢線D0方向となす角が第1の閾値未満である場合には、排出ロール102と媒体Pとの接触点で媒体Pが滑るため、排出ロール102の回転駆動力が媒体Pに伝わらず、凹状部位CCが矢線Du方向(Y(+)方向)に持ち上がる。つまり、斜面SLが緩やか過ぎると媒体Pは排出されない。
【0040】
一方、図7(c)に示す点P2c−点P2cは、回転する排出ロール102との接触点において媒体Pが滑ること無く、その回転に伴って矢線Dd方向に動いた場合における、排出ロール102と媒体Pとの接点である。斜面SLと回転方向である矢線D0方向となす角が第1の閾値よりも高い第2の閾値以上である場合には、排出ロール102と媒体Pとの接触点で媒体Pが全く滑らず、媒体Pは排出ロール102との接点に捉えられたまま矢線Dd方向に排出される。つまり、斜面SLが急過ぎると媒体Pは排出ロール102との接点で全く滑らずに排出される。
【0041】
斜面SLと矢線D0方向とがなす角は、上述した2つのケースの中間に調整される。そのため、媒体Pは排出ロール102との接点を滑らせながら排出ロール102の回転に伴って排出される。なお、上記の角は、少なくとも媒体Pが排出ロール102を上滑りし続け全く排出されない状態でなければよい。つまり、この角は、媒体Pが排出ロール102との接点で全く滑らずに排出されるように調整されてもよい。ただし、2つのケースの中間に調整されることで、媒体Pと排出ロール102との接点が連続的に変位し、媒体Pに力が加わる点が分散され、媒体Pが傷つく可能性が低減するのでより望ましい。
【0042】
図8は、排出ロール102により媒体Pの後端EPが排出される様子を示す図である。すなわち、媒体Pの後端EPは排出ロール102により点P1で接していたが、排出ロール102が矢印D0方向に回転することにより、X(−)方向に押し出される。この間で排出ロール102が媒体Pの後端EPに接する点は点P1から点P2に変位する。
【0043】
正円柱のロール部材は、回転してその端面が軸方向に変位することがない。そのため、媒体Pにコルゲーションが付与されていてもその媒体Pを軸方向の両側から挟むことはないので、回転の駆動力が媒体Pに伝達されず、接触部位が滑ってしまい、媒体Pを排出できない場合があった。
【0044】
一方、以上に説明したように上述した排出ロール102は回転すると、媒体Pと接する位置が排出ロッド101の軸方向に変位し、媒体Pの凹状部位CCを軸方向の両側から挟む。そのため、媒体Pは、コルゲーションが付与されていない場合に比べて排出ロール102からの摩擦力を受けやすくなっている。したがって、排出ロール102は、媒体Pの後端EPを排出方向に押し出すので、媒体の排出性能は従来に比べて向上する。
【0045】
また、排出ロール102は、軸に垂直な断面の形状が円形であるから、周面に段差がない構成である。したがって、軸に垂直な断面の形状が円形でないロール部材に比べて、排出ロール102は、回転する周面により媒体Pが傷つく可能性が低い。そして、排出ロール102は、媒体Pを排出する際に後端EPと接する位置が排出ロッド101の軸方向に連続的に変位するため、これが変位しない場合に比べて媒体Pが傷つく可能性は抑制される。
【0046】
また、補助ロール202と排出ロール102とが媒体Pを挟む領域の軸方向の長さは、排出ロール102が回転しても変わらないので、上記の長さが変わるように構成された場合に比べて、排出ロール102の回転に伴って補助ロール202が排出ロール102を押す圧力は変化しにくく、挟まれる媒体Pへの負荷が急に増大するために補助ロール202と排出ロール102とが媒体Pを傷つける可能性が抑制される。また、上記の長さが変わるように構成された場合に比べて、補助ロール202のガタつきやこれに伴う異音などが低減される。
【0047】
2.第2実施形態
2−1.排出部の構成
図9は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置1の排出部100を示す斜視図である。第2実施形態に係る排出部100は、第1実施形態に係る排出部100と共通する構成を備え、さらに第1突起部111(図9に図示せず)、第2突起部112(図9に図示せず)、第3突起部113、および第4突起部114を備える点が異なる。以下、第2実施形態に係る画像形成装置1について、第1実施形態に係る画像形成装置1と相違する点を中心に説明する。
【0048】
図10は、第2実施形態に係る排出部100とその周辺の構成を示す図である。図10(a)にはこれらの構成をX(+)方向に沿って見た概略図が、図10(b)には、これらの構成を図10(a)の矢視Xb−XbからZ(−)方向に沿って見た概略図が、それぞれ示されている。
排出部100は、排出ロッド101、排出ロール102、第1突起部111、第2突起部112、第3突起部113、および第4突起部114を備える。
第1突起部111、第2突起部112、第3突起部113、および第4突起部114(以下、これらを総称して「突起部」と記す)はいずれも、排出ロッド101の排出ロール102a,102bに挟まれた領域に設けられている。したがって、これら突起部は、排出ロッド101の回転に伴って軸Oを中心に回転する。
【0049】
そして、排出ロッド101の軸Oから突起部の先端までの距離は、排出ロール102の半径(より正確には、排出ロール102の軸Oに垂直な面による断面の形状である円の半径)よりも短い。言い換えると、これら各突起部は、排出ロール102の半径よりも短い回転半径を有する。すなわち、これらの突起部は、回転軸の中心からその先端までの距離が、その中心からロール部材の周面までの距離より短い突起部の一例である。
【0050】
ここで排出ロール102と補助ロール202とによって挟まれ、排出された媒体である封筒Vについて説明する。封筒Vは、閉封される前の状態で供給部600に収容され、画像形成部500によって宛名面などに宛名や住所などの文字画像を形成された後、排出部100によって排出される。
【0051】
図11は、封筒Vの構成を示す図である。封筒Vは、折り曲げ辺V3を境に、封筒本体V1と、いわゆる“フラップ”と呼ばれる閉封片V2との2つの領域に区分される。閉封片V2が折り曲げ辺V3に沿って折り返され、封筒本体V1に糊付けされることによって、封筒Vは閉封される。図11に示した閉封片V2の形状は、折り曲げ辺V3を底辺とする三角形(二等辺三角形)である。
【0052】
排出部100によって排出されるときは閉封される前の状態であるから、閉封片V2は、折り曲げ辺V3に沿って封筒本体V1に折り返されていない。ただし、下方向(Y(−)方向)に凸となる折り癖が折り曲げ辺V3についている場合には、図10(b)に示したように封筒Vは、折り曲げ辺V3に沿って折り曲がった状態となって積載部300に保持されることがある。このとき、封筒本体V1が底面部301に、閉封片V2が側面部302にそれぞれ沿って保持される。
【0053】
2−2.突起部の構成
2−2−1.突起部の回転方向の配置
排出ロール102a,102bに挟まれた排出ロッド101の領域の軸方向(Z軸方向)における中央には、第4突起部114が設けられている。排出ロッド101は、矢線D0方向に回転するが、この回転方向において第4突起部114の四半周(90度)後方には、第1突起部111a,111b(以下、特に区別の必要がない場合は、これらを総称して「第1突起部111」と記す)が設けられている。第1突起部111aは、第1突起部111bよりもZ(−)方向に配置されている。
【0054】
矢線D0方向が示す回転方向において第1突起部111の四半周(90度)後方には、第2突起部112a,112b(以下、特に区別の必要がない場合は、これらを総称して「第2突起部112」と記す)が設けられている。第2突起部112aは、第2突起部112bよりもZ(−)方向に配置されている。
【0055】
また、この回転方向において第2突起部112の四半周(90度)後方には、第3突起部113a,113b(以下、特に区別の必要がない場合は、これらを総称して「第3突起部113」と記す)が設けられている。第3突起部113aは、第3突起部113bよりもZ(−)方向に配置されている。
【0056】
そして、この回転方向において第3突起部113の四半周(90度)後方には、第4突起部114が設けられている。つまり、排出ロッド101の回転方向において後方に向かう方向に、第1突起部111、第2突起部112、第3突起部113、および第4突起部114が、この順に四半周(90度)ごとの角度をあけて配置されている。言い換えると、排出ロール102a,102bに挟まれた排出ロッド101の領域には、排出ロッド101の回転方向における異なる4種類の位置ごとに、それぞれ突起部が設けられている。
【0057】
4種類の突起部のうち少なくとも1種類には、鉤部が設けられている。鉤部とは、突起部の先端、すなわち、排出ロッド101から離れた側の端において、上述した回転方向に突出した部分である。本実施形態では、第1突起部111および第3突起部113には、鉤部が設けられており、第2突起部112および第4突起部114には、鉤部が設けられていない。鉤部の詳細については後述する。
【0058】
2−2−2.突起部の軸方向の配置
図12は、突起部の軸方向(Z軸方向)の配置を示す図である。排出ロッド101のうち、排出ロール102aと排出ロール102bとに挟まれた領域の長さは上述したように変化する。ここでは、排出ロール102aのZ(+)側の面から排出ロール102bのZ(−)側の面までの長さが最長となるときの長さは、長さL0である。この長さは、すなわち図7に示す点P1−P1間の長さである。
【0059】
第1突起部111aのZ(+)側の面から第1突起部111bのZ(−)側の面までの長さは、長さL1である。第2突起部112aのZ(+)側の面から第2突起部112bのZ(−)側の面までの長さは、長さL2である。第3突起部113aのZ(+)側の面から第3突起部113bのZ(−)側の面までの長さは、長さL3である。L0,L1,L2,L3には、L0>L1>L2>L3の関係がある。
【0060】
図13は、封筒Vの閉封片V2と、排出ロール102および各突起部の軸方向の間隔との関係を示す図である。封筒Vは、排出ロール102が回転することにより矢線D2方向に排出されるので、封筒本体V1→閉封片V2の順に排出される。閉封片V2は、矢線D2方向における後ろ側ほど幅(折り曲げ辺V3に平行、且つ、矢線D2方向に直交する方向の長さ)が狭くなる形状を有している。すなわち、図11に示した閉封片V2の縁部Eは、封筒Vの「排出方向の後ろ側であるほど幅が狭くなる形状を含む後端」の一例である。
【0061】
領域V20は、閉封片V2のうち、幅方向がL0以上の部分である。領域V21は、閉封片V2のうち、幅方向がL0未満L1以上の部分である。領域V22は、閉封片V2のうち、幅方向がL1未満L2以上の部分である。領域V23は、閉封片V2のうち、幅方向がL2未満L3以上の部分である。領域V24は、閉封片V2のうち、幅方向がL3未満の部分である。
【0062】
したがって、排出ロール102は、閉封片V2のうち領域V20に接触している場合に、封筒Vを矢線D2方向に排出するが、領域V20よりも矢線D2方向(排出方向)の後ろ側となる領域V21〜V24が点P1−P1に差し掛かると、閉封片V2から離れるため、封筒Vを排出しなくなる。そして、領域V21〜V24は、点P1−P1に接した後、排出ロッド101に近づく方向に移動する。すなわち、領域V21〜V24は、点P1−P1で接したときに排出ロッド101に向けて落ち込む。このとき、図10(b)に示したように、閉封片V2は、折り曲げ辺V3を軸として矢線D3方向に倒れ、二点鎖線で示した位置に移動する。
【0063】
図10(b)に二点鎖線で示す位置に移動した閉封片V2のうち、領域V21は、図13に示すように幅方向がL0未満L1以上の部分であるから、間隔がL1である第1突起部111aと第1突起部111bとに接し、これらによって矢線D2方向に搬送される。
また、閉封片V2のうち、領域V22は、幅方向がL1未満L2以上の部分であるから、間隔がL2である第2突起部112aと第2突起部112bとに接し、これらによって矢線D2方向に搬送される。
また、閉封片V2のうち、領域V23は、幅方向がL2未満L3以上の部分であるから、間隔がL3である第3突起部113aと第3突起部113bとに接し、これらによって矢線D2方向に搬送される。
そして、閉封片V2のうち、領域V24は、第4突起部114に接し、矢線D2方向に搬送される。
【0064】
上述したとおり、第1突起部111、第2突起部112、第3突起部113、および第4突起部114は、この順に排出ロッド101の回転方向において後方に向かう方向に、四半周(90度)ごとの角度をあけて配置されている。したがって、これらの突起部のうちいずれかは、排出ロール102a、102bに挟まれた領域のうち、封筒Vの後端(閉封片V2の縁部E)に接する部分の軸方向の間隔が最も広くなった位置よりも、その回転方向における後方の半周(180度)以内の領域に突起している。すなわち、この領域に突起している突起部は、回転軸のうち、2つのロール部材に挟まれ、かつ、それらの間隔が最も広くなった位置よりも回転方向における後方の半周以内の領域から突起している突起部の一例である。この配置により、領域V21〜V24のいずれかが点P1−P1で接したときに排出ロッド101に向けて落ち込んだ場合に、縁部Eが上記の領域に突起しているいずれかの突起部に接触するため、封筒Vは排出される。
【0065】
2−2−3.突起部の鉤部
次に、突起部の鉤部の作用について説明する。
図14は、鉤部が設けられていない突起部の作用について説明する図である。上述した第2突起部112と第4突起部114とは、鉤部が設けられていない突起部である。鉤部が設けられていない突起部は、排出ロッド101の軸Oから軸方向(Z軸方向)に垂直な放射状に延びる平板Wを有する。平板Wは、排出ロッド101の側面に設けられ、排出ロッド101が矢線D0方向に回転することにより回転する。そして、図14(a)に示すように、平板Wの矢線D0方向に向いた面W0は、封筒V(ここでは、封筒Vの閉封部V2)の後端V0に接触し、封筒Vを排出ロッド101の回転方向に沿って押す。このとき、封筒Vに働く慣性により、面W0に対する封筒Vの傾きによっては、図14(b)に示すように、封筒Vの後端V0が矢線Db方向、すなわち、面W0に沿って排出ロッド101から離れる方向にずれることがある。この場合、図14(c)に示すように、平板Wの延伸方向の長さを超えて後端V0が移動すると平板Wの面W0が後端V0から外れ、突起部は封筒Vを排出しなくなることがある。
【0066】
一方、図15は、鉤部が設けられている突起部の作用について説明する図である。上述した第1突起部111と第3突起部113とは、鉤部が設けられている突起部である。これらの突起部は、排出ロッド101の軸Oから軸方向(Z軸方向)に垂直な放射状に延びる平板Wと、鉤部Wpとを有する。鉤部Wpは、平板Wの先端側から、排出ロッド101の回転方向側(矢線D0方向の前方側)に、平板Wと垂直に突出した部材である。すなわち、この鍵部Wpを有する突起部は、回転方向の側に突出した部位を有する突起部の一例である。図15(a)に示すように、突起部の平板Wが、矢線D0方向に向いた面W0によって封筒Vの後端V0に接触し、封筒Vを排出ロッド101の回転方向に沿って押すと、後端V0が矢線Db方向にずれる。しかし、図15(b)に示すように、ずれていった後端V0は、鉤部Wpにぶつかるので、それ以上、排出ロッド101から離れる方向に移動しなくなる。そして、さらに排出ロッド101が矢線D0方向に回転することにより、突起部の平板Wは、封筒Vを押すため、図15(c)に示すように、封筒Vは、矢線Df方向に排出される。
【0067】
以上、説明したように、第2実施形態において、排出部100は、排出ロッド101において軸方向の異なる位置に設けられた2つの排出ロール102(102a,102b)の(軸方向の)間隔が最も広くなった位置よりも、その回転方向における後方の半周以内の領域に、排出ロッド101から突起している突起部を備えるので、媒体が封筒のように、「排出方向の後ろ側であるほど幅が狭くなる形状を含む後端を有する」ために2つの排出ロール102のいずれにも接触しなくなる場合があっても、媒体は、この突起部によって後端を排出方向に押されて排出される。
【0068】
また、鉤部が設けられている突起部は、封筒Vなどの「排出方向の後ろ側であるほど幅が狭くなる形状を含む後端を有する媒体」を排出する際に、鉤部によりその後端を把持して押し出すので、媒体の排出性能は向上する。
【0069】
また、排出ロッド101の軸Oから突起部の先端までの距離は、排出ロール102の半径よりも短いので、画像の形成された面(以下、画像形成面という)を排出ロール102の側に向けて媒体が排出されるように構成されている場合であっても、排出ロール102によって媒体が排出されているときに、突起部が媒体の画像形成面に触れることが無い。したがって、突起部が画像を乱す可能性は抑制される。
【0070】
3.第3実施形態
図16は、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置1の排出部100を示す斜視図である。第3実施形態に係る排出部100は、第2実施形態に係る排出部100と共通する構成を備え、さらに第5突起部115を備える点が異なる。以下、第3実施形態に係る画像形成装置1について、第2実施形態に係る画像形成装置1と相違する点を中心に説明する。
【0071】
図17は、第3実施形態に係る排出部100とその周辺の構成を示す図である。図17には、これらの構成をX(+)方向に沿って見た様子が示されている。排出ロール102は2つあり、図17(a)に示す排出ロール102bの他、Z(−)方向にも排出ロール102aが設けられているが図示を省略する。排出ロッド101のうち、2つの排出ロール102に挟まれた領域でない領域Rには、第5突起部115が設けられている。この第5突起部115は、排出ロッド101の回転に伴って回転し、コルゲーションが付与され、排出ロール102によって排出された媒体Pの後端を弾く部材である。第5突起部115により軽い衝撃が与えられることで、媒体Pに付与されたコルゲーションは解除される。
【0072】
図17(a)には、排出ロール102bが回転し、補助ロール202とともに媒体Pを挟む箇所に上述した点P1が位置したときの様子が示されている。この排出ロール102bと図示しないもう一つの排出ロール102aとは、Z軸に垂直な面で互いに面対称の形状をしている。点P1は、排出ロール102aのZ(+)側の面から排出ロール102bのZ(−)側の面までを結ぶ線分の長さが最長となるときの、その線分の端点である。したがって、点P1は、2つの排出ロール102が媒体Pの後端にそれぞれ接する各部分の軸方向の間隔が最も広くなった位置の一つである。この点P1を起点として排出ロッド101の軸方向に沿って領域Rの側へ延ばした直線が排出ロール102の端面と交差する点が点P3である。
【0073】
一方、図17(b)には、図17(a)で示した排出ロール102bが矢印D0方向に90度回転したときの様子が示されている。このとき媒体Pが排出ロール102bに接する位置は最もZ(−)側に移動した点P5である。
【0074】
図17(a)に示すように、第5突起部115は、排出ロッド101の上であって、点P1→点P3の延長線上ではない位置に設けられている。すなわち、第5突起部115は、回転軸のうち、2つのロール部材に挟まれていない領域であって、それら2つのロール部材の間隔が最も広くなった位置と軸方向に並ばない領域から突起している突起部の一例である。ここで、仮に、排出ロッド101の上であってこの点P1→点P3の延長線上に突起片115xが設けられていると仮定する。この突起片115xは、第5突起部115と同じ大きさであり、排出ロッド101の軸方向において同じ位置に設けられているが、排出ロッド101の回転方向において異なる位置に設けられているものである。
【0075】
図17(a)に示す状態において、コルゲーションロール203は点PCで媒体Pを排出ロッド101に近づく方向へ押しており、排出ロール102は点P3で媒体Pを排出ロッド101から遠ざかる方向へ押している。一方、図17(b)に示す状態において、コルゲーションロール203は上記と同じ点PCで媒体Pを排出ロッド101に近づく方向へ押しており、排出ロール102は点P3よりもZ(−)側に移動した点P5で媒体Pを排出ロッド101から遠ざかる方向へ押している。点P3から点PCまでの軸方向の距離は距離LNであり、点P5から点PCまでの軸方向の距離は距離LNよりも長い距離LWであるから、点P5と点PCとを結ぶ線が軸方向となす角は、点P3と点PCとを結ぶ線が軸方向となす角よりも小さくなる。
【0076】
図17(a)に示すように、点P3から点PCを通って延びる直線は排出ロッド101と点P4で交差する。一方、図17(b)に示すように点P5から点PCを通って延びる直線は排出ロッド101と、点P4よりもZ(+)側に位置する点P6で交差する。
点P3と点P4とを結ぶ線、および点P5と点P6とを結ぶ線は媒体Pが通過する位置である。したがって、上述した位置に設けられた突起片115xは、図17(a)に示すように媒体Pの通過の妨げとなるが、第5突起部115は媒体Pの通過の妨げとならない。そこで、排出部100は、突起片115xの位置に第5突起部115を設けない。
【0077】
4.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0078】
4−1.画像形成部
上述した実施形態において、画像形成部500は、現像材を用いた電子写真プロセスにより、媒体の表面に画像を形成していたが、他のプロセスにより媒体に画像を形成してもよい。例えば、インクジェット方式などにより画像を形成してもよい。
【0079】
4−2.突起部
(1)上述した第2実施形態において、排出ロッド101から延びる突起部は、排出ロール102a,102bに挟まれた排出ロッド101の領域には、排出ロッド101の回転方向における異なる4種類の位置ごとに、第1突起部111、第2突起部112、第3突起部113、および第4突起部114の4種類がそれぞれ設けられていたが、突起部の種類は3種類以下であっても5種類以上であってもよい。
【0080】
(2)また、4種類の突起部のうち、第1突起部111と第3突起部113は鉤部が設けられている突起部であったが、鉤部は、突起部のうち少なくともいずれか1種類に設けられていればよい。
【0081】
(3)複数種類の突起部のうち、排出ロッド101の軸を中心として回転対称の位置に設けられた2種類の突起部にのみ、鉤部を設けてもよい。これにより、樹脂を金型に射出して排出ロッド101と各突起部とを一体成型する場合に、3種類以上の突起部に鉤部を設けた場合に比べて、金型から排出ロッド101を抜き出しやすくすることができる。なお、排出ロッド101と突起部とは一体成型によって製造されなくてもよく、例えば、各突起部を、成型された排出ロッド101の側面に接着して製造してもよい。
【0082】
(4)各突起部の軸方向(Z軸方向)の配置は、同じであってもよい。要するに、各突起部の軸方向の間隔は、排出ロールの間隔よりも短ければよい。
【0083】
(5)なお、上述した実施形態において、各突起部は、軸から離れる方向ごとに組に分けられており、各組は、第4突起部114を除き、軸の方向に離れた2つの突起部からなる。そして、これらの組のうち、2つの突起部からなるものは、排出ロッド101の回転方向における後方に向かうほど、その排出ロッド101に設けられた突起部の間隔が短く(L1→L2→L3)なるように、配置されている。この構成により、排出部100は、以下の効果を奏する。
【0084】
すなわち、排出ロッド101が回転するに従って、媒体の後端は、まず、L1の間隔で配置された第1突起部111に接触し、積載部300側に押し出される。媒体の後端は、排出方向の後ろ側ほど幅が狭くなっているので、積載部300側に押し出された結果、排出ロッド101に最も近接する部分の幅はL1よりも短くなっている。ここで、上述した順序で各突起部が配置されているので、第1突起部111に続いて、L1よりも短いL2の間隔で配置された第2突起部112が媒体の後端に接する。これにより、幅がL1よりも短くなっていても、第2突起部112は媒体の後端を排出方向に押し出すことができる。
【0085】
同様に、第2突起部112に続いて、L2よりも短いL3の間隔で配置された第3突起部113が媒体の後端に接し、第3突起部113に続いて、軸方向に1つだけ設けられた第4突起部114が媒体の後端に接する。このように、排出ロッド101が回転するに従って、媒体の後端を押し出す突起部の間隔が狭くなっているので、排出されるほど幅が狭くなる後端を突起部が順次押し出すことができる。
【0086】
(6)軸の方向に離れた2つの突起部からなる組はなくてもよい。要するに、突起部は、排出ロール102a,102bに挟まれた排出ロッド101の領域において複数設けられ、軸方向の異なる少なくとも2つの位置から、それぞれ突起していればよい。軸方向の異なる2つ以上の位置から突起した突起部が、それぞれ媒体Pの後端を押す構成であるため、本願発明の排出機構は、いずれか一方の突起部との接触点を中心として媒体Pが回転運動することを抑制することができる。
【0087】
(7)上述した実施形態において、鉤部は、突起部の先端から排出ロッド101の回転方向に突出した部分であったが、突起部の先端以外の部分から突出していてもよい。また、鉤部と突起部の延びる方向との成す角は直角のみならず、鈍角であっても鋭角であってもよい。また、突起部の延びる方向は、排出ロッド101の軸Oを通っていなくてもよく、曲がっていてもよい。
【0088】
図18は、鉤部を有する突起部の変形例を示した図である。上述した実施形態において、鉤部を有する突起部は、図18(a)に示す形状であった。すなわち、上述した実施形態の突起部は、排出ロッド101の軸O(図示せず)を通る方向に延びた平板Wの先端側から、排出ロッド101の回転方向側(矢線D0方向の前方側)に鉤部Wpが突出した形状を有していた。しかし、図18(b)に示すように、突起部は、平板Wが延びる方向における中間の位置(つまり、先端でも根元でも無い位置)から、排出ロッド101の回転方向側に突出した鉤部Wpを有していてもよい。
【0089】
また、鉤部Wpと平板Wとの成す角(鉤部Wpの面のうち、排出ロッド101の軸O側の面と、平板Wの面のうち、排出ロッド101の回転方向に向いた面W0との成す角)θは、図18(d)に示すように鋭角であるほうが好ましいが、平板Wと媒体Pとの摩擦力が比較的大きければ、図18(c)に示すように鈍角であってもよい。要するに、突起部は、平板Wの面のうち、排出ロッド101の回転方向側に向いた面W0によって排出方向に押された媒体Pの後端が、平板Wの延在方向に抜けないように、その後端を鉤部Wpが押さえる構成を有していればよい。
【0090】
また、図18(e)に示すように、平板Wの延在方向に引いた線は、排出ロッド101の軸O(図示せず)を通らなくてもよい。そして、図18(f)に示すように、突起部は、平板Wに代えて、曲板WCを備えていてもよい。この場合、曲板WCは、排出ロッド101の回転方向側に凹状の面W0を有しており、この面W0と曲板WCの先端側にある鉤部Wpとによって、媒体Pの後端を保持したまま上記の回転方向に押せばよい。
【0091】
4−3.排出ロッド
上述した実施形態において、排出ロール102と各突起部とは、共通する排出ロッド101に設けられていたが、これらはZ軸方向に沿った軸である軸Oを中心に回転可能に構成されていればよい。したがって、排出ロール102と各突起部とは異なるロッドに設けられていてもよい。例えば、排出ロール102と各突起部とが別々のロッドに設けられている場合において、排出部100は、これら各ロッドの外周部に設けられた歯車の両方に係り合う伝達機構を備え、排出ロール102と各突起部とが共通する軸Oを中心に回転させられるように構成されていてもよい。この場合、排出部100は、伝達機構によって、排出ロール102と各突起部との回転速度が異なるように構成されていてもよい。
【0092】
4−4.排出ロール
(1)上述した実施形態において、排出ロール102は、側面の或る方向から見ると端面がひらがなの「く」の字状であり、また、その方向から90度ずれた方向から見ると端面が扇状であったが、この形状に限られない。例えば、排出ロール102は、側面の或る方向から見ると端面が、例えば正弦波状に曲がっていてもよい。つまり、排出ロール102の端面は、全て曲面であってもよい。
【0093】
(2)また、上述した実施形態において、排出ロール102は、軸に沿って半分に分割した2つの斜円柱を分割面に関して互いに面対称になるように分割面を貼り合わせた形状をしていたが、斜円柱の形状をしていてもよい。要するに、排出ロール102は、排出ロッド101を中心とし、排出ロッド101に対して傾斜した部分を端面に含む円柱の形状を有していればよい。
【0094】
(3)上述した実施形態において、排出ロール102aと排出ロール102bとは、排出ロッド101において、軸方向の異なる位置にそれぞれ設けられていたが、排出ロール102は、排出ロッド101に1つだけ設けられていてもよく、また、軸方向の異なる位置に3つ以上設けられていてもよい。排出ロール102が1つである場合であっても、媒体Pにコルゲーションが付与されていて凹状部位を有し、排出ロール102が回転すると、媒体Pと接する点が媒体Pの凹状部位に近づくように軸方向に変位するのであれば、排出ロール102は媒体Pの後端を排出方向に押すこととなるので、媒体Pを排出する。
【0095】
(4)上述した実施形態において、排出ロール102の側面は、軸方向の長さがどの位置であっても変わらない形状であったが、この形状以外であってもよい。すなわち、排出ロール102の側面は、軸方向の長さが回転方向のいずれかの2以上の位置で異なる形状であってもいい。この場合であっても、排出ロール102の周面は、これが回転させられたときに、媒体に接する部分が回転軸の軸方向および回転方向に沿って連続して変位するものであれば、この部分の変位がなく、かつ、軸に垂直な断面の形状が円形でないローラ部材に比べて媒体を傷つける可能性は低減される。
【0096】
4−5.補助ロール
上述した実施形態において、補助ロッド201は、排出ロッド101のY(+)方向に定められた距離をあけて、その軸方向が排出ロッド101の軸方向に沿って並ぶように設けられた棒状部材であり、補助ロール202は、補助ロッド201を中心に回転するロールであって、補助ロッド201の排出ロール102a,102bに対向する位置にそれぞれ設けられていたため、補助ロール202は、排出ロール102のY(+)方向に配置されていたが、この方向以外に配置されていてもよい。
【0097】
例えば、補助ロール202は、排出ロール102のY(+)方向の位置からX(+)方向に進んだ位置に設けられていてもよい。矢線D0方向は媒体Pのニップ位置においてX(−)方向を成分として有するので、この補助ロール202の位置は、排出ロール102の重力方向における最上点よりも、その回転方向における上流側である。要するに、補助ロッド201は、媒体Pがニップ位置を通り過ぎたときに排出ロール102の上に載っているように、排出ロール102との配置を決められていればよい。
【符号の説明】
【0098】
1…画像形成装置、100…排出部、101…排出ロッド、102(102a,102b)…排出ロール、111(111a,111b)…第1突起部、112(112a,112b)…第2突起部、113(113a,113b)…第3突起部、114…第4突起部、115…第5突起部、115x…突起片、200…補助部、201…補助ロッド、202…補助ロール、203…コルゲーションロール、300…積載部、301…底面部、302…側面部、303…稜、400…定着部、500…画像形成部、600…供給部、700…搬送部、800…筐体、CC…凹状部位、CV…凸状部位、E…縁部、EA…先端、EP…後端、O…軸、P…媒体、P1…点、P2…点、P3…点、P4…点、P5…点、P6…点、PA…点、PC…点、PN…点、R…領域、SL…斜面、V…封筒、V0…後端、V1…封筒本体、V2…閉封片、V20…領域、V21…領域、V22…領域、V23…領域、V24…領域、V3…辺、W…平板、W0…面、WC…曲板、Wp…鉤部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を中心とする周面を有し、当該回転軸とともに回転して当該周面に接する媒体を排出するロール部材と、
前記媒体のうち前記周面に接しない部分が、前記周面よりも前記回転軸に近い位置を通過するように、当該媒体を変形させる変形手段と
を備え、
前記周面は、前記ロール部材が回転させられたときに、前記媒体に接する部分が前記回転軸の軸方向および回転方向に沿って連続して変位する
ことを特徴とする排出機構。
【請求項2】
前記ロール部材とともに前記媒体を挟むロール体
を備え、
前記ロール体と前記ロール部材とが前記媒体を挟む領域の前記軸方向の長さは、当該ロール部材が回転しても変わらない
ことを特徴とする請求項1に記載の排出機構。
【請求項3】
前記ロール部材は、前記軸方向の異なる位置に2つ設けられ、
当該2つのロール部材は、回転させられるときに前記媒体にそれぞれ接する各部分の前記軸方向の間隔が連続的に変化する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の排出機構。
【請求項4】
前記回転軸のうち、前記2つのロール部材に挟まれ、かつ、前記間隔が最も広くなった位置よりも前記回転方向における後方の半周以内の領域から突起している突起部を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の排出機構。
【請求項5】
前記回転軸のうち、前記2つのロール部材に挟まれていない領域であって、前記間隔が最も広くなった位置と前記軸方向に並ばない領域から突起している突起部を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の排出機構。
【請求項6】
前記回転軸の中心から前記突起部の先端までの距離は、当該中心から前記周面までの距離より短い、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の排出機構。
【請求項7】
前記突起部は、前記回転方向の側に突出した部位を有する
ことを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の排出機構。
【請求項8】
前記ロール部材は、前記回転軸を中心とし、当該回転軸に対して傾斜した部分を端面に含む円柱の形状を有する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の排出機構。
【請求項9】
前記ロール部材は、前記回転軸を中心とする斜円柱の形状を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の排出機構。
【請求項10】
媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像が形成された媒体を排出する請求項1から9のいずれかに記載の排出機構と
を具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−236711(P2012−236711A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108626(P2011−108626)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】