説明

排気ガスタービン過給機用のコンプレッサーケーシング

本発明は、排気ガスタービン過給機用の金型成形されたコンプレッサーケーシングであって、前記排気ガスタービン過給機は過給機軸を備えており、該過給機軸はコンプレッサーホイールとタービンホイールとを互いに機械的に結合している形式のもの、及び該コンプレッサーケーシングの製造方法に関する。回転する構成部分(タービンホイール、コンプレッサーホイール、過給機軸)の回転数を経済的に、確実にかつ正確に測定するために、過給機軸の回転数の測定のためのセンサーは金型成形時にコンプレッサーケーシング内に埋め込まれて、コンプレッサーケーシング内に統合された構成部分として形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスタービン過給機用の金型成形されるコンプレッサーケーシングであって、前記排気ガスタービン過給機は過給機軸を備えており、該過給機軸はコンプレッサーホイールとタービンホイールとを互いに機械的に結合している形式のものに関する。
【0002】
内燃機関によって生ぜしめられる出力は、内燃機関の燃焼のために供給される空気量及び燃料量に依存している。内燃機関の出力を増大するために、供給される空気量(燃焼空気量)及び燃料量を増大する必要がある。このような出力増大は、吸引式機関の場合に行程容積の増大によって、若しくは回転数の増大によって行われる。行程容積の増大は、原理的に寸法の増大、ひいては内燃機関の費用の増大につながり、不都合である。回転数の増大は大型の内燃機関において問題を有し、かつ欠点を伴っていて、技術的な理由から制限されている。
【0003】
内燃機関の出力増大のための多く使用されている技術手段は、過給である。過給は、燃焼空気を排気ガスタービン過給機若しくは、エンジンで機械的に駆動可能な圧縮機によって予め圧縮することを意味している。排気ガスタービン過給機は、流動式圧縮機若しくは羽根車式の圧縮機及びタービンを備えており、圧縮機とタービンとは共有の1つの圧縮機軸若しくはタービン軸に結合されていて同じ回転数で回転されるようになっている。タービンは排気ガスのエネルギーを回転エネルギーに変換して、圧縮機を駆動するようになっている。コンプレッサーとも称される圧縮機は、新鮮な空気を吸い込み、圧縮してエンジンの個々のシリンダー内へ圧送するようになっている。シリンダー内の多量の空気(大きな空気量)に対しては多量の燃料(増大された燃料量)を供給することができ、これによって内燃機関の出力は増大される。燃焼過程を適切に制御することによって、内燃機関の効率を改善することができる。さらに、過給機で過給される内燃機関のトルク推移を極めて適切に規定することができる。製造メーカーの一連のエンジンにおいて、同一の排気ガスタービン過給機の使用によって、内燃機関の構造的な大きな変更なしに内燃機関を最適化することができる。過給式の内燃機関においては一般的に燃料消費率並びに有害エミッションが低くなっている。さらにターボチャージ式のエンジンは出力の同じ吸気式エンジンに比べて騒音発生が少なく、それというのは排気ガスタービン過給機は付加的に消音器として機能するからである。
【0004】
広い回転数領域を有する内燃機関、例えば乗用車用内燃機関にとって、すでに低いエンジン回転数で高い過給圧を必要としている。このためにターボ過給機に過給圧力調整弁、いわゆるウェイストゲートバルブ若しくは排気逃がし弁を設けてある。適切なタービンケーシングを選ぶことによって、すでに低いエンジン回転数で迅速に高い過給圧を形成するようになっている。この場合に過給圧力調整弁は、高い回転数では過給圧を所定の値に制限している。異なる例では、タービン機構の変化可能な可変式のターボ過給機(VTG)を用いるようになっている。このようなターボ過給機においては、過給圧はタービン機構を変化させることによって調節されるようになっている。
【0005】
排気ガス量の増大に際して、回転部分とも称されるタービンホイール、コンプレッサーホイール及び過給機軸から成る構成ユニットの最大の許容回転数は超えられることになる。ターボ過給機の回転部分の最大の許容回転数を不当に上回ると、回転部分は破壊されてしまい、このことは過給機の完全な損傷に匹敵するものである。タービンホイール及びコンプレッサーホイールの直径が著しく小さく、ひいては慣性モーメントが小さく、改善された回転加速度特性を有する最新の小型のターボ過給機においては、許容の最大速度(回転数限界)を過度に上回ってしまうという問題がある。回転数限界を上回ることに起因する破損は、ターボ過給機の全破損の約5%に達している。
【0006】
回転数制限のために過給圧力調整弁を用いてあり、該過給圧力調整弁は周知技術では、形成された過給圧力に依存する信号によって制御されるようになっている。所定の閾値(限界値)が越えられると、過給圧力調整弁は開き、排気ガス質量流の一部分を逃がし、これによってコンプレッサー出力を前記逃がし量に相応する値で減少させるようになっている。タービンホイール及びコンプレッサーホイールの回転数及び過給圧力が減少される。このような調整は比較的緩慢であり、それというのは回転部分の回転数限界が超えられた際の圧力形成は、時間的な遅延を伴って生じるからである。したがって、ターボ過給機の回転数調整は、過給圧力監視装置を用いて特に動的な領域では、つまり負荷変動に際しては早期に過給圧力を減少させることによって行われるようになっており、このことは効率損失につながっている。
【0007】
本発明の課題は、排気ガスタービン過給機の回転する構成部分(タービンホイール、コンプレッサーホイール、過給機軸)の回転数を経済的に、確実にかつ正確に検出するようにすることである。
【0008】
前記課題を解決するために本発明に基づく構成では、過給機軸の回転数の測定のためのセンサーを金型成形若しくは注入成形時にコンプレッサーケーシング内に埋め込んであり、これによって過給機軸の回転数の測定のための前記センサーは前記コンプレッサーケーシング自体内に統合された、つまりまとめられた構成部分として形成されている。金型成形若しくは注入成形は射出成形若しくはダイカスト成形を意味する。
【0009】
コンプレッサーケーシングの本発明に基づく前記構成によって利点として、過給機軸の回転数の測定のためのセンサー(回転数センサー)を位置決めするために、コンプレッサーケーシングに貫通孔若しくは切欠きを設ける必要がなくなっている。回転数センサーは、コンプレッサーケーシング内に統合された構成部分を成しており、該構成部分はシール部材及び固定部材なしに形成されるものである。このような手段はターボ過給機の製造を簡単にし、製造コストを減少さ、かつ耐用寿命の改善に寄与するものである。回転数センサーとコンプレッサーケーシングとの間の熱応力は完全に避けられ、それというのは回転数センサーはコンプレッサーケーシングの材料内に完全に埋め込まれているからである。
【0010】
本発明の実施態様では、コンプレッサーケーシングはプラスチックから成っている。今日のプラスチックは、ターボ過給機のコンプレッサー若しくは圧縮機に生じる温度に耐えて、軽量であり、射出成形で経済的に加工されるものである。プラスチックは電気的な絶縁作用を有していて、センサーの構成部分を包囲するために、つまりセンサーの構成部分の被覆に適しているものである。プラスチックはセンサーを外部の影響に対して保護し、かつセンサーを過給機軸に対する所定の位置に確実に保持している。
【0011】
本発明の別の実施態様では、コンプレッサーケーシングはアルミニウムから成っている。アルミニウムも射出成形若しくはダイカスト成形で良好に加工されるものである。この場合に射出成形若しくはダイカスト成形は、金属の圧力鋳造若しくは精密鋳造と同等の方法をも含むものである。アルミニウムのような金属は耐熱性及び形状安定性が著しく高いものである。センサーを絶縁性の材料、例えばプラスチックで包囲すると、センサーは、アルミニウムから成るコンプレッサーケーシング内に問題なく埋め込まれる。
【0012】
コンプレッサーケーシングを、少なくとも第1の部分と第2の部分とから形成してある場合には、材料選択を有利に行うことができ、つまり互いに異なる部分(構成部分)に、それぞれ最適な特性を有する材料が選ばれる。この場合に例えばコンプレッサーケーシングの第1の部分は、アルミニウム若しくはプラスチックから成っていてよい。コンプレッサーケーシングの第2の部分も選択的に、アルミニウム若しくはプラスチックから成っていてよい。特殊な要求に対応して種々の材料を適切に用いることができる。複数構造のコンプレッサーケーシングに、互いに異なる複数の金属質の材料及びプラスチック材料を用いることも考えられる。
【0013】
本発明の有利な実施態様では、センサーはセンサー部材、及び/又は信号処理電子装置、及び/又はマグネットを含んでいる。信号処理電子装置若しくは信号形成電子装置はセンサー部材(センサーエレメント)の未加工の信号を有利に処理でき、それというのは信号形成電子装置はセンサー部材の極めて近くに配置されていて、外部からの電磁による妨害若しくは干渉を受けにくくなっているからである。信号処理電子装置内で、未加工の信号は増幅されかつデジタル信号に変換されるようになっていてよい。センサー内のアナログ・デジタル変換装置は、規格化された信号の直接的な送信を可能にしており、該センサーを統合若しくは集成されて成るコンプレッサーケーシングは、規格に適合された種々の自動車に装備されるものである。センサー内のマグネットは磁場を形成するために用いられており、磁場の変化が測定される。磁場の変化は、磁場の変化のために有利には過給機軸のコンプレッサーケーシング側の端部に形成された構成部材によって生ぜしめられる。
【0014】
本発明の実施態様では、センサー部材はホールセンサー部材(ホールセンサー素子)として形成されている。ホールセンサー部材は、磁場の変化の検出のために極めて良好に適していて、したがって回転数検出のために最適に用いられる。ホールセンサー部材は安価に入手でき、約160℃までの温度で使用可能である。
【0015】
別の実施態様では、センサー部材は磁気抵抗式のセンサー部材(センサー素子)として形成されている。磁気抵抗式のセンサー部材はそれ自体磁場の変化の検出のために適していて、安価に入手されるものである。
【0016】
さらに別の実施態様では、センサー部材は誘導式のセンサー部材として形成されている。誘導式のセンサー部材も磁場の変化の検出のために適している。
【0017】
本発明の有利な実施態様では、センサーは、リードフレームに設けられたセンサー部材、及び/又は信号形成電子装置、及び/又は保護回路、及び/又は雑音防止回路を含んでいるマイクロモジュールとして形成されている。このような構成は極めて経済的であり、それというのはリードフレームは、該リードフレームに形成された電子的な構成部分若しくは電子部品と一緒に射出成形によって直接に埋め込まれるからである。この場合には個別のセンサーケーシングを省略してあり、それというのはコンプレッサーケーシングはセンサーケーシングをも形成しているからである。コンプレッサーケーシングをプラスチックから形成してある場合には、マイクロモジュールは個別の電気絶縁体を不要であり、それというのはセンサーの電気的な絶縁もコンプレッサーケーシングのプラスチック材料によって達成されているからである。該実施態様に基づくセンサーは特に小さい寸法で、コンパクト若しくは頑丈に、かつ安価に製造されるものである。モジュールとして形成されたセンサーは、回転数測定のための別の構成ユニット内に装着されてよく、例えば自動車の車輪回転数の測定、エンジン内のカム軸の回転数の測定、若しくは伝動装置歯車の回転数の測定のために用いられてよいものである。
【0018】
リードフレームによって接続ピンを形成してある場合には、センサーによって生ぜしめられた信号を簡単に取り出すことができる。
【0019】
別の実施態様では、接続ケーブルを設けてあり、該接続ケーブルは一方の端部でセンサーに電気的に接続されていて、かつコンプレッサーケーシングの射出成形時若しくはダイカスト成形時にコンプレッサーケーシング内に部分的に埋め込まれている。コンプレッサーケーシング内に埋め込まれている接続ケーブルは、ターボ過給機の領域の極めて不利なスペース条件に適合されて、センサーの信号を自動車の信号処理電子装置へ供給するようになっていている。
ケーブルに電気的な絶縁のために施されているプラスチック被覆若しくはプラスチック外皮は、コンプレッサーケーシングの射出成形に際してコンプレッサーケーシング内に液密及び気密に埋め込まれている。
【0020】
排気ガスタービン過給機用のコンプレッサーケーシングの成形のための方法においては、過給機軸の回転数の測定のためのセンサーをコンプレッサーケーシングのための金型内に装着し、次いでコンプレッサーケーシングの成形のための材料を前記金型内に射出若しくは注入し、前記センサーを前記射出若しくは注入された材料によって包囲し若しくは被覆し、これによって前記センサーを前記コンプレッサーケーシング自体内に統合された若しくはまとめられた構成部分として形成するようになっている。
【0021】
次に本発明の実施例を図面に示し、説明する。図面において、
図1は排気ガスタービン過給機を示す図であり、
図2は、公知技術の過給機軸の回転数の測定のためのセンサーを備えた排気ガスタービン過給機の断面図であり、
図3は、排気ガスタービン過給機の本発明に基づくコンプレッサーケーシングの実施例の断面図であり、
図4は、排気ガスタービン過給機の本発明に基づくコンプレッサーケーシングの別の実施例の断面図であり、
図5は、マイクロモジュールとして形成されたセンサーの平面図であり、
図6は、コンプレッサーケーシング内に統合された若しくは埋め込まれた接続ケーブルを備えたセンサーを示す図である。
【0022】
図1に示す排気ガスタービン過給機1は、タービン2及びコンプレッサー3を備えている。コンプレッサー3内にコンプレッサーホイール(圧縮機翼車)9を回転可能に支承してあり、コンプレッサーホイールは過給機軸5に結合されている。過給機軸5も回転可能に支承されていて、他方の端部でタービンホイール(タービン翼車)4に結合されている。高温の排気ガスは内燃機関(図示省略)からタービン入口7を介してタービン2内に導入され、これによってタービンホイール4は回転させられる。排気ガス流はタービン2からタービン出口8を経て流出するようになっている。過給機軸5はタービンホイール4とコンプレッサーホイール9とを連結しており、これによってタービン2はコンプレッサー3を駆動するようになっている。コンプレッサー3において空気は空気入口10から吸い込まれて、コンプレッサー3内で圧縮され、かつ空気出口6を介して図示省略の内燃機関に供給されるようになっている。
【0023】
排気ガスタービン過給機の図2に示すコンプレッサー3は、過給機軸5の回転数の測定のための公知技術のセンサー12を備えている。排気ガスタービン過給機の過給機軸5にコンプレッサーホイール9を配置してある。過給機軸5のコンプレッサー側の端部にマグネット5を設けてあり、マグネット(磁石)は、1つの北極Nと1つの南極Sとを有している。過給機軸5の回転はマグネット15の回転を生ぜしめ、したがって北極及び南極によって生ぜしめられる磁場はセンサー12に対する関係を変化させる。公知技術ではセンサー12は、別個の構成部分若しくは独立の構成部分としてコンプレッサーケーシング11の切欠き内に配置されている。このためにシール27を設けてあり、シールはコンプレッサーケーシング11をセンサー12の領域で密閉している。コンプレッサーケーシング11内へのセンサー12の組み付けは比較的に煩雑であり、それというのはコンプレッサーケーシング11は比較的に高い熱負荷を受ける構成部分であり、したがって異なる熱膨張係数はコンプレッサーケーシング11とセンサー12との間に応力を生ぜしめることになるからである。さらに、コンプレッサーケーシング11内へのセンサー12の組み付けは、排気ガスタービン過給機1の製作の際の付加的な1つの作業工程を必要としており、このような作業工程は排気ガスタービン過給機の製作費を高くしている。
【0024】
図3に本発明に基づくコンプレッサーケーシング11の実施例を示してある。排気ガスタービン過給機1のコンプレッサー3は、コンプレッサーケーシング11、過給機軸5、及び過給機軸上に配置されたコンプレッサーホイール9を含んでいる。空気入口10で過給機軸5のコンプレッサー側の端部にマグネット15を配置してある。マグネットの北極N及び南極Sは、過給機軸5の回転に際して過給機軸5と一緒に回転する。これによってセンサー12に対する磁場の変化は、センサー部材13によって検出される。センサー12は実施例ではセンサー部材13及び信号形成電子装置14から成っており、信号形成電子装置14はセンサー部材13と一緒にリードフレーム20に配置されている。このように形成されたセンサー12は、コンプレッサーケーシング11の材料内に完全に埋め込まれている。つまりセンサー12は、後からコンプレッサーケーシング11内に組み立てられ若しくは組み付けられるのではなく、コンプレッサーケーシング11の射出成形若しくはダイカスト成形時にコンプレッサーケーシング11内に埋め込まれており、これによってセンサー12はコンプレッサーケーシング11自体の統合された構成部分若しくは一体の構成部分を成している。コンプレッサーケーシング11は射出成形でプラスチック製の構成部分として製造されてよい。最新のプラスチックは耐熱性を有していて、排気ガスタービン過給機1のコンプレッサーケーシング11の材料として適するようになっている。コンプレッサーケーシング11はさらにアルミニウムから精密にダイカスト成形されてもよい。センサー12をアルミニウム製のコンプレッサーケーシング11内に統合するためには、センサー部材13、信号形成電子装置14及びリードフレーム20を予め電気的に絶縁して、これらの構成部分とアルミニウム製のコンプレッサーケーシング11との電気的な接触を避けるようになっているとよい。
【0025】
図4には、射出成形若しくはダイカスト成形された本発明に基づくコンプレッサーケーシング11の別の実施例を示してある。この場合にはコンプレッサーケーシング11は二部構造で形成されている。コンプレッサーケーシング11の第1の部分17は、過給機軸5の回転数の測定のためのセンサー12を、統合若しくは集合された構成部分、若しくは一体の構成部分として受容している。センサー12はセンサー部材13、信号形成電子装置14及びマグネット15を含んでいる。この場合にも信号形成電子装置14及びセンサー部材13はリードフレーム20に配置されている。さらにマグネット15もリードフレーム20に配置されていてよい。リードフレーム20はさらに接続ピン23を形成しており、接続ピンはコンプレッサーケーシング11から突出しており、この場合に接続ピン23の領域には、接続ピン23と図示省略の別の電子装置との接続のためにコネクタケーシング26を形成してある。コンプレッサーケーシング11の二部構造の構成においては利点として、コンプレッサーケーシング11の第1の構成部分17にとっても、コンプレッサーケーシング11の第2の構成部分18にとっても、適切な材料を選ぶことができる。考えられる実施例では、コンプレッサーケーシング11の第1の構成部分17はプラスチックから形成されているのに対して、コンプレッサーケーシング11の第2の構成部分18はアルミニウムから形成されている。センサー12は、コンプレッサーケーシング11に統合された若しくは集合された構成部分を成している。つまりコンプレッサーケーシング11とセンサー12とは1つにまとめられている。
【0026】
図4に示す実施例ではセンサー12内にマグネット15を配置してある。マグネット15の北極及び南極によって形成された磁場は、センサー13を通って、磁場の変化のための部材16に達するようになっている。磁場を変化させるための部材16は、実施例では透磁性の部材として形成されており、透磁性の部材は過給機軸5と一緒に回転して、所定の1つの位置では磁場を集中させ、別の位置では磁場を分散させるように形成されている。磁場のこのような変化は、過給機軸5の回転数に比例して行われ、それというのは部材16は過給機軸5と一緒に回転するようになっているからである。磁場の変化はセンサー部材13によって検出され、センサー部材は回転数に比例した信号を信号形成電子装置14に送るようになっている。
【0027】
図5には、マイクロモジュール19として形成されたセンサー12を示してある。センサー12はリードフレーム20に配置されており、この場合にリードフレーム20はセンサー部材13、保護回路21、雑音防止回路22及び信号形成電子装置14を装備している。リードフレーム20は打ち抜き薄板部分から形成されており、打ち抜き薄板部分は前記構成部分を機械的に保持していて、かつ該構成部分を互いに電気的に接続している。さらにリードフレーム20は接続ピン23も形成している。マイクロモジュール19全体は、導電結合に対する保護のためにコンプレッサーケーシング11のアルミニウムダイカスト部分若しくは絶縁体で射出成形によって被覆されていてよい。絶縁体としては例えば射出成形可能なポリマーを用いることができる。被覆されたマイクロモジュール19は、コンプレッサーケーシング11の成形のための金型内に装着される。マイクロモジュール19として形成されたセンサー12は、コンプレッサーケーシング11の金型成形時に直接にコンプレッサーケーシング11内に、統合された若しくは集合された構成部分として埋め込まれてまとめられている。
【0028】
図6にも、過給機軸5及びコンプレッサーホイール9を備えたコンプレッサー3を示してある。この場合には過給機軸5にマグネット15を形成してあり、マグネットは過給機軸5の回転数に対応して変化した磁場をセンサー部材13内に形成するようになっている。センサー12はセンサー部材13、雑音防止回路22及び信号形成電子装置14でもってリードフレーム20上に形成されている。この場合にはコンプレッサーケーシング11内に接続ケーブル24を統合してあり、該接続ケーブルはセンサー12に電気的に接続されていて、該センサーの信号を図示省略の自動車電子装置に供給するようになっている。接続ケーブル24は一方の端部でコンプレッサーケーシング11内に埋め込まれている。さらに引っ張り負荷軽減装置25を設けてあり、該引っ張り負荷軽減装置は折れ曲がり防止装置としても形成されていてよい。コンプレッサーケーシング内に統合された、つまり埋め込まれた接続ケーブル24の他方の端部にはコネクタケーシング26を設けてある。
【0029】
タービン過給機は一般的に組み付けスペースの狭められた条件下で自動車内に設けられるので、接続ケーブル24を備えた構成は極めて有利であり、それというのはセンサー12からの信号は問題なく接続ケーブルによって自動車電子装置に供給されるからである。接続ケーブル24は状況に応じて適切に敷設されるものである。センサー部材13によって形成された未加工の信号は信号形成電子装置14によってすでに増幅して送られ、必要に応じてデジタル式に評価可能な信号に変換されて、外部からの妨害若しくは外乱の影響を受けないようにされていてよい。信号形成電子装置14は、センサー部材からの未加工の信号、つまり生の信号を、該信号の質を損なうことなしに車両室内に送るようになっている。このために図6に示してあるように、有利には接続ケーブル24を信号形成電子装置14と組み合わせて用いてある。
【0030】
センサー12をコンプレッサーケーシング11内に統合してあることによって、つまりセンサー12とコンプレッサーケーシング11とを集成して1つにまとめて、すなわち一体にしてあることによって、構成及び製造技術上の顕著な利点並びにセンサー12の耐用年数に関する利点が得られる。金型成形に際して埋め込まれたセンサー12は、コンプレッサーケーシング11の材料によって、例えば跳ねかけ水若しくは塩害などの環境の影響に対して完全に保護されている。センサー12は最適に密閉されており、コンプレッサーケーシング11とセンサー12との間のシール、嵌合部分、ねじ止め箇所及び固定箇所は完全に省略されている。マイクロモジュール19は、回転数センサーとして過給機内にしか用いられないのではなく、他の機器にも経済的に、つまり安価に用いられ得る構成ユニットを成しており、それというのは該構成ユニットは極めて高い個数で製造されるものであるからである。さらに、マイクロモジュールとして形成されたセンサーは所要スペースを減少させていて、最新の自動車のエンジン室の空間的に狭い領域に用いられるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】排気ガスタービン過給機を示す図
【図2】公知技術の過給機軸の回転数の測定のためのセンサーを備えた排気ガスタービン過給機の断面図
【図3】本発明に基づくコンプレッサーケーシングの実施例の断面図
【図4】本発明に基づくコンプレッサーケーシングの別の実施例の断面図
【図5】マイクロモジュールとして形成されたセンサーの平面図
【図6】本発明に基づくコンプレッサーケーシング内に統合された若しくは埋め込まれた接続ケーブルを備えたセンサーを示す図
【符号の説明】
【0032】
1 排気ガスタービン過給機、 2 タービン、 3 コンプレッサー、 4 タービンホイール、 5 過給機軸、 6 空気出口、 7 タービン入口、 8 タービン出口、 9 コンプレッサーホイール、 10 空気入口、 11 コンプレッサーケーシング、 12 センサー、 13 センサー部材、 14 信号形成電子装置、 15 マグネット、 16 部材、 17,18 構成部分、 20 リードフレーム、 21 保護回路、 22 雑音防止回路、 23 接続ピン、 26 コネクタケーシング、 27 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスタービン過給機(1)用の金型成形されたコンプレッサーケーシング(11)であって、前記排気ガスタービン過給機は過給機軸(5)を備えており、該過給機軸はコンプレッサーホイール(9)とタービンホイール(4)とを互いに機械的に結合している形式のものにおいて、過給機軸(5)の回転数の測定のためのセンサー(12)を金型成形時にコンプレッサーケーシング(11)内に埋め込んであり、これによって前記センサー(12)は前記コンプレッサーケーシング(11)内に統合された構成部分として形成されていることを特徴とする、排気ガスタービン過給機用のコンプレッサーケーシング。
【請求項2】
コンプレッサーケーシング(11)はプラスチックから成っている請求項1に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項3】
コンプレッサーケーシング(11)はアルミニウムから成っている請求項1に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項4】
コンプレッサーケーシング(11)は、少なくとも第1の部分(17)及び第2の部分(18)から成っている請求項1に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項5】
コンプレッサーケーシング(11)の第1の部分(17)は、アルミニウム若しくはプラスチックから成っている請求項4に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項6】
コンプレッサーケーシング(11)の第2の部分(18)は、アルミニウム若しくはプラスチックから成っている請求項4に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項7】
センサー(12)はセンサー部材(13)、信号処理電子装置(14)及びマグネット(15)のうちの少なくともいずれか1つを含んでいる請求項1に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項8】
センサー部材(13)はホールセンサー部材として形成されている請求項7に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項9】
センサー部材(13)は磁気抵抗式のセンサー部材として形成されている請求項7に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項10】
センサー部材(13)は誘導式のセンサー部材として形成されている請求項7に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項11】
センサー(12)は、リードフレーム(20)に配置されたセンサー部材(13)、信号形成電子装置14、保護回路(21)及び雑音防止回路(22)のうちの少なくともいずれか1つを含んでいるマイクロモジュール(19)として形成されている請求項1から10のいずれか1項に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項12】
リードフレーム(20)は接続ピン(23)をも形成している請求項11に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項13】
接続ケーブル(24)を設けてあり、該接続ケーブルは一方の端部でセンサー(12)に接続されていて、かつコンプレッサーケーシングの金型成形時にコンプレッサーケーシング内に部分的に埋め込まれている請求項1から12のいずれか1項に記載のコンプレッサーケーシング。
【請求項14】
排気ガスタービン過給機(1)用のコンプレッサーケーシング(11)の成形のための方法であって、前記排気ガスタービン過給機は過給機軸(5)を備えており、該過給機軸はコンプレッサーホイール(9)とタービンホイール(4)とを互いに機械的に結合しており、この場合に過給機軸(5)の回転数の測定のためのセンサー(12)をコンプレッサーケーシング(11)のための金型内に装着し、次いでコンプレッサーケーシング(11)の成形のための材料を前記金型内に注入し、前記センサー(12)を前記注入された材料によって包囲し、これによって前記センサー(12)を前記コンプレッサーケーシング(11)自体内に統合された構成部分として形成することを特徴とする、コンプレッサーケーシングの成形のための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−536038(P2008−536038A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502427(P2008−502427)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050278
【国際公開番号】WO2007/085535
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(507229032)ジーメンス ヴィディーオー オートモーティヴ アクチエンゲゼルシャフト (46)
【氏名又は名称原語表記】Siemens VDO Automotive AG
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】