説明

排気ガス浄化装置

【課題】複数の排気ガス用フィルターを有する大型排気ガス浄化装置でありながら、コスト増を回避しつつ効率的に複数の排気ガス用フィルターを交換可能な排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】一端に排気ガスの流入開口20を有し、他端に拡径流出開口部22を有する上流側半割部16と、一端に排気ガスの流出開口32を有し、他端に拡径流入開口部24を有する下流側半割部18とよりに構成された2分割ケーシング12を有し、該下流側半割部18は、複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターを有し、前記上流側および前記下流側半割部18同士は、常時組み付けられ、前記拡径流出開口部22と前記拡径流入開口部24とが密封形態で突き合わせられる排気ガス浄化可能位置と、前記拡径流入開口部24が露出される排気ガス用フィルター交換可能位置との間で、前記下流側半割部18あるいは前記上流側半割部16に対して揺動可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置に関し、より詳細には、複数の排気ガス用フィルターを有する大型排気ガス浄化装置でありながら、コスト増を回避しつつ効率的に複数の排気ガス用フィルターを交換可能な排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、環境汚染防止の観点から、エンジン、特にディーゼルエンジンのNOX等排気ガスに対して、排気ガス浄化フィルターが採用されている。
排気ガス浄化フィルターは、たとえば、セラミックあるいはステンレス製であり、カートリッジ式とすることにより、車両において、エンジンの排気管の端部に直接装着されている。これにより、車両の走行中に、沿道の環境汚染を有効に防止することが可能である。このような排気ガス浄化フィルターは、特許文献1ないし特許文献3に開示されている。
【0003】
しかしながら、たとえば、屋内あるいは室内に運び込んだ車両を長時間アイドリングさせる自動車整備工場、自動車試験場、ショールーム、あるいは展示場においては、屋内の環境汚染を防止する観点から、屋内あるいは室内に排気ガス浄化フィルターを設置し、運び込まれる車両ごとに、たとえばダクトを介して排気ガス浄化フィルターに接続する必要が生じる。
このような場合、排気ガス浄化フィルターのフィルター交換期間を長期化する観点、あるいは大排気量の車両に対応する観点から、排気ガス浄化フィルターの大型化が求められるが、このために、特注の排気ガス浄化フィルターを準備するとすれば、コスト増となる。
この点、既存の車両用の排気ガスフィルターをそのまま利用して、金属ケーシング内に複数基を並列に設置することにより、特注品の大型排気ガス浄化フィルターを準備せずに、対処することは可能である。
【0004】
しかしながら、既存の車両用の排気ガスフィルターを利用して、金属ケーシング内に複数の車両用の排気ガスフィルターを収納することにより、大型の排気ガス浄化装置を構成するとすれば、以下のような技術的問題が引き起こされる。
すなわち、排気ガスフィルターは、微粒子の捕捉に伴う目詰まりにより定期的に交換する必要があるところ、複数基が並列配置される車両用の排気ガスフィルターを交換するのが、煩雑で時間を要する点である。
【0005】
より詳細には、金属ケーシング内の複数基の車両用の排気ガスフィルターを交換するには、金属ケーシング内から車両用の排気ガスフィルターを1つずつ取り出す必要があり、金属ケーシングの分解工程、複数基の車両用の排気ガスフィルターそれぞれの交換工程、および金属ケーシングの再組み立て工程が必要となり、いずれの工程も人手による作業となるが、複数基の車両用の排気ガスフィルターを収納する金属ケーシングとなると、大型でその重量も重く、効率的な作業は困難である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−295226号公報
【特許文献2】特開2002−309923号公報
【特許文献3】特開平11−182230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、複数の排気ガス用フィルターを有する大型排気ガス浄化装置でありながら、コスト増を回避しつつ効率的に複数の排気ガス用フィルターを交換可能な排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明の排気ガス浄化装置は、
一端に排気ガスの流入開口を有し、他端に拡径流出開口部を有する上流側半割部と、一端に排気ガスの流出開口を有し、他端に拡径流入開口部を有する下流側半割部とを有し、該拡径流出開口部と該拡径流入開口部とを密封形態で突き合わせることにより、排気ガスの流れ方向が長手方向に沿うように構成された2分割ケーシングを有し、
該下流側半割部は、それぞれ前記拡径流入開口部から長手方向に並列に収納された複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターを有し、
前記上流側および前記下流側半割部同士は、常時組み付けられ、前記上流側半割部あるいは前記下流側半割部は、前記拡径流出開口部と前記拡径流入開口部とが密封形態で突き合わせられる排気ガス浄化可能位置と、前記拡径流入開口部が露出される排気ガス用フィルター交換可能位置との間で、前記下流側半割部あるいは前記上流側半割部に対して揺動可能になっている、構成としている。
【0009】
以上の構成を有する排気ガス浄化装置によれば、排気ガスは、2分割ケーシングの長手方向に沿って、流入開口より上流側半割部内に流入し、拡径流出開口部から流出し、拡径流入開口部を通じて下流側半割部に流入し、並列配置された複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターにより排気ガスが浄化され、流出開口より流出する。
複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターを交換する場合、互いに常時組み付け関係にある上流側半割部あるいは下流側半割部を、拡径流出開口部と拡径流入開口部とが密封形態で突き合わせられる排気ガス浄化可能位置から、拡径流入開口部が露出される排気ガス用フィルター交換可能位置まで揺動することにより、露出された拡径流入開口部から複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターを取り出して、新しい排気ガス用フィルターに交換し、再び排気ガス用フィルター交換可能位置から排気ガス浄化可能位置まで逆方向に揺動することにより、たとえば、上流側および下流側半割部同士の組み付けを解除する必要なしに、複数の排気ガス用フィルターを有する大型排気ガス浄化装置でありながら、既存の排気ガス用フィルターを複数利用してコスト増を回避しつつ効率的に複数の排気ガス用フィルターを交換可能である。
【0010】
また、前記2分割ケーシングの下部外方に、前記2分割ケーシングの長手方向に延びるヒンジ軸が前記下流側半割部に固定される一方、前記上流側半割部には、該ヒンジ軸に回動可能に嵌合する腕部が固定され、それにより、前記上流側半割部は、該ヒンジ軸を中心に、前記拡径流出開口部と前記拡径流入開口部とが密封形態で突き合わせられる排気ガス浄化可能位置と、前記拡径流入開口部が露出される排気ガス用フィルター交換可能位置との間で揺動可能になっているのが好ましい。
さらに、前記拡径流出開口部および前記拡径流入開口部はいずれも、前記2分割ケーシングの長手方向に対して直交するように設けられ、
前記2分割ケーシングは、その長手方向が水平向きに設置され、
前記上流側半割部の前記拡径流出開口部は、前記拡径流出開口部と前記拡径流入開口部との突き合わせ鉛直平面内で、前記排気ガス浄化可能位置と前記排気ガス用フィルター交換可能位置との間で揺動可能になっているのがよい。
【0011】
さらにまた、前記排気ガス用フィルター交換可能位置と前記排気ガス浄化可能位置との間の揺動角度範囲が、180°以下となるように、前記ヒンジ軸を設けるのがよい。
さらに、前記2分割ケーシングは、回転対称構造であり、
前記下流側半割部は、さらに、前記拡径流入開口部の周縁部に設けられたヒンジ部を有し
該ヒンジ部は、ボルトの一端に固定され、かつ長手方向と交差する方向に延び、
前記上流側半割部は、前記拡径流出開口部の周縁部に設けられた、ボルトの他端を受け入れ可能に外方に開放する凹部を有するボルト受けブラケット部を有し、
それにより、ボルトは、他端が前記凹部に受け入れられ、ナットの締結により前記上流側半割部と前記下流側半割部とを固定する固定位置と、他端が前記凹部から係合解除され、ナットを弛めることにより前記上流側半割部と前記下流側半割部とが固定解除される固定解除位置との間で、前記ヒンジ部を中心に回動可能とされるのが好ましい。
【0012】
さらにまた、前記上流側半割部の外周面には、複数の把手が、互いに周方向に間隔を隔てて、それぞれ長手方向に延びるように設けられるのでもよい。
加えて、前記下流側半割部は、一端が前記拡径流入開口部を構成する円筒胴部と、該円筒胴部と一体であって、最縮径部が前記流出開口を構成する截頭円錐部とを有し、該円筒胴部と該截頭円錐部との間には、仕切円板が設けられ、該仕切円板には、複数の開口が設けられ、それぞれの該開口の周縁から前記拡径流入開口部に向かって長手方向に突出する円筒部が複数設けられ、それぞれの円筒部の内部に、対応するカートリッジ式排気ガス用フィルターが嵌め込まれるのが好ましい。
【0013】
さらに、前記排気ガス用フィルター交換可能位置において、前記上流側半割部が着座した状態で前記下流側半割部の前記拡径流入開口部全体が露出するように、回転中心位置を決定するのがよい。
さらにまた、前記拡径流出開口部と前記拡径流入開口部とを密封形態で突き合わせ可能なように環状パッキンがさらに設けられ、該環状パッキンは、前記下流側半割部の前記拡大流入開口の周縁部に設けた周溝に嵌め込まれるのでもよい。
【0014】
加えて、パンチング整流板が、前記排気ガス流入口から流入した排気ガスを前記複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターそれぞれに差し向けるように、前記上流側半割部の前記中心部にさらに設けられるのでもよい。
さらに、前記複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターは、1つが、前記下流側半割部の中心部に設けられ、他は、それを中心に周方向に等角度間隔を隔てて設けられるのでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る排気ガス浄化装置の実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。たとえば、屋内に運び込まれる車両が長時間アイドリングされる自動車試験場に排気ガス浄化装置が設置される場合を説明する。
図1ないし図3に示すように、排気ガス浄化装置10は、2分割ケーシング12と、2分割ケーシング12内に収納された複数の排気ガス用フィルター14(図5参照)とから概略構成される。
2分割ケーシング12は、金属製の回転対称の薄肉中空構造物であり、長手方向が水平となるように、たとえば架台(図示せず)上に設置され、上流側半割部16と下流側半割部18とに分割され、上流側および下流側半割部18同士は、後に詳細に説明するように、常時組み付けられている。
上流側半割部16は、一端に排気ガスの流入開口20を有し、他端に拡径流出開口部22を有し、一方下流側半割部18は、一端に排気ガスの流出開口32を有し、他端に拡径流入開口部24を有し、拡径流出開口部22と拡径流入開口部24とを密封形態で突き合わせることにより、排気ガスの流れ方向が長手方向に沿うように構成されている。
【0016】
より詳細には、下流側半割部18は、それぞれ拡径流入開口部24から長手方向に収納された複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14を有し、一端が拡径流入開口部24を構成する円筒胴部26と、円筒胴部26と一体であって、最縮径部が流出開口32を構成する截頭円錐部28とを有し、円筒胴部26と截頭円錐部28との間には、仕切円板30が設けられる。仕切り円板には、複数の開口32が設けられ、それぞれの該開口32の周縁から拡径流入開口部24に向かって長手方向に突出する円筒部34が複数設けられ、それぞれの円筒部34の内部に、対応するカートリッジ式排気ガス用フィルター14が嵌め込まれ、並列配置される。円筒胴部26の長手方向の長さは、カートリッジ式排気ガス用フィルター14の長さにほぼ等しく、複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14は、円筒胴部26内に収納されるようにしてある。円筒胴部26の下部には、架台55が固定され(図4参照)、架台55を通じて排気ガス浄化装置10が安定して載置可能としている。また、拡径流出開口部32と拡径流入開口部24とを密封形態で突き合わせ可能なように環状パッキン57(図2参照)が設けられ、環状パッキン57は、下流側半割部18の拡大流入開口部24の周縁部に設けた周溝(図示せず)に嵌め込まれる。
なお、複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14のいずれか1つの上流側および下流側に1箇所づつ差圧取り出し口(図示せず)を設け、差圧センサー(図示せず)によりフィルター前後の差圧を検出し、差圧が所定値を超えた場合に表示あるいは警報を発信し、フィルターの交換時期が自動的に把握可能なようにしている。
【0017】
一方、上流側半割部16も同様に、図1に示すように、一端が拡径流出開口部22を構成する円筒胴部27と、円筒胴部27と一体であって、最縮径部が流入開口20を構成する截頭円錐部29とを有し、円筒胴部27と截頭円錐部29との間には、図3に示すように、パンチング整流板36が設けられる。パンチング整流板36は、正方形の形状を有し、流入口20から流入した排気ガスを複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14それぞれにほぼ一様に差し向けるように、上流側半割部16の中心部に設けられる。パンチング整流板36の細孔の径は、想定される車両の排気ガスの流量等に応じて適宜定めればよい。
なお、截頭円錐部29および截頭円錐部28それぞれにおける、流入開口20の径に対する拡径流出開口部22の拡径割合、および流出開口32の径に対する拡径流入開口部24の拡径割合は、想定される車両の浄化すべき排気ガスの流量に応じて定めればよい。
さらに、上流側半割部16の外周面には、4つの把手38が、互いに周方向に間隔を隔てて、それぞれ長手方向に延びるように設けられる。これにより、後に説明するように、複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14を交換する際、作業者が把手38を掴んで上流側半割部16を支持し、上流側半割部16を下流側半割部18に対して、拡径流入開口部24を包含する平面内で揺動するようにしている。
【0018】
後に詳細に説明するように、上流側半割部16は、拡径流出開口部22と拡径流入開口部24とが密封形態で突き合わせられる排気ガス浄化可能位置P1と、拡径流入開口部24が露出される排気ガス用フィルター交換可能位置P2との間で、下流側半割部18に対して揺動可能になっている。
【0019】
複数の排気ガス用フィルター14は、1つが、下流側半割部18の中心部に設けられ、他は、それを中心に周方向に等角度間隔を隔てて6つ設けられ、計7つ設けられる。
たとえば、排気ガスフィルター14は、TEN CORPORATIONのEHCフィルター14によれば、カートリッジ式の使い捨てタイプであり、ガソリン、ディーゼル、LPGに使用可能であり、NOX、SO、HC,RCHO、COを除去可能である。
カートリッジは、略円筒形であり、径は、約10センチないし20センチ、長さは、約10センチないし20センチであり、このような排気ガス用フィルターを7つ収納するケーシング12の径は、約50センチないし100センチであり、長手方向の長さは、約50センチないし100センチである。
【0020】
上流側半割部16と下流側半割部18との組み付けについて説明すれば、下流側半割部18は、さらに、拡径流入開口部24の周縁部に、周方向に等角度間隔を隔てて8つのヒンジ部40を有し、ヒンジ部40それぞれは、ボルト42の一端に固定され、かつ長手方向と直交する方向に延び、それに対して、上流側半割部16は、拡径流出開口部22の周縁部に設けられた、ボルト42の他端を受け入れ可能に外方に開放する凹部44を有するボルト受けブラケット部46を有する。
より詳細には、ヒンジ部40は、それぞれに貫通穴47が設けられた一対の対向ブラケット部49と、それぞれの貫通穴47に回動可能に嵌合し、一対の対向ブラケット部49間を延びるヒンジ軸51を有し、ヒンジ軸51はボルト42の一端に一体に設けられる。
【0021】
それにより、ボルト42は、他端が凹部44に受け入れられ、蝶ナット45の締結により上流側半割部16と下流側半割部18とを固定する固定位置と、他端が凹部44から係合解除され、蝶ナット45を弛めることにより上流側半割部16と下流側半割部18とが固定解除される固定解除位置との間で回動可能とされる。
ボルト42の数、すなわちボルト受けブラケット部46あるいはヒンジ部40の数は、
排気ガス浄化装置10の大きさ、重量等に応じて適宜定めればよい。なお、各ボルト42を固定位置から固定解除位置にする場合、対応する蝶ナット45を完全にボルト42から脱着する必要はなく、ボルト42が回動可能となる範囲で弛めればよく、後に説明する複数の排気ガス用フィルター14の交換の際、各ボルト42を固定位置から固定解除位置にして上流側半割部16を下流側半割部18に対して揺動可能とする必要があるが、このような作業を効率的に行うことが可能である。
【0022】
上流側半割部16と下流側半割部18との揺動関係について説明すれば、2分割ケーシング12の下側部外方に、2分割ケーシング12の長手方向に延びるヒンジ軸48が下流側半割部18に腕部53を介して固定される一方、上流側半割部16には、ヒンジ軸48に回動可能に嵌合する腕部50が固定され、それにより、上流側半割部16は、ヒンジ軸48を中心に、拡径流出開口部22と拡径流入開口部24とが密封形態で突き合わせられる排気ガス浄化可能位置P1と、拡径流入開口部24が露出される排気ガス用フィルター交換可能位置P2との間で揺動可能になっている。
排気ガス用フィルター交換可能位置P2と排気ガス浄化可能位置P1との間の揺動角度範囲αは、180°以下となるようにヒンジ軸48を設けている。この場合、排気ガス用フィルター交換可能位置P2において、上流側半割部16が着座した状態で下流側半割部18の拡径流入開口部24全体が露出するように、揺動中心位置を決定するのが好ましい。
【0023】
以上の構成を有する排気ガス浄化装置10の作用について、以下に説明する。
排気ガス浄化装置10は、自動車試験場の屋内に設置され、屋内に運び込まれた試験対象である車両の排気管に対して、排気ガスの流入開口20をダクトを介して接続し、排気ガス浄化装置10内に導くようにしている。
排気ガスは、図1の矢印に示すように、流入開口20から上流側半割部16内に流入し、パンチング整流板36により排気ガスは2分割ケーシング12の半径方向外方に差し向けられ、環状パッキン57により密封状態で突き合わせられた拡径流出開口部22と拡径流入開口部24との境界部を通過して、下流側半割部18内に流入する。
次いで、半径方向外方に流れる排気ガスは、複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14それぞれを通過して、排気ガス中のNOX等微粒子が捕捉されて、浄化され、浄化された排気ガスは、流出開口32より流出する。たとえば、流出開口32はダクトに接続され、ダクトを介して浄化した排気ガスを外に排出すればよい。流出開口32には、ダクトを介して排気ガス用ファンを接続し、外に排出してもよい。
【0024】
たとえば、差圧センサーに基づく警報により複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14を交換する場合、まず作業員は、それぞれの蝶ナット45を弛めて、対応するボルト42を固定位置から固定解除位置までワンタッチで回動させ、上流側半割部16の拡径流出開口部22と、下流側半割部18の拡径流入開口部24との突き合わせが解除可能となる。この場合、蝶ナット45をボルト42から完全に脱着する必要はなく、固定位置から固定解除位置まで回動可能となる範囲で弛めればよい。
次いで、図5に示すように、作業者は、把手38を掴んで、上流側半割部16を支持して、上流側半割部16を拡径流出開口部22と拡径流入開口部24との突き合わせ平面内で、排気ガス浄化可能位置P1から排気ガス用フィルター交換可能位置P2まで揺動させて、上流側半割部16を架台上に着座させる。
【0025】
図5に示すように、この状態で、下流側半割部18の拡径流入開口部24が完全に露出され、7つの排気ガス用フィルター14が交換可能となる。より詳細には、排気ガス用フィルター14を1つずつ拡径流入開口部24から引き抜いて、新しい排気ガス用フィルターを装着すればよい。
次いで、作業者は、把手38を掴んで、上流側半割部16を排気ガス用フィルター交換可能位置P2から排気ガス浄化可能位置P1まで揺動させて、上流側半割部16の拡径流出開口部22と、下流側半割部18の拡径流入開口部24とを再び突き合わせる。
次いで、作業者は、それぞれのボルト42を固定解除位置から固定位置までワンタッチで回動させ、対応する蝶ナット45を締結して、拡径流出開口部22と拡径流入開口部24とを密封状態で固定する。
以上で、複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14の交換が完了し、再び排気ガス浄化装置10を用いて、排気ガスが浄化可能となる。
【0026】
以上の構成を有する排気ガス浄化装置10によれば、排気ガスは、2分割ケーシング12の長手方向に沿って、流入開口20より上流側半割部16内に流入し、拡径流出開口部22から流出し、拡径流入開口部24を通じて下流側半割部18に流入し、並列配置された複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14により排気ガスが浄化され、流出開口32より流出する。
【0027】
複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14を交換する場合、互いに常時組み付け関係にある上流側半割部16あるいは下流側半割部18を、拡径流出開口部22と拡径流入開口部24とが密封形態で突き合わせられる排気ガス浄化可能位置P1から、拡径流入開口部24が露出される排気ガス用フィルター14交換可能位置P2まで揺動することにより、露出された拡径流入開口部24から複数のカートリッジ式排気ガス用フィルター14を取り出して、新しい排気ガス用フィルター14に交換し、再び排気ガス用フィルター交換可能位置P2から排気ガス浄化可能位置P1まで逆方向に揺動することにより、たとえば、上流側および下流側半割部18同士の組み付けを解除する必要なしに、複数の排気ガス用フィルター14を有する大型排気ガス浄化装置10でありながら、既存の排気ガス用フィルター14を複数利用してコスト増を回避しつつ効率的に複数の排気ガス用フィルター14を交換可能である。
【0028】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、適用対象を自動車として説明したが、それに限定されることなく、排気ガスの浄化が必要な駆動エンジンを有する動力機械である限り、どんなものでもよい。
たとえば、本実施形態において、上流側半割部16が下流側半割部18に対して揺動可能なものとして説明したが、それに限定されることなく、排気ガス用フィルター14を備える下流側半割部18が軽量である場合には、下流側半割部18を上流側半割部16に対して揺動可能としてもよい。
たとえば、本実施形態において、上流側半割部16を下流側半割部18に対して排気ガス用フィルター交換可能位置P2まで揺動させ、下流側半割部18の拡径流入開口部24全体を露出させたうえで、7つの排気ガス用フィルター14を一度に交換するものとして説明したが、それに限定されることなく、たとえば排気ガス浄化装置10の一方の脇に十分なスペースがない場合には、揺動角度を制限したうえで、上流側半割部16を下流側半割部18に対して、各脇に揺動させて、そのたびに排気ガス用フィルター14を一部ずつ交換してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る排気ガス浄化装置10の平面図である。
【図2】図1の線A−Aに沿う断面図である。
【図3】図1の線B−Bに沿う断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る排気ガス浄化装置10の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る排気ガス浄化装置10において、排気ガスフィルター14を交換する状況を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0030】
P1 排気ガス浄化可能位置
P2 排気ガス用フィルター交換可能位置
α 揺動角度
10 排気ガス浄化装置
12 2分割ケーシング
14 排気ガス用フィルター
16 上流側半割部
18 下流側半割部
20 流入口
22 流出口
22 拡径流出開口部
24 拡径流入開口部
26 円筒胴部
27 円筒胴部
28 截頭円錐部
29 截頭円錐部
30 仕切円板
32 開口
34 円筒部
36 パンチング整流板
38 把手
40 ヒンジ部
42 ボルト
44 凹部
45 ナット
46 ボルト受け入れブラケット部
47 貫通穴
48 ヒンジ軸
49 ブラケット部
51 ヒンジ軸
53 腕部
55 架台
57 環状パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に排気ガスの流入開口を有し、他端に拡径流出開口部を有する上流側半割部と、一端に排気ガスの流出開口を有し、他端に拡径流入開口部を有する下流側半割部とを有し、該拡径流出開口部と該拡径流入開口部とを密封形態で突き合わせることにより、排気ガスの流れ方向が長手方向に沿うように構成された2分割ケーシングを有し、
該下流側半割部は、それぞれ前記拡径流入開口部から長手方向に並列に収納された複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターを有し、
前記上流側および前記下流側半割部同士は、常時組み付けられ、前記上流側半割部あるいは前記下流側半割部は、前記拡径流出開口部と前記拡径流入開口部とが密封形態で突き合わせられる排気ガス浄化可能位置と、前記拡径流入開口部が露出される排気ガス用フィルター交換可能位置との間で、前記下流側半割部あるいは前記上流側半割部に対して揺動可能になっている、ことを特徴とする排気ガス浄化装置。

以上の構成を有する排気ガス浄化装置によれば、排気ガスは、2分割ケーシングの長手方向に沿って、流入開口より上流側半割部内に流入し、拡径流出開口部から流出し、拡径流入開口部を通じて下流側半割部に流入し、並列配置された複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターにより排気ガスが浄化され、流出開口より流出する。
複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターを交換する場合、互いに常時組み付け関係にある上流側半割部あるいは下流側半割部を、拡径流出開口部と拡径流入開口部とが密封形態で突き合わせられる排気ガス浄化可能位置から、拡径流入開口部が露出される排気ガス用フィルター交換可能位置まで揺動することにより、露出された拡径流入開口部から複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターを取り出して、新しい排気ガス用フィルターに交換し、再び排気ガス用フィルター交換可能位置から排気ガス浄化可能位置まで逆方向に揺動することにより、たとえば、上流側および下流側半割部同士の組み付けを解除する必要なしに、複数の排気ガス用フィルターを有する大型排気ガス浄化装置でありながら、効率的に複数の排気ガス用フィルターを交換可能である。

【請求項2】
前記2分割ケーシングの下側部外方に、前記2分割ケーシングの長手方向に延びるヒンジ軸が前記下流側半割部に固定される一方、前記上流側半割部には、該ヒンジ軸に回動可能に嵌合する腕部が固定され、それにより、前記上流側半割部は、該ヒンジ軸を中心に、前記拡径流出開口部と前記拡径流入開口部とが密封形態で突き合わせられる排気ガス浄化可能位置と、前記拡径流入開口部が露出される排気ガス用フィルター交換可能位置との間で揺動可能になっている、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記拡径流出開口部および前記拡径流入開口部はいずれも、前記2分割ケーシングの長手方向に対して直交するように設けられ、
前記2分割ケーシングは、その長手方向が水平向きに設置され、
前記上流側半割部の前記拡径流出開口部は、前記拡径流出開口部と前記拡径流入開口部との突き合わせ鉛直平面内で、前記排気ガス浄化可能位置と前記排気ガス用フィルター交換可能位置との間で揺動可能になっている、請求項2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記排気ガス用フィルター交換可能位置と前記排気ガス浄化可能位置との間の揺動角度範囲が、180°以下となるように、前記ヒンジ軸を設ける、請求項3に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記2分割ケーシングは、回転対称構造であり、
前記下流側半割部は、さらに、前記拡径流入開口部の周縁部に設けられたヒンジ部を有し
該ヒンジ部は、ボルトの一端に固定され、かつ長手方向と交差する方向に延び、
前記上流側半割部は、前記拡径流出開口部の周縁部に設けられた、ボルトの他端を受け入れ可能に外方に開放する凹部を有するボルト受けブラケット部を有し、
それにより、ボルトは、他端が前記凹部に受け入れられ、ナットの締結により前記上流側半割部と前記下流側半割部とを固定する固定位置と、他端が前記凹部から係合解除され、ナットを弛めることにより前記上流側半割部と前記下流側半割部とが固定解除される固定解除位置との間で、前記ヒンジ部を中心に回動可能とされる、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項6】
前記上流側半割部の外周面には、複数の把手が、互いに周方向に間隔を隔てて、それぞれ長手方向に延びるように設けられる、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項7】
前記下流側半割部は、一端が前記拡径流入開口部を構成する円筒胴部と、該円筒胴部と一体であって、最縮径部が前記流出開口を構成する截頭円錐部とを有し、該円筒胴部と該截頭円錐部との間には、仕切円板が設けられ、該仕切り円板には、複数の開口が設けられ、それぞれの該開口の周縁から前記拡径流入開口部に向かって長手方向に突出する円筒部が複数設けられ、それぞれの円筒部の内部に、対応するカートリッジ式排気ガス用フィルターが嵌め込まれる、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項8】
前記排気ガス用フィルター交換可能位置において、前記上流側半割部が着座した状態で前記下流側半割部の前記拡径流入開口部全体が露出するように、揺動中心位置を決定する請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項9】
さらに、前記拡径流出開口部と前記拡径流入開口部とを密封形態で突き合わせ可能なように環状パッキンが設けられ、該環状パッキンは、前記下流側半割部の前記拡大流入開口部の周縁部に設けた周溝に嵌め込まれる、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項10】
さらに、パンチング整流板が、前記排気ガス流入口から流入した排気ガスを前記複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターそれぞれに差し向けるように、前記上流側半割部の前記中心部に設けられる、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項11】
前記複数のカートリッジ式排気ガス用フィルターは、1つが、前記下流側半割部の中心部に設けられ、他は、それを中心に周方向に等角度間隔を隔てて設けられる、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−68109(P2013−68109A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205633(P2011−205633)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(390026974)株式会社東洋製作所 (132)
【Fターム(参考)】