説明

排気ガス浄化触媒及びその製造方法

【課題】 製造コストや環境負荷を大きくすることなく、助触媒成分による貴金属粒子の活性向上効果を維持する。
【解決手段】 触媒作用を有する貴金属11と、この貴金属11が担持される第1の酸化物12と、この触媒貴金属11が担持された第1の酸化物12を包む第2の酸化物13とを少なくとも有する触媒粒子ユニット10を備えている。この触媒粒子ユニット10が複数個集まってなる触媒粉末中に、助触媒成分である遷移元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の化合物14を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する処理に適用して好適な排気ガス浄化触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関から排出される排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物(HC),一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)等の有害物質を除去するために、アルミナ(Al)等の金属酸化物担体に白金(Pt)等の貴金属粒子を担持した排気ガス浄化触媒が広く利用されるようになっている。従来の排気ガス浄化触媒では、周囲の雰囲気変動に対する貴金属粒子の耐久性を向上させるために、貴金属粒子が多量に用いられている。しかしながら、貴金属粒子を多量に用いることは地球資源保護の観点から見ると望ましくない。
【0003】
このような背景から、最近では、含浸法によってOSC(Oxygen Storage Component:酸素吸蔵物質)材として機能するセリウム(Ce)やマンガン(Mn)等の遷移金属又は遷移金属化合物を貴金属粒子近傍に配置し、貴金属粒子周囲の雰囲気変動を遷移金属又は遷移金属化合物によって抑制することにより、貴金属粒子の耐久性を向上させる試みがなされている(特許文献1〜4参照)。なお、このような方法によれば、貴金属粒子の耐久性向上に加えて、貴金属粒子の活性向上も期待することができる。
【特許文献1】特開平8−131830号公報
【特許文献2】特開2005−000829号公報
【特許文献3】特開2005−000830号公報
【特許文献4】特開2003−117393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貴金属粒子周囲の雰囲気変動を遷移金属の化合物によって抑制する場合には、貴金属粒子と遷移金属の化合物粒子の双方が微粒子であり、かつ、互いに接触している必要性がある。しかしながら、含浸法を用いた場合には、貴金属粒子と遷移金属の化合物粒子とを接触させることができても双方が微粒子にならない、若しくは、双方が微粒子になっても接触させることができない又は接触させることができる量が少ないために、貴金属粒子近傍に遷移金属の化合物粒子を設計通りに配置させることは難しい。また、貴金属粒子の耐久性向上を図る場合、貴金属粒子の平均粒子径は2[nm]以上、貴金属粒子の活性向上を図る場合には、貴金属粒子の平均粒子径は5[nm]以下とすることが望ましい。しかしながら、含浸法を用いた場合には、貴金属粒子の平均粒子径は1.5[nm]以下になるために、貴金属粒子の耐久性向上や活性向上を期待することは難しい。
【0005】
また、遷移金属の化合物は金属酸化物担体として広く利用されているアルミナと固溶しやすいために、遷移金属の化合物を貴金属粒子近傍に単に配置しただけでは貴金属粒子の活性向上効果は得られにくい。なお、このような問題を解決するために、遷移金属の化合物と固溶しない担体上に遷移金属の化合物を担持する方法が考えられてはいるが、この方法を用いた場合には、高温雰囲気下において遷移金属の化合物が移動し、遷移金属の化合物同士が接触することによって遷移金属の化合物が凝集してしまう。また、遷移金属の化合物の凝集を防止するために、逆ミセル法を利用して表面積が大きい遷移金属の化合物粒子を製造する方法も考えられるが、この方法では有機溶媒を使用するために製造コストや環境負荷が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る排気ガス浄化触媒は、触媒作用を有する貴金属と、この貴金属が担持される第1の酸化物と、この触媒貴金属が担持された第1の酸化物を包む第2の酸化物とを少なくとも有する触媒粒子ユニットを備え、
この触媒粒子ユニットが複数個集まってなる触媒粉末中に、助触媒成分である遷移元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことことを要旨とする。
【0007】
また、本発明に係る排気ガス浄化触媒の製造方法は、上記の排気ガス浄化触媒を製造する方法であって、触媒貴金属を第1の化合物に担持した後、この担持した第1の化合物を第2の化合物の原料であるベーマイトと、助触媒成分である化合物との混合物で包み、その後に500℃以上で焼成することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る排気ガス浄化触媒によれば、助触媒成分の含有効果がいっそう発揮されるようにした構成により、貴金属粒子の耐久性向上や活性向上を図ることができる。
【0009】
本発明に係る排気ガス浄化触媒の製造方法によれば、本発明に係る排気ガス浄化触媒を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の排気ガス浄化触媒の実施形態について、図面を用いつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態となる排気ガス浄化触媒における、触媒粒子ユニットの模式図である。同図に示す排気ガス浄化触媒の触媒粒子ユニット10は、触媒作用を有する貴金属粒子11と、この貴金属粒子11を担持し、当該貴金属粒子2の移動を抑制する第1の酸化物12と、この貴金属粒子11と第1の酸化物12とを包み、当該貴金属粒子11の移動を抑制すると共に第1の酸化物12同士の接触に伴う第1の酸化物12の凝集を抑制する第2の酸化物13と、この第2の酸化物近傍に配設された助触媒成分である化合物14とを備えている。この化合物14は、遷移元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。また、貴金属粒子11を担持した第1の酸化物12の複数個の集合体が第2の酸化物13に包まれることにより、貴金属粒子11を担持した第1の酸化物12の複数個の集合体が、第2の酸化物13で隔てられている構造を有する、触媒粒子ユニット10が形成されている。
【0012】
発明者らは、精力的な研究を重ねてきた結果、貴金属粒子を酸化物に化学的に結合させることにより貴金属粒子の移動を化学的に抑制することができると共に、貴金属粒子を別の酸化物で覆うことによって貴金属粒子の移動を物理的に抑制することができることを知見した。更に、貴金属粒子と酸化物の双方を別の酸化物で覆うことによって貴金属粒子の移動抑制はもちろん、酸化物の凝集も抑制することができることを知見した。
【0013】
この知見に基づいて構成された図1に示す排気ガス浄化触媒の触媒粒子ユニット10は、第1の酸化物12が貴金属粒子11と接触して担持することにより、この第1の酸化物12は化学的結合のアンカー材として作用し、貴金属粒子11の移動を抑制する。また、この貴金属粒子11及び第1の酸化物12を第2の酸化物13で覆い、包む形態とすることにより、貴金属粒子11の移動を物理的に抑制する。更に、触媒粒子ユニット10は、この第2の酸化物13により隔てられた区画内に貴金属粒子11と第1の酸化物12とを含むことにより、この第2の酸化物13により隔てられた区画を越えて第1の酸化物12が移動し、互いに接触して凝集することを抑制する。これらのことから、図1に示した触媒粒子ユニット10の構造を有する排気ガス浄化触媒は、製造コストや環境負荷を大きくすることなく、貴金属粒子11の凝集による触媒活性低下を防止することができ、また、第1の酸化物12による貴金属粒子2の活性向上効果を維持することができる。よって、耐熱性が高く、長期間にわたり耐久性の優れた排気ガス浄化触媒とすることができる。
【0014】
そして、図1に示した本実施形態の排気ガス浄化触媒の触媒粒子ユニット10は、助触媒成分である化合物14が、第2の酸化物13に接して配設されている。助触媒成分を触媒中に含ませることは、触媒の性能を向上させることができるために有効である。もっとも、上述した構造を有する触媒粒子ユニット10に助触媒成分を含ませる場合には、この助触媒成分を含有させた構造の態様によっては、助触媒成分を含有させる効果が十分に発揮できないおそれがあった。詳述すると、触媒粒子ユニット10の構造は貴金属粒子11の耐熱性向上に非常に有効であるが、触媒活性点である貴金属粒子11が第2の酸化物13で覆われていて、貴金属粒子11は第2の酸化物13の細孔を通してガスと触れる。ここに、助触媒を従来触媒と同様に含浸担持で添加した構造では、助触媒により触媒の細孔が閉塞し、ガス拡散がうまくいかず、活性点にガスが届かなくなるおそれがある。
【0015】
そのため、助触媒の効果を十分に発揮させるためには、細孔閉塞をなるべく起こさないような態様で助触媒を配設する必要がある。また、助触媒成分が、貴金属粒子とあまりに離れて配設されたのでは、助触媒成分を含有させる効果が乏しくなる。このようなことを勘案して、図1に示した本実施形態の排気ガス浄化触媒では、助触媒成分である化合物14を、第1の酸化物12には接しないで、第2の酸化物13に接するように、より具体的には、隣り合う第2の酸化物13の間の位置にて第2の酸化物13に接して配設されている。このように第2の酸化物13に接するように化合物14を設けることにより、隣り合う第2の酸化物13で形成される触媒粒子ユニットの細孔の閉塞を最小限にとどめ、化合物14の含有効果を最大限に発揮させることができる。
【0016】
図2に、助触媒成分である化合物14を、第2の酸化物13に接するように配設した本発明に係る排気ガス浄化触媒の別の例について、触媒粒子ユニット20の模式図で示す。なお、図2において、図1と同一の構成要素については同一の符号を付している。図2に示した触媒粒子ユニット20は、触媒作用を有する貴金属粒子11と、この貴金属粒子11を担持し、当該貴金属粒子2の移動を抑制する第1の酸化物12と、この貴金属粒子11と第1の酸化物12とを包み、当該貴金属粒子11の移動を抑制すると共に第1の酸化物12同士の接触に伴う第1の酸化物12の凝集を抑制する第2の酸化物13と、この第2の酸化物近傍に配設された助触媒成分である化合物14とを備えている。この点では、図1に示した触媒粒子ユニット10と同じである。そして図2に示した触媒粒子ユニット20では、助触媒成分である化合物14が、第2の酸化物13に接するように配設されていて、より具体的には、第2の酸化物13の外周面に接して配設されている。このように第2の酸化物13に接するように化合物14を設けることにより、触媒粒子ユニットの細孔の閉塞を効果的に抑制しつつ、助触媒成分である化合物14が貴金属粒子11の近くに設けられ、その含有効果を十分に発揮させることができる。
【0017】
図3に、助触媒成分である化合物14を、第2の酸化物13に接するように配設した本発明に係る排気ガス浄化触媒の別の例について、触媒粉末30の模式図で示す。図3に示した触媒粉末30は、図1に示した触媒粒子ユニット10の複数個が集合して形成されているものであり、この触媒粒子ユニット10の集合により触媒粉末細孔が形成されている。そして、この触媒粉末30の外周部に接して助触媒成分である化合物14が配設されている。このように触媒粉末30を構成する要素である触媒粒子ユニット10の第2の酸化物13に接するように化合物14を設けることにより、触媒粒子ユニットの細孔の閉塞を抑制しつつ、助触媒成分である化合物14が貴金属粒子11の近くに設けられ、その含有効果を十分に発揮させることができる。
【0018】
なお、図3に示した例では、触媒粉末30が、触媒粒子ユニット10の集合体である例を示したが、触媒粉末30を構成する要素は触媒粒子ユニット10に限られず、例えば、図2に示した触媒粒子ユニット20であってもよいし、また、触媒粒子ユニット中に第2の酸化物13を含まない、貴金属粒子11と第1の酸化物12と第2の酸化物13とからなり、貴金属粒子11が第1の酸化物12に担持され、この貴金属粒子11を担持した第1の酸化物12が第2の酸化物13で包まれている触媒粒子ユニットであってもよいし、また、これらの触媒粒子ユニットの混合物であってもよい。
【0019】
図1〜図3に示した例では、助触媒成分である化合物が、触媒粒子ユニットの第2の酸化物に接して配設されている例を説明したが、本発明に係る排気ガス浄化触媒は、これらの例に限定されない。別の例としては、触媒作用を有する貴金属と、この貴金属が担持される第1の酸化物と、この触媒貴金属が担持された第1の酸化物を包む第2の酸化物とを少なくとも有する触媒粒子ユニットにおいて、この第2の酸化物と、助触媒成分である化合物とが複合化した酸化物が形成されている例がある。例えば、第2の酸化物がAlであり、助触媒成分がBaである場合には、複合酸化物であるBaAlを、含有させることができる。この複合酸化物を触媒粒子ユニットに含む例であっても、図1〜図3を用いて説明した例と同様に、触媒の細孔の閉塞を抑制しつつ、助触媒成分である化合物が貴金属粒子の近くに設けられ、その含有効果を十分に発揮させることができる。さらに、複合化することにより、助触媒成分を微粒化することができ、よって助触媒機能をより引き出すことが可能となる。
【0020】
本発明に係る排気ガス浄化触媒を得るための手段としては、貴金属粒子を担持した第1の酸化物を第2の酸化物で包む時にこの第2の酸化物と同時に助触媒成分である化合物を混ぜ込み、細孔閉塞を最小限にとどめる方策や、助触媒成分である化合物を、貴金属粒子、第1の酸化物及び第2の酸化物で構成されアンカー包接構造を有する触媒粉末と混ぜ込んで触媒層を形成する方法が有効となる。他の方法として、助触媒成分である化合物と、貴金属粒子、第1の酸化物及び第2の酸化物で構成されアンカー包接構造を有する粉末を層別に形成する方法も考えられる。
【0021】
本発明に係る排気ガス浄化触媒は、細孔径100nm以下の細孔容量が、0.20cm/g以上であることが好ましい。本発明の触媒は、貴金属とアンカー材である第1の酸化物とが、アルミナ等の包接材である第2の化合物に覆われている。そのため、ガス拡散性を良好にすることが、従来の含浸法による触媒に比較しても重要となる。図4は、BJH法によるハニカム担体にコートされた触媒の細孔径と、細孔容量との関係の一例を示すグラフである。図4に示されるように、細孔径100nm以下の細孔容量は、主に触媒粉末によるものであり、これがある程度確保されていないと、貴金属等の触媒活性点に排気ガスが十分到達できなくなる。発明者らは、適切な細孔容量について鋭意検討し、細孔径100nm以下の細孔容量が、0.20cm/g以上あることで、特に触媒活性点に排気ガスが十分到達でき、所期した助触媒の添加効果を発揮できることを見出した。
【0022】
本発明に係る排気ガス浄化触媒における貴金属と、第1の酸化物と、第2の酸化物と、助触媒成分である化合物との組み合わせの好適な例としては、触媒貴金属がPtであり、第1の酸化物が少なくともCeを含む酸化物であり、第2の酸化物が少なくともAlを含む酸化物であり、前記助触媒成分である化合物がNa、K、Cs、Ba、Fe、Ni、Mn、Ce、La及びZrから選ばれる少なくとも1種を含む酸化物、炭酸塩及び硫酸塩の少なくとも1種であるものが挙げられる。貴金属成分としてPtを使う際には、アンカー材である第1の酸化物は、Ceを含む化合物が有効であり、また、Alが、包接材である第2の酸化物として細孔容積を確保する上でも有効となる。Na、K、Cs、Ba、Fe、Ni、Mn、Ce、La及びZrは、いずれも助触媒としての効果を有する成分である。助触媒である化合物がNa、K、Cs、Baから選ばれる少なくとも1種の酸化物、炭酸塩であるときは、これらはNOの吸着材として働く。また、Fe、Ni及びMnの酸化物は貴金属活性そのものを補助する役割として働く。また、Ce、La及びZrの酸化物は酸素吸放出材、または包接材の耐久性向上材として働く。これらの成分の酸化物に限られず、炭酸塩や硫酸塩であってもよい。
【0023】
本発明に係る排気ガス浄化触媒における貴金属と、第1の酸化物と、第2の酸化物と、助触媒成分である化合物との組み合わせの好適な別の例としては、触媒貴金属がPdであり、第1の化合物がCe及びZrの少なくとも1種を含む酸化物であり、前記第2の化合物が少なくともAlを含む酸化物であり、前記助触媒成分である化合物がNa、K、Cs、Ba、Fe、Ni、Mn、Ce、La及びZrから選ばれる少なくとも1種を含む酸化物、炭酸塩及び硫酸塩の少なくとも1種である例が挙げられる。貴金属成分としてPdを使う際には、アンカー材である第1の酸化物はCe及び/又はZrを含む化合物が有効であり、また、Alが包接材である第2の酸化物として細孔容積を確保する上でも有効となる。Na、K、Cs、Ba、Fe、Ni、Mn、Ce、La及びZrはいずれも、助触媒としての効果を有する成分である。助触媒である化合物がNa、K、Cs及びBaから選ばれる少なくとも1種の酸化物、炭酸塩であるときはNOの吸着材としてこれらは働き、硫酸塩であるときはHC被毒緩和に有効である。また、Fe、Ni及びMnの酸化物は貴金属活性そのものを補助する役割として働く。更に、Ce、La及びZrの酸化物は酸素吸放出材、または包接材の耐久性向上材として働く。
【0024】
本発明に係る排気ガス浄化触媒における貴金属と、第1の酸化物と、第2の酸化物と、助触媒成分である化合物との組み合わせの好適な別の例としては、触媒貴金属がRhであり、第1の酸化物が少なくともZrを含む酸化物であり、第2の酸化物が少なくともAlを含む酸化物であり、助触媒成分である化合物がFe、Ni、Mn、Ce、La及びZrから選ばれる少なくとも1種を含む酸化物、炭酸塩及び硫酸塩の少なくとも1種である例が挙げられる。貴金属成分としてRhを使う際には、アンカー材である第1の酸化物はZrを含む化合物が有効であり、また、Alが包接材としての第2の酸化物には細孔容積を確保する上でも有効となる。Fe、Ni、Mn、Ce、La及びZrは、いずれも助触媒としての効果を有する成分である。助触媒である化合物が、Fe、Ni、Mn、の酸化物であるときには貴金属活性そのものを補助する役割として働く。Ce、La及びZrの酸化物は酸素吸放出材、または包接材の耐久性向上材として働く。これらの成分の酸化物に限られず、炭酸塩や硫酸塩であってもよい。
【0025】
上述したいずれの例においても、第2の酸化物は、Alが好適である。このAlは、ベーマイトを原料としたものからなることが好ましい。
【0026】
そして、本発明に係る排気ガス浄化触媒を製造方法の好適な例としては、触媒貴金属を第1の化合物に担持した後、この担持した第1の化合物を、第2の化合物の原料であるベーマイトと、助触媒成分である化合物との混合物で包み、その後に500℃以上で焼成する。ベーマイトを原料として用いることにより、第2の化合物として好適なAlとすることができる。そして、貴金属とアンカー材である第1の酸化物とを、包接材である第2の酸化物で包む際に、この第2の酸化物と助触媒である化合物との混合物で包む。このことにより、第2の酸化物の細孔容積の低減を防止し、かつ、助触媒成分を貴金属に最近接させることができる。また、500℃以上で焼成することにより、助触媒である化合物と第2の酸化物とを複合化することも可能であり、こうすることにより、さらに細孔閉塞減少抑制、助触媒の貴金属近接化が可能となる。
【0027】
本発明に係る排ガス浄化触媒は、耐火性無機材料からなるハニカム構造の基材に形成されている貫通孔の内壁に塗布形成され、触媒コート層の形態となる。この触媒コート層は、本発明に係る排気ガス浄化触媒が単層でコートされたものであってもよいが、少なくとも2層の触媒コート層を有するものが、より好ましい。それは、触媒貴金属の種類が異なる複数の層を形成することにより、それぞれの触媒貴金属の特性を生かし、触媒性能を向上をさせることが可能となるからである。
【0028】
少なくとも2層の触媒コート層を有するとき、この触媒コート層の内層側には前述した貴金属がPt及び/又はPdである、好適な例の触媒を含み、かつ、触媒コート層の表層側には前述した貴金属がRhである、好適な例の触媒を含むものとすることが好ましい。これは、ガス拡散性を考えた場合、Rhを含む触媒を、ガスとの接触性の高い表層側に配置したほうが、触媒活性のよりいっそうの向上効果があるためである。
【0029】
また、少なくとも2層の触媒コート層を有するときの好ましい別の態様は、この触媒コート層の内層側には前述した貴金属がPt及び/又はPdである、好適な例の触媒を含み、かつ、触媒コート層の表層側には前述した貴金属がPt及び/又はPdと、Rhとである好適な例の触媒とを含むものである。表層側にはRhばかりでなく、Pt及び/又はPdを含ませることができ、この場合でもガス拡散性を考慮して、Rhを含む触媒は、ガスとの接触性の高い表層側に配置することで、触媒活性のよりいっそうの向上効果が得られる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0031】
(実施例1)
実施例1は、助触媒成分であるCeO2を、貴金属粒子、第1の酸化物及び第2の酸化物で構成されアンカー包接構造を有する触媒粉末と混ぜ込んで触媒層を形成した例である。
【0032】
比表面積70 m2/gのCeO2粉末にジニトロジアミンPt液を担持濃度がPtとして0.5wt%となるように担持した。次いで150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pt(0.5wt%)/ CeO2粉末を得た。このPt担持CeO2粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)200nmのPt/ CeO2粉末とした。
【0033】
また、ベーマイトと硝酸と水を混合し、1hr撹拌した。攪拌後の液中に、上記Pt/ CeO2粉末を、ゆっくりと投入し、更に2hr撹拌した。攪拌後、この液を減圧下、80℃で3hr乾燥した。更に、550℃で3hr、空気中で焼成し、触媒粒子ユニット原料粉末を得た。この粉末中のPt担持CeO2粉末とAl2O3との比は50:50である。
【0034】
触媒粒子ユニット原料粉末を水中に分散させ、これに硝酸Ce溶液をそれぞれ当該触媒粒子ユニット原料粉末に対し、CeO2として5wt%となるように含浸し、触媒粉末を得た。
【0035】
触媒粉末225g、アルミナゾル25g、水240g、硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリを得た。このスラリをコーデェライト質モノリス担体(0.12L、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリを取り除いて130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成し、コート層200g/Lの触媒層を得た。
【0036】
(実施例2)
実施例2は、貴金属粒子を担持した第1の酸化物を第2の酸化物で包む時に、この第2の酸化物と同時に助触媒成分であるCeO2を混ぜ込んで触媒層を形成した例である。
【0037】
ベーマイトと硝酸Ce溶液と水を混合し、1hr撹拌した。次いで、この液中に実施例1のPt担持CeO2粉末をゆっくりと投入し、更に2hr撹拌した。攪拌後、この液を減圧下、80℃で3hr乾燥した。更に、550℃で3hr、空気中で焼成し、触媒粉末を得た。この触媒粉末中にCeはCeO2として5wt%となるようにした。触媒粉末中のPt担持CeO2粉末と含浸CeO2+ Al2O3の比は50:50である。
【0038】
この触媒粉末225g、アルミナゾル25g、水240g、硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリを得た。このスラリをコーデェライト質モノリス担体(0.12L、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリを取り除いて130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成し、コート層200g/Lの触媒層を得た。
【0039】
(実施例3)
実施例3は、実施例2における触媒粉末を得る工程の後、更に700℃で1hr、空気中で焼成した以外は実施例2と同じである。700℃で更に焼成することにより、CeO2とAl2O3との複合化を図っている。
【0040】
(参考例1)
参考例1は、触媒粒子ユニットの集合体よりなる触媒粉末の外表面上に、助触媒成分であるCeO2粉末が層別に形成されている例である。
【0041】
実施例1の触媒粒子ユニット原料粉末213.8g、CeO2粉末11.2g、アルミナゾル25g、水240g、硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリを得た。このスラリをコーデェライト質モノリス担体(0.12L、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリを取り除いて130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成し、コート層200g/Lの触媒層を得た。
【0042】
(比較例1)
比較例1は、アンカー包接構造を有していない構造の触媒の例である。
【0043】
比表面積190m2/gのAl2O3に硝酸Ce溶液をCeがCeO2として55wt%となるように担持した。次いで150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成した。得られた粉末にジニトロジアミンPt液を担持濃度がPtとして0.5wt%となるように担持した。担持後、150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成した。焼成後の粉末225g、アルミナゾル25g、水240g、硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリを得た。このスラリをコーデェライト質モノリス担体(0.12L、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリを取り除いて130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成し、コート層200g/Lの触媒層を得た。
【0044】
上記実施例1〜3、参考例1及び比較例1の触媒層を有するモノリス担体を、排気量3500cmのガソリンエンジンの排気系に装着し、触媒入口温度を700℃とし、30時間運転する耐久試験を行った。この耐久試験後、これらのモノリス担体を排気量3500cmのガソリンエンジンの排気系に装着し、触媒入口温度を150℃から500℃まで10℃/分で昇温し、そのときのHC転化率、CO転化率及びNOx転化率の50%転化率温度を調べた。これらの転化率の算出式は、次の式(1)〜(3)のとおりである。
【0045】
HC転化率(%)=[(触媒入口HC濃度)-(触媒出口HC濃度)]/(触媒入口HC濃度)×100 ……(1)
CO転化率(%)=[(触媒入口CO濃度)-(触媒出口CO濃度)]/(触媒入口CO濃度)×100 ……(2)
NOx転化率(%)=[(触媒入口NOx濃度)-(触媒出口NOx濃度)]/(触媒入口NOx濃度)×100 ……(3)
上記計算式による転化率が50%となる温度を50%転化率温度とした。この温度が低いほうが低温活性がよい触媒といえる。
【0046】
上記実施例1〜3、参考例1及び比較例1の触媒層について、100nm以下の細孔容量及び耐久後の50%転化率温度を求めた結果を表1に示す。
【表1】

【0047】
表1から分かるように、本発明に係る実施例1〜3及び参考例1の触媒は、比較例と対比して、50%転化率温度が低く、低温活性が良好な触媒であった。なかでも、実施例2及び実施例3の触媒は、50%転化率温度が実施例1及び参考例1と比べても低く、優れた触媒特性を具備していた。
【0048】
(実施例4)
実施例4は、実施例2の触媒とは構造が同様であり、細孔容量が異なる例である。
【0049】
実施例2の、触媒粉末を得る過程の乾燥工程で、混合溶液をノズルから噴射し、400℃の熱板に吹き付けて乾燥した以外は実施例2と同じである。
【0050】
(実施例5)
実施例5は、実施例2の触媒とは構造が同様であり、細孔容量が異なる例である。
【0051】
実施例2の、触媒粉末を得る過程の乾燥工程で、減圧下での乾燥を60℃にし、乾燥時間を24hrとした以外は実施例2と同じである。
【0052】
この実施例4及び実施例5の触媒層について、100nm以下の細孔容量及び耐久後の50%転化率温度を求めた結果を表2に示す。
【表2】

【0053】
表2から分かるように、実施例4は、実施例2よりも100nm以下の細孔容量が大きく、耐久後の50%転化率温度が低く、低温活性が良好な触媒であった。また、実施例5と、実施例2及び4との対比により、100nm以下の細孔容量が0.2cm3/g以上であることにより、耐久後の50%転化率温度が低く、低温活性が良好な触媒であることがわかる。
【0054】
(実施例6)
実施例6は、助触媒成分である化合物が、CeとZrとの複合酸化物である例である。
【0055】
ベーマイトと硝酸Ce溶液と硝酸Zrと水を混合し、1hr撹拌した。次に、この液中に実施例1のPt担持CeO2粉末をゆっくりと投入し、更に2hr撹拌した。攪拌後、減圧下、80℃で3hr乾燥した。更に550℃で3hr、空気中で焼成し、触媒粒子ユニット原料粉末を得た。この粉末中にCeはCeO2として5wt%、ZrはZrO2として5wt%となるようにした。触媒粒子ユニット原料粉末中のPt担持CeO2粉末と含浸CeO2+ Al2O3の比は50:50である。
【0056】
触媒粒子ユニット原料粉末225g、アルミナゾル25g、水240g、硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリを得た。このスラリをコーデェライト質モノリス担体(0.12L、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリを取り除いて130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成し、コート層200g/Lの触媒層を得た。
【0057】
(実施例7)
実施例7は、第1の酸化物がCeとZrとの複合酸化物であり、かつ、助触媒成分である化合物が、CeとZrとの複合酸化物である例である。
【0058】
CeとZrの複合酸化物(比表面積65 m2/g)にジニトロジアミンPt液をPtとして担持濃度が0.5wt%となるように担持した。担持後、150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pt(0.5wt%)/CeZrOx粉末を得た。この粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)150nmのPt/CeZrOx粉末とした。
【0059】
また、ベーマイトと硝酸Ce溶液と硝酸Zrと水を混合し、1hr撹拌した。攪拌後の液中に、上記Pt/CeZrOx粉末をゆっくりと投入し、更に2hr撹拌した。攪拌後、この液を減圧下、80℃で3hr乾燥した。更に、550℃で3hr、空気中で焼成し、触媒粒子ユニット原料粉末を得た。この粉末中にCeはCeO2 CeO2として5wt%、ZrはZrO2として5wt%となるようにした。また、この粉末中のPt/CeZrOx粉末と含浸CeO2+含浸ZrO2+ Al2O3の比は50:50である。
【0060】
触媒粒子ユニット原料粉末225g、アルミナゾル25g、水240g、硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリを得た。このスラリをコーデェライト質モノリス担体(0.12L、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリを取り除いて130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成し、コート層200g/Lの触媒層を得た。
【0061】
(実施例8)
実施例8は、助触媒成分である化合物が、La2O3である例である。
【0062】
実施例8は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例7における硝酸Ce及び硝酸Zrから硝酸Laに変えた以外は実施例7と同じ条件で製造した(LaはLa2O3として5wt%)。Pt/CeZrOx粉末とLa2O3+ Al2O3の比は50:50である。
【0063】
(実施例9)
実施例9は、助触媒成分である化合物が、CeとZrとの複合酸化物及びLa2O3である例である。
【0064】
実施例9は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例7における硝酸Ce及び硝酸Zrに、硝酸Laを加えた以外は実施例7と同じ条件で製造した(CeはCeO2として5wt%、ZrはZrO2として3wt%、LaはLa2O3として3wt%)。Pt/CeZrOx粉末とCeO2+ ZrO2+ La2O3+ Al2O3の比は50:50である。
【0065】
(実施例10)
実施例10は、助触媒成分である化合物が、Na2Oである例である。
【0066】
実施例10は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例7における硝酸Ce及び硝酸Zrから酢酸Naに変えた以外は実施例7と同じ条件で製造した(NaはNa2Oとして3wt%)。Pt/CeZrOx粉末とNa2O+ Al2O3の比は50:50である。
【0067】
(実施例11)
実施例11は、助触媒成分である化合物が、K2Oである例である。
【0068】
実施例11は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例7における硝酸Ce及び硝酸Zrから酢酸Kに変えた以外は実施例7と同じ条件で製造した(KはK2Oとして3wt%)。Pt/CeZrOx粉末とK2O+ Al2O3の比は50:50である。
【0069】
(実施例12)
実施例12は、助触媒成分である化合物が、Cs2Oである例である。
【0070】
実施例12は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例7における硝酸Ce及び硝酸Zrから酢酸Csに変えた以外は実施例7と同じ条件で製造した(CsはCs2Oとして3wt%)。Pt/CeZrOx粉末とCs2O+ Al2O3の比は50:50である。
【0071】
(実施例13)
実施例13は、助触媒成分である化合物が、BaOである例である。
【0072】
実施例13は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例7における硝酸Ce及び硝酸Zrから酢酸 Baに変えた以外は実施例7と同じ条件で製造した(BaはBaOとして3wt%)。Pt/CeZrOx粉末とBaO+ Al2O3の比は50:50である。
【0073】
(実施例14)
実施例14は、助触媒成分である化合物が、Fe2O3である例である。
【0074】
実施例14は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例7における硝酸Ce及び硝酸Zrから硝酸Feに変えた以外は実施例7と同じ条件で製造した(FeはFe2O3として5wt%)。Pt/CeZrOx粉末とFe2O3+ Al2O3の比は50:50である。
【0075】
(実施例15)
実施例15は、助触媒成分である化合物が、Ni2O3である例である。
【0076】
実施例15は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例7における硝酸Ce及び硝酸Zrから硝酸Niに変えた以外は実施例7と同じ条件で製造した(NiはNi2O3として5wt%)。Pt/CeZrOx粉末とNi2O3+ Al2O3の比は50:50である。
【0077】
(実施例16)
実施例16は、助触媒成分である化合物が、Mn2O3である例である。
【0078】
実施例16は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例7における硝酸Ce及び硝酸Zrから硝酸Mnに変えた以外は実施例7と同じ条件で製造した(MnはMn2O3として5wt%)。Pt/CeZrOx粉末とMn2O3+ Al2O3の比は50:50である。
【0079】
(実施例17)
実施例17は、貴金属がPd、助触媒成分である化合物が、BaSO4である例である。
【0080】
比表面積70 m2/gのCeO2粉末に硝酸Pd液を担持濃度がPdとして1.0wt%となるように担持した。担持後、150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pd(1.0wt%)/ CeO2x粉末を得た。この粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)170nmのPd/ CeO2粉末とした。
【0081】
また、ベーマイトと酢酸Baと硫酸と水を混合し、1hr撹拌した。攪拌後の液中に、上記Pd/ CeO2粉末をゆっくりと投入し、更に2hr撹拌した。この液を減圧下、80℃で3hr乾燥した。更に、550℃で3hr、空気中で焼成し、触媒粒子ユニット原料粉末を得た。この粉末中にBaはBaSO4として5wt%となるようにした。また、この粉末中のPd/ CeO2粉末とBaSO4+ Al2O3の比は50:50である。
【0082】
触媒粒子ユニット原料粉末225g、アルミナゾル25g、水240g、硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリを得た。このスラリをコーデェライト質モノリス担体(0.12L、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリを取り除いて130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成し、コート層200g/Lの触媒層を得た。
【0083】
(実施例18)
実施例18は、助触媒成分である化合物が、Fe2O3である例である。
【0084】
実施例18は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例17における酢酸Ba及び硫酸から硝酸Feに変えた以外は実施例17と同じ条件で製造した(FeはFe2O3として5wt%)。Pd/ CeO2粉末とFe2O3+ Al2O3の比は50:50である。
【0085】
(実施例19)
実施例19は、助触媒成分である化合物が、Ni2O3である例である。
【0086】
実施例19は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例17における酢酸Ba及び硫酸から硝酸Niに変えた以外は実施例17と同じ条件で製造した(NiはNi2O3として5wt%)。Pd/ CeO2粉末とNi2O3+ Al2O3の比は50:50である。
【0087】
(実施例20)
実施例20は、助触媒成分である化合物が、CeとZrとの複合酸化物である例である。
【0088】
実施例20は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例17における酢酸Ba及び硫酸から硝酸Ce及び硝酸Zrに変えた以外は実施例17と同じ条件で製造した(CeはCeO2として5wt%、ZrはZrO2として5wt%)。Pd/ CeO2粉末とCeO2+ ZrO2+ Al2O3の比は50:50である。
【0089】
(実施例21)
実施例21は、第1の酸化物が、ZrO2である例である。
【0090】
実施例21は、上記実施例20におけるPd/ CeO2粉末の原料である比表面積70 m2/gのCeO2粉末を、比表面積50 m2/gのZrO2粉末に変えた以外は実施例20と同じ条件で製造した。
【0091】
(実施例22)
実施例22は、貴金属がRh、第1の酸化物及び助触媒成分である化合物が、共にZrO2である例である。
【0092】
比表面積50 m2/gのZrO2粉末に硝酸Rh液を担持濃度がRhとして0.3wt%となるように担持した。担持後、150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Rh(0.3wt%)/ ZrO2x粉末を得た。この粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)160nmのRh/ ZrO2粉末とした。
【0093】
また、ベーマイトと硝酸Zrと水を混合し、1hr撹拌した。攪拌後の液中に、上記Rh/ ZrO2粉末をゆっくりと投入し、更に2hr撹拌した。この液を減圧下、80℃で3hr乾燥した。更に550℃で3hr、空気中で焼成し、触媒粒子ユニット原料粉末を得た。この粉末中にZrはZrO2として5wt%となるようにした。また、この粉末中のRh/ ZrO2粉末とZrO2+ Al2O3の比は50:50である。
【0094】
触媒粒子ユニット原料粉末 225g、アルミナゾル25g、水240g、硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリを得た。このスラリをコーデェライト質モノリス担体(0.12L、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリを取り除いて130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成し、コート層200g/Lの触媒層を得た。
【0095】
(実施例23)
実施例23は、第1の酸化物が、LaとZrとの複合酸化物である例である。
【0096】
実施例23は、上記実施例22におけるRh/ ZrO2粉末の原料である比表面積50 m2/gのZrO2粉末を、比表面積55 m2/gのLaZrOx粉末に変えた以外は実施例22と同じ条件で製造した。
【0097】
(実施例24)
実施例24は、助触媒成分である化合物が、CeとZrとの複合酸化物である例である。
【0098】
実施例24は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例23における硝酸Zrから硝酸Ce及び硝酸Zrに変えた以外は実施例23と同じ条件で製造した(CeはCeO2として5wt%、ZrはZrO2として5wt%)。Rh/ ZrO2粉末とCeO2+ ZrO2+ Al2O3の比は50:50である。
【0099】
(実施例25)
実施例25は、助触媒成分である化合物が、La2O3である例である。
【0100】
実施例25は、ベーマイトと共に水に加えて混合する原料を、上記実施例23における硝酸Zrから硝酸Laに変えた以外は実施例23と同じ条件で製造した(LaはLa2O3として5wt%、ZrはZrO2として5wt%)。Rh/ ZrO2粉末とLa2O3+ Al2O3の比は50:50である。
【0101】
上記実施例6〜実施例25の触媒層について、100nm以下の細孔容量及び耐久後の50%転化率温度を求めた結果を表3に示す。
【表3】

【0102】
表3から分かるように、本発明に従う実施例6〜実施例25はいずれも、耐久後の50%転化率温度が低く、低温活性が良好な触媒であった。
【0103】
(実施例26)
実施例26は、製造時における焼成温度条件を異ならせた例である。
【0104】
実施例26は、実施例2における触媒粉末を得る工程の際、焼成温度を400℃とした以外は実施例2と同じ条件で製造した。この実施例26の触媒層について、100nm以下の細孔容量及び耐久後の50%転化率温度を求めた結果を、実施例2の結果と併せて表4に示す。
【表4】

【0105】
表4から分かるように、本発明に従う実施例26は、実施例2と同様に、耐久後の50%転化率温度が低く、低温活性が良好な触媒であった。実施例26と実施例2との対比では、実施例2のほうが、実施例26よりも耐久後の50%転化率温度が低く、より低温活性が良好な触媒であった。
【0106】
(実施例27〜実施例33)
実施例27〜実施例33は、耐火性無機材料からなるハニカム構造の基材に塗布形成された触媒コート層が、内層側及び表層側の合計2層の触媒コート層を有するものである例である。
【0107】
コーデェライト質モノリス担体(1.2L、400セル)に、表5に示すように、各触媒を配置した。焼成温度は各層をコーティング毎に行い、いずれも400℃で1hr、空気中で行った。コート層は内層側150g/L、表層70g/Lとした。
【表5】

【0108】
上記実施例27〜実施例33の触媒層について、100nm以下の細孔容量及び耐久後の50%転化率温度を求めた結果を表5に併せて示す。この表5から分かるように、本発明に係る排気ガス浄化触媒は、2層の触媒コート層を有するものとすることができ、この場合であっても、耐久後の50%転化率温度が低く、低温活性が良好な触媒であった。実施例33は、Rhを有する触媒が内層側にあり、外層側にはない例であるが、この実施例33と比べて、Rhを有する触媒が外層側にある実施例27〜実施例32は、耐久後の50%転化率温度が更に低く、低温活性がいっそう良好な触媒であった。
【0109】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の一実施形態となる排気ガス浄化触媒における、触媒粒子ユニットの模式図である。
【図2】本発明の別の実施形態となる排気ガス浄化触媒における、触媒粒子ユニットの模式図である。
【図3】本発明の別の実施形態となる排気ガス浄化触媒における、触媒粉末の模式図である。
【図4】触媒の細孔径と、全細孔容量との関係の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0111】
10 触媒粒子ユニット
11 貴金属粒子
12 第1の酸化物
13 第2の酸化物
14 助触媒成分である化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒作用を有する貴金属と、この貴金属が担持される第1の酸化物と、この触媒貴金属が担持された第1の酸化物を包む第2の酸化物とを少なくとも有する触媒粒子ユニットを備え、
この触媒粒子ユニットが複数個集まってなる触媒粉末中に、助触媒成分である遷移元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする排気ガス浄化触媒。
【請求項2】
触媒作用を有する貴金属と、この貴金属が担持される第1の酸化物と、この触媒貴金属が担持された第1の酸化物を包む第2の酸化物とを少なくとも有する触媒粒子ユニットを備え、
この触媒粒子ユニットが複数個集まってなる触媒粉末における当該触媒粒子ユニットの第2の酸化物に接して、助触媒成分である遷移元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする排気ガス浄化触媒。
【請求項3】
触媒作用を有する貴金属と、この貴金属が担持される第1の酸化物と、この触媒貴金属が担持された第1の酸化物を包む第2の酸化物とを少なくとも有する触媒粒子ユニットを備え、
この触媒粒子ユニットが複数個集まってなる触媒粉末における当該触媒粒子ユニットの第2の酸化物と、助触媒成分である遷移元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の化合物とが複合化した酸化物を含むことを特徴とする排気ガス浄化触媒。
【請求項4】
細孔径100nm以下の細孔容量が、0.20cm/g以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記触媒貴金属がPtであり、前記第1の酸化物が少なくともCeを含む酸化物であり、前記第2の酸化物が少なくともAlを含む酸化物であり、前記助触媒成分である化合物がNa、K、Cs、Ba、Fe、Ni、Mn、Ce、La及びZrから選ばれる少なくとも1種を含む酸化物、炭酸塩及び硫酸塩の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項6】
前記触媒貴金属がPdであり、前記第1の酸化物がCe及びZrの少なくとも1種を含む酸化物であり、前記第2の酸化物が少なくともAlを含む酸化物であり、前記助触媒成分である化合物がNa、K、Cs、Ba、Fe、Ni、Mn、Ce、La及びZrから選ばれる少なくとも1種を含む酸化物、炭酸塩及び硫酸塩の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項7】
前記触媒貴金属がRhであり、前記第1の酸化物が少なくともZrを含む酸化物であり、前記第2の酸化物が少なくともAlを含む酸化物であり、前記助触媒成分である化合物がFe、Ni、Mn、Ce、La及びZrから選ばれる少なくとも1種を含む酸化物、炭酸塩及び硫酸塩の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒を製造する方法であって、触媒貴金属を第1の化合物に担持した後、この担持した第1の化合物を第2の化合物の原料であるベーマイトと、助触媒成分である化合物との混合物で包み、その後に500℃以上で焼成することを特徴とする排気ガス浄化触媒の製造方法。
【請求項9】
耐火性無機基材に形成されている貫通孔の内面に少なくとも2層の触媒コート層を有し、この触媒コート層の内層側に請求項5又は6に記載の排気ガス浄化触媒を含み、この触媒コート層の表層側に請求項7に記載の排気ガス浄化触媒を含むことを特徴とする排気ガス浄化触媒。
【請求項10】
耐火性無機基材に形成されている貫通孔の内面に少なくとも2層の触媒コート層を有し、この触媒コート層の内層側に請求項5又は6に記載の排気ガス浄化触媒を含み、この触媒コート層の表層側に請求項5又は6に記載の排気ガス浄化触媒と、請求項7に記載の排気ガス浄化触媒とを含むことを特徴とする排気ガス浄化触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−168192(P2008−168192A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2337(P2007−2337)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】