説明

排気ガス浄化触媒

【課題】 ロジウムを含む排気ガス浄化触媒の耐久性を高める。
【解決手段】 少なくとも2層の触媒層を積層してなる排気ガス浄化触媒10である。この排気ガス浄化触媒10は、少なくともRhを含む触媒層11と、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層12とを含む。この{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層12が、少なくともRhを含む触媒層11よりも上層側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する処理に適用して好適な排気ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関から排出される排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物(HC),一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)等の有害物質を除去するために、アルミナ(Al)等の金属酸化物担体に白金(Pt)やロジウム(Rh)等の貴金属粒子を担持した排気ガス浄化触媒が広く利用されるようになっている。従来の排気ガス浄化触媒では、周囲の雰囲気変動に対する貴金属粒子の耐久性を向上させるために、貴金属粒子が多量に用いられている。しかしながら、貴金属粒子を多量に用いることは地球資源保護の観点から見ると望ましくない。
【0003】
このような背景から、最近では、含浸法によってOSC(Oxygen Storage Component:酸素吸蔵物質)材として機能するセリウム(Ce)やマンガン(Mn)等の遷移金属又は遷移金属化合物を貴金属粒子近傍に配置し、貴金属粒子周囲の雰囲気変動を遷移金属又は遷移金属化合物によって抑制することにより、貴金属粒子の耐久性を向上させる試みがなされている(特許文献1〜4参照)。なお、このような方法によれば、貴金属粒子の耐久性向上に加えて、貴金属粒子の活性向上も期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−131830号公報
【特許文献2】特開2005−000829号公報
【特許文献3】特開2005−000830号公報
【特許文献4】特開2003−117393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気ガス浄化触媒に用いられる貴金属粒子のうち、Rh(ロジウム)は、排気ガスの浄化に有効な貴金属であるが、ロジウムは、貴金属資源量が少なく、かつ、コストが高い。したがって、ロジウムを含む排気ガス浄化触媒においては、ロジウムの使用量を少なくすることが求められる。
【0006】
排気ガスを浄化する性能を一定以上保持しつつ、ロジウムの使用量を少なくするための一つの方策は、ロジウム貴金属粒子の粒径を小さくすることである。ロジウム貴金属粒子の粒径を小さくすれば、比表面積が増加するので、排気ガスを浄化する性能を一定以上保持しつつ、ロジウムの使用量を少なくすることが可能である。
【0007】
しかしながら、粒子径が小さいロジウムを含む触媒は、高温や長時間での排気ガス浄化後は触媒浄化性能の低下を招くことがあり、結局のところ、ロジウム使用量は、この性能低下を補うように増加させる必要があった。したがって、ロジウムを含む排気ガス浄化触媒の耐久性を高め、ひいてはロジウムの使用量を減少させた排気ガス浄化触媒が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る排気ガス浄化触媒は、少なくとも2層の触媒層を積層してなり、触媒層が、少なくともRhを含む触媒層と、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層と、を含み、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が、少なくともRhを含む触媒層よりも上層側にあることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る排気ガス浄化触媒によれば、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が、少なくともRhを含む触媒層よりも上層側にあるので、このRhを含む触媒層が排気ガスに直接的に接触することが回避される。これにより、ロジウムを含む排気ガス浄化触媒において、耐久性を向上させることができ、よってロジウム使用量を一層低下させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態となる排気ガス浄化触媒が担持された担体の模式的な斜視図である。
【図2】図1の担体における一つの細孔について、その貫通方向に垂直な断面における拡大断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態となる排気ガス浄化触媒を示す、担体における一つの細孔について、その貫通方向に垂直な断面における拡大断面図である。
【図4】実施例における触媒担体上に積層された触媒層の積層構造の模式図である。
【図5】実施例5の排気ガス浄化触媒の積層構造を示す顕微鏡写真である。
【図6】図5の排気ガス浄化触媒の積層構造の概略図である。
【図7】実施例における耐久後の貴金属粒子径とHC50%転化率温度との関係について示すグラフである。
【図8】実施例における触媒層の厚さとHC50%転化率温度との関係について示すグラフである。
【図9】実施例における触媒層中の遷移全素の酸化物の平均粒子径とHC50%転化率温度との関係について示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の排気ガス浄化触媒の実施形態について、図面を用いつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態となる排気ガス浄化触媒が担持された担体の模式的な斜視図である。図1に示された担体1は、耐熱性材料からなり、概略円柱形状を有し、一方の端面から他方の端面との間を貫通する多数の細孔1aを有している。なお、図1では、発明の理解を容易にするよう細孔1aを模式的に描いている。そのため、細孔1aの形状、寸法及び個数は現実の担体細孔とは相違している。
【0013】
図2に、図1の担体1における一つの細孔1aについて、その貫通方向に垂直な断面における拡大断面図を示す。図2の拡大断面図に示されるように、本発明の一実施形態となる排気ガス浄化触媒10が担持されている。図2に示す排気ガス浄化触媒10は、担体1の内面上に、第1の触媒層11及び第2の触媒層12の合計2層の触媒層が積層されてなる。そして、これらの2層の触媒層のうち、第1の触媒層11が少なくともRhを含む触媒層であり、第2の触媒層12が{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層である。しかも、この第2の触媒層12が第1の触媒層11よりも上層側、すなわち、担体の内壁からみて上側に位置している。
【0014】
図3は、本発明の別の実施形態となる排気ガス浄化触媒を示す、担体1における一つの細孔1aについて、その貫通方向に垂直な断面における拡大断面図である。図2に示す排気ガス浄化触媒20は、担体1の内面上に、第1の触媒層11、第2の触媒層12及び第3の触媒層13の合計3層の触媒層が積層されてなる。そして、これらの3層の触媒層のうち、いずれか一層が、少なくともRhを含む触媒層であり、いずれか一層が{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層であり、かつ、この{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が、この少なくともRhを含む触媒層よりも上層側にあるように構成されている。一例としては、第1の触媒層11が少なくともRhを含む触媒層であり、第2の触媒層12が{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層であり、第3の触媒層が、第1の触媒層11及び第2の触媒層12とは異なる触媒層とすることができる。
【0015】
Rhを含む触媒層は、排気ガスの浄化に有効な触媒層であるが、このRhを含む触媒層が、高温や高濃度の排気ガスに直接触れると劣化してしまう。そこで、本発明の排気ガス浄化触媒では、Rhを含む触媒層の他に{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層を備えることとし、この{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が、Rhを含む触媒層よりも上層側に位置するようにしている。このことにより、本発明の排気ガス浄化触媒は、担体に担持されて排気ガスの浄化に供されたとき、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が、Rhを含む触媒層よりも優先的に排気ガスに触れることになる。このことにより、高濃度の排気ガスが直接的にRhに当たることを防ぐことができ、これによりRhが高温や長時間での排気ガス浄化により劣化することを抑制することができ、よってRhを有効に利用することができる。また、本発明の排気ガス浄化触媒は、排気ガス中における分子量の大きなHCが、Rhを含む触媒層よりも上層側に設けられた{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む層によって部分酸化される。このことによってもRhが高温や長時間での排気ガス浄化した場合にHCにより劣化することを抑制することができる。そのため、Rhをいっそう有効に利用することができる。
【0016】
以上のことから、本発明の排気ガス浄化触媒においては、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の遷移元素の酸化物を含む層とRhを含む層とがそれぞれ触媒層としてなり、積層されていることが必要である。かつ、この{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の遷移元素の酸化物を含む層が、Rhを含む層よりも上層側にあることが必要である。
【0017】
Rhを含む層は、好ましい態様を後述するが、排気ガス浄化に優れた性能を有するRhを、貴金属粒子の形態で少なくとも有している層である。
【0018】
Rhを含む層よりも上層側にある触媒層が、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の遷移元素の酸化物を含む層であるのは、{Fe, Mn, Ni, Co}の遷移元素の酸化物が、いずれも、排気ガス触媒作用を有する化合物であり、特に排気ガス中のHCを部分酸化して無害化することができる化合物であるからである。具体例は、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルトである。この触媒層中には、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含んでいれば良いが、2種以上の酸化物を含んでいても良く、また、これらの遷移元素を含む複合酸化物を含んでいてもよい。
【0019】
Rhを含む層よりも上層側に位置する{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の遷移元素の酸化物を含む層は、担体の細孔の内においてRhを含む触媒層の全面を覆っても良いが、触媒層の一部、より詳しくは担体の細孔内における排気ガス流の上流側だけを覆うように形成されてでも効果を発揮する。この場合、担体における細孔の貫通方向の長さの三分の一以上を覆うことが好ましい。
【0020】
なお、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の遷移元素の酸化物を含む層が、Rhを含む触媒層よりも優先的に排気ガスに触れるという観点からは、本発明に従い触媒層の厚さ方向に複数の触媒層を積層させたものとは異なる排気ガス浄化触媒の構成として、担体における細孔の貫通方向にて、排気ガス流の上流側に{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の遷移元素の酸化物を含む層を形成し、下流側にRhを含む触媒層を形成した排気ガス浄化触媒の構造も考えられる。しかしながら、このような構造では、排気ガス浄化性能を十分に発揮できない。これは、Rhを含む触媒層が、担体における細孔の貫通方向にて、排気ガス流の下流側に形成されている場合には、排気ガス温度が低温になるために触媒活性が低下し、十分な浄化性能を発揮できないためである。そのため、本発明の排気ガス浄化触媒では、担体の内壁から触媒層の厚さ方向にRhを含む触媒層と、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の遷移元素の酸化物を含む層とを積層させた構成とする。
【0021】
触媒層が3層以上を積層されてなる場合には、少なくともRhを含む触媒層と、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層との位置関係については、この{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が、少なくともRhを含む触媒層よりも上層側にありさえすれば、特に限定されない。
【0022】
より好ましくは、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が、最表層に位置することが好ましい。Rhの耐久劣化を考えた場合に、本発明に従い、これらの遷移元素の酸化物を含む触媒層がRhを含む触媒層よりも上層側に位置することによって、Rhを含む触媒層には高濃度の排気ガスが直接に当たらず、これによりRhの劣化を抑制できる。そして、図3に示したような3層からなる触媒の場合又はそれ以上の数の触媒層からなる触媒の場合には、これらの遷移元素の酸化物を含む触媒層が最表層に位置することにより、性能向上を図ることができる。これは、遷移元素の酸化物を含む触媒層が最表層に位置することにより、Rhを含む触媒層のみならず、その他の触媒層の劣化抑制もできるからだと考えられる。なお、図2に示した2層からなる触媒の場合には、当然に遷移元素の酸化物を含む触媒層が最表層に位置することになる。
【0023】
本発明の排気ガス浄化触媒が3層の触媒層を積層してなり、少なくともRhを含む触媒層と、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層と、その他の触媒層とを具備する場合に、当該少なくともRhを含む触媒層をA層とし、当該{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層をB層とし、それら以外の触媒層をC層とすると、表層側から担体の内壁に向けた触媒層の積層構造の好ましい例としては、
(1) B層−A層−C層の順、
(2) B層−C層−A層の順、
(3) C層−B層−A層の順、
がある。これらの3例のうち、性能向上が図られるために上記(1)の例が最も好ましく、次に(2)の例が好ましい。なお、本発明の排気ガス浄化触媒は、上記(1)〜(3)の例に限られるものではない。
【0024】
少なくともRhを含む触媒層と、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層とは、互いに接していることが、より好ましい。{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が最表層に位置する場合に、この最表層の触媒層の直下に、すなわち、この最表層の触媒層に接して、Rhを含む触媒層が位置することにより、Rhを含む触媒層への排気ガスの拡散性が十分に確保されるので、触媒性能を向上させることができる。逆に、最表層の触媒層とRhを含む触媒層との間に、1又は2以上の他の触媒層がある場合には、Rhを含む触媒層への排気ガスの拡散性に十分でなく、排気ガス浄化性能の向上が十分に図れない可能性がある。なお、排気ガス浄化触媒が2層の触媒層からなる場合には、少なくともRhを含む触媒層と、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層とが、互いに接しているのは当然である。
【0025】
{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層は、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物同士を接着する効果のある化合物を更に含むことが好ましい。{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる遷移元素は、そのままでは触媒層として成立させることは難しく、バインダと呼ばれる材料が必要になる。バインダがなければ、担体に形成された触媒層が剥離し易い。そのため、バインダとして、これらの遷移元素の酸化物同士を接着する効果のある化合物を含むことが好ましい。このバインダには、一般にAl2O3ゾルやZrO2ゾルがあり、Al2O3ゾルやZrO2ゾルは、いずれも本発明の排気ガス浄化触媒において適用することができる。もっとも、Al2O3ゾルを用いた場合には、遷移元素がAl2O3に固溶し、その結果、遷移元素の触媒としての効果が十分に発揮できない場合がある。そのため、バインダは遷移元素と固溶し難いゾルを使うことが好ましく、そのためにZrO2ゾルが、より好適である。
【0026】
本発明の排気ガス浄化触媒が、3層以上の触媒層からなる場合に、Rhを含む触媒層及び{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層以外の触媒層は、Pt及びPdの少なくとも1種を含む触媒層であることが好ましい。Pt及びPdはいずれも、排気ガス浄化性能を有する貴金属であり、これらの貴金属の少なくとも1種を有する触媒層を具備することにより、本発明の排気ガス浄化触媒としての機能が高まる。Pt及びPdの少なくとも含む触媒層は、Ptを含む触媒層、Pdを含む触媒層、Pt及びPdの両方を含む触媒層のいずれの場合であっても良い。また、これらの貴金属を含む触媒層を複数層で具備する構成とすることもできる。さらに、本発明の排気ガス浄化触媒において貴金属を含む触媒層の位置は問わない。もっとも、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層は最表層が好ましく、Rhを含む触媒層が、この最表層の遷移元素の酸化物を含む触媒層と互いに接していることが好ましいことを考慮すると、上記Pt及びPdの少なくとも1種を含む触媒層は、Rhを含む触媒層よりも下層側(担体の側壁側)に位置することが好ましい。
【0027】
{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層は、更に酸素吸放出能を持つ酸化物を含むことができる。酸素吸放出能をもつ材料、例えばCeO2、Ce-Zr-Ox、Pr6O11等が上述した遷移元素と同じ層に存在することにより、遷移元素上での酸素授受がより効率よくできるようになり、本発明の効果が高まる。
【0028】
この酸素吸放出能を持つ酸化物は、{Ce, Pr, Nd, Y}から選ばれる少なくとも一種の酸化物からなるものが好ましい。これらちの酸化物は、優れた酸素吸放出能を具備しているからである。具体的には、CeO2、Ce-Zr-Ox、Pr6O11、Ce-Zr-Nd-Ox、Ce-Zr-Y-Oxなどがある。
【0029】
本発明の排気ガス浄化触媒は、更に{Ba,Mg,Ca,Na,Cs}から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことができる。Ba等の化合物は、リーン条件でNOxを吸着することができることから、排気ガス浄化触媒が、{Ba,Mg,Ca,Na,Cs}から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことにより、リーン条件でNOxを吸着し、リッチ条件でこの吸着したNOxを浄化する触媒として機能することができる。これらのNOxを吸着する化合物は、積層された全ての触媒層中に含ませることが製造プロセス有利であるが、複数層の触媒層のうちの一部の触媒層に含ませることもできる。
【0030】
本発明の排気ガス浄化触媒において、貴金属の平均粒子径が20nm以下であることが好ましい。Rhを含む触媒層中のRh並びにそれら以外の触媒層中に含まれることのあるPt及び/又はPdについて、平均粒子径が20nmを超える触媒、例えば劣化後の触媒では、本発明の効果が少ない。平均粒子径が20nm以下、特に10nm以下の領域では、貴金属粒子径に対する表面積増大効果が高く、Rhが表面に露出することになる。このような平均粒子径が20nm以下の微粒子の貴金属粒子は、一般に高温や長期間の排気ガス浄化によって劣化し易い。これに対し、本発明の排気ガス浄化触媒の構成によれば、このような平均粒子径が20nm以下の微粒子の貴金属粒子である場合であっても耐久性を向上させることができる。よって本発明は、耐久後に平均粒子径が20nm以下であるもの、又は初期のもの(平均粒子径1nm以下のもの)である場合に、特に効果が高い。なお、貴金属の平均粒子径の下限は特に限定されない。工業的に生産する場合には製造プロセスにより実施できる貴金属の平均粒子径の下限があり得るが、そのような下限値に限られない。
【0031】
貴金属を含む触媒層を構成する触媒粉末は、貴金属と、該貴金属と接触し貴金属の移動を抑制する働きを持つ化合物と、該貴金属と該化合物を覆い該貴金属の移動を抑制し、かつ、化合物同士の接触による凝集を抑制する酸化物と、からなることが好ましい。排気ガス浄化能を有する貴金属粒子を、この貴金属粒子と接触し貴金属の移動を抑制する働きを持つ化合物に担持させることにより、この化合物が化学的結合のアンカー材として作用し、貴金属粒子の移動を化学的に抑制する。そして、この貴金属粒子を担持した化合物を覆って酸化物を形成することにより、この酸化物が貴金属の移動を物理的に抑制する。更に、この酸化物が、貴金属粒子を担持した化合物の間に介在するので、その化合物同士はこの酸化物によって隔てられる。これにより、貴金属粒子を担持した化合物が相互に接触して凝集するのを抑制する。貴金属粒子を担持した化合物の凝集抑制は、貴金属粒子の凝集抑制に寄与する。これらのことから、このような化合物と酸化物とを有する触媒粉末は、耐久後も貴金属粒子の凝集を抑制して、貴金属粒子の平均粒子径を5〜15nm程度に抑制することができ、本発明の効果が特に高い。
【0032】
{ Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層の厚さは、20μm以下であることが好ましい。Rh触媒層上に積層する、遷移元素の酸化物を含む触媒層が厚すぎると、ガス拡散性が損なわれるため、かかる遷移元素の酸化物を含む触媒層の厚さをコントロールする必要がある。発明者らが鋭意検討した結果、遷移元素の酸化物を含む触媒層を積層させる場合に、厚さが20μm以下であると、効果が大きくそれ以上であると効果が小さくなることを見出した。よって、かかる触媒層の厚さは20μm以下であることが好ましい。触媒層の厚さの下限値は特に限定されない。もっとも、あまりに厚さが薄いと担体上に触媒層を形成したときにこの触媒層の剥離を生じるおそれがあるので、剥離を生じない工業的な生産上の観点からの下限値があり得るが、そのような下限値に限られない。
【0033】
前記{Fe,Mn,Ni,Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物の粒子径は2μm以下であることが好ましい。遷移元素の酸化物粒子径が2μm以下になると更に本発明効果が促進されるからである。これは、酸化物粒子が小さくなることにより、比表面積が向上し、排気ガスとの接触が良くなるためであると考える。
【0034】
本発明の排気ガス触媒を製造する際は、少なくともRhを含む触媒層用の触媒スラリーと、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層用の触媒用スラリーと、必要に応じてその他の触媒層用のスラリーとを夫々準備し、担体に順次に付着させ乾燥、焼成して夫々の触媒層を形成する。各触媒層用のスラリーの調製法は、特に限定されず、公知の方法により実施することができる。また、{Ba,Mg,Ca,Na,Cs}から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む場合は、担体に各触媒層を積層したのちに、これらの化合物又はその原料のスラリー又は溶液中に担体を含浸させた後、乾燥、焼成することにより、これらの化合物を触媒層中に含ませることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。以下に述べる各実施例は、図4に、触媒担体上に積層された触媒層の積層構造の模式図を示すように、触媒層の積層構造に関して、担体1の内面上に合計2層の触媒層を積層した例(図4(a))及び合計3層の触媒層を積層した例(図4(b)及び(c))とした。担体1の細孔中を通過する排気ガスの流動方向を図中の矢印Gで示した。図4(a)は、触媒層1(図中の符号11)と触媒層2(図中の符号12)の合計2層の触媒層を積層した積層構造、図4(b)は、触媒層1(図中の符号11)と触媒層2(図中の符号12)と触媒層3(図中の符号13)の合計3層の触媒層を積層した積層構造、図4(c)は、合計3層の触媒層を積層した積層構造であって、最表層の触媒層3A(図中の符号13A)が、その直下の触媒層2の一部を覆うように形成されたもの、図4(d)は比較例であって、担体の細孔における排気ガス流の上流側と下流側とで異なる触媒層2及び触媒層1をそれぞれ1層形成した構造である。
【0036】
なお、以下の全ての実施例、比較例とも、担体1(図中の符号1)と触媒層1(図中の符号11)との間に、下地にアルミナの層14が形成されている。
【0037】
まず、図4(a)の触媒層に相当する、積層された触媒層が合計2層からなる排気ガス浄化触媒として、実施例1〜4及び比較例1〜2の排気ガス浄化触媒を、以下の工程により作成した。
【0038】
(実施例1)
実施例1は、触媒層1がRhを含む触媒層、触媒層2がFeの酸化物を含む触媒層の例である。
【0039】
比表面積70[m2/g]のLa含有ZrO2に硝酸Rh溶液を含浸し、担持濃度が0.1[wt%]となるように担持した。これを150[℃]で一昼夜乾燥後、400[℃]で1時間焼成し粉末Aを得た。この粉末Aを225[g]、アルミナゾル25[g]、水240[g]及び硝酸10[g]を、磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーを得た。得られたスラリーをコーディエライト質モノリス担体(0.12[L]、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて150[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層100[g/L]の触媒層1を得た。
【0040】
また、酸化鉄225[g]、ジルコニアゾル25[g]、水240[g]及び硝酸10[g]を、磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーを得た。得られたスラリーを触媒層1上に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて150[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層[30g/L]の触媒層2を得た。
【0041】
(実施例2)
実施例2は、触媒層1がRhを含む触媒層、触媒層2がMnの酸化物を含む触媒層の例である。
【0042】
工程は、実施例1の酸化鉄を酸化マンガンに変えた以外は実施例1と同じである。
【0043】
(実施例3)
実施例3は、触媒層1がRhを含む触媒層、触媒層2がNiの酸化物を含む触媒層の例である。
【0044】
工程は、実施例1の酸化鉄を酸化ニッケルに変えた以外は実施例1と同じである。
【0045】
(実施例4)
実施例4は、触媒層1がRhを含む触媒層、触媒層2がCoの酸化物を含む触媒層の例である。
【0046】
工程は、実施例1の酸化鉄を酸化コバルトに変えた以外は実施例1と同じである。
【0047】
(比較例1)
比較例1は、複数の触媒層が積層されてなく、触媒層1のみを有する例である。
【0048】
工程は、実施例1における触媒層1の作成過程で得た触媒をそのまま使った以外は実施例1と同じである。
【0049】
(比較例2)
比較例2は、図4(d)の触媒層に相当する、担体の細孔における排気ガス流の上流側と下流側とで異なる触媒層2及び触媒層1をそれぞれ1層形成した例である。
【0050】
酸化鉄225[g]、ジルコニアゾル25[g]、水240[g]、硝酸10[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーを得た。得られたスラリーをコーディエライト質モノリス担体(0.12[L]、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて150[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層100g/Lの触媒層2を得た。
【0051】
かくして得た触媒を、0.04[L]となるように切断し、これを比較例1の触媒の前段に配置した。
【0052】
以上述べた実施例1〜4及び比較例1〜2の排気ガス浄化触媒について、排気ガス浄化性能を調べた。この排気ガス浄化性能の評価は、排気量3500[cc]のガソリンエンジンの排気系に、各実施例又は各比較例の排気ガス浄化触媒を担持した担体を装着し、触媒入口温度を150[℃]から500[℃]で昇温速度10[℃/分]で昇温し、その昇温過程にわたって転化率を測定した。転化率の計算は、次式による。
【0053】
HC転化率(%)=[(触媒入口HC濃度)−(触媒出口HC濃度)]/(触媒入口HC濃度)×100
CO転化率(%)=[(触媒入口CO濃度)−(触媒出口CO濃度)] /(触媒入口CO濃度)×100
NOx転化率(%)=[(触媒入口NOx濃度)−(触媒出口NOx濃度)/(触媒入口NOx濃度)×100
上記式により計算される転化率が50%となる温度を50%転化率温度と定義して、この50%転化率温度によって排気ガス浄化性能を評価した。この50%転化率温度が低いほうが低温活性が良い、優れた触媒と言える。
【0054】
上記実施例1〜4及び比較例1〜2の排気ガス浄化触媒の50%転化率温度を、各実施例及び各比較例の排気ガス浄化触媒における各触媒層の貴金属種又は酸化物の金属種と共に表1に示す。表1から、実施例1〜4は、低温活性に優れており、優れた排気ガス浄化性能を有していた。これに対して、比較例1は、触媒層2を積層してないため、各実施例よりも50%転化率温度が高かった。また排気ガス流の上流側に触媒層2を下流側に触媒層1を設けた比較例2は、比較例1と同程度の50%転化率温度であった。この比較例2と実施例1との比較から、複数の触媒層を積層させた実施例1のほうが、複数の触媒層を排気ガス流の上流側、下流側に設けた比較例2よりも低温活性が良い、優れた触媒であった。
【表1】

【0055】
次に、図4(b)又は図4(c)の触媒層に相当する、積層された触媒層が合計3層からなる排気ガス浄化触媒として、実施例5〜9及び比較例3〜5の排気ガス浄化触媒を以下の工程により作成した。また、図4(a)の積層構造になるが、本発明の要件を満たさない比較例6〜7の排気ガス浄化触媒を以下の工程により作成した。
【0056】
(実施例5)
実施例5は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例である。
【0057】
比表面積70[m2/g]のLa含有ZrO2に硝酸Rh溶液を含浸し、担持濃度が0.4[wt%]となるように担持した。これを150[℃]で一昼夜乾燥後、400[℃]で1時間焼成し粉末Bを得た。この粉末Bを225[g]、アルミナゾル25[g]、水240[g]及び硝酸10[g]を、磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーAを得た。
【0058】
また、比表面積80[m2/g]のCe、La含有ZrO2に硝酸Pd溶液を含浸し、担持濃度が1.6[wt%]となるように担持した。これを150[℃]で一昼夜乾燥後、400[℃]で1時間焼成し粉末Cを得た。この粉末Cを225[g]、アルミナゾル25[g]、水240[g]及び硝酸10[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーBを得た。
【0059】
また、酸化鉄225[g]、ジルコニアゾル25[g]、水240[g]及び硝酸10[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーCを得た。
【0060】
次に、上記スラリーBをコーディエライト質モノリス担体(0.12[L]、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて150[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層150[g/L]の触媒層1を得た。
【0061】
次に、上記スラリーAをこの触媒層1の上に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて150[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層50[g/L]の触媒層2を得た。
【0062】
次に、上記スラリーCを触媒層2の上に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて150[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層30[g/L]の触媒層3を得た。
【0063】
(実施例6)
実施例6は、触媒層1がRhを含む触媒層、触媒層2がFeの酸化物を含む触媒層、触媒層3がPdを含む触媒層の例である。
【0064】
工程は、実施例5における触媒層の積層のさせ方を担体に近い側からスラリーA、スラリーC、スラリーBの順にした以外は実施例5と同じである。
【0065】
(実施例7)
実施例7は、触媒層1がRhを含む触媒層、触媒層2がPdを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例である。
【0066】
工程は、実施例5における積層のさせ方を担体に近い側からスラリーA、スラリーB、スラリーCの順にした以外は実施例5と同じである。
【0067】
(実施例8)
実施例8は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、図4(c)に示すような、最表層の触媒層3が、担体の細孔における排気ガス流の上流側のみに形成されている例である。
【0068】
工程は、実施例5における積層のさせ方を担体に近い側からスラリーB、スラリーAの順にした後、容器に収容されたスラリーC中に触媒層1及び触媒層2が形成された担体における排気ガス流の上流側に相当する部分(貫通孔の貫通方向の二分の一の長さの範囲)のみを浸漬させることにより、スラリーCを触媒層の上に部分的に付着させた以外は実施例5と同じである。
【0069】
(実施例9)
実施例9は、触媒層1がPtを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例である。
【0070】
比表面積70[m2/g]のLa含有ZrO2に硝酸Rh溶液を含浸し、担持濃度が0.2[wt%]となるように担持した。これを150[℃]で一昼夜乾燥後、400[℃]で1時間焼成し粉末Dを得た。この粉末Dを225g、アルミナゾル25g、水240g、硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーDを得た。
【0071】
また、比表面積160[m2/g]のLa、Ce及びZr含有Al2O3にジニトロジアミンPt溶液を含浸し、担持濃度が0.2[wt%]となるように担持した。これを150[℃]で一昼夜乾燥後、400[℃]で1時間焼成し粉末Eを得た。この粉末Eを225[g]、アルミナゾル25[g]、水240[g]及び硝酸10[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーEを得た。
【0072】
また、酸化鉄225[g]、アルミナゾル25[g]、水240[g]及び硝酸10[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーFを得た。
【0073】
次に、上記スラリーEをコーディエライト質モノリス担体(0.12[L]、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて150[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層150[g/L]の触媒層1を得た。
【0074】
次に、上記スラリーDをこの触媒層1の上に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて150[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層50[g/L]の触媒層2を得た。
【0075】
次に、上記スラリーFを触媒層2の上に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて150[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層30[g/L]の触媒層3を得た。
【0076】
(比較例3)
比較例3は、酸化鉄層が図4(b)の触媒層2であり、Rh層が触媒層3である例である。
【0077】
工程は、実施例5の積層のさせ方を担体に近い側からスラリーB、スラリーC、スラリーAの順にした以外は実施例5と同じである。
【0078】
(比較例4)
比較例4は、酸化鉄層が図4(b)の触媒層1であり、Rh層が触媒層3である例である。
【0079】
工程は、実施例5の積層のさせ方を担体に近い側からスラリーC、スラリーB、スラリーAの順にした以外は実施例5と同じである。
【0080】
(比較例5)
比較例5は、酸化鉄層が図4(b)の触媒層1であり、Rh層が触媒層2である例である。
【0081】
工程は、実施例5の積層のさせ方を担体に近い側からスラリーC、スラリーA、スラリーBの順にした以外は実施例5と同じである。
【0082】
(比較例6)
比較例6は、酸化鉄層を有しないで2層を積層した例であり、かつ、貴金属を含む触媒層がPdを含む触媒層である例である。
【0083】
工程は、実施例5の積層のさせ方を担体に近い側からスラリーB、スラリーAの順にした以外は実施例5と同じである。
【0084】
(比較例7)
比較例7は、酸化鉄層を有しないで2層を積層した例であり、かつ、貴金属を含む触媒層がPtを含む触媒層である例である。
【0085】
工程は、実施例9の積層のさせ方を担体に近い側からスラリーE、スラリーDの順にし以外は実施例9と同じである。
【0086】
以上述べた実施例5〜9及び比較例3〜7の排気ガス浄化触媒について、排気ガス浄化性能を、耐久試験の前後でそれぞれ調べた。耐久試験は、排気量3500[cc]のガソリンエンジンの排気系に各実施例又は各比較例の排気ガス浄化触媒を担持した担体を装着し、触媒入口温度を700℃とし、50時間運転した。また、排気ガス浄化性能の評価は、前述した50%転化率温度により行った。
【0087】
上記実施例5〜9及び比較例3〜7の排気ガス浄化触媒の耐久試験前後の50%転化率温度を、各実施例及び各比較例の排気ガス浄化触媒における各触媒層の貴金属種又は酸化物の金属種と共に表2に示す。表2から、実施例5〜9は、表1に示した実施例1〜4と比べて更に低温活性に優れており、優れた排気ガス浄化性能を有していた。実施例5〜7の対比により、遷移元素であるFeの酸化物を含む触媒層が最表層にあり、かつRh層と接している実施例5が最も優れた排気ガス浄化性能を有していた。また、実施例8のように、Feの酸化物を含む触媒層が、Rhを含む触媒層の一部を覆っている場合であっても本発明の効果が得られた。さらに、実施例9のように、Rh以外の貴金属を含む触媒層が、Ptである場合であっても本発明の効果が得られた。これに対して、比較例3〜5は、Feの酸化物を含む触媒層が、Rhを含む触媒層よりも担体に近い側に位置していたため、実施例5〜7よりも耐久前後での50%転化率温度が高かった。また、比較例6、7は、Feの酸化物を含む触媒層を有していなかったため、特に耐久後の50%転化率温度が高く、排気ガス浄化性能が実施例5〜7よりも劣っていた。
【0088】
図5に実施例5の排気ガス浄化触媒の積層構造を示す顕微鏡写真を示す。図5(a)、(b)は、同一箇所についての顕微鏡写真であり、図5(a)が日立ハイテク社製 走査型顕微鏡(FE-SEM) S-4000を用いた写真、図5(b)は島津製作所製 電子線マイクロアナライザー(EPMA) EPMA-1600を用いて成分分析を行った図5(a)と同じ試料の同じ部分についての同じ倍率での写真である。図5(b)では、触媒層3中に含まれるFeによって触媒層3の部分が白く見えている。すなわち、図5(b)で白く見える部分が触媒層3の部分である。また、図6に、図5(a)の排気ガス浄化触媒の積層構造を概略的に描写して示す。図6において、担体1の内面上に、触媒層1(図中の符号11)、触媒層2(符号12)、触媒層3(符号13)の順に形成されている。なお触媒層1の下地にアルミナの層14が形成されている。
【表2】

【0089】
次に、図4(b)の触媒層に相当する、積層された触媒層が合計3層からなる排気ガス浄化触媒として、実施例10及び11の排気ガス浄化触媒を以下の工程により作成した。
【0090】
(実施例10)
実施例10は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、この触媒層3に含まれるバインダがアルミナである。
【0091】
工程は、実施例5のスラリーC中のジルコニアゾルをアルミナゾルに変えた以外は実施例5と同じである。
【0092】
(実施例11)
実施例11は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、この触媒層3にバインダを含まないものである。
【0093】
工程は、実施例5のスラリーC中のジルコニアゾルを無くした以外は実施例5と同じである。
【0094】
以上述べた実施例10及び11の排気ガス浄化触媒について、排気ガス浄化性能を、耐久試験の前後でそれぞれ調べた。耐久試験及び排気ガス浄化性能の評価は、前述したのと同じである。
【0095】
上記実施例10及び11の排気ガス浄化触媒の耐久試験前後の50%転化率温度を、これらの実施例との対比のために示す前述の実施例5及び比較例6と、各実施例及び比較例の排気ガス浄化触媒における各触媒層の貴金属種又は酸化物の金属種と、各実施例の触媒層3のバインダの種類と共に表3に示す。表3から、Feの酸化物を含む触媒層中にバインダを含まない実施例11は、Feの酸化物を含む触媒層を有しない比較例6よりは優れるが、比較例6とあまり変わらない性能であった。これは、耐久後はバインダがないと剥離するため、転化率が低かったものである。また、バインダがアルミナである実施例10は、比較例6よりも優れた性能が得られた。この実施例10と実施例5と対比すると、バインダがAl2O3である実施例10よりもバインダがZrO2である実施例5のほうが効果が高かった。これは、バインダがAl2O3である実施例10は、遷移元素がAl2O3に固溶するため実施例5よりも効果が低かったものである。
【表3】

【0096】
次に、図4(b)の触媒層に相当する、積層された触媒層が合計3層からなる排気ガス浄化触媒として、実施例12〜16の排気ガス浄化触媒を以下の工程により作成した。
【0097】
(実施例12)
実施例12は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3に酸素吸放出材としてCeO2が含まれる例である。
【0098】
工程は、実施例5の触媒スラリーCについて、酸化鉄175[g]、セリア50[g]、ジルコニアゾル25[g]、水240[g]、硝酸10[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーCを得た以外は実施例5と同じである。
【0099】
(実施例13)
実施例13は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3に酸素吸放出材としてCe−Zr−Oxが含まれる例である。
【0100】
工程は、実施例12のCeO2をCe−Zr−Oxと変えた以外は実施例12と同じである。
【0101】
(実施例14)
実施例14は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3に酸素吸放出材としてCe−Pr−Oxが含まれる例である。
【0102】
工程は、実施例12のCeO2をCe−Pr−Oxと変えた以外は実施例12と同じである。
【0103】
(実施例15)
実施例15は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3に酸素吸放出材としてCe−Zr−Nd−Oxが含まれる例である。
【0104】
工程は、実施例12のCeO2をCe−Zr−Nd−Oxと変えた以外は実施例12と同じである。
【0105】
(実施例16)
実施例16は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3に酸素吸放出材としてCe−Zr−Y−Oxが含まれる例である。
【0106】
工程は、実施例12のCeO2をCe−Zr−Y−Oxと変えた以外は実施例12と同じである。
【0107】
以上述べた実施例10及び11の排気ガス浄化触媒について、排気ガス浄化性能を、耐久試験の前後でそれぞれ調べた。耐久試験及び排気ガス浄化性能の評価は、前述したのと同じである。
【0108】
上記実施例12〜16の排気ガス浄化触媒の耐久試験前後の50%転化率温度を、これらの実施例との対比のために示す前述の実施例5と、各実施例の排気ガス浄化触媒における各触媒層の貴金属種又は酸化物の金属種と、各実施例の触媒層3中の酸素吸放出材の種類と共に表4に示す。表4から、Feの酸化物を含む触媒層中に酸素吸放出材を含む実施例12〜16は、酸素吸放出材を含まない実施例5よりも優れた転化率を示した。
【表4】

【0109】
次に、図4(b)の触媒層に相当する、積層された触媒層が合計3層からなる排気ガス浄化触媒として、実施例17の排気ガス浄化触媒を以下の工程により作成した。
【0110】
(実施例17)
実施例17は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であり、この触媒層1及び触媒層2に用いられる粉末が、貴金属と、該貴金属と接触し貴金属の移動を抑制する働きを持つ化合物と、該貴金属と該化合物を覆い該貴金属の移動を抑制し、かつ、化合物同士の接触による凝集を抑制する酸化物と、からなる例である。
【0111】
比表面積80[m2/g]のCe、La含有ZrO2粉末に硝酸Pd溶液を担持濃度がPdとして3.2[wt%]となるように担持した。これを150[℃]で一昼夜乾燥後、400[℃]で1時間焼成して、Pd(3.2[wt%])/Ce、Zr含有ZrO2粉末Gを得た。この粉末Gを粉砕し、平均粒子径(D50)200nmのPd/Ce、La−ZrO2粉末とした。一方、ベーマイトと硝酸と水とを混合し、1[hr]撹拌した。この中に上記Pd/Ce、La−ZrO2粉末をゆっくりと投入し、更に2[hr]撹拌した。次いで、減圧下、80[℃]で3[hr]乾燥した後、550[℃]で3[hr]、空気中で焼成し、粉末Hを得た。この粉末H中の粉末GとAl2O3との比は50:50である。
【0112】
この粉末Hを225[g]、アルミナゾル25[g]、水240[g]、硝酸10[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーを得た。得られたスラリーをコーディエライト質モノリス担体(0.12[L]、400セル)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて130[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層150[g/L]の触媒層1を得た。
【0113】
次に、比表面積70[m2/g]のLa含有ZrO2粉末に硝酸Rh液を担持濃度がRhとして0.8wt%となるように担持した。これを150[℃]で一昼夜乾燥後、400[℃]で1時間焼成して、Rh(0.8wt%)/La−ZrO2x粉末Iを得た。この粉末Iを粉砕し、平均粒子径(D50)160nmのRh/La−ZrO2粉末とした。一方、ベーマイトと水とを混合し、1[hr]撹拌した。この中に上記粉末Iをゆっくりと投入し、更に2[hr]撹拌した。次いで減圧下、80[℃]で3[hr]乾燥した後、550[℃]で3[hr]、空気中で焼成し、粉末Jを得た。この粉末J中の粉末IとAl2O3との比は50:50である。
【0114】
この粉末Jを225[g]、アルミナゾル25[g]、水240[g]、硝酸10[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーを得た。この触媒スラリーを触媒層1上に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて130[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層50[g/L]の触媒層2を得た。
【0115】
次に、酸化鉄225[g]、ジルコニアゾル25[g]、水240[g]、硝酸10[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し触媒スラリーを得た。この触媒スラリーを触媒層2上に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いて130[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、コート層30[g/L]の触媒層を得た。
【0116】
上記実施例17の排気ガス浄化触媒の耐久試験前後の50%転化率温度及び耐久試験前後の貴金属粒子径を、これらの実施例との対比のために示す前述の実施例5についての耐久温度を種々に変えて耐久試験を行い、貴金属粒子径を変化させた例と、各実施例の排気ガス浄化触媒における各触媒層の貴金属種又は酸化物の金属種と、各実施例の耐久温度と、各実施例の耐久後の貴金属粒子径と共に表5に示す。また、表5の結果に基づく、耐久後の貴金属粒子径とHC50%転化率温度との関係について図7にグラフで示す。貴金属粒子径はTEMにより測定した粒子径の平均値とした。
【0117】
表5から、この触媒層1及び触媒層2に用いられる粉末が、貴金属と、該貴金属と接触し貴金属の移動を抑制する働きを持つ化合物と、該貴金属と該化合物を覆い該貴金属の移動を抑制し、かつ、化合物同士の接触による凝集を抑制する酸化物とからなる実施例17は、実施例5と比べると耐久試験後の貴金属粒子径が小さく維持されていて、耐久後においても実施例5よりも優れた転化率を示した。また、図7のグラフより、貴金属の平均粒子径が20[nm]以下であることにより、特に優れた排気ガス浄化性能を示すことが明らかとなった。
【表5】

【0118】
次に、図4(b)の触媒層に相当する、積層された触媒層が合計3層からなる排気ガス浄化触媒として、実施例18〜20の排気ガス浄化触媒を以下の工程により作成した。
【0119】
(実施例18)
実施例18は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3の厚さが15[μm]である例である。
【0120】
工程は、実施例5におけるスラリーCの付着量を変え、コート層25[g/L]の触媒層を得た以外は実施例5と同じである。
【0121】
(実施例19)
実施例19は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3の厚さが25[μm]である例である。
【0122】
工程は、実施例5のスラリーCの付着量を変え、コート層40[g/L]の触媒層を得た以外は実施例5と同じである。
【0123】
(実施例20)
実施例20は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3の厚さが30[μm]である例である。
【0124】
工程は、実施例5のスラリーCの付着量を変え、コート層50[g/L]の触媒層を得た以外は実施例5と同じである。
【0125】
上記実施例18〜20の排気ガス浄化触媒の耐久試験前の50%転化率温度を、これらの実施例との対比のために示す前述の実施例5についての耐久試験前50%転化率と、各実施例の排気ガス浄化触媒における各触媒層の貴金属種又は酸化物の金属種と、各実施例の触媒層3の厚さと共に表6に示す。また、表6の結果に基づく、触媒層3の厚さとHC50%転化率温度との関係について図8にグラフで示す。
【0126】
表6から、この触媒層3の厚さが20[μm]以下である実施例5及び実施例18は、触媒層3の厚さが20[μm]を超える実施例19及び実施例20よりも、50%転化率温度が低かった。また、図8のグラフより、触媒層3の厚さが20[μm]以下であることにより、特に優れた排気ガス浄化性能を示すことが明らかとなった。
【表6】

【0127】
次に、図4(b)の触媒層に相当する、積層された触媒層が合計3層からなる排気ガス浄化触媒として、実施例21〜23の排気ガス浄化触媒を以下の工程により作成した。
【0128】
(実施例21)
実施例21は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3に含まれるFeの酸化物の平均粒径が1.5[μm]である例である。
【0129】
工程は、混合粉砕条件を変えることにより実施例5のスラリーCのスラリー平均粒子径を0.7[μm]から1.5[μm]に変えた以外は実施例5と同じである。
【0130】
(実施例22)
実施例22は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3に含まれるFeの酸化物の平均粒径が2[μm]である例である。
【0131】
工程は、混合粉砕条件を変えることにより実施例5のスラリーCのスラリー平均粒子径を0.7[μm]から2[μm]に変えた以外は実施例5と同じである。
【0132】
(実施例23)
実施例23は、触媒層1がPdを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であって、かつ、この触媒層3に含まれるFeの酸化物の平均粒径が2.8[μm]である例である。
【0133】
工程は、混合粉砕条件を変えることにより実施例5のスラリーCのスラリー平均粒子径を0.7[μm]から2.8[μm]に変えた以外は実施例5と同じである
上記実施例21〜23の排気ガス浄化触媒の耐久試験前の50%転化率温度を、これらの実施例との対比のために示す前述の実施例5についての耐久試験前50%転化率と、各実施例の排気ガス浄化触媒における各触媒層の貴金属種又は酸化物の金属種と、各実施例の触媒層3中の酸化物の平均粒子径と共に表7に示す。また、表7の結果に基づく、触媒層3中の遷移全素の酸化物の平均粒子径とHC50%転化率温度との関係について図9にグラフで示す。
【0134】
表7から、この触媒層3中の遷移元素の酸化物の平均粒子径が2[μm]以下である実施例5、実施例21及び実施例22は、その平均粒子径が2[μm]を超える実施例23よりも、50%転化率温度が低かった。また、図9のグラフより、触媒層3の厚さが20[μm]以下であることにより、特に優れた排気ガス浄化性能を示すことが明らかとなった。
【表7】

【0135】
次に、空燃比を変化させた条件の下での本発明の排気ガス浄化触媒の性能を評価するために、実施例24〜29及び比較例8の排気ガス浄化触媒を、以下の工程により作成した。
【0136】
(実施例24)
実施例24は、触媒層1がPtを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であり、かつ、NOxを吸着する化合物としてCaを触媒層中に含む例である。
【0137】
工程は、実施例9で得た、担体上に合計3層の触媒層を有する触媒に、酢酸BaをBaOとして25[g/L]となるように含浸した。これを130[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、実施例24の触媒を得た。
【0138】
(実施例25)
実施例25は、触媒層1がPtを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であり、かつ、NOxを吸着する化合物としてMgを触媒層中に含む例である。
【0139】
工程は、実施例9で得た、担体上に合計3層の触媒層を有する触媒に、酢酸MgをMgOとして5[g/L]となるように含浸した。これを130[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、実施例25の触媒を得た。
【0140】
(実施例26)
実施例26は、触媒層1がPtを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であり、かつ、NOxを吸着する化合物としてCaを触媒層中に含む例である。
【0141】
工程は、実施例9で得た、担体上に合計3層の触媒層を有する触媒に、酢酸CaをCaOとして25[g/L]となるように含浸した。これを130[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、実施例26の触媒を得た。
【0142】
(実施例27)
実施例27は、触媒層1がPtを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であり、かつ、NOxを吸着する化合物としてNaを触媒層中に含む例である。
【0143】
工程は、実施例9で得た、担体上に合計3層の触媒層を有する触媒に、酢酸NaをNa2Oとして5[g/L]となるように含浸した。これを130[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、実施例27の触媒を得た。
【0144】
(実施例28)
実施例28は、触媒層1がPtを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であり、かつ、NOxを吸着する化合物としてCsを触媒層中に含む例である。
【0145】
工程は、実施例9で得た、担体上に合計3層の触媒層を有する触媒に、酢酸CsをCs2Oとして20[g/L]となるように含浸した。これを130[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、実施例28の触媒を得た。
【0146】
(実施例29)
実施例29は、触媒層1がPtを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層、触媒層3がFeの酸化物を含む触媒層の例であり、かつ、NOxを吸着する化合物としてBa及びMgを触媒層中に含む例である。
【0147】
工程は、実施例9で得た、担体上に合計3層の触媒層を有する触媒に、酢酸Baと酢酸Mgの混合溶液をBaOとして20[g/L]、MgOとして5[g/L]となるように含浸した。これを130[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、実施例29の触媒を得た。
【0148】
(比較例8)
比較例8は、触媒層1がPtを含む触媒層、触媒層2がRhを含む触媒層であり、かつ、NOxを吸着する化合物としてBa及びMgを触媒層中に含んでいる。しかし、Feの酸化物を含む触媒層を有していない例である。
【0149】
工程は、比較例7で得た、担体上に合計2層の触媒層を有する触媒に、酢酸BaをBaOとして25[g/L]となるように含浸した。これを130[℃]で乾燥した後、400[℃]で1時間焼成し、比較例8の触媒を得た。
【0150】
上記実施例24〜29及び比較例8の排気ガス浄化触媒について、排気ガス浄化性能を調べた。この排気ガス浄化性能の評価は、排気量3500[cc]のガソリンエンジンの排気系に触媒を担持した担体を装着し、触媒入口温度を700℃とし、50時間運転する耐久試験を行った後に、排気量2000[cc]のガソリンエンジンの排気系に当該触媒を担持した担体を装着して、温度:300[℃]〜350[℃]で、リーン条件(A/F=25)で40[sec]後にリッチ条件で(A/F=11)2secの運転を行い、この区間におけるNOxの排気浄化率を求めた。
【0151】
上記実施例24〜29及び比較例8のNOxの排気浄化率を、各実施例及び比較例の排気ガス浄化触媒における各触媒層の貴金属種又は酸化物の金属種と、各実施例及び比較例の触媒層3中の酸化物の平均粒子径と、各実施例及び比較例の排気ガス浄化触媒中に含まれるNOx吸収材種と共に表8に示す。表8から、NOx吸着剤である化合物を含む実施例24〜29は、リーン条件においても優れた排気ガス浄化性能を有していた。これに対して、NOx吸着剤である化合物を含むものの、遷移元素の酸化物を含む触媒層を有していない比較例8は、実施例24〜29よりもNOx浄化率が劣っていた。
【表8】

【0152】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0153】
1 担体
1a 細孔
10 排気ガス浄化触媒
11 第1の触媒層
12 第2の触媒層
13 第3の触媒層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層の触媒層を積層してなり、前記触媒層が、少なくともRhを含む触媒層と、{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層と、を含み、前記{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が、前記少なくともRhを含む触媒層よりも上層側にあることを特徴とする排気ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が最表層にあることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記少なくともRhを含む触媒層と前記{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層とが互いに接していることを特徴とする請求項2に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が、当該触媒層に含まれる{Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物同士を接着する効果のある化合物を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記{Fe,Mn,Ni,Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物同士を接着する効果のある化合物が、ZrO2であることを特徴とする請求項4に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項6】
前記少なくともRhを含む触媒層及び前記{ Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層以外の触媒層が、Pt及びPdの少なくとも1種を含む触媒層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項7】
前記{ Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層が、更に酸素吸放出能を持つ酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれ1項に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項8】
前記酸素吸放出能を持つ酸化物が、{Ce, Pr, Nd, Y}から選ばれる少なくとも一種の酸化物からなることを特徴とする請求項7に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項9】
更に{Ba,Mg,Ca,Na,Cs}から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項10】
排気ガス浄化触媒において、貴金属の平均粒子径が20nm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項11】
貴金属を含む粉末が、貴金属と、該貴金属と接触し貴金属の移動を抑制する働きを持つ化合物と、該貴金属と該化合物を覆い該貴金属の移動を抑制し、かつ、化合物同士の接触による凝集を抑制する酸化物と、からなることを特徴とする請求項10に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項12】
前記{ Fe, Mn, Ni, Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む触媒層の厚さが20μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項13】
前記{Fe,Mn,Ni,Co}から選ばれる少なくとも1種の酸化物の粒子径が2μm以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−255073(P2009−255073A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77153(P2009−77153)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】