説明

排気再生装置及び溶液製膜方法

【課題】溶剤回収装置において、凝縮した添加剤の洗浄作業に要する時間の短縮化を図る。
【解決手段】排気再生装置35は、添加剤凝縮ダクト45と溶剤凝縮ダクト46とを有する。添加剤凝縮ダクト45は垂直方向に延設され、排気40aの入口45iを上端に有する。添加剤凝縮ダクト45の下方側面には、溶剤凝縮ダクト46の入口である貫通孔55が開口する。添加剤凝縮ダクト45において、テンタ室22からの排気40aは、入口45iから貫通孔55に向かって流れる。添加剤凝縮ダクト45には、添加剤凝縮機47cが設けられる。溶剤凝縮ダクト46には、溶剤凝縮機49が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーウェブ(樹脂成形物)から溶剤を蒸発させるためにポリマーウェブへ乾燥気体をあてる乾燥工程であって、乾燥工程の排気から乾燥気体を再生する排気再生装置に関する。また、本発明は、排気再生装置を用いた溶液製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルム(以下「フィルム」とする)は、優れた光透過性や柔軟性を有し、軽量薄膜化が可能であることから、光学機能性フィルムとして多岐に利用されている。この中でも、セルロースアシレート等を用いたセルロースエステル系フィルムは、前述の特性に加えて、さらに強靭性や低複屈折率を有している。このセルロースエステル系フィルムは、近年市場が拡大している液晶表示装置(LCD)の構成部材である偏光板の保護フィルムや光学補償フィルムとして利用されている。
【0003】
このフィルムの製造方法として溶液製膜方法がある。溶液製膜方法では、溶剤、添加剤及びポリマーが含まれるドープを支持体に流出し、ドープからなる流延膜を支持体上に形成する膜形成工程と、流延膜または支持体から剥ぎ取った流延膜(以下、湿潤フィルムと称する)から溶剤を蒸発させる前乾燥工程と、溶剤をほとんど含まないものとなったフィルムから溶剤を蒸発させる後乾燥工程とが行われる。
【0004】
前乾燥工程や後乾燥工程の排気には溶剤が含まれるため、排気を外部へ放出できない。そこで、排気から溶剤を回収するための装置が別途必要になる。排気に含まれる溶剤の回収方法として、凝縮回収方法と吸着方法とが知られている。凝縮回収方法は、溶剤含有の排気を冷却することにより、溶剤の凝縮を生じさせ、溶剤と残りの気体と分離する方法であり、溶剤の含有量が大きい排気に適している。一方、吸着方法では、排気を溶剤の吸着剤に接触させて、溶剤と残りの気体とを分離する方法であり、溶剤の含有量が小さい排気に適している。したがって、前乾燥工程の排気から溶剤を回収する場合には、凝縮回収方法が用いられ(例えば、特許文献1)、後乾燥工程の排気から溶剤を回収する場合には、吸着方法が用いられていた(例えば、特許文献2)。
【0005】
凝縮回収方法を行う溶剤回収装置の概要を説明する。溶剤回収装置は、前乾燥工程の排気が導入されるダクトを備える。ダクトは、前乾燥工程の排気を処理できる程度の大きさとされ、排気流路の断面寸法は、例えば、縦2〜3m、横2m〜3mである。このため、耐震上の要請から、通常水平方向へ延設される。ダクト内には、ヒートパイプ式熱交換器(以下、熱交換器と称する)の冷却部と凝縮機と熱交換器47の加熱部とが、排気の流れ方向上流側から下流側に向かって順次配される。ダクト内に導入された排気は、冷却部との接触により冷却された後、冷媒が流通する冷却管を備える凝縮機へ送られる。凝縮機へ送られた排気は、冷却管との接触により冷却され、排気から溶剤が凝縮する。凝縮した溶剤は、冷却管から落下して回収される。溶剤と共に凝縮した添加剤は、冷却管に付着し残ってしまう。このため、冷却管に残ってしまった添加剤を洗い流すために、溶液製膜設備の運転を一旦停止して、溶剤を冷却管に吹き付ける洗浄作業を定期的に行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−794号公報
【特許文献2】特開2008−162278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、冷却管よりも上流側に設けられた熱交換器の冷却部において、凝縮した添加剤が残留するようになった。これは、以下の(1)〜(3)により、排気の冷却により、添加剤の凝縮が起こりやすくなったものと考えられる。
(1)製造しようとするフィルムの光学特性の向上により、ドープに含まれる添加剤の量が増大したこと
(2)溶剤とともに流延膜や湿潤フィルムから蒸発する添加剤の量が、支持体の移動速度の高速化により増大したこと
(3)溶剤とともに流延膜や湿潤フィルムから蒸発する添加剤の量が、製造目的とするフィルムの厚みが薄くなったことと伴い、増大したこと
【0008】
入り組んだ構造を有する冷却部に添加剤が残留すると、目詰まりを起こしやすい。このため、熱交換器の定期的な洗浄が必要になる。熱交換器の洗浄を行う場合、冷却管の洗浄の場合と同様に、溶液製膜設備の運転を停止しなければならない。また、熱交換器の洗浄作業の間、溶液製膜設備の運転を継続する場合には、その間に製造されるフィルムは製品として利用できないため、破棄せざるを得ない。
【0009】
また、冷却部の外表面は、熱効率の向上を目的として、入り組んだ構造を有する。このため、冷却部の外表面に残留する添加剤に溶剤が接触しにくく、残留した添加剤を溶剤に溶解させるまでに時間を要する。更に、添加剤が溶解した溶剤を冷却部から流下させて回収するまでに時間を要する。
【0010】
更に、添加剤が溶剤に可溶な場合、添加剤とともに溶剤が凝縮する冷却管では、凝縮した溶剤による添加剤の洗浄作用が見込める。しかしながら、溶剤がほとんど凝縮せず主として添加剤が凝縮する冷却部の場合、冷却管の場合と異なり、凝縮した溶剤による添加剤の洗浄作用が見込めない。このため、熱交換器の洗浄作業は、冷却管の洗浄作業に比べ頻繁に行う必要がある。
【0011】
したがって、冷却部に添加剤が凝縮してしまう溶剤回収装置において、洗浄作業に要する時間を短くすることが求められていた。
【0012】
本発明は、流延膜や湿潤フィルム(これらを総称してウェブと称する)から溶剤を蒸発させる前乾燥工程の排気から乾燥風を再生することのできる排気再生装置を提供することを目的とする。更に、本発明は、効率よく連続的にフィルムを製造することのできる溶液製膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、溶剤及び前記溶剤よりも高凝縮点の添加剤を含む樹脂成形物から前記溶剤を蒸発させる乾燥室に接続し、前記乾燥室の排気から前記溶剤を凝縮し、前記溶剤が取り出された前記排気を再生気体として前記乾燥室へ戻す排気再生装置において、水平面と交差する方向に延設され前記排気が流通し、開口する前記排気の出口を側面に有する添加剤凝縮ダクトと、前記添加剤凝縮ダクト内に配され前記排気から前記添加剤を凝縮する添加剤凝縮機と、前記添加剤凝縮ダクト内に配され前記添加剤が可溶な洗浄液を前記添加剤凝縮機にあてて前記添加剤凝縮機に残留する前記添加剤を流下させる添加剤洗浄機と、前記出口から送り出された前記排気から前記溶剤を凝縮し、前記凝縮した溶剤が取り出された排気を前記再生気体として外部へ送り出す溶剤凝縮機とを備えることを特徴とする。
【0014】
前記添加剤洗浄機は、前記添加剤凝縮機よりも前記添加剤凝縮ダクトにおける前記流れ方向の上流側に配されることが好ましい。また、前記添加剤凝縮ダクト内にて前記排気は上方から下方へ流通することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、溶剤及び前記溶剤よりも高凝縮点の添加剤を含む樹脂成形物から前記溶剤を蒸発させる乾燥室に接続し、前記乾燥室の排気から前記溶剤を凝縮し、前記溶剤が取り出された前記排気を再生気体として前記乾燥室へ戻す排気再生装置において、水平面と交差する方向に延設され前記排気が下方から上方に向かって流通する添加剤凝縮ダクトと、前記添加剤凝縮ダクト内に配され前記排気から前記添加剤を凝縮する添加剤凝縮機と、前記添加剤が取り出された排気から前記溶剤を凝縮し、前記再生気体として外部へ送り出す溶剤凝縮機とを備え、前記溶剤凝縮機は、前記凝縮した溶剤が前記添加剤凝縮機に流下するように、前記添加剤凝縮機よりも上方に配されたことを特徴とする。
【0016】
前記添加剤凝縮機から流下した前記添加剤を回収する添加剤回収機を備えることが好ましい。また、前記溶剤凝縮機から流下した前記溶剤を回収する溶剤回収機を備えることが好ましい。更に、前記添加剤回収機と前記溶剤回収機とが一体となっていることが好ましい。
【0017】
前記添加剤凝縮ダクトは、略垂直方向に延設されることが好ましい。
【0018】
本発明の溶液製膜方法は、ポリマー、前記溶剤及び前記添加剤を含むドープを支持体に向けて流出し、前記ドープからなる流延膜を前記支持体上に形成する膜形成工程と、前記流延膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取って湿潤フィルムとする剥ぎ取り工程と、前記湿潤フィルムから前記溶剤を蒸発させてフィルムとする湿潤フィルム乾燥工程とを有し、前記膜形成工程または前記湿潤フィルム乾燥工程の少なくとも一方が行われる前記乾燥室に、上記の排気再生装置が接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の気体再生装置によれば、水平面と交差する方向に延設され乾燥室の排気が流通し、垂直方向と交差する向きに開口する排気の出口を有する添加剤凝縮ダクトと、添加剤凝縮ダクト内に配され排気から添加剤を凝縮する添加剤凝縮機と、添加剤凝縮ダクト内に配され添加剤が可溶な洗浄液を添加剤凝縮機にあてて添加剤凝縮機に残留する添加剤を流下させる添加剤洗浄機と、出口から送り出された排気から溶剤を凝縮し、凝縮した溶剤が取り出された排気を再生気体として外部へ送り出す溶剤凝縮機とを備えるため、添加剤凝縮機の下方には洗浄液や添加剤の障害物が存在しない。この結果、添加剤凝縮機から流下した洗浄液や添加剤が溶剤凝縮機にあたらずに済む。
【0020】
また、本発明の気体再生装置によれば、水平面と交差する方向に延設され排気が下方から上方に向かって流通する添加剤凝縮ダクトと、添加剤凝縮ダクト内に配され排気から添加剤を凝縮する添加剤凝縮機と、添加剤が取り出された排気から溶剤を凝縮し、再生気体として外部へ送り出す溶剤凝縮機とを備え、溶剤凝縮機は、凝縮した溶剤が添加剤凝縮機に流下するように、添加剤凝縮機よりも上方に配されたため、添加剤凝縮機の下方には洗浄液や添加剤の障害物が存在しない。この結果、添加剤凝縮機から流下した洗浄液や添加剤が溶剤凝縮機にあたらずに済む。
【0021】
このように、本発明の気体再生装置によれば、余計な溶剤凝縮機の洗浄を行わずに済むため、添加剤凝縮機の洗浄作業を短時間で行うことができる。
【0022】
また、本発明の溶液製膜方法によれば、品質の良いフィルムを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の溶液製膜設備及び第1の排気再生装置の概要を示す側面図である。
【図2】熱交換器の概要を示す分解斜視図である。
【図3】第2の排気再生装置の概要を示す側面図である。
【図4】第3の排気再生装置の概要を示す側面図である。
【図5】第4の排気再生装置の概要を示す側面図である。
【図6】第5の排気再生装置の概要を示す側面図である。
【図7】第6の排気再生装置の概要を示す側面図である。
【図8】第7の排気再生装置の概要を示す側面図である。
【図9】第2の溶液製膜設備の概要を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(溶液製膜設備)
図1に示すように、溶液製膜設備10は、ポリマー14、添加剤15及び溶剤16を含むドープ17からフィルム18を製造するものであり、流延室21とテンタ室22と乾燥室23とを有する。流延室21は、水平軸を有する回転ドラム25と、回転ドラム25の周面に向けてドープ17を連続的に流出し、ドープ17からなる流延膜26を回転ドラム25の周面に形成するダイ27と、自立して搬送可能となった流延膜26を回転ドラム25の周面から剥ぎ取る剥ぎ取りローラ28とを有する。こうして、流延室21では、ドープ17からなる流延膜26を、回転ドラム25の周面上に形成する膜形成工程と、回転ドラム25の周面から流延膜26を剥ぎ取る剥ぎ取り工程とが行われる。
【0025】
回転ドラム25から剥ぎ取られた流延膜26は、湿潤フィルム29としてテンタ室22へ案内される。テンタ室22では、ピンを用いて湿潤フィルム29の耳部を貫通し、耳部を貫通したピンを移動させることで、湿潤フィルム29を搬送する。テンタ室22内の雰囲気における溶剤16の濃度が低く抑えられているため、テンタ室22では湿潤フィルム29から溶剤16が蒸発する。湿潤フィルム29から溶剤16を蒸発させる湿潤フィルム乾燥工程により、フィルム18を得ることができる。フィルム18は、テンタ室22から、乾燥室23へ送られる。
【0026】
乾燥気体が充填された乾燥室23では、フィルム18がローラ32により搬送される。乾燥気体とフィルム18とを接触させることにより、フィルム18から溶剤16を蒸発させるフィルム乾燥工程が行われる。乾燥室23から送り出されたフィルム18は、巻取り装置により巻き芯に巻き取られる。
【0027】
(排気再生装置)
排気再生装置35は、テンタ室22の排気40aから添加剤15及び溶剤16を取り出して再生気体40bをつくった後、再生気体40bをテンタ室22へ戻すものである。テンタ室22と排気再生装置35との間には、テンタ室22からの排気40aを排気再生装置35へ送る送り配管11aと、排気再生装置35からの再生気体40bをテンタ室22へ戻す戻り配管11bとが設けられる。
【0028】
(排気再生装置)
排気再生装置35は、添加剤凝縮ダクト45と、溶剤凝縮ダクト46と、熱交換器47と、添加剤洗浄機48と、溶剤凝縮機49と、溶剤洗浄機50と、添加剤回収機構51と、溶剤回収機構52とを有する。
【0029】
添加剤凝縮ダクト45は、垂直方向に延設される。溶剤凝縮ダクト46は、垂直方向に延設され、添加剤凝縮ダクト45と並設される。送り配管11aの一端は、添加剤凝縮ダクト45の上部に設けられた入口45iに開口し、他端はテンタ室22に開口する。戻り配管11bの一端は、溶剤凝縮ダクト46の上部に設けられた出口46oに開口し、他端はテンタ室22に開口する。
【0030】
添加剤凝縮ダクト45と溶剤凝縮ダクト46とは、連通孔55により接続される。連通孔55は、添加剤凝縮ダクト45の側面に設けられた貫通孔(貫通出口)と溶剤凝縮ダクト46の側面に設けられた貫通孔(貫通入口)とからなり、一端が添加剤凝縮ダクト45の側面に開口し、他端が溶剤凝縮ダクト46の側面に開口する。こうして、添加剤凝縮ダクト45内には、入口45iから連通孔55に向かって排気40aが流通する上流側流路が形成される。また、溶剤凝縮ダクト46内には、連通孔55から出口46oに向かって排気40aが流通する下流側流路が形成される。
【0031】
図1及び図2に示すように、熱交換器47は、ヒートパイプ60とフィン61とを有する。ヒートパイプ60は、上流側流路及び下流側流路を横切るように、添加剤凝縮ダクト45及び溶剤凝縮ダクト46を貫通する。ヒートパイプ60の一方の端部は上流側流路に露出し、ヒートパイプ60の他方の端部は下流側流路に露出する。ヒートパイプ60は、所定のピッチ(例えば、50mm)で並べられる。ヒートパイプ60の外径は、例えば、20mm〜30mm程度である。このように並ぶ複数のヒートパイプ60により、ガスが通過する面が熱交換器47に形成される。ガスが通過する面(以下、ガス通過面と称する)が排気40aの流れ方向に対して直交することが好ましい。図示する熱交換器47のガス通過面は、排気40aの流れ方向に直交する方向、すなわち水平である。
【0032】
ヒートパイプ60には、一方の端部から他方の端部に向かって延設された中空部が形成される。中空部には差動流体(水、アルコール等)が封入される。冷却機能を発揮するヒートパイプ60の一方の端部60cは、加熱機能を発揮する当該ヒートパイプ60の他方の端部60hよりも高いことが好ましい。ヒートパイプ60の端部60cと接触するガスが、端部60cにある差動流体よりも高温である場合、差動流体は、ガスからの熱エネルギーを受け取り、ヒートパイプ60の端部60hへ向かって移動する。そして、ヒートパイプ60の端部60hと接触するガスが、端部60hにある差動流体よりも低温である場合には、端部60hと接触するガスは、差動流体からの熱エネルギーを受け取る。このように、ヒートパイプ60の端部60cと接触するガスと、ヒートパイプ60の端部60hと接触するガスとの温度差を利用して、端部60cに接触するガスの熱エネルギーを、端部60hに接触するガスへ伝えることができる。また、端部60cに接触する際のガスと端部60hに接触する際のガスとの温度差は、溶剤凝縮機49により生み出すことができる。
【0033】
フィン61は、端部60c及び端部60hにそれぞれ設けられる。フィン61は、排気40aの流れ方向と略平行となるように、所定のピッチ(例えば、1mm〜3mm)で並ぶ。端部60cと端部60cに設けられたフィン61とにより、添加剤凝縮機47cが構成される。また、端部60hと端部60hに設けられたフィン61とにより、加熱機47hが構成される。
【0034】
図1に戻って、溶剤凝縮機49は、加熱機47hよりも下方の下流側流路に設けられる。溶剤凝縮機49は、伝熱媒体が流通する冷却管49aと温調機49bとフィン49cとを備える。冷却管49aは所定のピッチで並べられる。温調機49bは、冷却管49aから送り出された伝熱媒体を回収し、回収した伝熱媒体を所定の温度に調節した後、冷却管49aに戻す。フィン49cは排気40aの流れ方向と略平行となるように、所定のピッチ(例えば、1mm〜3mm)で並ぶ。伝熱媒体の温度は、以下の(条件1)〜(条件2)を満たすように調節されることが好ましい。(条件1)により、冷却管49aと接触した排気40aから溶剤16が凝縮する。また、(条件2)により、添加剤凝縮機47cと接触した排気40aから添加剤15が凝縮する。
(条件1)冷却管49aに接触した排気40aの温度が、溶剤16の凝縮点よりも低いこと。
(条件2)冷却管49aに接触した排気40aと加熱機47hとの接触を経由して、添加剤凝縮機47cにおける差動流体が添加剤15の凝縮点よりも低いこと。
【0035】
なお、上記(条件2)は、冷却管49aに接触した排気40aと加熱機47hとの接触を経由して、添加剤凝縮機47cにおける差動流体が、溶剤16凝縮点よりも高く、添加剤15の凝縮点よりも低い、であってもよい。
【0036】
ここで、任意のガスに含まれる物質の凝縮点は、当該ガスにおける当該物質の蒸気圧が飽和蒸気圧と等しくなる温度をいう。
【0037】
添加剤洗浄機48は、添加剤凝縮機47cよりも上方の上流側流路に設けられる。添加剤洗浄機48は、洗浄液48xが流通する洗浄管48aと、洗浄管48aに設けられたポンプ48bと、洗浄管48aを通った洗浄液48xを送り出すスプレー48cとが設けられる。洗浄液48xを流出するスプレー48cは、流出した洗浄液48xが添加剤凝縮機47c全域にいきわたるように配されることが好ましい。洗浄液48xは、添加剤凝縮機47cに付着した添加剤15を洗い流すことができるものであれば良い、特に、添加剤15が溶解するものであることが好ましい。洗浄液48xは、例えば、溶剤16と同一成分、または溶剤16と共通する成分であることが好ましい。なお、洗浄管48aを移動させるシフト部48sを併設してもよい。シフト部48sは、添加剤凝縮ダクト45内に露出する露出位置及び露出位置から退避した退避位置の間で洗浄管48aを移動させる。
【0038】
また、洗浄液48xを流出するスプレー48cが流出した洗浄液48xが添加剤凝縮機47c全域にいきわたるように配されてない場合には、シフト部48sにより、流出した洗浄液48xが添加剤凝縮機47c全域にいきわたるように、洗浄管48aを移動させてもよい。
【0039】
添加剤回収機構51は、添加剤回収凹部51aと添加剤回収孔51bとからなる。添加剤回収凹部51aは、添加剤凝縮ダクト45の底部に設けられる。また、添加剤回収孔51bは、添加剤回収凹部51aに開口する。添加剤回収孔51bは、添加剤回収タンク(図示しない)と接続する。
【0040】
溶剤洗浄機50は、溶剤凝縮機49と加熱機47hとの間の下流側流路に設けられる。溶剤洗浄機50は、洗浄液50xが流通する洗浄管50aと、洗浄管50aに設けられたポンプ50bと、洗浄管50aを通った洗浄液50xを送り出すスプレー50cと、洗浄管50aを移動させるシフト部50sとが設けられる。洗浄液50xを流出するスプレー50cは、流出した洗浄液50xが冷却管49a全域にいきわたるように配されることが好ましい。洗浄液50xとしては、冷却管49aに付着した溶剤16を洗い流すことができるものであれば良い。回収後の再利用を考慮すると、溶剤16と同一成分、または溶剤16と共通する成分であることが好ましい。シフト部50sは、溶剤凝縮ダクト46内に露出する露出位置及び露出位置から退避した退避位置の間で洗浄管50aを移動させる。
【0041】
溶剤回収機構52は、溶剤回収凹部52aと溶剤回収孔52bとからなる。溶剤回収凹部52aは、溶剤凝縮ダクト46の底部に設けられる。また、溶剤回収孔52bは、溶剤回収凹部52aに開口する。溶剤回収孔52bは、溶剤回収タンク(図示しない)と接続する。
【0042】
戻り配管11bには、排気再生装置35からテンタ室22に向かって順次、ヒータ66aとブロワ66bとフィルタ66cとが設けられる。ヒータ66aは、排気再生装置35から送り出された再生気体40bを加熱する。ブロワ66bは、テンタ室22へ再生気体40bを送り出す。フィルタ66cは、再生気体40bに含まれる塵などの異物を取り除く。
【0043】
制御部70は、ポンプ48bと、シフト部48sと、温調機49bと、ポンプ50bと、シフト部50sと、ヒータ66aと、ブロワ66bと接続する。
【0044】
次に、本発明の作用を説明する。図1に示すように、溶液製膜設備10の運転を開始すると、図示しない駆動部により回転ドラム25が回転する。回転ドラム25の周面の速度は、40m/分以上であることが好ましい。
【0045】
ダイ27は、所定の温度範囲に調節されたドープ17を、回転ドラム25に向けて流出する。流出したドープ17により、回転ドラム25の周面上には帯状の流延膜26が形成する。図示しない温調機により、回転ドラム25の温度が−20℃以上10℃以下の範囲内となるように調節されるため、流延膜26は冷却される。回転ドラム25による冷却により、流延膜26をなすドープ17は、ゲル状となる結果、流延膜26は自立して搬送可能な状態となる。
【0046】
その後、剥ぎ取りローラ28は、搬送可能となった流延膜26を回転ドラム25から剥ぎ取り、湿潤フィルム29としてテンタ室22へ案内する。流延膜26の剥ぎ取りタイミングは、含有溶剤量が200質量%以上300質量%以下であることが好ましい。なお、本発明では、流延膜や各フィルム中に残留する溶剤量を乾量基準で示したものを含有溶剤量とする。また、その測定方法は、対象のフィルムからサンプルを採取し、このサンプルの重量をx、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で算出する。
【0047】
テンタ室22では、乾燥風が湿潤フィルム29にあてられ、湿潤フィルム29から溶剤16が蒸発する。乾燥風との接触により湿潤フィルム29の温度が高温となると、溶剤16の蒸発と共に、添加剤15も蒸発する。
【0048】
溶液製膜設備10の運転中、排気再生装置35では回収工程が行われる。制御部70により、ブロワ66bが運転すると、テンタ室22からの排気40aは、送り配管11aを通じて、排気再生装置35へ送られる。制御部70により、洗浄管48a、50aは退避位置となっている。これにより、洗浄管48a、50aやスプレー48c、50cへ添加剤等が付着することを確実に防止することができる。
【0049】
(回収工程)
排気再生装置35では、排気40aから、添加剤15及び溶剤16を取り出して、再生気体40bをつくる回収工程が行われる。回収工程では、添加剤凝縮工程と溶剤凝縮工程とが行われる。
【0050】
(添加剤凝縮工程)
添加剤凝縮ダクト45へ送られた排気40aは、入口45iから連通孔55に向かって流れる。添加剤凝縮機47cと接触した排気40aは冷却される。冷却の結果、排気40aの温度は、添加剤15の凝縮点よりも低くなる。この冷却により、排気40aから添加剤15が凝縮する。こうして、添加剤凝縮機47cは、添加剤15の凝縮により、排気40aから添加剤15を取り出す添加剤凝縮工程を行う。
【0051】
なお、排気40aと添加剤凝縮機47cとの接触による冷却の結果、排気40aの温度は、添加剤15の凝縮点よりも低く、溶剤16の凝縮点よりも高い温度範囲となる場合、排気40aから添加剤15のみが凝縮することとなる。係る場合であっても、本発明の適用は可能である。
【0052】
(溶剤凝縮工程)
添加剤15が取り出された排気40aは、連通孔55を通って、溶剤凝縮ダクト46へ送られる。溶剤凝縮ダクト46へ送られた排気40aは、連通孔55から出口46oに向かって流れる。溶剤凝縮機49と接触した排気40aは、添加剤15の凝縮点よりも低い温度となるまで冷却される。この冷却により、排気40aから溶剤16が凝縮する。こうして、溶剤凝縮機49は、溶剤16の凝縮により、排気40aから溶剤16を取り出す溶剤凝縮工程を行う。なお、溶剤凝縮工程では、排気40aから溶剤16を凝縮するとともに、排気40aに残留する添加剤15を凝縮させても良い。
【0053】
添加剤15及び溶剤16が取り出された排気40aは、再生気体40bとなる。再生気体40bは加熱機47hによって加熱され、戻り配管11bを通って、テンタ室12へ戻される。戻り配管11bでは、ヒータ66aにより、再生気体40bが所定の温度となるまで加熱される。
【0054】
この回収工程により、テンタ室22の雰囲気における溶剤16の濃度を低く抑えることができるため、テンタ室22において、湿潤フィルム29から溶剤16を効率よく蒸発させることができる。
【0055】
ところで、溶剤凝縮工程において添加剤15が凝縮した場合、凝縮した添加剤15は冷却管49aに付着する。溶剤凝縮工程においては、溶剤16も凝縮するため、冷却管49aに付着した添加剤15は凝縮した溶剤16との接触により、洗い流すことも可能である。しかしながら、溶剤凝縮工程を長時間継続して行えば、冷却管49aに多量の添加剤15が残留することとなる。また、添加剤凝縮工程において凝縮した添加剤15は添加剤凝縮機47cに付着する。添加剤凝縮機47cでは溶剤16がほとんど凝縮しないため、冷却管49aに比べ、添加剤が残留しやすい。
【0056】
(洗浄工程)
そこで、冷却管49aや添加剤凝縮機47cに付着した添加剤15等を洗い流す洗浄工程が必要となる。洗浄工程を行うために、溶液製膜設備10の運転の停止を行う。そして、気体再生装置35では、回収工程を停止して、洗浄工程を開始する。洗浄工程では、制御部70により、洗浄管48a、50aはそれぞれ露出位置へ変位する。洗浄工程では、添加剤凝縮機47cから添加剤15を洗い流す添加剤洗浄工程と、冷却管49aから溶剤16等を洗い流す溶剤洗浄工程とが行われる。なお、添加剤洗浄工程と溶剤洗浄工程とは、同時に行っても良いし、個別に行っても良い。
【0057】
(添加剤洗浄工程)
添加剤洗浄機48は、添加剤凝縮機47cに向けて洗浄液48xを流出し、添加剤凝縮機47cに残留する添加剤15を洗い流す添加剤洗浄工程を行う。流出した洗浄液48xは、添加剤凝縮機47cに到達し、添加剤凝縮機47cに付着す添加剤を洗浄液48xに溶解させて、洗い流す。このように、添加剤洗浄工程では、添加剤凝縮機47cの洗浄を行うことができる。
【0058】
(溶剤洗浄工程)
溶剤洗浄機50は、冷却管49aに向けて洗浄液50xを流出し、冷却管49aに残留する溶剤16を洗い流す溶剤凝縮工程を行う。流出した洗浄液50xは、冷却管49aに到達し、冷却管49aに付着する溶剤16を洗い流す、または、冷却管49aに付着する添加剤15を洗浄液50xに溶解させて、洗い流す。このように、溶剤洗浄工程では、冷却管49aの洗浄を行うことができる。
【0059】
ここで、溶剤凝縮機49の設置位置は、添加剤凝縮ダクト45内、すなわち、添加剤凝縮機47cの下方ではなく、添加剤凝縮ダクト45と並設された溶剤凝縮ダクト46内である。このように、添加剤凝縮機47c及び連通孔55の間には、添加剤凝縮機47cから添加剤回収機構51へ向かって落下する液体の障害物が存在しないため、余計な溶剤凝縮機49の洗浄を行わずに済む。このように、本発明によれば、添加剤凝縮機47cに付着した添加剤15を洗い流す洗浄作業、短時間で行うことができる。このため、溶液製膜方法の生産効率を向上させることができる。
【0060】
一方、回収工程を行う場合には、添加剤凝縮ダクト45における排気40aの流通の阻害物が、添加剤凝縮機47c及び連通孔55の間に存在しないため、回収工程の効率は従前のレベルを維持できる。
【0061】
また、添加剤洗浄工程と溶剤洗浄工程とを独立して行うことができるため、添加剤洗浄工程と溶剤洗浄工程とを同時に行えば、洗浄工程全体に要する時間を短縮することができる。
【0062】
添加剤凝縮機47cに付着する添加剤15の量は、排気40aの流れ方向下流部に比べて、排気40aの流れ方向上流部のほうが多い。添加剤凝縮機47cに向けて洗浄液48xを流出する添加剤洗浄機48を、添加剤凝縮機47cよりも排気40aの流れ方向上流側に設けることにより、添加剤15の付着量の多い上流側部分に対し、優先的に洗浄液48xをあてることができる。特に、添加剤15の付着量の多い上流側部分へ洗浄液48xを直接あてることができる点で好ましい。
【0063】
また、添加剤凝縮ダクト45を垂直方向に設け、添加剤凝縮ダクト45内における排気40aの流れ方向を上方から下方としたため、添加剤凝縮機47cの上流部へ洗浄液48xをあてることにより、流出した洗浄液48xは、添加剤凝縮機47cの下流部に向かって流れる。更に、下流部に至った洗浄液48xは、添加剤凝縮機47cよりも下方の添加剤回収機構51へ流下する。こうして、洗浄液48xが添加剤凝縮機47cの上流部から下流部へ流れる過程で、上流部以外の部分に不着した添加剤15を洗浄液48xに溶解させることができる。更に、添加剤凝縮機47cの下流部では、添加剤15を含むものとなった洗浄液48xを、そのまま落下させることができる。
【0064】
添加剤凝縮機47cから落下した液体は、添加剤回収孔51bによって回収液51xとして回収される。また、溶剤凝縮機49から落下した液体は、溶剤回収孔52bによって回収液52xとして回収される。図示しない蒸留装置により、回収液51xや回収液52xから添加剤15や溶剤16が取り出される。回収液51x、52xから取り出された添加剤15や溶剤16は、ドープ17の調製や洗浄液48x、50xとして再利用される。本発明では、添加剤凝縮機47c及び連通孔55の間には、添加剤凝縮機47cから添加剤回収機構51へ向かって落下する液体の障害物が存在しないため、添加剤凝縮機47cから落下した液体を効率よく回収することができる。
【0065】
また、排気再生装置35がテンタ室22の排気40aから十分な量の添加剤15を除去できない場合には、テンタ室22の内壁や天井などに添加剤15が付着してしまう。そして、付着した添加剤15が流延膜26や湿潤フィルム29に落下した場合には、最終的に得られるフィルム18の面状故障となってしまう。したがって、溶液製膜方法を一定期間行うことにより、テンタ室22に付着した添加剤15を洗浄する必要が生じる。本発明によれば、排気再生装置35において、テンタ室22の排気40aから添加剤15を確実に除去することができるため、テンタ室22における添加剤15の洗浄作業を行わずに済む。また、テンタ室22に付着した添加剤15が流延膜26や湿潤フィルム29に落下することがないため、品質の良いフィルム18を作ることができる。
【0066】
また、本発明では、添加剤凝縮ダクト45を垂直方向に設けため、フィン61の隙間へ添加剤15を流入させるために、上流側流路の上流側から下流側へ別途の気体(排気40a等)を、回収工程中に流す必要がなくなる。
【0067】
次に、本発明の別の実施形態を示す。以下の実施形態では、上記実施形態と異なる部分の説明のみを行い、上記実施形態と同一の部分は、同一の符号を付し、その詳細の説明は省略する。
【0068】
図3に示すように、添加剤回収機構51と溶剤回収機構52とを一体させた回収機73を設けても良い。回収機73は、添加剤回収凹部73aと添加剤回収孔73bとからなる。添加剤回収孔73bにより回収された回収液5x、52xは回収液60xとなる。図示しない蒸留装置により、回収液60xから添加剤15や溶剤16が取り出される。
【0069】
図4に示すように、溶剤凝縮ダクト46の上部の側面に連通孔55を開口させ、出口46oを溶剤凝縮ダクト46の下部の側面に設けてもよい。下流側流路は、溶剤凝縮ダクト46の上部の側面に開口する連通孔55から出口46oにかけて形成される。上流側流路には、添加剤凝縮機47cと、添加剤洗浄機48とが排気40aの流れ方向上流側から下流側に向かって配され、下流側流路には、溶剤洗浄機50と、溶剤凝縮機49と、加熱機47hとが排気40aの流れ方向上流側から下流側に向かって配される。ここでは、熱交換器として、ヒートパイプ式熱交換器60に代えて、温調機74を設けることが好ましい。温調機74は、差動流体が流通する配管74aと、配管74aのうち上流側流路に露出する部分と下流側流路に露出する部分との間で差動流体を循環させるポンプ74bと、配管74aに設けられたフィン74cとを備える。配管74aのうち上流側流路に露出する部分及び当該部分に設けられたフィン74cが添加剤凝縮機47cを構成し、配管74aのうち下流側流路に露出する部分及び当該部分に設けられたフィン74cが加熱機47hを構成する。
【0070】
なお、溶剤凝縮ダクト46に加熱機47hを配したが、溶剤凝縮ダクト46の出口46oに接続するダクト内に加熱機47hを配することが好ましい。これにより、溶剤凝縮機49や溶剤洗浄機50からの液体が加熱機47hにかかることを防ぐことができる。
【0071】
図5に示すように、溶剤凝縮ダクト46を水平方向へ延設してもよい。溶剤凝縮ダクト46の一方の側端には連通孔55が開口し、他方の側端には出口46oが開口する。連通孔55から出口46oにかけて形成される下流側流路には、溶剤凝縮機49と、加熱機47hとが排気40aの流れ方向上流側から下流側に向かって配される。
【0072】
また、溶剤凝縮ダクト46には、洗浄機収納箱75が設けられる。洗浄機収納箱75は、溶剤凝縮機49の上方に開口する収納口75aを備える。洗浄機収納箱75には、洗浄管50aとスプレー50cとが配される。収納口75aには、洗浄機収納箱75と下流側流路とを仕切る仕切り板76が設けられる。仕切り板76は、スプレー50cが下流側流路から露出する露出位置と収納口75aを塞ぐ塞ぎ位置との間で移動自在となっている。回収工程が行われる間は、制御部70(図1参照)により、仕切り板76は、塞ぎ位置となる。また、洗浄工程が行われる間は、仕切り板76は、制御部70(図1参照)により露出位置となる。これにより、洗浄管50aやスプレー50cへ添加剤等が付着することを確実に防止することができる。また、溶剤凝縮機49の下方には、溶剤回収機構52が設けられる。
【0073】
なお、溶剤凝縮ダクト46を水平面に対し斜交する方向に延設してもよい。
【0074】
上記実施形態では、添加剤凝縮ダクト45において排気40aを上方から下方へ流したが、本発明はこれに限られず、添加剤凝縮ダクト45において排気40aを下方から上方へ流してもよい。この場合の実施形態を図6〜図8に示す。
【0075】
図6に示すように、添加剤凝縮ダクト45の下方の側面に入口45iが設けられ、添加剤凝縮ダクト45の上方の側面に連通孔55が開口する。こうして、添加剤凝縮ダクト45には、入口45iから連通孔55にかけて上流側流路が形成される。上流側流路には、添加剤凝縮機47cと添加剤洗浄機48とが、排気40aの流れ方向上流側から下流側に向かって配される。連通孔55により添加剤凝縮ダクト45と接続する溶剤ダクト46は、図1に示す溶剤凝縮ダクト46と同様である。
【0076】
図7に示す排気再生装置35は、図6に示した添加剤凝縮ダクト45の真上に溶剤凝縮ダクト46を設けたものであり、連通孔55は、添加剤凝縮ダクト45の上端に開口する貫通出口と、溶剤凝縮ダクト46の下端に開口する貫通入口とからなる。溶剤16が洗浄液となる場合、すなわち添加剤15が溶剤に可溶な場合に有効な形態である。添加剤凝縮ダクト45の真上に溶剤凝縮ダクト46を設けたため、溶剤凝縮機49が添加剤凝縮機47cの真上に位置する。回収工程では、排気40aから凝縮した溶剤16が溶剤凝縮機49から落下し、添加剤凝縮機47cへ到達する。溶剤凝縮機49から落下した溶剤16は、添加剤凝縮機47cに付着した添加剤15を洗い流すことができる。このように、溶剤凝縮機49を添加剤凝縮機47cの真上に設けたことにより、溶剤凝縮機49が添加剤洗浄機の機能を発揮することとなる。したがって、回収工程において、溶剤凝縮機49による添加剤凝縮機47cの洗浄効果が見込めるため、添加剤洗浄工程を行う頻度を抑えることができる。よって、洗浄工程により生ずるフィルムの生産効率の低下を抑えることができる。
【0077】
なお、図7に示す排気再生装置35において、溶剤凝縮機49における溶剤や添加剤の残留が問題とならない場合には、溶剤洗浄機50を省略しても良い。また、必要であれば、図7に示す排気再生装置35において、添加剤凝縮機47cと溶剤凝縮機との間に設けられた添加剤洗浄機48を省略しても良い。
【0078】
図8に示す排気再生装置35は、図7に示す排気再生装置35における温調機74に代えてヒートパイプ60を用いた場合の実施形態である。図8に示す添加剤凝縮ダクト45は、温調機74とヒートパイプ60との違い以外は、図6に示したものと同様である。一方、図8に示す溶剤凝縮ダクト46は、上流部46aと、下流部46bと、上流部46a及び下流部46bを接続する接続部46cとを備える。上流部46aは、添加剤洗浄機48の上方に設けられる。連通孔55により、上流部46aと添加剤洗浄機48とが連通する。下流部46bは、添加剤凝縮ダクト46に並設され、略垂直方向へ延設される。接続部46cは、上流部46aの上端と、下流部46bの上端とを連通する。上流部46aには、排気40aの流れ方向上流側から下流側に向かって、溶剤凝縮機49と、溶剤洗浄機50とが配される。下流部46cには、加熱機47hが配される。加熱機47hよりも下流側に位置する下流部46bの側面には、出口46oが開口する。なお、加熱機47hを接続部46bに配しても良い。
【0079】
図7及び図8に示す排気再生装置35の添加剤回収機構51は、溶剤回収機構52と一体となったものであり、回収液51xと回収液52xとを回収することができる。これにより、溶剤回収機構52の設置スペースを省くことができる。
【0080】
上記実施形態では、排気再生装置35をテンタ室22に接続させたが、本発明はこれに限られず、排気再生装置35を流延室21に接続しても良い。流延室21において溶剤16が流延膜26から蒸発する場合に有効である。
【0081】
本発明の排気再生装置35は、図1に示す溶液製膜設備10に限られず、図9に示す溶液製膜設備90にも適用できる。図9に示すように、溶液製膜設備90は、ドープ17からフィルム18を製造するものであり、流延室21とテンタ室22と乾燥室23とを有する。流延室21は、同一水平面において平行に配された回転ローラ92,93と、回転ローラ92,93に掛け渡され、回転ローラ92の駆動により循環移動するエンドレスバンド94と、回転ローラ92が支持するエンドレスバンド94に向けてドープ17を連続的に流出し、ドープ17からなる流延膜26をエンドレスバンド94に形成するダイ27と、流延膜26に向けて乾燥風をあてる乾燥機95、96と、剥ぎ取りローラ28とを有する。乾燥機95は、回転ローラ92から回転ローラ93に向かって移動するエンドレスバンド94の近傍に設けられる。乾燥機96は、回転ローラ93から回転ローラ92に向かって移動するエンドレスバンド94の近傍に設けられる。排気再生装置35は流延室21に接続するため、流延室21内の雰囲気における溶剤16の濃度を低く抑えることができる。
【0082】
なお、溶液製膜設備90におけるテンタ室22と排気再生装置35とを接続しても良い。
【0083】
テンタ室22では、湿潤フィルム29の耳部を把持するクリップを移動させることにより、湿潤フィルム29を搬送させても良い。更に、一方の耳部を把持するクリップと、他方の耳部を把持するクリップとの間隔が広がるように、両クリップを移動させて、湿潤フィルム29を拡幅させてもよい。湿潤フィルム29の拡幅により、湿潤フィルム29のシワやカールの防止や、レターデーション等の光学特性を所望の範囲に調整することができる。
【0084】
なお、流延室21やテンタ室22などの乾燥室において、蒸発した添加剤15を優先的に回収する場合、溶剤洗浄機50を省略しても良い。この場合において、温調機49bは、前述の(条件2)とともに、以下の(条件3)を満たすように伝熱媒体の温度を調節する。これにより、溶剤凝縮機49は排気40aの冷却機として機能する。
(条件3)冷却管49aに接触した排気40aの温度が、溶剤16の凝縮点よりも高いこと
【0085】
上記実施形態では、添加剤凝縮ダクト45を垂直方向に延設したが、水平面に対し斜交する方向に延設してもよい。また、添加剤凝縮ダクト45は、直線状のものに限られず、湾曲したものでもよい。そして、添加剤凝縮ダクト45において連通孔55は、垂直方向と交差する方向に開口していればよい。
【0086】
(ドープ)
ドープ17は、ポリマー14、添加剤15及び溶剤16を含む液である。ドープ17には、溶剤16にポリマー14が溶解しているポリマー溶液、及び溶剤16にポリマー14が分散している分散液の両方が含まれる。ドープ17におけるポリマー14の濃度は、15質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0087】
(ポリマー)
フィルム18の原料となるポリマー14としては、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状オレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状オレフィンであり、さらに好ましくは付加重合によって得られた環状オレフィンである。セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。
【0088】
(溶剤)
溶剤16としては、例えば、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0089】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0090】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶剤組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶剤として用いることができる。
【0091】
なお、溶剤16としては、ポリマー14の良溶媒であることが好ましい。ある物質がポリマー14の貧溶媒であるか良溶媒であるかの判断は次のようにして行う。まず、温度5℃以上30℃以下の範囲内において、ポリマー14が全重量の5質量%となるように当該物質とポリマーとを混合する。そして、その混合物中に不溶解物が有る場合には当該物質は貧溶媒であり、その混合物中に不溶解物がない場合には当該物質は良溶媒であると判断することができる。
【0092】
なお、添加剤15としては、可塑剤が挙げられる。可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(以下、BDPと称する)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等)及びその他の可塑剤を用いることができる。この中で、セルロースアシレートをフィルムとするために特に好ましいものとしてはTPPが挙げられる。
【0093】
ドープには、可塑剤以外の添加剤を各種含ませても良い。他の添加剤としては、紫外線吸収剤、離型剤、剥離促進剤、フッ素系界面活性剤、レタデーション制御剤等がある。紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物が好ましく、中でも、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物が特に好ましい。
【符号の説明】
【0094】
35 排気再生装置
45 添加剤凝縮ダクト
46 溶剤凝縮ダクト
47 熱交換器
47c 添加剤凝縮機
47h 加熱機
48 添加剤洗浄機
49 溶剤凝縮機
50 溶剤洗浄機
51 添加剤回収機構
52 溶剤回収機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤及び前記溶剤よりも高凝縮点の添加剤を含む樹脂成形物から前記溶剤を蒸発させる乾燥室に接続し、前記乾燥室の排気から前記溶剤を凝縮し、前記溶剤が取り出された前記排気を再生気体として前記乾燥室へ戻す排気再生装置において、
水平面と交差する方向に延設され前記排気が流通し、開口する前記排気の出口を側面に有する添加剤凝縮ダクトと、
前記添加剤凝縮ダクト内に配され前記排気から前記添加剤を凝縮する添加剤凝縮機と、
前記添加剤凝縮ダクト内に配され前記添加剤が可溶な洗浄液を前記添加剤凝縮機にあてて前記添加剤凝縮機に残留する前記添加剤を流下させる添加剤洗浄機と、
前記出口から送り出された前記排気から前記溶剤を凝縮し、前記凝縮した溶剤が取り出された排気を前記再生気体として外部へ送り出す溶剤凝縮機とを備えることを特徴とする排気再生装置。
【請求項2】
前記添加剤洗浄機は、前記添加剤凝縮機よりも前記添加剤凝縮ダクトにおける前記流れ方向の上流側に配されることを特徴とする請求項1記載の排気再生装置。
【請求項3】
前記添加剤凝縮ダクト内にて前記排気は上方から下方へ流通することを特徴とする請求項1または2記載の排気再生装置。
【請求項4】
溶剤及び前記溶剤よりも高凝縮点の添加剤を含む樹脂成形物から前記溶剤を蒸発させる乾燥室に接続し、前記乾燥室の排気から前記溶剤を凝縮し、前記溶剤が取り出された前記排気を再生気体として前記乾燥室へ戻す排気再生装置において、
水平面と交差する方向に延設され前記排気が下方から上方に向かって流通する添加剤凝縮ダクトと、
前記添加剤凝縮ダクト内に配され前記排気から前記添加剤を凝縮する添加剤凝縮機と、
前記添加剤が取り出された排気から前記溶剤を凝縮し、前記再生気体として外部へ送り出す溶剤凝縮機とを備え、
前記溶剤凝縮機は、前記凝縮した溶剤が前記添加剤凝縮機に流下するように、前記添加剤凝縮機よりも上方に配されたことを特徴とする排気再生装置。
【請求項5】
前記添加剤凝縮機から流下した前記添加剤を回収する添加剤回収機を備えることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の排気再生装置。
【請求項6】
前記溶剤凝縮機から流下した前記溶剤を回収する溶剤回収機とを備えることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の排気再生装置。
【請求項7】
前記添加剤回収機と前記溶剤回収機とが一体となっていることを特徴とする請求項6記載の排気再生装置。
【請求項8】
前記添加剤凝縮ダクトは、略垂直方向に延設されることを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか1項記載の排気再生装置。
【請求項9】
ポリマー、前記溶剤及び前記添加剤を含むドープを支持体に向けて流出し、前記ドープからなる流延膜を前記支持体上に形成する膜形成工程と、
前記流延膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、
前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取って湿潤フィルムとする剥ぎ取り工程と、
前記湿潤フィルムから前記溶剤を蒸発させてフィルムとする湿潤フィルム乾燥工程とを有し、
前記膜形成工程または前記湿潤フィルム乾燥工程の少なくとも一方が行われる前記乾燥室に、請求項1ないし8のうちいずれか1項記載の排気再生装置が接続することを特徴とする溶液製膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−161709(P2012−161709A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21716(P2011−21716)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】