排気冷却用アダプタ
【課題】内燃機関の排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることを目的とする。
【解決手段】排気冷却用アダプタ8の排気通路22の通路断面積は排気ポート12側からエキゾーストマニホールド10側に向かって縮小している。排気ポート12から排気通路22に流れ込んだ排気は流れる間に冷却されて体積が縮小するが、排気通路22の通路断面積も縮小しているので排気流速の低下を防止でき冷却効率を向上できる。更にウォータジャケット24の通路断面積は排気下流側で拡大されているので冷却水流は排気ポート12側で高速に流れる。このため高温側である排気ポート12側にて効率的に排気を冷却でき、膜沸騰が防止できるので冷却効率を損なわない。しかも排気下流側ではウォータジャケット24の通路断面積が拡大されているのでポンプの圧損を低減できる。
【解決手段】排気冷却用アダプタ8の排気通路22の通路断面積は排気ポート12側からエキゾーストマニホールド10側に向かって縮小している。排気ポート12から排気通路22に流れ込んだ排気は流れる間に冷却されて体積が縮小するが、排気通路22の通路断面積も縮小しているので排気流速の低下を防止でき冷却効率を向上できる。更にウォータジャケット24の通路断面積は排気下流側で拡大されているので冷却水流は排気ポート12側で高速に流れる。このため高温側である排気ポート12側にて効率的に排気を冷却でき、膜沸騰が防止できるので冷却効率を損なわない。しかも排気下流側ではウォータジャケット24の通路断面積が拡大されているのでポンプの圧損を低減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドに開口する排気ポートとエキゾーストマニホールドとの間に配置され、内部に、排気ポートからの排気をエキゾーストマニホールドへ流す排気通路と、この排気通路を囲む壁内に排気通路を流れる排気を冷却する冷却水通路とを形成した排気冷却用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関排気系での熱害、特に排気浄化触媒の熱害を防止するために排気を冷却する技術が知られている(例えば特許文献1,2、非特許文献1参照)。
特許文献1の排気系冷却装置では、内燃機関の排気ポートから排気を排気冷却用アダプタに導入している。排気冷却用アダプタでは、排気を上流から下流まで通路断面積が一定の排気通路に流している。このことにより排気を、排気冷却用アダプタの壁内に形成した冷却水通路を流れる冷却水によって冷却している。その後、排気をエキゾーストマニホールドへ排出している。上記冷却水通路についても排気流方向の上流から下流まで通路断面積が一定である。
【0003】
特許文献2のエキゾーストマニホールドでは、その集合通路において、分岐管出口の配列方向に排気流を流しつつ、各気筒の排気流を合流させる構成を採用している。このため集合通路では排気流方向の下流ほど通路断面積を大きくしている。更にこの集合通路の周囲に設けられた冷却水通路では、排気流とは逆方向あるいは同方向に冷却水を流すと共に、冷却水流上流側(排気流下流側あるいは上流側)から冷却水流下流側(排気流上流側あるいは下流側)へ通路断面積は次第に大きくしている。これらの通路断面積の状態は製造上の問題解決のためになされている。
【0004】
非特許文献1では、EGRクーラーの構成である。このEGRクーラーでは、エキゾーストマニホールドから導入した排気は、これを冷却するためのEGRガス通路に流される。このEGRガス通路は、上流では、一旦、通路断面積を拡大し、下流に行くに従い次第に通路断面積を元の小さい状態に戻す構成となっている。EGRガス通路の周囲には冷却水通路が形成されている。冷却水通路は、冷却水をEGRガス流と同方向に流すが、その通路断面積は上流から下流に行くに従い小さくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−15718号全文公報(第7〜13頁、図2〜5)
【特許文献2】特開2010−77953号公報(第5〜6頁、図3,8)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】発明協会公開技報2008−506524号(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排気が冷却されるとその体積が減少する。したがって特許文献1のように上流から下流まで通路断面積が一定の排気通路を流れると、冷却に従い排気の体積が減少するため、上流に比較して下流側では排気流速が低下することになる。
【0008】
後述する図12に示すごとく、排気流速が高速であるほど、熱流束(熱移動量)が大きくなる。したがって特許文献1のごとく通路断面積が一定であると、下流側ほど冷却効率が低下する。又、冷却水通路も同じであり、排気流の上流と下流とで通路断面積が同一であるため、冷却水流の流速は上流側と下流側とで同一となり、冷却性能も同一となる。しかし特に高温となる上流側の排気に対する冷却が下流側よりも重要であるが、このような冷却要求の違いに対応した構成とはなっていない。したがって上流側では高温化した冷却水の膜沸騰が生じて冷却効率を大きく損ない易い。このため特許文献1の構成では全体として十分な冷却性能を発揮できていない。
【0009】
特許文献2では、エキゾーストマニホールドの集合部において下流側ほど通路断面積が大きくされている。この通路断面積の増加は、各気筒の排気が合流することにより排気量が増加することに対応させたものであり、排気流速とは関係ない。例え、各気筒の排気が合流せず排気量が一定であるとしても、次第に通路断面積が拡大したのでは、通路断面積が一定である場合よりも更に流速が低下してしまい、より冷却効率が低下することになる。更に排気流には上流から下流にかけて排気が順次合流する。このため冷却水流の上流側の排気合流位置では高い冷却性能で冷却できるが、冷却水流の下流側の排気合流位置では冷却水が温まると共に、流れが緩くなるので冷却性能が特に低くなる。この冷却性能が低くなる位置で合流した排気により冷却水が高温化して冷却水の膜沸騰が生じて冷却効率を大きく損ない易い。したがって特許文献2の構成では全体として十分な冷却性能を発揮できていない。
【0010】
非特許文献1では、エキゾーストマニホールド側からEGRクーラーに入ったとたんに通路断面積が拡大し、その後元の断面積に戻っている。このため排気は、EGRクーラーに入ったとたん流速が大きく低下する。その後、次第に通路断面積は縮小するが、排気も冷却されるので排気流速の低下は継続することになる。したがって冷却性能は低いままである。冷却水通路では、次第に通路断面積が小さくなることにより、冷却水の流速が上昇しているが、これでは既に冷却している排気流の下流側にて、冷却水による排気の冷却能力を高めることになり、全体として冷却効率は低いものとなる。
【0011】
本発明は、排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の排気冷却用アダプタは、内燃機関のシリンダヘッドに開口する排気ポートとエキゾーストマニホールドとの間に配置され、内部に、排気ポートからの排気をエキゾーストマニホールドへ流す排気通路と、この排気通路を囲む壁内に排気通路を流れる排気を冷却する冷却水通路とを形成した排気冷却用アダプタであって、前記排気通路の通路断面積は前記排気ポート側から前記エキゾーストマニホールド側に向かって縮小され、前記冷却水通路の通路断面積は前記排気ポート側から前記エキゾーストマニホールド側に向かって拡大されていることを特徴とする。
【0013】
排気通路の通路断面積は排気ポート側からエキゾーストマニホールド側に向かって縮小されている。すなわち排気流の上流から下流に向かって排気通路の通路断面積が縮小されている。
【0014】
シリンダヘッドの排気ポートから排気冷却用アダプタの排気通路に流れ込んだ排気は、排気通路内を流れる間に冷却される。このことにより下流側では排気の体積が縮小する。このように排気通路内を流れる間に排気の体積が縮小しても、排気通路側の通路断面積も縮小するので、排気流速の低下を抑制できる。したがって通路断面積が一定である場合のような下流側での冷却効率の低下は防止できる。尚、これに関連してエキゾーストマニホールドの管径を縮小できることから、触媒前排気系表面積を低下できる。したがって触媒暖機性も有利となるエキゾーストマニホールドの形状設計が可能である。
【0015】
冷却水通路については、その通路断面積が排気ポート側からエキゾーストマニホールド側に向かって拡大されている。すなわち排気流の上流から下流に向かって冷却水通路の通路断面積が拡大されている。
【0016】
このことから冷却水流は排気ポート側で高速に流れ、これに比較してエキゾーストマニホールド側では低速に流れることになる。このため排気が高温側である排気通路の排気ポート側にて効率的に排気を冷却できる。しかも高温側では高速に冷却水が流れるので、排気上流側で高温化した冷却水の膜沸騰が効果的に防止でき冷却効率を損なうことがない。エキゾーストマニホールド側では冷却水流は低速化するが、エキゾーストマニホールド側では前述したごとく排気流の温度は低下していることから膜沸騰は防止される。しかも排気流の速度の低下は防止されているので冷却効率は維持できる。
【0017】
このことにより排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることができる。
請求項2に記載の排気冷却用アダプタは、請求項1に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向での排気温の低下に対応させて縮小されていることを特徴とする。
【0018】
このように排気通路の排気流動方向での通路断面積の縮小が、排気温の低下に対応したものであることから、排気通路内を流動する排気が温度低下により体積が小さくなることによる排気流速低下を抑制することができる。
【0019】
このことにより排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることができる。
請求項3に記載の排気冷却用アダプタは、請求項2に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向上流側の排気流速に対して下流側の排気流速を低下させない縮小状態にされていることを特徴とする。
【0020】
このように直接的に排気流速を低下させない通路断面積の縮小状態としても良い。
このことにより排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることができる。
【0021】
請求項4に記載の排気冷却用アダプタは、請求項3に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向上流側の排気流速に対して下流側の排気流速を同じにする縮小状態であることを特徴とする。
【0022】
このように排気通路の上流と下流とで排気流速を同一にする縮小状態とすることにより、排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることができると共に、排気圧力上昇も抑制できるので、内燃機関性能の低下を招くことがない。
【0023】
請求項5に記載の排気冷却用アダプタは、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記エキゾーストマニホールドとの接続面では、前記排気通路の開口径よりも前記エキゾーストマニホールドにおける排気通路の開口径を大きくしたことを特徴とする。
【0024】
排気冷却用アダプタは、接続面に排気通路を開口してエキゾーストマニホールド側の排気通路と接続している。排気冷却用アダプタ側の排気通路とエキゾーストマニホールド側の排気通路との間では、エキゾーストマニホールドの方の開口径を大きくすることができる。
【0025】
このような開口径の大小関係とすることにより、排気冷却用アダプタ側の開口縁部は、エキゾーストマニホールド側の開口縁部の内側に存在することになる。このため、排気冷却用アダプタ側の開口縁部の周縁部分は、エキゾーストマニホールドの排気通路内に露出した状態となる。すなわち排気冷却用アダプタの一部の表面が、エキゾーストマニホールドの排気通路に露出した状態となる。
【0026】
このため排気冷却用アダプタは、エキゾーストマニホールドの排気通路に存在する排気からも受熱でき、エキゾーストマニホールドでの冷却効果も向上させることができる。したがって冷却効率が更に向上する。
【0027】
特に排気冷却用アダプタのエキゾーストマニホールド側では冷却水通路の通路断面積が拡大されている。このため冷却水による受熱がし易い。したがってエキゾーストマニホールドでの冷却効果を一層向上でき、冷却効率が一層向上する。
【0028】
請求項6に記載の排気冷却用アダプタは、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記冷却水通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向での排気温の低下に対応させて拡大されていることを特徴とする。
【0029】
冷却水通路の通路断面積は、排気通路の排気流動方向にて、排気温の低下に対応させて拡大されている。すなわち冷却水通路は、排気通路に対して通路断面積の変化方向が逆となっている。
【0030】
排気上流側では冷却水通路の断面積は小さいことから、冷却水の流速が高速となり、膜沸騰が生じにくくなり、冷却が進んでいない特に高温状態の排気を効果的に冷却できる。又、排気下流側では不必要に冷却水流速を高くする必要がないことから、冷却水通路の断面積を大きくすることでウォータポンプの圧損を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1の排気冷却用アダプタが適用された内燃機関の主要部構成説明図。
【図2】実施の形態1の排気冷却用アダプタの正面側斜視図。
【図3】同じく排気冷却用アダプタの背面側斜視図。
【図4】同じく排気冷却用アダプタの正面図。
【図5】同じく排気冷却用アダプタの背面図。
【図6】(A)〜(D)同じく排気冷却用アダプタの構成説明図。
【図7】同じく図6のX−X線破断斜視図。
【図8】同じく図6のX−X線断面図。
【図9】同じく図6のY−Y線破断斜視図。
【図10】同じく図6のY−Y線断面図。
【図11】実施の形態1の実施例と比較例との構成と、排気流速及び排気温変化とを比較する説明図。
【図12】排気流速と熱流束との関係を示すグラフ。
【図13】実施の形態2の排気冷却用アダプタの破断斜視図。
【図14】同じく排気冷却用アダプタの断面図。
【図15】実施の形態3の排気冷却用アダプタが適用された内燃機関の主要部構成説明図。
【図16】(A),(B)実施の形態3の実施例と比較例との構成及び作用・効果の差異を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施の形態1]
〈構成〉図1は上述した発明が適用された内燃機関の主要部を示している。この内燃機関は、車載用の直列4気筒ガソリンエンジンであり、シリンダヘッド2a、シリンダブロック、ピストン等を備えた内燃機関本体2には4つのシリンダ4が一列に配列して形成されている。内燃機関本体2の吸気ポート側にはインテークマニホールド6が接続されている。排気ポート側には排気冷却用アダプタ8が接続され、この排気冷却用アダプタ8にはエキゾーストマニホールド10が接続されている。
【0033】
インテークマニホールド6は、吸気系に設けられたエアクリーナ、スロットルバルブなどを介して吸気が供給される。この構成によりシリンダヘッド2aに形成された吸気ポートを介して、吸気を各シリンダ4に分配し供給している。尚、ターボチャージャーを設けた内燃機関であれば、吸気系にはコンプレッサが設けられ、インテークマニホールド6には、吸気を冷却するインタークーラが一体化して設けられる。燃料は、インテークマニホールド6の分岐部分あるいは各吸気ポートに燃料噴射弁が設けられることで、吸気流中に燃料が噴射される。燃料噴射弁は、直接、シリンダ4内に噴射する配置としても良い。
【0034】
排気系においては、内燃機関本体2の4つの排気ポートから排出される排気は、排気冷却用アダプタ8とエキゾーストマニホールド10とを介して排出される。そして排気浄化用の触媒コンバータや消音器を介して外部に排出される。尚、ターボチャージャーを設けた内燃機関であれば、排気系にはタービンが設けられている。
【0035】
ここで排気冷却用アダプタ8は、4つの排気ポートに対応して、後述するごとく内部に4つの排気通路が形成されており、この排気通路回りに冷却水通路が設けられている。
排気冷却用アダプタ8以外にもシリンダヘッド2aやシリンダブロックなどには冷却水通路が形成されている。この冷却水通路には、ラジエータで冷却された冷却水が、機関駆動力により回転されるウォータポンプWPにて供給される。このことにより各構成が冷却される。
【0036】
特に排気冷却用アダプタ8では、排気ポートから排出された排気を、上述のごとく供給される冷却水により冷却してエキゾーストマニホールド10側へ排出している。
図2〜10に排気冷却用アダプタ8の構成を示す。図8,10に示すごとく、排気冷却用アダプタ8は、シリンダヘッド2aに開口する排気ポート12とエキゾーストマニホールド10との間に配置されて、排気ポート12側から排出される排気を冷却してエキゾーストマニホールド10側へ排出する。このことにより排気冷却用アダプタ8は排気系での熱害を防止している。
【0037】
このような排気冷却用アダプタ8は、例えばアルミニウム合金や鉄合金などの金属材料により鋳造されたものである。ここではアルミニウム合金で成形されているものとする。この排気冷却用アダプタ8は、排気上流側に排気導入口14が開口する上流側接続面16を形成している。排気導入口14は、シリンダヘッド2aに開口する排気ポート12の位置と数とに対応して設けられている。ここでは上流側接続面16には4つの排気導入口14が直線状に配列して設けられている。
【0038】
排気下流側は排気排出口18が開口する下流側接続面20を形成している。排気排出口18は排気導入口14に対応した数が設けられている。ここでは下流側接続面20には4つの排気排出口18が直線状に配列して設けられている。
【0039】
これら排気導入口14と排気排出口18とはそれぞれ排気冷却用アダプタ8を貫通して形成された4つの排気通路22にて接続されている。
排気冷却用アダプタ8には、上流側接続面16の周辺部に、排気冷却用アダプタ8自身をシリンダヘッド2aのアダプタ接続面2b(図8,10)にボルト締結するためのボルト締結部8aが形成されている。このボルト締結部8aに形成されているボルト挿通孔8bにボルトを挿通し、シリンダヘッド2aのアダプタ接続面2bに開口している螺合孔に対して螺合することにより、排気冷却用アダプタ8をシリンダヘッド2aに固定できる。このことによりシリンダヘッド2aの排気ポート12と排気冷却用アダプタ8の排気通路22とを接続することができる。
【0040】
更に排気冷却用アダプタ8には、下流側接続面20の周辺部に、エキゾーストマニホールド10をボルト締結するためのボルト締結部8cが形成されている。ボルト締結部8cには螺合孔8dが形成されており、エキゾーストマニホールド10のフランジ10aに形成された挿通孔を介してボルトが螺合されることで、エキゾーストマニホールド10が排気冷却用アダプタ8に接続される。このことにより排気冷却用アダプタ8の排気通路22とエキゾーストマニホールド10の排気通路10bとを接続することができる。
【0041】
排気冷却用アダプタ8には、図7〜10に示すごとく、その壁内において排気通路22の周りに、隔壁22aを介してウォータジャケット24(冷却水通路に相当)が形成されている。このウォータジャケット24には、図1にて破線の矢線にて示したごとく冷却水が導入されて流される。この冷却水の導入のために、排気冷却用アダプタ8には長手方向の一端にてその下方に冷却水導入部26が設けられている。そしてウォータジャケット24内から冷却水を排出するために、長手方向の他端にてその上方に冷却水排出部28が設けられている。尚、排気冷却用アダプタ8の長手方向とは、4つの排気通路22の配列方向に相当する。
【0042】
冷却水導入部26からウォータジャケット24内へ導入された冷却水は、図1にて破線の矢線にて示したごとく排気冷却用アダプタ8内を、排気通路22の上下に分かれて長手方向に流れた後、冷却水排出部28から外部の冷却水還流経路へ排出される。
【0043】
このことにより排気冷却用アダプタ8では、ウォータジャケット24を流れる冷却水が、排気通路22の隔壁22aを介して高温の排気から受熱する。このことで排気は冷却され、その冷却後の排気がエキゾーストマニホールド10側へ送り出される。
【0044】
ここで排気通路22は全長が一定の通路断面積ではない。隔壁22aの内面22bは、排気導入口14側よりも排気排出口18側で小径となっている。すなわち排気導入口14から排気排出口18に向かって通路断面積が縮小している。すなわち排気通路22は円錐台形状をなしている。
【0045】
排気は排気通路22内を流れる間に冷却されて排気温度が低下する。このことに対応してその体積は縮小する。通路断面積の縮小の程度は、このような体積の縮小に対応させたものである。特に体積の縮小により、排気流速が下流側で低下するのを防止して、排気通路22内での排気流速を上流から下流まで一定に維持できるように、通路断面積の縮小状態が設定されている。
【0046】
排気通路22とは隔壁22aを隔てて存在するウォータジャケット24については、図7〜10に示されているように、排気流方向で見ると、排気上流側では通路断面積は狭くされており、排気下流側に向かって拡大されている。したがって冷却水導入部26から導入された冷却水が冷却水排出部28に到達するまでの流路では、排気上流側では排気下流側よりも高速に流れる。
〈作用〉上述したごとく排気通路22の通路断面積が設定されていることにより、図11において左側の実施例のグラフに示すごとく、本実施の形態の排気冷却用アダプタ8の排気通路22を流れる排気流速は排気導入口14から排気排出口18まで一定であり、低下していない。
【0047】
排気流速(m/s)と、排気に接触している隔壁22aへ伝達される熱流束(kW)との関係は図12に示すごとく排気流速が高いほど熱流束も大きくなる。したがって排気流速が低下しない実施例では、図11に示すごとく排気温(℃)は排気通路22を流れる間に急速に低下する。
【0048】
更に本実施の形態では、排気通路22を取り囲むウォータジャケット24は排気流の上流側部分24aでは下流側部分24bに比較して通路断面積が小さくされている。すなわちウォータジャケット24の通路断面積は、排気ポート12側からエキゾーストマニホールド10側に向かって拡大されている。
【0049】
このため前述したごとく上流側部分24aでは冷却水は下流側部分24bに比較して高速に流れることになる。すなわち排気通路22において排気が高い側では、高速に冷却水が流れることになる。このため図12と同様な関係から、特に排気流の上流側部分24aでウォータジャケット24による冷却能力が高くなる。このことにより高温化し易い上流側部分24aにおいて膜沸騰が防止されるので、冷却効率を高く維持できる。
【0050】
このように排気流速の維持と冷却水による冷却効率の高さから、排気通路22内を流れる排気は急速に冷却される。しかも排気導入口14にて高速の冷却水流により、排気が効果的に冷却されるので、排気通路22の全長において、排気は、一層低温化される。
〈効果〉(1)排気通路22の通路断面積は排気ポート12側からエキゾーストマニホールド10側に向かって縮小されている。このため排気ポート12から排気冷却用アダプタ8の排気通路22に流れ込んだ排気は、排気通路22内で流れる間に冷却されることにより体積が縮小する。しかし、排気通路22側の通路断面積も下流側に向かって縮小しているので、排気流速の低下を防止できる。したがって一定通路断面積の場合に比較して冷却効率を向上できる。
【0051】
しかもウォータジャケット24については、その通路断面積が排気ポート12側からエキゾーストマニホールド10側に向かって拡大されている。特に排気温の低下に対応させて拡大されている。このことから冷却水流は排気ポート12側で高速に流れ、これに比較してエキゾーストマニホールド10側では低速に流れる。
【0052】
このため排気の高温側である排気通路22の排気ポート12側にて効率的に排気を冷却できる。したがって排気上流側で高温化した冷却水の膜沸騰が効果的に防止でき、冷却効率を損なうことがない。エキゾーストマニホールド10側では冷却水流は低速化するが、この代わり排気流の温度は低下していることから膜沸騰は防止される。しかも排気流の速度低下は防止されているので冷却効率を維持できる。そして、排気下流側では不必要に冷却水流速を高くする必要がないことから、ウォータジャケット24の断面積を大きくすることで、ウォータポンプWPの圧損を低減できる。
【0053】
このようにして排気冷却用アダプタ8の冷却効率を向上できる。
(2)特に排気通路22においては、その通路断面積の排気流動方向での縮小が、排気温の低下に対応したものであり、特に排気流速を低下させない通路断面積の縮小状態としている。このことにより、より確実に冷却効率を向上できる。
【0054】
(3)本実施の形態の排気通路22は上流側と下流側とで排気流速が同一となる縮小状態とされている。このことにより上述したごとく冷却効率の低下を防止できると同時に、排気圧力上昇も抑制できる。このため内燃機関性能の低下を招くことがない。
【0055】
(4)排気通路22の排気排出口18は排気導入口14よりも縮径しているため、エキゾーストマニホールド10の管径を縮小することができる。このため触媒前排気系表面積を低下できることから、触媒暖機性を向上できる。
【0056】
[実施の形態2]
〈構成〉本実施の形態では、図13,14に示すごとく、シリンダヘッド2aと排気冷却用アダプタ8とは前記実施の形態1と同一構成であるが、エキゾーストマニホールド110が異なる。すなわち本実施の形態のエキゾーストマニホールド110は、その排気通路110bの開口径Hbが排気冷却用アダプタ8における排気排出口18の開口径Haよりも大きくされている。
【0057】
このエキゾーストマニホールド110を排気冷却用アダプタ8に対してボルト締結した場合には、図14に示したごとくエキゾーストマニホールド110のフランジ110a部分は、排気冷却用アダプタ8の下流側接続面20に対して、図13に破線のハッチングにて示す領域に密着することになる。
【0058】
しかし前述したごとく開口径Ha,Hbの違い(Ha<Hb)により、排気冷却用アダプタ8における排気排出口18の開口縁部20aは、完全にエキゾーストマニホールド側の開口縁部110cの内側に存在し、その周縁部分20bは、エキゾーストマニホールド110の排気通路110b内に露出する状態となる。
〈作用〉前記実施の形態1に述べた作用が生じる。これと共に、上述したごとく排気冷却用アダプタ8の一部の表面(排気排出口18の周縁部分20b)がエキゾーストマニホールド110の排気通路110b側に露出している。このことから排気冷却用アダプタ8は、エキゾーストマニホールド110の排気通路110bに存在する排気からも受熱できる。
〈効果〉(1)前記実施の形態1の(1)〜(3)の効果を生じると共に、排気冷却用アダプタ8が、エキゾーストマニホールド110の排気通路110bに存在する排気からも受熱できるので、エキゾーストマニホールド110側の冷却効果も向上させることができる。このことにより排気冷却用アダプタ8による冷却効率が更に向上する。
【0059】
排気冷却用アダプタ8において、そのエキゾーストマニホールド110側ではウォータジャケット24の通路断面積が拡大されている。このため冷却水の存在位置がエキゾーストマニホールド110の排気通路110bに近くなり、かつ大量に存在することから、より受熱がし易い。このことからエキゾーストマニホールド110側の冷却効果を一層向上でき、排気冷却用アダプタ8の冷却効率を一層向上できる。
【0060】
(2)尚、エキゾーストマニホールド110の下流側では、上流側の開口径Hbよりも小さい径、例えば排気排出口18の開口径Haと同じ径に絞っても排気の流動抵抗はほとんど増加しない。このことから下流側でエキゾーストマニホールド110の径を縮小すれば、前記実施の形態1の(4)の効果も生じる。
【0061】
[実施の形態3]
〈構成〉本実施の形態では、図15及び図16の(A)に示すごとく、エキゾーストマニホールド210の4つの分岐部分211の間隔が、シリンダヘッド2a側の4つの排気ポート12の間隔よりも狭い。したがって排気ポート12と分岐部分211の排気通路とを接続している排気冷却用アダプタ208では、その内部の排気通路222は、前記実施の形態1,2にて示した排気冷却用アダプタ8の排気通路22に比較して、エキゾーストマニホールド210側が集合するように中央側に傾いて形成されている。
【0062】
このような傾きを、図16の(B)に比較例として示すごとく、通路断面積が一定の排気通路psでは排気冷却用アダプタawの中央側の内面imは、破線の矢線で示す排気流に対向する面ではない。したがって排気の淀み部分exが生じ、排気冷却用アダプタawの冷却効率が低下する。
【0063】
しかし本実施の形態の構成を示す図16の(A)では、このような特に淀みを生じる領域においては、角度αで先端を対応する内面222bに近づけて通路断面積が排気流方向で縮小されるようにしている。
〈作用〉上述した排気通路222の壁面構成により、中央側の内壁222aにおいて淀み部分exが解消されて、その内壁222aの表面を排気が確実に流れるようになる。しかも排気流速の低下防止も前記実施の形態1にて述べたごとく実現されている。
〈効果〉(1)このように排気通路222がエキゾーストマニホールド210側で集合するように中央側に傾いて形成されている排気冷却用アダプタ208に対して、上述したごとく本発明の構成を適用することにより、前記実施の形態1と同様な効果を生じると共に、上述した排気の淀み部分exも同時に解消できる。
【0064】
したがって排気通路222が排気流方向で中央側に傾いて形成されている排気冷却用アダプタ208においては、特に顕著に冷却効率を高めることができる。
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態において、排気冷却用アダプタの冷却水導入部は、排気通路の配列方向の一端に存在し、冷却水排出部は配列方向の他端に存在している。このため全体としての冷却水流は、排気通路の配列方向である。冷却水流の方向はこれ以外の方向でも良い。例えば、シリンダヘッド側(排気流の上流側)からエキゾーストマニホールド側(排気流の下流側)へと流れる構成でも良い。あるいは逆にエキゾーストマニホールド側(排気流の下流側)からシリンダヘッド側(排気流の上流側)へと流れる構成でも良い。
【0065】
・前記各実施の形態において排気通路の形状は円錐台形状であったが、通路断面積が縮小される形状であれば、円錐台形状以外の形状でも良い。例えば三角錐台、四角錐台、五角錐台、六角錐台形状、あるいはこれ以上の角錐台でも良い。又、楕円錐台形状でも良い。
【符号の説明】
【0066】
2…内燃機関本体、2a…シリンダヘッド、2b…アダプタ接続面、4…シリンダ、6…インテークマニホールド、8…排気冷却用アダプタ、8a…ボルト締結部、8b…ボルト挿通孔、8c…ボルト締結部、8d…螺合孔、10…エキゾーストマニホールド、10a…フランジ、10b…排気通路、12…排気ポート、14…排気導入口、16…上流側接続面、18…排気排出口、20…下流側接続面、20a…開口縁部、20b…周縁部分、22…排気通路、22a…隔壁、22b…内面、24…ウォータジャケット、24a…上流側部分、24b…下流側部分、26…冷却水導入部、28…冷却水排出部、110…エキゾーストマニホールド、110a…フランジ、110b…排気通路、110c…開口縁部、208…排気冷却用アダプタ、210…エキゾーストマニホールド、211…分岐部分、222…排気通路、222a…内壁、222b…内面、Ha…開口径(排気冷却用アダプタ)、Hb…開口径(エキゾーストマニホールド)、WP…ウォータポンプ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドに開口する排気ポートとエキゾーストマニホールドとの間に配置され、内部に、排気ポートからの排気をエキゾーストマニホールドへ流す排気通路と、この排気通路を囲む壁内に排気通路を流れる排気を冷却する冷却水通路とを形成した排気冷却用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関排気系での熱害、特に排気浄化触媒の熱害を防止するために排気を冷却する技術が知られている(例えば特許文献1,2、非特許文献1参照)。
特許文献1の排気系冷却装置では、内燃機関の排気ポートから排気を排気冷却用アダプタに導入している。排気冷却用アダプタでは、排気を上流から下流まで通路断面積が一定の排気通路に流している。このことにより排気を、排気冷却用アダプタの壁内に形成した冷却水通路を流れる冷却水によって冷却している。その後、排気をエキゾーストマニホールドへ排出している。上記冷却水通路についても排気流方向の上流から下流まで通路断面積が一定である。
【0003】
特許文献2のエキゾーストマニホールドでは、その集合通路において、分岐管出口の配列方向に排気流を流しつつ、各気筒の排気流を合流させる構成を採用している。このため集合通路では排気流方向の下流ほど通路断面積を大きくしている。更にこの集合通路の周囲に設けられた冷却水通路では、排気流とは逆方向あるいは同方向に冷却水を流すと共に、冷却水流上流側(排気流下流側あるいは上流側)から冷却水流下流側(排気流上流側あるいは下流側)へ通路断面積は次第に大きくしている。これらの通路断面積の状態は製造上の問題解決のためになされている。
【0004】
非特許文献1では、EGRクーラーの構成である。このEGRクーラーでは、エキゾーストマニホールドから導入した排気は、これを冷却するためのEGRガス通路に流される。このEGRガス通路は、上流では、一旦、通路断面積を拡大し、下流に行くに従い次第に通路断面積を元の小さい状態に戻す構成となっている。EGRガス通路の周囲には冷却水通路が形成されている。冷却水通路は、冷却水をEGRガス流と同方向に流すが、その通路断面積は上流から下流に行くに従い小さくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−15718号全文公報(第7〜13頁、図2〜5)
【特許文献2】特開2010−77953号公報(第5〜6頁、図3,8)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】発明協会公開技報2008−506524号(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排気が冷却されるとその体積が減少する。したがって特許文献1のように上流から下流まで通路断面積が一定の排気通路を流れると、冷却に従い排気の体積が減少するため、上流に比較して下流側では排気流速が低下することになる。
【0008】
後述する図12に示すごとく、排気流速が高速であるほど、熱流束(熱移動量)が大きくなる。したがって特許文献1のごとく通路断面積が一定であると、下流側ほど冷却効率が低下する。又、冷却水通路も同じであり、排気流の上流と下流とで通路断面積が同一であるため、冷却水流の流速は上流側と下流側とで同一となり、冷却性能も同一となる。しかし特に高温となる上流側の排気に対する冷却が下流側よりも重要であるが、このような冷却要求の違いに対応した構成とはなっていない。したがって上流側では高温化した冷却水の膜沸騰が生じて冷却効率を大きく損ない易い。このため特許文献1の構成では全体として十分な冷却性能を発揮できていない。
【0009】
特許文献2では、エキゾーストマニホールドの集合部において下流側ほど通路断面積が大きくされている。この通路断面積の増加は、各気筒の排気が合流することにより排気量が増加することに対応させたものであり、排気流速とは関係ない。例え、各気筒の排気が合流せず排気量が一定であるとしても、次第に通路断面積が拡大したのでは、通路断面積が一定である場合よりも更に流速が低下してしまい、より冷却効率が低下することになる。更に排気流には上流から下流にかけて排気が順次合流する。このため冷却水流の上流側の排気合流位置では高い冷却性能で冷却できるが、冷却水流の下流側の排気合流位置では冷却水が温まると共に、流れが緩くなるので冷却性能が特に低くなる。この冷却性能が低くなる位置で合流した排気により冷却水が高温化して冷却水の膜沸騰が生じて冷却効率を大きく損ない易い。したがって特許文献2の構成では全体として十分な冷却性能を発揮できていない。
【0010】
非特許文献1では、エキゾーストマニホールド側からEGRクーラーに入ったとたんに通路断面積が拡大し、その後元の断面積に戻っている。このため排気は、EGRクーラーに入ったとたん流速が大きく低下する。その後、次第に通路断面積は縮小するが、排気も冷却されるので排気流速の低下は継続することになる。したがって冷却性能は低いままである。冷却水通路では、次第に通路断面積が小さくなることにより、冷却水の流速が上昇しているが、これでは既に冷却している排気流の下流側にて、冷却水による排気の冷却能力を高めることになり、全体として冷却効率は低いものとなる。
【0011】
本発明は、排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の排気冷却用アダプタは、内燃機関のシリンダヘッドに開口する排気ポートとエキゾーストマニホールドとの間に配置され、内部に、排気ポートからの排気をエキゾーストマニホールドへ流す排気通路と、この排気通路を囲む壁内に排気通路を流れる排気を冷却する冷却水通路とを形成した排気冷却用アダプタであって、前記排気通路の通路断面積は前記排気ポート側から前記エキゾーストマニホールド側に向かって縮小され、前記冷却水通路の通路断面積は前記排気ポート側から前記エキゾーストマニホールド側に向かって拡大されていることを特徴とする。
【0013】
排気通路の通路断面積は排気ポート側からエキゾーストマニホールド側に向かって縮小されている。すなわち排気流の上流から下流に向かって排気通路の通路断面積が縮小されている。
【0014】
シリンダヘッドの排気ポートから排気冷却用アダプタの排気通路に流れ込んだ排気は、排気通路内を流れる間に冷却される。このことにより下流側では排気の体積が縮小する。このように排気通路内を流れる間に排気の体積が縮小しても、排気通路側の通路断面積も縮小するので、排気流速の低下を抑制できる。したがって通路断面積が一定である場合のような下流側での冷却効率の低下は防止できる。尚、これに関連してエキゾーストマニホールドの管径を縮小できることから、触媒前排気系表面積を低下できる。したがって触媒暖機性も有利となるエキゾーストマニホールドの形状設計が可能である。
【0015】
冷却水通路については、その通路断面積が排気ポート側からエキゾーストマニホールド側に向かって拡大されている。すなわち排気流の上流から下流に向かって冷却水通路の通路断面積が拡大されている。
【0016】
このことから冷却水流は排気ポート側で高速に流れ、これに比較してエキゾーストマニホールド側では低速に流れることになる。このため排気が高温側である排気通路の排気ポート側にて効率的に排気を冷却できる。しかも高温側では高速に冷却水が流れるので、排気上流側で高温化した冷却水の膜沸騰が効果的に防止でき冷却効率を損なうことがない。エキゾーストマニホールド側では冷却水流は低速化するが、エキゾーストマニホールド側では前述したごとく排気流の温度は低下していることから膜沸騰は防止される。しかも排気流の速度の低下は防止されているので冷却効率は維持できる。
【0017】
このことにより排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることができる。
請求項2に記載の排気冷却用アダプタは、請求項1に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向での排気温の低下に対応させて縮小されていることを特徴とする。
【0018】
このように排気通路の排気流動方向での通路断面積の縮小が、排気温の低下に対応したものであることから、排気通路内を流動する排気が温度低下により体積が小さくなることによる排気流速低下を抑制することができる。
【0019】
このことにより排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることができる。
請求項3に記載の排気冷却用アダプタは、請求項2に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向上流側の排気流速に対して下流側の排気流速を低下させない縮小状態にされていることを特徴とする。
【0020】
このように直接的に排気流速を低下させない通路断面積の縮小状態としても良い。
このことにより排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることができる。
【0021】
請求項4に記載の排気冷却用アダプタは、請求項3に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向上流側の排気流速に対して下流側の排気流速を同じにする縮小状態であることを特徴とする。
【0022】
このように排気通路の上流と下流とで排気流速を同一にする縮小状態とすることにより、排気冷却用アダプタにおける排気の冷却効率を向上させることができると共に、排気圧力上昇も抑制できるので、内燃機関性能の低下を招くことがない。
【0023】
請求項5に記載の排気冷却用アダプタは、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記エキゾーストマニホールドとの接続面では、前記排気通路の開口径よりも前記エキゾーストマニホールドにおける排気通路の開口径を大きくしたことを特徴とする。
【0024】
排気冷却用アダプタは、接続面に排気通路を開口してエキゾーストマニホールド側の排気通路と接続している。排気冷却用アダプタ側の排気通路とエキゾーストマニホールド側の排気通路との間では、エキゾーストマニホールドの方の開口径を大きくすることができる。
【0025】
このような開口径の大小関係とすることにより、排気冷却用アダプタ側の開口縁部は、エキゾーストマニホールド側の開口縁部の内側に存在することになる。このため、排気冷却用アダプタ側の開口縁部の周縁部分は、エキゾーストマニホールドの排気通路内に露出した状態となる。すなわち排気冷却用アダプタの一部の表面が、エキゾーストマニホールドの排気通路に露出した状態となる。
【0026】
このため排気冷却用アダプタは、エキゾーストマニホールドの排気通路に存在する排気からも受熱でき、エキゾーストマニホールドでの冷却効果も向上させることができる。したがって冷却効率が更に向上する。
【0027】
特に排気冷却用アダプタのエキゾーストマニホールド側では冷却水通路の通路断面積が拡大されている。このため冷却水による受熱がし易い。したがってエキゾーストマニホールドでの冷却効果を一層向上でき、冷却効率が一層向上する。
【0028】
請求項6に記載の排気冷却用アダプタは、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記冷却水通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向での排気温の低下に対応させて拡大されていることを特徴とする。
【0029】
冷却水通路の通路断面積は、排気通路の排気流動方向にて、排気温の低下に対応させて拡大されている。すなわち冷却水通路は、排気通路に対して通路断面積の変化方向が逆となっている。
【0030】
排気上流側では冷却水通路の断面積は小さいことから、冷却水の流速が高速となり、膜沸騰が生じにくくなり、冷却が進んでいない特に高温状態の排気を効果的に冷却できる。又、排気下流側では不必要に冷却水流速を高くする必要がないことから、冷却水通路の断面積を大きくすることでウォータポンプの圧損を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1の排気冷却用アダプタが適用された内燃機関の主要部構成説明図。
【図2】実施の形態1の排気冷却用アダプタの正面側斜視図。
【図3】同じく排気冷却用アダプタの背面側斜視図。
【図4】同じく排気冷却用アダプタの正面図。
【図5】同じく排気冷却用アダプタの背面図。
【図6】(A)〜(D)同じく排気冷却用アダプタの構成説明図。
【図7】同じく図6のX−X線破断斜視図。
【図8】同じく図6のX−X線断面図。
【図9】同じく図6のY−Y線破断斜視図。
【図10】同じく図6のY−Y線断面図。
【図11】実施の形態1の実施例と比較例との構成と、排気流速及び排気温変化とを比較する説明図。
【図12】排気流速と熱流束との関係を示すグラフ。
【図13】実施の形態2の排気冷却用アダプタの破断斜視図。
【図14】同じく排気冷却用アダプタの断面図。
【図15】実施の形態3の排気冷却用アダプタが適用された内燃機関の主要部構成説明図。
【図16】(A),(B)実施の形態3の実施例と比較例との構成及び作用・効果の差異を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施の形態1]
〈構成〉図1は上述した発明が適用された内燃機関の主要部を示している。この内燃機関は、車載用の直列4気筒ガソリンエンジンであり、シリンダヘッド2a、シリンダブロック、ピストン等を備えた内燃機関本体2には4つのシリンダ4が一列に配列して形成されている。内燃機関本体2の吸気ポート側にはインテークマニホールド6が接続されている。排気ポート側には排気冷却用アダプタ8が接続され、この排気冷却用アダプタ8にはエキゾーストマニホールド10が接続されている。
【0033】
インテークマニホールド6は、吸気系に設けられたエアクリーナ、スロットルバルブなどを介して吸気が供給される。この構成によりシリンダヘッド2aに形成された吸気ポートを介して、吸気を各シリンダ4に分配し供給している。尚、ターボチャージャーを設けた内燃機関であれば、吸気系にはコンプレッサが設けられ、インテークマニホールド6には、吸気を冷却するインタークーラが一体化して設けられる。燃料は、インテークマニホールド6の分岐部分あるいは各吸気ポートに燃料噴射弁が設けられることで、吸気流中に燃料が噴射される。燃料噴射弁は、直接、シリンダ4内に噴射する配置としても良い。
【0034】
排気系においては、内燃機関本体2の4つの排気ポートから排出される排気は、排気冷却用アダプタ8とエキゾーストマニホールド10とを介して排出される。そして排気浄化用の触媒コンバータや消音器を介して外部に排出される。尚、ターボチャージャーを設けた内燃機関であれば、排気系にはタービンが設けられている。
【0035】
ここで排気冷却用アダプタ8は、4つの排気ポートに対応して、後述するごとく内部に4つの排気通路が形成されており、この排気通路回りに冷却水通路が設けられている。
排気冷却用アダプタ8以外にもシリンダヘッド2aやシリンダブロックなどには冷却水通路が形成されている。この冷却水通路には、ラジエータで冷却された冷却水が、機関駆動力により回転されるウォータポンプWPにて供給される。このことにより各構成が冷却される。
【0036】
特に排気冷却用アダプタ8では、排気ポートから排出された排気を、上述のごとく供給される冷却水により冷却してエキゾーストマニホールド10側へ排出している。
図2〜10に排気冷却用アダプタ8の構成を示す。図8,10に示すごとく、排気冷却用アダプタ8は、シリンダヘッド2aに開口する排気ポート12とエキゾーストマニホールド10との間に配置されて、排気ポート12側から排出される排気を冷却してエキゾーストマニホールド10側へ排出する。このことにより排気冷却用アダプタ8は排気系での熱害を防止している。
【0037】
このような排気冷却用アダプタ8は、例えばアルミニウム合金や鉄合金などの金属材料により鋳造されたものである。ここではアルミニウム合金で成形されているものとする。この排気冷却用アダプタ8は、排気上流側に排気導入口14が開口する上流側接続面16を形成している。排気導入口14は、シリンダヘッド2aに開口する排気ポート12の位置と数とに対応して設けられている。ここでは上流側接続面16には4つの排気導入口14が直線状に配列して設けられている。
【0038】
排気下流側は排気排出口18が開口する下流側接続面20を形成している。排気排出口18は排気導入口14に対応した数が設けられている。ここでは下流側接続面20には4つの排気排出口18が直線状に配列して設けられている。
【0039】
これら排気導入口14と排気排出口18とはそれぞれ排気冷却用アダプタ8を貫通して形成された4つの排気通路22にて接続されている。
排気冷却用アダプタ8には、上流側接続面16の周辺部に、排気冷却用アダプタ8自身をシリンダヘッド2aのアダプタ接続面2b(図8,10)にボルト締結するためのボルト締結部8aが形成されている。このボルト締結部8aに形成されているボルト挿通孔8bにボルトを挿通し、シリンダヘッド2aのアダプタ接続面2bに開口している螺合孔に対して螺合することにより、排気冷却用アダプタ8をシリンダヘッド2aに固定できる。このことによりシリンダヘッド2aの排気ポート12と排気冷却用アダプタ8の排気通路22とを接続することができる。
【0040】
更に排気冷却用アダプタ8には、下流側接続面20の周辺部に、エキゾーストマニホールド10をボルト締結するためのボルト締結部8cが形成されている。ボルト締結部8cには螺合孔8dが形成されており、エキゾーストマニホールド10のフランジ10aに形成された挿通孔を介してボルトが螺合されることで、エキゾーストマニホールド10が排気冷却用アダプタ8に接続される。このことにより排気冷却用アダプタ8の排気通路22とエキゾーストマニホールド10の排気通路10bとを接続することができる。
【0041】
排気冷却用アダプタ8には、図7〜10に示すごとく、その壁内において排気通路22の周りに、隔壁22aを介してウォータジャケット24(冷却水通路に相当)が形成されている。このウォータジャケット24には、図1にて破線の矢線にて示したごとく冷却水が導入されて流される。この冷却水の導入のために、排気冷却用アダプタ8には長手方向の一端にてその下方に冷却水導入部26が設けられている。そしてウォータジャケット24内から冷却水を排出するために、長手方向の他端にてその上方に冷却水排出部28が設けられている。尚、排気冷却用アダプタ8の長手方向とは、4つの排気通路22の配列方向に相当する。
【0042】
冷却水導入部26からウォータジャケット24内へ導入された冷却水は、図1にて破線の矢線にて示したごとく排気冷却用アダプタ8内を、排気通路22の上下に分かれて長手方向に流れた後、冷却水排出部28から外部の冷却水還流経路へ排出される。
【0043】
このことにより排気冷却用アダプタ8では、ウォータジャケット24を流れる冷却水が、排気通路22の隔壁22aを介して高温の排気から受熱する。このことで排気は冷却され、その冷却後の排気がエキゾーストマニホールド10側へ送り出される。
【0044】
ここで排気通路22は全長が一定の通路断面積ではない。隔壁22aの内面22bは、排気導入口14側よりも排気排出口18側で小径となっている。すなわち排気導入口14から排気排出口18に向かって通路断面積が縮小している。すなわち排気通路22は円錐台形状をなしている。
【0045】
排気は排気通路22内を流れる間に冷却されて排気温度が低下する。このことに対応してその体積は縮小する。通路断面積の縮小の程度は、このような体積の縮小に対応させたものである。特に体積の縮小により、排気流速が下流側で低下するのを防止して、排気通路22内での排気流速を上流から下流まで一定に維持できるように、通路断面積の縮小状態が設定されている。
【0046】
排気通路22とは隔壁22aを隔てて存在するウォータジャケット24については、図7〜10に示されているように、排気流方向で見ると、排気上流側では通路断面積は狭くされており、排気下流側に向かって拡大されている。したがって冷却水導入部26から導入された冷却水が冷却水排出部28に到達するまでの流路では、排気上流側では排気下流側よりも高速に流れる。
〈作用〉上述したごとく排気通路22の通路断面積が設定されていることにより、図11において左側の実施例のグラフに示すごとく、本実施の形態の排気冷却用アダプタ8の排気通路22を流れる排気流速は排気導入口14から排気排出口18まで一定であり、低下していない。
【0047】
排気流速(m/s)と、排気に接触している隔壁22aへ伝達される熱流束(kW)との関係は図12に示すごとく排気流速が高いほど熱流束も大きくなる。したがって排気流速が低下しない実施例では、図11に示すごとく排気温(℃)は排気通路22を流れる間に急速に低下する。
【0048】
更に本実施の形態では、排気通路22を取り囲むウォータジャケット24は排気流の上流側部分24aでは下流側部分24bに比較して通路断面積が小さくされている。すなわちウォータジャケット24の通路断面積は、排気ポート12側からエキゾーストマニホールド10側に向かって拡大されている。
【0049】
このため前述したごとく上流側部分24aでは冷却水は下流側部分24bに比較して高速に流れることになる。すなわち排気通路22において排気が高い側では、高速に冷却水が流れることになる。このため図12と同様な関係から、特に排気流の上流側部分24aでウォータジャケット24による冷却能力が高くなる。このことにより高温化し易い上流側部分24aにおいて膜沸騰が防止されるので、冷却効率を高く維持できる。
【0050】
このように排気流速の維持と冷却水による冷却効率の高さから、排気通路22内を流れる排気は急速に冷却される。しかも排気導入口14にて高速の冷却水流により、排気が効果的に冷却されるので、排気通路22の全長において、排気は、一層低温化される。
〈効果〉(1)排気通路22の通路断面積は排気ポート12側からエキゾーストマニホールド10側に向かって縮小されている。このため排気ポート12から排気冷却用アダプタ8の排気通路22に流れ込んだ排気は、排気通路22内で流れる間に冷却されることにより体積が縮小する。しかし、排気通路22側の通路断面積も下流側に向かって縮小しているので、排気流速の低下を防止できる。したがって一定通路断面積の場合に比較して冷却効率を向上できる。
【0051】
しかもウォータジャケット24については、その通路断面積が排気ポート12側からエキゾーストマニホールド10側に向かって拡大されている。特に排気温の低下に対応させて拡大されている。このことから冷却水流は排気ポート12側で高速に流れ、これに比較してエキゾーストマニホールド10側では低速に流れる。
【0052】
このため排気の高温側である排気通路22の排気ポート12側にて効率的に排気を冷却できる。したがって排気上流側で高温化した冷却水の膜沸騰が効果的に防止でき、冷却効率を損なうことがない。エキゾーストマニホールド10側では冷却水流は低速化するが、この代わり排気流の温度は低下していることから膜沸騰は防止される。しかも排気流の速度低下は防止されているので冷却効率を維持できる。そして、排気下流側では不必要に冷却水流速を高くする必要がないことから、ウォータジャケット24の断面積を大きくすることで、ウォータポンプWPの圧損を低減できる。
【0053】
このようにして排気冷却用アダプタ8の冷却効率を向上できる。
(2)特に排気通路22においては、その通路断面積の排気流動方向での縮小が、排気温の低下に対応したものであり、特に排気流速を低下させない通路断面積の縮小状態としている。このことにより、より確実に冷却効率を向上できる。
【0054】
(3)本実施の形態の排気通路22は上流側と下流側とで排気流速が同一となる縮小状態とされている。このことにより上述したごとく冷却効率の低下を防止できると同時に、排気圧力上昇も抑制できる。このため内燃機関性能の低下を招くことがない。
【0055】
(4)排気通路22の排気排出口18は排気導入口14よりも縮径しているため、エキゾーストマニホールド10の管径を縮小することができる。このため触媒前排気系表面積を低下できることから、触媒暖機性を向上できる。
【0056】
[実施の形態2]
〈構成〉本実施の形態では、図13,14に示すごとく、シリンダヘッド2aと排気冷却用アダプタ8とは前記実施の形態1と同一構成であるが、エキゾーストマニホールド110が異なる。すなわち本実施の形態のエキゾーストマニホールド110は、その排気通路110bの開口径Hbが排気冷却用アダプタ8における排気排出口18の開口径Haよりも大きくされている。
【0057】
このエキゾーストマニホールド110を排気冷却用アダプタ8に対してボルト締結した場合には、図14に示したごとくエキゾーストマニホールド110のフランジ110a部分は、排気冷却用アダプタ8の下流側接続面20に対して、図13に破線のハッチングにて示す領域に密着することになる。
【0058】
しかし前述したごとく開口径Ha,Hbの違い(Ha<Hb)により、排気冷却用アダプタ8における排気排出口18の開口縁部20aは、完全にエキゾーストマニホールド側の開口縁部110cの内側に存在し、その周縁部分20bは、エキゾーストマニホールド110の排気通路110b内に露出する状態となる。
〈作用〉前記実施の形態1に述べた作用が生じる。これと共に、上述したごとく排気冷却用アダプタ8の一部の表面(排気排出口18の周縁部分20b)がエキゾーストマニホールド110の排気通路110b側に露出している。このことから排気冷却用アダプタ8は、エキゾーストマニホールド110の排気通路110bに存在する排気からも受熱できる。
〈効果〉(1)前記実施の形態1の(1)〜(3)の効果を生じると共に、排気冷却用アダプタ8が、エキゾーストマニホールド110の排気通路110bに存在する排気からも受熱できるので、エキゾーストマニホールド110側の冷却効果も向上させることができる。このことにより排気冷却用アダプタ8による冷却効率が更に向上する。
【0059】
排気冷却用アダプタ8において、そのエキゾーストマニホールド110側ではウォータジャケット24の通路断面積が拡大されている。このため冷却水の存在位置がエキゾーストマニホールド110の排気通路110bに近くなり、かつ大量に存在することから、より受熱がし易い。このことからエキゾーストマニホールド110側の冷却効果を一層向上でき、排気冷却用アダプタ8の冷却効率を一層向上できる。
【0060】
(2)尚、エキゾーストマニホールド110の下流側では、上流側の開口径Hbよりも小さい径、例えば排気排出口18の開口径Haと同じ径に絞っても排気の流動抵抗はほとんど増加しない。このことから下流側でエキゾーストマニホールド110の径を縮小すれば、前記実施の形態1の(4)の効果も生じる。
【0061】
[実施の形態3]
〈構成〉本実施の形態では、図15及び図16の(A)に示すごとく、エキゾーストマニホールド210の4つの分岐部分211の間隔が、シリンダヘッド2a側の4つの排気ポート12の間隔よりも狭い。したがって排気ポート12と分岐部分211の排気通路とを接続している排気冷却用アダプタ208では、その内部の排気通路222は、前記実施の形態1,2にて示した排気冷却用アダプタ8の排気通路22に比較して、エキゾーストマニホールド210側が集合するように中央側に傾いて形成されている。
【0062】
このような傾きを、図16の(B)に比較例として示すごとく、通路断面積が一定の排気通路psでは排気冷却用アダプタawの中央側の内面imは、破線の矢線で示す排気流に対向する面ではない。したがって排気の淀み部分exが生じ、排気冷却用アダプタawの冷却効率が低下する。
【0063】
しかし本実施の形態の構成を示す図16の(A)では、このような特に淀みを生じる領域においては、角度αで先端を対応する内面222bに近づけて通路断面積が排気流方向で縮小されるようにしている。
〈作用〉上述した排気通路222の壁面構成により、中央側の内壁222aにおいて淀み部分exが解消されて、その内壁222aの表面を排気が確実に流れるようになる。しかも排気流速の低下防止も前記実施の形態1にて述べたごとく実現されている。
〈効果〉(1)このように排気通路222がエキゾーストマニホールド210側で集合するように中央側に傾いて形成されている排気冷却用アダプタ208に対して、上述したごとく本発明の構成を適用することにより、前記実施の形態1と同様な効果を生じると共に、上述した排気の淀み部分exも同時に解消できる。
【0064】
したがって排気通路222が排気流方向で中央側に傾いて形成されている排気冷却用アダプタ208においては、特に顕著に冷却効率を高めることができる。
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態において、排気冷却用アダプタの冷却水導入部は、排気通路の配列方向の一端に存在し、冷却水排出部は配列方向の他端に存在している。このため全体としての冷却水流は、排気通路の配列方向である。冷却水流の方向はこれ以外の方向でも良い。例えば、シリンダヘッド側(排気流の上流側)からエキゾーストマニホールド側(排気流の下流側)へと流れる構成でも良い。あるいは逆にエキゾーストマニホールド側(排気流の下流側)からシリンダヘッド側(排気流の上流側)へと流れる構成でも良い。
【0065】
・前記各実施の形態において排気通路の形状は円錐台形状であったが、通路断面積が縮小される形状であれば、円錐台形状以外の形状でも良い。例えば三角錐台、四角錐台、五角錐台、六角錐台形状、あるいはこれ以上の角錐台でも良い。又、楕円錐台形状でも良い。
【符号の説明】
【0066】
2…内燃機関本体、2a…シリンダヘッド、2b…アダプタ接続面、4…シリンダ、6…インテークマニホールド、8…排気冷却用アダプタ、8a…ボルト締結部、8b…ボルト挿通孔、8c…ボルト締結部、8d…螺合孔、10…エキゾーストマニホールド、10a…フランジ、10b…排気通路、12…排気ポート、14…排気導入口、16…上流側接続面、18…排気排出口、20…下流側接続面、20a…開口縁部、20b…周縁部分、22…排気通路、22a…隔壁、22b…内面、24…ウォータジャケット、24a…上流側部分、24b…下流側部分、26…冷却水導入部、28…冷却水排出部、110…エキゾーストマニホールド、110a…フランジ、110b…排気通路、110c…開口縁部、208…排気冷却用アダプタ、210…エキゾーストマニホールド、211…分岐部分、222…排気通路、222a…内壁、222b…内面、Ha…開口径(排気冷却用アダプタ)、Hb…開口径(エキゾーストマニホールド)、WP…ウォータポンプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッドに開口する排気ポートとエキゾーストマニホールドとの間に配置され、内部に、排気ポートからの排気をエキゾーストマニホールドへ流す排気通路と、この排気通路を囲む壁内に排気通路を流れる排気を冷却する冷却水通路とを形成した排気冷却用アダプタであって、
前記排気通路の通路断面積は前記排気ポート側から前記エキゾーストマニホールド側に向かって縮小され、前記冷却水通路の通路断面積は前記排気ポート側から前記エキゾーストマニホールド側に向かって拡大されていることを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向での排気温の低下に対応させて縮小されていることを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項3】
請求項2に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向上流側の排気流速に対して下流側の排気流速を低下させない縮小状態にされていることを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項4】
請求項3に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向上流側の排気流速に対して下流側の排気流速を同じにする縮小状態であることを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記エキゾーストマニホールドとの接続面では、前記排気通路の開口径よりも前記エキゾーストマニホールドにおける排気通路の開口径を大きくしたことを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記冷却水通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向での排気温の低下に対応させて拡大されていることを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッドに開口する排気ポートとエキゾーストマニホールドとの間に配置され、内部に、排気ポートからの排気をエキゾーストマニホールドへ流す排気通路と、この排気通路を囲む壁内に排気通路を流れる排気を冷却する冷却水通路とを形成した排気冷却用アダプタであって、
前記排気通路の通路断面積は前記排気ポート側から前記エキゾーストマニホールド側に向かって縮小され、前記冷却水通路の通路断面積は前記排気ポート側から前記エキゾーストマニホールド側に向かって拡大されていることを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向での排気温の低下に対応させて縮小されていることを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項3】
請求項2に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向上流側の排気流速に対して下流側の排気流速を低下させない縮小状態にされていることを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項4】
請求項3に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記排気通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向上流側の排気流速に対して下流側の排気流速を同じにする縮小状態であることを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記エキゾーストマニホールドとの接続面では、前記排気通路の開口径よりも前記エキゾーストマニホールドにおける排気通路の開口径を大きくしたことを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気冷却用アダプタにおいて、前記冷却水通路の通路断面積は、前記排気通路の排気流動方向での排気温の低下に対応させて拡大されていることを特徴とする排気冷却用アダプタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−36448(P2013−36448A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175308(P2011−175308)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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