説明

排気浄化用触媒及びその製造方法

【課題】比較的低温条件下における排気浄化性能、及び熱耐久性に優れる排気浄化用触媒、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の13族元素の酸化物;少なくとも1種のランタノイド元素の酸化物、及び、少なくとも1種の4族元素の酸化物、の少なくともいずれか一方;並びに、銅等からなる群より選ばれる少なくとも1種の卑金属を含む微粒子;を含む排気浄化用触媒であって、前記卑金属を含む微粒子の平均粒径が1〜1000nmであり、前記卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い前記13族元素酸化物との平均距離が60nm以下であり、且つ、前記卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物との平均距離が60nm以下であることを特徴とする、排気浄化用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低温条件下における排気浄化性能、及び熱耐久性に優れる排気浄化用触媒、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられる内燃機関の排ガスは、一酸化炭素や、未燃焼炭化水素等の、人体にとって有害な成分を含む。このため、一般的な車両の排気部分には、有害な成分を分解除去する排気浄化装置が設けられている。従来の排気浄化装置は、アルミナ等の金属酸化物に担持された白金等の貴金属を主成分とする排気浄化用触媒を備えていた。
【0003】
近年、白金等の希少で高価な貴金属を含まない、排気浄化用触媒の研究が盛んに行われている。
特許文献1には、(A)酸化第一銅と酸化第二銅を含有する銅成分、並びに(B)(1)ランタノイド酸化物の1種以上、(2)メンデレーエフ周期律表のII族元素の酸化物の1種以上、(3)IIIb族元素の酸化物の1種以上、及び(4)IV族元素の酸化物の1種以上を含む混合担体を含んでなり、(A)の銅成分が(B)の担体の上に分散された触媒に関する技術が記載されている。また、特許文献1には、Al(NO、Mg(NO、Ce(NO、ZrO(NO、及びLa(NOを混合して担体(B)を調製した後、銅を当該担体(B)上に担持させた実験例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平9−501348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された様な従来の排気浄化用触媒は、2種以上の担体を混合して混合担体を調製した後に、当該混合担体上に銅を担持させているため、例えば、銅粒子がある1種類の担体のみに担持され、他の担体には全く担持されていないという態様が考えられる。本発明者らが検討した結果、このような1種類の担体のみに担持された銅粒子を含む排気浄化用触媒は、後述する実施例において示すように、比較的低温時の排気浄化活性、及び熱耐久性に特に劣ることが分かった。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、比較的低温条件下における排気浄化性能、及び熱耐久性に優れる排気浄化用触媒、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排気浄化用触媒は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素の酸化物;少なくとも1種のランタノイド元素の酸化物、及び、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の4族元素の酸化物、の少なくともいずれか一方;並びに、銅、鉄、ニッケル、コバルト、及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の卑金属を含む微粒子;を含む排気浄化用触媒であって、前記卑金属を含む微粒子の平均粒径が1〜1000nmであり、前記卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い前記13族元素酸化物との平均距離が60nm以下であり、且つ、前記卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物との平均距離が60nm以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、前記卑金属を含む各微粒子が、前記13族元素酸化物、並びに、前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物の、少なくともいずれか一方に担持されていてもよい。
【0008】
本発明の排気浄化用触媒の製造方法は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素の酸化物;少なくとも1種のランタノイド元素の酸化物、及び、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の4族元素の酸化物、の少なくともいずれか一方;並びに、銅、鉄、ニッケル、コバルト、及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の卑金属を含む微粒子;を含む排気浄化用触媒の製造方法であって、前記13族元素酸化物、及び、前記卑金属を含む化合物を混合し、第1の混合物を調製する工程、前記第1の混合物、及び、前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物を混合し、第2の混合物を調製する工程、並びに、前記第2の混合物を加熱する工程を有することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、前記第1の混合物を調製する工程は、前記13族元素酸化物、及び、前記卑金属を含む化合物を、溶媒及び/又は分散媒に溶解及び/又は分散させて混合する工程であってもよい。
【0010】
本発明においては、前記加熱工程は、350〜650℃の温度条件下で行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記卑金属を含む微粒子の平均粒径が十分に小さく、且つ、前記卑金属を含む微粒子の十分近傍に前記13族元素酸化物、並びに、前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物、がいずれも存在するため、特に比較的低温条件下において優れた排気浄化性能を発揮し、且つ優れた熱耐久性を有する。また、本発明の製造方法によれば、初めに前記卑金属を含む化合物及び前記13族元素酸化物を混合し、次に当該混合物と前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物とを混合するという、いわば2段階の混合工程を経た後に加熱処理することにより、前記卑金属を含む微粒子の平均粒径が十分小さく保たれ、且つ、特に比較的低温条件下において前記卑金属を含む微粒子のメタル(0価状態)化が促進される排気浄化用触媒が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の排気浄化用触媒の第1及び第2の典型例を示した模式図である。
【図2】本発明の排気浄化用触媒の第1及び第2の変形例を示した模式図である。
【図3】本発明の排気浄化用触媒の第3の変形例を示した模式図である。
【図4】実施例1−実施例3、及び比較例1−比較例7の排気浄化用触媒のNO浄化率(%)を示した棒グラフである。
【図5】実施例2の排気浄化用触媒のTEM画像である。
【図6】実施例2及び比較例2の還元温度を比較した棒グラフである。
【図7】従来の排気浄化用触媒を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.排気浄化用触媒
本発明の排気浄化用触媒は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素の酸化物;少なくとも1種のランタノイド元素の酸化物、及び、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の4族元素の酸化物、の少なくともいずれか一方;並びに、銅、鉄、ニッケル、コバルト、及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の卑金属を含む微粒子;を含む排気浄化用触媒であって、前記卑金属を含む微粒子の平均粒径が1〜1000nmであり、前記卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い前記13族元素酸化物との平均距離が60nm以下であり、且つ、前記卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物との平均距離が60nm以下であることを特徴とする。
【0014】
上述したように、特許文献1に記載された様な従来の排気浄化用触媒は、銅微粒子がある1種類の担体のみに担持されており、他の種類の担体には全く担持されていないと考えられる。
図7(a)及び(b)は、従来の排気浄化用触媒を示した模式図である。なお、図7(a)及び(b)においては、本願発明との対比の観点から、銅などの卑金属を含む微粒子、並びに当該微粒子に最も近い13族元素酸化物、及びランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物をそれぞれ1つずつ示すものとする。また、図7(a)及び(b)においては、説明の簡便のため、卑金属を含む微粒子を円で、13族元素酸化物、及び、ランタノイド酸化物又は4族元素酸化物をそれぞれ楕円で描くこととする。さらに、図7(a)及び(b)においては、ランタノイド酸化物、4族元素酸化物、又はランタノイド酸化物及び4族元素酸化物の混合物のいずれか一方を楕円3により代表して描くこととする。
【0015】
図7(a)においては、卑金属を含む微粒子1が13族元素酸化物2のみに担持されている。しかし、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3は、卑金属を含む微粒子1から十分離れている。このような触媒は、比較的低温条件下において銅酸化物の銅への還元が十分に進行しないため、比較的低温条件下における排気浄化性能に劣る。
図7(b)においては、卑金属を含む微粒子1がランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3のみに担持されている。しかし、13族元素酸化物2は、卑金属を含む微粒子1から十分離れている。このような触媒は、比較的高温条件下における排気浄化性能に劣る。また、このような触媒は、熱耐久性に劣るため、比較的高温条件下において卑金属を含む微粒子同士が互いに凝集し、さらに肥大化する結果、繰り返し使用した場合に、活性点の減少により高温条件下における排気浄化性能がさらに低減し、比較的低温条件下においても排気浄化性能が低減するという問題がある。
なお、卑金属を含む微粒子の重心1a、及び一点鎖線で示した円4については後に詳述する。
【0016】
このように、卑金属を含む従来の排気浄化用触媒は、いずれの温度条件下においても排気浄化性能が十分ではなかった。特に、セリア(CeO)に銅が担持された触媒においては、熱耐久性の弱さ、及び低温時の排気浄化活性の低さに深刻な課題があった。また、本発明者らが検討した結果、後述する実施例において示すように、上記図7(a)及び(b)に示した排気浄化用触媒を混合しても、各触媒の弱点を補うことはできず、排気浄化能は向上しないことが分かった(比較例7)。
本発明者らは、鋭意検討の結果、卑金属を含む微粒子の平均粒径が十分に小さく、且つ、当該卑金属を含む微粒子の十分近傍に13族元素酸化物、並びに、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物、がいずれも存在する排気浄化用触媒は、特に比較的低温条件下において優れた排気浄化性能を発揮し、且つ優れた熱耐久性を有することを見出した。また、本発明者らは、卑金属を含む化合物、13族元素酸化物、並びにランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物を、2段階に分けて混合し加熱処理することにより、卑金属を含む微粒子の平均粒径が十分小さく保たれ、且つ、特に比較的低温条件下において卑金属を含む微粒子のメタル(0価状態)化が促進される排気浄化用触媒が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
本発明の排気浄化用触媒は、13族元素の酸化物;ランタノイド元素の酸化物及び4族元素の酸化物の少なくともいずれか一方;並びに、卑金属を含む微粒子;を含有する。以下、13族元素の酸化物、ランタノイド元素の酸化物及び4族元素の酸化物、並びに卑金属を含む微粒子について、順に説明する。
【0018】
1−1.13族元素の酸化物
本発明に使用される13族元素の酸化物は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、及びタリウムの内、少なくとも1種の元素を含む酸化物であれば、特に限定されない。これらの元素は1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
本発明に使用される13族元素の酸化物は、具体的には、アルミナ(Al)、酸化ガリウム(III)(Ga)、三酸化二ホウ素(B)、酸化インジウム(III)(In)、酸化タリウム(III)(Tl)等が例示できる。これら酸化物の中でも、本発明においては、アルミナを用いるのが好ましい。
排気浄化用触媒中において、13族元素の酸化物は、粒子形状であってもよいし、繊維状であってもよいし、排気浄化用触媒の体積の一部又は全体を占める連続体であってもよい。
【0019】
13族元素の酸化物、並びに、ランタノイド元素の酸化物及び/又は4族元素の酸化物の総含有量を100質量%としたときの、13族元素の酸化物の含有割合は、20〜80質量%であることが好ましい。当該含有割合が20質量%未満であるとすると、13族元素の酸化物が少なすぎるため、比較的高温条件下における排気浄化活性が低くなるおそれがある。一方、当該含有割合が80質量%を超えるとすると、相対的に、ランタノイド元素の酸化物及び/又は4族元素の酸化物の含有割合が減る結果、排気浄化の効果、特に、低温条件下における優れた排気浄化の効果を十分に享受できないおそれがある。
13族元素の酸化物、並びに、ランタノイド元素の酸化物及び/又は4族元素の酸化物の総含有量を100質量%としたときの、13族元素の酸化物の含有割合は、30〜70質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0020】
1−2.ランタノイド元素の酸化物、及び4族元素の酸化物
本発明に使用されるランタノイド元素の酸化物は、具体的には、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの内、少なくとも1種の元素を含む酸化物であれば、特に限定されない。これらの元素は1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
本発明に使用されるランタノイド元素の酸化物は、具体的には、セリア(CeO)、酸化ランタン(III)(La)、酸化プラセオジム(Pr11)、酸化ネオジム(III)(Nd)等が例示できる。これら酸化物の中でも、本発明においては、セリアを用いるのが好ましい。
排気浄化用触媒中において、ランタノイド元素の酸化物は、粒子形状であってもよいし、繊維状であってもよいし、排気浄化用触媒の体積の一部又は全体を占める連続体であってもよい。
【0021】
本発明に使用される4族元素の酸化物は、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムの内、少なくとも1種の元素を含む酸化物であれば、特に限定されない。これらの元素は1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
本発明に使用される4族元素の酸化物は、具体的には、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、酸化ハフニウム(IV)(HfO)等が例示できる。これら酸化物の中でも、本発明においては、ジルコニアを用いるのが好ましい。
排気浄化用触媒中において、4族元素の酸化物は、粒子形状であってもよいし、繊維状であってもよいし、排気浄化用触媒の体積の一部又は全体を占める連続体であってもよい。
【0022】
本発明においては、ランタノイド元素の酸化物のみを用いてもよいし、4族元素の酸化物のみを用いてもよいし、ランタノイド元素の酸化物及び4族元素の酸化物を両方用いてもよい。
ランタノイド元素の酸化物及び4族元素の酸化物の組み合わせとしては、具体的には、セリア−ジルコニア(CeO−ZrO)、セリア−チタニア(CeO−TiO)、セリア−酸化ハフニウム(IV)(CeO−HfO)、酸化ランタン(III)−ジルコニア(La−ZrO)、酸化プラセオジム−ジルコニア(Pr11−ZrO)、酸化ランタン(III)−チタニア(La−TiO)、酸化プラセオジム−チタニア(Pr11−TiO)等が例示できる。これら複合酸化物の中でも、本発明においては、セリア−ジルコニアを用いるのが好ましい。
排気浄化用触媒中において、上記複合酸化物は、粒子形状であってもよいし、繊維状であってもよいし、排気浄化用触媒の体積の一部又は全体を占める連続体であってもよい。
【0023】
13族元素の酸化物、並びに、ランタノイド元素の酸化物及び/又は4族元素の酸化物の総含有量を100質量%としたときの、ランタノイド元素の酸化物、及び/又は4族元素の酸化物の含有割合は、20〜80質量%であることが好ましい。当該含有割合が20質量%未満であるとすると、ランタノイド元素の酸化物、及び/又は4族元素の酸化物が少なすぎるため、比較的低温条件下における排気浄化活性が低くなるおそれがある。一方、当該含有割合が80質量%を超えるとすると、相対的に、13族元素の酸化物の含有割合が減る結果、排気浄化の効果を十分に享受できないおそれがある。なお、ランタノイド元素の酸化物及び4族元素の酸化物の含有割合とは、両酸化物の総含有割合を指す。
13族元素の酸化物、並びに、ランタノイド元素の酸化物及び/又は4族元素の酸化物の総含有量を100質量%としたときの、ランタノイド元素の酸化物、及び/又は4族元素の酸化物の含有割合は、30〜70質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
1−3.卑金属を含む微粒子
本発明に使用される卑金属は、具体的には、銅、鉄、ニッケル、コバルト、又はマンガンである。これらの卑金属は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、卑金属は0価の金属であってもよいし、酸化数がI価以上の酸化状態であってもよい。
これらの卑金属のうち、NOx等の排気を吸着し、且つ、NOx中のN−O結合を切断するのに優れた特性を有するという観点から、銅を使用することが好ましい。
【0025】
本発明に使用される卑金属を含む微粒子の平均粒径は、1〜1000nmである。当該微粒子の平均粒径が1nm未満であるとすると、当該微粒子の平均粒径が小さすぎるため、13族元素の酸化物、並びに、ランタノイド元素の酸化物及び/又は4族元素の酸化物を、卑金属を含む微粒子の近傍に配置したり、接触させたりすることが困難である。一方、当該微粒子の平均粒径が1000nmを超えるとすると、当該微粒子の平均粒径が大きすぎるため排気浄化活性が低くなるおそれがある。
卑金属を含む微粒子の平均粒径は、5〜500nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。
本発明における粒子の平均粒径は、常法により算出される。粒子の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、400,000倍又は1,000,000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察による粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の平均を平均粒径とする。
【0026】
本発明においては、(1)卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い13族元素酸化物との平均距離が60nm以下であり、且つ、(2)卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近いランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物との平均距離が60nm以下である。このように、13族元素酸化物、並びに、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物がいずれも卑金属を含む微粒子の十分近傍に存在することにより、本発明の排気浄化用触媒は、比較的低温条件下において優れた排気浄化性能を発揮し、且つ優れた熱耐久性を有する。
【0027】
卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い13族元素酸化物との平均距離は、例えば、TEM画像を用いた幾何的方法により決定できる。
まず、卑金属を含む微粒子を1つ特定し、TEM画像上における当該微粒子の重心を決定する。重心は、例えば卑金属を含む微粒子が多角形である場合には、当該微粒子の全頂点について座標を設定し、当該各座標の算術平均により求まる。
次に、当該卑金属を含む微粒子に最も近い13族元素酸化物を1つ特定し、当該卑金属を含む微粒子と、当該13族元素酸化物との距離を測定する。このとき、当該13族元素酸化物が粒子形状又は繊維状であるときは、卑金属を含む微粒子の重心を中心とし、且つ、当該粒子形状又は繊維状の13族元素酸化物に接する円のうち最小の円の半径を、当該卑金属を含む微粒子と当該13族元素酸化物との距離とする。また、当該13族元素酸化物が排気浄化用触媒の体積の一部又は全体を占める連続体であるときは、卑金属を含む微粒子の重心を中心とし、且つ、当該13族元素酸化物を内側に含む円のうち最小の円の半径を、当該卑金属を含む微粒子と当該13族元素酸化物との距離とする。
このようなTEM観察による距離の測定を、卑金属を含む微粒子200〜300個について行い、得られた距離の平均を、卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い13族元素酸化物との平均距離とする。
卑金属を含む微粒子と、13族元素酸化物との距離の測定方法は、上記方法に限定されない。その他の方法としては、例えば、TEM画像上において、卑金属を含む微粒子と13族元素酸化物とを結ぶ直線の内最短の直線の長さを、当該2種類の微粒子の距離としてもよい。
【0028】
卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近いランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物との平均距離は、上記同様にTEM画像を用いた幾何的方法により決定できる。
ただし、排気浄化用触媒が、ランタノイド酸化物及び4族元素酸化物を両方含む場合において、ランタノイド酸化物微粒子と、4族元素酸化物微粒子とがTEM画像上で別の微粒子であると区別できるときは、卑金属を含む微粒子に最も近いランタノイド酸化物微粒子、又は、卑金属を含む微粒子に最も近い4族元素酸化物微粒子のうち、卑金属を含む微粒子にさらに最も近い微粒子について検討すればよい。例えば、卑金属を含む微粒子とランタノイド酸化物微粒子との距離が5nm、卑金属を含む微粒子と4族元素酸化物微粒子との距離が3nmであるときは、当該卑金属を含む微粒子については3nmの値を採用することができる。
【0029】
図1(a)は、本発明の排気浄化用触媒の第1の典型例を示した模式図である。なお、以降の排気浄化用触媒の模式図においては、説明の簡便のため、卑金属を含む微粒子を円で、13族元素酸化物、及び、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物をそれぞれ楕円で描くが、本発明に含まれる各材料は、必ずしもこれらの態様に限定されるものではない。また、以降の模式図は、必ずしも本発明に含まれる各材料の大きさを反映させたものではない。さらに、以降の模式図においては、卑金属を含む微粒子に最も近い13族元素酸化物、及び、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物をそれぞれ1つずつ描くものとする。また、以降の模式図においては、ランタノイド酸化物、4族元素酸化物、又はランタノイド酸化物及び4族元素酸化物の混合物のいずれか一方を楕円3により代表して描くこととする。
図1(a)に示すように、本第1の典型例においては、13族元素酸化物2、及びランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3が互いに接触しており、且つ、卑金属を含む微粒子1が当該酸化物2及び当該酸化物3のいずれにも担持されている。本第1の典型例においては、卑金属を含む微粒子1と、当該微粒子1に最も近い13族元素酸化物2との距離は、ほぼ0とみなせる。また、本第1の典型例においては、卑金属を含む微粒子1と、当該微粒子1に最も近いランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3との距離も、ほぼ0とみなせる。
図1(b)は、本発明の排気浄化用触媒の第2の典型例を示した模式図である。図1(b)に示すように、本第2の典型例においては、13族元素酸化物2、及びランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3は互いに接触していないものの、卑金属を含む微粒子1は当該酸化物2及び当該酸化物3のいずれにも担持されている。本第2の典型例においては、卑金属を含む微粒子1と、当該微粒子1に最も近い13族元素酸化物2との距離は、ほぼ0とみなせる。また、本第2の典型例においては、卑金属を含む微粒子1と、当該微粒子1に最も近いランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3との距離も、ほぼ0とみなせる。
【0030】
図2(a)は、本発明の排気浄化用触媒の第1の変形例を示した模式図である。図2(a)に示すように、本第1の変形例においては、卑金属を含む微粒子1が13族元素酸化物2のみに担持されている。しかし、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3の一部は、卑金属を含む微粒子1の重心1aを中心とした半径60nmの円4の内側に位置する。また、卑金属を含む微粒子1の重心1aを中心とし、且つ、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3に接する円のうち最小の円Rの半径から、卑金属を含む微粒子1の重心1aと、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3との距離rが決まる。当該距離rは明らかに60nm以下であるので、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3は、卑金属を含む微粒子1の十分近傍に位置するといえる。
図2(b)は、本発明の排気浄化用触媒の第2の変形例を示した模式図である。図2(b)に示すように、本第2の変形例においては、卑金属を含む微粒子1がランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3のみに担持されている。しかし、13族元素酸化物2の一部は、卑金属を含む微粒子1を中心とした半径60nmの円4の内側に位置する。また、卑金属を含む微粒子1の重心1aを中心とし、且つ、13族元素酸化物2に接する円のうち最小の円Rの半径から、卑金属を含む微粒子1の重心1aと、13族元素酸化物2との距離rが決まる。当該距離rは明らかに60nm以下であるので、13族元素酸化物2は、卑金属を含む微粒子1の十分近傍に位置するといえる。
上記第1及び第2の典型例、並びに第1及び第2の変形例のように、本発明においては、卑金属を含む各微粒子が、13族元素酸化物、並びに、ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物の、少なくともいずれか一方に担持されていてもよい。なお、排気浄化性能が向上するという観点から、卑金属を含む各微粒子が、13族元素酸化物、並びに、ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物の、いずれにも担持されていることが好ましい。
【0031】
図3は、本発明の排気浄化用触媒の第3の変形例を示した模式図である。図3に示すように、本第3の変形例においては、卑金属を含む微粒子1はいずれの酸化物にも担持されていない。しかし、13族元素酸化物2の一部、及び、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3の全部は、いずれも、卑金属を含む微粒子1を中心とした半径60nmの円4の内側に位置する。また、卑金属を含む微粒子1の重心1aと、13族元素酸化物2との距離rは明らかに60nm以下である。さらに、卑金属を含む微粒子1の重心1aと、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3との距離rも明らかに60nm以下である。したがって、13族元素酸化物2、並びにランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3は、いずれも卑金属を含む微粒子1の十分近傍に位置するといえる。
上記第3の変形例のように、本発明においては、卑金属を含む微粒子は、必ずしも酸化物に担持されていなくてもよい。
【0032】
一方、上述した図7(a)及び(b)の模式図に示す態様の排気浄化用触媒は、本発明には含まれない。なお、説明の簡便のため、図7(a)及び(b)においては、粒子間の距離を、そのまま粒子間の平均距離とみなすこととする。
図7(a)においては、卑金属を含む微粒子1が13族元素酸化物2のみに担持されている。しかし、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3は、卑金属を含む微粒子1を中心とした半径60nmの円4の外側に位置する。したがって、卑金属を含む微粒子1と、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3との平均距離は、60nmを超える。このように、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物が卑金属を含む微粒子から離れている触媒は、比較的低温条件下における排気浄化性能に劣る。
図7(b)においては、卑金属を含む微粒子1がランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物3のみに担持されている。しかし、13族元素酸化物2は、卑金属を含む微粒子1を中心とした半径60nmの円4の外側に位置する。したがって、卑金属を含む微粒子1と、13族元素酸化物2との平均距離は、60nmを超える。このように、13族元素酸化物が卑金属を含む微粒子から離れている触媒は、比較的高温条件下における排気浄化性能に劣る。また、比較的高温条件下において卑金属を含む微粒子同士が互いに凝集し、さらに肥大化する結果、繰り返し使用した場合に、比較的低温条件下における排気浄化性能が低減するという問題がある。
【0033】
13族元素の酸化物、並びに、ランタノイド元素の酸化物及び/又は4族元素の酸化物の総含有量を100質量部としたときの、卑金属を含む微粒子の含有量は、0.5〜20質量部であることが好ましい。当該含有量が0.5質量部未満であるとすると、卑金属を含む微粒子が少なすぎるため、排気浄化の効果を十分に享受できないおそれがある。一方、当該含有量が20質量部を超えるとすると、卑金属を含む微粒子と、13族元素の酸化物、並びに、ランタノイド元素の酸化物及び/又は4族元素の酸化物との相互作用が十分に得られないおそれがあり、且つ、卑金属を含む微粒子の粗大化につながるため排気浄化性能が低下するおそれがある。
13族元素の酸化物、並びに、ランタノイド元素の酸化物及び/又は4族元素の酸化物の総含有量を100質量部としたときの、卑金属を含む微粒子の含有量は、1〜10質量部であることがより好ましく、3〜7質量部であることがさらに好ましい。
【0034】
2.排気浄化用触媒の製造方法
本発明の排気浄化用触媒の製造方法は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素の酸化物;少なくとも1種のランタノイド元素の酸化物、及び、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の4族元素の酸化物、の少なくともいずれか一方;並びに、銅、鉄、ニッケル、コバルト、又はマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の卑金属を含む微粒子;を含む排気浄化用触媒の製造方法であって、前記13族元素酸化物、及び、前記卑金属を含む化合物を混合し、第1の混合物を調製する工程、前記第1の混合物、及び、前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物を混合し、第2の混合物を調製する工程、並びに、前記第2の混合物を加熱する工程を有することを特徴とする。
【0035】
本発明は、(1)第1の混合物を調製する工程、(2)第2の混合物を調製する工程、及び、(3)第2の混合物を加熱する工程を有する。本発明は、必ずしも上記3工程のみに限定されることはなく、上記3工程以外にも、例えば、適宜ろ過・洗浄工程、乾燥工程、粉砕工程等を有していてもよい。
以下、上記工程(1)〜(3)について、順に説明する。
【0036】
2−1.第1の混合物を調製する工程
本工程は、13族元素酸化物、及び、卑金属を含む化合物を混合し、第1の混合物を調製する工程である。なお、13族元素酸化物、及び、卑金属については、上記「1−1.13族元素の酸化物」の項、及び、「1−3.卑金属を含む微粒子」の項に記載した材料を用いることができる。
13族元素酸化物の混合量、及び、卑金属を含む化合物の混合量は、最終的に得られる排気浄化用触媒の組成が、上述した13族元素酸化物の含有割合、及び、卑金属を含む微粒子の含有割合を反映した組成となるように、適宜調整することが好ましい。
【0037】
混合方法としては、13族元素酸化物、及び、卑金属を含む化合物同士を直接物理的に混合する方法であってもよいが、卑金属を含む微粒子及び13族元素酸化物が均一に混ざり合った混合物が得られるという観点から、溶媒又は分散媒を用いて混合する方法が好ましい。
以下、本工程の典型例について述べる。なお、本工程は、当該典型例に限定されるものではない。
まず、13族元素酸化物、及び、卑金属を含む化合物を、溶媒又は分散媒に加える。溶媒又は分散媒は、13族元素酸化物、及び、卑金属を含む化合物を十分溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。溶媒又は分散媒の例としては、水、アルコール等の有機溶媒、又はこれらの混合溶媒が例示できる。
次に、13族元素酸化物、及び、卑金属を含む化合物の溶液又は分散液を、スターラ等の公知の方法で適宜攪拌する。続いて、当該溶液又は分散液から、溶媒又は分散媒を留去する。なお、溶媒又は分散媒が水の場合は、単に水分を蒸発させて乾燥させればよい。
【0038】
単に溶媒又は分散媒を除去するのみで次の工程に移ってもよいが、100〜200℃の温度条件下で0.5〜2時間加熱してもよい。加熱することにより、溶媒又は分散媒を完全に除去できると共に、卑金属を含む微粒子の、13族元素酸化物への担持を進行させることができる。なお、加熱の前には、熱が第1の混合物全体に行き渡りやすいように、第1の混合物を公知の方法により適宜砕いてもよい。
【0039】
2−2.第2の混合物を調製する工程
本工程は、上述した第1の混合物、及び、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物を混合し、第2の混合物を調製する工程である。なお、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物については、上記「1−2.ランタノイド元素の酸化物、及び4族元素の酸化物」の項に記載した材料を用いることができる。
第1の混合物の混合量、並びに、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物の混合量は、最終的に得られる排気浄化用触媒の組成が、上述した13族元素酸化物の含有割合、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物の含有割合、並びに、卑金属を含む微粒子の含有割合を反映した組成となるように、適宜調整することが好ましい。
【0040】
混合方法としては、第1の混合物、及び、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物を直接物理的に混合する方法であってもよいし、上述したように溶媒又は分散媒を用いてもよい。
直接物理的に混合する方法としては、乳鉢による混合、及びメカニカルミリング等を例示できる。メカニカルミリングとしては、ボールミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等を例示できる。
以下、本工程の典型例について述べる。なお、本工程は、当該典型例に限定されるものではない。第1の混合物、及び、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物を乳鉢により混合することにより、第2の混合物が得られる。
【0041】
2−3.第2の混合物を加熱する工程
上述した第2の混合物を加熱することにより、本発明に係る排気浄化用触媒が得られる。加熱工程は、350〜650℃の温度条件下で行われることが好ましい。加熱温度が350℃未満であると、加熱温度が低すぎるため、13族元素酸化物、並びに、ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物への、卑金属を含む微粒子の担持が十分に進行せず、その結果、これらの酸化物が当該微粒子近傍から離れてしまい、比較的低温条件下における優れた排気浄化能、及び優れた熱耐久性の効果が十分に享受できないおそれがある。また、加熱温度が650℃を超えると、加熱温度が高すぎるため、加熱が進行しすぎる結果、卑金属を含む微粒子同士が互いに凝集して肥大化し、触媒活性が低減するおそれがある。
【0042】
本工程において、加熱の態様は特に限定されないが、焼成を行ってもよい。焼成を行う場合には、3〜25%の酸素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0043】
本発明に係る製造方法により、卑金属を含む微粒子の十分近傍に13族元素の酸化物、並びに、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素の酸化物がいずれも存在する、本発明に係る排気浄化用触媒が得られる。また、本発明に係る製造方法により、卑金属を含む微粒子の平均粒径を十分小さく保ったまま、特に比較的低温条件下における当該微粒子のメタル(0価状態)化を促進でき、排気浄化用触媒の排気浄化活性を向上させることができる。
【0044】
本発明の排気浄化用触媒は、内燃機関を備える自動車等に搭載することにより、当該内燃機関から排出される排気の浄化に用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
1.排気浄化用触媒ペレットの作製
[実施例1]
まず、Al 50g、及びCuNO(銅5gに相当する量)を蒸留水500mLに加え、スターラで攪拌して、CuNOを水中に溶解させ、且つ、Alを水中に分散させた。次に、当該溶液/分散液から水分を蒸発させて乾燥させ、得られた銅・アルミナ混合物を適宜砕いた後、120℃で1時間乾燥させた。続いて、当該銅・アルミナ混合物、及び、CeO−ZrO 50gを乳鉢に投入し混合した。得られた銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物について、400℃の温度条件下で5時間焼成を行った。得られた焼成体を2ton/cmの力で加圧して、実施例1の排気浄化用触媒ペレットを作製した。なお、実施例1の排気浄化用触媒の組成比は、銅微粒子:アルミナ:セリアジルコニア=5質量部:50質量部:50質量部であった。
【0047】
[実施例2]
銅・アルミナ混合物、及びCeO−ZrOを乳鉢で混合するまでは、実施例1と同様である。得られた銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物について、500℃の温度条件下で5時間焼成を行った。あとは、実施例1と同様に加圧して、実施例2の排気浄化用触媒ペレットを作製した。なお、実施例2の排気浄化用触媒の組成比は、実施例1同様であった。
【0048】
[実施例3]
銅・アルミナ混合物、及びCeO−ZrOを乳鉢で混合するまでは、実施例1と同様である。得られた銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物について、600℃の温度条件下で5時間焼成を行った。あとは、実施例1と同様に加圧して、実施例3の排気浄化用触媒ペレットを作製した。なお、実施例3の排気浄化用触媒の組成比は、実施例1同様であった。
【0049】
[比較例1]
まず、CeO−ZrO 50g、及びCuNO(銅5gに相当する量)を蒸留水500mLに加え、スターラで攪拌して、CuNOを水中に溶解させ、且つ、CeO−ZrOを水中に分散させた。次に、当該溶液/分散液から水分を蒸発させて乾燥させ、得られた銅・セリアジルコニア混合物を適宜砕いた後、120℃で1時間乾燥させた。続いて、銅・セリアジルコニア混合物について、600℃の温度条件下で5時間焼成を行った。あとは、実施例1と同様に加圧して、比較例1の排気浄化用触媒ペレットを作製した。なお、比較例1の排気浄化用触媒の組成比は、銅微粒子:セリアジルコニア=5質量部:50質量部であった。
【0050】
[比較例2]
銅・アルミナ混合物を粉砕し、乾燥させるまでは、実施例1と同様である。銅・アルミナ混合物について、600℃の温度条件下で5時間焼成を行った。あとは、実施例1と同様に加圧して、比較例2の排気浄化用触媒ペレットを作製した。なお、比較例2の排気浄化用触媒の組成比は、銅微粒子:アルミナ=5質量部:50質量部であった。
【0051】
[比較例3]
まず、Al 5g、及びCeO−ZrO 5gを混合した(質量比1:1)。次に、当該アルミナ・セリアジルコニア混合物10g、及びCuNO(銅0.5gに相当する量)を蒸留水100mLに加え、スターラで攪拌して、CuNOを水中に溶解させ、且つ、Al及びCeO−ZrOを水中に分散させた。続いて、当該溶液/分散液から水分を蒸発させて乾燥させ、得られた銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物を適宜砕いた後、120℃で1時間乾燥させた。得られた銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物について、600℃の温度条件下で5時間焼成を行った。あとは、実施例1と同様に加圧して、比較例3の排気浄化用触媒ペレットを作製した。なお、比較例3の排気浄化用触媒の組成比は、銅微粒子:アルミナ:セリアジルコニア=5質量部:50質量部:50質量部であった。
【0052】
[比較例4]
銅・アルミナ混合物、及びCeO−ZrOを乳鉢で混合するまでは、実施例1と同様である。得られた銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物について、300℃の温度条件下で5時間焼成を行った。あとは、実施例1と同様に加圧して、比較例4の排気浄化用触媒ペレットを作製した。なお、比較例4の排気浄化用触媒の組成比は、実施例1同様であった。
【0053】
[比較例5]
銅・アルミナ混合物、及びCeO−ZrOを乳鉢で混合するまでは、実施例1と同様である。得られた銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物について、700℃の温度条件下で5時間焼成を行った。あとは、実施例1と同様に加圧して、比較例5の排気浄化用触媒ペレットを作製した。なお、比較例5の排気浄化用触媒の組成比は、実施例1同様であった。
【0054】
[比較例6]
銅・アルミナ混合物、及びCeO−ZrOを乳鉢で混合するまでは、実施例1と同様である。得られた銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物について、焼成を行うことなく、実施例1と同様に加圧して、比較例6の排気浄化用触媒ペレットを作製した。なお、比較例6の排気浄化用触媒の組成比は、実施例1同様であった。
【0055】
[比較例7]
まず、Al 5g、及びCuNO(銅0.25gに相当する量)を蒸留水100mLに加え、スターラで攪拌して、CuNOを水中に溶解させ、且つ、Alを水中に分散させた。次に、当該溶液/分散液から水分を蒸発させて乾燥させ、得られた銅・アルミナ混合物を適宜砕いた後、120℃で1時間乾燥させた。続いて、銅・アルミナ混合物について、600℃の温度条件下で5時間焼成を行った。
次に、CeO−ZrO 5g、及びCuNO(銅0.25gに相当する量)を蒸留水100mLに加え、スターラで攪拌して、CuNOを水中に溶解させ、且つ、CeO−ZrOを水中に分散させた。次に、当該溶液/分散液から水分を蒸発させて乾燥させ、得られた銅・セリアジルコニア混合物を適宜砕いた後、120℃で1時間乾燥させた。続いて、銅・セリアジルコニア混合物について、600℃の温度条件下で5時間焼成を行った。
続いて、当該銅・アルミナ混合物、及び、当該銅・セリアジルコニア混合物を乳鉢に投入し混合した。得られた銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物を、実施例1と同様に加圧して、比較例7の排気浄化用触媒ペレットを作製した。なお、比較例7の排気浄化用触媒の組成比は、銅微粒子:アルミナ:セリアジルコニア=5質量部:50質量部:50質量部であった。
【0056】
2.排気浄化用触媒の評価
2−1.NO浄化率の測定
実施例1−実施例3、及び比較例1−比較例7の排気浄化用触媒について、以下の条件でNO浄化率を測定した。
・試験ガス組成:NO(4,000ppm)、CO(8,000ppm)、HO(3%)(残りはN
・試験ガス流量:10L/min
・試験温度:350℃、又は、500℃
図4は、実施例1−実施例3、及び比較例1−比較例7の排気浄化用触媒のNO浄化率(%)を示した棒グラフである。なお、NO浄化率は、以下の式より求めた。
NO浄化率(%)={(触媒の入りNO量−触媒の出NO量)/触媒の入りNO量}×100
【0057】
図4(a)は、各排気浄化用触媒の350℃の温度条件下におけるNO浄化率(%)を示した棒グラフである。また、図4(b)は、各排気浄化用触媒の500℃の温度条件下におけるNO浄化率(%)を示した棒グラフである。
比較例1のNO浄化率は、350℃において11%、500℃において24%である。特に500℃におけるNO浄化率は、実施例1−実施例3、及び比較例1−比較例7の排気浄化用触媒中、最も低い値である。したがって、アルミナを含まない比較例1の排気浄化用触媒は、特に比較的高い温度領域におけるNO浄化活性に劣ることが分かる。
比較例2のNO浄化率は、350℃において3%、500℃において57%である。特に350℃におけるNO浄化率は、実施例1−実施例3、及び比較例1−比較例7の排気浄化用触媒中、最も低い値である。したがって、セリアジルコニアを含まない比較例2の排気浄化用触媒は、特に比較的低い温度領域におけるNO浄化活性に劣ることが分かる。
【0058】
比較例3のNO浄化率は、350℃において5%であり10%に満たず、500℃において55%であり60%に満たない。したがって、銅、アルミナ、及びセリアジルコニアを一度に混合して焼成した比較例3の排気浄化用触媒は、350℃及び500℃のいずれの温度条件下においてもNO浄化活性に劣ることが分かる。比較例3がNO浄化活性に劣る理由は、セリアジルコニア上に銅を担持させた状態で焼成すると、銅微粒子同士が凝集し、銅微粒子の粒径が大きくなる結果、触媒活性が落ちたことによるものと考えられる。
【0059】
比較例4のNO浄化率は、350℃において7.5%であり10%に満たず、500℃において51%であり60%に満たない。したがって、焼成温度が300℃の比較例4は、350℃及び500℃のいずれの温度条件下においてもNO浄化活性に劣ることが分かる。比較例4がNO浄化活性に劣る理由は、焼成温度が低すぎるため、焼成が十分に進行せず、酸化物への銅微粒子の担持が不完全であることによるものと考えられる。
比較例5のNO浄化率は、350℃において8%であり10%に満たず、500℃において42%であり60%に満たない。したがって、焼成温度が700℃の比較例5は、350℃及び500℃のいずれの温度条件下においてもNO浄化活性に劣ることが分かる。比較例5がNO浄化活性に劣る理由は、焼成温度が高すぎるため、焼成が進行しすぎた結果、銅微粒子同士が凝集し、触媒活性が落ちたことによるものと考えられる。
比較例6のNO浄化率は、350℃において3%であり10%に満たず、500℃において53%であり60%に満たない。したがって、焼成しなかった比較例6は、350℃及び500℃のいずれの温度条件下においてもNO浄化活性に劣ることが分かる。比較例6がNO浄化活性に劣る理由は、焼成していないため、アルミナ及びセリアジルコニアへの銅微粒子の担持が不完全であり、その結果、アルミナ及びセリアジルコニアが銅微粒子近傍に存在しないことによるものと考えられる。
【0060】
比較例7のNO浄化率は、350℃において9%であり10%に満たず、500℃において48%であり60%に満たない。したがって、アルミナ担持銅触媒と、セリアジルコニア担持銅触媒とを、単に混合しただけの比較例7は、350℃及び500℃のいずれの温度条件下においてもNO浄化活性に劣ることが分かる。比較例7がNO浄化活性に劣る理由は、セリアジルコニア担持銅触媒の作製に当たり、セリアジルコニア上に銅を担持させた状態で焼成すると、銅微粒子同士が凝集し、銅微粒子の粒径が大きくなる結果、触媒活性が落ちたことによるものと考えられる。
【0061】
これに対し、350℃において、実施例1のNO浄化率は17%、実施例2のNO浄化率は18%、実施例3のNO浄化率は20%であり、いずれも15%を超える。また、500℃において、実施例1のNO浄化率は74%、実施例2のNO浄化率は73%、実施例3のNO浄化率は72%であり、いずれも70%を超える。
したがって、本発明の製造方法、すなわち、初めにアルミナ及び銅化合物を混合して銅・アルミナ混合物を調製し、次に当該銅・アルミナ混合物とセリアジルコニアを混合して銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物を調製し、さらに当該銅・アルミナ・セリアジルコニア混合物を焼成する方法により得られる排気浄化用触媒は、350℃及び500℃のいずれの温度条件下においても優れたNO浄化性能を示すことが分かる。
【0062】
2−2.排気浄化用触媒のTEM観察
実施例2の排気浄化用触媒について、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)観察を行った。
【0063】
図5は、実施例2の排気浄化用触媒のTEM画像である。図5中に、Al、CeO−ZrO、及びCuについて、それぞれ一点鎖線の枠で囲って示す。
図5から、銅微粒子の平均粒径は約20nmであることが分かる。
また、図5から分かるように、一点鎖線の枠中の銅微粒子は、同じく一点鎖線の枠中のアルミナ及びセリアジルコニアに担持されている。したがって、当該銅微粒子と当該アルミナとの距離、及び、当該銅微粒子と当該セリアジルコニアとの距離は、いずれもほぼ0とみなせる。また、図5全体を観察しても、多くの銅微粒子がアルミナ及びセリアジルコニアに近接している。したがって、本実施例2においては、銅微粒子とアルミナとの平均距離、及び、銅微粒子とセリアジルコニアとの平均距離は、いずれも60nm以下であると考えられる。
【0064】
2−3.昇温還元法による評価
実施例2及び比較例2の排気浄化用触媒について、昇温還元法(Temperature Programmed Reduction;TPR)により、以下に示す試験ガス組成で評価を行った。
・試験ガス組成:CO(1cc/min)、Ar(10cc/min)、He(89cc/min)
【0065】
図6は、実施例2及び比較例2の還元温度(℃)を比較した棒グラフである。なお、ここでいう還元温度とは、100℃から昇温した結果、COの発生ピークを見て、CuOからCuへの還元率が50%以上となった温度のことを指す。
図6に示すように、比較例2の排気浄化用触媒の還元温度は320℃である。一方、実施例2の排気浄化用触媒の還元温度は220℃である。したがって、実施例2の還元温度は、比較例2の還元温度と比較して100℃低い。
以上より、本発明に係る排気浄化用触媒は、セリアジルコニアを含まない従来の排気浄化用触媒(比較例2)と比べて、特に比較的低い温度における排気還元性能が格段に高いことが分かる。
【符号の説明】
【0066】
1 卑金属を含む微粒子
1a 卑金属を含む微粒子の重心
2 13族元素酸化物
3 ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物
4 卑金属を含む微粒子の重心を中心とした半径60nmの円
卑金属を含む微粒子の重心を中心とし、且つ、13族元素酸化物に接する円のうち最小の円
卑金属を含む微粒子の重心を中心とし、且つ、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物に接する円のうち最小の円
卑金属を含む微粒子の重心と、13族元素酸化物との距離
卑金属を含む微粒子の重心と、ランタノイド酸化物及び/又は4族元素酸化物との距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素の酸化物;
少なくとも1種のランタノイド元素の酸化物、及び、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の4族元素の酸化物、の少なくともいずれか一方;並びに、
銅、鉄、ニッケル、コバルト、及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の卑金属を含む微粒子;
を含む排気浄化用触媒であって、
前記卑金属を含む微粒子の平均粒径が1〜1000nmであり、
前記卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い前記13族元素酸化物との平均距離が60nm以下であり、且つ、
前記卑金属を含む微粒子と、当該微粒子に最も近い前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物との平均距離が60nm以下であることを特徴とする、排気浄化用触媒。
【請求項2】
前記卑金属を含む各微粒子が、前記13族元素酸化物、並びに、前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物の、少なくともいずれか一方に担持されている、請求項1に記載の排気浄化用触媒。
【請求項3】
ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素の酸化物;
少なくとも1種のランタノイド元素の酸化物、及び、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の4族元素の酸化物、の少なくともいずれか一方;並びに、
銅、鉄、ニッケル、コバルト、及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の卑金属を含む微粒子;
を含む排気浄化用触媒の製造方法であって、
前記13族元素酸化物、及び、前記卑金属を含む化合物を混合し、第1の混合物を調製する工程、
前記第1の混合物、及び、前記ランタノイド酸化物及び/又は前記4族元素酸化物を混合し、第2の混合物を調製する工程、並びに、
前記第2の混合物を加熱する工程を有することを特徴とする、排気浄化用触媒の製造方法。
【請求項4】
前記第1の混合物を調製する工程は、前記13族元素酸化物、及び、前記卑金属を含む化合物を、溶媒及び/又は分散媒に溶解及び/又は分散させて混合する工程である、請求項3に記載の排気浄化用触媒の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程は、350〜650℃の温度条件下で行われる、請求項3又は4に記載の排気浄化用触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−22507(P2013−22507A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159102(P2011−159102)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】