説明

排気浄化装置の異常診断装置

【課題】吸収液体を用いて排ガス中の特定成分を吸収して除去する方式の排気浄化装置について、異常の有無を診断する排気浄化装置の異常診断装置を提供する。
【解決手段】排ガス中の特定成分(例えばNOxやCO2)と接触するとその接触した特定成分を吸収する吸収液体を保有し、排気管11に配置されて吸収液体を排ガスに接触させることで特定成分を吸収して除去する排気浄化装置20,30に適用され、吸収液体の状態を検出する状態センサ(phセンサ22e,32e)と、状態センサの検出値に基づき、排気浄化装置20,30による浄化機能に異常が生じているか否かを判定する。例えば、所定時間当りに燃焼室から排出されたNOxの排出量に対し、状態センサの検出値に基づき算出される吸収液体でのNOx吸収量が著しく少ない場合に、上記異常であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガスと吸収液体とを接触させることで排ガス中の特定成分を吸収して除去する排気浄化装置について、浄化機能に異常が生じていないかを診断する異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排ガス中のNOxを除去する装置としては、NOx吸蔵還元触媒を用いた装置や、尿素選択還元触媒を用いた装置が知られている。NOx吸蔵還元触媒は、定期的に内燃機関をリッチ燃焼させて発生させたHCを還元剤として、吸蔵させたNOxを還元させるものである(特許文献1参照)。また、尿素選択還元触媒は、尿素を還元剤として排ガス中のNOxを選択的に還元させるものである(特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、これらの装置では、触媒が活性化する温度(例えば200℃)に上昇するまでは還元機能が発揮されないといった短所がある。しかも近年では、低温燃焼や排熱回収の技術が導入される傾向にあるため、特に内燃機関の始動時には上記短所が顕著となる。
【0004】
そこで本発明者らは、特許文献1,2の如く触媒で還元させる方式とは全く異なる方式である以下の装置を検討した。すなわち、接触した排ガス中の特定成分(例えばNOx)を吸収することができる液体(吸収液体)を保有し、その液体と排ガスとを接触させることで排ガス中のNOxを吸収して除去する装置である。吸収液体の具体例としては、イオン液体やアルカリ性水溶液、水等が挙げられる。このような吸収液体は常温であってもNOx等の特定成分を吸収できるので、触媒活性化温度になるまでNOxを除去できないといった従来の欠点を解消できる。
【0005】
この種の装置は、特許文献3にも記載されており、特許文献3記載の装置は、排ガス中の特定成分を溶かし込むことができる吸収液体をタンクに貯蔵させておき、排ガスを気泡の状態にしてタンク内の吸収液体中に送り込むことで、排ガス中の有害物質を吸収液体に溶かし込んで除去する装置である。
【0006】
しかし、特許文献3記載の装置では、吸収機能が発揮されなくなるような各種異常が生じることを想定しておらず、実際にこの種の装置を採用するには、上記異常を検出することが必要となってくる。なお、上記異常の具体例としては、他の液体を吸収液体と間違えて装置に補給した場合、吸収液体で吸収している量が吸収可能量に達した飽和状態になっている場合、吸収液体が変質している場合、装置内の液体通路が目詰まりしている場合、装置内の液体通路が損傷して液漏れしている場合等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−82315号公報
【特許文献2】特開2009−281294号公報
【特許文献3】特開2000−334259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、吸収液体を用いて排ガス中の特定成分を吸収して除去する方式の排気浄化装置について、異常の有無を診断する排気浄化装置の異常診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0010】
請求項1記載の発明では、内燃機関の排ガス中の特定成分と接触するとその接触した特定成分を吸収する吸収液体を保有し、前記内燃機関の排気管に配置されて前記吸収液体を排ガスに接触させることで前記特定成分を吸収して除去する排気浄化装置に適用され、前記吸収液体の状態を検出する状態センサと、前記状態センサの検出値に基づき、前記排気浄化装置による浄化機能に異常が生じているか否かを判定する異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
吸収液体を用いて排ガス中の特定成分を吸収して除去する方式の排気浄化装置については、浄化機能に異常が生じると、吸収液体の状態(例えば液体のph、流量、残量等)に異常が現れる可能性が高い。この点を鑑みた上記発明では、吸収液体の状態を検出する状態センサを備え、その検出値に基づき浄化機能に異常が生じているか否かを判定するので、浄化機能に異常が生じているか否かを診断することを容易に実現できる。
【0012】
請求項2記載の発明では、前記吸収液体の性質状態を検出する性状センサを前記状態センサとして備え、前記異常判定手段は、所定時間当りに前記内燃機関から排出される前記特定成分の排出量を算出する排出量算出手段と、前記性状センサによる性状検出値に基づき、前記所定時間当りに前記吸収液体で吸収した前記特定成分の吸収量を算出する吸収量算出手段と、前記排出量算出手段により算出した所定時間当りの排出量と、前記吸収量算出手段により算出した所定時間当りの吸収量との比較に基づき、浄化能力が異常に低下しているか否かを判定する能力低下異常判定手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
吸収液体の性質状態(例えば液体のph、粘性、透光度、電気伝導度、比重等)は特定成分の吸収量に応じて変化するので、上記発明の如く吸収液体の性質状態を検出すればその時の吸収量を算出でき、ひいては所定時間当りの吸収量も算出できる。また、特定成分の排出量は内燃機関の運転状態に応じて変化するので、その運転状態の履歴に基づけば、上記発明の如く所定時間当りの排出量を算出できる。或いは、特定成分の排出量を検出するセンサを用いれば所定時間当りの排出量を算出できる。
【0014】
そして、浄化機能が正常に発揮されていれば、所定時間当りの排出量に所定の浄化率を乗算して得られる量(正常吸収量)だけ、吸収液体は特定成分を吸収している筈である。これに対し、算出した所定時間当りの吸収量が前記正常吸収量より少なくなっていれば、浄化機能が異常であると判定できる。したがって、所定時間当りの排出量及び吸収量を算出してこれらの算出結果の比較に基づき浄化能力が異常に低下しているか否かを判定する上記発明によれば、浄化機能に異常が生じているか否かを診断することを容易に実現できる。
【0015】
請求項3記載の発明では、前記排気浄化装置から漏れ出た吸収液体が収集される容器中の液量、或いは、前記吸収液体の流量又は残存量を検出する液量センサを前記状態センサとして備え、前記異常判定手段は、前記液量センサによる検出値に基づき、前記吸収液体が前記排気浄化装置から漏れ出る異常が生じているか否かを判定する液漏れ異常判定手段を有することを特徴とする。
【0016】
例えば、排気浄化装置内の液体通路が損傷して液漏れしていなければ、液体を流通させるポンプを作動させている時の液体流量は所定流量以上になっている筈である。或いは、前記ポンプを作動させている時に流体通路の複数個所で検出した液体流量が、各々で大きく異なる値になっていれば、その検出箇所の間で液体通路が損傷している可能性が高い。このように、液体流量を検出すれば、その検出値に基づき液漏れ異常の有無を診断できる。また、液漏れ異常が生じていれば吸収液体の残存量は短時間で大きく減少する筈である。また、液漏れ異常が生じていれば漏れ出た吸収液体が収集される容器中の液量が所定量以上になる筈である。
【0017】
したがって、吸収液体の流量又は残存量を検出する液量センサを備え、その検出値に基づき液漏れ異常が生じているか否かを診断する上記発明によれば、浄化機能に異常が生じているか否かを診断することを容易に実現できる。
【0018】
請求項4記載の発明では、前記排気浄化装置は、前記内燃機関の排気管に取り付けられ、前記吸収液体を排ガスに接触させる排ガス接触器と、前記排気管から分岐して、前記排ガス接触器をバイパスして排ガスを流通させるバイパス通路と、前記バイパス通路及び前記排ガス接触器のいずれかに排ガスの流れを切り替える切替弁と、を有して構成されており、前記異常判定手段により異常判定されている場合には、前記バイパス通路へ排ガスを流すよう前記切替弁を作動させることを特徴とする。
【0019】
仮に、排気浄化装置内の液体通路が損傷して液漏れが生じていることが原因で異常判定手段により異常判定されていた場合に、上記発明に反して排ガス接触器へ排ガスを流すと、損傷して液漏れしている箇所から排ガスが漏れ出るおそれが高い。つまり、排気管の所定箇所から大気へ放出される筈の排ガスが、前記損傷した箇所から大気へ放出されてしまうこととなる。
【0020】
この点を鑑みた上記発明によれば、バイパス通路を備えさせ、異常判定されている場合にはバイパス通路へ排ガスを流すよう切替弁を作動させるので、損傷箇所から排ガスが大気へ放出されるといった上記不具合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる排気浄化装置を示す図。
【図2】NOx吸収液体(NaOH水溶液)によるNOx吸収能力を説明する図。
【図3】吸収液体の吸収割合(C/(C+D))および最大吸収量(C+D)等の定義を説明する模式図。
【図4】第1実施形態において、吸収液体を入替制御する手順を示すフローチャート。
【図5】第1実施形態において、浄化装置の異常を診断する手順を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる排気浄化装置を示す図。
【図7】第2実施形態において、浄化装置の異常を診断する手順を示すフローチャート。
【図8】本発明の第3実施形態において、浄化装置の異常を診断する手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。なお、各実施形態にかかる排気浄化装置が適用される内燃機関は、車両に搭載されて走行駆動源として機能するものであり、圧縮自着火式のディーゼルエンジンを想定している。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかる排気浄化装置及び内燃機関10を示す図である。先ず、内燃機関10の燃焼室10aから排出される排ガスは、車両のフロア下に配置されている排気管11を通じて車両後方の所定箇所から排出される。排気管11には、排ガスに含まれているNOxを酸化させる酸化触媒(DOC12)が取り付けられている。このDOC12により、排ガス中のNOはNO2に酸化される。
【0024】
また、排気管11のうちDOC12の下流側には、排気中の粒子状物質(PM)を捕集するフィルタ(DPF13)が取り付けられている。そして、DPF13により捕集されたPMを燃焼させるべく、排気温度を上昇させるよう燃料噴射弁14からの噴射量及び噴射タイミングを制御(再生処理制御)することを、定期的に実施する。
【0025】
排気管11のうちDPF13の下流側には、排ガス中のCO2を除去するCO2除去装置20が設けられ、また、排気管11のうちCO2除去装置20の下流側には、排ガス中のNOxを除去するNOx除去装置30が設けられている。これらの除去装置20,30の各々が「排気浄化装置」に相当する。以下、各々の装置20,30の構成について詳細に説明する。
【0026】
<CO2除去装置20について>
CO2除去装置20は、主に、タンク21、排ガス接触器22、循環ポンプ23、分離放出器24を有して構成されており、これらは循環配管25により接続されている。タンク21内にはCO2吸収液体(後に詳述)が貯蔵されている。このCO2吸収液体は、循環配管25により形成された循環経路を循環ポンプ23の作動により循環する。排ガス接触器22は、排気管11に取り付けられており、循環するCO2吸収液体を排ガスに接触させるよう機能する。
【0027】
CO2吸収液体は、排ガス中のCO2と接触することでCO2を吸収する液体である。具体的には、特開2008−296211号公報等に記載のイオン液体や、アルカリ溶液、水(例えばエンジン冷却水)等が挙げられる。また、排ガス中のNOxを殆ど吸収せずにCO2を選択的に吸収する液体(例えば、NaOH、KOH、NaCO、KCO、Ca(OH)、エタノールアミン等)を用いれば、CO2吸収量を多くできるので好適である。また、CO2吸収液体は、化学変化を伴ってCO2を吸収(化学吸着)する物質でもよいし、化学変化を伴わずにCO2を吸収(物理吸着)する物質でもよい。また、CO2吸収液体はゲル状の物質やスラリー状の物質でもよい。
【0028】
排ガス接触器22は、CO2吸収液体を染み込ませて保持する保持体22a、及び保持体22aを内部に収容するケース22bを備えて構成されている。ケース22bは排気管11に接続されており、ケース22b内には排ガスが流通する。また、ケース22bは循環配管25に接続されており、ケース22bの流入口から循環配管25を通じてケース22b内に流入したCO2吸収液体は、保持体22aにて保持される。保持体22aは、ケース22b内を流通する排ガスに晒されるように配置されている。そのため、保持体22aに保持されているCO2吸収液体は排ガスと接触する。
【0029】
ケース22bの流入口及び流出口には流入バルブ22c及び流出バルブ22dが備えられている。これらのバルブ22c,22dは電磁駆動式のバルブであり、その開閉作動はECU15により制御される。よって、ECU15により流出バルブ22dを開作動させればケース22b内のCO2吸収液体を排出させることができ、ECU15により流入バルブ22cを開作動させればケース22b内へCO2吸収液体を流入させることができる。
【0030】
なお、流入口はケース22bの上部に形成され、流出口はケース22bの下部に形成されている。そのため、流出バルブ22dを開作動させると、循環ポンプ23が駆動していなくても自重で排出できるよう構成されている。また、ケース22b内のCO2吸収液体が排出された状態で流入バルブ22cを開作動させると、循環ポンプ23が駆動していなくても自重で流入できるよう構成されている。
【0031】
分離放出器24は、排ガス接触器22から排出されたCO2吸収液体を貯蔵するタンク24a、及びタンク24aに設けられたヒータ24b(加熱手段)を有して構成されている。排ガス接触器22から排出されてタンク24a内へ流入してきたCO2吸収液体をヒータ24bで加熱すると、CO2吸収液体に吸収されているCO2がCO2吸収液体から分離する。
【0032】
ヒータ24bの作動はECU15により制御される。よって、ECU15によりヒータ24bを作動させるよう制御すればCO2の分離が促進され、ヒータ24bの作動を停止させるよう制御すればCO2の分離速度が低下する。つまりECU15は、ヒータ24bの作動を制御(加熱度合いを制御)することで分離速度を制御する分離制御手段として機能する。
【0033】
ここで、単位量あたりのCO2吸収液体によりCO2を吸収できる量には限界がある。本明細書では、このような限界量を吸収したCO2吸収液体の状態を吸収飽和状態と呼ぶ。また、CO2の吸収量がゼロである状態においてCO2吸収液体がCO2を吸収できる量(最大吸収量)に対する、CO2吸収量の割合を吸収割合と呼ぶ。つまり、吸収飽和状態での吸収割合は100%である。そして、分離放出器24によりCO2吸収液体からCO2を分離させると、吸収割合が低下してCO2吸収液体の吸収能力が上昇して復帰する。なお、分離したCO2は放出口24cから大気に放出される。そして、分離放出器24によりCO2が分離除去された状態のCO2吸収液体は、タンク21、CO2除去装置20、分離放出器24の順に循環する。
【0034】
循環ポンプ23の作動はECU15により制御される。本実施形態では、循環ポンプ23を常時作動させるのではなく断続的に作動させている。つまり、CO2吸収液体を常時循環させるのではなく、断続的に循環させている。循環ポンプ23やヒータ24b等の制御内容については、後に詳述する。
【0035】
<NOx除去装置30について>
次に、NOx除去装置30の構成について説明する。NOx除去装置30は、主に、タンク31、排ガス接触器32、循環ポンプ33を有して構成されており、これらは循環配管35により接続されている。
【0036】
タンク31内は、排ガス接触器32へ供給する未使用のNOx吸収液体(後に詳述)を貯蔵してする供給タンク部31aと、回収された使用済みのNOx吸収液体を貯蔵する回収タンク部31bとに仕切られている。これにより、未使用のNOx吸収液体へ使用済みのNOx吸収液体が混入することを回避する。供給タンク部31a内のNOx吸収液体は排ガス接触器32へ供給される。排ガス接触器32で使用されたNOx吸収液体は循環ポンプ33を作動させることにより回収タンク部31bへ回収される。
【0037】
排ガス接触器32は、排気管11のうち、CO2除去装置20の排ガス接触器32の下流側に取り付けられており、NOx吸収液体を排ガスに接触させるよう機能する。
【0038】
NOx吸収液体は、排ガス中のNOxと接触することでNOxを吸収する液体である。具体的には、特開2008−296211号公報等に記載のイオン液体や、アルカリ溶液、水(例えばエンジン冷却水)等が挙げられる。また、排ガス中のCO2を殆ど吸収せずにNOxを選択的に吸収する液体(例えば、FeSO、Ca(OH)、HSO、KCr等)を用いれば、NOx吸収量を多くできるので好適である。また、NOx吸収液体は、化学変化を伴ってNOxを吸収(化学吸着)する物質でもよいし、化学変化を伴わずにNOxを吸収(物理吸着)する物質でもよい。また、NOx吸収液体はゲル状の物質やスラリー状の物質でもよい。
【0039】
図2は、NOx吸収液体にNaOH水溶液を用いた場合のNOx除去の効果を示す試験結果であり、NOx濃度が約6%の排ガスを排ガス接触器22へ流入させたところ、排ガス接触器22から流出した排ガスのNOx濃度は約1%にまで低減されていることが確認された。
【0040】
排ガス接触器32は、NOx吸収液体を保持する保持体32a、及び保持体32aを内部に収容するケース32bを備えて構成されている。ケース32bは排気管11に接続されており、ケース32b内には排ガスが流通する。また、ケース32bは循環配管35に接続されており、ケース32bの流入口から循環配管35を通じてケース32b内に流入したNOx吸収液体は、保持体32aにて保持される。保持体32aは、ケース32b内を流通する排ガスに晒されるように配置されている。そのため、保持体32aに保持されているNOx吸収液体は排ガスと接触する。
【0041】
ケース32bの流入口及び流出口には流入バルブ32c及び流出バルブ32dが備えられている。これらのバルブ32c,32dは電磁駆動式のバルブであり、その開閉作動はECU15により制御される。よって、ECU15により流出バルブ32dを開作動させればケース32b内のNOx吸収液体を排出させることができ、ECU15により流入バルブ32cを開作動させればケース32b内へCO2吸収液体を流入させることができる。
【0042】
なお、流入口はケース32bの上部に形成され、流出口はケース32bの下部に形成されている。そのため、流出バルブ32dを開作動させると、循環ポンプ33が駆動していなくても自重で排出できるよう構成されている。また、ケース32b内のNOx吸収液体が排出された状態で流入バルブ32cを開作動させると、循環ポンプ33が駆動していなくても自重で流入できるよう構成されている。
【0043】
排気管11にはバイパス配管40が取り付けられており、このバイパス配管40は、排ガス接触器22,32をバイパスして排ガスを流通させるバイパス通路40aを形成する。バイパス配管40の流入口は排気管11のうち排ガス接触器22の上流側に接続され、バイパス配管40の流出口は排ガス接触器32の下流側に接続されている。バイパス通路40aの入口は、バイパス弁41(切替弁)により開閉される。バイパス弁41は電動モータにより駆動し、当該モータの作動はECU15により制御される。
【0044】
ここで、単位量あたりのNOx吸収液体によりNOxを吸収できる量には限界がある。本明細書では、このような限界量を吸収したNOx吸収液体の状態を吸収飽和状態と呼ぶ。また、NOxの吸収量がゼロである状態においてNOx吸収液体がNOxを吸収できる量(最大吸収量)に対する、NOx吸収量の割合を吸収割合と呼ぶ。つまり、吸収飽和状態での吸収割合は100%であり、供給タンク部31aに貯蔵されている未使用のNOx吸収液体の吸収割合は0%である。
【0045】
図3に示すように、排ガス接触器32へ流入してくる流入NOx量Aが排ガス規制値を超えている場合、排ガス接触器32でNOxを吸収して、排ガス接触器32から流出する流出NOx量Bを規制値未満にする必要がある。しかし、排ガス接触器32内のNOx吸収液体が既に吸収している吸収NOx量Cが増加するにしたがって、吸収可能量Dは少なくなっていき、吸収NOx量Cが最大吸収量に達すると(吸収可能量Dがゼロになると)、それ以上はNOxを吸収できなくなり流出NOx量Bが排ガス規制値を超えることが懸念される。
【0046】
そこで本実施形態では、排ガス接触器32内で吸収割合(C/(C+D))が所定値以上に高くなったNOx吸収液体は、循環ポンプ33により回収タンク部31bへ回収する。そして、供給タンク部31a内の吸収割合がゼロであるNOx吸収液体を排ガス接触器32へ供給する。なお、回収タンク部31bへ回収された使用済みのNOx吸収液体は、タンク31から抜き出して車両外部の処理施設で排液処理する。また、供給タンク部31aへの新規NOx吸収液体の補給は、車両ユーザやメンテナンス作業者により随時行われる。
【0047】
循環ポンプ33の作動はECU15により制御される。本実施形態では、循環ポンプ33を常時作動させるのではなく断続的に作動させている。つまり、NOx吸収液体を常時流通させるのではなく、以下に説明する入替制御を実施するよう断続的に流通させている。
【0048】
NOx除去装置30は、NOx吸収液体の吸収割合と相関のある物理量を検出するセンサを有する。本実施形態では前記センサとしてphセンサ32e(状態センサ)を用いており、このphセンサ32eは排ガス接触器32に取り付けられている。ECU15は、phセンサ32eにより検出されたphが所定値以下であれば(酸性の度合いが高ければ)、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の吸収割合が所定値以上になっており吸収能力が低下しているとみなして、排ガス接触器32内のNOx吸収液体を排出して供給タンク部31a内のNOx吸収液体を排ガス接触器32内に供給するといったNOx吸収液体の入れ替えの制御(入替制御)を実施する。
【0049】
図4は、上記入替制御の手順を示すフローチャートであり、ECU15が有するマイクロコンピュータにより、所定周期(例えばマイコンの演算周期又は所定のクランク角度毎)で繰り返し実行される。
【0050】
先ず、図3に示すステップS10において、排ガス接触器22内のNOx吸収液体の吸収割合が上限割合以上になっているか否かを判定する。より詳細に説明すると、NOx除去装置30は、NOx吸収液体の吸収割合と相関のある物理量を検出するセンサを有する。本実施形態では前記センサとしてphセンサ32eを用いており、このphセンサ32eは排ガス接触器32に取り付けられている。上記ステップS10では、phセンサ32eにより検出されたphが所定値以下であれば(酸性の度合いが高ければ)、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の吸収割合が上限割合(例えば95%)以上であるとみなして、以降のステップS11〜S17による入替制御を実施する。
【0051】
すなわち、先ずステップS11において循環ポンプ23の作動を開始させる。続くステップS12では流出バルブ22dを開弁作動させるとともに、流入バルブ22cの閉弁状態を維持させる。これにより、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の排出が開始される。続くステップS13では、流出バルブ32dを開弁作動させてから所定時間が経過したか否かを判定する。なお、前記所定時間は、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の全てが排出されるのに要する時間に設定されている。
【0052】
所定時間が経過したら(S13:YES)、続くステップS14において、流出バルブ22dを閉弁作動させるとともに流入バルブ22cを開弁作動させる。これにより、排ガス接触器32内へのNOx吸収液体の供給が開始される。続くステップS15では、流入バルブ22cを開弁作動させてから所定時間が経過したか否かを判定する。なお、前記所定時間は、排ガス接触器32がNOx吸収液体を保有できる量だけ供給されるのに要する時間に設定されている。
【0053】
所定時間が経過したら(S15:YES)、続くステップS16にて循環ポンプ33の作動を停止させ、続くステップS17において、流出バルブ22dの閉弁状態を維持させるとともに、流入バルブ22cを閉弁作動させる。これにより、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の入れ替えが完了する。
【0054】
以上が、NOx除去装置30においてNOx吸収液体を入れ替える入替制御の内容であるが、CO2除去装置20のCO2吸収液体についても同様の入替制御を実施する。すなわち、排ガス接触器22内のCO2吸収液体の吸収割合が上限割合以上になった場合に入替制御を実施する。
【0055】
当該入替制御では先ず、流出バルブ22dを開弁作動させて排ガス接触器22内のCO2吸収液体を排出する。この時、循環ポンプ23を駆動させることで、排出されたCO2吸収液体を分離放出器24へ回収する。流出バルブ22dの開弁が所定時間為されると、CO2吸収液体の排出が完了したとみなして、流出バルブ22dを閉弁作動させるとともに流入バルブ22cを開弁作動させる。これにより、タンク21内のCO2吸収液体が排ガス接触器22へ流入する。流入バルブ22cの開弁が所定時間為されると、CO2吸収液体の供給入替が完了したとみなして、流入バルブ22cを閉弁作動させる。なお、入替制御の実施期間中にはヒータ24bをオン作動させて、分離放出器24内のCO2吸収液体を加熱してCO2を分離させる。
【0056】
次に、NOx除去装置30によるNOx除去機能に異常が生じているか否かを診断する手法について、説明する。なお、上記異常の具体例としては、正規のNOx吸収液体とは別の液体を間違えて供給タンク部31aに補給した場合、NOx吸収液体が変質している場合、タンク31、排ガス接触器32、循環ポンプ33、循環配管35等により形成されるNOx除去装置30内の液体通路が目詰まりしている場合、NOx除去装置30内の液体通路が損傷して液漏れしている場合、等が挙げられる。
【0057】
図5は、上記異常の診断手順を示すフローチャートであり、ECU15が有するマイクロコンピュータにより実行される。先ずステップS20(排出量算出手段)において、所定時間あたりに内燃機関10から排出されたNOx量(NOx排出量p)を、所定時間における内燃機関10の運転状態の推移に基づき算出する。上記所定時間の具体例としては、イグニッションスイッチを前回オン(又はオフ)操作した時点から、今回オン(又はオフ)操作した時点までの時間や、予め定められた距離を車両が走行する時間、先述した入替制御を前回実施した直後から今回実施する直前までの時間等が挙げられる。要するに、上記所定時間中には、排ガス接触器32内への吸収液体の供給及び排出を実施させないことが望ましい。
【0058】
続くステップS21では、phセンサ32eにより検出されたph検出値(性状検出値)に基づき、現在のNOx吸収量qnowを算出する。続くステップS22(吸収量算出手段)では、NOx吸収量qnowから前回算出したNOx吸収量qoldを減算することで、前回から現在までに吸収したNOx量(NOx吸収量q)を算出する。なお、前回から現在までの時間は、ステップS20にかかる所定時間と同じ時間である。
【0059】
ここで、NOx除去装置30が正常に機能してNOxを除去していれば、所定時間当りのNOx排出量pに所定の浄化率rを乗算して得られる量(正常吸収量p×r)は最低でも吸収されている筈である。この点を鑑みて、続くステップS23(能力低下異常判定手段)では、ステップS22で算出したNOx吸収量qが正常吸収量p×rよりも少ないか否かを判定する。
【0060】
q≧p×rであると判定されれば(S23:NO)、次のステップS24において、NOx除去装置30が正常に機能している旨の正常判定をする。一方、q<p×rであると判定されれば(S23:YES)、次のステップS25において、NOx除去装置30が正常に機能していない旨の異常判定をする。
【0061】
そして、このように異常判定された場合には、ステップS26において内燃機関10の運転を制限する。例えば、クランク軸の回転速度NEが所定値を超えないように制限したり、内燃機関10の出力トルクが所定値を超えないように制限したりする。これらの制限は、燃料噴射弁14からの燃料噴射量を制限することで実現させることが望ましい。
【0062】
また、ステップS25にて異常判定された場合には、ステップS27においてNOx除去装置30の運転を制限する。例えば、バイパス通路40aへ排ガスを流すようバイパス弁41を作動させる。また、バイパス配管40が備えられていない場合には、循環ポンプ23,33の作動を禁止したり、図4に示す入替制御を禁止したりすることで、NOx除去装置30の運転を制限する。また、ステップS25にて異常判定された旨を車両運転者に報知する報知手段(例えば表示ランプ15a)を備えることが望ましい。
【0063】
次のステップS28では、ステップS21で算出した現在のNOx吸収量qnowを、前回値(NOx吸収量qold)へ代入して更新して、図5に示す一連の異常診断処理を終了する。なお、CO2除去装置20によるCO2除去機能に異常が生じているか否かの診断についても、図5に示す手順と同じである。
【0064】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0065】
(1)phセンサ22e,32e(状態センサ)を用いて所定時間あたりの吸収量q(NOx吸収量qnow−qold)を算出するとともに、前記所定時間あたりのNOx排出量p(又はCO2排出量)を算出し、吸収量qが排出量pに比べて著しく低くなっている場合(q<p×rとなっている場合)に、除去装置20,30によりNOx又はCO2を吸収して除去する浄化機能に異常が生じていると診断する。よって、除去装置20,30の浄化機能に異常が生じているか否かを診断することを容易に実現できる。
【0066】
(2)吸収液体の吸収量(吸収割合)が変化すると、その変化に応じて吸収液体のphにも変化が顕著に現れる。したがって、phセンサ22e,32eを備え、その検出値に基づき吸収液体の吸収量を算出する本実施形態によれば、その吸収量を精度良く算出でき、ひいては上記診断の精度を向上できる。
【0067】
(3)排ガス接触器22,32内の吸収液体の吸収割合が上限割合よりも低い場合には、排ガス接触器22,32への吸収液体の供給及び排出を停止させるので、未だ吸収能力が十分にある吸収液体を排ガス接触器22,32から排出させてしまうことを回避できる。よって、タンク21,31に新規の吸収液体を補給しなければならない時期を遅くして吸収液体の使用期間を長くできる。
【0068】
また、排ガス接触器22,32内の吸収液体の吸収割合が上限割合を超えて高くなった場合には、排ガス接触器22,32内の高吸収割合の吸収液体を、タンク21,31内の低吸収割合の吸収液体に入れ替えるので、内燃機関10から排出されるNOx,CO2の排出量に対する、排ガス接触器22,32での吸収量の割合(吸収率)を、所定の吸収率以上に維持させることができ、排ガス中のNOxが吸収されることなく排ガス接触器32を素通りしてしまう量が排ガス規定値を超えて多くなることを自動で回避できる。
【0069】
(4)入替制御を実施するにあたり、排ガス接触器22,32が吸収液体を保有できる量だけタンク21,31から供給させるので、排ガス接触器22,32内の吸収液体を過不足無く入れ替えることができる。
【0070】
(5)入替制御を実施するにあたり、排ガス接触器22,32内の吸収液体の全てを排出させた後に、タンク21,31から吸収液体を供給させるので、排ガス接触器から排出する高吸収割合の吸収液体(或いは高温吸収液体)と、タンク21,31から排ガス接触器22,32へ供給する低吸収割合の吸収液体(或いは低温吸収液体)とが混ざり合うことを抑制できる。これにより、特に分離放出器24を備えないNOx除去装置30においては、タンク31に新規のNOx吸収液体を補給しなければならない時期を遅くしてNOx吸収液体の使用期間を長くできる。
【0071】
(6)ここで、NOx吸収液体は、排ガス中のNOxのみならずCO2をも吸収してしまう。しかも、内燃機関10の排ガス中のNOx濃度は0.1%以下であるのに対し、CO2濃度は数%〜数十%であるため、本実施形態に反してCO2除去装置20を廃止すると、NOx吸収液体での吸収はCO2が支配的になってしまい、NOxを十分に吸収できなくなるとの問題が生じる。この問題に対し本実施形態では、排気管11のうち、NOx除去装置30の排ガス接触器32の上流側に、CO2除去装置20の排ガス接触器22を設けるので、CO2除去装置20によりCO2濃度を低下させた状態の排ガスをNOx除去装置30へ送り込むことができる。よって、NOx吸収液体に吸収されてしまうCO2の量を低減させることができ、ひいてはNOx吸収液体に十分な量のNOxを吸収させることができる。
【0072】
(7)本実施形態にかかるNOx除去装置30及びCO2除去装置20では、NOx吸収液体を排ガスに接触させることでNOxを吸収するとともに、CO2吸収液体を排ガスに接触させることでCO2を吸収するものである。よって、常温であってもCO2除去装置20及びNOx除去装置30による除去機能を発揮させることができるので、内燃機関10の冷間始動時であっても、内燃機関10の始動直後から排ガス中のNOxを除去することができる。
【0073】
(8)ここで、本実施形態にかかるNOx除去装置30及びCO2除去装置20では、排気管11に取り付けられる排ガス接触器22,32とタンク21,31とを別体に構成して循環させているが、排ガス接触器22,32の容量をタンク21,31と同等にすれば、タンク21,31を排ガス接触器22,32に一体化させることができ、上記循環を不要にできる。しかしながらこのように一体化すると、排ガス接触器22,32が大型となり、車両のフロア下に排ガス接触器22,32を設置することが極めて困難となる。
【0074】
これに対し本実施形態では、排ガス接触器22,32及びタンク21,31を別体に構成して循環させているので、フロア下に位置する排気管11に接続することが要求される排ガス接触器22,32を小型化できる。よって、排ガス接触器22,32をフロア下に設置することを容易に実現できるとともに、NOx除去装置30及びCO2除去装置20を車両へ搭載するにあたり、その搭載レイアウトの自由度を向上できる。
【0075】
さらに、排ガス接触器22,32及びタンク21,31を別体に構成して循環させる本実施形態によれば、排気量の大きい内燃機関10に対しては、タンク21,31の容量を大きくして吸収液体を排ガス接触器22,32へ供給する頻度を高くすることで対応する一方で、排ガス接触器22,32については排気量の異なる内燃機関10同士で共通化させることができる。
【0076】
(9)ここで、排ガス中のNOxを排ガス接触器32で吸収させるにあたり、NOよりもNO2の方が吸収率を高めることができる。そこで本実施形態では、NOをNO2に酸化するDOC12を排ガス接触器32の上流側に配置しているので、排ガス接触器32におけるNOxの吸収率を向上できる。また、DPFを排ガス接触器22,32の上流側に配置しているので、排ガス中のPMが排ガス接触器22,32内部に付着して目詰まりが生じることを抑制できる。
【0077】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、異常の例として、正規以外の液体を間違えて補給した場合、吸収液体が変質している場合、除去装置20,30内の液体通路が目詰まりしている場合、除去装置20,30内の液体通路が損傷して液漏れしている場合等、種々の異常を想定しているのに対し、本実施形態では、上記異常の中でも液漏れ異常を素早く検出することを想定している。
【0078】
図6は、本実施形態にかかる除去装置20,30を示しており、吸収液体の流量を検出する第1流量センサ25a,35a及び第2流量センサ25b,35b(液量センサ(状態センサ))を、除去装置20,30の各々に対して設けている。そして、第1流量センサ25a,35aにより検出された流量と、第2流量センサ25b,35bにより検出された流量とが所定量以上に異なる値となっていれば、流通経路のいずれかで液漏れが生じていると診断する。
【0079】
或いは、タンク21,31内の吸収液体の残存量を検出する残量センサ21f,31f(液量センサ(状態センサ))を、除去装置20,30の各々に対して設ける。そして、残量センサ21f,31fにより検出された残存量の減少速度が想定以上に速くなっていれば、流通経路のいずれかで液漏れ(特にタンク21,31の液漏れ)が生じていると診断する。
【0080】
或いは、除去装置20,30の下方に、流通経路から漏れ出た吸収液体を回収する回収容器50(図2中の一点鎖線参照)を設け、その回収容器50内の液量を検出する液量センサ51を備える。そして、液量センサ51により検出された液量が所定量以上になれば、例えばタンク21,31や排ガス接触器22,32等、流通経路のいずれかで液漏れが生じていると診断する。なお、上方から見て、回収容器50の開口部がタンク21,31及び排ガス接触器22,32を少なくとも含む範囲で開口するように、回収容器50を設けることが望ましい。
【0081】
図7は、上記異常の診断手順を示すフローチャートであり、ECU15が有するマイクロコンピュータにより実行される。先ずステップS30において、第1流量センサ25a,35aによる流量検出値と、第2流量センサ25b,35bによる流量検出値との差(流量差)を取得する。この時、図5の入替制御を実施している時などのように、ポンプ23,33を駆動させている時の流量検出値による流量差を取得することが望ましい。或いは、ステップS30において、残量センサ21f,31fの検出値変化に基づく残量減少速度を取得する。或いは、ステップS30において液量センサ51により回収容器50内の液量(回収液量)を取得する。
【0082】
続くステップS31(液漏れ異常判定手段)では、ステップS30で取得した流量差が予め設定した閾値TH1よりも大きくなっているか否か、或いは、ステップS30で取得した残量減少速度が予め設定した閾値TH2よりも速くなっているか否かを判定する。或いは、ステップS30で取得した回収液量が予め設定した閾値TH2aよりも多くなっているか否かを判定する。
【0083】
流量差≦TH1、或いは残量減少速度≦TH2、或いは回収液量≦TH2aであると判定されれば(S31:NO)、次のステップS34において、除去装置20,30が正常に機能している旨の正常判定をする。一方、流量差>TH1、或いは残量減少速度>TH2、或いは回収液量>TH2aであると判定されれば(S31:YES)、次のステップS35において、除去装置20,30が正常に機能していない旨の異常判定をする。
【0084】
そして、このように異常判定された場合には、ステップS36において内燃機関10の運転を制限するとともに、ステップS27においてNOx除去装置30の運転を制限する。なお、これらの制限内容は、図5のステップS26,27と同じである。
【0085】
以上により、本実施形態によれば、除去装置20,30に液漏れ異常が生じているか否かを診断することを容易に実現できる。
【0086】
なお、図5の診断処理では、所定時間当りのNOx排出量及びNOx吸収量qを算出することを要するので、その所定時間が経過しなければ診断結果を得ることができない。しかも、前記所定時間は、先述したように例えば「イグニッションスイッチを前回オン操作した時点から今回オン操作した時点までの時間」といった長い時間(例えば最低でも数十分)である。これに対し本実施形態によれば、液漏れが生じると、流量差又は残量減少速度は閾値TH1,TH2を直ぐに(例えば数十秒)超えることとなるので、液漏れ異常を早期に検出できる。
【0087】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、所定時間当りの排出量に比べて吸収量が著しく少ない場合には除去装置20,30の浄化機能に異常が生じていると診断している。これに対し本実施形態では、メンテナンス作業者等によりタンク21,31へ吸収液体を補給してから短時間のうちに吸収液体の性状が大きく変化している場合に、除去装置20,30の浄化機能に異常が生じていると診断する。なお、本実施形態にかかる診断手法は、分離放出器24の如く吸収液体の吸収割合を低下させる手段を備えて吸収液体を再生循環させる除去装置(例えば図1のCO2除去装置20)の場合に有効である。
【0088】
図8は、上記異常の診断手順を示すフローチャートであり、ECU15が有するマイクロコンピュータにより実行される。先ずステップS40において、タンク21,31へ吸収液体を補給してから、内燃機関10を所定時間(又は所定の走行距離)以上運転させたか否かを判定する。所定時間以上運転させていると判定されれば(S40:YES)、異常の有無を診断することなく図8の一連の処理を終了する。所定時間以上は未だ運転させていないと判定されれば(S40:NO)、続くステップS41において、phセンサ32eにより検出された吸収液体のph検出値(性状検出値)を取得する。
【0089】
続くステップS42では、ph検出値が予め設定された閾値TH3よりも低くなっているか否かを判定する。吸収液体が変質する等による異常が生じていなければ、運転時間が所定時間未満であるにも拘わらずph検出値<TH3となる(つまり吸収可能量が所定値未満となっている)ことは有り得ない。よって、ph検出値≧TH3であると判定されれば(S42:NO)、次のステップS44において、除去装置20,30が正常に機能している旨の正常判定をする。
【0090】
一方、ph検出値<TH3であると判定されれば(S41:YES)、吸収液体が変質する等により吸収可能量が少なくなっているとみなして、次のステップS45において、除去装置20,30が正常に機能していない旨の異常判定をする。
【0091】
そして、このように異常判定された場合には、ステップS36において内燃機関10の運転を制限するとともに、ステップS27においてNOx除去装置30の運転を制限する。なお、これらの制限内容は、図5のステップS26,27と同じである。
【0092】
以上により、本実施形態によれば、除去装置20,30に液漏れ異常が生じているか否かを診断することを容易に実現できる。また、上記第1実施形態の如くNOx排出量pの算出やNOx吸収量qの算出を不要にできるので、マイコンの演算処理負荷を小さくできる。
【0093】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0094】
・上記第2実施形態では、第1流量センサ25a,35a及び第2流量センサ25b,35bの流量差に基づき液漏れ異常有無を診断しているが、いずれか一方のセンサを用いて、ポンプ23,33を作動させている時に検出された流量が予め設定された閾値よりも少ない場合に、液漏れ異常が生じていると診断するようにしてもよい。
【0095】
・CO2吸収液体及びNOx吸収液体は、分子構造の変化を伴わずにCO2やNOxを吸収(物理的吸収)させるものでもよいし、分子構造の変化を伴いながらCO2やNOxを吸収(化学的吸収)させるものでもよい。
【0096】
・上記第1実施形態では、CO2除去装置20の循環ポンプ23を断続的に作動させて、循環配管25内のCO2吸収液体を断続的に循環(入替制御)させている。これに対し、CO2除去装置20の循環ポンプ23を常時作動させて、循環配管25内のCO2吸収液体を常時循環させるようにしてもよい。この場合、CO2吸収液体の吸収割合に応じてその循環速度を可変制御することが望ましい。また、流入バルブ22c及び流出バルブ22dを廃止することが望ましい。
【0097】
・上記各実施形態では、吸収液体を染み込ませて保持する保持体22a,32aを排ガス中に晒すことで排ガスと吸収液体とを接触させているが、例えば、吸収液体を排ガス中へ霧状に噴射することで接触させるよう構成してもよい。或いは、吸収液体を蓄えたタンク中に排ガスを吹き込むことで、吸収液体と排ガスとを接触させるよう構成してもよい。
【0098】
・上記第1実施形態では、図1に示すように、排ガス中のNOをNO2に酸化するDOC12(酸化手段)を排ガス接触器22の上流側に配置している。これは酸化触媒を活性化させるために内燃機関10の排気ポートにできるだけ近い位置にDOC12を配置することで、高温排気によりDOC12の温度上昇を短時間で実現させる点で有利である。しかしながら、NOをNO2に酸化すると、排ガス接触器32でのNOx吸収率を向上できると同時に、排ガス接触器22内においてCO2吸収液体によりNOxが吸収されやすくなってしまう。
【0099】
この点を鑑みて、排気管11のうち、CO2除去装置20の排ガス接触器22の下流側、かつ、NOx除去装置30の排ガス接触器32の上流側に酸化手段を配置してもよい。これによれば、CO2吸収液体がNOxを吸収することを抑制できるとともに、NOx吸収液体がNOxを吸収することを向上できる。但し、このような位置に酸化手段を配置すると、排気ポートから遠い位置になるので、高温排気により酸化触媒を短時間で活性化することが困難となる。よって、このような配置の酸化手段には、酸化触媒を用いたDOCに替えて、オゾン発生器やラジカル発生器を採用することが望ましい。或いは、酸化触媒(DOC)を用いた場合には、DOCを加熱する電気ヒータやバーナーを備えさせることが望ましい。
【0100】
・上記第1実施形態にかかる分離放出器24は、CO2吸収液体を加熱するヒータ24b(加熱手段)によりCO2を分離させているが、ヒータ24bに替えてCO2吸収液体を減圧する減圧手段を設け、CO2吸収液体を減圧することでCO2を分離させるように構成してもよい。
【0101】
・上記第1実施形態では、phセンサ22e,32eを用いて吸収液体の吸収割合を検出しているが、液体の粘性、透光度、電気伝導度、比重についても吸収割合と相関が高いので、これらの物理量を検出するセンサをphセンサ22e,32eに替えて用いるようにしてもよい。また、吸収液体がイオン液体である場合には、吸収液体中のカチオン(プラスイオン)とアニオン(マイナスイオン)の比率を検出するセンサを用いて吸収割合を検出することもできる。
【0102】
・上記各実施形態では、NOx除去装置30の上流側にCO2除去装置20を設けているが、NOx除去装置30が、CO2を吸収しつつも十分な量のNOxを吸収できる能力を有していれば、CO2除去装置20を廃止してもよい。
【0103】
・上記各実施形態では、吸収液体で吸収させる排ガス中の特定成分をNOx,CO2としているが、これらの成分以外を対象として吸収除去させるようにしてもよい。例えば、着火式のガソリンエンジンに適用させた場合において、排ガス中のHCを吸収液体で吸収させるようにしてもよい。
【0104】
・上記各実施形態において、流入バルブ22c,32c及び流出バルブ22d,32dを廃止した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10…内燃機関、11…排気管、20…CO2除去装置(排気浄化装置)、21f,31f…残量センサ(液量センサ(状態センサ))、22,32…排ガス接触器、22e,32e…phセンサ(性状センサ(状態センサ))、25a,25b,35a,35b…流量センサ(液量センサ(状態センサ))、30…NOx除去装置(排気浄化装置)、40a…バイパス通路、41…バイパス弁(切替弁)、51…液量センサ、S20〜S25,S30〜S35,S40〜S45…異常判定手段、S20…排出量算出手段、S22…吸収量算出手段、S23…能力低下異常判定手段、S31…液漏れ異常判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス中の特定成分と接触するとその接触した特定成分を吸収する吸収液体を保有し、前記内燃機関の排気管に配置されて前記吸収液体を排ガスに接触させることで前記特定成分を吸収して除去する排気浄化装置に適用され、
前記吸収液体の状態を検出する状態センサと、
前記状態センサの検出値に基づき、前記排気浄化装置による浄化機能に異常が生じているか否かを判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする排気浄化装置の異常診断装置。
【請求項2】
前記吸収液体の性質状態を検出する性状センサを前記状態センサとして備え、
前記異常判定手段は、
所定時間当りに前記内燃機関から排出される前記特定成分の排出量を算出する排出量算出手段と、
前記性状センサによる性状検出値に基づき、前記所定時間当りに前記吸収液体で吸収した前記特定成分の吸収量を算出する吸収量算出手段と、
前記排出量算出手段により算出した所定時間当りの排出量と、前記吸収量算出手段により算出した所定時間当りの吸収量との比較に基づき、浄化能力が異常に低下しているか否かを判定する能力低下異常判定手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置の異常診断装置。
【請求項3】
前記排気浄化装置から漏れ出た吸収液体が収集される容器中の液量、或いは、前記吸収液体の流量又は残存量を検出する液量センサを前記状態センサとして備え、
前記異常判定手段は、前記液量センサによる検出値に基づき、前記吸収液体が前記排気浄化装置から漏れ出る異常が生じているか否かを判定する液漏れ異常判定手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化装置の異常診断装置。
【請求項4】
前記排気浄化装置は、
前記内燃機関の排気管に取り付けられ、前記吸収液体を排ガスに接触させる排ガス接触器と、
前記排気管から分岐して、前記排ガス接触器をバイパスして排ガスを流通させるバイパス通路と、
前記バイパス通路及び前記排ガス接触器のいずれかに排ガスの流れを切り替える切替弁と、
を有して構成されており、
前記異常判定手段により異常判定されている場合には、前記バイパス通路へ排ガスを流すよう前記切替弁を作動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気浄化装置の異常診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−179340(P2011−179340A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41753(P2010−41753)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】