説明

排水ヘッダー

【課題】 免震住宅に設置する排水管系統において、免震構造を採用する配管部分を最小限とし、排水管系統のほとんどに汎用の管材を用いることができる排水ヘッダーを提供する。
【解決手段】 基礎52上に免震装置54を介して支持された建物51に設置されている複数の水回り設備16に接続された各排水管17からの排水を建物床下内で合流して排水主管13に排水する排水ヘッダー11であって、ヘッダー本体12に、建物51の基礎側に配設される前記排水主管13を免震継手14を介して接続する排水主管接続部15と、建物51の床下部に配設される前記各排水管17を接続する複数の排水管接続部19とを設けるとともに、前記ヘッダー本体12を、建物51の床下構造物53に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ヘッダーに関し、詳しくは、耐震構造を備えた戸建住宅に設けられる排水管の接続に使用する排水ヘッダーの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の戸建住宅では、基礎との間に耐震装置を介在させた免震住宅が注目されており、これに伴って排水管の系統にも免震構造が必要となる。この免震構造を有する配管構造として、平面方向の変位を吸収可能な排水可撓管を略U字状に配管したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−313908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の配管構造では、多数の排水可撓管を必要とするだけでなく、これを略U字状に配置するため、配管全長が長くなって大幅なコストアップになるだけでなく、排水性能も損なわれてしまうという問題がある。
【0004】
そこで本発明は、免震住宅に設置する排水管系統において、免震構造を採用する配管部分を最小限とし、排水管系統のほとんどに汎用の管材を用いることができる排水ヘッダーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の排水ヘッダーは、基礎上に免震装置を介して支持された建物に設置されている複数の水回り設備に接続された各排水管からの排水を建物床下内で合流して排水主管に排水する排水ヘッダーであって、ヘッダー本体に、建物の基礎側に配設される前記排水主管を免震継手を介して接続する排水主管接続部と、建物の床下部に配設される前記各排水管を接続する複数の排水管接続部とを設けるとともに、前記ヘッダー本体を、建物の床下構造物に取り付けたことを特徴としている。
【0006】
さらに、本発明の排水ヘッダーは、前記排水管と排水管接続部とが可撓性管継手を介して接続していること、前記ヘッダー本体が前記床下構造物に対して上下動可能で水平方向の移動が規制された状態で取り付けられるとともに、前記基礎上に移動可能に載置されていることを特徴としている。
【0007】
また、前記ヘッダー本体は、高さ調節可能な複数の支持脚を備えた支持部材に固定され、該支持部材は、前記床下構造物に固定された鉛直方向の棒状ガイド部材に上下動可能な状態で係合するガイド片を備えており、該ガイド片と前記棒状ガイド部材との係合により、前記支持部材が床下構造物に対して上下動可能で、かつ、水平方向の移動が規制された状態に保持され、前記支持脚の下端が前記基礎上に水平方向に移動可能な状態で当接することによってヘッダー本体及び支持部材の荷重を支持することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排水ヘッダーによれば、排水ヘッダーは、地震の際に免震装置上の建物と一緒に移動するため、排水ヘッダーと各水回り設備との間に接続された各排水管には引っ張り応力や曲げ応力がほとんど作用しない。したがって、これらの排水管には一般的な管材を使用することができる。また、免震継手は、基礎側に配設される排水主管と排水ヘッダーとの間にだけ設ければよいため、コストダウンを図れるとともに、排水性が損なわれることもほとんどなくなる。
【0009】
さらに、排水管と排水管接続部とを可撓性管継手を介して接続することにより、排水管と排水ヘッダーとの揺れの状態が多少異なった場合でも、排水管や排水管接続部の破損を防止できる。しかも、排水管の施工性も向上し、排水管の熱伸縮も吸収できる。
【0010】
また、排水ヘッダーは、建物に対して上下動可能とし、水平方向の移動のみを規制するとともに、上下方向(鉛直方向)に作用する排水ヘッダーの荷重を基礎で負担することにより、風呂水等が大量に流入したときに重量が増加する排水ヘッダーを建物への取付部で負担する必要がないため、取付部の構造を大幅に簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一形態例を示す排水ヘッダーの正面図、図2は同じく側面図、図3は同じく平面図、図4は配管接続状態を示す概略図、図5は建物への設置状態を示す概略図である。
【0012】
まず、排水ヘッダー11を設置する建物51は、基礎52と床下構造物53との間に免震装置54を備えており、地震によって地面と一緒に基礎52が水平方向に揺れても、建物51はほとんど揺れないように形成されている。なお、免震装置54には、各種構造のものを使用することができ、水平方向の揺れを吸収する構造を有する免震装置ならば各種構造のものを使用することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0013】
排水ヘッダー11は、前記建物51の床下内に設けられるもので、底部が閉塞した円筒状のヘッダー本体12の周壁に、建物51の基礎52側に設けられているマンホール55に接続する排水主管13を免震継手14を介して接続する排水主管接続部15と、各水回り設備16,16からの各排水管17,17を可撓性管継手18,18を介してそれぞれ接続する5箇所の排水管接続部19,19とを備えている。また、ヘッダー本体12の上部開口には、着脱可能な点検蓋12aが装着されている。
【0014】
排水主管接続部15は、底板上面に接するようにしてヘッダー本体12内に開口しており、ヘッダー本体12内に汚物等が滞留することがないようにしている。また、各排水管接続部19は、排水主管接続部15よりも高位置に設けられており、排水主管13側から排水管17側への排水の逆流を防止するようにしている。さらに、排水主管接続部15にも可撓性継手20を設けておくことにより、施工時の位置調整等を容易に行うことができる。
【0015】
ヘッダー本体12は、高さ調整可能な支持脚21を備えた支持部材22に支持されている。支持部材22は、ヘッダー本体12を載置して固定する支持板23と、支持板23の周囲を保持する横フレーム24と、この横フレーム24の一側から鉛直方向に立ち上がった縦フレーム25と、該縦フレーム25から水平方向に突出したガイド片26とを有している。前記支持脚21は、下端に接地部27aを有するジャッキボルト27と、該ジャッキボルト27に螺合する一対の固定ナット28,28とで形成されており、固定ナット28の締め付け位置を調節することにより、支持部材22を介してヘッダー本体12の上下位置及び水平度を調節できるように形成されている。
【0016】
ヘッダー本体12の底部には、四隅部に支持脚21のジャッキボルト27を挿通するための挿通溝29をそれぞれ有する四角形の固定板30が取り付けられており、各挿通溝29と、支持板23の所定位置に設けた挿通孔とにジャッキボルト27を挿通し、支持板23と固定板30とを固定ナット28,28で挟み込むことにより、ヘッダー本体12が支持部材22に支持固定された状態となる。
【0017】
一方、床下構造物53の一つには、支持部材22の水平方向の移動を規制するための棒状ガイド部材31が固定金具32によって取り付けられている。この棒状ガイド部材31を、前記ガイド片26に設けたガイド孔26aに挿通することにより、ガイド片26は、棒状ガイド部材31に対して上下方向にのみ移動可能な状態で係合する。また、棒状ガイド部材31にネジ棒を使用し、固定金具32に設けた雌ねじ部材32aに螺合させることにより、棒状ガイド部材31の上下位置を容易に調節することができる。さらに、固定金具32を、図1に示すように、床下構造物53の免震土台として用いられている鋼材をボルト32bと挟持片32cとで挟み込んで固定する構造とすることにより、床下構造物53に通孔を形成するなどの加工が不要となる。
【0018】
このように形成した排水ヘッダー11は、支持部材22及び棒状ガイド部材31を介して建物51の床下構造物53に取り付けられる。この取付状態の排水ヘッダー11は、前述のように、床下構造物53に対しては、ガイド片26のガイド孔26aと棒状ガイド部材31との係合によって水平方向の移動が規制され、上下方向には移動可能な状態でとなっており、上下方向は、ジャッキボルト27の接地部27aを基礎52の上面に当接させることによって規制された状態となっている。
【0019】
このとき、上下方向の移動も規制するようにして排水ヘッダー11を床下構造物53に固設することもできる。しかし、排水流入時に重量が大幅に増加する排水ヘッダー11を床下構造物53に固設するためには、頑丈な支持部材を用いて床下構造物53に強固に取り付ける必要があり、コストアップの大きな要因となるので好ましくない。また、接地部27aに、基礎52との移動を円滑に行わせるためのボールや転動輪を用いたり、滑り板を用いたりしてもよい。
【0020】
床下構造物53に取り付けられた排水ヘッダー11は、ジャッキボルト27の各固定ナット28の締め付け位置を調節し、高さ及び水平度を調節した後、各水回り設備16からの各排水管17を可撓性管継手18を介して各排水管接続部19にそれぞれ接続する。このとき、排水ヘッダー11から離れた位置にある水回り設備16からの排水管17を、上下に設けられた排水管接続部19の下方位置に接続することにより、十分な水勾配を得ることができる。また、排水主管接続部15には、免震継手14を介して排水主管13を接続し、排水主管13の下流部分をマンホール55に接続する。なお、免震継手14は、前記特許文献1に記載されたような可撓管をU字形に配置したものを使用することができ、他の構造の免震継手も適宜に選択使用することができる。
【0021】
地震による大きな揺れが発生した場合、建物51は免震装置54によって水平方向の揺れ(横揺れ)が抑えられるので、建物51と基礎52とが相対的に水平方向に移動する状態となる。このとき、排水ヘッダー11は、建物51の床下構造物53に水平方向の移動が規制された状態で取り付けられているので、基礎52に対して接地部27aが横滑りして建物51と一緒に排水ヘッダー11が移動する。したがって、水回り設備16に接続した排水管17と排水ヘッダー11との間に相対的な移動を生じないので、排水管17に大きな引っ張り応力や曲げ応力が作用することがなくなる。
【0022】
一方、建物51の基礎52側に配設されるマンホール55に接続した排水主管13は、排水ヘッダー11との間に免震継手14を介在させているので、排水ヘッダー11が建物51と共に移動しても、その移動に伴って発生する応力を免震継手14によって吸収できるので、排水主管13や排水ヘッダー11に大きな応力が作用することはない。
【0023】
このように、排水ヘッダー11を建物51に取り付けた状態とすることにより、各排水管17に一般的な管材を使用することができ、高価な免震継手は排水主管13との接続のみに用いればよいため、管材に要するコストや施工コストを大幅に削減することができる。また、各排水管17の長さも、免震継手を用いたときに比べて短くできるので、排水性が損なわれることもない。特に、排水ヘッダー11を建物51に対して上下動可能とし、基礎52で排水ヘッダー11の重量を支えるように形成することにより、排水ヘッダー11を建物51に取り付けるための支持部材等を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一形態例を示す排水ヘッダーの正面図である。
【図2】同じく側面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】配管接続状態を示す概略図である。
【図5】建物への設置状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0025】
11…排水ヘッダー、12…ヘッダー本体、12a…蓋、13…排水主管、14…免震継手、15…排水主管接続部、16…水回り設備、17…排水管、18…可撓性管継手、19…排水管接続部、20…可撓性継手、21…支持脚、22…支持部材、23…支持板、24…横フレーム、25…縦フレーム、26…ガイド片、26a…ガイド孔、27…ジャッキボルト、27a…接地部、28…固定ナット、29…挿通溝、30…固定板、31…棒状ガイド部材、32…固定金具、32a…雌ねじ部材、32b…ボルト、32c…挟持片、51…建物、52…基礎、53…床下構造物、54…免震装置、55…マンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎上に免震装置を介して支持された建物に設置されている複数の水回り設備に接続された各排水管からの排水を建物床下内で合流して排水主管に排水する排水ヘッダーであって、ヘッダー本体に、建物の基礎側に配設される前記排水主管を免震継手を介して接続する排水主管接続部と、建物の床下部に配設される前記各排水管を接続する複数の排水管接続部とを設けるとともに、前記ヘッダー本体を、建物の床下構造物に取り付けたことを特徴とする排水ヘッダー。
【請求項2】
前記排水管と排水管接続部とは、可撓性管継手を介して接続していることを特徴とする請求項1記載の排水ヘッダー。
【請求項3】
前記ヘッダー本体は、前記床下構造物に対して上下動可能で水平方向の移動が規制された状態で取り付けられるとともに、前記基礎上に移動可能に載置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の排水ヘッダー。
【請求項4】
前記ヘッダー本体は、高さ調節可能な複数の支持脚を備えた支持部材に固定され、該支持部材は、前記床下構造物に固定された鉛直方向の棒状ガイド部材に上下動可能な状態で係合するガイド片を備えており、該ガイド片と前記棒状ガイド部材との係合により、前記支持部材が床下構造物に対して上下動可能で、かつ、水平方向の移動が規制された状態に保持され、前記支持脚の下端が前記基礎上に水平方向に移動可能な状態で当接することによってヘッダー本体及び支持部材の荷重を支持することを特徴とする請求項1又は2記載の排水ヘッダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−77528(P2006−77528A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264972(P2004−264972)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】