説明

排水処理装置、排水処理システム、および、排水処理方法

【課題】簡単な構成で容易に混入するダイオキシンを除去できる排水処理装置を提供する。
【解決手段】処理槽310内に透水性を有する収容シート350を処理槽310外へ捲り返し可能で、流入する排水の流過方向で複数積層状に設ける。収容シート350間に活性炭を充填して排水の流過方向で複数の積層状となる活性炭層360を構成させる。排水中のダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物を活性炭層360で濾過するとともに、残留する溶解したダイオキシン類を吸着する。目詰まりが生じた場合、収容シート350を捲り返して活性炭を排出し焼却処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭を用いて排水中に混入するダイオキシンを除去する排水処理装置、排水処理システム、および、排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばダイオキシンなどの汚染物質を含有する排水を、吸着処理により浄化処理する各種構成が知られている(例えば、特許文献1ないし特許文献3参照)。
特許文献1に記載のものは、圧力手動ポンプにより加圧した排水を、前処理用カーボンフィルタに流入させ、排水中の有機物の一部をカーボンフィルタに吸着させる。この後、加圧された排水は、逆浸透膜分離装置に流入され、排水中の重金属類、ダイオキシン類、細菌、トリハロメタンなどの有害物質を分離して浄水を得る構成が採られている。
特許文献2に記載のものは、焼却炉から排出されるダイオキシンを活性炭に吸着させ、このダイオキシンを吸着した活性炭を、水の臨界温度・臨界圧力以上の超臨界水中で酸化分解する構成が採られている。
特許文献3に記載のものは、ごみ最終処理場の埋立地進出水処理設備や各種産業における排水槽に貯留する排水を、薬品混入槽で凝集剤などが添加された後に凝集沈殿槽で沈殿物を除去する。この後、排水は、水和槽で中和され、砂濾過塔で砂濾過された後、膜分離装置で処理し、膜等下垂を活性炭吸着塔に通して吸着処理し、ダイオキシン類を除去する構成が採られている。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3098878号公報
【特許文献2】特開平11−76755号公報
【特許文献3】特開2000−210663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1ないし特許文献3に記載のような従来の処理構成では、排水にダイオキシンとともに混入する粒子状物を除去するために、膜分離や凝集沈殿分離などの他の処理構成と吸着処理とを組み合わせる構成が採られているため、設備の複雑大型化や、浄化処理の運転コストの低減が図りにくいなどの不都合がある問題がある。
【0005】
本発明は、このような状況を考慮して、簡単な構成で容易に混入するダイオキシンを除去できる排水処理装置、排水処理システム、および、排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に記載の排水処理装置は、上方に開口面を開口しダイオキシン類および粒子状物を含む排水を貯溜可能な処理槽と、この処理槽に前記排水を流入する流入手段と、前記処理槽に設けられ貯溜する排水を排出する排出口と、この処理槽内に前記開口面から前記処理槽外へ搬出可能に、前記流入手段から流入され前記排出口へ流過する前記排水の流過方向で複数積層状に配設された透水性を有する収容シートと、これら収容シート間に充填され前記排水の流過方向で複数の積層状の活性炭層を構成する活性炭と、を具備したことを特徴とする。
この発明では、上方に開口面を開口する処理槽内に、透水性を有する収容シートを、開口面から処理槽外へ搬出可能で、流入手段から前記処理槽内へ流入し処理槽に設けられた排出口へ流通する排水の流過方向で複数積層状に設ける。さらに、収容シート間に活性炭を充填して排水の流過方向で複数の積層状となる活性炭層を構成させる。そして、流入手段から流入する排水は、活性炭層で、排水中に混入し排水中における全ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物が濾過され、排水中に残留するダイオキシン類は活性炭にて吸着される。
このため、活性炭を単にダイオキシン類の吸着除去のために利用するのみならず、ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物を濾過分離するので、別途粒子状物を分離するための砂濾過などの構成が不要で、構成を簡略化できるとともに、活性炭の破過や粒子状物の目詰まりなどが生じた場合には、例えば収容シートを捲り上げるようにして活性炭を処理槽外へ廃棄して再び新しい活性炭を充填すればよく、保守管理も容易で、廃棄した活性炭は例えば焼却処理によりダイオキシン類を分解してしまえばよく、廃棄する活性炭によるダイオキシンの漏洩も防止でき、簡単な構成で容易に、ダイオキシン類および粒子状物を含む排水を浄化処理できる。
【0007】
そして、本発明では、請求項1に記載の排水処理装置であって、前記流入手段および前記排出口は、前記排水の流過方向が略鉛直方向に沿う状態で配設され、前記収容シートは、一縁が前記処理槽に固定され他縁側が前記処理槽の開口面から槽外へ捲り返し可能に設けられた構成とすることが好ましい。
この発明では、収容シートの一縁を処理槽に固定し、他縁側を処理槽の開口面から槽外へ捲り返し可能に設けている。
このため、例えば収容シート上にある程度の厚さで活性炭を敷き詰めた状態で収容シートと活性炭とを順次積層させることで、廃棄する活性炭分を容易に系外に排出させて処理し新たな活性炭の充填も容易で、保守管理が容易にできる。
【0008】
本発明に記載の排水処理装置は、上方に開口面を開口しダイオキシン類および粒子状物を含む排水を貯溜可能な処理槽と、この処理槽に前記排水を流入する流入手段と、前記処理槽に設けられ貯留する排水を排出する排出口と、この処理槽内に前記開口面から前記処理槽外へ搬出可能に、前記流入手段から流入され前記排出口へ流過する前記排水の流過方向で複数並設された透水性を有する収容容器と、これら収容容器内に交換可能に充填され前記排水の流過方向で複数の積層状の活性炭層を構成する活性炭と、を具備したことを特徴とする。
この発明では、上方に開口面を開口する処理槽内に、透水性を有し活性炭を充填する収容容器を、開口面から処理槽外へ搬出可能で、流入手段から前記処理槽内へ流入し処理槽に設けられた排出口へ流通する排水の流過方向で複数並設し、排水の流過方向で複数の積層状となる活性炭層を構成させる。そして、流入手段から流入する排水は、活性炭層で、排水中に混入し排水中における全ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物が濾過され、廃液中に残留するダイオキシン類は活性炭にて吸着される。
このため、活性炭を単にダイオキシン類の吸着除去のために利用するのみならず、ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物を濾過分離するので、別途粒子状物を分離するための砂濾過などの構成が不要で、構成を簡略化できるとともに、活性炭の破過や粒子状物の目詰まりなどが生じた場合には、例えば収容容器を槽外へ運び出して収容容器内の活性炭を交換すればよく、保守管理も容易で、使用済みの廃棄する活性炭は例えば焼却処理によりダイオキシン類を分解してしまえばよく、廃棄する活性炭によるダイオキシンの漏洩も防止でき、簡単な構成で容易に、ダイオキシン類および粒子状物を含む排水を浄化処理できる。
【0009】
そして、本発明では、請求項3に記載の排水処理装置であって、前記流入手段および前記排出口は、前記排水の流過方向が略水平方向に沿う状態で配設され、前記収容容器は、前記開口面から槽外へ吊り下げ支持されて搬出可能に配設された構成とすることが好ましい。
この発明では、流入手段および排出口が排水の流過方向が略水平方向に沿う状態で配設された状態では、収容容器が略水平方向で並設される状態となり、処理槽の開口面から槽外へ吊り下げ支持にて搬出可能となる。
このため、簡単な構成で、活性炭の交換が容易となり、保守管理が容易にできる。
【0010】
また、本発明では、請求項3または請求項4に記載の排水処理装置であって、前記収容容器は、透水性シートにて袋状に形成された構成とすることが好ましい。
この発明では、収容容器を透水性シートにて袋状に形成している。
このため、活性炭を充填して収容容器を並設することにより排水10の流過方向で活性炭層を積層状に配置でき、かつ活性炭の交換が容易となる構成が容易に得られ、構成の簡略化や製造性の向上などが容易に得られる。
【0011】
さらに、本発明では、請求項1、請求項2および請求項5のいずれかに記載の排水処理装置であって、前記透水性シートは、麻布または合成樹脂製の網状物である構成とすることが好ましい。
この発明では、透水性シートとして、麻布または合成樹脂製の網状物を用いる。
このため、入手が容易で安価に活性炭層を積層状に配置でき、かつ活性炭の交換が容易となる構成が容易に得られ、構成の簡略化や製造性の向上、コストの低減などが容易に得られる。
【0012】
そして、本発明では、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の排水処理装置であって、前記活性炭層は、前記排水中の粒子状物が濾過されて前記排水が通水可能な前記粒子状物の凝集層を形成する粒径分布の活性炭にて構成されたことが好ましい。
この発明では、排水中の粒子状物が濾過されて前記排水が通水可能な前記粒子状物の凝集層を形成する粒径分布の活性炭にて活性炭層を構成している。
このため、ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物を活性炭層による濾過分離ととともに凝集層による濾過分離が得られ、高度にダイオキシン類および粒子状物を除去できる。
【0013】
また、本発明では、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の排水処理装置であって、前記各活性炭層は、それぞれ平均粒径が異なる活性炭にて構成されたことが好ましい。
この発明では、各活性炭層を構成する活性炭の平均粒径を異なる状態に構成している。
このため、活性炭層での目詰まりを抑制しつつダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物を各活性炭層で濾過分離でき、安定して高度にダイオキシン類および粒子状物を除去できる。
【0014】
さらに、本発明では、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の排水処理装置であって、前記活性炭層のいずれか1つは、1mm以上5mm以下の粒径を主体とする活性炭にて構成された大径層であり、前記活性炭層の他のいずれか1つは、0.1mm以上3mm以下の粒径を主体とする活性炭にて構成された小径層である構成とすることが好ましい。
この発明では、各活性炭層のうち、大径層となる活性炭層を構成する活性炭として1mm以上5mm以下の粒径を主体とする活性炭を用い、小径層となる活性炭層を構成する活性炭として0.1mm以上3mm以下の粒径を主体とする活性炭を用いる。
このため、例えば焼却炉の洗煙により生じる排水中など、ダイオキシン類が付着し1μm以上の比較的に径大の懸濁粒子やサブミクロン程度の比較的に径小の微粉粒子などを比較的に多く含む排水でも、活性炭層で目詰まりを抑制しつつ粒子状物を高度に安定して濾過分離でき、安定して高度にダイオキシン類および粒子状物を除去できる。特に、焼却炉の洗煙により生じる排水を対象とすることが好適である。
ここで、大径層の活性炭の粒径として、1mmより細かくなると、活性炭層における排水の流過方向での上流側の面近傍で粒子状物が凝集層を形成し易くなり、目詰まりが生じやすくなるおそれがある。一方、5mmより粗くなると、小径層で粒子状物の大半を濾過分離することとなり、小径層の負荷が増大して目詰まりが生じやすくなり、安定した浄化処理が得られなくなるおそれがある。このため、大径層として、1mm以上5mm以下の粒径を主体とする活性炭にて構成する。また、小径層の活性炭の粒径として、0.1mmより細かくなると、活性炭層における排水の流過方向での上流側の面近傍で粒子状物が凝集層を形成し易くなり、目詰まりが生じやすくなるおそれがある。一方、3mmより粗くなると、粒子状物を濾過分離できなくなるおそれがある。このため、小径層として、0.1mm以上3mm以下の粒径を主体とする活性炭にて構成する。
【0015】
そしてさらに、本発明では、請求項9に記載の排水処理装置であって、前記各活性炭層は、前記大径層と前記小径層とが交互に積層状に構成されたことが好ましい。
この発明では、大径層と小径層とが交互に積層する状態に活性炭層を積層状に構成する。
このため、大径層と小径層との濾過負荷が略均一化して安定して高度にダイオキシン類および粒子状物を除去できる。
【0016】
そして、本発明では、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の排水処理装置であって、前記処理槽内に配設され前記処理槽内の液面位置を検出する液面位置検出手段と、この液面位置検出手段にて前記処理槽内に流入された前記排水の液面が所定の液面位置に到達したことを検出するとその旨を報知する報知手段と、を具備した構成とすることが好ましい。
この発明では、処理槽内に配設した液面位置検出手段により、処理槽内に流入された排水の液面が所定の液面位置に到達したことを検出すると、報知手段にてその旨を報知する。
このため、例えば長期利用により目詰まりが生じるなどで排水が排出口から適切に排出されずに処理槽内に留まって水面位置が高くなるなどしても、管理者などに報知されることで、処理槽から排水がオーバーフローするなどの不都合がなく、安定して浄化処理できる。
【0017】
また、本発明では、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の排水処理装置であって、前記活性炭層は、略鉛直方向で積層する状態に構成され、前記流入手段は、前記排水を散水により前記処理槽内に流入させる構成とすることが好ましい。
この発明では、略鉛直方向で積層する状態で活性炭層を積層構築し、流入手段から排水を散水により処理槽内に流入させる。
このため、活性炭層における排水の流通方向での全面で処理できるとともに、例えば流入手段から流入された排水が活性炭層に落下する状態で衝突するような衝撃を低減でき、濾過分離した粒子状物による凝集層が形成されても、その凝集層が衝撃により破壊されず、凝集層による濾過効果も得られ、安定して高度に浄化処理できる。
【0018】
さらに、本発明では、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の排水処理装置であって、前記活性炭層は、略鉛直方向で積層する状態に構成され、前記流入手段からの前記排水の流入量と前記排出口からの前記排水の排出量とを、前記処理槽内に貯溜する前記排水の液面位置が前記活性炭層より上方に位置する状態に調整する流量調整手段を具備した構成とすることが好ましい。
この発明では、略鉛直方向で積層する状態で活性炭層を積層構築し、流量調整手段により、処理槽内に貯溜する排水の液面位置が活性炭層より上方に位置する状態に、流入手段からの排水の流入量と排出口からの排水の排出量とを調整する。
このため、流入する排水が活性炭層に落下する状態に衝突するような衝撃を低減でき、活性炭層における排水の流過方向での全面で略均一に排水が流過する状態が得られるとともに、濾過分離した粒子状物による凝集層が形成されても、その凝集層が衝撃により破壊されず、凝集層による濾過効果も得られ、安定して高度に浄化処理できる。
【0019】
本発明に記載の排水処理システムは、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の排水処理装置が、互いに前記流入手段が連通するとともに前記排出口が連通する並列状に複数連結されたことを特徴とする。
この発明では、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の排水処理装置を、互いに流入手段が連通するとともに排出口が連通する並列状に複数連結している。
このため、例えばいずれかの排水処理装置において、活性炭の交換などにて処理を停止させても、他の排水処理装置で浄化処理を継続でき、安定した排水の浄化処理が得られる。さらには、処理能力の向上による処理効率の向上や、排水の汚染状態や処理負荷に応じて、処理に利用する排水処理装置を選択的に切り替えて処理能力を変更することも容易にでき、効率よく浄化処理できる。
【0020】
本発明に記載の排水処理システムは、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の排水処理装置が、互いに前記流入手段および前記排出口が連通する直列状に複数連結されたことを特徴とする。
この発明では、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の排水処理装置を、互いに流入手段および排出口が連通する直列状に複数連結している。
このため、例えばいずれかの排水処理装置において活性炭が破過するなどの処理能力が低下しても、他の排水処理装置での浄化処理により高度に浄化処理できる。また、例えば排水処理装置の1つおきに流入手段および排出口が連通して排水が排水処理装置に流入せずにバイパスさせる流路を設けるなどにより、排水処理装置の活性炭の交換なども可能となり、バイパスする経路を設ける簡単な構成で安定した排水の浄化処理が容易に得られるとともに、直列する排水処理装置の数により処理能力を選択的に変更することも容易にでき、効率的な浄化処理もバイパスする経路を設ける簡単な構成で容易に得られる。
【0021】
本発明に記載の排水処理方法は、ダイオキシン類および粒状物を含む排水を浄化処理する排水処理方法であって、複数積層状に配設された透水性を有する収容シート間に活性炭が充填されて積層状に複数構成された活性炭層に、前記排水を流通させて前記粒子状物を前記活性炭層で濾過させる処理工程と、この処理工程により前記排水が前記活性炭層を流通する流通抵抗が増大すると、前記排水の流通方向における上流側に位置する前記活性炭層を構成する前記活性炭を前記収容シートにて捲き取る状態に系外へ排出する排出工程と、この排出工程で排出した活性炭を焼却する焼却処理工程と、を実施することを特徴とする。
この発明では、処理工程で、複数積層状に配設した透水性を有する収容シート間に活性炭が充填されて積層状に複数構成された活性炭層に排水を流通させて微粒子状物を活性炭層で濾過する。そして、処理工程で排水が活性炭層を流通する流通抵抗が増大した際には、排出工程で排水の流通方向における上流側に位置する活性炭層を構成する活性炭を、収容シートを巻き取るようにして系外へ排出させる。この排出工程で排出した活性炭は、焼却処理工程で焼却処理する。
このため、活性炭を単にダイオキシン類の吸着除去のために利用するのみならず、ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物を濾過分離するので、別途粒子状物を分離するための砂濾過などの構成が不要で、構成を簡略化できるとともに、活性炭の破過や粒子状物の目詰まりなどにより流通抵抗が増大した場合には、排出工程で収容シートを捲り上げるようにして活性炭を系外へ廃棄して再び新しい活性炭を充填すればよく、保守管理も容易で、廃棄した活性炭は焼却処理工程で焼却処理してダイオキシン類を分解してしまえばよく、廃棄する活性炭によるダイオキシンの漏洩も防止でき、簡単な構成で容易に、ダイオキシン類および粒子状物を含む排水を浄化処理できる。
【0022】
本発明に記載の排水処理方法は、ダイオキシン類および粒状物を含む排水を浄化処理する排水処理方法であって、透水性を有し内部に活性炭が充填されて活性炭層を構成する収容容器が複数並設されて積層状となる複数の活性炭層に、前記排水を流通させて前記粒子状物を前記活性炭層で濾過させる処理工程と、この処理工程により前記排水が前記活性炭層を流通する流通抵抗が増大すると、前記排水の流通方向における上流側に位置する前記活性炭層を構成する前記収容容器を系外へ搬出して充填された活性炭を排出する排出工程と、この排出工程で排出した前記活性炭を焼却する焼却処理工程と、を実施することを特徴とする。
この発明では、処理工程で、透水性を有し内部に活性炭が充填されて活性炭層を構成する収容容器が複数並設されて積層状となる複数の活性炭層に排水を流通させて粒子状物を活性炭層で濾過する。そして、処理工程で排水が活性炭層を流通する流通抵抗が増大した際には、排出工程で排水の流通方向における上流側に位置する活性炭層を構成する収容容器を系外へ搬出して充填された活性炭を排出する。この排出工程で排出した活性炭は、焼却処理工程で焼却処理する。
このため、活性炭を単にダイオキシン類の吸着除去のために利用するのみならず、ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物を濾過分離するので、別途粒子状物を分離するための砂濾過などの構成が不要で、構成を簡略化できるとともに、活性炭の破過や粒子状物の目詰まりなどにより流通抵抗が増大した場合には、排出工程で例収容容器を系外へ運び出して収容容器内の活性炭を交換すればよく、保守管理も容易で、使用済みの廃棄する活性炭は焼却処理工程で焼却処理してダイオキシン類を分解してしまえばよく、廃棄する活性炭によるダイオキシンの漏洩も防止でき、簡単な構成で容易に、ダイオキシン類および粒子状物を含む排水を浄化処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
なお、本実施形態において、例えば焼却炉の洗煙設備から排出される排水を処理する排水処理装置が連設された排水処理システムについて説明するが、システム構成に限らず、排水処理装置の単独利用形態としてもよい。そして、システム構成として、排水処理装置を2直列2並列で連結する構成を例示するが、単なる並列接続あるいは単なる直列接続構成でもよく、連結する排水処理装置の数は適宜設計される。また、排水処理装置として、略鉛直方向で排水を流通させて浄化処理する構成を例示するが、例えば略水平方向で流通させて浄化処理する構成とするなどしてもよい。
【0024】
〔排水処理システムの構成〕
図1は、本発明における排水処理システムの概略構成を示すブロック図である。
図1において、100は排水処理システムで、この排水処理システム100は、例えば焼却炉の洗煙設備から排出される排水を処理するシステムである。この排水処理システム100は、排水が流通する原水管110に接続されている。
そして、原水管110には、迂回手段200が接続されている。この迂回手段200は、一端が原水管110に連通して接続し排水が流通可能な迂回バルブ211を有した迂回管210を有している。この迂回管210の他端には、迂回管210を流通した排水が流入され貯溜する含油ピット220が接続されている。この含油ピット220には、各種排水が流入可能となっている。そして、含油ピット220には、貯溜する排水を別途処理する図示しない処理施設や、これら処理施設で処理するために貯溜するタンクなどへ流通させる流出管230が接続されている。
【0025】
また、原水管110に接続する排水処理システム100は、分岐管120を備えている。分岐管120は、原水管110に接続される側と反対側となる下流側が分岐する。そして、分岐管120の下流側の分岐部分には、それぞれ分岐バルブ121が設けられている。これら分岐管120の下流側の各端部には、分岐管120を流通する排水が流入される排水処理装置300がそれぞれ並列状に接続されている。また、これら並列状に接続されている各排水処理装置300には、これら排水処理装置300に貯溜する排水を槽外へ流出する連結バルブ131を備えた連結管130がそれぞれ接続されている。さらに、これら連結管130の端部には、これら連結管130を流通する排水が流入される排水処理装置300がそれぞれ直列状に接続されている。そして、これら直列状に接続する下流側の排水処理装置300は、貯溜する排水を槽外に流出する集合管140が接続されている。集合管140は、排水処理装置300に接続する上流側は複数に分岐する状態で下流側が1本に連結されている。
さらに、排水処理システム100には、分岐管120の下流側の分岐する端部近傍と、連結管130との間に接続され、分岐管120を流通する排水が直列状に接続し上流側に位置する排水処理装置300へ流入することなく、下流側の排水処理装置300へ流入させる上流側バイパス管150がそれぞれ設けられている。各上流側バイパス管150には、上流バイパスバルブ151がそれぞれ設けられている。また、排水処理システム100には、連結管130と、集合管140の分岐する上流側の端部近傍との間に接続されるとともに上流側バイパス管150に接続され、上流側の排水処理装置300から流出する排水や上流側バイパス管150を流通する排水を、下流側の排水処理装置300へ流入させずに集合管140に流通させる下流側バイパス管160が設けられている。各下流側バイパス管160には、下流バイパスバルブ161がそれぞれ設けられている。
なお、排水処理システム100における各バルブは、例えば電磁弁などのように、別途設けられ流量調整手段を構成する図示しない制御装置にて開閉される。なお、手動により開閉される構成としてもよい。
【0026】
また、集合管140の下流側の端部には例えば雨水ピット410が接続され、排水処理システム100で処理された排水を雨水ピット410で雨水とともに貯溜する。
この雨水ピット410には、処理水管420が接続されている。そして、雨水ピット410に貯溜された排水は、処理水管420を介して、例えば汚水処理施設にて別途処理されて河川などに放流されたり、冷却水などに利用されたりする。なお、冷却水として利用される際には、海水などと混合して利用するなどしてもよい。
【0027】
〔排水処理システムの構成〕
次に、上記排水処理システム100を構成する排水処理装置の構成を、図面を参照して詳細に説明する。
図2は、排水処理システムを構成する排水処理装置の概略構成を示す断面図である。図3は、排水処理装置における活性炭層の構成を概略的に示す概念図である。
【0028】
排水処理装置300は、図2に示すように、上面に開口面311を有した略箱状の処理槽310を備えている。この処理槽310は、例えば、1辺が約5mで高さが約2mの略箱状に構成されている。
そして、処理槽310の上部には、流入口312が開口形成されている。この流入口312には、分岐管120の下流側の端部が接続される流入手段としての散水手段320が接続されている。この散水手段320は、一端側が分岐管120に接続され、他端側が軸方向を水平方向に略沿う状態で略平行に配列された複数の散水管321に分岐されている。これら散水管321は周面における処理槽310の底面に対向する面に複数の散水孔322が設けられ、分岐管120を流通する排水10が処理槽310内に散水される。
さらに、散水手段320には、液面位置検出手段としての図示しない流量計が設けられている。この流量計は、散水手段320の分岐管120に接続する端部側に設けられ、分岐管120から処理槽310内へ流入させる排水10の流量を検出する。この流量計は、制御装置に接続され、検出した排水10の流量に関する検出信号を制御装置へ出力する。
【0029】
また、処理槽310の底部には、いわゆるグレーチングである格子状やすのこ状の底上げ底部330が配設されている。この底上げ底部330は、処理槽310の底面との間に約0.2m程度の隙間である集水室331を区画形成する状態で設けられている。この底上げ底部330の上面には、図示しない透水シートが設けられている。そして、処理槽310の底部には、集水室331に臨んで排出口313が開口形成されている。この排出口313には連結管130や集合管140が接続され、処理槽310内に貯溜する排水10を槽外へ流出させる。
さらに、処理槽310内には、底上げ底部330の上面から平面方向が鉛直方向に略沿い、かつ流入口312に対向する状態に仕切板340が設けられている。この仕切板340は、処理槽310内における底上げ底部330の上方に、処理室341と、集水室331に連通するフロー室342とを区画形成する。この仕切板340は、処理槽310の壁面高さより若干低く形成され、処理室341から仕切板340の上端からフロー室342へ排水10がオーバーフロー可能になっている。
【0030】
そして、処理槽310には、例えば図3に示すように、処理室341内に配設される複数の収容シート350が積層状に設けられている。
収容シート350は、例えば麻布や合成樹脂製の網状物である樹脂ネットで、透水性を有する可撓性のシートである。そして、収容シート350は、一縁が処理槽310における散水管321の軸方向に対して交差する方向で対向する一方の壁面で処理室341に臨む壁面位置に固定されて他縁が自由端となり、一縁側と反対側の縁に設けられた図示しない把手部を散水管321の軸方向に対して交差する方向となる固定端でなる一縁側へ1枚ずつ捲り返し可能となっている。
そして、収容シート350上には、収容シート350間に介在する状態に活性炭が敷き詰められ、収容シート350および活性炭による活性炭層360が交互に積層する状態に、処理室341内に略鉛直方向で活性炭層360が積層形成される。なお、この図3は、説明の都合上、活性炭層360間に隙間を設けた状態で示すが、実際は隙間なく活性炭が処理室341内に敷き詰められて充填される。
【0031】
各活性炭層360を構成する活性炭としては、各種原料から形成されたいずれのものが利用できる。なお、木炭などの粉砕物も対象とすることができる。
そして、活性炭は、排水10中に混入するダストなどの粒子状物を活性炭層360がフィルタとして機能して濾過分離できる粒径である0.1mm以上の平均粒径、好ましくは0.5mm以上の平均粒径のものが用いられる。ここで、活性炭の平均粒径が0.1mmより細かくなると、1つの活性炭層360、特に最上の活性炭層360での粒子状物の濾過効率が高くなり、最上の活性炭層360での目詰まりが急激に進行し、安定した排水処理ができなくなるおそれがある。一方、活性炭の平均粒径が5mmを越えると偏流の発生や濾過機能の低下などという不都合が生じるおそれがある。このことから、好ましくは0.5mm以上4mm以下、より好ましくは1mm以上3mm以下の平均粒径のものが用いられる。
また、各活性炭層360の活性炭は、同一の粒径のものでもよいが、好ましくは、異なる粒度分布が異なるようにするとよい。例えば、活性炭が比較的に粗い層および活性炭が比較的に細かい層が、最上の層から順次繰り返し形成されるように構成するなどしてもよい。
【0032】
また、フロー室342は、処理槽310の対向する壁面と例えば0.3m程度の幅寸法で区画形成され、処理室341を流通して集水室331に流入した排水10が、処理室341に流入した排水10の水頭差により流入可能となっている。
そして、処理槽310には、フロー室342に臨んで、液面位置検出手段としての図示しないレベルセンサが設けられている。このレベルセンサは、フロー室342に流入した排水10の液面位置を検出し、検出した液面位置に関する検出信号を制御装置へ出力する。
さらに、処理槽310には、所定の水頭差となる高さ位置に、フロー室342内の排水10を槽外へ排出するオーバーフロー管370が設けられている。このオーバーフロー管370は、オーバーフローした排水10を、例えば迂回手段200の含油ピット220へ流入させる。なお、上流側に位置する排水処理装置300のオーバーフロー管370の場合には、下流側の排水処理装置300へ流入させるようにするなどしてもよい。
【0033】
〔排水処理システムの処理動作〕
次に、上記排水処理システム100での排水10の処理動作について説明する。
なお、制御装置による自動制御にて排水10を処理する構成を例示するが、手動によりバルブを適宜開閉させて処理する構成としてもよい。
【0034】
まず、制御装置による制御により、排水10を浄化処理する処理工程が実施される。
すなわち、制御装置は、排水処理システム100の分岐管120の分岐バルブ121や連結管130の連結バルブ131を開くとともに、排水10を原水管110から分岐管120へ流入させる。そして、分岐管120を流通する排水10は、分岐されて排水処理装置300へ流入される。この排水処理装置300に流入した排水10は、分岐管120に接続する散水手段320に流入し散水管321から処理室341内に流入、例えば散水される。
散水管321から散水された排水10は、積層する活性炭層360上に降り注がれ、活性炭層360を流通して、集水室331に集水される。この活性炭層360を排水10が流過する際、活性炭層360に混入する粒子状物が活性炭層360に濾過されるとともに、排水10中に熔解する一部のダイオキシン類が活性炭に吸着除去される。この濾過および吸着の浄化処理では、洗煙により生じた排水10中のダイオキシン類は、大半が粒子状物に付着し、残りの少量のダイオキシン類は溶解している。このことにより、活性炭層360は、粒度調整された活性炭にて構成されていることから、排水10中の大部分のダイオキシン類が付着する粒子状物を効率よく濾過分離する。
そして、集水室331に集水された排水10は、排出口313から連結管130を介して下流側の排水処理装置300へ流入され、上述したように、粒子状物が濾過されるとともにダイオキシン類が吸着される。そして、下流側の排水処理装置300で浄化処理され集水室331に集水された排水10は、排出口313から集合管140を介して雨水ピット410に流入される。
【0035】
また、ある程度の浄化処理が進行すると、活性炭層360に捕捉した粒子状物がいわゆるケーキ層となる凝集層を形成する。粒子状物による凝集層の形成により、順次流入され活性炭層360を流過する排水10は、活性炭層360のみならず凝集層の流過の際にも排水10中の粒子状物が濾過され、ダイオキシン類が付着する排水10中の粒子状物がさらに効率よく濾過分離される。さらに、凝集層の形成により排水10の通水抵抗が増大すると、例えば図2に示すように、活性炭層360の上面より上方に流入した排水10の水面が位置する状態となり、活性炭層360に形成される凝集層は、散水される排水10の衝突による破壊が抑制され、凝集層が安定して形成される。
そして、さらに浄化処理が進行して凝集層の厚さ寸法が次第に厚くなると、排水10の通水抵抗が増大し、例えば図2に示すように、処理室341とフロー室342との水位に差が生じる。そして、排水10の通水抵抗がある程度増大すると、フロー室342の水位がさらに低くなる状態となり、レベルセンサが所定の水位まで低下したことを検出する。そして、このレベルセンサから出力される検出信号を制御装置が認識すると、制御装置は、例えば作業者や管理者などに報知手段であるブザーや警告灯などを動作させて報知したり、報知手段である作業者や管理者が利用する端末装置へ電子メールにて報知したりする。
また、制御装置は、報知の対象となった排水処理装置300に接続する分岐管120の分岐バルブ121、あるいは連結管130の連結バルブ131を閉じるとともに、並設関係となる上流側バイパス管150の上流バイパスバルブ151あるいは下流側バイパス管160の下流バイパスバルブ161を開き、報知の対象となった排水処理装置300へ排水10が流入せず、上流側バイパス管150あるいは下流側バイパス管160を介して下流側の排水処理装置300や集合管140へ流過させ、排水10の処理を継続させる。
【0036】
一方、報知を認識した作業者や管理者は、排出工程の実施を開始する。
すなわち、対象の排水処理装置300における散水手段320を取り外し、最上の活性炭層360を構成する活性炭が敷き詰められた収容シート350の把持部を、吊り下げ装置などにより引っ掛けるようにして、図4に示すように、収容シート350の固定端側へ開口面311から槽外に捲り返すようにして活性炭を槽外へ搬出する。この活性炭の搬出は、例えば運搬車両などへ排出されるように、搬送車両を処理槽310に隣接して停車させておけばよい。この活性炭の排出工程では、活性炭の吸着能が破過していない処理段階では、最上の活性炭層360に対応する収容シート350のみ、あるいは最上から所定の段数までの活性炭層360に対応する収容シート350までを順次捲り返して活性炭を排出させればよい。
そして、活性炭を排出した収容シート350は、再び処理室341に順次敷き詰めるようにして新しい活性炭を敷き詰め、新たな活性炭層360を形成すればよい。
【0037】
また、排出工程で排出した活性炭は、焼却処理工程で処理する。
すなわち、活性炭は、場合により適宜水切りあるいは乾燥させ、焼却装置で焼却処理する。この焼却処理の際、ダイオキシン類が十分に分解される温度にて焼却される。すなわち、活性炭が焼失して灰分のみとなる温度で焼成することで、ダイオキシン類は十分に分解される。
【0038】
〔排水処理システムの作用効果〕
上述したように、上記実施の形態では、上方に開口面311を開口する処理槽310内に、透水性を有する収容シート350を、開口面311から処理槽310外へ搬出可能で、散水手段320から処理槽310内へ流入し処理槽310に設けられた排出口313へ流通する排水10の流過方向で複数積層状に設ける。さらに、収容シート350間に活性炭を充填して排水10の流過方向で複数の積層状となる活性炭層360を構成させる。そして、散水手段320から流入する排水10は、活性炭層360で、排水10中に混入し排水10中における全ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物が濾過され、排水10中に残留する溶解したダイオキシン類は活性炭にて吸着される。
このため、活性炭を単にダイオキシン類の吸着除去のために利用するのみならず、ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物を濾過分離するので、別途粒子状物を分離するための砂濾過などの構成が不要で、構成を簡略化できる。さらには、活性炭の破過や粒子状物の目詰まりなどが生じた場合、例えば収容シート350を捲り上げるようにして活性炭を処理槽310外へ廃棄して再び新しい活性炭を充填する排出工程を実施すればよく、保守管理も容易で、廃棄した活性炭は例えば焼却処理工程で焼却処理により焼却して捕捉したダイオキシン類とともに焼却・分解してしまえばよく、廃棄する活性炭によるダイオキシン類の漏洩も防止でき、簡単な構成で容易に、ダイオキシン類および粒子状物を含む排水10を浄化処理できる。
【0039】
そして、収容シート350の一縁を処理槽310に固定し、他縁側を処理槽310の開口面から槽外へ捲り返し可能に設けている。
このため、例えば収容シート350上にある程度の厚さで活性炭を敷き詰めた状態で収容シート350と活性炭とを順次積層させることで、廃棄する活性炭分を容易に槽外へ排出させ、新たな活性炭の充填も収容シート350を再び処理室341に敷き直して活性炭を敷き詰めればよく、簡単な構成で作業が容易にでき、保守管理性を向上できる。
【0040】
また、収容シート350として麻布または合成樹脂製の網状物を用いることにより、入手が容易で安価に活性炭層360を積層状に配置でき、かつ活性炭の交換が容易となる構成が容易に得られる。
したがって、構成の簡略化や製造性の向上、コストの低減などが容易に得られる。
【0041】
そして、活性炭として、排水10中の粒子状物が濾過されて排水10が通水可能な粒子状物の凝集層を形成する粒径分布のものを用いて活性炭層360を構成している。
このため、ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物を活性炭層360による濾過分離ととともに凝集層による濾過分離も得られ、高度にダイオキシン類および粒子状物を除去できる。
【0042】
さらに、各活性炭層360を構成する活性炭の平均粒径を異なる状態、すなわち、大径層となる比較的に粗い層や小径層となる比較的に細かい層を形成する。
このため、活性炭層360での目詰まりを抑制しつつ、ダイオキシン類の大部分が付着する粒子状物を各活性炭層360で濾過分離でき、安定して高度にダイオキシン類および粒子状物を除去できる。
【0043】
また、各活性炭層360のうち、大径層となる比較的に粗い層の活性炭層360を構成する活性炭として1mm以上4mm以下の粒径を主体とする活性炭を用い、小径層となる比較的に細かい層の活性炭層360を構成する活性炭として0.1mm以上3mm以下の範囲で分布を持つ粒径を主体とする活性炭を用いる。
このため、例えば焼却炉の洗煙により生じる排水10中など、ダイオキシン類が付着し1μm以上の比較的に径大の懸濁粒子やサブミクロン程度の比較的に径小の微粉粒子などを比較的に多く含む排水10でも、活性炭層360で目詰まりを抑制しつつ粒子状物を高度に安定して濾過分離でき、安定して高度にダイオキシン類および粒子状物を除去できる。特に、焼却炉の洗煙により生じる排水10では、凝集処理や砂濾過処理、吸着処理などの多段処理を必要とせずに簡単な構成で安定して高度に浄化処理できる構成の保守管理や運転が容易にでき、好適である。
【0044】
さらに、大径層と小径層とが交互に積層する状態に活性炭層360を積層状に構成する。
このため、大径層と小径層との濾過負荷が略均一化し、より安定して高度にダイオキシン類および粒子状物を除去できる。
【0045】
また、処理槽310内に配設したレベルセンサにより検出した排水10の液面位置に基づいて制御装置が処理室341内に流入された排水10が所定の液面位置に到達したことを判断し、ブザーや警告灯、電子メールなどにて作業者や管理者などに報知する。
このため、例えば長期利用により目詰まりが生じるなどで排水10が排出口313から適切に排出されずに処理槽310内に留まって水面位置が高くなるなどしても、管理者などに報知されることで、処理槽310から排水10がオーバーフローするなどの不都合がなく、安定して浄化処理できる。
さらに、制御装置にて各バルブを適宜開閉させたり、流量計に基づいて流量調整したりするなどにて、対象となる排水処理装置300へ排水10が流入しない、あるいは流入量を少なくするようにする。
このため、より確実にオーバーフローなどを生じることなく、より安定して浄化処理でき、また制御装置による自動制御によりより容易な浄化処理の運転が得られる。
【0046】
そして、上方に開放する略箱状の処理槽310に略鉛直方向で積層する状態で複数の活性炭層360を積層状に構築し、散水手段320から排水10を散水により処理槽310内に流入させている。
このため、活性炭層360における排水10の流通方向での略全面で浄化処理できるとともに、例えば散水手段320から流入された排水10が活性炭層360に落下する状態で衝突するような衝撃を低減でき、濾過分離した粒子状物による凝集層が形成されても、その凝集層が衝撃により破壊されず、凝集層による濾過効果も得られ、安定して高度に浄化処理できる。
【0047】
また、上方に開放する略箱状の処理槽310に略鉛直方向で積層する状態で活性炭層360を積層構築し、レベルセンサにて検出した液面位置に基づいて判断した制御装置の制御により、処理槽310内に貯溜する排水10の液面位置が活性炭層360より上方に位置する状態に、散水手段320からの排水10の流入量と排出口313からの排水10の排出量とを調整する。例えば、各バルブの開度などを調整したり原水管110から供給する排水10の流量を調整したりするなどして、排水10の流入量と流出量とを調整させる。
このことにより、流入する排水10が活性炭層360に落下する状態に衝突するような衝撃を低減でき、活性炭層360における排水10の流過方向での全面で略均一に排水10が流過する状態が得られるとともに、濾過分離した粒子状物による凝集層が形成されても、その凝集層が衝撃により破壊されず、凝集層による濾過効果も得られ、安定して高度に浄化処理できる。特に、凝集層の形成当初では通水抵抗が比較的に低く活性炭層360が液面から露出する状態となり得るので、このような場合に有効である。
【0048】
そして、排水処理装置300を、互いに散水手段320が連通するとともに排出口313が連通する並列状に複数連結している。
このため、例えばいずれかの排水処理装置300において、活性炭の交換などにて処理を停止させる場合でも、他の排水処理装置300で浄化処理を継続でき、安定した排水10の浄化処理が得られる。さらには、処理能力の向上による処理効率の向上や、排水10の汚染状態や排水処理装置300の処理負荷に応じて、処理に利用する排水処理装置300を選択的に切り替えて処理能力を変更することも容易にでき、効率よく浄化処理できる。
さらに、排水処理装置300を、互いに散水手段320および排出口313が連通する直列状に複数連結している。
このため、例えばいずれかの排水処理装置300において活性炭が破過したり、目詰まりが生じたりするなど、処理能力が低下しても、他の排水処理装置300での浄化処理により高度に浄化処理できる。
また、例えば排水処理装置300の1つおきに散水手段320および排出口313が連通して排水10が排水処理装置300に流入せずにバイパスさせる流路である上流側バイパス管150や下流側バイパス管160を設けている。
このため、排水処理装置300の活性炭の交換など、排水10を流入させずにバイパスさせる上流側バイパス管150や下流側バイパス管160を設ける簡単な構成で安定した排水10の浄化処理が容易に得られるとともに、直列する排水処理装置300の数により処理能力を選択的に変更することも容易にでき、効率的な浄化処理もバイパスする経路を設ける簡単な構成で容易に得られる。
【0049】
〔実施の形態の変形例〕
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
【0050】
すなわち、本発明の排水処理装置としては、複数を連結したシステム構成に限らず、1槽のみの単独構成としたり、1槽内に処理室341が複数区画されて、実質的に複数の排水処理装置300が連結された構成としたりするなどしてもよい。また、システム構成として、4槽を例示したが、4槽に限らず2槽以上の複数槽を連結することができる。さらに、システム構成として、並列および直列構成に限らず、並列のみあるいは直列のみとしてもよい。
また、上面を開放する略箱状の処理槽310で処理して説明したが、例えば浄化処理の際には、上面が蓋体などにて閉塞され、収容シート350を捲り返すなどの活性炭の搬出の際には蓋体を取り外して上面を開放できる構成であればよい。
【0051】
また、シート状の収容シート350を積層する状態に利用し間に活性炭を充填して活性炭層360を形成させ、適宜捲り返すようにして活性炭を排出して交換する構成を例示したが、例えば収容シート350を袋状に形成して収容容器とし、この収容容器内に活性炭を充填する。そして、活性炭を収容した収容容器を、排水10の流過方向で並設する状態に積層させる。具体的には、上記実施の形態のように、上方から排水10を流入させて処理槽310の底部から流出させることで流過方向が略鉛直方向となる構成では、収容容器を積み上げるように積層させる。また、流過方向が略水平方向となる場合では、収容容器を吊り下げる状態として並設する状態とすればよい。なお、吊り下げ支持するような場合には、活性炭が収容容器の下部に偏らないように、格子や枠体を用いた構成とすることが好ましい。そして、袋状とすることで収容容器ごと処理槽310から吊り上げて搬出すればよく、より作業性が向上できる。さらには、麻袋など焼却できる袋構成とすることで、収容容器ごと焼却処理することも容易で、より作業性を向上できる。
さらに、収容シート350を吊り下げ装置などにて捲り返して説明したが、あらかじめ把持部が設けられた収容シート350の縁を、処理槽310に配設したガイドレールを走行する滑車などの移動体などにそれぞれ保持し、対象となる排水処理装置300の移動体をガイドレールで移動させて自動的に捲り返して活性炭を排出させてもよい。
また、底上げ底部330の上面に透水シートを設けて説明したが、例えば図3に示すように、底上げ底部330の直上に収容シート350を敷く場合には、透水シートを用いなくてもよい。
【0052】
そして、排水10の流入としては、散水手段320を用いず、単に流入口312から流入させる構成とするなどしてもよい。さらには、散水する構成としては、複数の散水管321を用いる構成に限らず、いわゆるスプリンクラーのように散水する構成などとしてもよい。
【0053】
排水10の浄化処理の際、制御装置にて各バルブの開閉状態や原水管110からの流量調整などを実施し、例えば活性炭層360が常時流入された排水10の水面下に浸された状態に流量制御してもよい。この構成により、処理当初から活性炭に流入する排水10が衝突することが抑制され、初期段階での凝集層の形成により、より高度な浄化処理が得られる。
さらに、流入する排水10のダイオキシン濃度や粒子状物の含有率などに基づいて、流量調整するなどしてもよい。このことにより、安定した浄化処理が得られる。
【実施例】
【0054】
次に、実施例および参考例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
なお、本発明は、これらの実施例などの記載内容に何ら制限されるものではない。
【0055】
〔実施例1,2、参考例1〕
上記排水処理装置300を1槽のみの構成で、焼却炉の洗煙装置から排出された排水10の浄化処理を実施して処理状況を比較検討した。
以下に、その処理状況の比較検討について、説明する。
【0056】
(処理条件)
排水処理装置300として、表1に示す条件で、粒径の異なる活性炭を利用した。すなわち、実施例1として平均粒径が1.5mmのもの、実施例2として平均粒径が0.8mmの小径層と平均粒径が1.5mmの大径層との組み合わせ、参考例1として平均粒径が1.5mmのものを用いた。なお、充填量としては、12.5m3で統一した。
また、排水10は、表1に示す性状のものを用い、表1に示す条件で流入させた。そして、処理後の処理水におけるダイオキシン類の濃度、浮遊物質(SS:suspended solid)の量、および、濁度を測定した。なお、ダイオキシン類の濃度は、JIS K 0312に準拠して、JEOL社製の商品名がJMS−700を用いて測定した。浮遊物質は、JIS K 0120に準拠して、孔径1μmのガラス繊維濾紙にて濾過質量を用いて測定した。濁度は、JIS K 0400−9−10に準拠して、HACH社製の商品名が2100Pの検査装置を用いて測定した。その結果を、表1に示す。
【0057】
(結果)
【表1】

【0058】
この表1に示す結果から、接触時間の変化に対しダイオキシンの除去率は一次式で予測される効果をはるかに超える。すなわち、参考例1に対し、実施例2は5倍の接触時間である。参考例1の接触時間で出口のダイオキシンは入口の約1/2である。接触時間が5倍では1/25、すなわち1/64が一次予測であるが、1/1000まで低下できている。また、実施例1では、1/256の予測に対して、1/1500000まで低下できている。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば焼却炉における洗煙処理により生じた排水など、ダイオキシン類および粒子状物を含む各種排水を、活性炭を用いて浄化処理する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明における排水処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】前記実施の形態における排水処理システムを構成する排水処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】前記実施の形態における排水処理装置の活性炭層の構成を概略的に示す概念図である。
【図4】前記実施の形態における活性炭の排出状況を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
10…排水
100…排水処理システム
300…排水処理装置
310…処理槽
311…開口面
313…排出口
320…流入手段としての散水手段
350…収容シート
360…大径層あるいは小径層となる活性炭層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口面を開口しダイオキシン類および粒子状物を含む排水を貯溜可能な処理槽と、
この処理槽に前記排水を流入する流入手段と、
前記処理槽に設けられ貯溜する排水を排出する排出口と、
この処理槽内に前記開口面から前記処理槽外へ搬出可能に、前記流入手段から流入され前記排出口へ流過する前記排水の流過方向で複数積層状に配設された透水性を有する収容シートと、
これら収容シート間に充填され前記排水の流過方向で複数の積層状の活性炭層を構成する活性炭と、
を具備したことを特徴とした排水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理装置であって、
前記流入手段および前記排出口は、前記排水の流過方向が略鉛直方向に沿う状態で配設され、
前記収容シートは、一縁が前記処理槽に固定され他縁側が前記処理槽の開口面から槽外へ捲り返し可能に設けられた
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項3】
上方に開口面を開口しダイオキシン類および粒子状物を含む排水を貯溜可能な処理槽と、
この処理槽に前記排水を流入する流入手段と、
前記処理槽に設けられ貯留する排水を排出する排出口と、
この処理槽内に前記開口面から前記処理槽外へ搬出可能に、前記流入手段から流入され前記排出口へ流過する前記排水の流過方向で複数並設された透水性を有する収容容器と、
これら収容容器内に交換可能に充填され前記排水の流過方向で複数の積層状の活性炭層を構成する活性炭と、
を具備したことを特徴とした排水処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排水処理装置であって、
前記流入手段および前記排出口は、前記排水の流過方向が略水平方向に沿う状態で配設され、
前記収容容器は、前記開口面から槽外へ吊り下げ支持されて搬出可能に配設された
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の排水処理装置であって、
前記収容容器は、透水性シートにて袋状に形成された
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項6】
請求項1、請求項2および請求項5のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記透水性シートは、麻布または合成樹脂製の網状物である
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記活性炭層は、前記排水中の粒子状物が濾過されて前記排水が通水可能な前記粒子状物の凝集層を形成する粒径分布の活性炭にて構成された
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記各活性炭層は、それぞれ平均粒径が異なる活性炭にて構成された
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記活性炭層のいずれか1つは、1mm以上5mm以下の粒径を主体とする活性炭にて構成された大径層であり、
前記活性炭層の他のいずれか1つは、0.1mm以上3mm以下の粒径を主体とする活性炭にて構成された小径層である
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の排水処理装置であって、
前記各活性炭層は、前記大径層と前記小径層とが交互に積層状に構成された
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記処理槽内に配設され前記処理槽内の液面位置を検出する液面位置検出手段と、
この液面位置検出手段にて前記処理槽内に流入された前記排水の液面が所定の液面位置に到達したことを検出するとその旨を報知する報知手段と、を具備した
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記活性炭層は、略鉛直方向で積層する状態に構成され、
前記流入手段は、前記排水を散水により前記処理槽内に流入させる
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記活性炭層は、略鉛直方向で積層する状態に構成され、
前記流入手段からの前記排水の流入量と前記排出口からの前記排水の排出量とを、前記処理槽内に貯溜する前記排水の液面位置が前記活性炭層より上方に位置する状態に調整する流量調整手段を具備した
ことを特徴とした排水処理装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の排水処理装置が、互いに前記流入手段が連通するとともに前記排出口が連通する並列状に複数連結された
ことを特徴とした排水処理システム。
【請求項15】
請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の排水処理装置が、互いに前記流入手段および前記排出口が連通する直列状に複数連結された
ことを特徴とした排水処理システム。
【請求項16】
ダイオキシン類および粒状物を含む排水を浄化処理する排水処理方法であって、
複数積層状に配設された透水性を有する収容シート間に活性炭が充填されて積層状に複数構成された活性炭層に、前記排水を流通させて前記粒子状物を前記活性炭層で濾過させる処理工程と、
この処理工程により前記排水が前記活性炭層を流通する流通抵抗が増大すると、前記排水の流通方向における上流側に位置する前記活性炭層を構成する前記活性炭を前記収容シートにて捲き取る状態に系外へ排出する排出工程と、
この排出工程で排出した活性炭を焼却する焼却処理工程と、を実施する
ことを特徴とする排水処理方法。
【請求項17】
ダイオキシン類および粒状物を含む排水を浄化処理する排水処理方法であって、
透水性を有し内部に活性炭が充填されて活性炭層を構成する収容容器が複数並設されて積層状となる複数の活性炭層に、前記排水を流通させて前記粒子状物を前記活性炭層で濾過させる処理工程と、
この処理工程により前記排水が前記活性炭層を流通する流通抵抗が増大すると、前記排水の流通方向における上流側に位置する前記活性炭層を構成する前記収容容器を系外へ搬出して充填された活性炭を排出する排出工程と、
この排出工程で排出した前記活性炭を焼却する焼却処理工程と、を実施する
ことを特徴とする排水処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−679(P2008−679A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172369(P2006−172369)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】