説明

排水溝ユニット

【課題】前壁部及び後壁部を備えた水路部と、水路部に着脱可能に取付けられるカバー部よりなる鋼製の排水溝ユニットにおいて、自動車が路面を外れてカバー部上に乗り上がっても跳ね上がったり、ガタ付いたりすることがないようにする。
【解決手段】水路部2には前部に受金具4を固着すると共に、後部に切欠き凹溝5を備えた受部6を屈曲形成する。カバー部3には脚部3dを形成すると共に、脚部端に下向きに傾斜する突部6を形成し、後部に切欠き凹溝5に嵌合可能な係合片8を取付ける。カバー部3を受金具4及び受部6上に載置して取付けたとき、脚部3dが水路部底に着床するとともに、突部6が受金具下に伸び、突部根元が受金具4に近接する。また係合片8が受部下に位置して跳ね上がりを規制する。取外しはカバー部3の一端を持上げて水路部2の長手方向にずらし、係合片8を切欠き凹溝5に位置させて持上げることにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋を含む道路の路肩や中央分離帯等に設置され、自動車等の車両が路面から外れないようにガードする機能を備えた鋼製の排水溝ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の排水溝ユニットは、車両が路面から外れないようにガードしたり、路面の雨水を排水するために用いられ、種々の構造のものが知られる。下記特許文献1ないし3に示されるものがその例で、通常、水路部と、該水路部上に着脱可能に取付けられるカバー部とよりなり、カバー部は車両が路面から外れないようにガードする傾斜面と共に、集水面を有し、路面の雨水が集水面より傾斜面にわたって形成される排水孔より水路部に流入して排水されるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−61020号
【特許文献2】特開2005−344389号
【特許文献3】実用新案登録第3129933号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述する排水溝ユニットは、車両がカバー部上に乗り上げたり、衝突するようなことがあってもカバー部が跳ね上がったり、外れたりすることがないようにすると共に、車両がカバー部上に乗り上げてもガタ付きを生ずることがないようにし、しかも水路部の清掃等によりカバー部を外す必要があるときには、その取外し、或いは取付けが容易に行えるようにすることが望まれる。
【0005】
従来の排水溝ユニットには、カバー部の跳ね上がり防止機構を備えたものが種々知られているが、この種跳ね上がり防止機構を備えた従来の排水溝ユニットは、跳ね上がり防止機構の構造が概して複雑で、カバー部の取付や取外しが容易でなかったり、車両が路面より外れてカバー部上に乗り上げたり、衝突するようなことがあると、当たり方によってカバー部が跳ね上がり、跳ね上がらないまでもガタ付いてガタ付き音を発生し、またカバー部をロックする機構を備えたものでは、ロックするのを忘れると、カバー部が跳ね上がって事故を起すおそれがある。
【0006】
本発明は、底部と、該底部の両端より立上がる前壁部及び後壁部よりなる水路部と、該水路部に着脱可能に取付けられて水路部を塞ぎ、該水路部に通ずる排水孔と、車両が路面から外れないようにガードする傾斜面とを備えたカバー部よりなり、道路の路肩や中央分離帯等に一連に連続して設置される鋼製の排水溝ユニットにおいて、カバー部を水路部に取付けるだけで、車両がカバー部上に乗り上げても跳ね上がりを生じないようにすると共に、ガタ付きも生じにくくし、しかもカバー部の水路部への取付けや取外しが容易に行えるような排水溝ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係わる発明は、底部と、該底部の両端より立上がる前壁部及び後壁部よりなる水路部と、該水路部に着脱可能に取付けられて水路部を塞ぎ、該水路部に通ずる排水孔と、車両が路面から外れないようにガードする傾斜面とを備えたカバー部よりなり、道路の路肩や中央分離帯等に一連に連続して設置される鋼製の排水溝ユニットであって、前記水路部には、少なくとも長手方向の一端に路面側の前壁部より後壁部に向けて突出する受片を設けると共に、後壁部に前壁部に向けて突出し、かつ適所に切欠き凹溝を形成した受部を設け、またカバー部には、路面側の前端に脚部が前記受片に対応する箇所を除く箇所に形成されると共に、脚部より水路部の長手方向に延出し、先端に向かって下向きに傾斜する突部を形成する一方、後部には、前記切欠き凹溝に嵌合可能であるL形の係合片が下向きに突設され、カバー部を前記受片及び受部上に載置して水路部上に取付けたとき、前記脚部が水路部の底部に着床すると共に、突部が受片下に位置し、該突部の根元部分が受片に近接することにより突部の上方向の移動を実質的に規制し、また前記係合片の少なくとも一部が受部下に位置することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、切欠き凹溝を形成する辺の対抗辺のうち、一辺には、前記係合片に向かって下向きに傾斜するガイド部が形成され、カバー部を水路部の長手方向に移動させたとき、前記係合片がガイド部に係合することを特徴とし、ガイド部は好ましくは受部を打抜き成形することにより、切欠き凹溝と共に形成される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係わる発明によると、カバー部を受片及び受部上に載置して取付けると、脚部が水路部の底部に着床して支持されるようになると共に、突部が受片下に延出し、かつ係合片が受部下に位置するようになり、これにより次のような効果を生ずる。
【0010】
脚部が水路部の底部に着床して支持されることにより、少なくとも路面側の前側部分では、自動車等の車両がカバー部上に乗り上げたときの変形が生じにくくなり、変形後の復元力によって生ずる跳ね上がりが生じにくくなること、後部側で跳ね上がりを生ずるようなことがあったとしても係合片が受部に係合して、それ以上の跳ね上がりが規制され、跳ね上がりによる事故を防止できること、カバー部を取外すときには、カバー部を水路部の長手方向に引出す際、隣接するカバー部端と干渉しない高さまで受片との係合部を支点としてカバー部端を持上げるが、受片に近接する突部上端の根元部と受片との間の隙間は前記カバー部端の持上げによる傾きを許容する程度でよく、僅かであるため、突部の上方向の移動が受片によって実質的に規制され、ガタ付きやそれによるガタ付き音を生じにくくなること、カバー部の取外しは、上述するようにカバー部端を受片との係合部を支点として持上げ、カバー部を若干傾けた状態で水路部の長手方向にずらし、係合片を切欠き凹溝に位置させた状態(この状態では突部も受部より外れた状態になる)で引上げて係合片を切欠き凹溝より離脱させることによって行われ、またカバー部の取付けは逆の手順を経て行われるため、取付や取外しが容易に行えること、カバー部の着脱は、上述するように水路部上での上げ下げと水路部の長手方向にずらす操作を行うことにより行われ、車両が走行する路面側には引き出されないため、車両の交通の障害となりにくく、安全であること等の効果を有する。
【0011】
請求項2に係わる発明によると、カバー部は隣接するカバー部端と干渉しない高さまで持上げ、傾けた状態でそのまま引き出すことにより係合片がガイド部に案内されて切欠き溝より引出すことができるようになり、取り外しが傾動と引き出しの二段階で行うことができるようになる。取付けは、逆に突部を突部下に向け、かつ係合片をガイド部に係合させてカバー部を押込むだけでよく、押込みに伴い係合片がガイド部に案内されて移動すると共に、突部が受部下に達する。ガイド部を外れると、掴んでいたカバー端より手を離すと、自重によりカバー部端が降下し、カバー部が水路部上に装着される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の排水溝ユニットについて図面により説明する。
図1は、排水溝ユニットの一実施形態を示す平面図、図2は同側面図、図3は図1のA−A線断面、図4は同B−B線断面を示すもので、全体を符号1で示す排水溝ユニットは鋼製で、水路部2とカバー部3からなり、水路部2は底部2aと、該底部2aの両端より対向して立上がる路面側の前壁部2b及び該前壁部2bより高く形成された高欄側の後壁部2cと、両端において、前壁部2bと底部2aに固着して取付けられ、前壁部2bより後方に向けて突出し、カバー部3を支持する受片としての水平部4aと、垂直部4bとからなる倒L形のアングル材よりなる受金具4と、後壁部2c上端より前方に向けて突出してカバー部3を支持し、両側に切欠き凹溝5を形成した受部6とを有している。
【0013】
カバー部3は平坦な集水面3a及び取付面3bと、両面3a及び3bを連結する傾斜面3cよりなり、図1に示すように排水孔7が集水面3aと傾斜面3cにまたがって形成されている。上記傾斜面3cは車両のタイヤが路面を外れ、傾斜面3cに乗り上げるようなことがあっても、タイヤを路面上に戻すガイド機能を果たすようになっている。
【0014】
カバー部3にはまた、図5に示すように、前端に両側部を除く箇所に脚部3dが下向きに形成され、脚部3dの一端には水路部2の長手方向に向かって図の右方に突出し、上端が先端に向かって下向きに傾斜する突部3eが一体形成され、後部には図2に示すようなL形の係合片8が前記受部6の切欠き凹溝5に対応して両側に形成されている。
【0015】
カバー部3を受金具4の水平部4aと受部6上に載置し、水路部2に取付けた状態においては図2及び図3に示すように、脚部3dの下端が水路部2の底部2aに着床してカバー部前端を支持し、かつ脚部3dの一端の突部3eが受金具4の水平部4a下に突出して突部3eの根元を水平部4aに近接させている。
【0016】
垂下部3dの他端は、カバー部3を水路部2の長手方向に一定量ずらすのを許容できるように受金具4との間に一定の間隔を存している。
カバー部後部の各係合片8は切欠き溝5に係合可能なサイズを有し、それぞれ図示するように一部或いは全部が受部6下に位置し、車両が路面より外れてカバー部上に乗り上げ、カバー部後部が跳ね上がるようなことがあっても、係合片8の一部又は全部が切欠き凹溝5側縁の受部6に係合して一定量以上の跳ね上がりを規制し、跳ね上がりによる事故を防止できるようになっている。
【0017】
カバー部3を取外す際には、受金具4の水平部4aに係合するカバー部端の水平部4aとの係合点a(図6)を支点としてカバー部3の他端を持上げ、カバー部3を若干傾ける(図7)。カバー部3の傾きは、水路部2の長手方向にカバー部3をずらしても、隣接するカバー部3と干渉しない程度の僅かな量である。
【0018】
突部3eの根元は上述するように、受金具4の水平部4aに近接し、僅かな隙間を存しているが、この隙間は上述するカバー部3の傾きを許容できる程度の僅かな量であるため、突部3eの上方向の移動を実質的に規制し、ガタ付きやガタ付き音が生じないようになっている。
【0019】
カバー部3端を持上げて該カバー部3を図7に示すように傾けたのち、図7の矢印で示す隣接のカバー部側、すなわち水路部2の長手方向にずらす。図の左端の脚部端が受金具4の水平部4aに当たるまでカバー部3をずらすと、図8に示すように突部3eが受金具4より外れた位置に退避すると共に、係合片8全体が切欠き凹溝下に位置する。図8の状態でカバー部3を持上げると、突部3eは受金具4に当たることなく、また係合片8は切欠き凹溝5を抜け出す。
【0020】
本実施形態の排水溝ユニットによると、カバー部の取外しは、カバー部一端の持上げ、水路部の長手方向への移動、カバー部全体の持上げの三動作によって行われる。
カバー部の取り付けは、上記と逆の手順を介して同じく三動作によって行われる。
【0021】
図9に示す排水溝ユニット11においては、受部6に形成される切欠き凹溝5を形成する三辺の対向辺のうち、カバー部3が引き出される側の一辺に係合片8に向かって下向きに傾斜するガイド部12が、好ましくは打抜き加工によって形成される。
【0022】
本実施形態の排水溝ユニットにおいては、カバー部3の取外しは、カバー部一端を図7に示すように持上げ、傾けた状態でカバー部3を水路部2の長手方向に引き出すことにより行う。引出しに伴い、カバー部3の係合片8がガイド部12に係合し、そのまま更に引出し、好ましくは斜め上方向に引き出すと、係合片8がガイド部12に案内されて切欠き凹溝5より抜け出すようになり、したがってカバー部3の取外しが、カバー部3一端の持上げ、水路部の長手方向への移動の二動作によって行えるようになる。
カバー部3の取付けは、上記と逆の手順により二動作によって行うことができる。
【0023】
前記各実施形態の排水溝ユニットによると、受金具4と受部6に載置して取付けられるカバー部3は、前端において脚部3dが水路部2の底部2aに着床して支持されるため、車両が路面より外れてカバー部3上に乗り上げてもカバー部前側での変形を生じにくく、変形したときの復元力による跳ね上がりを生じにくいこと、跳ね上がりを生ずるとしても突部根元が受金具4の水平部4aにより、また係合片8が受部6に係合して跳ね上がりが規制され、跳ね上がりによる事故を防止できること、突部根元が受金具4の水平部4aに近接することによりガタ付きやガタ付き音を生じにくいこと、カバー部3の着脱が三動作又は二動作によって容易に行えること、カバー部3は水路部2の長手方向に引き出され、路面側には引き出されないため、路面を走行する車両の障害となりにくく、安全であること等の効果を奏する。
【0024】
前記各実施形態の排水溝ユニット1、11においては、水路部2後部の受部6に一対の切欠き凹溝5が、カバー部3の後部に係合片8が形成されているが、切欠き凹溝5と係合片8は一か所ずつ形成してもよいし、3か所以上に形成してもよい。また水路部2には、両端に受金具4が取付けられているが、突部3eが係合しない側の受金具4は省くこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】排水溝ユニットの平面図。
【図2】同側面図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】同B−B線断面図。
【図5】カバー部の正面図。
【図6】カバー部がaを支点として傾いた排水溝ユニットの一部を示す拡大断面図。
【図7】カバー部の一端を持上げた状態を示す断面図。
【図8】カバー部を水路部の長手方向にずらした状態を示す図。
【図9】排水溝ユニットの変形態様を示す断面図。
【符号の説明】
【0026】
1、11・・排水溝ユニット
2・・水路部
2a・・底部
2b・・前壁部
2c・・後壁部
3・・カバー部
3c・・傾斜面
3d・・脚部
3e・・突部
4・・受金具
5・・切欠き凹溝
6・・受部
7・・排水孔
8・・係合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、該底部の両端より立上がる前壁部及び後壁部よりなる水路部と、該水路部に着脱可能に取付けられて水路部を塞ぎ、該水路部に通ずる排水孔と、車両が路面から外れないようにガードする傾斜面とを備えたカバー部よりなり、道路の路肩や中央分離帯等に一連に連続して設置される鋼製の排水溝ユニットであって、前記水路部には、少なくとも長手方向の一端に路面側の前壁部より後壁部に向けて突出する受片を設けると共に、後壁部に前壁部に向けて突出し、かつ適所に切欠き凹溝を形成した受部を設け、またカバー部には、路面側の前端に脚部が前記受片に対応する箇所を除く箇所に形成されると共に、脚部より水路部の長手方向に延出し、先端に向かって下向きに傾斜する突部を形成する一方、後部には、前記切欠き凹溝に嵌合可能であるL形の係合片が下向きに突設され、カバー部を前記受片及び受部上に載置して水路部上に取付けたとき、前記脚部が水路部の底部に着床すると共に、突部が受片下に位置し、該突部の根元部分が受片に近接することにより突部の上方向の移動を実質的に規制し、また前記係合片の少なくとも一部が受部下に位置することを特徴とする排水溝ユニット。
【請求項2】
前記切欠き凹溝を形成する辺の対抗辺のうち、一辺には、前記係合片に向かって下向きに傾斜するガイド部が形成され、カバー部を水路部の長手方向に移動させたとき、前記係合片がガイド部に係合することを特徴とする請求項1記載の排水溝ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−261258(P2010−261258A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114220(P2009−114220)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【Fターム(参考)】