説明

排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置と方法

【課題】電力用役を節約し、特別な追加機器設備を必要とすることなく、脱硝装置の起動時間を短縮することで、プラント起動後の時間遅れなくプラント排ガス脱硝操作を可能とする排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置と方法を提供すること。
【解決手段】過熱器3などの伝熱管群と脱硝装置6と該脱硝装置6上流域に設けられたアンモニア注入ノズル5を有する排熱回収ボイラ1の起動時にはボイラ1の入口部から抜き出した比較的高温の排ガス2をエバポレータ15に導いて昇温させ、ボイラ1の入口部の排ガス温度又はエバポレータ15出口のガス温度が所定温度になると、エバポレータ15に導入するガスを脱硝装置6の入口部のガスに切り替え、前記所定温度以上でアンモニア水をエバポレータ15に導入し、ガス量を徐々に増やしながらガスで蒸発させて得られるアンモニアをボイラ1の脱硝装置6の入口部に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置に係り、特に排ガス中の窒素酸化物を低減するのに好適な排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図2はガスタービン排ガスの排熱を利用する排熱回収ボイラ1を含むコンバインサイクルプラント(以下、ボイラプラントと言うことがある)において、アンモニア水を利用した脱硝装置6用のアンモニア注入装置21の熱源として燃焼排ガス2を利用した従来技術の一例を示す系統図である。
【0003】
排熱回収ボイラ1に導入された排ガス2は、過熱器3又は該過熱器3の後流側に配置される図示しない蒸発器を経てアンモニア注入ノズル5からのアンモニアとともに脱硝装置6へ供給され、脱硝処理されたガス2’は煙突4から排出される。
【0004】
ここで、アンモニア水は次のようなアンモニア注入装置21でアンモニア注入ノズル5から排熱回収ボイラ1内の脱硝装置6の前流側に噴霧される。すなわち、アンモニア注入装置21は排熱回収ボイラ1に隣接して配置され、排熱回収ボイラ1内を流れる排ガス2の一部を抜き出すガス循環配管19と該ガス循環配管19の先に設けたエバポレータ15と該エバポレータ15の出口からアンモニア注入ノズル5に接続するエバポレータ出口配管からなる流体の循環系統である。前記ガス循環配管19には切替ダンパ12とガス循環ファン13と流量計14が設けられ、またエバポレータ15にはアンモニア水配管17が接続されており、またエバポレータ15の内部に二流体ノズル16が複数個設けられ、このノズル16にアンモニア水配管17とアトマイズ空気配管18とが接続され、二流体ノズル16の作用でアンモニア水を微粒化し、微粒化されたアンモニア水はエバポレータ15の出口配管から排熱回収ボイラ1内に供給される。
【0005】
排熱回収ボイラ1の起動と共にガス循環ファン13により排熱回収ボイラ1の排ガス2をガス循環配管19に吸引し、高温の排ガス2を排熱回収ボイラ1とエバポレータ15間で循環させることでエバポレータ15を昇温する。アンモニア注入条件を満足する温度までエバポレータ15が昇温した段階で、アンモニア水がアンモニア水配管17を経由してエバポレータ15へ導入される。このとき二流体ノズル16の作用でアンモニア水を微粒化し、微粒化されたアンモニア水は加熱空気流の中へ噴霧され、ガス循環配管19内から導入される高温排ガス2の熱エネルギーにより蒸発し、蒸発したアンモニア水はアンモニアガスとH2Oと空気の混合気体として、排熱回収ボイラ1内に設けられたアンモニア注入ノズル5より排熱回収ボイラ1内を流れる排ガス2に注入され、アンモニアは排熱回収ボイラ1の排ガス2中の窒素酸化物の還元剤として作用する。
【0006】
アンモニア水加熱用の排ガス2の流量はガス循環配管19に設けられた切替ダンパ12でアンモニア水と排ガス2が適切な混合割合になるように調節され、ガス循環ファン13を経てオリフィス流量計14で計測される。排熱回収ボイラ1からのアンモニア水加熱用の排ガス2のガス循環配管19への取り出し点は、排ガス温度と配管材料を考慮して設定される。
【0007】
上述した従来技術においては、ボイラプラント1および脱硝装置6の運転停止中はアンモニア水加熱用の排ガス2の循環も停止するため、エバポレータ15の内部温度も低下していた。次にボイラプラント1を再起動したときには、エバポレータ15の出口ガス温度が規定値以上となるまでアンモニア水を排熱回収ボイラ1に注入することができないため、プラント起動後、排ガス温度が上昇し、その排ガス2をエバポレータ15に循環することでエバポレータ15の昇温を行うが、過熱器3で熱交換して減温された排ガス2を使用していたため、アンモニア水が蒸発可能となるエバポレータ15の出口温度に上昇するまで、かなりの時間を要していた。従って、ボイラプラント1の起動後、一定時間の間は排ガス脱硝操作を行えず、特にDSS(Daily Start and Stop)又はWSS(Weekly Start and Stop)運用のボイラプラントにおいては、連続運用のプラントと異なり、ボイラ1起動の度にエバポレータ15の昇温操作が必要となり、脱硝操作を行えない時間が長くなるため、高濃度の窒素酸化物排出量が増加し、さらに脱硝装置6が起動可能になるまでプラントを低負荷に維持して運用しなければいけないと言った問題があった。
【0008】
また、特開平5−49856号公報には、排熱回収ボイラの高温排ガスを抜き出してアンモニア水を蒸発させて、得られたアンモニアを排熱回収ボイラの脱硝装置の入口に注入する排ガス脱硝装置が開示されているが、排熱回収ボイラの起動時にはアンモニア水の蒸発熱源として、ボイラからの高温排ガス系統ではでなく、エアファンから導入される空気を電熱ヒータにて加熱した加熱空気系統に切り替えて行うことが記載されている。
【特許文献1】特開平5−49856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1記載の従来技術に対して、排熱回収ボイラの起動時には、エアファン及び電気ヒータ系統を選択し、ガスタービン起動前に前記加熱空気系統の起動操作が必要になると共に、そのための待機機器のメンテナンス及び電気使用量が多く必要となる。また、コンバインドサイクルプラントのように頻繁な起動・停止を繰返すプラントにおいては、その都度運転員に負担を与えることになる。
【0010】
前記アンモニア加熱用の空気系統は早期起動のために有用な手段ではあるが、同じような系統構成の排ガス循環ファンと空気ファン系統を持っているため、複雑な系統構成になっていると共に、エアファンはもとより周辺機器のメンテナンスが増加し、合わせて電気使用量等の増加に繋がるなどシステムとしての信頼性と安定運用に問題がある。
【0011】
本発明の課題は、電力用役を節約し、特別な追加機器設備を必要とすることなく、脱硝装置の起動時間を短縮することで、プラント起動後の時間遅れなくプラント排ガス脱硝操作を可能とする排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は次の構成により達成される。
すなわち、請求項1記載の発明は、燃焼装置から排出される燃焼排ガス(2)の熱を回収する伝熱管群と、前記排ガス(2)中に含まれる窒素酸化物を無害な窒素と水に還元する脱硝装置(6)と、該脱硝装置(6)の上流域に設けられたアンモニア噴霧部(5)とを前記排ガス(2)が流れる流路間に配置した排熱回収ボイラ(1)に対して、アンモニア源としてアンモニア水を使用し、そのアンモニア水の蒸発を行わせるための熱源として前記排熱回収ボイラ(1)内の排ガス(2)を用いることからなる排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置(21)であって、排熱回収ボイラ(1)の入口部と脱硝装置(6)の入口部から排ガス(2)をそれぞれ抜き出す第1配管(19a)と第2配管(19b)と前記各配管(19a,19b)にそれぞれ第1切替ダンパ(9a)と第2切替ダンパ(9b)を設け、前記2つの配管(19a,19b)を合流させて接続したガス循環配管(19c)を排熱回収ボイラ(1)の脱硝装置(6)の入口部に接続し、該ガス循環配管(19c)の中間部に前記排ガス(2)を熱源としてアンモニア水供給配管(17)から導入されるアンモニアを蒸発させるエバポレータ(15)を配置し、排熱回収ボイラ(1)の入口部と脱硝装置(6)の入口部とエバポレータ(15)の出口にそれぞれガス温度計(7,8,11)を配置し、前記3つのガス温度計(7,8,11)で測定される各ガス温度に基づき前記第1切替ダンパ(9a)と第2切替ダンパ(9b)の切替によりエバポレータ(15)に導入するガス(2)を切替制御を行い、また、脱硝装置(6)の入口部とエバポレータ(15)の出口の各ガス温度計(8,11)で測定される各ガス温度に基づきアンモニア水供給配管(17)からエバポレータ(15)にアンモニア水を導入する制御を行う制御装置(24)を設けた排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置である。
【0013】
請求項2記載の発明は、ガス循環配管(19c)にもガス温度計(23)を配置し、該排ガス温度計(23)で測定される排ガス温度に基づき前記第1切替ダンパ(9a)と第2切替ダンパ(9b)を切り替えてエバポレータ(15)に導入する排ガス(2)の温度調節を行う制御装置(24)を設けた請求項1記載の排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置である。
【0014】
請求項3記載の発明は、エバポレータ(15)の出口ガス温度が所定温度(例、200℃)以下になった時又は排熱回収ボイラ(1)の起動時に起動させるガス循環ファン(13)をガス循環配管(19c)に設けた請求項1又は2記載の排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置である。
【0015】
請求項4記載の発明は、燃焼装置から排出される燃焼排ガス(2)の熱を回収する伝熱管群と、排ガス(2)中に含まれる窒素酸化物を無害な窒素と水に還元する脱硝装置(6)と、該脱硝装置(6)の上流域に設けられたアンモニア噴霧部(5)を有する排熱回収ボイラ(1)に対して、排熱回収ボイラ(1)の入口部又は脱硝装置(6)の入口部から排ガス(2)をそれぞれ抜き出した排ガス(2)をエバポレータ(15)に導き、該エバポレータ(15)内に供給されるアンモニア水を前記排ガス(2)で蒸発させて得られるアンモニアを排熱回収ボイラ(1)の脱硝装置(6)の入口部に供給する排熱回収ボイラ用のアンモニア注入方法であって、排熱回収ボイラ(1)の起動時には排熱回収ボイラ(1)の入口部から抜き出した比較的高温の排ガス(2)をエバポレータ(15)に導いてエバポレータ(15)内を昇温させ、排熱回収ボイラ(1)の入口部の排ガス(2)が所定温度(例、300℃)になると又はエバポレータ(15)の出口のガス温度が所定温度(例、270℃)になると、エバポレータ(15)に導入する排ガス(2)を排熱回収ボイラ(1)の入口部の排ガス(2)から脱硝装置(6)の入口部の排ガス(2)に切り替え、脱硝装置(6)の入口部の排ガス温度とエバポレータ(15)の出口のガス温度がそれぞれ所定温度(例、270℃)以上になるとアンモニア水をエバポレータ(15)に導入し、またエバポレータ(15)の出口のガス温度に基づきエバポレータ(15)に導く排ガス量を徐々に増やしながら前記排ガス(2)で蒸発させて得られるアンモニアを排熱回収ボイラ(1)の脱硝装置(6)の入口部に供給し、排熱回収ボイラ(1)の運転停止時には排熱回収ボイラ(1)の入口部の排ガス(2)が、該排ガス(2)をエバポレータ(15)へ導入する配管(19c)の耐熱温度以下になると、エバポレータ(15)へ導入する排ガス(2)を脱硝装置(6)の入口部の排ガス(2)から排熱回収ボイラ(1)の入口部の排ガス(2)に切り替え、同時にエバポレータ(15)に導入する排ガス量を制御する排熱回収ボイラ用のアンモニア注入方法である。
【0016】
請求項5記載の発明は、排熱回収ボイラ(1)の入口部又は脱硝装置(6)の入口部から抜き出した排ガス(2)をエバポレータ(15)に導入する配管(19c)にはガス循環ファン(13)を設け、排熱回収ボイラ(1)の運転停止時にはエバポレータ(15)の出口ガス温度が所定温度(例、200℃)以下になった時又は次回の排熱回収ボイラ(1)の起動時に前記循環ファン(13)を起動させて排熱回収ボイラ(1)の入口部から抜き出した排ガス(2)を脱硝装置(6)の入口部の排熱回収ボイラ(1)内に循環させることを特徴とする請求項4記載の排熱回収ボイラ用のアンモニア注入方法である。
【0017】
(作用)
請求項1と請求項4記載の発明により、排熱回収ボイラ(1)を含むコンバインドサイクルドプラントの停止時(DSS及びWSS)において、任意の制御設定温度条件によりガス循環ファン(13)の起動および停止操作を行い、排熱回収ボイラ(1)内で高温に滞留させている燃焼排ガス(2)を排熱回収ボイラ(1)と脱硝装置(6)間で循環させることで、図3に示すボイラ(1)の停止後の従来技術のエバポレータ(15)出口温度カーブのように、ガス循環ファン(13)の停止中に大気放散により温度が下降していくエバポレータ(15)の出口ガス温度の低下を、図3で示すボイラ(1)停止後の本発明のエバポレータ(15)の出口ガス温度のカーブのように抑えることが可能になる。
これにより、次回のボイラ(1)の起動時においては、アンモニア注入許可条件との温度差が従来に比べて小さいため、短時間でのアンモニア注入が実現できる。
【0018】
アンモニア注入許可条件の制御設定温度に依存して従来より早くガス循環ファン(13)を起動させて高温の排ガス(2)をアンモニア注入装置(21)に取り込むことで、更に短時間でのアンモニア注水可動温度条件を確立することも可能であり、排熱回収ボイラ(1)の起動後の脱硝操作可能時間の短縮を図ることができる。
【0019】
また、定期検査時等の長期にわたり排熱回収ボイラ(1)を含むプラントが停止する場合においては、排熱回収ボイラ(1)内のガス温度も停止期間中に低下することから、ボイラ排ガス保有熱を利用してアンモニア注入装置(21)の昇温を図る構成においては、有効性が低くなるため、次回のボイラ(1)起動に備えてガス循環ファン(13)を起動させる必要はない。従って、長期間ボイラプラント(1)の運転を停止する場合においては、ボイラ(1)停止時にガス循環ファン(13)を起動させないように選択することもできる。
【0020】
また、排熱回収ボイラ(1)の定常運転中または長期連続運転中には脱硝装置(6)の入口の燃焼排ガス(2)をアンモニア水の蒸発用熱源として用い、排熱回収ボイラ(1)の起動時には排熱回収ボイラ(1)の入口の燃焼排ガス(2)をアンモニア水の蒸発用熱源として用いるように、排熱回収ボイラ(1)の状態によって排ガス吸引する系統を切替えることができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、例えばガス循環配管(19c)内の温度の異常上昇時は、高温側の第1の切替ダンパ(9a)を閉じ、第2の切替ダンパ(9b)を開き、冷却のため脱硝装置(6)の入口の比較的低い温度のガス(2)をガス循環配管(19c)に導入し、エバポレータ(15)のウォーミング温度を一定に保つように動作させる。その結果、ガス循環ファン(13)の耐熱性に影響を与えることなく、ガス循環ファン(13)をウォーミングアップさせるガス循環配管(19c)のウォーミング動作が継続され、短時間内でガス循環ファン(13)の起動と合わせ、エバポレータ(15)へアンモニア水を注入し、蒸発したアンモニアをアンモニア噴霧部(5)を介して脱硝装置(6)の前流側に注入できる条件が整うことになる。
【0022】
請求項3、請求項5記載の発明によれば、排熱回収ボイラ(1)の運転停止時においては、次回の排熱回収ボイラ(1)の起動モードもしくはエバポレータ(15)の出口ガス温度によって、ガス循環配管(19c)に設けたガス循環ファン(13)の起動/停止を行い、ガス循環ファン(13)を起動させることで排熱回収ボイラ(1)内の高温滞留排ガス(2)をアンモニア注入装置(21)内に循環させ、アンモニア注入装置(21)全体の温度の低下を抑え、次回排熱回収ボイラ(1)の起動において起動時間を短縮させることができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1と請求項4記載の発明によれば、ボイラ(1)の起動時においては、アンモニア注入許可条件を満たすガス温度とボイラ排ガス温度との差が従来に比べて小さいため、短時間でアンモニア注入が実現でき、排熱回収ボイラ(1)の起動後の脱硝操作可能時間の短縮とボイラ(1)の起動時の大気汚染物質排出量の低減を図ることができる。
また、排熱回収ボイラ(1)の定常運転中または長期連続運転中には脱硝装置(6)の入口の燃焼排ガス(2)をアンモニア水の蒸発用熱源として用いることで、低出力維持の運転制御緩和の効果がある。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、時間遅れなくタイムリーに排熱回収ボイラ(1)にアンモニアを注入できるので、起動時における排ガス中の窒素酸化物濃度の環境規制値のオーバーという問題を解消でき、運転員への負担が少なく、メンテナンスの軽減と合わせ安定運用が可能となる。
【0025】
請求項3、請求項5記載の発明によれば、排熱回収ボイラ(1)の運転停止時に、次回の排熱回収ボイラ(1)の起動において起動時間を短縮させることができ、また、ガス循環配管(19c)のウォーミングアップ用に使用するのは、排熱回収ボイラ(1)の排ガス(2)のみであり、電気使用量が不要であり、かつ、システムが簡便なため、運転員への負荷が少なく、メンテナンスの軽減と合わせ安定運用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施例を図面とともに説明する。
図1は本実施例の排熱回収ボイラ1を含むコンバインサイクルプラントにおいて、アンモニア水を利用した脱硝装置6用のアンモニア注入装置21において燃焼排ガス2を利用する系統図を示す。図1に示す系統図は図2に示した従来技術の系統図と同一機能を奏する部材は同一番号を付してその説明を省略する。
【0027】
排熱回収ボイラ1に導入された排ガス2は、過熱器3又は該過熱器3の後流側に配置される図示しない蒸発器を経てアンモニア注入ノズル5からのアンモニアとともに脱硝装置6へ供給され、脱硝処理されたガス2’は煙突4から排出される。
【0028】
排熱回収ボイラ1に隣接して配置される本実施例のアンモニア注入装置21には、排熱回収ボイラ1内を流れる排ガス2の一部を抜き出す排ガス抜出配管19a、19bが設けられる。該排ガス抜出配管19a、19bは排熱回収ボイラ1の入口部と過熱器3の後流側にそれぞれ設けられ、各排ガス抜出配管19a、19bは各排ガス抜出配管19a、19bに設けられる切替ダンパ9a,9bの後流側のガス循環配管19cで合流する。ガス循環配管19cには上流側から切替ダンパ12、ガス循環ファン13、流量計14及びエバポレータ15が順次配置されている。
【0029】
また、排熱回収ボイラ1の入口部と脱硝装置6の入口部(過熱器3の後流側)にそれぞれ接続する排ガス抜出配管19a、19bに設けられる各切替ダンパ9a,9bの開度は排熱回収ボイラ1の入口部と脱硝装置6の入口部の排熱回収ボイラ1内部の排ガス温度を検知する各温度計7、8の測定値などに基づき制御装置24で制御される構成である。
【0030】
さらに、エバポレータ15にはアンモニア水配管17が接続されており、またエバポレータ15の内部に複数個設けられた二流体ノズル16にアンモニア水配管17とアトマイズ空気配管18とが接続され、二流体ノズル16の作用でアンモニア水を微粒化し、微粒化されたアンモニア水がエバポレータ15内部で形成される。このときアンモニア水配管17に設けたアンモニア遮断弁10が設けられており、該アンモニア遮断弁10の開閉は脱硝装置6の入口部のガス温度計8およびエバポレータ15出口ガス温度を検知する温度計11の適宜の測定値(約270℃程度)に基づき制御装置24で制御される。エバポレータ15の出口の温度計11で測定されるエバポレータ15出口のガス温度に基づき切替ダンパ12、ガス循環ファン13も作動制御される。
【0031】
上記構成からなる本実施例のアンモニア注入装置21において、各排ガス抜出配管19a、19bに設けられたダンパ9a、9bを操作することにより排熱回収ボイラ1内の燃焼排ガス2の抜き出し位置を切り替えてアンモニア水の加熱用排ガス温度をコントロールする。
【0032】
排熱回収ボイラ1を含むボイラプラントの起動後、ボイラ1内のガスタービン排ガス2にアンモニア水配管17からのアンモニア水の注入が可能となるのは、例えば、脱硝装置6の入口側の排ガス温度計8で測定した排熱回収ボイラ1内の排ガス温度が約270℃程度になり、かつエバポレータ15の出口ガスの温度計11で測定したエバポレータ15の出口ガス温度が約270℃程度となった時点である。この条件が成立すると制御装置24はアンモニア注水遮断弁10を全開し、エバポレータ15内にアンモニア水の注入を開始してアンモニア水を蒸発させ、得られたアンモニアガスはアンモニア注入ノズル5よりボイラ1内に噴射され、脱硝装置6内で脱硝が開始される。
ボイラプラント1起動時には上記条件を短時間で達成でき、脱硝装置6の起動時間を短縮させるため、本実施例のアンモニア注入装置21においては以下の操作を行う。
排熱回収ボイラ1の通常運転時にはアンモニアの蒸発に対して充分な排ガス温度条件が得られる脱硝装置6の入口から排ガス2を吸引する系統、つまり抜出配管19bの切替ダンパ9aを全開とし、ガス循環配管19cの保護のため、排熱回収ボイラ1の入口の高温排ガス2をアンモニア注入装置21へ導入する抜出配管19aの切替ダンパ9aを全閉の状態にて運用する。
【0033】
排熱回収ボイラ1の入口の高温排ガス2を常時アンモニア注入装置21に供給する場合に、ガス循環配管19c、ガス循環ファン13及びエバポレータ15等のアンモニア注入装置21全体の耐熱温度を上げる必要があるため、かなりの設備コスト増加の要因となる。
【0034】
このため、本実施例では前記設備コスト増加が無いように、切替ダンパ9a、9bの切替ができる構成にしており、通常運用時は、従来技術と同様に過熱器3の後流側から排ガス2をアンモニア注入装置21に供給する系統で運用する。
【0035】
また、排熱回収ボイラ1の運転停止中においては、排熱回収ボイラ1の内部に滞留している排ガス2の温度は少しずつ低下していくため、より高温度の排ガス2を使用してエバポレータ15の温度低下を抑制する必要がある。そのためには排熱回収ボイラ1の入口に設けた排ガス温度計7により測定される排熱回収ボイラ1の入口の排ガス温度を監視し、ガス循環配管19cの耐熱温度以下となった時点で、排熱回収ボイラ1の入口から排ガス2をアンモニア注入装置21に吸引する系統に切り替える。つまり、切替ダンパ9aを少しずつ開き、逆に切替ダンパ9bを同時に少しずつ閉じることで、排ガス2をアンモニア注入装置21に吸引する系統を通常時の脱硝装置6入口の排ガス2から排熱回収ボイラ1入口の排ガス2へと切り替える。最終的に切替ダンパ9bを閉止し、切替ダンパ9aを全開する。このとき、エバポレータ15の出口のガス温度計11を監視しながらダンパ12の操作を行う。
【0036】
排熱回収ボイラ1の起動初期においては、停止時と同様に排熱回収ボイラ1の入口からの高温排ガス2を使用してエバポレータ15を昇温する系統とする。それにより、排熱回収ボイラ1の起動時に過熱器3を通過する前の高温排ガス2をアンモニア注入装置21に送ることが可能となり、より短時間でエバポレータ15の昇温が可能となる。ガス循環配管19cの保護のために排熱回収ボイラ1の入口排ガス温度が規定値以上となった時点あるいはエバポレータ15の出口ガス温度が一定値以上に昇温した時点で、切替ダンパ9aを閉止し、逆に切替ダンパ9bを全開とし、脱硝装置6の入口から排ガス2を導入する系統へと切り替える。
【0037】
さらに、ガス循環配管19cには温度計23が設置されており、ガス循環配管19c内の温度の異常上昇時には、切替ダンパ9bを開き、冷却のための脱硝装置6入口の比較的低い温度のガス2をガス循環配管19cに導入し、エバポレータ15のウォーミング温度を一定に保つように動作させる。また、ガス循環配管19cの温度が、切替ダンパ12の開動作温度を超えた場合は、高温側の切替ダンパ9aを閉じ、この切替ダンパ9aの閉信号をもとに切替ダンパ9bを開く動作をさせる。その結果、ガス循環ファン13の耐熱性に影響を与えることなく、ガス循環ファン13をウォーミングアップさせるガス循環配管19cのウォーミング動作が継続され、短時間内でガス循環ファン13の起動と合わせ、エバポレータ15へアンモニア水を注入し、蒸発したアンモニアをアンモニア注入ノズル5を介して脱硝装置6の前流側に注入できる条件が整うことになる。
【0038】
このように、アンモニア注入開始温度前に排熱回収ボイラ1へのアンモニア注入条件が成立し、待機状態になっているため、脱硝インサービス温度になれば、時間遅れなくタイムリーに排熱回収ボイラ1へアンモニアを注入できるので、起動時における環境規制値のオーバーという問題を解消できる。また、ガス循環配管19cのウォーミングアップ用に使用するのは、排熱回収ボイラ1の排ガス2のみであり、電気使用量が不要であり、かつ、システムが簡便なため、運転員への負荷が少なく、メンテナンスの軽減と合わせ安定運用が可能となる。
【0039】
また、排熱回収ボイラ1の運転停止時において切替ダンパ9bを全閉し、切替ダンパ9aを全開としてエバポレータ15へ導入する排ガス系統を排熱回収ボイラ1の入口側に切り替えただけでは、アンモニア注入装置21に排熱回収ボイラ1の内部に滞留している高温排ガス2は循環しないので、前記排ガス系統の切替動作に合わせてエバポレータ15の出口温度によってガス循環ファン13の運転を行う。エバポレータ15の出口温度が適宜の制御設定温度(約200℃程度)以下となったとき、ガス循環ファン13を起動させ、排熱回収ボイラ1の入口側の高温排ガス2をアンモニア注入装置21に循環することでアンモニア注入装置21全体の温度低下を抑制し、制御設定温度を維持できるように運用する。
上記動作によって、エバポレータ15に高温排ガス2が循環されるため、排熱回収ボイラ1の運転停止時においてもエバポレータ15及び該エバポレータ15の後流側の排ガス流路の急激な温度低下を防ぐことができる。
【0040】
また、長期間ボイラプラントを停止させた場合においてはモード選択によりガス循環ファン13を起動しないように選択できるようにする。また、ダンパ9a、9b,12などの操作時のガス漏れ等によりガス循環ファン13が損傷しないようにするため、排熱回収ボイラ1の入口ガス温度が一定値以下となった時点でガス循環ファン13は自動的に停止させる。
【0041】
従来方式と本方式の脱硝処理における起動時間とエバポレータ15の出口ガス温度との関係などを比較したデータを図3に示す。本実施例によれば、ボイラプラント1の運転を停止するとガス循環ファン13も停止させる。そのため、エバポレータ15出口温度が徐々に低下し始める。そしてエバポレータ15出口温度が適宜の制御設定温度(このときの温度はDSS、WSSモード時の温度。約200℃程度)まで低下するとガス循環ファン13を再起動させ、排熱回収ボイラ1の入口側の高温排ガス2をアンモニア注入装置21に吸引することでエバポレータ15出口温度の低下を抑制する。こうしてボイラプラント1が再起動したときには、従来技術のプラントの起動から脱硝装置起動までの時間T’に比較してエバポレータ15出口温度の低下が少ないのでプラントの起動から脱硝装置起動までの時間Tが小さい。
以上のように、本実施例によれば、特に排熱回収ボイラプラント脱硝装置6に最適なアンモニア注入装置21を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、排熱回収ボイラプラントの脱硝装置に適したアンモニア注入装置21を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例のアンモニア注入装置と排熱回収ボイラを示す系統図である。
【図2】従来技術のアンモニア注入装置と排熱回収ボイラを示す系統図である。
【図3】本発明と従来技術における脱硝装置運用および起動時間の比較を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 排熱回収ボイラ 2 排ガス
3 過熱器 4 煙突
5 アンモニア注入ノズル 6 脱硝装置
7、8、11、23 温度計 9a,9b 切替ダンパ
10 アンモニア遮断弁 12 切替ダンパ
13 ガス循環ファン 14 流量計
15 エバポレータ 16 二流体ノズル
17 アンモニア水配管 18 アトマイズ空気配管
19a、19b 排ガス抜出配管 19c ガス循環配管
21 アンモニア注入装置 24 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する伝熱管群と、前記排ガス中に含まれる窒素酸化物を無害な窒素と水に還元する脱硝装置と、該脱硝装置の上流域に設けられたアンモニア噴霧部とを前記排ガスが流れる流路に配置した排熱回収ボイラに対して、アンモニア源としてアンモニア水を使用し、そのアンモニア水の蒸発を行わせるための熱源として前記排熱回収ボイラ内の排ガスを用いることからなる排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置であって、
排熱回収ボイラの入口部と脱硝装置入口部から排ガスをそれぞれ抜き出す第1配管と第2配管と前記各配管にそれぞれ第1切替ダンパと第2切替ダンパを設け、
前記2つの配管を合流させて接続したガス循環配管を排熱回収ボイラの脱硝装置入口部に接続し、
該ガス循環配管の中間部に前記排ガスを熱源としてアンモニア水供給配管から導入されるアンモニアを蒸発させるエバポレータを配置し、
排熱回収ボイラの入口部と脱硝装置入口部とエバポレータ出口にそれぞれガス温度計を配置し、
前記3つのガス温度計で測定される各ガス温度に基づき前記第1切替ダンパと第2切替ダンパの切替によりエバポレータに導入するガスを切替制御を行い、また、脱硝装置入口部とエバポレータ出口の各ガス温度計で測定される各ガス温度に基づきアンモニア水供給配管からエバポレータにアンモニア水を導入する制御を行う制御装置を設けたことを特徴とする排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置。
【請求項2】
ガス循環配管にもガス温度計を配置し、該排ガス温度計で測定される排ガス温度に基づき前記第1切替ダンパと第2切替ダンパを切り替えてエバポレータに導入する排ガスの温度調節を行う制御装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置。
【請求項3】
エバポレータ出口ガス温度が所定温度以下になった時又は排熱回収ボイラの起動時に起動させるガス循環ファンをガス循環配管に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の排熱回収ボイラ用のアンモニア注入装置。
【請求項4】
燃焼装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する伝熱管群と、排ガス中に含まれる窒素酸化物を無害な窒素と水に還元する脱硝装置と、該脱硝装置上流域に設けられたアンモニア噴霧部を有する排熱回収ボイラに対して、排熱回収ボイラの入口部又は脱硝装置入口部から排ガスをそれぞれ抜き出した排ガスをエバポレータに導き、該エバポレータ内に供給されるアンモニア水を前記排ガスで蒸発させて得られるアンモニアを排熱回収ボイラの脱硝装置入口部に供給する排熱回収ボイラ用のアンモニア注入方法であって、
排熱回収ボイラの起動時には排熱回収ボイラの入口部から抜き出した比較的高温の排ガスをエバポレータに導いてエバポレータ内を昇温させ、
排熱回収ボイラの入口部の排ガスが所定温度になると又はエバポレータ出口のガス温度が所定温度になると、エバポレータに導入する排ガスを排熱回収ボイラの入口部の排ガスから脱硝装置の入口部の排ガスに切り替え、
脱硝装置入口部の排ガス温度とエバポレータ出口のガス温度がそれぞれ所定温度以上になるとアンモニア水をエバポレータに導入し、またエバポレータ出口のガス温度に基づきエバポレータに導く排ガス量を徐々に増やしながら前記排ガスで蒸発させて得られるアンモニアを排熱回収ボイラの脱硝装置入口部に供給し、
排熱回収ボイラの運転停止時には排熱回収ボイラの入口部の排ガスが、該排ガスをエバポレータへ導入する配管の耐熱温度以下になると、エバポレータへ導入する排ガスを脱硝装置入口部の排ガスから排熱回収ボイラの入口部の排ガスに切り替え、同時にエバポレータに導入する排ガス量を制御することを特徴とする排熱回収ボイラ用のアンモニア注入方法。
【請求項5】
排熱回収ボイラの入口部又は脱硝装置入口部から抜き出した排ガスをエバポレータに導入する配管にはガス循環ファンを設け、排熱回収ボイラの運転停止時にはエバポレータ出口ガス温度が所定温度以下になった時又は次回の排熱回収ボイラの起動時に前記循環ファンを起動させて排熱回収ボイラの入口部から抜き出した排ガスを脱硝装置入口部の排熱回収ボイラ内に循環させることを特徴とする請求項4記載の排熱回収ボイラ用のアンモニア注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−307477(P2007−307477A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138902(P2006−138902)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】