説明

排熱回収装置

【課題】内燃機関の排熱回収装置において、排気ガス及び冷却液から、効率良く、排熱及び動力を回収できるようにすることである。
【解決手段】内燃機関1の冷却液室6に連通する蒸気発生タンク10であって、該タンク内の圧力を、冷却に必要な媒体温度に対応する飽和圧力に保つことにより、低圧の蒸気を得る蒸気発生タンク10と、該蒸気発生タンク10から供給される低圧の蒸気を膨張させることにより動力を得る低圧用の第1の膨張機21と、冷却液の一部を内燃機関の排気ガスと熱交換することにより、前記蒸気発生タンク10の蒸気よりも高圧の蒸気を得る高圧蒸気発生器15と、該高圧蒸気発生器15から供給される高圧の蒸気を膨張させることにより、前記第1の膨張機とは独立して動力を得る高圧用の第2の膨張機22と、各膨張機21,22から排出される膨張後の蒸気を液化させる凝縮器27と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排熱を利用し、膨張機により発電機等の負荷装置の動力を得るランキンサイクルによる排熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出力数がMW以上の大型のガスタービン発電装置では、その排気熱から水蒸気を発生させ、蒸気タービンで動力を得るコンバインド発電が多く採用されており、その発電効率は50%を越えるものもある。しかし、小出力の内燃機関には、次の理由からコンバインド発電は未だ実用化されていない。すなわち、
(1)小出力の蒸気タービンは効率が悪い。
(2)小出力の内燃機関は、その効率面から往復動機関が主流であり、排気ガス以外に、冷却水にも多くの熱が逃げ、そのため、動力以外、すべて排気ガスにエネルギーが逃げるガスタービンほど、排気ガスからの熱回収量が多くならない。
(3)システムコストが高くなる。
【0003】
上記大型のガスタービン発電装置のように、排気ガスの排熱のみから動力を回収する装置に対して、小出力の発電装置等においては、内燃機関の排気ガスと共に、機関冷却後の冷却液の排熱からも、動力を回収する装置が開発されている。
【0004】
図16は、内燃機関の排気ガス及び機関冷却使用後の冷却液の排熱を、発電用の動力として回収する従来の排熱回収装置の一例である(特許文献1参照)。
【0005】
図16の排熱回収装置を簡単に説明すると、ガス機関201の出力軸に連結された第1の発電機202と、排気ガスの熱及び冷却液の熱を利用して駆動する第2の発電機203を備えている。第2の発電機203は、発電機軸204に連結されたタービン軸205に、第1の蒸気タービン211と第2の蒸気タービン212を附設し、排気管213の途中に、前記第1の蒸気タービン211を駆動する高温側発電ユニット215と、該高温側発電ユニット215より下流側に、第2の蒸気タービン212を駆動する低温側発電ユニット216を備えている。
【0006】
第1の発電ユニット215は、排熱ボイラ217、過熱器218、復水器219、ポンプ220等を備え、これらは、エンジンの一方のウォータジャケット222との間で水循環回路を構成している。第2の発電ユニット216は、排熱ボイラ230、復水器231、ポンプ232及び熱交換器233を備え、これらの間でフロン又は代替フロンを循環させる二次の循環回路を構成しており、これに加え、熱交換器233とエンジンの他方のウォータジャケット234の間で、冷却水を循環させる一次の水循環回路も構成している。
【0007】
図16の排熱回収装置によると、一方のウォータジャケット222から排出される冷却水は、排熱ボイラ217及び過熱器218において、排気管213内の排気ガスと熱交換することにより、高圧の蒸気となり、この高圧の蒸気を第1の蒸気タービン211に供給して、タービン軸205を回転する。また、他方のウォータジャケット234から排出される冷却水は、熱交換器233において、二次側のフロン又は代替フロンを予熱し、該予熱された二次媒体を排熱ボイラ230に供給することにより低圧の蒸気を得、該低圧の蒸気を第2の蒸気タービン212に供給し、タービン軸205を回転する。
【特許文献1】特開2002−161716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図16に示す排熱回収装置では、次のような不具合がある。
(1)低圧側の第2の発電ユニット216において、エンジン冷却水と代替フロン等の二次媒体の2種類の伝熱媒体を使用し、両媒体間で伝熱面を介して熱交換するために新たな熱交換器233を備えているので、コストが高くなると共に媒体のメンテナンスにも手間がかかる。
【0009】
(2)熱交換器233によりエンジン冷却水と二次媒体の間で熱交換し、二次媒体を予熱しているが、このように、熱交換器233を介在させると、熱交換時の熱損失が大きく、しかも、上記予熱を有効に利用することが困難である。
【0010】
上記予熱を有効に利用することが困難な理由を簡単に説明する。図15は、相変化のある冷却水等の受熱流体と、排気ガス等の与熱流体との間の一般的な熱交換を示す温度−交換熱量線図であり、実線の直線X1は排気ガスの温度変化、二点鎖線の折れ線X2は冷却水の変化を示している。冷却水は、液体相、混合相、気体相の三相に変化するが、冷却水が蒸発中(混相)は、いわゆる潜熱を受けている状態なので、冷却水には温度変化はないが、排気ガスは冷却水に熱を与えているために、排気ガスの温度は低下してゆく。そのため、ピンチポイントPPが、熱交換中の沸騰点付近でできる。蒸気に与えることのできる熱量は、排気ガス流量×比熱×(排気ガス入口温度−ピンチポイントでの排気ガス温度)である。
【0011】
図15のような熱交換に対し、冷却水を予熱して、その後、排気ガスと熱交換する場合は、図17のような熱交換を行うことになる。すなわち、図17において、たとえば、90°C程度の別の熱源で冷却水を90°Cまで加熱し(点A1)、次に排気ガスで100°Cにし(点A2)、以後、蒸発完了点(点A3)から過熱蒸気となって蒸気温度が上昇する過程を考えて見ると、ピンチポイントPPの温度(T3)より温度の高い排気ガスの入口温度及び量で、作れる蒸気の量が決まことになる。したがって、冷却水を予熱していても、その予熱で回収した熱量は、排気ガスが系外に持ち出すことになり、排気ガスの出口温度T2が、前記図15の場合の出口温度T1よりが高くなるだけで、回収熱量全体の増加は期待できないのである。
【0012】
[発明の目的]
本願発明は、内燃機関の排気ガスの排熱及び冷却液の排熱を、いずれも効率良く利用できるようにすることにより、排熱を有効に発電等に利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本願請求項1記載の発明にかかる排熱回収装置は、
内燃機関の冷却液室に連通する蒸気発生タンクであって、該タンク内の圧力を、冷却に必要な媒体温度に対応する飽和圧力に保つことにより、機関冷却に使用後の冷却液から低圧の蒸気を得る蒸気発生タンクと、
該蒸気発生タンクから供給される低圧の蒸気を膨張させることにより動力を得る低圧用の第1の膨張機と、
機関冷却に使用前の冷却液の一部を取り入れ、内燃機関の排気ガスと熱交換することにより、前記蒸気発生タンクの蒸気よりも高圧の蒸気を得る高圧蒸気発生器と、
該高圧蒸気発生器から供給される高圧の蒸気を膨張させることにより、前記第1の膨張機とは独立して動力を得る高圧用の第2の膨張機と、
各膨張機から排出される膨張後の蒸気を液化させると共に、液化後の冷却液を内燃機関の冷却液室及び前記高圧蒸気発生器に供給する凝縮器と、を備えている。
【0014】
上記構成によると、内燃機関の排気ガスの排熱と共に、冷却液の排熱も効率良く回収し、発電機等の負荷装置の動力として効率良く利用することができる。しかも、ランキンサイクルに用いる媒体として、従来のように代替フロンのような二次媒体を用いず、内燃機関の冷却液のみを用いるので、冷却液と二次媒体との間の熱交換器が必要なくなり、コストを低減できると共に、熱交換器における熱損失も無くすことができる。
【0015】
冷却水により、内燃機関の熱を顕熱として回収すると共に、上記冷却水を圧力調節により、潜熱としても回収して、飽和蒸気を生成し、前記第2の膨張機とは独立した第1の低圧用の膨張機に供給し、動力を回収しているので、従来の予熱方式に比べて、余分に動力を回収することができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の排熱回収装置において、前記冷却液室を、冷却液上昇温度の異なる高温側の冷却液室部分と低温側の冷却液室部分に仕切り、前記蒸気発生タンクを、前記低温側の冷却液室部分に連通する第1の蒸気発生タンクと、前記高温側の冷却液室部分に連通する第2の蒸気発生タンクとに仕切り、前記第1、第2の蒸気発生タンクのうち、相対的に高い圧力の蒸気を発生する第2の蒸気発生タンクを、第1の膨張機の蒸気入口に接続し、相対的に低い圧力の蒸気を発生する第1の蒸気発生タンクを、第1の膨張機の前記蒸気入口よりも下流の膨張途中部分に接続している。
【0017】
上記構成によると、第1の膨張機の膨張途中において、追加の蒸気を投入するので、第1の膨張機の蒸気入口のみから蒸気が供給される構成に比べ、膨張終了までの過程で膨張室内圧力を高く維持でき、多くの動力が回収できる。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の排熱回収装置において、第1の膨張機と第2の膨張機は、それぞれ独立の発電機に連結している。
【0019】
上記構成によると、各発電量に応じた容量の発電機を備えることができ、また、各発電機の電力を、それぞれの発電量に応じた別の装置に利用することもできる。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の排熱回収装置において、一つの発電機の発電軸の一端に第1の膨張機を連結し、他端に第2の膨張機を連結している。
【0021】
上記構成によると、内燃機関の排熱を、発電機で電気エネルギーとして回収する場合に、排熱回収装置の小形化及び低コスト化が達成できる。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の排熱回収装置において、高圧用の第2の膨張機の蒸気出口の圧力を、蒸気発生タンクの内圧とほぼ同じ圧に保ち、上記蒸気出口を、凝縮器に接続する代わりに、低圧用の第1の膨張機の蒸気入口に供給するようにしている。
【0023】
上記構成によると、高圧用の第2の膨張機の膨張比を小さくすることができ、これにより、たとえば第2の膨張機が蒸気タービン型(速度型)の膨張機であれば、タービン段数を減らすことができ、また、スクロール型(容積型)の膨張機であれば、膨張室の数を減らすことが可能となり、いずれにしても、第2の膨張機を小形化できると共にコストを低減することができる。
【0024】
請求項6記載の発明にかかる排熱回収装置は、
内燃機関の冷却液室を、冷却液上昇温度の異なる高温側の冷却液室部分と低温側の冷却液室部分に仕切り、
前記低温側の冷却室部分に連通する第1の蒸気発生タンクであって、該タンク内の圧力を、冷却に必要な媒体温度に対応する飽和圧力に保つことにより、機関冷却に使用後の冷却液から蒸気を得る第1の蒸気発生タンクと、
前記高温側の冷却室部分に連通する第2の蒸気発生タンクであって、該タンク内の圧力を、前記第1の蒸気発生タンク内の圧力よりも高くすることにより、機関冷却に使用後の冷却液から、上記第1の蒸気発生タンクの蒸気よりも高圧の蒸気を得る第2の蒸気発生タンクと、
機関冷却に使用前の冷却液の一部を取り入れ、内燃機関の排気ガスと熱交換することにより、前記各蒸気発生タンクの蒸気よりも高圧の蒸気を得る高圧蒸気発生器と、
前記高圧蒸気発生器の蒸気を取り入れる蒸気入口と、前記第2の蒸気発生タンクの蒸気を膨張途中から取り入れる中間蒸気入口と、該中間蒸気入口よりも下流の膨張途中で前記第1の蒸気発生タンクの蒸気を取り入れる下流側蒸気入口とを有する膨張機と、
該膨張機から排出される膨張後の蒸気を液化させると共に、液化後の冷却液を内燃機関の冷却液室及び前記高圧蒸気発生器に供給する凝縮器と、を備えている。
【0025】
上記構成によると、膨張機内の膨張途中で、第2の蒸気発生タンクと第1の蒸気発生タンク11から、相対的に高い圧力の蒸気と相対的に低い圧力の蒸気を、2段階に順次追加導入するので、膨張途中で一度だけ低圧蒸気を追加する構造に比べても、膨張終了に至るまで膨張室内圧力をさらに高く保ち、多くの動力が回収できるのである。
【0026】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の排熱回収装置において、前記膨張機は速度型膨張機である。
【0027】
上記構成によると、膨張機が、容積形の膨張機に比べて小形になり、大出力用途に適する。
【0028】
請求項8記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の排熱回収装置において、前記膨張機は容積型膨張機である。
【0029】
上記構成によると、蒸気タービン(速度型膨張機)を使用する場合に比べ、ドラッグ増加による効率低下やエロージョンの発生を抑えることができる。すなわち、膨張機内で飽和蒸気を膨張させる場合、乾き蒸気から湿り蒸気となり、湿り度が大きくなると、蒸気タービンのように速度型の膨張機の場合には、ドラッグが増加して効率が低下し、また、エロージョンが発生する可能性がある。これに対して、スクロール型のように容積型の膨張機であれば、一部液化した媒体は、密閉室のシールの役目を果たし、却って効率が向上し、また、速度型に比べて揺動スクロール等の回転は遅いため、エロージョンが発生する心配もない。
【0030】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の排熱回収装置において、高圧蒸気発生器は、飽和ボイラである。
【0031】
上記構成によると、前記段落「0029」で説明した理由と同様な理由により、過熱器を用いなくとも良く、膨張機出口において、蒸気の湿り度が大きくなっても良い。すなわち、過熱器に必要なコストを削減できる。ちなみに、蒸気タービンのような速度型膨張機を用いる場合には、膨張後の蒸気の湿り度が大きくなるのを防ぐためには、飽和蒸気をさらに過熱する過熱器が必要となる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように本発明によると、内燃機関の排気ガスの熱と共に、冷却液の熱を効率良く回収し、発電機等の負荷装置の動力として効率良く利用することができ、しかも、ランキンサイクルに用いる媒体として、従来のように代替フロンのような二次媒体を用いることなく、内燃機関の冷却液のみを利用し、かつ、冷却液と二次媒体との間の熱交換器をなくすことができ、コストを低減できると共に、熱交換器における熱損失もなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
[第1の実施の形態]
図1は、本願発明の第1の実施の形態であり、内燃機関1の排気ガスの熱及び冷却液の熱を利用し、ランキンサイクルによる発電を行う排熱回収装置である。内燃機関1としては、蒸発冷却方式の農業機械用横型水冷エンジンのような往復動型内燃機関が用いられている。
【0034】
内燃機関1に形成された冷却液室(ウォータージャケット)6は、シリンダライナー2、シリンダヘッド3及び排気ポート14a等の発熱部分の周囲を囲んでおり、冷却液室6内には、冷却液として冷却水が注入され、冷却液室6の下端部には冷却液入口6aが設けられ、上端部には冷却液出口6bが設けられている。
【0035】
排熱回収装置は、前記冷却液室6の上端冷却液出口6bに設けられた圧力調節可能な蒸気発生タンク(いわゆるホッパータンク)10と、低圧用の第1の膨張機21と、高圧用の第2の膨張機22と、排気ガスと冷却水との熱交換により蒸気を発生する高圧蒸気発生器15と、凝縮器(復水器)27と、低圧ポンプ30と、高圧ポンプ31と、を備え、これらによりランキンサイクルを構成している、前記第1,第2の膨張機21,22には、それぞれ負荷装置として第1,第2の発電機24,25が連動連結している。
【0036】
前記冷却液室6の上端冷却液出口6bに連通する蒸気発生タンク10は、タンク内圧が、冷却水の必要な冷却温度に対応する飽和圧力に設定され、冷却液室6内の圧力も前記飽和圧力に保つようになっている。これにより、冷却液室6内で受熱して昇温した冷却水を低温低圧(飽和温度及び飽和圧力)で蒸発させ、低圧の飽和蒸気を得るようになっている。
【0037】
前記高圧蒸気発生器15は内燃機関1の排気管14の途中に配置され、高圧蒸気発生器15内には蒸発用導管16が配置されている。該蒸発用導管16の冷却水入口16aは排気ガスの下流側の端部に設けられ、蒸気出口16bは排気ガスの上流側の端部に設けられており、排気ガスの流れと蒸発用導管16内の冷却水(及び蒸気)の流れが、概ね対向流となるように構成されている。上記蒸発用導管16の冷却水入口16aは、冷却水配管40、前記高圧ポンプ31,冷却水配管41及び前記低圧ポンプ30を介して、凝縮器27の復水出口28bに接続している。一方、蒸発用導管16の蒸気出口16bは、蒸気配管42を介して第2の膨張機22の蒸気入口22aに接続している。
【0038】
高圧用の第2の膨張機22は、タービン方式等の速度型、又はスクロール方式等の容積型のいずれの型でも可能である。第2の膨張機22の蒸気出口22bは蒸気配管43を介して凝縮器27の蒸気入口28aに接続している。
【0039】
低圧用の第1の膨張機21は、タービン方式等の速度型、又はスクロール方式等の容積型のいずれの型でも可能である。第1の膨張機21の蒸気入口21aは、蒸気配管45を介して前記蒸気発生タンク10の蒸気出口10bに接続し、第1の膨張機21の蒸気出口21bは、前記第2の膨張機22からの蒸気配管43に合流し、凝縮器27の蒸気入口28aに接続している。
【0040】
凝縮器27は、放水系冷却水ポンプ35により水道あるいはプール等から放水系の二次冷却水が供給されると共に、液化用導管28が配置されており、該液化用導管28の蒸気入口28aは、放水系の二次冷却水の下流側の端部に設けられ、液化用導管28の復水出口28bは、放水系の二次冷却水の上流側の端部に設けられ、放水系の二次冷却水と、膨張機21,22からの蒸気が対向流となるように構成されている。
【0041】
液化用導管28の蒸気入口28aは、前述のように各膨張機21,22の蒸気出口21b、22bに接続し、復水出口28bは、低圧ポンプ30及び冷却水配管41を介して冷却液室6の冷却水入口6aに接続すると共に、一部が分岐して、前述のように、高圧ポンプ31を介して高圧蒸気発生器15の冷却水入口16aに接続している。
【0042】
(高圧蒸気発生器及び第2の膨張機による排気ガスからの熱及び動力の回収)
機関冷却に利用前(昇温前)の冷却水配管41内の冷却水の一部は、高圧ポンプ31により、冷却水配管40を介して高圧蒸気発生器15の蒸気入口16aに高圧で供給され、蒸発用導管16内を排気ガスの流れに対向して流れ、排気ガスと熱交換することにより蒸発する。この蒸発により得られた高圧蒸気(飽和蒸気)は、蒸気出口16bから蒸気配管42を介して高圧用の第2の膨張機22内に導かれ、膨張することにより第2の膨張機22の出力軸を回転し、これより第2の発電機25を駆動し、発電する。すなわち排気ガスの排気熱を、電力として回収する。第2の膨張機22内で膨張した蒸気は、蒸気出口22bから排出され、蒸気配管43を介して凝縮器27の液化用導管28内に供給され、二次冷却水で冷却され、液化する。液化した後、低圧ポンプ30により冷却水配管41を介して冷却水入口6aから冷却液室6に戻され、一部は、高圧ポンプ31を介して再び高圧蒸気発生器16へ供給される。
【0043】
(蒸気発生タンク及び第1の膨張機による冷却液の熱及び動力の回収)
蒸気発生タンク10の内圧を、冷却水の必要な冷却温度に対応する飽和圧力に設定することにより、冷却液室6内も共に上記飽和圧力とし、機関冷却により加熱(受熱)した後冷却水を蒸発させ、低温低圧の蒸気(飽和蒸気)を得る。この低温低圧の蒸気は、蒸気出口10bから蒸気配管45を介して低圧用の第1の膨張機21に導かれ、膨張することにより第1の膨張機21の出力軸を回転し、これにより第1の発電機24を駆動し、発電する。すなわち冷却水の熱を、電力として回収する。
【0044】
第1の膨張機21で膨張した蒸気は、蒸気出口21bから排出され、前記第2の膨張機22からの蒸気と蒸気配管43内で合流し、凝縮器27に供給される。
【0045】
このような蒸気発生タンク10を利用した低圧蒸気のランキンサイクルでは、シリンダライナー1及びシリンダヘッド3等の発熱部分の周囲を冷却している冷却液室6及び蒸気発生タンク10に、炉筒ボイラと同様な役割をさせていることになるので、前記図16の従来装置のように、機関冷却水と二次熱媒体との間で熱交換するための新たな熱交換器は不要であり、コストを低減できる。
【0046】
また、上記蒸気発生タンク10内の圧力調節により、冷却液室6内の温度を飽和温度とし、冷却水の熱を、従来例の予熱程度の飽和蒸気温度で潜熱としても回収しているので、たとえば前記特許文献1のような、高圧蒸気系の予熱のために冷却水の顕熱を回収する構成よりも、多くの熱及び動力を回収することができる。
【0047】
図2は、本実施の形態におけるT−S線図(温度−エントロピ線図)であり、一点鎖線で示すグラフX1は、高圧蒸気発生器15内の排気ガスの温度変化、実線で示す折れ線X2は、高圧蒸気発生器15内の冷却水(蒸気)の温度変化、破線で示す折れ線X3は、蒸気発生タンク10内での冷却水の温度変化を示している。該折れ線X3から分かるように、低圧蒸気のランキンサイクルでは、高圧蒸気(X2)と排気ガス(X1)の熱交換のピンチポイントPPの排気ガスの温度(T3)より低い場合でも、極端には、排気ガスの排出温度(T1)よりも低い温度(飽和温度)でも、蒸気発生タンク10内で十分に低圧の蒸気(X3)を発生させることができ、冷却水の排熱を、潜熱として効率良く回収できるのである。
【0048】
[第2の実施の形態]
図3〜図6は、本願発明の第2の実施の形態であり、図1の第1の実施の形態と比較して、内燃機関1の冷却液室6及び低圧用の蒸気発生タンク10をそれぞれ2つに仕切っていることと、低圧用の第1の膨張機21として混合型を用いていることが異なっているが、その他の構造は図1の第1の実施の形態と同じであり、図1と同じ部品等には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0049】
図3において、内燃機関1の冷却液室6は、シリンダライナー2のように温度上昇の小さい部分を囲む低温側の第1の冷却室部分7と、シリンダヘッド3及び排気ポート14aのように温度上昇の大きい部分を囲む高温側の第2の冷却室部分8に仕切られており、これに対応して、冷却液室6の上端に配置された蒸気発生タンク10も、低温側の第1の冷却液室部分7に連通する第1の蒸気発生タンク11と、高温側の第2の冷却液室部分8に連通する第2の蒸気発生タンク12とに仕切っている。
【0050】
第1の蒸気発生タンク11内は、第1の冷却室部分7内の、温度上昇の小さい冷却水の飽和温度に対応する圧力に設定されており、第2の蒸気発生タンク12内は、第2の冷却室部分8の、温度上昇の大きい冷却水の飽和温度に対応する圧力に設定されている。第2の冷却液室部分8の冷却水の飽和温度が、第1の冷却液室部分7の冷却水の飽和温度よりも高いことから、第2の蒸気発生タンク12内は第1の蒸気発生タンク11内よりも高い内圧に設定されており、それにより、第2の蒸気発生タンク12内では、第1の蒸気発生タンク11内よりも相対的に高圧の蒸気を発生する。
【0051】
第1、第2の蒸気発生タンク11,12のうち、相対的に高圧の第2の蒸気発生タンク12の蒸気出口12bは、蒸気配管45を介して第1の膨張機21の蒸気入口21aに接続し、相対的に低圧の蒸気を発生する第1の蒸気発生タンク11の蒸気出口11bは、蒸気配管47を介して第1の膨張機21の、前記蒸気入口21aよりも下流の膨張途中部分の中間蒸気入口21cに接続している。
【0052】
図4は混合型の第1の膨張機21として、多段式蒸気タービンを用いた例を示している。同一のタービン出力軸54上に、蒸気入口21a側から順に、小径の高圧段タービン部51、中径の中圧段タービン部52及び大径の低圧段タービン部53を備えており、各タービン部51,52,53は、それぞれ固定翼51a,52a,53aと回転翼51b,52b,53bから構成されている。3つのタービン部51,52,53のうち、高圧段タービン部51の固定翼51aに、前記高圧蒸気発生器15に接続する蒸気入口21aが設けられ、低圧段タービン部53の固定翼53aに、前記第1の蒸気発生タンク11に接続する中間蒸気入口21cが設けられている。
【0053】
本実施の形態における作動は、低圧用の第1の膨張機21に関する作動を除いては、第1の実施の形態と基本的には同様である。すなわち、低圧用の第1の膨張機21において、膨張途中に、第1の蒸気発生タンク11の低圧蒸気を中間蒸気入口21cから追加導入することになり、蒸気入口21aのみから蒸気を供給する構造に比べ、膨張終了に至るまで膨張室内圧力を高く保ち続けることができ、効率よく膨張仕事が行え、多くの動力が回収できるのである。
【0054】
[第3の実施の形態]
本願発明の第3の実施の形態は、前記図3のように、冷却液室6及び蒸気発生タンク10を、低温側の第1の冷却液室部分7及び第1の蒸気発生タンク11と、高温側の第2の冷却液室部分8及び第2の蒸気発生タンク12とに仕分けると共に、第1の膨張機21が混合型である排熱回収装置において、混合型の第1の膨張機21として、図5に示す容積型のスクロール型の膨張機を用いた例である。すなわち、第1の膨張機21の構造以外は、図3の第2の実施の形態と同じである。
【0055】
図5のAにおいて、スクロール型の第1の膨張機21は、密閉ケース(図示せず)内に、渦巻翼60aを有する固定側スクロール60と、該固定側スクロール60の渦巻翼60aに噛み合う渦巻翼61aを有する揺動側(旋回側)スクロール61を備え、両渦巻翼60a,61a間で、中心部から外周へ向けて部屋の容積が順次大きくなる複数の膨張室65を形成しており、静止状態の固定側スクロール60に対し、揺動側スクロール61が、自転せずに旋回(径方向に揺動)するように構成されている。
【0056】
膨張始めの部屋のある中心に蒸気入口21aが形成されており、該蒸気入口21aには、図3の高温側の第2の蒸気発生タンク12が接続し、相対的に高圧の蒸気が導入されるようになっている。一方、中間蒸気入口21cは、上記中心から一定距離離れた固定側スクロール60の渦巻翼60aの近傍位置に、翼厚さ程度の大きさに形成されており、前記図3の低温側の第1の蒸気発生タンク11に接続し、相対的に低圧の蒸気が膨張途中の膨張室65に導入されるようになっている。前記中間蒸気入口21cは、中心に対して対称な位置に一対配置されている。なお、固定側スクロール60の渦巻翼60aは実線で記載しているが、これとの区別を明確にするために、揺動側スクロール61の渦巻翼61aは破線で示し、また、説明の対象となる膨張室65は多数の打点で示している。
【0057】
図5のAの状態は、相対的に低圧の蒸気を、中間蒸気入口21cから膨張途中の膨張室65に導入した直後の状態である。図5のBの状態は、中間蒸気入口21cを締め切る直前の状態である。図5のCの状態は、中間蒸気入口21cを締め切った後の状態である。
【0058】
図6は、図5の混合型のスクロール型膨張機21における膨張室65内の圧力変化を示しており、実線で示す水平状の直線W1は、図5の蒸気入口21aが開口している膨張機中心の圧力であり、実線で示す折れ線W2は、膨張途中で中間蒸気入口21cから追加の蒸気を導入する場合の膨張室内圧力の変化であり、破線で示す折れ線W3は、中間蒸気入口21cから膨張途中で蒸気を追加しない場合の膨張室内圧力の変化である。
【0059】
揺動スクロール61の揺動角度がθ1の時に、中間蒸気入口21cから低圧の蒸気を追加することにより、本実施の形態(W2)では、角度θ1から角度θ2の膨張過程において、圧力低下を極めて少ない値に抑えることができる。一方、折れ線(W3)のように、中間蒸気入口21cから追加の蒸気を導入しない場合には、角度θ1から角度θ2の膨張過程において、圧力が大きく低下し、続いて次の角度θ3に至る間に、圧力はさらに低下する。すなわち、本実施の形態によると、膨張途中で蒸気を追加することにより、膨張室内圧力を膨張終了まで高く保ち、多くの動力が回収できるのである。
【0060】
また、本実施の形態のようにスクロール型膨張機(容積型膨張機)を使用している場合には、前記図4の蒸気タービン(速度型膨張機)を使用する場合に比べ、ドラッグ増加による効率低下やエロージョンの発生を抑えることができる。このことは、混合型膨張機だけでなく、図1のように蒸気入口21aのみから蒸気を供給する通常の膨張機においても言えることである。
【0061】
すなわち、第1の膨張機21内で飽和蒸気を膨張させる場合、乾き蒸気から湿り蒸気となり、湿り度が大きくなると、蒸気タービンのように速度型の膨張機の場合には、ドラッグが増加して効率が低下し、また、エロージョンが発生する可能性がある。これに対して、スクロール型のような容積型の膨張機21であれば、一部液化した媒体は、密閉室のシールの役目を果たし、却って効率が向上し、また、速度型に比べて揺動スクロール等の回転は遅いため、エロージョンが発生する心配もない。
【0062】
[第4の実施の形態]
図7は本願発明の第4の実施の形態であり、図1の第1の実施の形態と比較して、第2の膨張機22の蒸気出口22bの圧力を、蒸気発生タンク10の内圧とほぼ等しくなるように設定すると共に、上記蒸気出口22bからの蒸気を、蒸気発生タンク10からの蒸気と合流させて、第1の膨張機21の蒸気入口21aに供給するようにした構造が、異なっている。その他の構造は第1の実施の形態の図1と同様であり、図1と同じ部品等には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0063】
該実施の形態によると、高圧用の第2の膨張機22の膨張比を小さくすることができ、これにより、たとえば第2の膨張機22が蒸気タービン型(速度型)の膨張機であれば、タービン段数を減らすことができ、また、スクロール型(容積型)の膨張機であれば、膨張室の数を減らすことが可能となり、いずれにしても、第2の膨張機22を小形化できると共にコストを低減することができる。
【0064】
[第5の実施の形態]
図8は本願発明の第5の実施の形態であり、図1の第1の実施の形態と比較して、負荷装置として、単一の発電機70を備え、該単一の発電機70の発電軸の一端部に、低圧用の第一の膨張機21を連結し、他端部に高圧用の第2の膨張機22を連結している構造が異なるが、その他の構造は第1の実施の形態の図1と同様であり、図1と同じ部品等には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0065】
該実施の形態によると、内燃機関1の排熱を、発電機70で電気エネルギーとして回収する場合に、排熱回収装置の小形化及び低コスト化が達成できる。
【0066】
[第6の実施の形態]
図9は本願発明の第6の実施の形態であり、前記図8の第5の実施の形態の単一の発電機70を備えた構造と、図7の第4の実施の形態の、第2の膨張機22の蒸気出口22bを第1の膨張機21の蒸気入口21aに接続した構造と、を組み合わせた構造である。その他の構造は図1と同様であり、図1と同じ部品等には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0067】
すなわち、負荷装置として一つの発電機70を備え、該発電機70の発電軸の両端部に、第1の膨張機21と第2の膨張機22をそれぞれ連結しており、また、第2の膨張機22の蒸気出口22bの圧力を、蒸気発生タンク10の内圧とほぼ等しくなるように設定すると共に、上記蒸気出口22bからの蒸気を、蒸気配管48を介して蒸気発生タンク10からの蒸気と合流させ、第1の膨張機21の蒸気入口21aに供給するように構成してある。
【0068】
該実施の形態によると、高圧用の第2の膨張機22の膨張比を小さくすることができ、これにより、たとえば第2の膨張機22が蒸気タービン型の膨張機であれば、タービン段数を減らすことができ、また、スクロール型の膨張機であれば、膨張室の数を減らすことが可能となり、いずれにしても、第2の膨張機22のコストを低減することができる。
【0069】
また、内燃機関1の排熱を、発電機70で電気エネルギーとして回収する場合に、排熱回収装置の小形化及び低コスト化が達成できる。
【0070】
[第7の実施の形態]
図10は本願発明の第7の実施の形態であり、前記図8の第5の実施の形態の単一の発電機70を備えた構造と、図4の第2の実施の形態の、冷却液室6及び蒸気発生タンク10を、低温側の第1の冷却液室部分7及び第1の蒸気発生タンク11と、高温側の第2の第2の冷却室部分8及び第2の蒸気発生タンク12に仕分けた構造とを、組み合わせた構造である。その他の構造は図1と同様であり、図1と同じ部品等には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0071】
すなわち、負荷装置として、一つの発電機70を備え、該一つの発電機70の発電軸の両端部に、第1の膨張機21と第2の膨張機22をそれぞれ連結している。そして、内燃機関1の冷却液室6は、シリンダライナー2のように温度上昇の少ない部分を囲む第1の冷却室部分7と、シリンダヘッド3及び排気ポート14aのように温度上昇の多い部分を囲む第2の冷却室部分8に仕切られており、これに対応して、蒸気発生タンク10も、前記第1の冷却液室部分7に連通する低温側の第1の蒸気発生タンク11と、前記第2の冷却液室部分8に連通する高温側の第2の蒸気発生タンク12とに仕切っている。
【0072】
前記第1の蒸気発生タンク11内は、第1の冷却室部分7内の温度上昇の少ない冷却水の飽和温度に対応する圧力に設定されており、第2の蒸気発生タンク12内は、第2の冷却室部分8の温度上昇の多い冷却水の飽和温度に対応する圧力に設定されている。第2の冷却液室部分8の冷却水の飽和温度が、第1の冷却液室部分7の冷却水の飽和温度よりも高いことから、第2の蒸気発生タンク12内は第1の蒸気発生タンク11内よりも高い内圧に設定されており、それにより、第2の蒸気発生タンク12内では、第1の蒸気発生タンク11内よりも相対的に高圧の蒸気を発生する。
【0073】
第2の蒸気発生タンク12の蒸気出口12bは、第1の膨張機21の蒸気入口21aに接続し、相対的に低圧の蒸気を発生する第2の蒸気発生タンク11の蒸気出口11bは、第1の膨張機21の前記蒸気入口21aよりも下流の膨張途中部分の中間蒸気入口21cに接続している。
【0074】
該実施の形態によると、内燃機関の排熱を、発電機70で電気エネルギーとして回収する場合に、排熱回収装置の小形化及び低コスト化が達成できる。
【0075】
また、低圧用の第1の膨張機21において、膨張途中で、低温側の第1の蒸気発生タンク11からの低圧の蒸気を追加導入するので、従来のように蒸気入口21aのみから蒸気を供給する構成に比べ、膨張終了に至るまで膨張室内圧力を高く保ち、多くの動力が回収できるのである。
【0076】
[第8の実施の形態]
図11は本願発明の第8の実施の形態であり、負荷装置として、一つの発電機70を備え、該一つの発電機70の発電軸の端部に一つの混合型の膨張機71を連結しており、かかる構造に加え、図4の第2の実施の形態と同様に、冷却液室6及び蒸気発生タンク10を、低温側の第1の冷却液室部分7及び第1の蒸気発生タンク11と、高温側の第2の冷却室部分8及び第2の蒸気発生タンク12に仕切っている。
【0077】
単一の膨張機71は、蒸気入口71aと、中間蒸気入口71cと、該中間蒸気入口71cよりも下流側の下流側蒸気入口71dを備えており、高圧蒸気発生器15の蒸気出口16bを膨張機71の蒸気入口71aに接続し、高温側の第2の蒸気発生タンク12の蒸気出口12bを膨張機71の中間蒸気入口71cに接続し、低温側の第1の蒸気発生タンク11の蒸気出口11bを膨張機71の下流側蒸気入口71dに接続している。その他の構造は図1と同様であり、図1と同じ部品等には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0078】
図12は、図11の混合型の膨張機71の一例であり、3段式蒸気タービンに適用した例を示している。該膨張機71は、同一のタービン出力軸54上に、蒸気入口21a側から順に、小径の高圧段タービン部51、中径の中圧段タービン部52及び大径の低圧段タービン部53を備えており、各タービン部51,52,53は、それぞれ固定翼51a,52a,53a及び回転翼51b,52b,53bから構成されている。3つのタービン部51,52,53のうち、高圧段タービン部51の固定翼51aに蒸気入口71aを設け、該蒸気入口71aに高圧蒸気発生器15の蒸気出口16bを接続し、中圧段タービン部52の固定翼52aに中間蒸気入口71cを設け、該中間蒸気入口71cに第2の蒸気発生タンク12の蒸気出口12bを接続し、低圧段タービン部53の固定翼53aに下流側蒸気入口71dを設け、該下流側蒸気入口71dに第1の蒸気発生タンク11の蒸気出口11bを接続している。
【0079】
該実施の形態によると、単一の膨張機71と単一の発電機(負荷装置)70を備えているので、コストを低減できる。また、膨張途中で、第2の蒸気発生タンク12と第1の蒸気発生タンク11から、2段階に分けて順次蒸気を追加導入するので、図4のように、膨張途中で一度だけ低圧蒸気を追加する構造に比べても、膨張終了に至るまで膨張室内圧力をさらに高く保ち、多くの動力が回収できるのである。
【0080】
[第9の実施の形態]
本願発明の第9の実施の形態は、前記図11の第8の実施の形態のように、混合型の単一の膨張機71と単一の発電機7を備え、冷却液室6及び蒸気発生タンク10を、低温側の第1の冷却液室部分7及び第1の蒸気発生タンク11と、高温側の第2の冷却液室部分8及び第2の蒸気発生タンク12とに仕切っている排熱回収装置において、混合型の第1の膨張機71として、図13に示す容積型のスクロール型の膨張機71を備えている。混合型の第1の膨張機71の構造以外は、前記図11の第8の実施の形態と同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0081】
図13のAにおいて、スクロール型の第1の膨張機71は、密閉ケース(図示せず)内に、渦巻翼60aを有する固定側スクロール60と、該固定側スクロール60の渦巻翼60aに噛み合う渦巻翼61aを有する揺動側(旋回側)スクロール61を備え、両渦巻翼60a,61a間で、中心部から外周へ向けて部屋の容積が順次大きくなる複数の膨張室65を形成しており、静止状態の固定側スクロール60に対し、揺動側スクロール61が、自転せずに径方向に揺動(旋回)するように構成されている。
【0082】
前記高圧蒸気発生器15に接続する蒸気入口71aは、膨張始めの部屋のある中心に形成され、前記第2の蒸気発生タンク12に接続する中間蒸気入口71cは、上記中心から一定距離離れた固定側スクロール60の渦巻翼60aの近傍位置に、翼厚さ程度の大きさに形成され、前記第1の蒸気発生タンク11に接続する下流側蒸気入口71dは、前記中間蒸気入口71cからさらに径方向の外方に配置され、固定側スクロール60の渦巻翼60aの近傍位置に、翼厚さ程度の大きさに形成されている。
【0083】
図13のAは、中間蒸気入口71cから、高温側の第2の蒸気発生タンク12の蒸気を導入した直後の状態を示しており、図13のBは、さらに膨張が進み、下流側蒸気入口71dが、相対的に低い圧力の蒸気を膨張室65に導入した直後の状態を示している。
【0084】
該実施の形態のように、蒸気入口71aから高圧の蒸気を導入後、膨張過程において、中間蒸気入口21cから相対的に高圧の蒸気を追加し、さらにその後、下流側蒸気入口21dから相対的に低圧の蒸気を追加していると、前記図5のように、膨張過程で一回だけ蒸気を追加する構造に比べても、膨張室65内の圧力を膨張終了まで高く維持でき、より多くの動力を回収することができる。
【0085】
[第10の実施の形態]
前記第1〜第9の実施の形態において、高圧蒸気発生器15に接続する第2の膨張機22又は膨張機71が容積型である場合に、高圧蒸気発生器15として飽和蒸気ボイラを備える。
【0086】
該実施の形態によると、第2の膨張機22又は共用型の膨張機71において、蒸気の湿り度が大きくなっても良いので、過熱器が不要となる。すなわち、過熱器に必要なコストを削減できる。
【0087】
ちなみに、蒸気タービンのような速度型膨張機を用いる場合には、図14のように、膨張後の蒸気の湿り度が大きくなるのを防ぐためには、矢印Eのように、飽和蒸気をさらに過熱する過熱器が必要となる。
[その他の実施の形態]
前記各内燃機関の排熱回収装置では、負荷装置として発電機を備えているが、その他の負荷装置を連結することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本願発明による排熱回収装置の第1の実施の形態を示す配管略図である。
【図2】第1の実施の形態におけるT−S線図である。
【図3】本願発明による排熱回収装置の第2の実施の形態を示す配管略図である。
【図4】第2の実施の形態の第1の膨張機の簡略断面図である。
【図5】本願発明による排熱回収装置の第3の実施の形態の第2の膨張機の簡略断面図である。
【図6】第3の実施の形態における膨張室内圧力変化を示す図である。
【図7】本願発明による排熱回収装置の第4の実施の形態を示す配管略図である。
【図8】本願発明による排熱回収装置の第5の実施の形態を示す配管略図である。
【図9】本願発明による排熱回収装置の第6の実施の形態を示す配管略図である。
【図10】本願発明による排熱回収装置の第7の実施の形態を示す配管略図である。
【図11】本願発明による排熱回収装置の第8の実施の形態を示す配管略図である。
【図12】第8の実施の形態の膨張機の簡略断面図である。
【図13】本願発明による排熱回収装置の第9の実施の形態の膨張機の簡略断面図である。
【図14】第9の実施の形態のT−S線図である。
【図15】熱交換器における一般的な温度−交換熱量線図である。
【図16】従来の排熱回収装置の一例を示す配管略図である。
【図17】図16の従来の排熱回収装置において、熱交換器の一次媒体に予熱を施した場合の温度−交換熱量線図である。
【符号の説明】
【0089】
1 内燃機関
2 シリンダライナー
3 シリンダヘッド
6 冷却液室
7 低温側の第1の冷却室部分
8 高温側の第2の冷却室部分
10 蒸気発生タンク(ホッパータンク)
11 低圧側の第1の蒸気発生タンク
12 高圧側の第2の蒸気発生タンク
14 排気管
14a 排気ポート
21 低圧用の第1の膨張機
21a 蒸気入口
21b 蒸気出口
21c 中間蒸気出口
22 高圧用の第2の膨張機
22a 蒸気入口
22b 蒸気出口
24 第1の発電機(負荷装置の一例)
25 第2の発電機(負荷装置の一例)
27 凝縮器
51 高圧段タービン部
52 中圧段タービン部
53 低圧段タービン部
71 共用型の膨張機
71a 蒸気入口
71b 蒸気出口
71c 中間蒸気出口
71d 下流側中間蒸気出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の冷却液室に連通する蒸気発生タンクであって、該タンク内の圧力を、冷却に必要な媒体温度に対応する飽和圧力に保つことにより、機関冷却に使用後の冷却液から低圧の蒸気を得る蒸気発生タンクと、
該蒸気発生タンクから供給される低圧の蒸気を膨張させることにより動力を得る低圧用の第1の膨張機と、
機関冷却に使用前の冷却液の一部を取り入れ、内燃機関の排気ガスと熱交換することにより、前記蒸気発生タンクの蒸気よりも高圧の蒸気を得る高圧蒸気発生器と、
該高圧蒸気発生器から供給される高圧の蒸気を膨張させることにより、前記第1の膨張機とは独立して動力を得る高圧用の第2の膨張機と、
各膨張機から排出される膨張後の蒸気を液化させると共に、液化後の冷却液を内燃機関の冷却液室及び前記高圧蒸気発生器に供給する凝縮器と、
を備えたことを特徴とする排熱回収装置。
【請求項2】
請求項1記載の排熱回収装置において、
前記冷却液室を、冷却液上昇温度の異なる高温側の冷却液室部分と低温側の冷却液室部分に仕切り、
前記蒸気発生タンクを、前記低温側の冷却液室部分に連通する第1の蒸気発生タンクと、前記高温側の冷却液室部分に連通する第2の蒸気発生タンクとに分割し、
前記第1、第2の蒸気発生タンクのうち、相対的に高い圧力の蒸気を発生する第2の蒸気発生タンクを、第1の膨張機の蒸気入口に接続し、
相対的に低い圧力の蒸気を発生する第1の蒸気発生タンクを、第1の膨張機の前記蒸気入口よりも下流の膨張途中部分に接続していることを特徴とする排熱回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の排熱回収装置において、
第1の膨張機と第2の膨張機は、それぞれ独立の発電機に連結していることを特徴とする排熱回収装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の排熱回収装置において、
一つの発電機の発電軸の一端に第1の膨張機を連結し、他端に第2の膨張機を連結している排熱回収装置。
【請求項5】
請求項1記載の排熱回収装置において、
高圧用の第2の膨張機の蒸気出口の圧力を、蒸気発生タンクの内圧とほぼ同じ圧に保ち、上記蒸気出口を、凝縮器に接続する代わりに、低圧用の第1の膨張機の蒸気入口に供給するようにしていることを特徴とする排熱回収装置。
【請求項6】
内燃機関の冷却液室を、冷却液上昇温度の異なる高温側の冷却液室部分と低温側の冷却液室部分に仕切り、
前記低温側の冷却室部分に連通する第1の蒸気発生タンクであって、該タンク内の圧力を、冷却に必要な媒体温度に対応する飽和圧力に保つことにより、機関冷却に使用後の冷却液から蒸気を得る第1の蒸気発生タンクと、
前記高温側の冷却室部分に連通する第2の蒸気発生タンクであって、該タンク内の圧力を、前記第1の蒸気発生タンク内の圧力よりも高くすることにより、機関冷却に使用後の冷却液から、上記第1の蒸気発生タンクの蒸気よりも高圧の蒸気を得る第2の蒸気発生タンクと、
機関冷却に使用前の冷却液の一部を取り入れ、内燃機関の排気ガスと熱交換することにより、前記各蒸気発生タンクの蒸気よりも高圧の蒸気を得る高圧蒸気発生器と、
前記高圧蒸気発生器の蒸気を取り入れる蒸気入口と、前記第2の蒸気発生タンクの蒸気を膨張途中から取り入れる中間蒸気入口と、該中間蒸気入口よりも下流の膨張途中で前記第1の蒸気発生タンクの蒸気を取り入れる下流側蒸気入口とを有する膨張機と、
該膨張機から排出される膨張後の蒸気を液化させると共に、液化後の冷却液を内燃機関の冷却液室及び前記高圧蒸気発生器に供給する凝縮器と、
を備えたことを特徴とする排熱回収装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の排熱回収装置において、
前記膨張機は速度型膨張機であることを特徴とする排熱回収装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の排熱回収装置において、
前記膨張機は容積型膨張機であることを特徴とする排熱回収装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の排熱回収装置において、
高圧蒸気発生器は、飽和ボイラであることを特徴とする排熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−316704(P2006−316704A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140528(P2005−140528)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】