説明

掘進機

【課題】 カッタとその周辺に固着・固結した土砂を、的確に除去し得る掘進機を提供すること。
【解決手段】 カッタ5における掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって、高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射可能に噴射孔を設けた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタやチャンバ内における掘削土砂の固着しやすい個所に、土砂が固着し固結したときに、その土砂を除去する機能を付与した掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種掘進機としての泥水掘進機では、掘進時には掘削すべき地山(切羽)を泥水圧で保持し、カッタにより掘進して行く。
【0003】
カッタは、地山を掘削するカッタビットを設けたカッタスポークとカッタ面板で覆われている。そして、カッタ面板にカッタスリットを設け、このカッタスリットを通じてチャンバ内に掘削土砂を取り込むようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、掘進機による地山の掘進時には、前述のごとく泥水圧で地山を抑えているが、泥水圧だけによる地山の保持では、数時間や数日間の停止期間において地山の安定性に不安があり、このため泥水圧式ではカッタ面板を装備している。
【0005】
ところが、泥水掘進機では次のような個所および条件により、カッタとその周辺に掘削土砂が固着・固結し、その結果、次のような弊害が生じる不具合があった。
【0006】
[土砂が固着・固結しやすい個所]
(1)カッタ面板部
(2)カッタスポークに装着しているカッタビット間
(3)相対的に周速度の遅い掘進機中央部で、複数のカッタスポークの取り付け部
(4)カッタスリット部の側面、特に掘削土砂の取り込み速度が遅い掘進機中央部
【0007】
前記掘削土砂の固着・固結は、カッタにおける狭隘で固着が発生しやすい個所から、固着・固結範囲が拡大して行く。
【0008】
[土砂が固着・固結しやすい条件]
(1)粘性土分が地山に20〜30%以上含まれていて、掘削土砂に粘性が生じる場合であり、特に硬質粘性土では固着が激しくなる。
(2)泥水シールドのカッタの回転数は、外周の速度を15〜20m/minを標準に設定している。
ここで、カッタの中央部は相対的に周速度が遅く、掘削土砂が滞留しやすく、土砂が固着しやすい。
【0009】
[土砂の固着・固結による弊害]
(1)カッタ全般に掘削土砂が固着すると、固着土砂と切羽の切削面が接することになり、カッタトルクが増大する。
(2)カッタビットの出代が掘削土砂の固着によって無くなることで、切削効果が低下する。
(3)カッタ全般の固着と、切削効果の低下によって、カッタトルクが増大するとともに、推進力の増大を招く。
(4)推進力が増大することで、経済的な掘進速度を確保することが困難となる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、カッタとその周辺に固着した掘削土砂を、的確に除去し得る掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明の請求項1記載の発明では、カッタにおける掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって、高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射可能に噴射孔を設けている。
【0012】
本発明の請求項2記載の発明では、カッタ5における掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって、高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射可能に噴射孔25、26、27を設け、チャンバ20内のカッタ5の背面や隔壁3の前面、フード4の内面における掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって、スライド自在な高圧水噴射攪拌装置33に攪拌棒38および高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射可能に噴射孔39を設け、前記複数の噴射孔を高圧水配管を介して、高圧水生成・圧送設備43に接続している。
【0013】
本発明の請求項3記載の発明では、カッタ54およびアジテータ64の掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって高圧水を噴射可能に噴射孔71、72、73、74を設け、前記噴射孔71、72、73、74をアジテータ駆動軸65に連結されたスイベルジョイント75に接続した高圧水配管76を介して、高圧水生成・圧送設備に接続している。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3いずれか記載の掘進機において、高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を供給する高圧水配管31、41、76に高圧空気配管を接続し、高圧空気を供給可能としたことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、カッタを旋回させながら掘進するトンネル掘進機のカッタ54およびアジテータ64の掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって高圧水を噴射可能に噴射孔71、72、73、74を設け、前記噴射孔71、72、73、74をアジテータ駆動軸65に連結されたスイベルジョイント75に接続した高圧水配管76を介して、高圧水生成・圧送設備に接続し、かつ前記スイベルジョイント75に、泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を供給する作泥土材注入配管77を接続し、前記高圧水と泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を混合し、かつ前記泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射する作泥土材噴射孔78を前記カッタ54に設け、前記作泥土材注入配管77は作泥土材生成・圧送設備に接続されたことを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の掘進機において、高圧水を供給する前記高圧水配管に高圧空気配管を接続し、かつ前記作泥土材注入配管77に高圧空気配管を接続し、高圧空気を供給可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1記載の発明では、噴射孔から、カッタ面板やカッタビット間、カッタスポークの取り付け部、カッタスリット部における掘進機の中央部等、掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって、時宜に高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射し、固着した掘削土砂を除去する。したがって、この請求項1記載の発明によれば、カッタ5への掘削土砂の固着・固結によりカッタトルクが増大するという不具合や、推進力が増大する不具合、推進力の増大に伴い、経済的な掘進速度が阻害される不具合等を解消し得る効果がある。
【0018】
また、本発明の請求項2記載の発明では、噴射孔から、カッタ5における掘削土砂の固着・固結しやすい個所に高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射するほかに、他の噴射孔から、チャンバ20内のカッタ5の背面や隔壁3の前面、フード4の内面における掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって、時宜に高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射し、固着した掘削土砂を除去する。したがって、この請求項2記載の発明によれば、カッタ5に固着・固結した掘削土砂による不具合を解消できるほかに、カッタ5の背面や隔壁3の前面、フード4の内面に固着・固結した掘削土砂による不具合をも解消し得る効果がある。
【0019】
本発明の請求項3記載の発明によれば、高圧水生成・圧送設備→高圧水配管76→噴射孔71、72、73、74に高圧水を圧送し、これらの噴射孔71、72、73、74からカッタ54およびアジテータ64における掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって高圧水を噴射するようにしているので、カッタ54やアジテータ64に掘削土砂が固着し固結することによる不具合を解消し得る効果がある。
【0020】
本発明の請求項4記載の発明によれば、高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を選択的に固着した掘削土砂に対し噴射し、固着した掘削土砂の性状にかかわらず容易にそれを除去することができる。
【0021】
本発明の請求項5記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加え、スイベルジョイント75に作泥土材注入配管77を設けたため、泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を混合して噴射することができるので、頑固に付着し固着した掘削土砂であっても速やかに除去することができる。
【0022】
本発明の請求項6記載の発明によれば、高圧空気を混入できるので、同じく頑固に付着し固着した掘削土砂であっても速やかに除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0024】
図1〜図6は本発明の実施例1を示すもので、図1は本発明を適用した掘進機としての泥水掘進機の正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は図2のC部分の拡大図、図5は図2のD−D線拡大断面図、図6は図1のE−E線拡大断面図である。
【0025】
これら図1〜図6に示す実施例1の泥水掘進機1は、図1および図2に示すように、外筒2と、隔壁3と、フード4と、カッタ5と、カッタ回転駆動装置15と、チャンバ20と、アジテータ21と、排泥管23と、送泥管24と、高圧水の第1、第2、第3の噴射孔25、26、27と、高圧水噴射攪拌装置33と、これに設けられた高圧水の第4の噴射孔39と、高圧水生成・圧送設備43等を備えて構成されている。
【0026】
前記カッタ5は、図1,図2に示すように、外周リング6と、連結部材8によりこの実施例では十字形に結合されかつ外周リング6内に固定されたカッタスポーク7と、扇形に形成され,カッタスポーク7の側面との間にカッタスリット10を有して配置され,かつ外周リング6内に固定されたカッタ面板9と、カッタスポーク7の中心部の前面に設けられたセンタビット11と、各カッタスポーク7の前面に,互いに縦・横方向に所定の間隔をおいて多数取り付けられたカッタビット12と、カッタ5の中心部に取り付けられ,かつ隔壁3に装着された軸受13に支持されたカッタ支持軸14とを有して構成されている。
【0027】
前記カッタ回転駆動装置15は、図2に示すように、隔壁3の背面に固定されたギアボックス16と、このギアボックス16の背面に取り付けられた回転駆動源17と、この回転駆動源17の出力軸に取り付けられかつギアボックス16内に収容されたピニオン18と、このピニオン18に噛み合わされ,前記カッタ支持軸14に取り付けられかつギアボックス16内に収容されたギア19とを有している。そして、このカッタ回転駆動装置15では前記ピニオン18とギア19とにより減速機構が構成され、カッタ支持軸14を介してカッタ5を回転駆動するようになっている。
【0028】
前記カッタ支持軸14におけるギアボックス16から突出された端部には、図2に示すように、スイベルジョイント30が装着されている。
【0029】
前記チャンバ20は、図2に示すように、カッタ5と、隔壁3と、フード4とにより囲まれて形成されている。このチャンバ20内には、前記カッタスポーク7の側面とカッタ面板9間に形成されたカッタスリット10を通じて掘削土砂を取り込むようになっている。
【0030】
前記アジテータ21は、図2に示すように、チャンバ20内に配置されている。また、このアジテータ21は隔壁3の背面側に設置されたアジテータ駆動装置22に連結されている。このアジテータ21は、泥水で満たされたチャンバ20内に取り込んだ掘削土砂が沈降して固まらないようにかき混ぜるようになっている。
【0031】
前記排泥管23は、地山を安定的に保持し得る範囲内で圧力を保持しながら、チャンバ20内の掘削土砂が取り込まれた泥水を排出する。
【0032】
前記送泥管24は、チャンバ20内の圧力を設定値に維持するために、排泥管23によって排出される排泥量と調整しながらチャンバ20内に泥水を補充する。
【0033】
前記第1の噴射孔25は、図1,図2,図3,図4および図6に示すように、カッタスポーク7の内部から前面に向かい,かつカッタビット12,12間に設けられている。図4に示すように、第1の噴射孔25から噴射される高圧水は、後方あるいは横方向に放射状に噴射されるため、固着土砂を的確に除去することができる。また、高圧水を切羽方向に向けて噴射しないため、切羽を乱すことがない。各第1の噴射孔25には、第1の噴射管28が接続されている。各第1の噴射管28は、カッタスポーク7の内部を通り、カッタ支持軸14の内部を経て前記スイベルジョイント30に配管されている。
【0034】
前記第2の噴射孔26は、図2,図3,図5および図6に示すように、カッタスポーク7の内部から両側面に向かい,かつ当該カッタスリット10に臨ませて設けられている。各第2の噴射孔26には、第2の噴射管29が接続されている。各第2の噴射管29は、カッタスポーク7の内部を通り、カッタ支持軸14の内部を経てスイベルジョイント30に配管されている。
【0035】
前記第3の噴射孔27は、図1に示すように、主に各カッタ面板9におけるカッタ5の中心部寄りに多く設けられている。第3の噴射孔27を主に前述の位置に設けた理由は、相対的にカッタ5の周速度が遅く、カッタ面板9におけるこの位置付近に、掘削土砂が固着・固結しやすいからである。しかして、各第3の噴射孔27には第3の噴射管(図示せず)が接続されている。各第3の噴射管は、カッタ支持軸14の内部を経てスイベルジョイント30に配管されている。この第3の噴射孔27は(詳細は図示せず)、第1の噴射孔25とほぼ同様な形状をしており、切羽切削面に噴射されず、掘削土砂が固着する面板部に向かって高圧水が噴射される吐出口の形状をなしている。これによって、切羽面を乱すことなく、固着した掘削土砂を除去することができる。
【0036】
前記スイベルジョイント30には、前記第1、第2の噴射管28、29および第3の噴射管(図示せず)に対応させて高圧水配管31が複数本接続されている。
【0037】
前記高圧水噴射攪拌装置33は、図2に示すように、隔壁3の背面に固定された台座34と、この台座34に設置されたスライドジャッキ35と、このスライドジャッキ35に搭載された攪拌棒回転駆動装置36と、この攪拌棒回転駆動装置36から隔壁3を通ってチャンバ20内に向かって設けられた攪拌棒支持軸37と、この攪拌棒支持軸37の端部に、互いに回転方向に位相をずらして取り付けられた複数本の攪拌棒38と、各攪拌棒38の内部からチャンバ20に向かって設けられた第4の噴射孔39と、前記攪拌棒支持軸37における攪拌棒回転駆動装置36側の端部に設けられたスイベルジョイント40と、各第4の噴射孔39に接続され,かつ攪拌棒支持軸37の内部を経てスイベルジョイント40に配管された第4の噴射管(図示せず)と、この第4の噴射管に対応させてスイベルジョイント40に接続された高圧水配管41とを有して構成されている。そして、前記高圧水噴射攪拌装置33は隔壁3の周りに所定の間隔をおいて複数台設置されている。
【0038】
前記高圧水生成・圧送設備43は、図2に示すように、坑内の後続台車42上に積載されている。また、高圧水生成・圧送設備43は水槽44と、高圧ポンプ45とを有している。そして、この高圧ポンプ45に前記高圧水配管31、41が接続されている。高圧ポンプ45として、汎用ポンプでは4Mpaの高圧水を生成することができる。目的に応じて、10〜50Mpaの高圧ポンプを使用する。高圧水配管31,41には、高圧噴射を適宜選択できるバルブ(図示せず)を設け、目的部位の固着した掘削土砂を的確に除去できる。
【0039】
前述のごとく構成した泥水掘進機1において、地山(切羽)を掘削する場合は、カッタ回転駆動装置15によりカッタ支持軸14を介してカッタ5を回転させ、センタビット11と多数のカッタビット12とにより地山を掘削し、掘削地山を泥水圧とカッタ面板9とにより抑え、保持しながら掘進する。
【0040】
地山を掘削した掘削土砂を、カッタスポーク7とカッタ面板9間に形成されたカッタスリット10を通じて泥水で充満されたチャンバ20内に取り込み、その掘削土砂が沈降してチャンバ20内で固まらないように、アジテータ21によりかき混ぜる。また、泥水とともに掘削土砂を排泥管23によりチャンバ20から排出する。このとき、排泥管23によって排出量と調整しながら、送泥管24からチャンバ20内に泥水を補充し、チャンバ20内を設定圧に保持し、掘削地山を支え、泥水掘進機1を推進させ、掘進して行く。
【0041】
ところで、カッタ5の前面のカッタビット12,12間、カッタスリット10およびカッタ面板9に掘削土砂が固着・固結すると、カッタトルクおよび泥水掘進機1の推進力を増大とともに、カッタトルクが増大して良好な掘進状態が損なわれる。
【0042】
そこで、この実施例では時宜に、高圧水生成・圧送設備43の高圧ポンプ45から高圧水配管31および第1の噴射管28を通じて第1の噴射孔25に高圧水を圧送し、その高圧水を第1の噴射孔25からカッタ5の前面の当該カッタビット12,12間に噴射させ、カッタビット12,12間に固着した掘削土砂を除去する。これによって、掘削土砂の取り込みが容易となり、固着・固結によって増大したカッタトルクを好適な状態に回復することができる。
【0043】
また、前記高圧ポンプ45から高圧水配管31および第2の噴射管29を通じて第2の噴射孔26に高圧水を圧送し、その高圧水を第2の噴射孔26から当該カッタスリット10に向かって噴射させ、カッタスリット10の側面に固着した掘削土砂を除去する。これによって、掘削土砂の取り込みが良好となり、掘削土砂がカッタ部や面板部に溜まることが改善され、これらの部位での固着の低減にも効果がある。
【0044】
さらに、前記高圧ポンプ45から高圧水配管31および第3の噴射管を通じて第3の噴射孔27に高圧水を圧送し、その高圧水を第3の噴射孔27から当該カッタ面板9におけるカッタ5の中央部付近から噴射させ、カッタ面板9に固着した掘削土砂を除去する。これによって、固着・固結土砂が切羽面に接触することで、カッタトルクの増大、推力の増大を招いた不具合を解消することができる。
【0045】
前述のごとく、第1、第2、第3の噴射孔25、26、27から高圧水を噴射することにより、カッタ前面のカッタビット12,12間、カッタスリット10の側面およびカッタ面板9に固着した掘削土砂を除去することによって、カッタトルクおよび泥水掘進機1の推進力の増大を解消することができ、したがって経済的な掘進速度を確保することができる。
【0046】
また、この実施例では高圧水噴射攪拌装置33の攪拌棒回転駆動装置36を駆動し、攪拌棒支持軸37を介して各攪拌棒38を回転させるとともに、スライドジャッキ35を作動させ、攪拌棒回転駆動装置36および攪拌棒支持軸37を介して、攪拌棒38をカッタ5側寄りの位置と隔壁3側寄りの位置間を移動させることによって、チャンバ20内の掘削土砂と泥水とを攪拌し、混練する。
【0047】
そして、時宜に高圧水生成・圧送設備43の高圧ポンプ45から高圧水配管41および第4の噴射管(図示せず)を通じて第4の噴射孔39に高圧水を圧送し、その高圧水を第4の噴射孔39からチャンバ20の周辺の部位に向かって噴射させ、カッタ5の背面や隔壁3の前面、フード4の内面等に固着した掘削土砂を除去する。
【0048】
これにより、前記カッタ5の背面、隔壁3の前面およびフード4の内面等に掘削土砂が固着・固結することによって生じる不具合をも解消することができる。
【0049】
なお、この実施例1では、カッタスリット用の高圧水の噴射孔を、カッタスポーク7の側面に設けた第2の噴射孔26のほかに、カッタ面板9の側面に第2の噴射孔26と互い違いに設けても良い。
【0050】
また、チャンバ用の高圧水の噴射孔を、カッタ5の背面と隔壁3の前面とに互い違いに設けても良く、さらには前記高圧水噴射攪拌装置33の攪拌棒38に設けた第4の噴射孔39と、カッタ5の背面と隔壁3の前面とに設けた噴射孔とを併用するようにしても良い。
【0051】
また、高圧水の効果を高めるために、高圧空気を高圧水に混入することは周知の技術であり、効果的である。このとき、高圧水配管31、41(図2参照)等の途中に高圧空気を供給するための高圧空気配管(図示せず)を接続することで可能である。
【0052】
さらに高圧水の効果を高めるために、図2に示した水槽44内に入れる水に替え、送泥管24に供給する掘進用送泥水の泥水(濃度の薄いベントナイト主体の溶液)を供給し、これを高圧水の代用として高圧水配管31、41等へ供給し使用しても良い。または、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材の溶液(液体)を使用しても良い。
【0053】
水に替え掘進用送泥水を用いた場合、噴射の際、ベントナイト主体の溶液が固着した掘削土砂に対し勢い良く当たり、ベントナイトの作用により泥土化し、掘削土砂を容易に除去することができる。
【0054】
また、粘性低下材、分散材、あるいは気泡材の溶液を使用することで、各溶液の夫々の性状が噴射効果に加わり、固着した掘削土砂を泥土化したり、分離・分散したりすることで効果的に除去できる。加えて除去した部位(鋼材の表面)への掘削土砂の再固結化も防止することができる。なお、粘性低下材としては、ベントナイト、CMC、高分子系添加材が挙げられる。分散材としては、例えば商品名ネオミックスなど(合成カルボン酸など)を用いれば良い。気泡材としては、例えば商品名OK−1が存在する。
【実施例2】
【0055】
図7は本発明の実施例2を示すもので、本発明を適用した泥土圧掘進機の正面図、図8は図7の中央縦断側面図である。
【0056】
これら図7,図8に示す泥土圧掘進機50は、外筒51と、隔壁52と、フード53と、カッタ54と、複数台のカッタ回転駆動装置60と、チャンバ63と、アジテータ64と、アジテータ回転駆動装置67と、排土装置としてのスクリューコンベア70と、スイベルジョイント75等を備えている。
【0057】
前記カッタ54は、中心部から放射方向に延びる複数のカッタスポーク55を有している。各カッタスポーク55の前面には、この実施例2においても、カッタスポーク55の幅方向の両側に多数のカッタビット56が取り付けられている。また、各カッタスポーク55の幅方向のほぼ中央部には、カッタビット56と互い違いに第1の噴射孔71が多数設けられている。この第1の噴射孔71からは、前記カッタビット56,56間に向かって高圧水を噴射するようになっている。さらに、各カッタスポーク55の両側面には、第2の噴射孔72が多数設けられている。この第2の噴射孔72からは、該噴射孔72の取り付け部のカッタスポーク55側面部に向かって高圧水を噴射するようになっている。前記カッタスポーク55のボスとしてのカッタ54の中心部の前面には、フィッシュテール57が設けられている。前記カッタスポーク55のボスにおけるフィッシュテール57の周りには、第3の噴射孔73が互いに適正な間隔をおいて複数設けられている。この第3の噴射孔73からは、フィッシュテール57に向かって高圧水を噴射するようになっている。
【0058】
一方、前記カッタ54の背面には図8に示すように、複数本の攪拌翼58と、カッタ回転駆動軸59とが取り付けられている。
【0059】
前記カッタ回転駆動軸59は、互いに所定の間隔をおいて複数本取り付けられている。各カッタ回転駆動軸59は、カッタ回転駆動装置60に駆動連結されている。
【0060】
前記カッタ回転駆動装置60は、図8に示すごとく、隔壁52の背面に固定されたギアボックスの外側に取り付けられた回転駆動源61と、この回転駆動源61の出力軸に取り付けられたピニオンと,これに噛み合わされかつ当該カッタ回転駆動軸59に連結されたギアとを有する減速機構62とを備えて構成されている。しかして、前記カッタ回転駆動装置60は複数本のカッタ回転駆動軸59を同じ方向に、同じ速度で回転させ、カッタ54を回転駆動するようになっている。
【0061】
チャンバ63は、隔壁52とフード53とカッタ54とに囲まれた空間に形成されている。そして、このチャンバ63内にはカッタ54により掘削した土砂を取り込むようになっている。
【0062】
前記アジテータ64は、図8に示すように、アジテータ回転駆動軸65と、このアジテータ回転駆動軸65の軸回りに所定の間隔をおいて取り付けられた複数本のアジテータ攪拌棒66と、各アジテータ攪拌棒66に設けられた複数のアジテータ攪拌翼66’とを有している。このアジテータ64は、チャンバ63内に設置され、またアジテータ回転駆動軸65を介してアジテータ回転駆動装置67に駆動連結されている。前記アジテータ回転駆動軸65と各アジテータ攪拌棒66には、第4の噴射孔74が設けられている。これら第4の噴射孔74からは、アジテータ攪拌棒66、アジテータ攪拌翼66’、カッタ54の背面、カッタ回転駆動軸59および隔壁52の前面に向かって高圧水を噴射するようになっている。さらに、このアジテータ64は前記カッタ54の中央部の回転速度が相対的に遅く、チャンバ63内の掘削土砂が固まらないようにかき混ぜるようになっている。
【0063】
前記アジテータ回転駆動装置67は、隔壁52の背面に固定されたギアボックスに取り付けられた回転駆動源68と、この回転駆動源68の出力軸に取り付けられたピニオンと,これに噛み合わされかつアジテータ回転駆動軸65に取り付けられたギアとを有する減速機構とを備えている。そして、このアジテータ回転駆動装置67はアジテータ回転駆動軸65を介してアジテータ64を回転駆動するようになっている。
【0064】
スクリューコンベア70は、土砂取り込み口70’をチャンバ63の下部に臨ませて設置されている。しかして、このスクリューコンベア70はチャンバ63内を設定圧に保持しつつ、チャンバ63内の掘削土砂を取り出して搬送するようになっている。
【0065】
前記スイベルジョイント75は、アジテータ回転駆動軸65における外筒51側の端部に取り付けられている。
【0066】
前記スイベルジョイント75からアジテータ回転駆動軸65の内部→カッタ54の内部→カッタスポーク55の内部を通って第1、第2の各噴射孔71、72に第1、第2の噴射管(図示せず)が接続されている。また、前記スイベルジョイント75からアジテータ回転駆動軸65の内部→カッタ54の内部を通って第3の噴射孔73に第3の噴射管(図示せず)が接続されている。さらには、前記スイベルジョイント75からアジテータ回転駆動軸65の内部を通って第4の噴射孔74に第4の噴射管(これも図示せず)が接続されている。
【0067】
さらに、前記スイベルジョイント75には前記第1、第2、第3および第4の噴射管に対応させて高圧水配管76が接続されているが、図面には図8に1本のみ示している。これら高圧水配管76は、高圧水生成・圧送設備(この実施例2では図示省略。実施例1の図2の符号43参照。)に接続されている。また、各高圧水配管76にはバルブ(図示せず)が設けられていて、個別にかつ選択的に開閉し得るようになっている。
【0068】
前述のごとく構成した実施例2の泥土圧掘進機50では、高圧水配管76→スイベルジョイント75→第1、第2の噴射管を経て第1、第2の各噴射孔71、72に高圧水を圧送し、第1の噴射孔71からはカッタビット56,56間に向かって高圧水を噴射し、カッタビット56に固着した掘削土砂を除去し、第2の噴射孔72からは該噴射孔72の取り付け部のカッタスポーク55側面部に向かって高圧水を噴射し、カッタスポーク55に固着した掘削土砂を除去する。
【0069】
また、高圧水配管76→スイベルジョイント75→第3の噴射管を経て第3の噴射孔73に高圧水を圧送し、その高圧水を第3の噴射孔73からフィッシュテール57に向かって噴射し、フィッシュテール57に固着した掘削土砂を除去する。
【0070】
さらに、高圧水配管76→スイベルジョイント75→第4の噴射管を経て第4の噴射孔74に高圧水を圧送し、その高圧水をアジテータ回転駆動軸65、アジテータ攪拌棒66、アジテータ攪拌翼66’、カッタ54の背面および隔壁52の前面に向かって噴射し、これらの部位に固着した掘削土砂を除去する。
【0071】
したがって、この実施例2によれば前記カッタビット56、カッタスポーク55、フィッシュテール57、アジテータ回転駆動軸65、アジテータ攪拌棒66、アジテータ攪拌翼66’、カッタ54の背面および隔壁52の前面に掘削土砂が固着・固結することによるカッタトルクの増大やカッタビット56の切削効果の低下、アジテータ64の機能低下、泥土圧掘進機50の推進力の増大等の弊害を解消することができ、ひいては経済的な掘進速度を確保することができる。
【0072】
なお、この実施例2において、カッタ54の背面側と隔壁52の前面側の少なくとも一方に、フード53の内面に向かって高圧水を噴射するための噴射孔を設けても良い。
【0073】
また、この実施例においても前述の実施例と同様、高圧水の効果を高めるために、高圧水配管76への供給媒体を水に替えて、掘進用作泥土材(ベントナイト・粘土溶液),粘性低下材,分散材,あるいは気泡材等の溶液(液体)を使用し、噴射させる。掘削土砂が粘性を帯びる場合、これらを用いると固着土砂除去に好適である。
【0074】
加えて、必要に応じ、高圧水配管76に、前述の実施例のように、高圧空気を混入するようにしても良い。
【実施例3】
【0075】
図9は本発明を適用した泥土圧掘進機の他の実施例の正面図、図10は図9の中央縦断側面図である。
【0076】
この実施例では、前述の実施例2において、さらに高圧水の効果を高めるために、スイベルジョイント75に作泥土材注入配管77を接続し、スイベルジョイント75内部において高圧水配管76と作泥土材注入配管77とを接続し、両者を混合して第1〜第4の噴射口71〜74から噴射するようにしたことに特徴を有している。なお、作泥土材注入配管77には、作泥土材、粘性低下材、分散材、あるいは気泡材等の溶液(液体)が供給される。
【0077】
また、カッタスポーク55の適位置に作泥土材注入配管77と接続された作泥土材噴射口78を設け、作泥土材を噴射するようにしたことに特徴を有している。
【0078】
スイベルジョイント75内における高圧水配管76と作泥土材注入配管77との接続(図示せず)は適宜の配管技術を用いれば容易に実現し得る。また、作泥土材注入配管77と作泥土材噴射口78との機体内部の配管も同様である。
【0079】
図9の例では作泥土材噴射孔78を、好ましくは中央部に一つ、カッタスポーク55の中央部正面、外周部正面に計6つ設けているが、位置、個数等は図示例に限定されるものではない。
【0080】
また、作泥土材注入配管77は同じく図示しないが、作泥土材生成・圧送設備に接続されている。この作泥土材生成・圧送設備自体の構成は周知である。
【0081】
さらに効果を高めるために高圧空気を混入しても良いことは前述の実施例と同様である。この場合、高圧水配管76の途中に高圧空気を供給するための高圧空気配管(図示せず)を接続すれば良い。また、作泥土材注入配管77にも同様にして高圧空気配管(同じく図示せず)を接続すれば良い。
【0082】
使用にあたり、地山の状況に応じ、高圧水配管76を介し高圧水、作泥土材注入配管77を介し作泥土材、粘性低下材、分散材、あるいは気泡材等の溶液を供給すれば、各溶液の夫々の性状が噴射効果に加わり、固着した掘削土砂が粘性を帯びる場合であっても、あるいはその他性状を問わず、固着した掘削土砂を泥土化したり分離・分散させることができ、効果的に除去することができる。
【0083】
なお、その他の構成、作用等は第2実施例と同様のため、同一部材は同じ符号を示し、詳細説明は省略する。
【0084】
[その他の実施例]
本発明は、シールド工法にも、さらには推進管を推し進める推進工法にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施例1を示すもので、本発明を適用した泥水掘進機の正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】図2のC部分の拡大図である。
【図5】図2のD−D線拡大断面図である。
【図6】図1のE−E線拡大断面図である。
【図7】本発明の実施例2を示すもので、本発明を適用した泥土圧掘進機の正面図である。
【図8】図7の中央縦断側面図である。
【図9】本発明の実施例3を示すもので、本発明を適用した泥土圧掘進機の正面図である。
【図10】図7の中央縦断側面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 泥水掘進機
2 外筒
3 隔壁
4 フード
5 カッタ
7 カッタスポーク
9 カッタ面板
10 カッタスリット
12 カッタビット
14 カッタ支持軸
15 カッタ回転駆動装置
20 チャンバ
25 第1の噴射孔
26 第2の噴射孔
27 第3の噴射孔
28 第1の噴射管
29 第2の噴射管
31 高圧水配管
33 高圧水噴射攪拌装置
36 攪拌棒回転駆動装置
37 攪拌棒支持軸
38 攪拌棒
39 第4の噴射孔
41 高圧水配管
43 高圧水生成・圧送設備
44 水槽
45 高圧ポンプ
50 泥土圧掘進機
51 外筒
52 隔壁
53 フード
54 カッタ
55 カッタスポーク
56 カッタビット
57 フィッシュテール
59 カッタ回転駆動軸
60 カッタ回転駆動装置
63 チャンバ
64 アジテータ
65 アジテータ回転駆動軸
66 アジテータ攪拌棒
66’ アジテータ攪拌翼
67 アジテータ回転駆動装置
70 スクリューコンベア
71 第1の噴射孔
72 第2の噴射孔
73 第3の噴射孔
74 第4の噴射孔
75 スイベルジョイント
76 高圧水配管
77 作泥土材注入配管
78 作泥土材噴射孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタを旋回させながら掘進するトンネル掘進機のカッタにおける掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって、高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射可能に噴射孔を設けた、
ことを特徴とする掘進機。
【請求項2】
カッタ(5)における掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって、高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射可能に噴射孔(25)、(26)、(27)を設け、チャンバ(20)内のカッタ(5)の背面や隔壁(3)の前面、フード(4)の内面における掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって、スライド自在な高圧水噴射攪拌装置(33)に攪拌棒(38)および高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射可能に噴射孔(39)を設け、
前記複数の噴射孔を高圧水配管を介して、高圧水生成・圧送設備(43)に接続した、
ことを特徴とする掘進機。
【請求項3】
カッタを旋回させながら掘進するトンネル掘進機のカッタ(54)およびアジテータ(64)の掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって高圧水を噴射可能に噴射孔(71)、(72)、(73)、(74)を設け、
前記噴射孔(71)、(72)、(73)、(74)をアジテータ駆動軸(65)に連結されたスイベルジョイント(75)に接続した高圧水配管(76)を介して、高圧水生成・圧送設備に接続した、
ことを特徴とする掘進機。
【請求項4】
高圧水または泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を供給する高圧水配管(31)、(41)、(76)に高圧空気配管を接続し、高圧空気を供給可能としたことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の掘進機。
【請求項5】
カッタを旋回させながら掘進するトンネル掘進機のカッタ(54)およびアジテータ(64)の掘削土砂の固着・固結しやすい個所に向かって高圧水を噴射可能に噴射孔(71)、(72)、(73)、(74)を設け、
前記噴射孔(71)、(72)、(73)、(74)をアジテータ駆動軸(65)に連結されたスイベルジョイント(75)に接続した高圧水配管(76)を介して、高圧水生成・圧送設備に接続し、
かつ前記スイベルジョイント(75)に、泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を供給する作泥土材注入配管(77)を接続し、前記高圧水と泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を混合し、かつ前記泥水、粘性低下材、分散材、もしくは気泡材等の溶液を噴射する作泥土材噴射孔(78)を前記カッタ(54)に設け、
前記作泥土材注入配管(77)は作泥土材生成・圧送設備に接続された、
ことを特徴とする掘進機。
【請求項6】
高圧水を供給する前記高圧水配管に高圧空気配管を接続し、かつ前記作泥土材注入配管(77)に高圧空気配管を接続し、高圧空気を供給可能としたことを特徴とする請求項5記載の掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−97458(P2006−97458A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161072(P2005−161072)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)
【Fターム(参考)】