探傷装置及び探傷方法
【課題】簡易な構成により、検出信号に含まれるノイズを判別すること。
【解決手段】2つの探傷センサ11a,11bが走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置された探傷センサ群11と、各探傷センサ11a,11bによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理装置15とを備え、処理装置15は、各探傷センサ11a,11bによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷装置1を提供する。
【解決手段】2つの探傷センサ11a,11bが走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置された探傷センサ群11と、各探傷センサ11a,11bによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理装置15とを備え、処理装置15は、各探傷センサ11a,11bによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷装置1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流探傷や超音波探傷等、被検体に生じたき裂等の欠陥を非破壊で検査する探傷装置及び探傷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体に生じたき裂等の欠陥を非破壊で検査する方法として、渦電流探傷法(ECT;Eddy Current Testing)や超音波探傷(UT;Ultrasonic Testing)が知られている。
【0003】
渦電流探傷法は、励磁電流を供給した励磁コイルが発生する磁束変化により,被検体に渦電流を発生させ、さらにこの渦電流により発生する磁束を表す検出信号を検出コイルの出力信号として取得し、この検出信号に基づいて被検体の欠陥(傷)の位置、形状、深さ等を求める技術である。
【0004】
渦電流探傷法は、被検体中の欠陥によって生ずる渦電流の強度および流れの形の変化を検出して探傷を行うものであるが、このような渦電流の強度及び流れの形は、被検体の欠陥だけではなく、被検体の電気抵抗率および透磁率の変動や、コイル姿勢(被検体に対する距離や角度)の変化などによって生ずるコイルのインピーダンスの変化等によっても変化する。従って、このようなコイルのインピーダンスの変化がノイズとなって検出信号に現れてしまい、このノイズによる探傷の精度低下が問題とされている。
【0005】
従来、検出信号に含まれるノイズを判別する方法として、例えば、以下のような方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、検出コイルと励磁コイルを並べて配置した渦電流探傷検出用のマルチプローブにより得られる検出信号を用いて傷信号と雑音信号を識別する欠陥識別方法において、マルチプローブの一方向に励磁コイルと検出コイルを配置したXスキャン信号と、その他方向に励磁コイルと検出コイルを配置したYスキャン信号とを、位相角度に演算し、その演算した位相角度を、横軸をXスキャン位相角度に、縦軸をYスキャン位相角度に設定したグラフ上にプロットして、グラフ上における各検出信号分布の特性の違いから、検出信号に含まれるノイズ信号を判別する技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、センサと被検体表面との距離を計測するための距離センサを追加し、この距離センサによる計測結果から距離に変化があったか否かを判断することにより、検出信号に含まれるノイズを判別することが開示されている。
特許文献3には、通常型プローブ11と、磁石を備えて透磁率変化によるノイズを低減する磁気飽和型プローブ13とを設け、処理装置により、通常型プローブおよび磁気飽和型プローブによる同一箇所の走査で得られる信号波形を比較分析して、該信号波形が測定対象の被検体の傷に起因するものか、或いは、ノイズに起因するものかを判別する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−19909号公報
【特許文献2】特開2006−138784号公報
【特許文献3】特開2008−309573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された方法では、検出信号に現れるノイズ成分の出現態様が検出信号に酷似する場合に、ノイズ信号を判別することができないという問題がある。例えば、センサと被検体との距離または傾きの変化に起因するノイズは、波形特徴が浅い開口欠陥と酷似するため、このような場合には、開口欠陥であるのか、あるいは、ノイズであるのか判別することができない。
【0009】
また、上記特許文献2に開示された方法では、距離センサを追加せねばならないことから、装置が複雑化してしまうという問題がある。また、距離センサによって距離が正確に計測できたとしても、計測距離に基づいてECT信号のノイズ波形を正確に推察するのは困難であるため、計測されたECT信号に欠陥が含まれるかどうかを判別するのは困難であった。
また、上記特許文献3に開示された方法では、ノイズと欠陥とが同時に発生していた場合に、検出信号中においてノイズを特定することができない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成により、検出信号に含まれるノイズを判別することのできる探傷装置及び探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、複数の探傷センサが走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置された探傷センサ群と、各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段とを備え、前記処理手段は、各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷装置を提供する。
【0012】
このような構成によれば、複数の探傷センサを走査方向に対して間隔をあけてほぼ一列に配置させ、これら探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断するので、形状変化等の欠陥以外に起因して生じたノイズ成分と、欠陥に起因する信号成分とを簡易な構成により判別することができる。
上記「ほぼ一列に配置された」とは、隣接する探傷センサ間の距離が、ターゲットとしている欠陥信号の分布幅(つまり、走査方向に直交する長さ)よりも短くなる範囲で、多少ずれて配置される場合も含む概念である。
【0013】
上記探傷装置において、前記処理手段は、各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、処理手段が、各探傷センサによって検出された検出信号において、同じ走査位置において検出された信号値同士を比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成するので、形状変化等の欠陥以外に起因して生じたノイズ成分を除去し、欠陥に起因する信号成分のみを抽出することができる。これにより、簡易な構成により、被検体に生じている欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0015】
上記探傷装置は、複数の前記探傷センサ群が走査方向に直交する方向に沿って配置されてなる探傷センサユニットを有し、前記処理手段は、前記センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出されたそれぞれの検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断することとしてもよい。
更に上記探傷装置において、前記処理手段は、前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、両者の信号値がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、両者の信号値がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0016】
複数の探傷センサ群を走査方向に直交する方向に沿って配置してなる探傷センサユニットを用いて探傷を行うことは、効率的に探傷を行うための一般的な配置のひとつであり、特別なセンサを追加することなく欠陥とノイズを判別することが可能となる。
【0017】
上記探傷装置において、前記走査方向をx軸方向、前記走査方向に直交する方向をy軸方向とした場合に、前記探傷センサユニットは、y軸座標に対して平行に並べられた2列の探傷センサ列を有するとともに、各々の前記探傷センサが異なるy座標値を取るように配置されており、前記処理手段は、y座標値が隣接する探傷センサ同士の検出信号を比較して複数の前記フィルタリング信号を作成し、これら前記フィルタリング信号から前記被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0018】
このような構成によれば、ノイズ成分と欠陥による成分とを高い精度で判別することができる。
【0019】
本発明は、複数の探傷センサが走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置された探傷センサ群が前記走査方向に直交する方向に沿って配置されてなる探傷センサユニットと、前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段とを備え、前記処理手段は、前記探傷センサを、前記走査方向に直交する方向に沿って配列されている列毎にグループ分けし、同じグループに属する前記探傷センサによって検出された近隣の検出信号に現れている共通の傾向を除去し、除去後の信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷装置を提供する。
【0020】
例えば、被検体に形状変化が生じていた場合には、探傷センサユニットを構成する近隣の探傷センサに対して同時に形状変化に起因するノイズが発生することとなる。そうすると、各探傷センサによって検出された検出信号を、探傷センサの走査方向の配置位置に基づいてグループ分けした場合には、グループによらず、検出信号に対して同じ時刻に同じ特徴(例えば、ピーク)が現れていることとなる。したがって、このような同じグループに属する近隣の信号に対して現れている共通の特徴を除去する処理を行うことで、形状変化等による探傷センサユニットの姿勢変化に起因するノイズ成分を除去することが可能となる。一方、探傷センサユニットの走査方向に直交する方向の分布幅の狭い欠陥を検知した場合には、探傷センサユニットを構成する一部の探傷センサによってのみこの欠陥に対する信号変化が現れることとなる。このため同じグループに属する近隣の信号全てには同じ特徴が現れることはない。
したがって、このような探傷装置によれば、簡易な構成により、探傷センサユニットの走査方向に直交する方向の分布幅の短い欠陥を有効に検出することができる。
【0021】
上記探傷装置において、前記処理手段は、各前記グループにおいて、探傷信号の計測位置での信号を補間して求め、補間した信号同士の平均を取ることにより、各探傷センサに対応する合成信号を生成し、前記合成信号に基づいて前記被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0022】
各探傷センサによって検出された検出信号をグループ分けして処理すると、得られた信号のノイズの消え残り成分などがグループ間で不連続で不自然な信号となる場合がある。そこで、各グループにおける検出信号を補間し、これらをグループ間で平均した後、近隣の信号に共通の特徴を低減する処理をすることで、処理後の信号がなめらかになり、探傷精度を更に向上させることができる。
【0023】
本発明は、被検体上を往復走査する探傷センサと、前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段とを備え、前記処理手段は、前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷装置を提供する。
更に、上記探傷装置において、前記処理手段は、前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0024】
このような構成によれば、一つの探傷センサを有していればよいので、非常に簡素な構成により、精度の高い探傷を行うことが可能となる。
【0025】
本発明は、複数の探傷センサを走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置し、各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷方法を提供する。
更に、上記探傷方法においては、各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士をそれぞれ比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0026】
本発明は、複数の探傷センサを走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置させてなる探傷センサ群を、前記走査方向に直交する方向に沿って配置することにより探傷センサユニットを形成し、前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、複数の前記探傷センサを、前記走査方向に直交する方向に沿って配列されている列毎にグループ分けし、同じグループに属する前記探傷センサによって検出された近隣の検出信号に現れている共通の傾向を除去し、除去後の信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法を提供する。
【0027】
本発明は、探傷センサを被検体の表面において往復走査させ、前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、前記探傷センサによって検出された検出信号のうち、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷方法を提供する。
更に、上記探傷方法において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、簡易な構成により、検出信号に含まれるノイズを判別することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る探傷装置の概略構成を示した図である。
【図2】探傷センサ群における探傷センサの配置を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る探傷装置の探傷センサユニットについて説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る処理装置により実行される他の処理について説明するための図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る処理装置により実行される他の処理について説明するための図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る処理装置により実行される他の処理について説明するための図である。
【図14】本発明に係る探傷装置の一構成例を示した図である。
【図15】本発明に係る探傷装置の一構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の各実施形態に係る探傷装置及び探傷方法について、図面を参照して説明する。なお、本発明に係る探傷装置及び探傷方法は、渦電流探傷法、超音波探傷等、被検体に発生したき裂等の欠陥を非破壊で検査する探傷方法に対して広く適用可能であるが、以下の説明では便宜上、渦電流探傷法に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0031】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る探傷装置1の概略構成を示した図である。図1において、探傷装置1は、2つの渦電流探傷センサ(以下、「探傷センサ」という。)11a,11bを有する探傷センサ群11と、駆動装置12、探傷器13、記憶装置14および処理装置(処理手段)15を備えて構成されている。
【0032】
探傷センサ11a,11bは、図2に示すように、走査方向に対して間隔をあけて一列に配置されており、探傷センサ11aが走査方向前方に配置され、探傷センサ11bが走査方向後方に配置されている。探傷センサ11a,11bは、渦電流探傷法による配管等の保守検査で一般的に使用されているもので、例えば自己比較方式のものを用いる。
【0033】
駆動装置12は、探傷センサ11a,11bを走査させるものであり、エンコーダ等の位置検出器を備えて、位置信号を探傷器13に出力する。探傷器13は、探傷センサ11a,11bのコイルを励磁して、該コイルの出力信号を検出信号として取得するとともに、駆動装置12からの位置信号を取得し、これら信号をA/D変換した後、記憶装置19に出力する。
【0034】
記憶装置14は、探傷器13からの位置信号および検出信号を逐次記録していく。処理装置15は、各探傷センサ11a,11bによって検出された検出信号において、同じ走査位置において検出された信号値同士を比較し、両者の信号値がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、両者の信号値がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する。
【0035】
以下、処理装置15による欠陥検出について図を参照して具体的に説明する。
例えば、図3(a)に示すように、被検体に欠陥Cが発生していた場合、探傷センサ11a,11bによって検出されるECT信号は、図3(b)のような波形となる。図3(b)において、横軸は計測時刻、縦軸は信号値であり、実線Va(t)は探傷センサ11aの検出信号、破線Vb(t)は探傷センサ11bの検出信号を示している。探傷センサ11a,11bは図2に示すように、走査方向に対して間隔をあけて並べられているので、欠陥Cの検出に時間差が生じている。なお、ECT信号は複素数値だが、図は、その実部または虚部の一方を概念的に示している。また、以降の説明において同様である。
【0036】
続いて、図3(b)に示した各検出信号を走査方向における位置(走査位置)がそれぞれ一致するように補正し、センサ位置補正信号を得る。つまり、時系列に示されていた検出信号を各走査位置に対する信号に変換する。これにより、図3(c)に示すような波形が得られる。図3(c)において、横軸は走査方向位置、縦軸は信号値であり、双方の探傷センサに対応するセンサ位置補正信号は一致している。このように、欠陥Cが発生している場合には、欠陥Cが発生している走査位置(X座標値)において、同じような信号値(波形)が得られる。続いて、処理装置15は、各走査位置におけるセンサ位置補正信号の各信号値を比較したとき、両者の信号値がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、両者の信号値がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に強調(増幅)させて、図3(d)に示すようなフィルタリング信号を生成する。なお、このフィルタリグは、センサ位置補正信号における実部と虚部それぞれに同様に適用される。また、以降の説明において同様である。
【0037】
例えば、処理装置15は、以下の(1)式で示されるような演算を行い、両信号の相互相関を取ることにより、フィルタリング信号を生成する。
【0038】
Fab(x)=sign(V’a(x))*sqrt(|V’a(x)*V’b(x)|) (1)
【0039】
上記(1)式において、Fab(x)はフィルタリング信号、V´a(x)は探傷センサ11aのセンサ位置補正信号の信号値、V´b(x)は探傷センサ11bのセンサ位置補正信号の信号値である。また、sign(X)はXの符号、|X|はXの絶対値、sqrt(X)はXの平方根である。
【0040】
欠陥Cを想定した場合には、欠陥Cが発生している箇所において探傷センサ11a,11bの信号値はほぼ同じ値となるため、図3(d)に示すように、欠陥Cの走査位置において両者の信号値とほぼ同等のフィルタリング信号が得られる。
【0041】
これに対し、例えば、図4(a)に示すように、被検体に形状変化が生じていた場合には、図4(b)に示すように、形状変化に起因する信号変化が探傷センサ11a,11bに対して同時刻に発生する。これは、探傷センサ11a,11bが一体化されており、一方に形状変化に対する姿勢変化が生じた場合には、必ず他方にもその影響が出るからである。
したがって、被検体に形状変化が生じていた場合の各探傷センサ11a,11bのセンサ位置補正信号は、図4(c)に示すように、異なる走査位置において信号値のピークが現れることとなる。したがって、このようなセンサ位置補正信号から得られるフィルタリング信号は、図4(d)に示すような波形となり、形状変化に起因するノイズが除去された信号となる。
【0042】
また、例えば、図5(a)に示すように、被検体に形状変化と欠陥とが同じ位置に生じていた場合には、図5(b)に示すような検出信号がそれぞれ得られ、これら検出信号から図5(c)に示すようなセンサ位置補正信号が得られる。この結果、図5(d)に示すようなフィルタリング信号が得られる。このように、被検体に形状変化と欠陥とが同じ位置に生じていた場合であっても、形状変化に起因するノイズ成分のみを除去し、欠陥に起因する信号値のみを抽出することができる。
【0043】
以上、本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法は、欠陥による信号値は、同じ走査位置において同じ信号値が得られるのに対し、形状変化等による探傷センサ群の姿勢変化に起因するノイズは、同じ時刻に発生し、同じ走査位置において同じ信号値が得られないという点に着目して発案されたものであり、具体的には、2つの探傷センサ11a,11bを走査方向に対して間隔をあけてほぼ一列に配置させ、これら探傷センサ11a,11bによって検出された検出信号において、同じ走査位置において検出された信号値同士(換言すると、同じx座標値における信号値)を比較し、両者の信号値がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、両者の信号値がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成して、このフィルタリング信号に基づいて欠陥を評価する。これにより、形状変化等の欠陥以外に起因して生じたノイズ成分をフィルタリング信号から除去することができ、欠陥に起因する信号成分のみを抽出ことができる。この結果、被検体に生じている欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、フィルタリング信号を得るときに相互相関を使用していたが、フィルタリング信号を得る方法はこれに限られない。例えば、以下の(2)式に示すように、両信号値の平均値を取ることとしてもよいし、以下の(3)式に示すように、両信号値の絶対値の最小値をとるいずれかと同符号の信号としてもよい。
【0045】
Fab(x)=(V’a(x)+V’b(x))/2 (2)
【0046】
Fab(x)=sign(V’a(x))*min(|V’a(x)|,|V’b(x)|) (3)
【0047】
また、本実施形態では、2つの探傷センサ11a,11bによって探傷センサ群11が構成されている場合について述べたが、探傷センサ群11を構成する探傷センサの数については特に限定されない。
また、本実施形態では、2つの探傷センサ11a,11bが一列に並べられて配置されている場合について述べたが、これら2つの探傷センサ11a,11bは、走査方向に直交する方向に対して多少ずれて配置されていてもよい。この場合、ずれ幅は、ターゲットとしている欠陥信号の分布幅(つまり、走査方向に直交する長さ)よりも短くなるように設定される。
【0048】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る探傷装置及び探傷方法について説明する。
第1の実施形態では、複数の探傷センサから構成される一つの探傷センサ群を備える場合について述べたが、本実施形態に係る探傷装置は、例えば、図6に示すように、複数の探傷センサ群11を走査方向に直交する方向に並べて配置した探傷センサユニット20を備えている。以下、本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法について、上述した第1の実施形態と異なる点について主に説明する。
【0049】
例えば、図6に示すように、走査方向をX軸方向、走査方向に直交する方向をY軸方向とした場合、探傷センサユニット20を構成する各探傷センサ群間において、走査方向に対して前方に配置されている各探傷センサ11a1,11a2,11a3,11a4は、同じx座標値およびそれぞれ異なるy座標値を取るように配置され、また、走査方向に対して後方に配置されている探傷センサ11b1,11b2,11b3,11b4も、互いに同じx座標値およびそれぞれ異なるy座標値を取るように配置されている。
【0050】
処理装置は、探傷センサユニット20を構成する各探傷センサ11a1〜11b4によって検出された検出信号に基づいてフィルタリング信号を作成し、被検体の欠陥を検出する。具体的には、図7(a)に示すように、走査方向に直交する方向(y軸方向)に分布が長い欠陥が発生していた場合、各探傷センサ11a1〜11b4によって得られる検出信号は、図7(b)に示すような波形となる。図7(b)において、横軸は計測時間、縦軸には各探傷センサによって検出された検出信号が、被検体上に配置された各探傷センサの配置位置に対応するように縦に並べて示されている。
【0051】
図7(b)において、V1(t)は、探傷センサ11a1によって得られた検出信号、V2(t)は、探傷センサ11b1によって得られた検出信号、V3(t)は、探傷センサ11a2によって得られた検出信号、V4(t)は、探傷センサ11b2によって得られた検出信号、V5(t)は、探傷センサ11a3によって得られた検出信号、V6(t)は、探傷センサ11b3によって得られた検出信号、V7(t)は、探傷センサ11a4によって得られた検出信号、V8(t)は、探傷センサ11b4によって得られた検出信号である。
【0052】
続いて、処理装置は、このような検出信号V1(t)からV8(t)を補正することによりセンサ位置補正信号を得る。図7(b)に対応するセンサ位置補正信号を図7(c)に示す。そして、処理装置は、これらのセンサ位置補正信号に基づいてフィルタリング信号を作成する。
【0053】
例えば、処理装置は、各探傷センサの配置位置においてy座標値のみを考慮した場合に、それぞれ隣り合う探傷センサのセンサ位置補正信号同士を比較することにより、フィルタリング信号をそれぞれ作成することとしてもよい。例えば、図6に示すように、探傷センサは、y軸上の位置のみを考慮すると、端から探傷センサ11a1,11b1,11a2,11b2,11a3,11b3,11a4,11b4の順に並んでいる。よって、隣接する探傷センサの組は、11a1と11b1,11b1と11a2,11a2と11b2,・・・11a4と11b4の組となる。処理装置は、これら隣接する探傷センサのセンサ位置補正信号同士を比較することにより、それぞれフィルタリング信号を作成する。この結果、例えば、図7(d)に示すようなフィルタリング信号Fab1〜Fab7が得られる。処理装置は、図7(d)に示したフィルタリング信号Fab1〜Fab7に基づいて、被検体に発生した欠陥を検出する。
【0054】
また、例えば、欠陥ではなく、図8(a)に示すように形状変化が生じていた場合には、上述した第1の実施形態と同様に、一体化されている探傷センサ11a1〜11b4に対して同時に形状変化による影響が表れ、図8(b)に示すように、各探傷センサ11a1〜11b4の検出信号V1(t)〜V8(t)には同時期にノイズが発生することとなる。そして、これら検出信号V1(t)〜V8(t)に対応するセンサ位置補正信号V´1(x)〜V´8(x)は、図8(c)に示すような波形となる。そして、隣接する信号同士を比較することにより、このセンサ位置補正信号V´1(x)〜V´8(x)からフィルタリング信号Fab1(x)〜Fab7(x)を生成すると図8(d)に示すような波形となる。このように、形状変化が生じている場合には、図8(c)に示すように、隣接するセンサ位置補正信号には、互いに異なる位置にノイズが発生するため、フィルタリング信号ではこのようなノイズは減衰される。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法によれば、2つの探傷センサからなる探傷センサ群を更に走査方向に直交する方向に沿って並べることにより探傷センサユニット20を構成し、この探傷センサユニット20を構成する各探傷センサによって検出された検出信号に基づいて欠陥を検出するので、効率的に探傷検査を行うことが可能となる。また、形状変化等を検知する専用のセンサ等を設けることなく、全ての探傷センサの検出信号を用いて探傷検査を行うので、簡易な構成により、効率的に、かつ、精度の高い探傷検査を実施することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態では、隣り合うセンサ位置補正信号からフィルタリング信号を作成していたことから、探傷センサが8つあるにも関わらず、7つのフィルタリング信号Fab1(x)〜Fab7(x)しか得られないという不都合がある。つまり、探傷信号Vi(t) (i=1,2,・・・)が計測されたY方向位置をYiとすると、フィルタリング信号Fab1(x)は、Y方向位置が(Y1+Y2)/2、すなわちY1とY2の中点の位置のフィルタリング信号を示しており、また、Fab2(x)は、Y方向位置が(Y2+Y3)/2の位置のフィルタリング信号を示しているため、フィルタリング信号Fab1(x)〜Fab7(x)と各探傷センサ11a1〜11b4の通過位置とが対応していないという不都合がある。
【0057】
このような不都合を解消するために、フィルタリング信号Fabi(x)のサンプリング位置を、探傷信号のサンプリング位置と一致するように補間した信号F´1(x)〜F´8(x)をフィルタリング信号として用いてもよい。補間は一般的な線形補間でもよい。Y方向の端処理は、隣接領域の探傷信号がない場合は、図9(d)に示すように端信号連続という条件で、両端のFab0=Fab1およびFab8=Fab7として、これを用いて補間してもよい。複数走査やラスタスキャン等により隣接する領域の探傷信号が得られている場合は、隣接領域の信号を用いて端処理を行ってもよい。
【0058】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る探傷装置及び探傷方法について説明する。
本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法は、図10に示すように、走査方向に沿って発生した欠陥のように、走査方向に直交する方向に対しての長さが非常に短い欠陥を検出するのに適した探傷を実施するものである。
以下、本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法について、上述した第2の実施形態と異なる点について主に説明する。
【0059】
本実施形態に係る探傷装置は、上述した第2の実施形態とほぼ同様の装置構成を有しているため、構成についての詳しい説明は省略する。
例えば、図10(a)に示すように、走査方向に沿って発生した欠陥を想定した場合、各探傷センサ11a1〜11b4によって検出される検出信号は、図10(b)に示すような波形となる。つまり、8つある探傷センサのうち、一部の探傷センサでしか欠陥が検出されないこととなる。処理装置は、このような検出信号からセンサ位置補正信号をそれぞれ求める。この結果、図10(c)に示すようなセンサ位置補正信号がそれぞれ求められる。
【0060】
続いて、処理装置は、これらセンサ位置補正信号を、探傷センサの配置位置に応じてグループ分けする。例えば、走査方向をx軸方向、走査方向に直交する方向をy軸方向とした場合に、その配置位置が同じx座標値を有する探傷センサを一つのグループとして取り扱う。これにより、8つの探傷センサ11a1〜11b4は、探傷センサ11a1、11a2,11a3,11a4からなるグループと、探傷センサ11b1、11b2,11b3,11b4からなる他のグループとに区分される。グループ区分後の各センサ位置補正信号を図10(d)に示す。
【0061】
続いて、処理装置は、各グループのセンサ位置補正信号において、X軸方向の同じ位置に発生している類似の特徴を有する信号を除去するY軸方向のドリフト除去処理を行う。図10(d)に示した各グループの信号群においては、グループ内の近接した信号に同じような傾向が表れていないため、ドリフト除去処理後の信号V´´1(x)〜V´´8(x)は、図10(e)に示すように、図10(d)に示した信号と同じとなる。続いて、処理装置は、各グループに区分したドリフト除去処理後の信号を1つの信号にまとめることにより、図10(f)に示す合成信号F1〜F8を得、この合成信号F1〜F8に基づいて欠陥を検出する。この結果、信号F3からF5にのみ信号が表れているので、この信号F3からF5に対応する探傷センサの位置に欠陥が生じていると判断することができる。
【0062】
また、上記欠陥ではなく、図11(a)に示すように形状変化が発生していた場合には、形状変化の影響による探傷センサユニット20の姿勢変化は、探傷センサユニット20を構成する全ての探傷センサに対して同時に発生するため、例えば、各グループに分けたセンサ位置補正信号は、図11(d)に示すような波形となる。このように、形状変化の場合には、各グループの近接した信号に対して同じ傾向(特徴)が表れることとなる。したがって、Y軸方向のドリフト除去処理後の信号は、図11(e)に示すような波形となり、ノイズ成分が除去される。そして、このドリフト除去処理後の信号を1つの信号にまとめることにより図11(f)に示すような合成信号F1〜F8が得られ、形状変化に起因するノイズによる欠陥の誤検出を防止することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法によれば、簡易な構成により、探傷センサユニットの走査方向に沿って発生した幅の短い欠陥を有効に検出することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、各探傷センサによって得られたセンサ位置補正信号をグループ分けして処理するため、図11(f)の例のように、ノイズ信号の消え残り成分が、グループ間でY軸方向に不連続な信号になる、という不具合がある。そこで、図12(b)や図13(b)に示すように、各グループにおけるセンサ位置補正信号を、相対するグループのY軸方向の位置で線形補間することにより、間引きされた信号を模擬し(図12(b)、図13(b)において点線で示された信号)、これら各グループの信号の平均をとることにより、それぞれの合成信号G1〜G8を作成することとしてもよい(図12(c)、図13(c)参照)。そして、この合成信号G1〜G8に対してY軸方向のドリフト除去処理を実施し(図12(d)、図13(d)参照)、処理後の合成信号G´1〜G´8に基づいて欠陥の検出を行うこととしてもよい。
【0065】
このようにすることで、例えば、図10(a)に示すような走査方向に沿った欠陥が生じている場合には、図12(d)に示すように欠陥による変化が現れ、図11(a)に示すような形状変化があった場合には、図13(d)に示すように、形状変化に起因するノイズが除去された消え残りの信号をY軸方向になめらかな信号とすることができる。
【0066】
なお、上記各実施形態では、二つ以上の探傷センサを用いて探傷を行う場合について説明したが、例えば、図14(a),(b)に示すように、一つの探傷センサ11aをX軸方向、Y軸方向に走査することで、被検体を二次元的に探傷することとしてもよい。この場合には、探傷センサによって検出された検出信号のうち、ほぼ同じ走査位置において検出された信号値同士を比較し、両者の信号値がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、両者の信号値がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出すればよい。フィルタリング信号の作成方法とは、上述した第1の実施形態と同様である。
【0067】
また、上述した各実施形態では、被検体の表面において探傷センサを走査させて、被検体内部または表面に発生した欠陥を検出する場合について述べたが、本発明に係る探傷装置及び探傷方法は、図15に示すように、管内を非接触で走査する探傷装置としても用いることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 探傷装置
11 探傷センサ群
11a、11a1〜11a4,11b、11b1〜11b4 渦電流探傷センサ
12 駆動装置
13 探傷器
14 記憶装置
15 処理装置
20 探傷センサユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流探傷や超音波探傷等、被検体に生じたき裂等の欠陥を非破壊で検査する探傷装置及び探傷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体に生じたき裂等の欠陥を非破壊で検査する方法として、渦電流探傷法(ECT;Eddy Current Testing)や超音波探傷(UT;Ultrasonic Testing)が知られている。
【0003】
渦電流探傷法は、励磁電流を供給した励磁コイルが発生する磁束変化により,被検体に渦電流を発生させ、さらにこの渦電流により発生する磁束を表す検出信号を検出コイルの出力信号として取得し、この検出信号に基づいて被検体の欠陥(傷)の位置、形状、深さ等を求める技術である。
【0004】
渦電流探傷法は、被検体中の欠陥によって生ずる渦電流の強度および流れの形の変化を検出して探傷を行うものであるが、このような渦電流の強度及び流れの形は、被検体の欠陥だけではなく、被検体の電気抵抗率および透磁率の変動や、コイル姿勢(被検体に対する距離や角度)の変化などによって生ずるコイルのインピーダンスの変化等によっても変化する。従って、このようなコイルのインピーダンスの変化がノイズとなって検出信号に現れてしまい、このノイズによる探傷の精度低下が問題とされている。
【0005】
従来、検出信号に含まれるノイズを判別する方法として、例えば、以下のような方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、検出コイルと励磁コイルを並べて配置した渦電流探傷検出用のマルチプローブにより得られる検出信号を用いて傷信号と雑音信号を識別する欠陥識別方法において、マルチプローブの一方向に励磁コイルと検出コイルを配置したXスキャン信号と、その他方向に励磁コイルと検出コイルを配置したYスキャン信号とを、位相角度に演算し、その演算した位相角度を、横軸をXスキャン位相角度に、縦軸をYスキャン位相角度に設定したグラフ上にプロットして、グラフ上における各検出信号分布の特性の違いから、検出信号に含まれるノイズ信号を判別する技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、センサと被検体表面との距離を計測するための距離センサを追加し、この距離センサによる計測結果から距離に変化があったか否かを判断することにより、検出信号に含まれるノイズを判別することが開示されている。
特許文献3には、通常型プローブ11と、磁石を備えて透磁率変化によるノイズを低減する磁気飽和型プローブ13とを設け、処理装置により、通常型プローブおよび磁気飽和型プローブによる同一箇所の走査で得られる信号波形を比較分析して、該信号波形が測定対象の被検体の傷に起因するものか、或いは、ノイズに起因するものかを判別する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−19909号公報
【特許文献2】特開2006−138784号公報
【特許文献3】特開2008−309573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された方法では、検出信号に現れるノイズ成分の出現態様が検出信号に酷似する場合に、ノイズ信号を判別することができないという問題がある。例えば、センサと被検体との距離または傾きの変化に起因するノイズは、波形特徴が浅い開口欠陥と酷似するため、このような場合には、開口欠陥であるのか、あるいは、ノイズであるのか判別することができない。
【0009】
また、上記特許文献2に開示された方法では、距離センサを追加せねばならないことから、装置が複雑化してしまうという問題がある。また、距離センサによって距離が正確に計測できたとしても、計測距離に基づいてECT信号のノイズ波形を正確に推察するのは困難であるため、計測されたECT信号に欠陥が含まれるかどうかを判別するのは困難であった。
また、上記特許文献3に開示された方法では、ノイズと欠陥とが同時に発生していた場合に、検出信号中においてノイズを特定することができない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成により、検出信号に含まれるノイズを判別することのできる探傷装置及び探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、複数の探傷センサが走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置された探傷センサ群と、各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段とを備え、前記処理手段は、各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷装置を提供する。
【0012】
このような構成によれば、複数の探傷センサを走査方向に対して間隔をあけてほぼ一列に配置させ、これら探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断するので、形状変化等の欠陥以外に起因して生じたノイズ成分と、欠陥に起因する信号成分とを簡易な構成により判別することができる。
上記「ほぼ一列に配置された」とは、隣接する探傷センサ間の距離が、ターゲットとしている欠陥信号の分布幅(つまり、走査方向に直交する長さ)よりも短くなる範囲で、多少ずれて配置される場合も含む概念である。
【0013】
上記探傷装置において、前記処理手段は、各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、処理手段が、各探傷センサによって検出された検出信号において、同じ走査位置において検出された信号値同士を比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成するので、形状変化等の欠陥以外に起因して生じたノイズ成分を除去し、欠陥に起因する信号成分のみを抽出することができる。これにより、簡易な構成により、被検体に生じている欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0015】
上記探傷装置は、複数の前記探傷センサ群が走査方向に直交する方向に沿って配置されてなる探傷センサユニットを有し、前記処理手段は、前記センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出されたそれぞれの検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断することとしてもよい。
更に上記探傷装置において、前記処理手段は、前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、両者の信号値がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、両者の信号値がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0016】
複数の探傷センサ群を走査方向に直交する方向に沿って配置してなる探傷センサユニットを用いて探傷を行うことは、効率的に探傷を行うための一般的な配置のひとつであり、特別なセンサを追加することなく欠陥とノイズを判別することが可能となる。
【0017】
上記探傷装置において、前記走査方向をx軸方向、前記走査方向に直交する方向をy軸方向とした場合に、前記探傷センサユニットは、y軸座標に対して平行に並べられた2列の探傷センサ列を有するとともに、各々の前記探傷センサが異なるy座標値を取るように配置されており、前記処理手段は、y座標値が隣接する探傷センサ同士の検出信号を比較して複数の前記フィルタリング信号を作成し、これら前記フィルタリング信号から前記被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0018】
このような構成によれば、ノイズ成分と欠陥による成分とを高い精度で判別することができる。
【0019】
本発明は、複数の探傷センサが走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置された探傷センサ群が前記走査方向に直交する方向に沿って配置されてなる探傷センサユニットと、前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段とを備え、前記処理手段は、前記探傷センサを、前記走査方向に直交する方向に沿って配列されている列毎にグループ分けし、同じグループに属する前記探傷センサによって検出された近隣の検出信号に現れている共通の傾向を除去し、除去後の信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷装置を提供する。
【0020】
例えば、被検体に形状変化が生じていた場合には、探傷センサユニットを構成する近隣の探傷センサに対して同時に形状変化に起因するノイズが発生することとなる。そうすると、各探傷センサによって検出された検出信号を、探傷センサの走査方向の配置位置に基づいてグループ分けした場合には、グループによらず、検出信号に対して同じ時刻に同じ特徴(例えば、ピーク)が現れていることとなる。したがって、このような同じグループに属する近隣の信号に対して現れている共通の特徴を除去する処理を行うことで、形状変化等による探傷センサユニットの姿勢変化に起因するノイズ成分を除去することが可能となる。一方、探傷センサユニットの走査方向に直交する方向の分布幅の狭い欠陥を検知した場合には、探傷センサユニットを構成する一部の探傷センサによってのみこの欠陥に対する信号変化が現れることとなる。このため同じグループに属する近隣の信号全てには同じ特徴が現れることはない。
したがって、このような探傷装置によれば、簡易な構成により、探傷センサユニットの走査方向に直交する方向の分布幅の短い欠陥を有効に検出することができる。
【0021】
上記探傷装置において、前記処理手段は、各前記グループにおいて、探傷信号の計測位置での信号を補間して求め、補間した信号同士の平均を取ることにより、各探傷センサに対応する合成信号を生成し、前記合成信号に基づいて前記被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0022】
各探傷センサによって検出された検出信号をグループ分けして処理すると、得られた信号のノイズの消え残り成分などがグループ間で不連続で不自然な信号となる場合がある。そこで、各グループにおける検出信号を補間し、これらをグループ間で平均した後、近隣の信号に共通の特徴を低減する処理をすることで、処理後の信号がなめらかになり、探傷精度を更に向上させることができる。
【0023】
本発明は、被検体上を往復走査する探傷センサと、前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段とを備え、前記処理手段は、前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷装置を提供する。
更に、上記探傷装置において、前記処理手段は、前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0024】
このような構成によれば、一つの探傷センサを有していればよいので、非常に簡素な構成により、精度の高い探傷を行うことが可能となる。
【0025】
本発明は、複数の探傷センサを走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置し、各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷方法を提供する。
更に、上記探傷方法においては、各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士をそれぞれ比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【0026】
本発明は、複数の探傷センサを走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置させてなる探傷センサ群を、前記走査方向に直交する方向に沿って配置することにより探傷センサユニットを形成し、前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、複数の前記探傷センサを、前記走査方向に直交する方向に沿って配列されている列毎にグループ分けし、同じグループに属する前記探傷センサによって検出された近隣の検出信号に現れている共通の傾向を除去し、除去後の信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法を提供する。
【0027】
本発明は、探傷センサを被検体の表面において往復走査させ、前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、前記探傷センサによって検出された検出信号のうち、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷方法を提供する。
更に、上記探傷方法において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出することとしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、簡易な構成により、検出信号に含まれるノイズを判別することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る探傷装置の概略構成を示した図である。
【図2】探傷センサ群における探傷センサの配置を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る探傷装置の探傷センサユニットについて説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る処理装置により実行される他の処理について説明するための図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る処理装置により実行される処理について説明するための図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る処理装置により実行される他の処理について説明するための図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る処理装置により実行される他の処理について説明するための図である。
【図14】本発明に係る探傷装置の一構成例を示した図である。
【図15】本発明に係る探傷装置の一構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の各実施形態に係る探傷装置及び探傷方法について、図面を参照して説明する。なお、本発明に係る探傷装置及び探傷方法は、渦電流探傷法、超音波探傷等、被検体に発生したき裂等の欠陥を非破壊で検査する探傷方法に対して広く適用可能であるが、以下の説明では便宜上、渦電流探傷法に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0031】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る探傷装置1の概略構成を示した図である。図1において、探傷装置1は、2つの渦電流探傷センサ(以下、「探傷センサ」という。)11a,11bを有する探傷センサ群11と、駆動装置12、探傷器13、記憶装置14および処理装置(処理手段)15を備えて構成されている。
【0032】
探傷センサ11a,11bは、図2に示すように、走査方向に対して間隔をあけて一列に配置されており、探傷センサ11aが走査方向前方に配置され、探傷センサ11bが走査方向後方に配置されている。探傷センサ11a,11bは、渦電流探傷法による配管等の保守検査で一般的に使用されているもので、例えば自己比較方式のものを用いる。
【0033】
駆動装置12は、探傷センサ11a,11bを走査させるものであり、エンコーダ等の位置検出器を備えて、位置信号を探傷器13に出力する。探傷器13は、探傷センサ11a,11bのコイルを励磁して、該コイルの出力信号を検出信号として取得するとともに、駆動装置12からの位置信号を取得し、これら信号をA/D変換した後、記憶装置19に出力する。
【0034】
記憶装置14は、探傷器13からの位置信号および検出信号を逐次記録していく。処理装置15は、各探傷センサ11a,11bによって検出された検出信号において、同じ走査位置において検出された信号値同士を比較し、両者の信号値がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、両者の信号値がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する。
【0035】
以下、処理装置15による欠陥検出について図を参照して具体的に説明する。
例えば、図3(a)に示すように、被検体に欠陥Cが発生していた場合、探傷センサ11a,11bによって検出されるECT信号は、図3(b)のような波形となる。図3(b)において、横軸は計測時刻、縦軸は信号値であり、実線Va(t)は探傷センサ11aの検出信号、破線Vb(t)は探傷センサ11bの検出信号を示している。探傷センサ11a,11bは図2に示すように、走査方向に対して間隔をあけて並べられているので、欠陥Cの検出に時間差が生じている。なお、ECT信号は複素数値だが、図は、その実部または虚部の一方を概念的に示している。また、以降の説明において同様である。
【0036】
続いて、図3(b)に示した各検出信号を走査方向における位置(走査位置)がそれぞれ一致するように補正し、センサ位置補正信号を得る。つまり、時系列に示されていた検出信号を各走査位置に対する信号に変換する。これにより、図3(c)に示すような波形が得られる。図3(c)において、横軸は走査方向位置、縦軸は信号値であり、双方の探傷センサに対応するセンサ位置補正信号は一致している。このように、欠陥Cが発生している場合には、欠陥Cが発生している走査位置(X座標値)において、同じような信号値(波形)が得られる。続いて、処理装置15は、各走査位置におけるセンサ位置補正信号の各信号値を比較したとき、両者の信号値がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、両者の信号値がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に強調(増幅)させて、図3(d)に示すようなフィルタリング信号を生成する。なお、このフィルタリグは、センサ位置補正信号における実部と虚部それぞれに同様に適用される。また、以降の説明において同様である。
【0037】
例えば、処理装置15は、以下の(1)式で示されるような演算を行い、両信号の相互相関を取ることにより、フィルタリング信号を生成する。
【0038】
Fab(x)=sign(V’a(x))*sqrt(|V’a(x)*V’b(x)|) (1)
【0039】
上記(1)式において、Fab(x)はフィルタリング信号、V´a(x)は探傷センサ11aのセンサ位置補正信号の信号値、V´b(x)は探傷センサ11bのセンサ位置補正信号の信号値である。また、sign(X)はXの符号、|X|はXの絶対値、sqrt(X)はXの平方根である。
【0040】
欠陥Cを想定した場合には、欠陥Cが発生している箇所において探傷センサ11a,11bの信号値はほぼ同じ値となるため、図3(d)に示すように、欠陥Cの走査位置において両者の信号値とほぼ同等のフィルタリング信号が得られる。
【0041】
これに対し、例えば、図4(a)に示すように、被検体に形状変化が生じていた場合には、図4(b)に示すように、形状変化に起因する信号変化が探傷センサ11a,11bに対して同時刻に発生する。これは、探傷センサ11a,11bが一体化されており、一方に形状変化に対する姿勢変化が生じた場合には、必ず他方にもその影響が出るからである。
したがって、被検体に形状変化が生じていた場合の各探傷センサ11a,11bのセンサ位置補正信号は、図4(c)に示すように、異なる走査位置において信号値のピークが現れることとなる。したがって、このようなセンサ位置補正信号から得られるフィルタリング信号は、図4(d)に示すような波形となり、形状変化に起因するノイズが除去された信号となる。
【0042】
また、例えば、図5(a)に示すように、被検体に形状変化と欠陥とが同じ位置に生じていた場合には、図5(b)に示すような検出信号がそれぞれ得られ、これら検出信号から図5(c)に示すようなセンサ位置補正信号が得られる。この結果、図5(d)に示すようなフィルタリング信号が得られる。このように、被検体に形状変化と欠陥とが同じ位置に生じていた場合であっても、形状変化に起因するノイズ成分のみを除去し、欠陥に起因する信号値のみを抽出することができる。
【0043】
以上、本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法は、欠陥による信号値は、同じ走査位置において同じ信号値が得られるのに対し、形状変化等による探傷センサ群の姿勢変化に起因するノイズは、同じ時刻に発生し、同じ走査位置において同じ信号値が得られないという点に着目して発案されたものであり、具体的には、2つの探傷センサ11a,11bを走査方向に対して間隔をあけてほぼ一列に配置させ、これら探傷センサ11a,11bによって検出された検出信号において、同じ走査位置において検出された信号値同士(換言すると、同じx座標値における信号値)を比較し、両者の信号値がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、両者の信号値がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成して、このフィルタリング信号に基づいて欠陥を評価する。これにより、形状変化等の欠陥以外に起因して生じたノイズ成分をフィルタリング信号から除去することができ、欠陥に起因する信号成分のみを抽出ことができる。この結果、被検体に生じている欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、フィルタリング信号を得るときに相互相関を使用していたが、フィルタリング信号を得る方法はこれに限られない。例えば、以下の(2)式に示すように、両信号値の平均値を取ることとしてもよいし、以下の(3)式に示すように、両信号値の絶対値の最小値をとるいずれかと同符号の信号としてもよい。
【0045】
Fab(x)=(V’a(x)+V’b(x))/2 (2)
【0046】
Fab(x)=sign(V’a(x))*min(|V’a(x)|,|V’b(x)|) (3)
【0047】
また、本実施形態では、2つの探傷センサ11a,11bによって探傷センサ群11が構成されている場合について述べたが、探傷センサ群11を構成する探傷センサの数については特に限定されない。
また、本実施形態では、2つの探傷センサ11a,11bが一列に並べられて配置されている場合について述べたが、これら2つの探傷センサ11a,11bは、走査方向に直交する方向に対して多少ずれて配置されていてもよい。この場合、ずれ幅は、ターゲットとしている欠陥信号の分布幅(つまり、走査方向に直交する長さ)よりも短くなるように設定される。
【0048】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る探傷装置及び探傷方法について説明する。
第1の実施形態では、複数の探傷センサから構成される一つの探傷センサ群を備える場合について述べたが、本実施形態に係る探傷装置は、例えば、図6に示すように、複数の探傷センサ群11を走査方向に直交する方向に並べて配置した探傷センサユニット20を備えている。以下、本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法について、上述した第1の実施形態と異なる点について主に説明する。
【0049】
例えば、図6に示すように、走査方向をX軸方向、走査方向に直交する方向をY軸方向とした場合、探傷センサユニット20を構成する各探傷センサ群間において、走査方向に対して前方に配置されている各探傷センサ11a1,11a2,11a3,11a4は、同じx座標値およびそれぞれ異なるy座標値を取るように配置され、また、走査方向に対して後方に配置されている探傷センサ11b1,11b2,11b3,11b4も、互いに同じx座標値およびそれぞれ異なるy座標値を取るように配置されている。
【0050】
処理装置は、探傷センサユニット20を構成する各探傷センサ11a1〜11b4によって検出された検出信号に基づいてフィルタリング信号を作成し、被検体の欠陥を検出する。具体的には、図7(a)に示すように、走査方向に直交する方向(y軸方向)に分布が長い欠陥が発生していた場合、各探傷センサ11a1〜11b4によって得られる検出信号は、図7(b)に示すような波形となる。図7(b)において、横軸は計測時間、縦軸には各探傷センサによって検出された検出信号が、被検体上に配置された各探傷センサの配置位置に対応するように縦に並べて示されている。
【0051】
図7(b)において、V1(t)は、探傷センサ11a1によって得られた検出信号、V2(t)は、探傷センサ11b1によって得られた検出信号、V3(t)は、探傷センサ11a2によって得られた検出信号、V4(t)は、探傷センサ11b2によって得られた検出信号、V5(t)は、探傷センサ11a3によって得られた検出信号、V6(t)は、探傷センサ11b3によって得られた検出信号、V7(t)は、探傷センサ11a4によって得られた検出信号、V8(t)は、探傷センサ11b4によって得られた検出信号である。
【0052】
続いて、処理装置は、このような検出信号V1(t)からV8(t)を補正することによりセンサ位置補正信号を得る。図7(b)に対応するセンサ位置補正信号を図7(c)に示す。そして、処理装置は、これらのセンサ位置補正信号に基づいてフィルタリング信号を作成する。
【0053】
例えば、処理装置は、各探傷センサの配置位置においてy座標値のみを考慮した場合に、それぞれ隣り合う探傷センサのセンサ位置補正信号同士を比較することにより、フィルタリング信号をそれぞれ作成することとしてもよい。例えば、図6に示すように、探傷センサは、y軸上の位置のみを考慮すると、端から探傷センサ11a1,11b1,11a2,11b2,11a3,11b3,11a4,11b4の順に並んでいる。よって、隣接する探傷センサの組は、11a1と11b1,11b1と11a2,11a2と11b2,・・・11a4と11b4の組となる。処理装置は、これら隣接する探傷センサのセンサ位置補正信号同士を比較することにより、それぞれフィルタリング信号を作成する。この結果、例えば、図7(d)に示すようなフィルタリング信号Fab1〜Fab7が得られる。処理装置は、図7(d)に示したフィルタリング信号Fab1〜Fab7に基づいて、被検体に発生した欠陥を検出する。
【0054】
また、例えば、欠陥ではなく、図8(a)に示すように形状変化が生じていた場合には、上述した第1の実施形態と同様に、一体化されている探傷センサ11a1〜11b4に対して同時に形状変化による影響が表れ、図8(b)に示すように、各探傷センサ11a1〜11b4の検出信号V1(t)〜V8(t)には同時期にノイズが発生することとなる。そして、これら検出信号V1(t)〜V8(t)に対応するセンサ位置補正信号V´1(x)〜V´8(x)は、図8(c)に示すような波形となる。そして、隣接する信号同士を比較することにより、このセンサ位置補正信号V´1(x)〜V´8(x)からフィルタリング信号Fab1(x)〜Fab7(x)を生成すると図8(d)に示すような波形となる。このように、形状変化が生じている場合には、図8(c)に示すように、隣接するセンサ位置補正信号には、互いに異なる位置にノイズが発生するため、フィルタリング信号ではこのようなノイズは減衰される。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法によれば、2つの探傷センサからなる探傷センサ群を更に走査方向に直交する方向に沿って並べることにより探傷センサユニット20を構成し、この探傷センサユニット20を構成する各探傷センサによって検出された検出信号に基づいて欠陥を検出するので、効率的に探傷検査を行うことが可能となる。また、形状変化等を検知する専用のセンサ等を設けることなく、全ての探傷センサの検出信号を用いて探傷検査を行うので、簡易な構成により、効率的に、かつ、精度の高い探傷検査を実施することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態では、隣り合うセンサ位置補正信号からフィルタリング信号を作成していたことから、探傷センサが8つあるにも関わらず、7つのフィルタリング信号Fab1(x)〜Fab7(x)しか得られないという不都合がある。つまり、探傷信号Vi(t) (i=1,2,・・・)が計測されたY方向位置をYiとすると、フィルタリング信号Fab1(x)は、Y方向位置が(Y1+Y2)/2、すなわちY1とY2の中点の位置のフィルタリング信号を示しており、また、Fab2(x)は、Y方向位置が(Y2+Y3)/2の位置のフィルタリング信号を示しているため、フィルタリング信号Fab1(x)〜Fab7(x)と各探傷センサ11a1〜11b4の通過位置とが対応していないという不都合がある。
【0057】
このような不都合を解消するために、フィルタリング信号Fabi(x)のサンプリング位置を、探傷信号のサンプリング位置と一致するように補間した信号F´1(x)〜F´8(x)をフィルタリング信号として用いてもよい。補間は一般的な線形補間でもよい。Y方向の端処理は、隣接領域の探傷信号がない場合は、図9(d)に示すように端信号連続という条件で、両端のFab0=Fab1およびFab8=Fab7として、これを用いて補間してもよい。複数走査やラスタスキャン等により隣接する領域の探傷信号が得られている場合は、隣接領域の信号を用いて端処理を行ってもよい。
【0058】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る探傷装置及び探傷方法について説明する。
本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法は、図10に示すように、走査方向に沿って発生した欠陥のように、走査方向に直交する方向に対しての長さが非常に短い欠陥を検出するのに適した探傷を実施するものである。
以下、本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法について、上述した第2の実施形態と異なる点について主に説明する。
【0059】
本実施形態に係る探傷装置は、上述した第2の実施形態とほぼ同様の装置構成を有しているため、構成についての詳しい説明は省略する。
例えば、図10(a)に示すように、走査方向に沿って発生した欠陥を想定した場合、各探傷センサ11a1〜11b4によって検出される検出信号は、図10(b)に示すような波形となる。つまり、8つある探傷センサのうち、一部の探傷センサでしか欠陥が検出されないこととなる。処理装置は、このような検出信号からセンサ位置補正信号をそれぞれ求める。この結果、図10(c)に示すようなセンサ位置補正信号がそれぞれ求められる。
【0060】
続いて、処理装置は、これらセンサ位置補正信号を、探傷センサの配置位置に応じてグループ分けする。例えば、走査方向をx軸方向、走査方向に直交する方向をy軸方向とした場合に、その配置位置が同じx座標値を有する探傷センサを一つのグループとして取り扱う。これにより、8つの探傷センサ11a1〜11b4は、探傷センサ11a1、11a2,11a3,11a4からなるグループと、探傷センサ11b1、11b2,11b3,11b4からなる他のグループとに区分される。グループ区分後の各センサ位置補正信号を図10(d)に示す。
【0061】
続いて、処理装置は、各グループのセンサ位置補正信号において、X軸方向の同じ位置に発生している類似の特徴を有する信号を除去するY軸方向のドリフト除去処理を行う。図10(d)に示した各グループの信号群においては、グループ内の近接した信号に同じような傾向が表れていないため、ドリフト除去処理後の信号V´´1(x)〜V´´8(x)は、図10(e)に示すように、図10(d)に示した信号と同じとなる。続いて、処理装置は、各グループに区分したドリフト除去処理後の信号を1つの信号にまとめることにより、図10(f)に示す合成信号F1〜F8を得、この合成信号F1〜F8に基づいて欠陥を検出する。この結果、信号F3からF5にのみ信号が表れているので、この信号F3からF5に対応する探傷センサの位置に欠陥が生じていると判断することができる。
【0062】
また、上記欠陥ではなく、図11(a)に示すように形状変化が発生していた場合には、形状変化の影響による探傷センサユニット20の姿勢変化は、探傷センサユニット20を構成する全ての探傷センサに対して同時に発生するため、例えば、各グループに分けたセンサ位置補正信号は、図11(d)に示すような波形となる。このように、形状変化の場合には、各グループの近接した信号に対して同じ傾向(特徴)が表れることとなる。したがって、Y軸方向のドリフト除去処理後の信号は、図11(e)に示すような波形となり、ノイズ成分が除去される。そして、このドリフト除去処理後の信号を1つの信号にまとめることにより図11(f)に示すような合成信号F1〜F8が得られ、形状変化に起因するノイズによる欠陥の誤検出を防止することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る探傷装置及び探傷方法によれば、簡易な構成により、探傷センサユニットの走査方向に沿って発生した幅の短い欠陥を有効に検出することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、各探傷センサによって得られたセンサ位置補正信号をグループ分けして処理するため、図11(f)の例のように、ノイズ信号の消え残り成分が、グループ間でY軸方向に不連続な信号になる、という不具合がある。そこで、図12(b)や図13(b)に示すように、各グループにおけるセンサ位置補正信号を、相対するグループのY軸方向の位置で線形補間することにより、間引きされた信号を模擬し(図12(b)、図13(b)において点線で示された信号)、これら各グループの信号の平均をとることにより、それぞれの合成信号G1〜G8を作成することとしてもよい(図12(c)、図13(c)参照)。そして、この合成信号G1〜G8に対してY軸方向のドリフト除去処理を実施し(図12(d)、図13(d)参照)、処理後の合成信号G´1〜G´8に基づいて欠陥の検出を行うこととしてもよい。
【0065】
このようにすることで、例えば、図10(a)に示すような走査方向に沿った欠陥が生じている場合には、図12(d)に示すように欠陥による変化が現れ、図11(a)に示すような形状変化があった場合には、図13(d)に示すように、形状変化に起因するノイズが除去された消え残りの信号をY軸方向になめらかな信号とすることができる。
【0066】
なお、上記各実施形態では、二つ以上の探傷センサを用いて探傷を行う場合について説明したが、例えば、図14(a),(b)に示すように、一つの探傷センサ11aをX軸方向、Y軸方向に走査することで、被検体を二次元的に探傷することとしてもよい。この場合には、探傷センサによって検出された検出信号のうち、ほぼ同じ走査位置において検出された信号値同士を比較し、両者の信号値がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、両者の信号値がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出すればよい。フィルタリング信号の作成方法とは、上述した第1の実施形態と同様である。
【0067】
また、上述した各実施形態では、被検体の表面において探傷センサを走査させて、被検体内部または表面に発生した欠陥を検出する場合について述べたが、本発明に係る探傷装置及び探傷方法は、図15に示すように、管内を非接触で走査する探傷装置としても用いることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 探傷装置
11 探傷センサ群
11a、11a1〜11a4,11b、11b1〜11b4 渦電流探傷センサ
12 駆動装置
13 探傷器
14 記憶装置
15 処理装置
20 探傷センサユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の探傷センサが走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置された探傷センサ群と、
各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段と
を備え、
前記処理手段は、
各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷装置。
【請求項2】
前記処理手段は、
各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する請求項1に記載の探傷装置。
【請求項3】
複数の前記探傷センサ群が走査方向に直交する方向に沿って配置されてなる探傷センサユニットを有し、
前記処理手段は、前記センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出されたそれぞれの検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する請求項1に記載の探傷装置。
【請求項4】
前記処理手段は、前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する請求項3に記載の探傷装置。
【請求項5】
前記走査方向をx軸方向、前記走査方向に直交する方向をy軸方向とした場合に、
前記探傷センサユニットは、y軸座標に対して平行に並べられた2列の探傷センサ列を有するとともに、各々の前記探傷センサが異なるy座標値を取るように配置されており、
前記処理手段は、y座標値が隣接する探傷センサ同士の検出信号を比較して複数の前記フィルタリング信号を作成し、これら前記フィルタリング信号から前記被検体の欠陥を検出する請求項4に記載の探傷装置。
【請求項6】
複数の探傷センサが走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置された探傷センサ群が前記走査方向に直交する方向に沿って配置されてなる探傷センサユニットと、
前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段と
を備え、
前記処理手段は、
前記探傷センサを、前記走査方向に直交する方向に沿って配列されている列毎にグループ分けし、同じグループに属する前記探傷センサによって検出された近隣の検出信号に現れている共通の傾向を除去し、除去後の信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷装置。
【請求項7】
前記処理手段は、各前記グループにおいて、探傷信号の計測位置での信号を補間して求め、前記グループ間で補間した信号同士の平均を取ることにより、各探傷センサに対応する合成信号を生成し、前記合成信号に基づいて前記被検体の欠陥を検出する請求項6に記載の探傷装置。
【請求項8】
被検体上を往復走査する探傷センサと、
前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段と
を備え、
前記処理手段は、前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷装置。
【請求項9】
前記処理手段は、前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する請求項8に記載の探傷装置。
【請求項10】
複数の探傷センサを走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置し、各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、
各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷方法。
【請求項11】
各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士をそれぞれ比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する請求項10に記載の探傷方法。
【請求項12】
複数の探傷センサを走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置させてなる探傷センサ群を、前記走査方向に直交する方向に沿って配置することにより探傷センサユニットを形成し、前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、
複数の前記探傷センサを、前記走査方向に直交する方向に沿って配列されている列毎にグループ分けし、同じグループに属する前記探傷センサによって検出された近隣の検出信号に現れている共通の傾向を除去し、除去後の信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法。
【請求項13】
探傷センサを被検体の表面において往復走査させ、前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、
前記探傷センサによって検出された検出信号のうち、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷方法。
【請求項14】
走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する請求項13に記載の探傷方法。
【請求項1】
複数の探傷センサが走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置された探傷センサ群と、
各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段と
を備え、
前記処理手段は、
各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷装置。
【請求項2】
前記処理手段は、
各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する請求項1に記載の探傷装置。
【請求項3】
複数の前記探傷センサ群が走査方向に直交する方向に沿って配置されてなる探傷センサユニットを有し、
前記処理手段は、前記センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出されたそれぞれの検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する請求項1に記載の探傷装置。
【請求項4】
前記処理手段は、前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する請求項3に記載の探傷装置。
【請求項5】
前記走査方向をx軸方向、前記走査方向に直交する方向をy軸方向とした場合に、
前記探傷センサユニットは、y軸座標に対して平行に並べられた2列の探傷センサ列を有するとともに、各々の前記探傷センサが異なるy座標値を取るように配置されており、
前記処理手段は、y座標値が隣接する探傷センサ同士の検出信号を比較して複数の前記フィルタリング信号を作成し、これら前記フィルタリング信号から前記被検体の欠陥を検出する請求項4に記載の探傷装置。
【請求項6】
複数の探傷センサが走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置された探傷センサ群が前記走査方向に直交する方向に沿って配置されてなる探傷センサユニットと、
前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段と
を備え、
前記処理手段は、
前記探傷センサを、前記走査方向に直交する方向に沿って配列されている列毎にグループ分けし、同じグループに属する前記探傷センサによって検出された近隣の検出信号に現れている共通の傾向を除去し、除去後の信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷装置。
【請求項7】
前記処理手段は、各前記グループにおいて、探傷信号の計測位置での信号を補間して求め、前記グループ間で補間した信号同士の平均を取ることにより、各探傷センサに対応する合成信号を生成し、前記合成信号に基づいて前記被検体の欠陥を検出する請求項6に記載の探傷装置。
【請求項8】
被検体上を往復走査する探傷センサと、
前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する処理手段と
を備え、
前記処理手段は、前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷装置。
【請求項9】
前記処理手段は、前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する請求項8に記載の探傷装置。
【請求項10】
複数の探傷センサを走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置し、各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、
各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷方法。
【請求項11】
各前記探傷センサによって検出された検出信号において、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士をそれぞれ比較し、該信号値同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する請求項10に記載の探傷方法。
【請求項12】
複数の探傷センサを走査方向に間隔をあけてほぼ一列に配置させてなる探傷センサ群を、前記走査方向に直交する方向に沿って配置することにより探傷センサユニットを形成し、前記探傷センサユニットを構成する各前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、
複数の前記探傷センサを、前記走査方向に直交する方向に沿って配列されている列毎にグループ分けし、同じグループに属する前記探傷センサによって検出された近隣の検出信号に現れている共通の傾向を除去し、除去後の信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法。
【請求項13】
探傷センサを被検体の表面において往復走査させ、前記探傷センサによって検出された検出信号に基づいて被検体の欠陥を検出する探傷方法であって、
前記探傷センサによって検出された検出信号のうち、走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士が類似しておらず、かつ、同じ時刻に計測された信号値同士が類似している場合に、欠陥信号ではないと判断する探傷方法。
【請求項14】
走査方向においてほぼ同じ位置座標で検出された信号値同士を比較し、該信号同士がほぼ同じ値を示している位置の信号値を、該信号値同士がほぼ同じ値を示していない位置の信号値に対して相対的に増幅させたフィルタリング信号を生成し、このフィルタリング信号に基づいて被検体の欠陥を検出する請求項13に記載の探傷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−133268(P2011−133268A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291264(P2009−291264)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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