接合型レンズ用硬化性樹脂組成物、撮像レンズ、及び、撮像レンズの製造方法
【課題】260℃以上のリフロー処理における耐熱性、及び、レンズ間の密着性に優れる接合型レンズが製造可能であるとともに、レンズ製造におけるコスト削減、及び、レンズの軽量化を図ることのできる接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)下記一般式(I)で表される化合物と
(b)ラジカル重合開始剤と
を含む接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【解決手段】(a)下記一般式(I)で表される化合物と
(b)ラジカル重合開始剤と
を含む接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合型レンズ用硬化性樹脂組成物、撮像レンズ、及び、撮像レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラを内蔵した携帯電話が広く用いられている。このような携帯電話の製造において、光学素子や電子部品等の配線基板への接続には、実装コストを抑えるために、リフロー処理が用いられることが多い。そのため、携帯電話に取り付けられる撮像レンズには、リフロー処理において熱変形しない程度の耐熱性が要求される。
【0003】
このような撮像レンズとしては、物体側から像側に向かって、硬化性樹脂材料から形成された第1レンズ、高軟化温度の光学ガラス材料から形成された第2レンズ、及び、硬化性樹脂材料から形成された第3レンズがこの順で配列されるとともに、各レンズ同士が接着剤によって接着されてなる接合型複合レンズを有するものが知られている(特許文献1〜3参照)。
特許文献1〜3に記載の撮像レンズによれば、リフロー工程における高温熱環境においても、また、携帯電話器等に充填されて、乗用車中等の一時的に高温環境になる環境に置かれた場合であっても、光学性能が劣化しないという耐熱性が保証された撮像レンズが提供できるとされている。特許文献1〜3では、第1レンズ及び第3レンズに使用される硬化性樹脂材料として、透明高硬度シリコーン樹脂が好ましいとされている。
【0004】
また、最近、多数個のレンズを1枚のウエハー上に接着することによって、先ず、レンズとウエハーとの接合体を作製し、次いで、この接合体をダイスカットすることによって、1個のレンズとウエハーとの接合体を含む光学部品を、多数個、同時に作製する技術が知られている。このような技術によれば、多数個の光学部品を作製する際における組み立て工程が大幅に簡略化される(以下、この手法で作製されたレンズを、本明細書ではウエハーレベルレンズとも称する)。
例えば特許文献4には、多数の凹部が設けられた第1基材の当該凹部の各々に、変形可能な複写材料を配置し、次いで、第1基材の凹部に進入可能であって、かつ、レンズ形状に対応した形状を有する複写部を多数個有する複写治具を前記第1基材に押し当て、さらに、複写材料を硬化させることによって、第1基材上に多数個のレンズを同時に作製することが開示されている。特許文献4では、変形可能な複写材料として、紫外線硬化型エポキシ樹脂が記載されている。このように、複写治具における複写部の形状を複写材料に転写し、転写された形状を有する複写材料を硬化させることによって、所望の形状の光学部材を得る手法は、インプリント法として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−287005号公報
【特許文献2】特開2008−287006号公報
【特許文献3】特開2008−287007号公報
【特許文献4】米国特許出願公開2008/0230934号明細書
【特許文献5】特許第3299542号明細書
【特許文献6】特許第4153031号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Macromolecules, 1994, 27, 7935.
【非特許文献2】Macromolecules, 1996, 29, 6983.
【非特許文献3】Macromolecules, 2000, 33, 6722.
【非特許文献4】J. Polym. Sci.: Part A Polym. Chem. 2001, 39, 202.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レンズ材料としては、従来より、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が用いられ、レンズを含む光学素子が配線基板に半田付けされている。しかしながら、最近多く使用されるようになってきた鉛フリー半田は従来の半田に比べて溶融温度が高いため、リフロー処理の温度は、通常260℃以上となっている。このような温度でリフロー処理を行った場合、従来の熱可塑性樹脂を用いたレンズでは変形が起こったり、高温のために黄変したりするという不具合が発生しやすいという問題がある。また、特許文献1〜3で使用されている透明高硬度シリコーン樹脂を使用しても、260℃以上のリフロー処理においては、上記問題を解決するには不十分である。さらに、透明高硬度シリコーン樹脂は光学ガラス材料に対する密着性が低く、特許文献1〜3に記載のような接合型複合レンズを作製する場合においては、レンズ同士を接着するための接着剤が必要となるため、撮像レンズの製造コストが増大するという問題もある。
また、特許文献1〜3で使用されている透明高硬度シリコーン樹脂及び特許文献4に記載されている紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いて形成されたレンズは屈折率が低いため、レンズ製造におけるコスト削減、及び、レンズの軽量化を図るために樹脂の量を低減することは、所望のレンズ性能が得にくくなるという理由から難しかった。
【0008】
また、非特許文献1〜4および特許文献5,6には、環状アリルスルフィドモノマーが開示されており、このようなモノマーは、重合の間の収縮を最小限にするために使用され得るから、光学レンズにおいて応用できる旨が特許文献5,6に記載されている。しかしながら、非特許文献1、2、3、4および特許文献5,6には、上記したような接合型複合レンズ及びウエハーレベルレンズは記載されていない。
【0009】
従って、本発明の目的は、レンズ間の密着性、及び、260℃以上のリフロー処理における耐熱性に優れる接合型レンズを製造できるとともに、所望形状の接合型レンズを高精度で製造でき、さらには、レンズ製造におけるコスト削減、及び、レンズの軽量化を図ることのできる接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を提供すること目的とする。
また、本発明の目的は、レンズ間の密着性、及び、260℃以上のリフロー処理における耐熱性に優れる接合型レンズを備える撮像レンズを提供することを目的とする。
さらに、本発明の目的は、上記のような優位性を有する接合型レンズを備える撮像レンズの多数個を低コストで製造できる撮像レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討した結果、以下の構成とすることにより上記課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
(1)(a)下記一般式(I)で表される化合物と
(b)ラジカル重合開始剤と
を含む接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【0014】
上記(1)の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を用いて得られる接合型レンズは、一般式(I)で表される化合物の重合体の260℃以上における耐熱性が高いため、リフロー処理(特に鉛フリー半田を用いた場合)における耐熱性に優れる。
また、一般式(I)で表される化合物は、重合における体積収縮の度合いが小さく、また、これにより、硬化樹脂の内部応力も低減できる。よって、所望形状の接合型レンズを高精度で製造できる上、接合型レンズとした場合に、他部材から剥離しようとする応力が低減されるので、密着性の高い接合型レンズとすることができる。
また、一般式(I)で表される化合物の重合体は、他部材(特にガラス材料)に対する密着性が高いため、これによっても、接合型レンズとした場合にレンズ間の密着性に優れる。よって、レンズ間を接着させるための接着剤を、特段、必要としないことから、レンズ製造におけるコストを削減できる。
さらに、一般式(I)で表される化合物の重合体は、使用する樹脂の量を同じとした場合、従来より知られているシリコーン樹脂やエポキシ樹脂と比較して、屈折率が高いことから、レンズを作製するための樹脂の量を減らすことができる。よって、レンズの軽量化を図ることができる(例えば、レンズを薄型化でき、これによりレンズの複屈折率を減少させることができる)。加えて、樹脂の量を減らすことにより、レンズがリフロー処理によってダメージを受けにくくなるという作用も発現させることができる。
【0015】
(2) 一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0016】
【化2】
【0017】
[一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子を表し、mは0または1を表す。]
【0018】
(3) 一般式(II)中、R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表すことを特徴とする上記(2)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0019】
(4) 一般式(II)中、R1およびR12はいずれも水素原子を表し、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基を表し、mは1を表すことを特徴とする上記(2)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0020】
(5) 一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0021】
【化3】
【0022】
[一般式(III)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、nは0または1を表す。]
【0023】
(6) 一般式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す上記(5)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0024】
(7) 一般式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基を表し、nは0を表す上記(5)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0025】
(8) 第1レンズと、前記第1レンズに接合された第2レンズとを有する接合型レンズを備える、撮像レンズであって、物体側から像側に向かって前記第1レンズと前記第2レンズとが配列されるとともに、前記第1レンズが、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成され、前記第2レンズがガラス材料で形成されたことを特徴とする撮像レンズ。
【0026】
上記(8)の撮像レンズが備える接合型レンズは、一般式(I)で表される化合物の重合体の260℃以上における耐熱性が高いため、リフロー処理(特に鉛フリー半田を用いた場合)における耐熱性に優れる。
また、一般式(I)で表される化合物の重合体は、重合における体積収縮の度合いが小さく、また、これにより、硬化樹脂の内部応力も低減できる。よって、所望形状の接合型レンズを高精度で製造できる上、接合型レンズとした場合に、他部材から剥離しようとする応力が低減されるので、密着性の高い接合型レンズとすることができる。
また、一般式(I)で表される化合物の重合体は、他部材(特にガラス材料)に対する密着性が高いため、これによっても、接合型レンズとした場合にレンズ間の密着性に優れる。
【0027】
(9) 前記第2レンズが、平行平面ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けた、平凸レンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0028】
(10) 前記第2レンズが、平行平面ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けた、平凹レンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0029】
(11) 前記第2レンズが、両凸ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0030】
(12) 前記第2レンズが、両凸ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0031】
(13) 前記第2レンズが、両凹ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0032】
(14) 前記第2レンズが、両凹ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0033】
(15) 前記接合型レンズが、前記第2レンズの前記像側に、前記第2レンズに接合された第3レンズをさらに有し、かつ、前記第3レンズが、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする上記(8),(11)〜(14)のいずれかに記載の撮像レンズ。
【0034】
(16) 前記第3レンズが、前記第3レンズの像側面に凸面を向けたレンズであることを特徴とする上記(15)に記載の撮像レンズ。
【0035】
(17) 前記接合型レンズが、前記第2レンズの前記像側に、さらに第3レンズを有し、かつ、前記第3レンズが、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成されるとともに、前記第3レンズの像側面に凸面を向けた平凸レンズであることを特徴とする上記(9)または(10)に記載の撮像レンズ。
【0036】
(18) 前記第1レンズの物体側面、および第3レンズの像側面が非球面であることを特徴とする上記(15)に記載の撮像レンズ。
【0037】
(19) 前記第2のレンズの少なくとも一方の面がコーティング処理されていることを特徴とする上記(15)に記載の撮像レンズ。
【0038】
(20) 第1レンズと、前記第1レンズに接合された第2レンズとを有する接合型レンズを備える撮像レンズの製造方法であって、
一方面に複数の第1凹部が設けられた第1基材と、該複数の第1凹部にそれぞれ進入可能な複数の転写部を有する第1複写治具とを用意し、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を、前記第1基材の第1凹部及び前記第1複写治具の転写部の間に配置する工程と、
前記第1複写治具を前記第1基材の前記一方面に対して当接させて、前記第1複写治具の転写部の形状を前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物に転写する工程と、
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化して前記第1レンズを作製する工程と、
前記第1複写治具を前記第1基材に対して相対的に離脱させて、前記第1基材と複数の前記第1レンズとを有する接合体を作製する工程と、
前記複数の第1レンズの各々を含む領域が分断されるように前記接合体を厚み方向に切断することによって、前記第1レンズに接合された前記第2レンズを前記第1基材から得ることにより、前記接合型レンズを形成する工程と、
を有する撮像レンズの製造方法。
【0039】
上記(20)の撮像レンズの製造方法(インプリント法)によれば、上記のような優位性を有する接合型レンズを備える撮像レンズの多数個を低コストで製造できる。
【0040】
(21) 前記第2レンズに接合された第3レンズをさらに有する接合型レンズを備える、上記(20)に記載の撮像レンズの製造方法であって、
前記第1基材の他方面の、前記複数の第1凹部のそれぞれに対応する位置に、複数の第2凹部がさらに設けられるとともに、
前記製造方法は、前記接合体を厚み方向に切断する前記工程の前に、さらに、
該複数の第2凹部にそれぞれ進入可能な複数の転写部を有する第2複写治具を用意し、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を、前記第1基材の第2凹部及び前記第2複写治具の転写部の間に配置する工程と、
前記第2複写治具を前記第1基材の前記他方面に対して当接させて、前記第2複写治具の転写部の形状を前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物に転写する工程と、
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化して前記第3レンズを作製する工程と、
前記第2複写治具を前記第1基材に対して相対的に離脱させて、前記接合体にさらに複数の前記第3レンズを形成する工程と、
を含み、
前記複数の第1レンズの各々を含む領域が、対応する前記第3レンズをさらに含むことを特徴とする撮像レンズの製造方法。
【0041】
(22) 前記接合体が、該接合体の第1レンズ側の面に接合された板状部材をさらに有することを特徴とする上記(20)または(21)に記載の撮像レンズの製造方法。
【0042】
(23) 前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、光照射工程を含むことを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【0043】
(24) 前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、熱照射工程を含むことを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【0044】
(25) 前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、光照射工程と熱照射工程とを含むことを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、レンズ間の密着性、及び、260℃以上のリフロー処理における耐熱性に優れる接合型レンズを製造できるとともに、所望形状の接合型レンズを高精度で製造でき、さらには、レンズ製造におけるコスト削減、及び、レンズの軽量化を図ることのできる接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を提供できる。
また、本発明によれば、レンズ間の密着性、及び、260℃以上のリフロー処理における耐熱性に優れる接合型レンズを備える撮像レンズを提供できる。
さらに、本発明によれば、上記のような優位性を有する接合型レンズを備える撮像レンズの多数個を低コストで製造できる撮像レンズの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図5】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造に用いられるガラス基材の部分斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造に用いられる板状部材の部分斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図14】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図15】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図16】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図17】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図18】実施例及び比較例の接合型レンズの製造に使用されるモールドの概略断面図である。
【図19】実施例及び比較例の接合型レンズの形状を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
〔接合型レンズ用硬化性樹脂組成物〕
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物は
(a)下記一般式(I)で表される化合物と
(b)ラジカル重合開始剤と
とを含む。
【0048】
【化4】
【0049】
[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【0050】
本発明において、硬化性樹脂組成物とは、光照射、放射線照射、加熱、ラジカル重合開始剤の使用等により、含有される重合性成分の重合反応を起こすことができる組成物をいうものとする。
【0051】
<(a)一般式(I)で表される化合物>
【0052】
【化5】
【0053】
[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【0054】
一般式(I)で表される化合物は環状アリルスルフィドモノマーまたは環状アリルスルフィド化合物と以後称する。環状アリルスルフィドモノマーは重合性成分として機能することができ、好ましくは、加熱により、または光照射により直接もしくはラジカル重合開始剤の作用によってラジカル重合を起こす化合物である。開環重合により二重結合を有するポリマーに変化する。一般式(I)で表される化合物は、硬化による体積収縮が小さく、形成された硬化物の変形を小さくすることができるとともに、硬化樹脂の内部応力も低減できる。よって、非常に寸度安定性が高い硬化樹脂となるため、所望形状の接合型レンズを高精度で製造できる上、接合型レンズとした場合に、他部材から剥離しようとする応力が低減されるので、密着性の高い接合型レンズとすることができる。また、このポリマーは、水素結合などを発現する極性官能基を有していなくとも、他部材(特にガラス材料)に対する密着性が予想外に強く、この理由によっても、高い接合型レンズの密着性は優れる。
【0055】
重合反応は以下の式のように表される。
【0056】
【化6】
【0057】
[上記反応式中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。Z2はZ1が開環した場合の2つの炭素原子及び硫黄原子以外の原子団により形成された連結基を表す。lは繰り返し単位の数を表す。]
【0058】
本発明の環状アリルスルフィドモノマーは成長ラジカルがSラジカルであることと、S原子のα位の水素(隣の炭素の水素)原子を有するため、チオールエン反応に見られるような酸素重合阻害を受けないという特徴を有することを、発明者は確認している。そのため、汎用的なラジカル重合性モノマーであるメタクリレートや、アクリレートモノマーよりも酸素存在下、もしくは溶存酸素存在下においても重合反応が進行しやすいという特徴を有する。接合型レンズ用硬化樹脂組成物を構成した際にも、汎用モノマーを用いた場合は、溶存酸素によりある程度の重合阻害を受ける。それに対して、環状アリルスルフィドモノマーを用いた際は重合阻害を受けにくいために少ないラジカル開始剤量で硬化が可能である。
【0059】
一般式(I)中、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。Z1により形成される環構造の構成要素としてはメチレン炭素を挙げることができ、メチレン炭素以外に、カルボニル基、チオカルボニル基、酸素原子や、硫黄原子など二価の有機連結基を挙げることもでき、これらの組み合わせにより上記環構造が構成される。その環員数は6〜9であることが好ましく、6〜8であることがより好ましく、7〜8であることが特に好ましい。また、その環構造のメチレン炭素数は3〜7であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、4〜5であることが特に好ましい。
一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表す。R1で表されるアルキル基としては直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜3であることが特に好ましい。なお、本発明において、ある基について「炭素数」とは、置換基を有する基については、該置換基を含まない部分の炭素数をいうものとする。
【0060】
R1で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、2,3−ジブロモプロピル基、アダマンチル基、ベンジル基、4−ブロモベンジル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
一般式(I)中において、R1で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(I)の環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、一般式(I)で表される化合物は多官能体を表す。
【0061】
一般式(I)中において、R1が水素原子またはアルキル基を表し、かつZ1で表される環構造の環員数が6〜9であり、かつZ1で表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外に、カルボニル基、酸素原子または硫黄原子のいずれか、もしくはそれらの組み合わせを含むことが好ましく、R1が水素原子またはアルキル基を表し、かつZ1で表される環構造の環員数が6〜8であり、かつZ1で表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外にカルボニル基と酸素原子の組み合わせ、または硫黄原子を含むことがより好ましく、R1が水素原子またはアルキル基を表し、かつZ1で表される環構造の環員数が7〜8であり、かつZ1で表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外に硫黄原子を含むことが特に好ましい。
上記の中でも、R1が水素原子を表すことが更に好ましい。
【0062】
一般式(I)は下記に示す、一般式(II)、または一般式(III)であることがより好ましい。
以下に、一般式(II)、及び(III)について説明する。
【0063】
【化7】
【0064】
[一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子を表し、mは0または1を表す。]
【0065】
一般式(II)中、R1、R12、R13、R14、R15で表されるアルキル基の詳細は、上述した一般式(I)中のアルキル基の説明と同様である。
【0066】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリール基としては、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。アリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるヘテロ環基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数4〜14のヘテロ環基であることが好ましく、炭素数4〜10のヘテロ環基であることがより好ましく、炭素数5のヘテロ環基であることが特に好ましい。R13、R14、R15で表されるヘテロ環基の具体例としては、ピリジン環、ピペラジン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。前記ヘテロ環の中でもピリジン環が特に好ましい。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルコキシ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ターシャリーオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2,3−ジブロモプロピルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、4−ブロモベンジルオキシ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。具体例としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラニルオキシ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルキルチオ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ノルマルプロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ノルマルブチルチオ基、イソブチルチオ基、ターシャリーブチルチオ基、ペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ターシャリーオクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基、2,3−ジブロモプロピルチオ基、アダマンチルチオ基、ベンジルチオ基、4−ブロモベンジルチオ基などが挙げられる。
【0067】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールチオ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。具体例としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラニルチオ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルコキシカルボニル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ノルマルプロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ノルマルブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、ターシャリーブチルオキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ターシャリーオクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールオキシカルボニル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は7〜30であることが好ましく、7〜20であることが特に好ましい。具体例としては。例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、アントラニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシルオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ノルマルプロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ノルマルブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、ターシャリーブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ターシャリーオクチルカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールカルボニルオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は7〜30であることが好ましく、7〜20であることが特に好ましい。具体例としては。例えば、フェニルカルボニルオキシ基、ナフチルカルボニルオキシ基、アントラニルカルボニルオキシ基などが挙げられる。
【0068】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシルアミノ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアシルアミノ基としては、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるスルホニルアミノ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなスルホニルアミノ基としては、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアミノ基は、一置換アミノ基であっても、二置換のアミノ基であってもよく、二置換のアミノ基が好ましい。無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるハロゲン原子としては、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などが挙げられ、ブロモ基が好ましい。
【0069】
一般式(II)中、R1、R12、R13、R14、R15で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(II)で表される環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、一般式(II)で表される化合物は多官能体を表す。
一般式(II)中、mは0または1の整数を表す。mは1であることが好ましい。
【0070】
R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
【0071】
一般式(II)で表される化合物の好ましい態様としては、R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す化合物を挙げることができる。
【0072】
R13は水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
R14は複数の場合はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
R15は水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、アルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることがより好ましく、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが更に好ましい。
【0073】
より好ましい態様としては、一般式(II)中、R1およびR12がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R13、R14およびR15がそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アシル基であり、この態様において、R15が水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつmが0または1であることがさらに好ましい。更に好ましい態様としては、一般式(II)中、R1およびR12が水素原子またはメチル基であり、R13およびR14がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R15がアルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつmが0または1である化合物を挙げることができる。より一層好ましい態様としては、一般式(II)中、R1およびR12がいずれも水素原子であり、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、mが1である化合物を挙げることができる。最も好ましい態様としては、R1およびR12がいずれも水素原子であり、R13、R14が水素原子であり、R15がアシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつmが1である化合物を挙げることができる。
【0074】
【化8】
【0075】
[一般式(III)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子を表し、nは0または1を表す。]
【0076】
一般式(III)中、R1、R23、R24、R25で表されるアルキル基の詳細は、上述した一般式(I)中のアルキル基の説明と同様である。
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子の詳細は、上述した一般式(II)中のアリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子の説明と同様である。
【0077】
一般式(III)中、R1、R23、R24、R25で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(III)で表される環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、多官能体を表す。
一般式(III)中、nは0または1の整数を表す。nは0であることが好ましい。
【0078】
R23は水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
R24は複数の場合はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
R25は水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0079】
一般式(III)で表される化合物の好ましい態様としては、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R23、R24、R25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す化合物を挙げることができる。より好ましい態様としては、一般式(III)中、R1が水素原子またはメチル基であり、R23およびR24がそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基であり、R25が水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつnが0または1である化合物を挙げることができる。更に好ましい態様としては、一般式(III)中、R1が水素原子またはメチル基であり、R23およびR24がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R25が水素原子、アルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつnが0または1である化合物を挙げることができる。よりいっそう好ましい態様としては、一般式(III)中、R1が水素原子またはメチル基であり、R23、R24、R25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、nが0である化合物を挙げることができる。最も好ましい態様としては、R1がメチル基であり、R23、R24が水素原子であり、R25が水素原子であり、かつnが0である化合物を挙げることができる。
【0080】
以下に、一般式(I)および(II)、(III)で表される環状アリルスルフィド化合物の具体例を示す。但し、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0081】
【化9】
【0082】
【化10】
【0083】
【化11】
【0084】
【化12】
【0085】
【化13】
【0086】
以上説明した一般式(I)〜(III)で表される化合物の合成方法は、例えば、Macromolecules, 1994, 27, 7935. Macromolecules, 1996, 29, 6983.やMacromolecules, 2000, 33, 6722.や J. Polym. Sci.: Part A Polym. Chem. 2001, 39, 202.等に詳細に記載されている。
【0087】
前記環状アリルスルフィド化合物は、一種のみ用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物における前記環状アリルスルフィド化合物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜99質量%が好ましく、30〜98質量%がより好ましく、50〜98質量%が更に好ましい。
【0088】
<(b)ラジカル重合性開始剤>
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物において、ラジカル重合性開始剤としては、光、放射線または熱に対してラジカルを生成するものであればよく、特に限定されるものではないが、重合反応の効率の点では光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、特開2009−29960号公報の段落番号〔0038〕に記載の化合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱ラジカル重合開始剤としては2,2‘−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2‘−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド〕、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メトキシプロピオネート)、過酸化ベンゾイル、ターシャリーブチルパーオキシドなどが挙げられる。好ましくは、AIBN、V−65であり、より好ましくはAIBNである。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
また、好適な光ラジカル重合開始剤としては、下記一般式(IV)で表される化合物も挙げることができる。
【0090】
【化14】
【0091】
一般式(IV)中、Ra、RbおよびRcは、それぞれ独立にアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。
【0092】
以下に、一般式(IV)で表される化合物の詳細を説明する。
Ra、RbおよびRcで表されるアルキル基としては直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
Ra、RbおよびRcで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、2,3−ジブロモプロピル基、アダマンチル基、ベンジル基、4−ブロモベンジル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。これらの中でも、求核性の化合物、例えば水やアルコールなどに対する安定性の点から、イソプロピル基、又はターシャリーブチル基が特に好ましく、イソプロピル基が最も好ましい。
【0093】
一般式(IV)中、Ra、RbおよびRcで表されるアリール基としては、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。アリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
【0094】
一般式(IV)中、Ra、RbおよびRcで表されるヘテロ環基は、環員数4〜8が好ましく、環員数4〜6がより好ましく、環員数5または6が特に好ましい。具体例としては、ピリジン環、ピペラジン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。前記ヘテロ環の中でもピリジン環が特に好ましい。
【0095】
一般式(IV)中、Ra、RbおよびRc表される基が更に置換基を有する場合、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。
【0096】
一般式(IV)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。
【0097】
Raはアリール基であることが好ましく、該アリール基は2位または2位および6位に上記置換基を有することがより好ましい。中でも、2位にアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であることが更に好ましく、2位にアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であることがより好ましく、更に、2位および6位にアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であることがより好ましく、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であることが特に好ましい。例えばRaは2−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、2,6−トリフルオロメチルフェニル基であることが好ましく、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基であることが特に好ましく、2,6−ジメトキシフェニル基であることが最も好ましい。2位、または2位および6位に上記置換基を有することが好ましい理由としては、例えばJacobi, M.; Henne, A. Polymers Paint Colour Journal 1985, 175, 636.に記載されているように求核性の化合物、例えば水やアルコールなどに対する安定性が向上することが挙げられる。
【0098】
Rbはアルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。Rbとして具体的には、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、ピリジル基が好ましく光分解効率の点から、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、フェニル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
【0099】
Rcはアルキル基又はアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。Rbとして具体的には、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、ピリジル基が好ましく、光分解効率の点から、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、フェニル基がより好ましく、イソプロピル基が更に好ましい。
【0100】
一般式(IV)で表される化合物の好ましい態様としては、Raが2位にアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であり、Rbがアリール基であり、Rcがアルキル基であり、Xが酸素原子または硫黄原子である化合物を挙げることができる。より好ましい態様としては、Raが2位および6位にアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であり、Rbがアリール基であり、Rcがアルキル基であり、Xが酸素原子である化合物を挙げることができる。更に好ましい態様としては、Raが2,6−ジメトキシフェニル基または2,6−ジクロロフェニル基であり、Rbがフェニル基であり、Rcがエチル基またはイソプロピル基であり、Xが酸素原子である化合物を挙げることができる。特に好ましい態様としては、Raが2,6−ジメトキシフェニル基であり、Rbがフェニル基であり、Rcがイソプロピル基であり、Xが酸素原子である化合物を挙げることができる。
【0101】
以下に、一般式(IV)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0102】
【化15】
【0103】
【化16】
【0104】
以上説明した一般式(IV)で表される化合物の合成方法は、例えば、DE2830927A1等に詳細に記載されている。
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物における光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の全体量に対し0.01〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
光重合開始剤の(a)一般式(I)で表される化合物に対する使用割合は0.001〜0.1モル等量であることが好ましく、0.005〜0.05モル等量であることが好ましい。
【0105】
<その他の成分>
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性を改良する目的で重合禁止剤や酸化防止剤を加えてもよい。
前記重合禁止剤または酸化防止剤としては、例えば、特開2009−29960号公報の段落番号〔0046〕に記載の化合物が挙げられる。
前記重合禁止剤または酸化防止剤の添加量は、環状アリルスルフィド化合物の全量に対して3質量%以下が好ましい。前記添加量が3質量%を超えると、重合が遅くなるか、著しい場合は重合しなくなることがある。
また、本発明の硬化性組成物として、硬度を高くするために、本発明の環状アリルスルフィド化合物とともに他の重合性モノマーを含むこともできる。本発明の環状アリルスルフィド化合物と他の重合性モノマーと併用する場合、全硬化性組成物中の併用する重合性モノマー量は50質量%以下であることが好ましい。
【0106】
併用する他のモノマーとしては、例えば、特開2008−195616号公報の段落番号〔0063〕に記載の化合物が挙げられる。
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物には必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。無機フィラーとしては、微粒子状のものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定形シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、硫酸バリウムなどを挙げることができる。フィラーを添加する方法としては例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シランなどの加水分解性シランモノマーまたはオリゴマーや、チタン、アルミニウムなどの金属のアルコキシド、アシロキシドまたはハロゲン化物などを、本発明の硬化性組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法なども挙げることができる。全硬化性組成物中の無機フィラーの量は10質量%〜60質量%であることが好ましい。
【0107】
また、本発明の接合型レンズ用硬化性組成物として、硬度を高くするために、本発明の環状アリルスルフィド化合物とともに変性エポキシ材料を含むこともできる。それらの具体的な化合物としては特開2008−255295号公報や2008−266485号公報に詳しく記載されている。全硬化性組成物中の変性エポキシ材料の量は10質量%〜70質量%であることが好ましい。
また、本発明の接合型レンズ用硬化性組成物として、硬度を高くするために、本発明の環状アリルスルフィド化合物とともにビニル基に結合したケイ素原子を1分子中に1個以上有する有機ケイ素化合物を含むこともできる。それらの具体的な化合物としては特開2008−227119号公報に詳しく記載されている。また上述したGelest社のカタログに記載されているようなビニル末端ポリジメチルシロキサン(商品名DMS−V00、DMS−V03、DMS−V05、DMS−V21、DMS−V22、DMS−V25、DMS−V31、DMS−V33、DMS−V35)が挙げられる。全硬化性組成物中のビニル基に結合したケイ素原子を1分子中に1個以上有する有機ケイ素化合物の量は1質量%〜30質量%であることが好ましい。
【0108】
〔硬化樹脂の製造方法〕
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化させて、硬化樹脂を得る方法としては、特に限定されないが、光照射(例えば、紫外線照射など)及び熱照射の少なくとも一方を実施する方法を挙げることができる。すなわち、光照射及び熱照射(加熱)のいずれか一方のみを行うことにより反応させることもできるし、例えば、光照射を行った後に更に加熱することにより反応させることもできる。
加熱により硬化反応させる場合は、一度に高い温度まで上昇させてもよいが、低い温度で一定時間保持し、熱ラジカル重合を完結させることが好ましい。光ラジカル重合を起こす波長については、光ラジカル重合開始剤が反応する波長であればいずれでもよい。レーザーのような特定の波長を照射してもよく、ハロゲンキセノンランプのようにブロードな光を照射してもよい。特にレンズなどの用途に用いられる場合は透過率が問題となるため、短波光で重合を起こすことができる開始剤を用いた方が好ましい。
ラジカル重合反応の反応温度としては、特に制限はないが、光ラジカル重合であれば室温に近い温度でよく、熱ラジカル重合である場合は、50〜120℃の範囲で行うことが好ましい。
【0109】
硬化反応は一定の温度で行っても良いが、必要に応じて多段階、あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うよりも、多段階、あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪みのない、均一な硬化樹脂が得られやすいという点で好ましい。
【0110】
〔撮像レンズ〕
図1の概略構成図に示すように、撮像装置110は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ100とCCD等の撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ100は、接合型レンズ10を備えており、この接合型レンズ10は、物体側の第1レンズL11と像側の第2レンズL21とが接合されてなる。
第1レンズL11は、第1レンズL11の物体側面が物体側に凸面を向けた、平凸レンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。この接合型レンズ用硬化性樹脂組成物は、前記したように、一般式(I)で表される化合物の重合体が、ガラス材料に対して高い密着性を有するため、接着剤を用いずとも、第1レンズL11と第2レンズL21との接合は充分に維持される。
第2レンズL21は、平行平面ガラス板により形成されている。ガラス材料は公知のものを制限なく使用できるが、リフロー処理に曝されることを鑑みると、軟化温度が高いもの(例えば、500℃〜850℃)が好ましく、例えば、株式会社オハラ製の光学ガラスBK7を好適に使用できる。
なお、平行平面ガラス板は、レンズとは呼ばれないこともあるが、レンズ面の曲率半径が無限大である場合に相当するものと考え、本明細書においては、レンズという概念に包含されるものとする。
【0111】
接合型レンズ10は、例えば、第2レンズL21に接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を塗布し、次いで、第1レンズL11の形状に対応するモールド内に、第2レンズL21に塗布された硬化性樹脂組成物を収容した状態で、前述した硬化処理(前記〔硬化樹脂の製造方法〕を参照)を施すことによって、得ることができる。あるいは、モールドを使用しない方法としては、第2レンズL21に塗布された接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化した後、硬化樹脂を第1レンズL11の形状となるように研磨する方法が挙げられる。
【0112】
第1レンズL11及び第2レンズL21の形状は、撮像レンズ100の用途に応じて、適宜、変更可能である。以下、撮像レンズ100の変形例を示すが、既に前出の図を参照して説明した部材等については、図中に同一符号あるいは相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略する。なお、以下の変形例において、接合型レンズの作製方法は、図1の実施形態で述べた方法を同様に適用できる。
【0113】
図2の概略構成図に示すように、撮像装置111は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ101と撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ101は、接合型レンズ11を備えており、この接合型レンズ11は、物体側の第1レンズL12と像側の第2レンズL21とが接合されてなる。
第1レンズL12は、第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けた、平凹レンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。
【0114】
図3の概略構成図に示すように、撮像装置112は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ102と撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ102は、接合型レンズ12を備えており、この接合型レンズ12は、物体側の第1レンズL13と像側の第2レンズL22とが接合されてなる。
第1レンズL13は、第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。
第2レンズL22は、両凸ガラス板により形成されている。ガラス材料は公知のものを制限なく使用できるが、前記したように、リフロー処理に曝されることを鑑みると、軟化温度が高いものが好ましい。
【0115】
図4の概略構成図に示すように、撮像装置113は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ103と撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ103は、接合型レンズ13を備えており、この接合型レンズ13は、物体側の第1レンズL14と像側の第2レンズL22とが接合されてなる。
第1レンズL14は、第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。
【0116】
図5の概略構成図に示すように、撮像装置114は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ104と撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ104は、接合型レンズ14を備えており、この接合型レンズ14は、物体側の第1レンズL15と像側の第2レンズL23とが接合されてなる。
第1レンズL15は、第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。
第2レンズL23は、両凹ガラス板により形成されている。ガラス材料は公知のものを制限なく使用できるが、前記したように、リフロー処理に曝されることを鑑みると、軟化温度が高いものが好ましい。
【0117】
図6の概略構成図に示すように、撮像装置115は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ105と撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ105は、接合型レンズ15を備えており、この接合型レンズ15は、物体側の第1レンズL16と像側の第2レンズL23とが接合されてなる。
第1レンズL16は、第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。
【0118】
また、図1〜図6の各々において点線で示したように、接合型レンズ10〜15が、第2レンズL21〜L23の像側に、さらに第3レンズL31〜L33を有しても良い。第3レンズL31〜L33は第3レンズの像側面に凸面を向けたレンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。中でも、接合型レンズ10,11においては、第3レンズL31は第3レンズの像側面に凸面を向けた平凸レンズとなっている。
【0119】
また、以上に説明した実施形態において、第1レンズの物体側面、および第3レンズの像側面が非球面であっても良い。
【0120】
また、第2のレンズの少なくとも一方の面がコーティング処理されていても良い。コーティング処理は公知のものをいずれも採用できるが、例えば、第1レンズ(及び/又は第3レンズ)との界面における光反射を低減するためのコーティング処理を施しても良い。
【0121】
なお、上記した実施形態では、撮像レンズ100、101、102、103、104、105が、それぞれ、接合型レンズ10、11、12、13、14、15自体であるが、このように、本発明の撮像レンズは、撮像レンズが接合型レンズ自体である形態を包含するものである。
一方、本発明の撮像レンズは、接合型レンズ以外の公知の部材(例えば、他のレンズや筐体等)をさらに有するモジュールであっても良い。
【0122】
〔インプリント法によるウエハーレベルレンズの製造〕
本発明は、前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を使用した、インプリント法によるウエハーレベルレンズの製造方法にも関する。
この方法においては、先ず、複数の凹部が設けられた第1基材と、複数の転写部を有する複写治具とを用意する。
【0123】
例えば、図7の部分斜視図に示すように、ガラス基材20(第1基材)の一方面20Aには、多数個の円柱形状を有する凹部21(第1凹部)が所定間隔で配列されている。凹部21は、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を収容するためのものである。
ガラス基材20の厚みは特に限定はなく、接合型レンズの用途に応じて、適宜、決められるものであるが、例えば、接合型レンズを携帯電話に搭載することを意図する場合、通常、0.3mm〜0.5mmの範囲内である。
凹部21の深さは、接合型レンズの第1レンズの大きさに応じて、決められるものであるが、例えば、図7においては、ガラス基材20の厚みの半分程度とされている。
【0124】
また、図8の部分斜視図に示すように、板状部材30(第1複写治具)の一方の面30Aには、多数個の円柱形状を有する突起部31(転写部)が上記した所定間隔と同様の間隔で配列されている。ここで、複写治具30の突起部31は、突起部31がガラス基材20の凹部21に進入可能に形成されている。突起部31の高さは、例えば、凹部21の深さの半分程度とされている。
板状部材30の材質は、後述するインプリント法が達成できる範囲で特に限定されないが、例えば、金属、セラミック、あるいは、硬化樹脂に対する密着性がさほど高くない紫外線透過材料などが、適宜、選択される。
【0125】
突起部31の上面の形状は、接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成されるレンズの形状に対応している。例えば、図1に示される接合型レンズ10を得るべく、突起部31の上面31Aの中心領域には、第1レンズL11の物体側面に対応するように、凹部31Aが設けられている。
【0126】
次いで、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を、ガラス基材20の凹部21と板状部材30の突起部31との間に配置する。より具体的には、例えば、図9の概略断面図に示すように、所定量の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物40をガラス基材20の凹部21内に配置する。あるいは、所定量の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物40が板状部材30の凹部31Aによって保持され得る場合には、図10に示すように、接合型レンズ用硬化性樹脂組成物40を板状部材30の凹部31Aに配置しても良い。
【0127】
その後、図11に示すように、板状部材30をガラス基材20に対して当接させて、板状部材30の突起部31の形状を接合型レンズ用硬化性樹脂組成物40に転写し、この接合型レンズ用硬化性樹脂組成物40に前述した硬化処理(前記〔硬化樹脂の製造方法〕を参照)を施して、第1レンズL11を作製する。
【0128】
硬化処理として光照射を採用する場合であって、板状部材30として硬化樹脂に対する密着性がさほど高くない紫外線透過材料を使用する場合、紫外線を、板状部材30の他方の面30B(面30Aとは反対側の面)及びガラス基材20の他方の面20B(面20Aとは反対側の面)の少なくとも一方に向けて照射するのが好ましい。一方、板状部材30として紫外線を透過しない材料を使用する場合、紫外線を、ガラス基材20の面20Bに向けて照射するのが好ましい。
【0129】
硬化処理として熱照射を採用する場合、板状部材30の材料、及び、熱照射の方向は特に限定されないが、板状部材30として伝熱性の高い材料(金属、セラミック等)を使用するとともに、少なくとも、板状部材30の面30Bに向けて熱照射を行うことによって、より効率的に硬化反応を行うことができる場合がある。
【0130】
硬化処理として光照射と熱照射の両方を採用する方法としては、(1)光照射を行った後に熱照射を行う方法、(2)熱照射を行った後に光照射を行う方法、(3)光照射と熱照射とを同時に行う方法を挙げることができる。
方法(1),(2)における光照射及び熱照射の各々については、前記したように実施することができる。
方法(3)としては、光照射及び熱照射の両方を、板状部材30の面30B、及び、ガラス基材20の面20Bのいずれか一方に向けて行う方法、あるいは、光照射を面30B及び面20Bの一方に向けて行うとともに、熱照射を面30B及び面20Bの他方に向けて行う方法が挙げられる。後者の方法において、板状部材30として伝熱性の高い材料あるいは紫外線を透過しない材料を使用する場合、光照射を面20Bに向けて行うとともに、熱照射を面30Bに向けて行うことが好ましい。
【0131】
次いで、図12に示すように、ガラス基材20から板状部材30を相対的に離脱させて、ガラス基材20と多数の第1レンズL11とを有する接合体50を作製する。その後、第1レンズL11の各々を含む領域(例えば、領域R)が分断されるように接合体50を厚み方向(点線35に沿った方向)に切断することによって、図13に示すように、第1レンズL11に接合された第2レンズL21をガラス基材20から得ることにより、接合型レンズ10を備える撮像レンズ100を、同時に多数個、作製する。
【0132】
また、このガラス基材20に代えて、図14に示すガラス基材20’を使用することもできる。ガラス基材20’は、ガラス基材20と同様、一方面20A’に多数個の円柱形状を有する凹部21’(第2凹部)が所定間隔で配列されているが、これに加えて、他方面20B’においても、前記凹部21’のそれぞれに対応する位置に、複数の凹部21’が設けられている。
【0133】
このガラス基材20’を使用する場合、板状部材30(第1複写治具)と同一あるいは同種の板状部材(第2複写治具)(図示せず)を使用して、ガラス基材20の他方面20B’における凹部21’に対しても、図9〜図11を参照して説明した操作を同様に行うことによって、ガラス基材20’の一方面20A’に多数の第1レンズL11が設けられるとともに、他方面20B’にも多数の第3レンズL31が設けられてなる接合体60を作製することができる。
【0134】
次いで、第1レンズL11の各々を含む領域(例えば、領域R。なお、領域Rは、対応する第3レンズL31も含んでいる。)が分断されるように接合体50を厚み方向(点線35に沿った方向)に切断することによって、図15に示すように、第1レンズL11及び第3レンズL31に接合された第2レンズL21をガラス基材20から得ることにより、接合型レンズ10を備える撮像レンズ100を、同時に多数個、作製できる。
【0135】
また、接合体50,60は、接合体の切断工程の前に、接合体50,60の第1レンズ側の面(接合体60においては、第1レンズ側L11の面及び第3レンズL31側の面の少なくとも一方)に接合された板状部材をさらに有しても良い。
例えば、図16に示すように、接合体50は、第1レンズ側L11の面に接合された、板状部材としてのガラス基材70をさらに有している。
その後、この接合体を点線35’に沿った方向に切断することによって、図17に示すように、接合型レンズ10を備える、モジュール状の撮像レンズ100’を、同時に多数個、作製できる。
なお、板状部材は、接合体に接合できるものであれば、特に限定されない。例えば、別の接合体50や接合体60を板状部材としても良い。
【0136】
前述した実施形態において例示した各種部材の材質、形状、形態、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば、任意であり、限定されない。
【実施例】
【0137】
以下、本発明を実施例に基づきさらに説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0138】
<一般式(I)で表される化合物(モノマー)の合成>
例示化合物M−17、M−18、M−34、M−36、M−44、M−45及びM−46を、J. Polym. Sci.: Part A Polym. Chem. 2001, 39, 202に記載の方法に準じ、下記スキーム(Rは、M−17及びM−44合成時はメチル基、M−18合成時はフェニル基、M−34及びM−36合成時は水素原子、M−45合成時は2−ブロモフェニル、M−46合成時は2,4−ジクロロフェニル)によって合成した。出発原料を変更した以外は同様の方法により、合成した。出発原料の置換基を変更することにより、様々な置換基を有する環状アリルスルフィド化合物を合成することができる。
【0139】
【化17】
【0140】
以下に得られた物性データを記述する。
M-17;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.00 (s, 3H), 3.05 (m, 4H), 3.21 (s, 4H), 4.95 (m, 1H), 5.20 (s, 2H)
M-18;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.23 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.20 (m, 1H), 7.30 (m, 3H), 8.0 (m, 3H)
M-45;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.24 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.22 (m, 1H), 7.36 (m, 2H), 7.79 (dd, 1H), 7.80 (dd, 1H)
M-46;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.24 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.20 (m, 1H), 7.30 (dd, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.79 (d, 1H)
M-44;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.00 (s, 3H), 2.80〜3.80(m, 7H), 4.10〜4.30 (m, 2H), 4.85 (d, 2H)
M-34;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.95 (m, 2H), 2.36 (s, 2H), 4.50 (m, 2H), 5.60 (s, 1H), 5.85 (s, 1H)
M-36;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ1.54 (d, 3H), 2.92〜3.10 (m, 2H), 3.59(dd, 1H),4.51 (t, 2H), 5.51 (s, 1H), 5.63 (s, 1H)
【0141】
<試料101:本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の調製>
・環状アリルスルフィド化合物:M−17(合成品) 50g
・ラジカル重合開始剤:AIBN(和光純薬社製) 1g
【0142】
上記の組成にて、グローブボックス内で窒素雰囲気下において混合し、本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物として試料101を作成した。更に表1に記したように環状アリルスルフィド化合物を等質量置換えることで、試料102〜103を調製した。
【0143】
【表1】
【0144】
<試料104:比較例の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物(シリコーン系)>
比較例の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物(シリコーン系)である試料104としては、SMX−7852(富士高分子工業株式会社製)を使用した。
【0145】
<試料105:比較例の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物(シリコーン系)>
比較例の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物(シリコーン系)である試料105としては、VSM−4500(株式会社東芝製)を使用した。
【0146】
<接合型レンズの作製>
(実施例1)
光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の一方の面に試料101を塗布した。それに対して減圧した状態で、中に気泡が入らないように石英製モールドが有する球面に沿った形状の凹部を圧着した。より具体的には、図18の前記凹部の中心を通る概略断面図に示すように、一方の面80Aに球面状の凹部81(面80Aにおける直径R=1.029mm、中心深さD=0.0929mm)が設けられたモールド80を使用した。モールドの他方面80BからKEYENECE製ハイパワーUV−LED(UV−400)により、紫外線を40000mJ/cm2照射した。光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の他方面に対しても、同様の操作を行うことによって、図19の概略断面図に示すような、第2レンズL201としての光学ガラスBK7に第1レンズL101と第3レンズL301とが装着されてなる実施例1の接合型レンズ10’を作製した。
【0147】
(実施例2)
光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の一方面に試料101を塗布した。それに対して減圧した状態で、中に気泡が入らないように、モールド80の凹部81を圧着した。モールドの他方面80BからKEYENECE製ハイパワーUV−LED(UV−400)により、紫外線を十分に照射した。更に150℃で3時間、加熱し、硬化反応を終了させた。光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の他方面に対しても、同様の操作を行うことによって、図19に示すような、第2レンズL201としての光学ガラスBK7に第1レンズL101と第3レンズL301とが装着されてなる実施例2の接合型レンズ10’を作製した。
【0148】
(実施例3)
試料101を、試料102に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行うことにより、実施例3の接合型レンズ10’を作製した。
【0149】
(実施例4)
試料101を、試料103に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行うことにより、実施例4の接合型レンズ10’を作製した。
【0150】
(比較例1)
光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の一方面に試料104を塗布した。それに対して減圧した状態で、中に気泡が入らないように、モールド80の凹部81を圧着した。150℃で3時間、加熱し、硬化反応を行った。光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の他方面に対しても、同様の操作を行うことによって、図19に示すような、第2レンズL201としての光学ガラスBK7に第1レンズL101と第3レンズL301とが装着されてなる比較例1の接合型レンズ10’を作製した。
【0151】
(比較例2)
試料104を、試料105に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行うことにより、比較例2の接合型レンズ10’を作製した。
【0152】
実施例1〜4の接合型レンズの各レンズにおける材料、屈折率、アッベ数を纏めたものを表2に示す。
【0153】
<評価>
(焦点距離)
上記のようにして得られた各接合型レンズに対して、物体側からKEYENECE製ハイパワーUV−LED(UV−400)を照射して焦点距離を決定した。比較例1の接合型レンズの焦点距離を基準値とし、これに対する比率を、実施例1〜4及び比較例2の接合型レンズのそれぞれに関して算出した。当該比率が、1倍未満であるもの(すなわち、焦点距離が比較例1の接合型レンズに比して小さいもの)の評価を○とし、1倍超過であるもの(すなわち、焦点距離が比較例1の接合型レンズに比して大きいもの)の評価を×とした。得られた結果を表2に示す。
【0154】
(密着性試験:ヒートサイクル試験)
光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の一方の面に、実施例1に対応する第1レンズL101を、実施例1の上記した方法に基づき、25個接合した。すなわち、一枚のガラス基板の片面に、それぞれ、実施例1の第1レンズL101(凸レンズ)が、25個、接合されてなる実施例1の接合体を作製した。
同様の手法で、それぞれ、実施例2〜4,比較例1及び2の第1レンズL101(凸レンズ)が、25個、接合されてなる実施例2〜4,比較例1及び2の接合体を作製した。
各接合体を、270℃のオーブンに10分保持し、室温で30分冷却するというヒートサイクルを10回繰り返し、剥離した凸レンズの個数を調べた。得られた結果を表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
表2から明らかなように、比較例1及び2と比較して、実施例1〜4の接合レンズにおける第1,第3レンズは屈折率が高いため、焦点距離が短い。よって、本発明によれば、レンズを作製するための樹脂の量を減らすことも可能であり、レンズの軽量化が可能であることが分かった(レンズを作製するための樹脂の量を減らせば、例えば携帯電話に実装された撮像レンズが、携帯電話の製造工程中におけるリフロー処理によってダメージを受けにくくなるという作用も発現させることができる)。
また、表2から明らかなように、比較例1及び2と比較して、実施例1〜4の接合レンズにおける第1レンズは、270℃のヒートサイクル試験においても、レンズの剥離数が少なく、接着剤を使用しなくとも、ガラス材に対する密着性が高い。よって、本発明によれば、レンズ間の密着性、及び、リフロー処理における耐熱性に優れる接合型レンズを得ることができることが分かった。
【符号の説明】
【0157】
10,10’,11,12,13,14,15 接合型レンズ
20,20’ ガラス基材(第1基材)
20A,20A’ 面(第1基材の一方面)
20B,20B’ 面(第1基材の他方面)
21 凹部(第1凹部)
21’ 凹部(第2凹部)
30 板状部材(第1複写治具)
31 突起部(転写部)
40 接合型レンズ用硬化性樹脂組成物
50,60 接合体
70 ガラス基材(板状部材)
100,100’,101,102,103,104,105 撮像レンズ
L11,L12,L13,L14,L15,L16,L101 第1レンズ
L21,L22,L23,L201 第2レンズ
L31,L32,L33,L301 第3レンズ
R 領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合型レンズ用硬化性樹脂組成物、撮像レンズ、及び、撮像レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラを内蔵した携帯電話が広く用いられている。このような携帯電話の製造において、光学素子や電子部品等の配線基板への接続には、実装コストを抑えるために、リフロー処理が用いられることが多い。そのため、携帯電話に取り付けられる撮像レンズには、リフロー処理において熱変形しない程度の耐熱性が要求される。
【0003】
このような撮像レンズとしては、物体側から像側に向かって、硬化性樹脂材料から形成された第1レンズ、高軟化温度の光学ガラス材料から形成された第2レンズ、及び、硬化性樹脂材料から形成された第3レンズがこの順で配列されるとともに、各レンズ同士が接着剤によって接着されてなる接合型複合レンズを有するものが知られている(特許文献1〜3参照)。
特許文献1〜3に記載の撮像レンズによれば、リフロー工程における高温熱環境においても、また、携帯電話器等に充填されて、乗用車中等の一時的に高温環境になる環境に置かれた場合であっても、光学性能が劣化しないという耐熱性が保証された撮像レンズが提供できるとされている。特許文献1〜3では、第1レンズ及び第3レンズに使用される硬化性樹脂材料として、透明高硬度シリコーン樹脂が好ましいとされている。
【0004】
また、最近、多数個のレンズを1枚のウエハー上に接着することによって、先ず、レンズとウエハーとの接合体を作製し、次いで、この接合体をダイスカットすることによって、1個のレンズとウエハーとの接合体を含む光学部品を、多数個、同時に作製する技術が知られている。このような技術によれば、多数個の光学部品を作製する際における組み立て工程が大幅に簡略化される(以下、この手法で作製されたレンズを、本明細書ではウエハーレベルレンズとも称する)。
例えば特許文献4には、多数の凹部が設けられた第1基材の当該凹部の各々に、変形可能な複写材料を配置し、次いで、第1基材の凹部に進入可能であって、かつ、レンズ形状に対応した形状を有する複写部を多数個有する複写治具を前記第1基材に押し当て、さらに、複写材料を硬化させることによって、第1基材上に多数個のレンズを同時に作製することが開示されている。特許文献4では、変形可能な複写材料として、紫外線硬化型エポキシ樹脂が記載されている。このように、複写治具における複写部の形状を複写材料に転写し、転写された形状を有する複写材料を硬化させることによって、所望の形状の光学部材を得る手法は、インプリント法として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−287005号公報
【特許文献2】特開2008−287006号公報
【特許文献3】特開2008−287007号公報
【特許文献4】米国特許出願公開2008/0230934号明細書
【特許文献5】特許第3299542号明細書
【特許文献6】特許第4153031号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Macromolecules, 1994, 27, 7935.
【非特許文献2】Macromolecules, 1996, 29, 6983.
【非特許文献3】Macromolecules, 2000, 33, 6722.
【非特許文献4】J. Polym. Sci.: Part A Polym. Chem. 2001, 39, 202.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レンズ材料としては、従来より、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が用いられ、レンズを含む光学素子が配線基板に半田付けされている。しかしながら、最近多く使用されるようになってきた鉛フリー半田は従来の半田に比べて溶融温度が高いため、リフロー処理の温度は、通常260℃以上となっている。このような温度でリフロー処理を行った場合、従来の熱可塑性樹脂を用いたレンズでは変形が起こったり、高温のために黄変したりするという不具合が発生しやすいという問題がある。また、特許文献1〜3で使用されている透明高硬度シリコーン樹脂を使用しても、260℃以上のリフロー処理においては、上記問題を解決するには不十分である。さらに、透明高硬度シリコーン樹脂は光学ガラス材料に対する密着性が低く、特許文献1〜3に記載のような接合型複合レンズを作製する場合においては、レンズ同士を接着するための接着剤が必要となるため、撮像レンズの製造コストが増大するという問題もある。
また、特許文献1〜3で使用されている透明高硬度シリコーン樹脂及び特許文献4に記載されている紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いて形成されたレンズは屈折率が低いため、レンズ製造におけるコスト削減、及び、レンズの軽量化を図るために樹脂の量を低減することは、所望のレンズ性能が得にくくなるという理由から難しかった。
【0008】
また、非特許文献1〜4および特許文献5,6には、環状アリルスルフィドモノマーが開示されており、このようなモノマーは、重合の間の収縮を最小限にするために使用され得るから、光学レンズにおいて応用できる旨が特許文献5,6に記載されている。しかしながら、非特許文献1、2、3、4および特許文献5,6には、上記したような接合型複合レンズ及びウエハーレベルレンズは記載されていない。
【0009】
従って、本発明の目的は、レンズ間の密着性、及び、260℃以上のリフロー処理における耐熱性に優れる接合型レンズを製造できるとともに、所望形状の接合型レンズを高精度で製造でき、さらには、レンズ製造におけるコスト削減、及び、レンズの軽量化を図ることのできる接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を提供すること目的とする。
また、本発明の目的は、レンズ間の密着性、及び、260℃以上のリフロー処理における耐熱性に優れる接合型レンズを備える撮像レンズを提供することを目的とする。
さらに、本発明の目的は、上記のような優位性を有する接合型レンズを備える撮像レンズの多数個を低コストで製造できる撮像レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討した結果、以下の構成とすることにより上記課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
(1)(a)下記一般式(I)で表される化合物と
(b)ラジカル重合開始剤と
を含む接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【0014】
上記(1)の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を用いて得られる接合型レンズは、一般式(I)で表される化合物の重合体の260℃以上における耐熱性が高いため、リフロー処理(特に鉛フリー半田を用いた場合)における耐熱性に優れる。
また、一般式(I)で表される化合物は、重合における体積収縮の度合いが小さく、また、これにより、硬化樹脂の内部応力も低減できる。よって、所望形状の接合型レンズを高精度で製造できる上、接合型レンズとした場合に、他部材から剥離しようとする応力が低減されるので、密着性の高い接合型レンズとすることができる。
また、一般式(I)で表される化合物の重合体は、他部材(特にガラス材料)に対する密着性が高いため、これによっても、接合型レンズとした場合にレンズ間の密着性に優れる。よって、レンズ間を接着させるための接着剤を、特段、必要としないことから、レンズ製造におけるコストを削減できる。
さらに、一般式(I)で表される化合物の重合体は、使用する樹脂の量を同じとした場合、従来より知られているシリコーン樹脂やエポキシ樹脂と比較して、屈折率が高いことから、レンズを作製するための樹脂の量を減らすことができる。よって、レンズの軽量化を図ることができる(例えば、レンズを薄型化でき、これによりレンズの複屈折率を減少させることができる)。加えて、樹脂の量を減らすことにより、レンズがリフロー処理によってダメージを受けにくくなるという作用も発現させることができる。
【0015】
(2) 一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0016】
【化2】
【0017】
[一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子を表し、mは0または1を表す。]
【0018】
(3) 一般式(II)中、R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表すことを特徴とする上記(2)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0019】
(4) 一般式(II)中、R1およびR12はいずれも水素原子を表し、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基を表し、mは1を表すことを特徴とする上記(2)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0020】
(5) 一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0021】
【化3】
【0022】
[一般式(III)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、nは0または1を表す。]
【0023】
(6) 一般式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す上記(5)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0024】
(7) 一般式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基を表し、nは0を表す上記(5)に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【0025】
(8) 第1レンズと、前記第1レンズに接合された第2レンズとを有する接合型レンズを備える、撮像レンズであって、物体側から像側に向かって前記第1レンズと前記第2レンズとが配列されるとともに、前記第1レンズが、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成され、前記第2レンズがガラス材料で形成されたことを特徴とする撮像レンズ。
【0026】
上記(8)の撮像レンズが備える接合型レンズは、一般式(I)で表される化合物の重合体の260℃以上における耐熱性が高いため、リフロー処理(特に鉛フリー半田を用いた場合)における耐熱性に優れる。
また、一般式(I)で表される化合物の重合体は、重合における体積収縮の度合いが小さく、また、これにより、硬化樹脂の内部応力も低減できる。よって、所望形状の接合型レンズを高精度で製造できる上、接合型レンズとした場合に、他部材から剥離しようとする応力が低減されるので、密着性の高い接合型レンズとすることができる。
また、一般式(I)で表される化合物の重合体は、他部材(特にガラス材料)に対する密着性が高いため、これによっても、接合型レンズとした場合にレンズ間の密着性に優れる。
【0027】
(9) 前記第2レンズが、平行平面ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けた、平凸レンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0028】
(10) 前記第2レンズが、平行平面ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けた、平凹レンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0029】
(11) 前記第2レンズが、両凸ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0030】
(12) 前記第2レンズが、両凸ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0031】
(13) 前記第2レンズが、両凹ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0032】
(14) 前記第2レンズが、両凹ガラス板であって、前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする上記(8)に記載の撮像レンズ。
【0033】
(15) 前記接合型レンズが、前記第2レンズの前記像側に、前記第2レンズに接合された第3レンズをさらに有し、かつ、前記第3レンズが、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする上記(8),(11)〜(14)のいずれかに記載の撮像レンズ。
【0034】
(16) 前記第3レンズが、前記第3レンズの像側面に凸面を向けたレンズであることを特徴とする上記(15)に記載の撮像レンズ。
【0035】
(17) 前記接合型レンズが、前記第2レンズの前記像側に、さらに第3レンズを有し、かつ、前記第3レンズが、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成されるとともに、前記第3レンズの像側面に凸面を向けた平凸レンズであることを特徴とする上記(9)または(10)に記載の撮像レンズ。
【0036】
(18) 前記第1レンズの物体側面、および第3レンズの像側面が非球面であることを特徴とする上記(15)に記載の撮像レンズ。
【0037】
(19) 前記第2のレンズの少なくとも一方の面がコーティング処理されていることを特徴とする上記(15)に記載の撮像レンズ。
【0038】
(20) 第1レンズと、前記第1レンズに接合された第2レンズとを有する接合型レンズを備える撮像レンズの製造方法であって、
一方面に複数の第1凹部が設けられた第1基材と、該複数の第1凹部にそれぞれ進入可能な複数の転写部を有する第1複写治具とを用意し、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を、前記第1基材の第1凹部及び前記第1複写治具の転写部の間に配置する工程と、
前記第1複写治具を前記第1基材の前記一方面に対して当接させて、前記第1複写治具の転写部の形状を前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物に転写する工程と、
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化して前記第1レンズを作製する工程と、
前記第1複写治具を前記第1基材に対して相対的に離脱させて、前記第1基材と複数の前記第1レンズとを有する接合体を作製する工程と、
前記複数の第1レンズの各々を含む領域が分断されるように前記接合体を厚み方向に切断することによって、前記第1レンズに接合された前記第2レンズを前記第1基材から得ることにより、前記接合型レンズを形成する工程と、
を有する撮像レンズの製造方法。
【0039】
上記(20)の撮像レンズの製造方法(インプリント法)によれば、上記のような優位性を有する接合型レンズを備える撮像レンズの多数個を低コストで製造できる。
【0040】
(21) 前記第2レンズに接合された第3レンズをさらに有する接合型レンズを備える、上記(20)に記載の撮像レンズの製造方法であって、
前記第1基材の他方面の、前記複数の第1凹部のそれぞれに対応する位置に、複数の第2凹部がさらに設けられるとともに、
前記製造方法は、前記接合体を厚み方向に切断する前記工程の前に、さらに、
該複数の第2凹部にそれぞれ進入可能な複数の転写部を有する第2複写治具を用意し、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を、前記第1基材の第2凹部及び前記第2複写治具の転写部の間に配置する工程と、
前記第2複写治具を前記第1基材の前記他方面に対して当接させて、前記第2複写治具の転写部の形状を前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物に転写する工程と、
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化して前記第3レンズを作製する工程と、
前記第2複写治具を前記第1基材に対して相対的に離脱させて、前記接合体にさらに複数の前記第3レンズを形成する工程と、
を含み、
前記複数の第1レンズの各々を含む領域が、対応する前記第3レンズをさらに含むことを特徴とする撮像レンズの製造方法。
【0041】
(22) 前記接合体が、該接合体の第1レンズ側の面に接合された板状部材をさらに有することを特徴とする上記(20)または(21)に記載の撮像レンズの製造方法。
【0042】
(23) 前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、光照射工程を含むことを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【0043】
(24) 前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、熱照射工程を含むことを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【0044】
(25) 前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、光照射工程と熱照射工程とを含むことを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、レンズ間の密着性、及び、260℃以上のリフロー処理における耐熱性に優れる接合型レンズを製造できるとともに、所望形状の接合型レンズを高精度で製造でき、さらには、レンズ製造におけるコスト削減、及び、レンズの軽量化を図ることのできる接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を提供できる。
また、本発明によれば、レンズ間の密着性、及び、260℃以上のリフロー処理における耐熱性に優れる接合型レンズを備える撮像レンズを提供できる。
さらに、本発明によれば、上記のような優位性を有する接合型レンズを備える撮像レンズの多数個を低コストで製造できる撮像レンズの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図5】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズを用いた撮像装置の概略断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造に用いられるガラス基材の部分斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造に用いられる板状部材の部分斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図14】本発明の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図15】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図16】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図17】本発明の別の実施形態に係る撮像レンズの製造を説明する概略断面図である。
【図18】実施例及び比較例の接合型レンズの製造に使用されるモールドの概略断面図である。
【図19】実施例及び比較例の接合型レンズの形状を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
〔接合型レンズ用硬化性樹脂組成物〕
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物は
(a)下記一般式(I)で表される化合物と
(b)ラジカル重合開始剤と
とを含む。
【0048】
【化4】
【0049】
[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【0050】
本発明において、硬化性樹脂組成物とは、光照射、放射線照射、加熱、ラジカル重合開始剤の使用等により、含有される重合性成分の重合反応を起こすことができる組成物をいうものとする。
【0051】
<(a)一般式(I)で表される化合物>
【0052】
【化5】
【0053】
[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【0054】
一般式(I)で表される化合物は環状アリルスルフィドモノマーまたは環状アリルスルフィド化合物と以後称する。環状アリルスルフィドモノマーは重合性成分として機能することができ、好ましくは、加熱により、または光照射により直接もしくはラジカル重合開始剤の作用によってラジカル重合を起こす化合物である。開環重合により二重結合を有するポリマーに変化する。一般式(I)で表される化合物は、硬化による体積収縮が小さく、形成された硬化物の変形を小さくすることができるとともに、硬化樹脂の内部応力も低減できる。よって、非常に寸度安定性が高い硬化樹脂となるため、所望形状の接合型レンズを高精度で製造できる上、接合型レンズとした場合に、他部材から剥離しようとする応力が低減されるので、密着性の高い接合型レンズとすることができる。また、このポリマーは、水素結合などを発現する極性官能基を有していなくとも、他部材(特にガラス材料)に対する密着性が予想外に強く、この理由によっても、高い接合型レンズの密着性は優れる。
【0055】
重合反応は以下の式のように表される。
【0056】
【化6】
【0057】
[上記反応式中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。Z2はZ1が開環した場合の2つの炭素原子及び硫黄原子以外の原子団により形成された連結基を表す。lは繰り返し単位の数を表す。]
【0058】
本発明の環状アリルスルフィドモノマーは成長ラジカルがSラジカルであることと、S原子のα位の水素(隣の炭素の水素)原子を有するため、チオールエン反応に見られるような酸素重合阻害を受けないという特徴を有することを、発明者は確認している。そのため、汎用的なラジカル重合性モノマーであるメタクリレートや、アクリレートモノマーよりも酸素存在下、もしくは溶存酸素存在下においても重合反応が進行しやすいという特徴を有する。接合型レンズ用硬化樹脂組成物を構成した際にも、汎用モノマーを用いた場合は、溶存酸素によりある程度の重合阻害を受ける。それに対して、環状アリルスルフィドモノマーを用いた際は重合阻害を受けにくいために少ないラジカル開始剤量で硬化が可能である。
【0059】
一般式(I)中、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。Z1により形成される環構造の構成要素としてはメチレン炭素を挙げることができ、メチレン炭素以外に、カルボニル基、チオカルボニル基、酸素原子や、硫黄原子など二価の有機連結基を挙げることもでき、これらの組み合わせにより上記環構造が構成される。その環員数は6〜9であることが好ましく、6〜8であることがより好ましく、7〜8であることが特に好ましい。また、その環構造のメチレン炭素数は3〜7であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、4〜5であることが特に好ましい。
一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表す。R1で表されるアルキル基としては直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜3であることが特に好ましい。なお、本発明において、ある基について「炭素数」とは、置換基を有する基については、該置換基を含まない部分の炭素数をいうものとする。
【0060】
R1で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、2,3−ジブロモプロピル基、アダマンチル基、ベンジル基、4−ブロモベンジル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
一般式(I)中において、R1で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(I)の環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、一般式(I)で表される化合物は多官能体を表す。
【0061】
一般式(I)中において、R1が水素原子またはアルキル基を表し、かつZ1で表される環構造の環員数が6〜9であり、かつZ1で表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外に、カルボニル基、酸素原子または硫黄原子のいずれか、もしくはそれらの組み合わせを含むことが好ましく、R1が水素原子またはアルキル基を表し、かつZ1で表される環構造の環員数が6〜8であり、かつZ1で表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外にカルボニル基と酸素原子の組み合わせ、または硫黄原子を含むことがより好ましく、R1が水素原子またはアルキル基を表し、かつZ1で表される環構造の環員数が7〜8であり、かつZ1で表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外に硫黄原子を含むことが特に好ましい。
上記の中でも、R1が水素原子を表すことが更に好ましい。
【0062】
一般式(I)は下記に示す、一般式(II)、または一般式(III)であることがより好ましい。
以下に、一般式(II)、及び(III)について説明する。
【0063】
【化7】
【0064】
[一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子を表し、mは0または1を表す。]
【0065】
一般式(II)中、R1、R12、R13、R14、R15で表されるアルキル基の詳細は、上述した一般式(I)中のアルキル基の説明と同様である。
【0066】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリール基としては、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。アリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるヘテロ環基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数4〜14のヘテロ環基であることが好ましく、炭素数4〜10のヘテロ環基であることがより好ましく、炭素数5のヘテロ環基であることが特に好ましい。R13、R14、R15で表されるヘテロ環基の具体例としては、ピリジン環、ピペラジン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。前記ヘテロ環の中でもピリジン環が特に好ましい。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルコキシ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ターシャリーオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2,3−ジブロモプロピルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、4−ブロモベンジルオキシ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。具体例としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラニルオキシ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルキルチオ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ノルマルプロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ノルマルブチルチオ基、イソブチルチオ基、ターシャリーブチルチオ基、ペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ターシャリーオクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基、2,3−ジブロモプロピルチオ基、アダマンチルチオ基、ベンジルチオ基、4−ブロモベンジルチオ基などが挙げられる。
【0067】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールチオ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。具体例としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラニルチオ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルコキシカルボニル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ノルマルプロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ノルマルブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、ターシャリーブチルオキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ターシャリーオクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールオキシカルボニル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は7〜30であることが好ましく、7〜20であることが特に好ましい。具体例としては。例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、アントラニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシルオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ノルマルプロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ノルマルブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、ターシャリーブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ターシャリーオクチルカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールカルボニルオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は7〜30であることが好ましく、7〜20であることが特に好ましい。具体例としては。例えば、フェニルカルボニルオキシ基、ナフチルカルボニルオキシ基、アントラニルカルボニルオキシ基などが挙げられる。
【0068】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシルアミノ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアシルアミノ基としては、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるスルホニルアミノ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなスルホニルアミノ基としては、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアミノ基は、一置換アミノ基であっても、二置換のアミノ基であってもよく、二置換のアミノ基が好ましい。無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるハロゲン原子としては、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などが挙げられ、ブロモ基が好ましい。
【0069】
一般式(II)中、R1、R12、R13、R14、R15で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(II)で表される環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、一般式(II)で表される化合物は多官能体を表す。
一般式(II)中、mは0または1の整数を表す。mは1であることが好ましい。
【0070】
R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
【0071】
一般式(II)で表される化合物の好ましい態様としては、R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す化合物を挙げることができる。
【0072】
R13は水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
R14は複数の場合はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
R15は水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、アルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることがより好ましく、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが更に好ましい。
【0073】
より好ましい態様としては、一般式(II)中、R1およびR12がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R13、R14およびR15がそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アシル基であり、この態様において、R15が水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつmが0または1であることがさらに好ましい。更に好ましい態様としては、一般式(II)中、R1およびR12が水素原子またはメチル基であり、R13およびR14がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R15がアルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつmが0または1である化合物を挙げることができる。より一層好ましい態様としては、一般式(II)中、R1およびR12がいずれも水素原子であり、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、mが1である化合物を挙げることができる。最も好ましい態様としては、R1およびR12がいずれも水素原子であり、R13、R14が水素原子であり、R15がアシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつmが1である化合物を挙げることができる。
【0074】
【化8】
【0075】
[一般式(III)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子を表し、nは0または1を表す。]
【0076】
一般式(III)中、R1、R23、R24、R25で表されるアルキル基の詳細は、上述した一般式(I)中のアルキル基の説明と同様である。
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子の詳細は、上述した一般式(II)中のアリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子の説明と同様である。
【0077】
一般式(III)中、R1、R23、R24、R25で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(III)で表される環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、多官能体を表す。
一般式(III)中、nは0または1の整数を表す。nは0であることが好ましい。
【0078】
R23は水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
R24は複数の場合はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
R25は水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0079】
一般式(III)で表される化合物の好ましい態様としては、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R23、R24、R25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す化合物を挙げることができる。より好ましい態様としては、一般式(III)中、R1が水素原子またはメチル基であり、R23およびR24がそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基であり、R25が水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつnが0または1である化合物を挙げることができる。更に好ましい態様としては、一般式(III)中、R1が水素原子またはメチル基であり、R23およびR24がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R25が水素原子、アルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつnが0または1である化合物を挙げることができる。よりいっそう好ましい態様としては、一般式(III)中、R1が水素原子またはメチル基であり、R23、R24、R25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、nが0である化合物を挙げることができる。最も好ましい態様としては、R1がメチル基であり、R23、R24が水素原子であり、R25が水素原子であり、かつnが0である化合物を挙げることができる。
【0080】
以下に、一般式(I)および(II)、(III)で表される環状アリルスルフィド化合物の具体例を示す。但し、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0081】
【化9】
【0082】
【化10】
【0083】
【化11】
【0084】
【化12】
【0085】
【化13】
【0086】
以上説明した一般式(I)〜(III)で表される化合物の合成方法は、例えば、Macromolecules, 1994, 27, 7935. Macromolecules, 1996, 29, 6983.やMacromolecules, 2000, 33, 6722.や J. Polym. Sci.: Part A Polym. Chem. 2001, 39, 202.等に詳細に記載されている。
【0087】
前記環状アリルスルフィド化合物は、一種のみ用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物における前記環状アリルスルフィド化合物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜99質量%が好ましく、30〜98質量%がより好ましく、50〜98質量%が更に好ましい。
【0088】
<(b)ラジカル重合性開始剤>
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物において、ラジカル重合性開始剤としては、光、放射線または熱に対してラジカルを生成するものであればよく、特に限定されるものではないが、重合反応の効率の点では光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、特開2009−29960号公報の段落番号〔0038〕に記載の化合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱ラジカル重合開始剤としては2,2‘−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2‘−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド〕、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メトキシプロピオネート)、過酸化ベンゾイル、ターシャリーブチルパーオキシドなどが挙げられる。好ましくは、AIBN、V−65であり、より好ましくはAIBNである。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
また、好適な光ラジカル重合開始剤としては、下記一般式(IV)で表される化合物も挙げることができる。
【0090】
【化14】
【0091】
一般式(IV)中、Ra、RbおよびRcは、それぞれ独立にアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。
【0092】
以下に、一般式(IV)で表される化合物の詳細を説明する。
Ra、RbおよびRcで表されるアルキル基としては直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
Ra、RbおよびRcで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、2,3−ジブロモプロピル基、アダマンチル基、ベンジル基、4−ブロモベンジル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。これらの中でも、求核性の化合物、例えば水やアルコールなどに対する安定性の点から、イソプロピル基、又はターシャリーブチル基が特に好ましく、イソプロピル基が最も好ましい。
【0093】
一般式(IV)中、Ra、RbおよびRcで表されるアリール基としては、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。アリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
【0094】
一般式(IV)中、Ra、RbおよびRcで表されるヘテロ環基は、環員数4〜8が好ましく、環員数4〜6がより好ましく、環員数5または6が特に好ましい。具体例としては、ピリジン環、ピペラジン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。前記ヘテロ環の中でもピリジン環が特に好ましい。
【0095】
一般式(IV)中、Ra、RbおよびRc表される基が更に置換基を有する場合、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。
【0096】
一般式(IV)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。
【0097】
Raはアリール基であることが好ましく、該アリール基は2位または2位および6位に上記置換基を有することがより好ましい。中でも、2位にアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であることが更に好ましく、2位にアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であることがより好ましく、更に、2位および6位にアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であることがより好ましく、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であることが特に好ましい。例えばRaは2−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、2,6−トリフルオロメチルフェニル基であることが好ましく、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基であることが特に好ましく、2,6−ジメトキシフェニル基であることが最も好ましい。2位、または2位および6位に上記置換基を有することが好ましい理由としては、例えばJacobi, M.; Henne, A. Polymers Paint Colour Journal 1985, 175, 636.に記載されているように求核性の化合物、例えば水やアルコールなどに対する安定性が向上することが挙げられる。
【0098】
Rbはアルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。Rbとして具体的には、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、ピリジル基が好ましく光分解効率の点から、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、フェニル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
【0099】
Rcはアルキル基又はアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。Rbとして具体的には、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、ピリジル基が好ましく、光分解効率の点から、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、フェニル基がより好ましく、イソプロピル基が更に好ましい。
【0100】
一般式(IV)で表される化合物の好ましい態様としては、Raが2位にアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であり、Rbがアリール基であり、Rcがアルキル基であり、Xが酸素原子または硫黄原子である化合物を挙げることができる。より好ましい態様としては、Raが2位および6位にアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有するアリール基であり、Rbがアリール基であり、Rcがアルキル基であり、Xが酸素原子である化合物を挙げることができる。更に好ましい態様としては、Raが2,6−ジメトキシフェニル基または2,6−ジクロロフェニル基であり、Rbがフェニル基であり、Rcがエチル基またはイソプロピル基であり、Xが酸素原子である化合物を挙げることができる。特に好ましい態様としては、Raが2,6−ジメトキシフェニル基であり、Rbがフェニル基であり、Rcがイソプロピル基であり、Xが酸素原子である化合物を挙げることができる。
【0101】
以下に、一般式(IV)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0102】
【化15】
【0103】
【化16】
【0104】
以上説明した一般式(IV)で表される化合物の合成方法は、例えば、DE2830927A1等に詳細に記載されている。
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物における光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の全体量に対し0.01〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
光重合開始剤の(a)一般式(I)で表される化合物に対する使用割合は0.001〜0.1モル等量であることが好ましく、0.005〜0.05モル等量であることが好ましい。
【0105】
<その他の成分>
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性を改良する目的で重合禁止剤や酸化防止剤を加えてもよい。
前記重合禁止剤または酸化防止剤としては、例えば、特開2009−29960号公報の段落番号〔0046〕に記載の化合物が挙げられる。
前記重合禁止剤または酸化防止剤の添加量は、環状アリルスルフィド化合物の全量に対して3質量%以下が好ましい。前記添加量が3質量%を超えると、重合が遅くなるか、著しい場合は重合しなくなることがある。
また、本発明の硬化性組成物として、硬度を高くするために、本発明の環状アリルスルフィド化合物とともに他の重合性モノマーを含むこともできる。本発明の環状アリルスルフィド化合物と他の重合性モノマーと併用する場合、全硬化性組成物中の併用する重合性モノマー量は50質量%以下であることが好ましい。
【0106】
併用する他のモノマーとしては、例えば、特開2008−195616号公報の段落番号〔0063〕に記載の化合物が挙げられる。
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物には必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。無機フィラーとしては、微粒子状のものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定形シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、硫酸バリウムなどを挙げることができる。フィラーを添加する方法としては例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シランなどの加水分解性シランモノマーまたはオリゴマーや、チタン、アルミニウムなどの金属のアルコキシド、アシロキシドまたはハロゲン化物などを、本発明の硬化性組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法なども挙げることができる。全硬化性組成物中の無機フィラーの量は10質量%〜60質量%であることが好ましい。
【0107】
また、本発明の接合型レンズ用硬化性組成物として、硬度を高くするために、本発明の環状アリルスルフィド化合物とともに変性エポキシ材料を含むこともできる。それらの具体的な化合物としては特開2008−255295号公報や2008−266485号公報に詳しく記載されている。全硬化性組成物中の変性エポキシ材料の量は10質量%〜70質量%であることが好ましい。
また、本発明の接合型レンズ用硬化性組成物として、硬度を高くするために、本発明の環状アリルスルフィド化合物とともにビニル基に結合したケイ素原子を1分子中に1個以上有する有機ケイ素化合物を含むこともできる。それらの具体的な化合物としては特開2008−227119号公報に詳しく記載されている。また上述したGelest社のカタログに記載されているようなビニル末端ポリジメチルシロキサン(商品名DMS−V00、DMS−V03、DMS−V05、DMS−V21、DMS−V22、DMS−V25、DMS−V31、DMS−V33、DMS−V35)が挙げられる。全硬化性組成物中のビニル基に結合したケイ素原子を1分子中に1個以上有する有機ケイ素化合物の量は1質量%〜30質量%であることが好ましい。
【0108】
〔硬化樹脂の製造方法〕
本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化させて、硬化樹脂を得る方法としては、特に限定されないが、光照射(例えば、紫外線照射など)及び熱照射の少なくとも一方を実施する方法を挙げることができる。すなわち、光照射及び熱照射(加熱)のいずれか一方のみを行うことにより反応させることもできるし、例えば、光照射を行った後に更に加熱することにより反応させることもできる。
加熱により硬化反応させる場合は、一度に高い温度まで上昇させてもよいが、低い温度で一定時間保持し、熱ラジカル重合を完結させることが好ましい。光ラジカル重合を起こす波長については、光ラジカル重合開始剤が反応する波長であればいずれでもよい。レーザーのような特定の波長を照射してもよく、ハロゲンキセノンランプのようにブロードな光を照射してもよい。特にレンズなどの用途に用いられる場合は透過率が問題となるため、短波光で重合を起こすことができる開始剤を用いた方が好ましい。
ラジカル重合反応の反応温度としては、特に制限はないが、光ラジカル重合であれば室温に近い温度でよく、熱ラジカル重合である場合は、50〜120℃の範囲で行うことが好ましい。
【0109】
硬化反応は一定の温度で行っても良いが、必要に応じて多段階、あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うよりも、多段階、あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪みのない、均一な硬化樹脂が得られやすいという点で好ましい。
【0110】
〔撮像レンズ〕
図1の概略構成図に示すように、撮像装置110は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ100とCCD等の撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ100は、接合型レンズ10を備えており、この接合型レンズ10は、物体側の第1レンズL11と像側の第2レンズL21とが接合されてなる。
第1レンズL11は、第1レンズL11の物体側面が物体側に凸面を向けた、平凸レンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。この接合型レンズ用硬化性樹脂組成物は、前記したように、一般式(I)で表される化合物の重合体が、ガラス材料に対して高い密着性を有するため、接着剤を用いずとも、第1レンズL11と第2レンズL21との接合は充分に維持される。
第2レンズL21は、平行平面ガラス板により形成されている。ガラス材料は公知のものを制限なく使用できるが、リフロー処理に曝されることを鑑みると、軟化温度が高いもの(例えば、500℃〜850℃)が好ましく、例えば、株式会社オハラ製の光学ガラスBK7を好適に使用できる。
なお、平行平面ガラス板は、レンズとは呼ばれないこともあるが、レンズ面の曲率半径が無限大である場合に相当するものと考え、本明細書においては、レンズという概念に包含されるものとする。
【0111】
接合型レンズ10は、例えば、第2レンズL21に接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を塗布し、次いで、第1レンズL11の形状に対応するモールド内に、第2レンズL21に塗布された硬化性樹脂組成物を収容した状態で、前述した硬化処理(前記〔硬化樹脂の製造方法〕を参照)を施すことによって、得ることができる。あるいは、モールドを使用しない方法としては、第2レンズL21に塗布された接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化した後、硬化樹脂を第1レンズL11の形状となるように研磨する方法が挙げられる。
【0112】
第1レンズL11及び第2レンズL21の形状は、撮像レンズ100の用途に応じて、適宜、変更可能である。以下、撮像レンズ100の変形例を示すが、既に前出の図を参照して説明した部材等については、図中に同一符号あるいは相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略する。なお、以下の変形例において、接合型レンズの作製方法は、図1の実施形態で述べた方法を同様に適用できる。
【0113】
図2の概略構成図に示すように、撮像装置111は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ101と撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ101は、接合型レンズ11を備えており、この接合型レンズ11は、物体側の第1レンズL12と像側の第2レンズL21とが接合されてなる。
第1レンズL12は、第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けた、平凹レンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。
【0114】
図3の概略構成図に示すように、撮像装置112は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ102と撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ102は、接合型レンズ12を備えており、この接合型レンズ12は、物体側の第1レンズL13と像側の第2レンズL22とが接合されてなる。
第1レンズL13は、第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。
第2レンズL22は、両凸ガラス板により形成されている。ガラス材料は公知のものを制限なく使用できるが、前記したように、リフロー処理に曝されることを鑑みると、軟化温度が高いものが好ましい。
【0115】
図4の概略構成図に示すように、撮像装置113は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ103と撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ103は、接合型レンズ13を備えており、この接合型レンズ13は、物体側の第1レンズL14と像側の第2レンズL22とが接合されてなる。
第1レンズL14は、第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。
【0116】
図5の概略構成図に示すように、撮像装置114は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ104と撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ104は、接合型レンズ14を備えており、この接合型レンズ14は、物体側の第1レンズL15と像側の第2レンズL23とが接合されてなる。
第1レンズL15は、第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。
第2レンズL23は、両凹ガラス板により形成されている。ガラス材料は公知のものを制限なく使用できるが、前記したように、リフロー処理に曝されることを鑑みると、軟化温度が高いものが好ましい。
【0117】
図6の概略構成図に示すように、撮像装置115は、光軸Zを中心として、物体側から像側に向かって、絞りSと本発明の実施形態に係る撮像レンズ105と撮像素子Iとを有している。
撮像レンズ105は、接合型レンズ15を備えており、この接合型レンズ15は、物体側の第1レンズL16と像側の第2レンズL23とが接合されてなる。
第1レンズL16は、第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。
【0118】
また、図1〜図6の各々において点線で示したように、接合型レンズ10〜15が、第2レンズL21〜L23の像側に、さらに第3レンズL31〜L33を有しても良い。第3レンズL31〜L33は第3レンズの像側面に凸面を向けたレンズとなっており、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の硬化樹脂により形成されている。中でも、接合型レンズ10,11においては、第3レンズL31は第3レンズの像側面に凸面を向けた平凸レンズとなっている。
【0119】
また、以上に説明した実施形態において、第1レンズの物体側面、および第3レンズの像側面が非球面であっても良い。
【0120】
また、第2のレンズの少なくとも一方の面がコーティング処理されていても良い。コーティング処理は公知のものをいずれも採用できるが、例えば、第1レンズ(及び/又は第3レンズ)との界面における光反射を低減するためのコーティング処理を施しても良い。
【0121】
なお、上記した実施形態では、撮像レンズ100、101、102、103、104、105が、それぞれ、接合型レンズ10、11、12、13、14、15自体であるが、このように、本発明の撮像レンズは、撮像レンズが接合型レンズ自体である形態を包含するものである。
一方、本発明の撮像レンズは、接合型レンズ以外の公知の部材(例えば、他のレンズや筐体等)をさらに有するモジュールであっても良い。
【0122】
〔インプリント法によるウエハーレベルレンズの製造〕
本発明は、前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を使用した、インプリント法によるウエハーレベルレンズの製造方法にも関する。
この方法においては、先ず、複数の凹部が設けられた第1基材と、複数の転写部を有する複写治具とを用意する。
【0123】
例えば、図7の部分斜視図に示すように、ガラス基材20(第1基材)の一方面20Aには、多数個の円柱形状を有する凹部21(第1凹部)が所定間隔で配列されている。凹部21は、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を収容するためのものである。
ガラス基材20の厚みは特に限定はなく、接合型レンズの用途に応じて、適宜、決められるものであるが、例えば、接合型レンズを携帯電話に搭載することを意図する場合、通常、0.3mm〜0.5mmの範囲内である。
凹部21の深さは、接合型レンズの第1レンズの大きさに応じて、決められるものであるが、例えば、図7においては、ガラス基材20の厚みの半分程度とされている。
【0124】
また、図8の部分斜視図に示すように、板状部材30(第1複写治具)の一方の面30Aには、多数個の円柱形状を有する突起部31(転写部)が上記した所定間隔と同様の間隔で配列されている。ここで、複写治具30の突起部31は、突起部31がガラス基材20の凹部21に進入可能に形成されている。突起部31の高さは、例えば、凹部21の深さの半分程度とされている。
板状部材30の材質は、後述するインプリント法が達成できる範囲で特に限定されないが、例えば、金属、セラミック、あるいは、硬化樹脂に対する密着性がさほど高くない紫外線透過材料などが、適宜、選択される。
【0125】
突起部31の上面の形状は、接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成されるレンズの形状に対応している。例えば、図1に示される接合型レンズ10を得るべく、突起部31の上面31Aの中心領域には、第1レンズL11の物体側面に対応するように、凹部31Aが設けられている。
【0126】
次いで、前述した接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を、ガラス基材20の凹部21と板状部材30の突起部31との間に配置する。より具体的には、例えば、図9の概略断面図に示すように、所定量の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物40をガラス基材20の凹部21内に配置する。あるいは、所定量の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物40が板状部材30の凹部31Aによって保持され得る場合には、図10に示すように、接合型レンズ用硬化性樹脂組成物40を板状部材30の凹部31Aに配置しても良い。
【0127】
その後、図11に示すように、板状部材30をガラス基材20に対して当接させて、板状部材30の突起部31の形状を接合型レンズ用硬化性樹脂組成物40に転写し、この接合型レンズ用硬化性樹脂組成物40に前述した硬化処理(前記〔硬化樹脂の製造方法〕を参照)を施して、第1レンズL11を作製する。
【0128】
硬化処理として光照射を採用する場合であって、板状部材30として硬化樹脂に対する密着性がさほど高くない紫外線透過材料を使用する場合、紫外線を、板状部材30の他方の面30B(面30Aとは反対側の面)及びガラス基材20の他方の面20B(面20Aとは反対側の面)の少なくとも一方に向けて照射するのが好ましい。一方、板状部材30として紫外線を透過しない材料を使用する場合、紫外線を、ガラス基材20の面20Bに向けて照射するのが好ましい。
【0129】
硬化処理として熱照射を採用する場合、板状部材30の材料、及び、熱照射の方向は特に限定されないが、板状部材30として伝熱性の高い材料(金属、セラミック等)を使用するとともに、少なくとも、板状部材30の面30Bに向けて熱照射を行うことによって、より効率的に硬化反応を行うことができる場合がある。
【0130】
硬化処理として光照射と熱照射の両方を採用する方法としては、(1)光照射を行った後に熱照射を行う方法、(2)熱照射を行った後に光照射を行う方法、(3)光照射と熱照射とを同時に行う方法を挙げることができる。
方法(1),(2)における光照射及び熱照射の各々については、前記したように実施することができる。
方法(3)としては、光照射及び熱照射の両方を、板状部材30の面30B、及び、ガラス基材20の面20Bのいずれか一方に向けて行う方法、あるいは、光照射を面30B及び面20Bの一方に向けて行うとともに、熱照射を面30B及び面20Bの他方に向けて行う方法が挙げられる。後者の方法において、板状部材30として伝熱性の高い材料あるいは紫外線を透過しない材料を使用する場合、光照射を面20Bに向けて行うとともに、熱照射を面30Bに向けて行うことが好ましい。
【0131】
次いで、図12に示すように、ガラス基材20から板状部材30を相対的に離脱させて、ガラス基材20と多数の第1レンズL11とを有する接合体50を作製する。その後、第1レンズL11の各々を含む領域(例えば、領域R)が分断されるように接合体50を厚み方向(点線35に沿った方向)に切断することによって、図13に示すように、第1レンズL11に接合された第2レンズL21をガラス基材20から得ることにより、接合型レンズ10を備える撮像レンズ100を、同時に多数個、作製する。
【0132】
また、このガラス基材20に代えて、図14に示すガラス基材20’を使用することもできる。ガラス基材20’は、ガラス基材20と同様、一方面20A’に多数個の円柱形状を有する凹部21’(第2凹部)が所定間隔で配列されているが、これに加えて、他方面20B’においても、前記凹部21’のそれぞれに対応する位置に、複数の凹部21’が設けられている。
【0133】
このガラス基材20’を使用する場合、板状部材30(第1複写治具)と同一あるいは同種の板状部材(第2複写治具)(図示せず)を使用して、ガラス基材20の他方面20B’における凹部21’に対しても、図9〜図11を参照して説明した操作を同様に行うことによって、ガラス基材20’の一方面20A’に多数の第1レンズL11が設けられるとともに、他方面20B’にも多数の第3レンズL31が設けられてなる接合体60を作製することができる。
【0134】
次いで、第1レンズL11の各々を含む領域(例えば、領域R。なお、領域Rは、対応する第3レンズL31も含んでいる。)が分断されるように接合体50を厚み方向(点線35に沿った方向)に切断することによって、図15に示すように、第1レンズL11及び第3レンズL31に接合された第2レンズL21をガラス基材20から得ることにより、接合型レンズ10を備える撮像レンズ100を、同時に多数個、作製できる。
【0135】
また、接合体50,60は、接合体の切断工程の前に、接合体50,60の第1レンズ側の面(接合体60においては、第1レンズ側L11の面及び第3レンズL31側の面の少なくとも一方)に接合された板状部材をさらに有しても良い。
例えば、図16に示すように、接合体50は、第1レンズ側L11の面に接合された、板状部材としてのガラス基材70をさらに有している。
その後、この接合体を点線35’に沿った方向に切断することによって、図17に示すように、接合型レンズ10を備える、モジュール状の撮像レンズ100’を、同時に多数個、作製できる。
なお、板状部材は、接合体に接合できるものであれば、特に限定されない。例えば、別の接合体50や接合体60を板状部材としても良い。
【0136】
前述した実施形態において例示した各種部材の材質、形状、形態、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば、任意であり、限定されない。
【実施例】
【0137】
以下、本発明を実施例に基づきさらに説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0138】
<一般式(I)で表される化合物(モノマー)の合成>
例示化合物M−17、M−18、M−34、M−36、M−44、M−45及びM−46を、J. Polym. Sci.: Part A Polym. Chem. 2001, 39, 202に記載の方法に準じ、下記スキーム(Rは、M−17及びM−44合成時はメチル基、M−18合成時はフェニル基、M−34及びM−36合成時は水素原子、M−45合成時は2−ブロモフェニル、M−46合成時は2,4−ジクロロフェニル)によって合成した。出発原料を変更した以外は同様の方法により、合成した。出発原料の置換基を変更することにより、様々な置換基を有する環状アリルスルフィド化合物を合成することができる。
【0139】
【化17】
【0140】
以下に得られた物性データを記述する。
M-17;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.00 (s, 3H), 3.05 (m, 4H), 3.21 (s, 4H), 4.95 (m, 1H), 5.20 (s, 2H)
M-18;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.23 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.20 (m, 1H), 7.30 (m, 3H), 8.0 (m, 3H)
M-45;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.24 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.22 (m, 1H), 7.36 (m, 2H), 7.79 (dd, 1H), 7.80 (dd, 1H)
M-46;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.24 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.20 (m, 1H), 7.30 (dd, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.79 (d, 1H)
M-44;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.00 (s, 3H), 2.80〜3.80(m, 7H), 4.10〜4.30 (m, 2H), 4.85 (d, 2H)
M-34;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.95 (m, 2H), 2.36 (s, 2H), 4.50 (m, 2H), 5.60 (s, 1H), 5.85 (s, 1H)
M-36;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ1.54 (d, 3H), 2.92〜3.10 (m, 2H), 3.59(dd, 1H),4.51 (t, 2H), 5.51 (s, 1H), 5.63 (s, 1H)
【0141】
<試料101:本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物の調製>
・環状アリルスルフィド化合物:M−17(合成品) 50g
・ラジカル重合開始剤:AIBN(和光純薬社製) 1g
【0142】
上記の組成にて、グローブボックス内で窒素雰囲気下において混合し、本発明の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物として試料101を作成した。更に表1に記したように環状アリルスルフィド化合物を等質量置換えることで、試料102〜103を調製した。
【0143】
【表1】
【0144】
<試料104:比較例の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物(シリコーン系)>
比較例の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物(シリコーン系)である試料104としては、SMX−7852(富士高分子工業株式会社製)を使用した。
【0145】
<試料105:比較例の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物(シリコーン系)>
比較例の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物(シリコーン系)である試料105としては、VSM−4500(株式会社東芝製)を使用した。
【0146】
<接合型レンズの作製>
(実施例1)
光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の一方の面に試料101を塗布した。それに対して減圧した状態で、中に気泡が入らないように石英製モールドが有する球面に沿った形状の凹部を圧着した。より具体的には、図18の前記凹部の中心を通る概略断面図に示すように、一方の面80Aに球面状の凹部81(面80Aにおける直径R=1.029mm、中心深さD=0.0929mm)が設けられたモールド80を使用した。モールドの他方面80BからKEYENECE製ハイパワーUV−LED(UV−400)により、紫外線を40000mJ/cm2照射した。光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の他方面に対しても、同様の操作を行うことによって、図19の概略断面図に示すような、第2レンズL201としての光学ガラスBK7に第1レンズL101と第3レンズL301とが装着されてなる実施例1の接合型レンズ10’を作製した。
【0147】
(実施例2)
光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の一方面に試料101を塗布した。それに対して減圧した状態で、中に気泡が入らないように、モールド80の凹部81を圧着した。モールドの他方面80BからKEYENECE製ハイパワーUV−LED(UV−400)により、紫外線を十分に照射した。更に150℃で3時間、加熱し、硬化反応を終了させた。光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の他方面に対しても、同様の操作を行うことによって、図19に示すような、第2レンズL201としての光学ガラスBK7に第1レンズL101と第3レンズL301とが装着されてなる実施例2の接合型レンズ10’を作製した。
【0148】
(実施例3)
試料101を、試料102に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行うことにより、実施例3の接合型レンズ10’を作製した。
【0149】
(実施例4)
試料101を、試料103に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行うことにより、実施例4の接合型レンズ10’を作製した。
【0150】
(比較例1)
光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の一方面に試料104を塗布した。それに対して減圧した状態で、中に気泡が入らないように、モールド80の凹部81を圧着した。150℃で3時間、加熱し、硬化反応を行った。光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の他方面に対しても、同様の操作を行うことによって、図19に示すような、第2レンズL201としての光学ガラスBK7に第1レンズL101と第3レンズL301とが装着されてなる比較例1の接合型レンズ10’を作製した。
【0151】
(比較例2)
試料104を、試料105に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行うことにより、比較例2の接合型レンズ10’を作製した。
【0152】
実施例1〜4の接合型レンズの各レンズにおける材料、屈折率、アッベ数を纏めたものを表2に示す。
【0153】
<評価>
(焦点距離)
上記のようにして得られた各接合型レンズに対して、物体側からKEYENECE製ハイパワーUV−LED(UV−400)を照射して焦点距離を決定した。比較例1の接合型レンズの焦点距離を基準値とし、これに対する比率を、実施例1〜4及び比較例2の接合型レンズのそれぞれに関して算出した。当該比率が、1倍未満であるもの(すなわち、焦点距離が比較例1の接合型レンズに比して小さいもの)の評価を○とし、1倍超過であるもの(すなわち、焦点距離が比較例1の接合型レンズに比して大きいもの)の評価を×とした。得られた結果を表2に示す。
【0154】
(密着性試験:ヒートサイクル試験)
光学ガラスBK7(株式会社オハラ製)の一方の面に、実施例1に対応する第1レンズL101を、実施例1の上記した方法に基づき、25個接合した。すなわち、一枚のガラス基板の片面に、それぞれ、実施例1の第1レンズL101(凸レンズ)が、25個、接合されてなる実施例1の接合体を作製した。
同様の手法で、それぞれ、実施例2〜4,比較例1及び2の第1レンズL101(凸レンズ)が、25個、接合されてなる実施例2〜4,比較例1及び2の接合体を作製した。
各接合体を、270℃のオーブンに10分保持し、室温で30分冷却するというヒートサイクルを10回繰り返し、剥離した凸レンズの個数を調べた。得られた結果を表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
表2から明らかなように、比較例1及び2と比較して、実施例1〜4の接合レンズにおける第1,第3レンズは屈折率が高いため、焦点距離が短い。よって、本発明によれば、レンズを作製するための樹脂の量を減らすことも可能であり、レンズの軽量化が可能であることが分かった(レンズを作製するための樹脂の量を減らせば、例えば携帯電話に実装された撮像レンズが、携帯電話の製造工程中におけるリフロー処理によってダメージを受けにくくなるという作用も発現させることができる)。
また、表2から明らかなように、比較例1及び2と比較して、実施例1〜4の接合レンズにおける第1レンズは、270℃のヒートサイクル試験においても、レンズの剥離数が少なく、接着剤を使用しなくとも、ガラス材に対する密着性が高い。よって、本発明によれば、レンズ間の密着性、及び、リフロー処理における耐熱性に優れる接合型レンズを得ることができることが分かった。
【符号の説明】
【0157】
10,10’,11,12,13,14,15 接合型レンズ
20,20’ ガラス基材(第1基材)
20A,20A’ 面(第1基材の一方面)
20B,20B’ 面(第1基材の他方面)
21 凹部(第1凹部)
21’ 凹部(第2凹部)
30 板状部材(第1複写治具)
31 突起部(転写部)
40 接合型レンズ用硬化性樹脂組成物
50,60 接合体
70 ガラス基材(板状部材)
100,100’,101,102,103,104,105 撮像レンズ
L11,L12,L13,L14,L15,L16,L101 第1レンズ
L21,L22,L23,L201 第2レンズ
L31,L32,L33,L301 第3レンズ
R 領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(I)で表される化合物と
(b)ラジカル重合開始剤と
を含む接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【化1】
[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【化2】
[一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子を表し、mは0または1を表す。]
【請求項3】
一般式(II)中、R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表すことを特徴とする請求項2に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
一般式(II)中、R1およびR12はいずれも水素原子を表し、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基を表し、mは1を表すことを特徴とする請求項2に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【化3】
[一般式(III)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、nは0または1を表す。]
【請求項6】
一般式(III)中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す請求項5に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
一般式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基を表し、nは0を表す請求項5に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
第1レンズと、前記第1レンズに接合された第2レンズとを有する接合型レンズを備える、撮像レンズであって、
物体側から像側に向かって前記第1レンズと前記第2レンズとが配列されるとともに、前記第1レンズが、請求項1〜7のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成され、前記第2レンズがガラス材料で形成されたことを特徴とする撮像レンズ。
【請求項9】
前記第2レンズが、平行平面ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けた、平凸レンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
前記第2レンズが、平行平面ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けた、平凹レンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項11】
前記第2レンズが、両凸ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項12】
前記第2レンズが、両凸ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項13】
前記第2レンズが、両凹ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項14】
前記第2レンズが、両凹ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項15】
前記接合型レンズが、前記第2レンズの前記像側に、前記第2レンズに接合された第3レンズをさらに有し、かつ、前記第3レンズが、請求項1〜7のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする請求項8,11〜14のいずれかに記載の撮像レンズ。
【請求項16】
前記第3レンズが、前記第3レンズの像側面に凸面を向けたレンズであることを特徴とする請求項15に記載の撮像レンズ。
【請求項17】
前記接合型レンズが、前記第2レンズの前記像側に、さらに第3レンズを有し、かつ、前記第3レンズが、請求項1〜7のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成されるとともに、前記第3レンズの像側面に凸面を向けた平凸レンズであることを特徴とする請求項9または10に記載の撮像レンズ。
【請求項18】
前記第1レンズの物体側面、および第3レンズの像側面が非球面であることを特徴とする請求項15に記載の撮像レンズ。
【請求項19】
前記第2のレンズの少なくとも一方の面がコーティング処理されていることを特徴とする請求項15に記載の撮像レンズ。
【請求項20】
第1レンズと、前記第1レンズに接合された第2レンズとを有する接合型レンズを備える撮像レンズの製造方法であって、
一方面に複数の第1凹部が設けられた第1基材と、該複数の第1凹部にそれぞれ進入可能な複数の転写部を有する第1複写治具とを用意し、請求項1〜7のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を、前記第1基材の第1凹部及び前記第1複写治具の転写部の間に配置する工程と、
前記第1複写治具を前記第1基材の前記一方面に対して当接させて、前記第1複写治具の転写部の形状を前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物に転写する工程と、
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化して前記第1レンズを作製する工程と、
前記第1複写治具を前記第1基材に対して相対的に離脱させて、前記第1基材と複数の前記第1レンズとを有する接合体を作製する工程と、
前記複数の第1レンズの各々を含む領域が分断されるように前記接合体を厚み方向に切断することによって、前記第1レンズに接合された前記第2レンズを前記第1基材から得ることにより、前記接合型レンズを形成する工程と、
を有する撮像レンズの製造方法。
【請求項21】
前記第2レンズに接合された第3レンズをさらに有する接合型レンズを備える、請求項20に記載の撮像レンズの製造方法であって、
前記第1基材の他方面の、前記複数の第1凹部のそれぞれに対応する位置に、複数の第2凹部がさらに設けられるとともに、
前記製造方法は、前記接合体を厚み方向に切断する前記工程の前に、さらに、
該複数の第2凹部にそれぞれ進入可能な複数の転写部を有する第2複写治具を用意し、請求項1〜7のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を、前記第1基材の第2凹部及び前記第2複写治具の転写部の間に配置する工程と、
前記第2複写治具を前記第1基材の前記他方面に対して当接させて、前記第2複写治具の転写部の形状を前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物に転写する工程と、
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化して前記第3レンズを作製する工程と、
前記第2複写治具を前記第1基材に対して相対的に離脱させて、前記接合体にさらに複数の前記第3レンズを形成する工程と、
を含み、
前記複数の第1レンズの各々を含む領域が、対応する前記第3レンズをさらに含むことを特徴とする撮像レンズの製造方法。
【請求項22】
前記接合体が、該接合体の第1レンズ側の面に接合された板状部材をさらに有することを特徴とする請求項20または21に記載の撮像レンズの製造方法。
【請求項23】
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、光照射工程を含むことを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【請求項24】
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、熱照射工程を含むことを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【請求項25】
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、光照射工程と熱照射工程とを含むことを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【請求項1】
(a)下記一般式(I)で表される化合物と
(b)ラジカル重合開始剤と
を含む接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【化1】
[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【化2】
[一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子を表し、mは0または1を表す。]
【請求項3】
一般式(II)中、R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表すことを特徴とする請求項2に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
一般式(II)中、R1およびR12はいずれも水素原子を表し、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基を表し、mは1を表すことを特徴とする請求項2に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【化3】
[一般式(III)中、R1は一般式(I)における定義と同義である。R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、nは0または1を表す。]
【請求項6】
一般式(III)中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す請求項5に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
一般式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基を表し、nは0を表す請求項5に記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
第1レンズと、前記第1レンズに接合された第2レンズとを有する接合型レンズを備える、撮像レンズであって、
物体側から像側に向かって前記第1レンズと前記第2レンズとが配列されるとともに、前記第1レンズが、請求項1〜7のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成され、前記第2レンズがガラス材料で形成されたことを特徴とする撮像レンズ。
【請求項9】
前記第2レンズが、平行平面ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けた、平凸レンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
前記第2レンズが、平行平面ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けた、平凹レンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項11】
前記第2レンズが、両凸ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項12】
前記第2レンズが、両凸ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項13】
前記第2レンズが、両凹ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凸面を向けたレンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項14】
前記第2レンズが、両凹ガラス板であって、
前記第1レンズが、前記第1レンズの物体側面が物体側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項15】
前記接合型レンズが、前記第2レンズの前記像側に、前記第2レンズに接合された第3レンズをさらに有し、かつ、前記第3レンズが、請求項1〜7のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする請求項8,11〜14のいずれかに記載の撮像レンズ。
【請求項16】
前記第3レンズが、前記第3レンズの像側面に凸面を向けたレンズであることを特徴とする請求項15に記載の撮像レンズ。
【請求項17】
前記接合型レンズが、前記第2レンズの前記像側に、さらに第3レンズを有し、かつ、前記第3レンズが、請求項1〜7のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物から形成されるとともに、前記第3レンズの像側面に凸面を向けた平凸レンズであることを特徴とする請求項9または10に記載の撮像レンズ。
【請求項18】
前記第1レンズの物体側面、および第3レンズの像側面が非球面であることを特徴とする請求項15に記載の撮像レンズ。
【請求項19】
前記第2のレンズの少なくとも一方の面がコーティング処理されていることを特徴とする請求項15に記載の撮像レンズ。
【請求項20】
第1レンズと、前記第1レンズに接合された第2レンズとを有する接合型レンズを備える撮像レンズの製造方法であって、
一方面に複数の第1凹部が設けられた第1基材と、該複数の第1凹部にそれぞれ進入可能な複数の転写部を有する第1複写治具とを用意し、請求項1〜7のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を、前記第1基材の第1凹部及び前記第1複写治具の転写部の間に配置する工程と、
前記第1複写治具を前記第1基材の前記一方面に対して当接させて、前記第1複写治具の転写部の形状を前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物に転写する工程と、
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化して前記第1レンズを作製する工程と、
前記第1複写治具を前記第1基材に対して相対的に離脱させて、前記第1基材と複数の前記第1レンズとを有する接合体を作製する工程と、
前記複数の第1レンズの各々を含む領域が分断されるように前記接合体を厚み方向に切断することによって、前記第1レンズに接合された前記第2レンズを前記第1基材から得ることにより、前記接合型レンズを形成する工程と、
を有する撮像レンズの製造方法。
【請求項21】
前記第2レンズに接合された第3レンズをさらに有する接合型レンズを備える、請求項20に記載の撮像レンズの製造方法であって、
前記第1基材の他方面の、前記複数の第1凹部のそれぞれに対応する位置に、複数の第2凹部がさらに設けられるとともに、
前記製造方法は、前記接合体を厚み方向に切断する前記工程の前に、さらに、
該複数の第2凹部にそれぞれ進入可能な複数の転写部を有する第2複写治具を用意し、請求項1〜7のいずれかに記載の接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を、前記第1基材の第2凹部及び前記第2複写治具の転写部の間に配置する工程と、
前記第2複写治具を前記第1基材の前記他方面に対して当接させて、前記第2複写治具の転写部の形状を前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物に転写する工程と、
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化して前記第3レンズを作製する工程と、
前記第2複写治具を前記第1基材に対して相対的に離脱させて、前記接合体にさらに複数の前記第3レンズを形成する工程と、
を含み、
前記複数の第1レンズの各々を含む領域が、対応する前記第3レンズをさらに含むことを特徴とする撮像レンズの製造方法。
【請求項22】
前記接合体が、該接合体の第1レンズ側の面に接合された板状部材をさらに有することを特徴とする請求項20または21に記載の撮像レンズの製造方法。
【請求項23】
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、光照射工程を含むことを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【請求項24】
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、熱照射工程を含むことを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【請求項25】
前記接合型レンズ用硬化性樹脂組成物を硬化する工程が、光照射工程と熱照射工程とを含むことを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の撮像レンズの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−224118(P2010−224118A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69932(P2009−69932)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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