接合方法
【課題】金属要素同士の突合部の接合面付近の接合品質を向上させること。
【手段】開始位置Sを設定した突合部J1から挿入された攪拌ピンA2は、接合面J2を横切って、折り返し位置T1を設定した第一タブ部2に突入し、折り返し位置T1で折り返して接合面J2を横切って再び突合部J1に突入するようにしたため、第一タブ部2の近くの突合部J1に残ってしまう酸化皮膜が攪拌ピンA2によって攪拌されて分断され、突合部J1の接合品質が向上する。
【手段】開始位置Sを設定した突合部J1から挿入された攪拌ピンA2は、接合面J2を横切って、折り返し位置T1を設定した第一タブ部2に突入し、折り返し位置T1で折り返して接合面J2を横切って再び突合部J1に突入するようにしたため、第一タブ部2の近くの突合部J1に残ってしまう酸化皮膜が攪拌ピンA2によって攪拌されて分断され、突合部J1の接合品質が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌を利用した金属部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材(金属要素)同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合は、回転させた回転ツールを金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである(例えば、特許文献1、2参照)。なお、回転ツールは、円柱状を呈するショルダ部の下端面に攪拌ピン(プローブ)を突設してなるものが一般的である。
【特許文献1】特開2000−343250号公報
【特許文献2】特開2003−164980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、本発明者らは、金属部材の表面やタブ部の表面に存在していた酸化皮膜が、攪拌ピンによって突合部の塑性化領域に巻き込まれ、突合部の側方に位置させたタブ部と突合部との接合面付近に溜まりやすいという性質があることを発見した。
【0004】
そのため、特許文献1のように、摩擦接合部分に仮接合を行わずに摩擦接合する接合方法では、タブ部に挿入された攪拌ピンを移動させて突合部に摩擦攪拌を行い、もう一方のタブ部で摩擦攪拌を終了するため、タブ部から突合部に攪拌ピンを移動させるときに、タブ部の表面や突合部の表面の酸化皮膜を攪拌ピンによって突合部に形成された塑性化領域に巻き込み、接合面付近に酸化皮膜を溜めやすい。
【0005】
一方、特許文献2のように、摩擦接合部分に仮接合を行った後に、その仮接合を行った部分を再び、摩擦攪拌によって本接合を行う接合方法では、タブ部と突合部との接合面に、仮接合及び本接合の2回攪拌ピンを横切らせるため、接合面付近に溜まりやすい酸化皮膜を分断することは可能である。しかしながら、この場合、仮接合と本接合とは工程自体が異なって攪拌ピンの挿抜が工程ごとに必要であるため、工数が多く、接合時間の短時間化や低コスト化に向かない。
【0006】
そこで、本発明は、金属要素同士の突合部の接合面付近の接合品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明に係る接合方法は、金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、前記突合部の側方にタブ部を位置させておき、摩擦攪拌の開始位置に挿入された前記攪拌ピンが終了位置から抜き出されるまでの間に、前記攪拌ピンが前記タブ部と前記突合部との接合面を少なくとも2回横切るように前記攪拌ピンを前記突合部又は前記タブ部において折り返すようにしたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、攪拌ピンが、摩擦攪拌の開始位置に挿入されて終了位置から抜き出されるまでの間に、接合面を少なくとも2回横切ることによって、接合面付近の突合部に残存しやすい酸化皮膜を分断する。そのため、金属要素同士の突合部とタブ部との接合面付近の突合部の接合品質が向上する。
【0009】
なお、攪拌ピンが接合面を一度横切ると、接合面は摩擦攪拌されて存在しなくなる。そのため、攪拌ピンが接合面を2回目以降に再び横切るという意味は、接合面が存在していた箇所を通過するという程度の意味である。また、突合部についても考え方は接合面の場合と同じである。
【0010】
また、金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、前記突合部の側方にタブ部を位置させるとともに、前記突合部に摩擦攪拌の開始位置を設定しておき、前記開始位置に挿入した前記攪拌ピンを前記タブ部に向かって移動させ、前記タブ部と前記突合部との接合面を横切らせた後に前記タブ部で折り返させて、再び前記接合面を横切らせ、その後、前記突合部を移動させることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、攪拌ピンが、突合部に設定された摩擦攪拌の開始位置に挿入されて終了位置から抜き出されるまでの間に、接合面を横切ってタブ部に移動した後に折り返して、再び、接合面を横切ることによって、突合部付近に残存しやすい酸化皮膜を分断するため、接合面付近の突合部の接合品質を少ない工数で向上させることができる。
【0012】
また、金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、前記突合部の側方にタブ部を位置させるとともに、前記突合部の摩擦攪拌を行っている攪拌ピンを前記タブ部に向かって移動させ、前記タブ部と前記突合部との接合面を横切らせた後に前記タブ部で折り返させて、再び前記接合面を横切らせて、前記突合部の摩擦攪拌を行った後に、さらに再び、前記接合面を横切らせて前記タブ部に設定した前記終了位置で抜き出すことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、攪拌ピンが、突合部の摩擦攪拌の開始位置に挿入されて終了位置から抜き出されるまでの間に、接合面を横切ってタブ部を折り返した後に、再び接合面を横切って突合部に移動して折り返し、さらに再び接合面を横切ってタブ部に設定された終了位置から抜き出されることによって、突合部付近に残存しやすい酸化皮膜を分断するため、突合部の接合面付近の接合品質を少ない工数で向上させることができる。
【0014】
なお、以上の構成において、前記金属要素を中空部材としてもよい。また、この場合、前記中空部材の突合面に凹部を成形し、前記中空部材同士の突合部に前記凹部による隙間を形成することが好ましい。このようにすれば、凹部によって突合部に隙間が形成されるため、中空部材の側面の一方の端部側に位置する面同士と他方の端部側に位置する面同士とを密着させて突合部を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る接合方法によれば、金属要素同士の突合部の接合面付近の接合品質を向上させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態として、金属部材(金属要素)同士の突合部に攪拌ピン(プローブ)を挿入して、その攪拌ピンを回転させながら、攪拌ピン及び金属部材同士を相対的に移動させて、突合部に摩擦攪拌を行い、金属部材同士を接合する接合方法について説明する。
【0017】
この実施形態では、図1に示すように、金属部材1,1を直線状に繋ぎ合せる場合を例示する。
まず、接合すべき金属部材1,1を詳細に説明するとともに、この金属部材1,1を接合する際に用いられる第一タブ材2と第二タブ材3を詳細に説明する。
【0018】
金属部材1は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。本実施形態では、一方の金属部材1および他方の金属部材1を、同一組成の金属材料で形成している。金属部材1,1の形状・寸法に特に制限はないが、少なくとも突合部J1における厚さ寸法を同一にすることが望ましい。
【0019】
第一タブ材2および第二タブ材3は、金属部材1,1の突合部J1を挟むように配置されるものであって、それぞれ、金属部材1,1に添設され、金属部材1の側面14側に現れる金属部材1,1の継ぎ目(境界線)を覆い隠す。第一タブ材2および第二タブ材3の材質に特に制限はないが、本実施形態では、金属部材1と同一組成の金属材料で形成している。また、第一タブ材2および第二タブ材3の形状・寸法にも特に制限はないが、本実施形態では、その厚さ寸法を突合部J1における金属部材1の厚さ寸法と同一にしている。
【0020】
次に、図2を参照して、摩擦攪拌を行うための攪拌ピンA2を備える回転ツールAについて詳細に説明する。
図2の(a)に示す回転ツールAは、工具鋼など金属部材1よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部A1と、このショルダ部A1の下端面A11(図2の(b))に突設された攪拌ピンA2とを備えて構成されている。回転ツールAの寸法・形状は、金属部材1の材質や厚さ等に応じて設定すればよい。
【0021】
ショルダ部A1の下端面A11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部A1の外径の大きさに特に制限はない。
【0022】
攪拌ピンA2は、ショルダ部A1の下端面A11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンA2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。
【0023】
続いて、回転ツールAの攪拌ピンA2による摩擦攪拌の原理について説明する。まず、図2の(a)に示すように、金属部材1同士の間の突合部J1の適所に設けた開始位置Sの直上に回転ツールAを位置させ、続いて、回転ツールAを右回転させつつ下降させて攪拌ピンA2を開始位置Sに押し付ける。そして、攪拌ピンA2が突合部J1の表面12に接触すると、摩擦熱によって攪拌ピンA2の周囲にある金属が塑性流動化し、図2の(b)に示すように、攪拌ピンA2が突合部J1部分に挿入される。
【0024】
回転ツールAの回転速度は、攪拌ピンA2の寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材1等の材質や肉厚等に応じて設定されるものであるが、多くの場合、70〜2000(rpm)の範囲内において設定される。
【0025】
以下、本実施形態に係る接合方法を詳細に説明する。本実施形態に係る接合方法は、(1)準備工程、(2)摩擦攪拌接合工程を含むものである。
【0026】
(1)準備工程 :
図1を参照して準備工程を説明する。準備工程は、接合すべき金属部材1,1や当て部材(第一タブ材2および第二タブ材3)を準備する工程であり、本実施形態では、接合すべき金属部材1,1を突き合せる突合工程と、金属部材1,1の突合部J1の両側に第一タブ材2と第二タブ材3を配置するタブ材配置工程と、第一タブ材2と第二タブ材3を溶接により金属部材1,1に仮接合する溶接工程とを具備している。
【0027】
突合工程では、図1の(c)に示すように、一方の金属部材1の側面11に他方の金属部材1の側面11を密着させるとともに、一方の金属部材1の表面12と他方の金属部材1の表面12を面一にし、さらに、一方の金属部材1の裏面13と他方の金属部材1の裏面13を面一にする。
【0028】
タブ材配置工程では、図1の(b)に示すように、金属部材1,1の突合部J1の一端側に第一タブ材2を配置してその当接面21を金属部材1,1の側面14,14に当接させるとともに、突合部J1の他端側に第二タブ材3を配置してその当接面31を金属部材1,1の側面14,14に当接させる。このとき、図1の(d)に示すように、第一タブ材2の表面22と第二タブ材3の表面32を金属部材1の表面12と面一にするとともに、第一タブ材2の裏面23と第二タブ材3の裏面33を金属部材1の裏面13と面一にする。
【0029】
溶接工程では、図1の(a)および(b)に示すように、金属部材1と第一タブ材2とにより形成された入隅部2a,2a(すなわち、金属部材1の側面14と第一タブ材2の側面24とにより形成された角部2a,2a)を溶接して金属部材1と第一タブ材2とを接合し、金属部材1と第二タブ材3とにより形成された入隅部3a,3a(すなわち、金属部材1の側面14と第二タブ材3の側面34とにより形成された角部3a,3a)を溶接して金属部材1と第二タブ材3とを接合する。なお、入隅部2a,3aの全長に亘って連続して溶接を施してもよいし、断続して溶接を施してもよい。
【0030】
準備工程が終了したら、金属部材1,1、第一タブ材2および第二タブ材3を図示せぬ摩擦攪拌装置の架台に載置し、クランプ等の図示せぬ治具を用いて移動不能に拘束する。なお、溶接工程を省略する場合には、図示せぬ摩擦攪拌装置の架台上で、突合工程とタブ材配置工程を実行する。
【0031】
(2)摩擦攪拌接合工程 :
続いて、図3〜図6、図7の(a)〜(c)及び図8の(a)(b)を参照して摩擦攪拌接合工程について詳細に説明する。摩擦攪拌接合工程は、金属部材1,1の突合部J1を接合する工程である。この摩擦攪拌接合工程では、図2に示す回転ツールAを使用し、突合部J1に対して金属部材1の表面12側から摩擦攪拌を行う。
【0032】
この摩擦攪拌接合工程では、開始位置Sに回転ツールAの攪拌ピンA2を挿入(圧入)し、挿入した攪拌ピンA2を途中で離脱させることなく終了位置Eまで移動させる。すなわち、この摩擦攪拌接合工程では、開始位置Sから摩擦攪拌を開始し、終了位置Eまで連続して摩擦攪拌を行う。
【0033】
なお、本実施形態では、第一タブ部2側に位置する突合部J1に摩擦攪拌の開始位置Sを設け、第二タブ材3に終了位置Eを設けているが、開始位置Sと終了位置Eの位置を限定する趣旨ではない。本実施形態では、開始位置Sは突合部J1の適所に、終了位置Eは第一タブ部2又は第二タブ部3の適所に設定されるのであれば、いずれの箇所に設定されてもよい。また、開始位置Sに下穴(図示省略)を形成してもよい。
【0034】
また、本実施形態では、折り返し位置T1(図3、図7の(a)等参照)が第一タブ部2の適所に、折り返し位置T2(図3、4、図7の(b)等参照)が第二タブ部3の適所に、折り返し位置T3(図5、図7の(c)等参照)が突合部J1の適所に設定されるところに特徴がある。
【0035】
まず、図3及び図7の(a)に示すように、開始位置Sの直上に回転ツールAを位置させ、続いて、回転ツールAを右回転させつつ下降させて攪拌ピンA2を開始位置Sに位置決めさせる。そして、回転ツールAの攪拌ピンA2の先端側が、回転しながら金属部材1の表面12に当接し、その表面12から金属が塑性流動化する。そして、このような状態になると、さらに下降する力が加えられている塑性流動化した金属を攪拌ピンA2の周面で押し退けながら、攪拌ピンA2が圧入される。
【0036】
なお、攪拌ピンA2の先端が、金属部材1の表面12に当接した後に、次第に表面12から深くなるように挿入されつつ開始位置Sから移動されるようにして、次第に表面12から金属を塑性流動化させつつ、表面12から挿入されるようにしてもよい。この場合、接合面J2の前までに、攪拌ピンA2がショルダ部A1の下端面A11まで挿入されていればよい。突合部J1は、再び摩擦攪拌されるため、開始時にすべて最深部分まで摩擦攪拌しておく必要がないからである。このようにすれば、開始時の作業時間を短縮することができる。また、同様に開示時の作業時間を短縮することから、開始位置Sを、可能な限り接合面J2に近いところに設定することが好ましい。
【0037】
攪拌ピンA2の全体が金属部材1、1の突合部J1に入り込み、かつ、ショルダ部A1の下端面A11の全面が金属部材1、1の表面12、12に接触したら、図3及び図7の(a)に示すように、摩擦攪拌を行いながら第一タブ材2側と突合部J1との接合面J2に向けて回転ツールA(攪拌ピンA2)を相対移動させ、さらに、接合面J2を横切らせて第一タブ材2に突入させる。なお、回転ツールAを移動させると、その攪拌ピンA2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンA2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域W1が形成される。
【0038】
そして、図3及び図7の(b)に示すように、第一タブ材2側に突入した回転ツールA(攪拌ピンA2)は、折り返し位置T1に到達すると、その折り返し位置T1で折り返されて、先ほど横切った接合面J2に向かって相対移動し、再び接合面J2を横切って、突合部J1に突入される。このとき、回転ツールAは、塑性化領域W1を再び通過して塑性化領域W2に変化させ、塑性化領域W1を通過後には新たに塑性化領域W2を形成しつつ移動する。このようにすると、攪拌ピンA2が、接合面J2を2回横切ることになるため、1回目に横切った際に突合部J1に酸化皮膜を巻き込んでいたとしても、2回目に横切る際に、巻き込まれている酸化皮膜を攪拌し、分断してしまう。そのため、接合面J2の近くの突合部J1の接合品質を向上させることができる。
【0039】
なお、回転ツールAの移動速度(送り速度)は、攪拌ピンA2の寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材1等の材質や肉厚等に応じて設定されるものであるが、多くの場合、30〜300(mm/分)の範囲内において設定される。また、回転ツールAを移動させる際には、ショルダ部A1の軸線を鉛直線に対して進行方向の後ろ側へ僅かに傾斜させてもよいが、傾斜させずに鉛直にすると、回転ツールAの方向転換が容易となり、複雑な動きが可能となる。
【0040】
一方、接合面J2を横切って再び突合部J1に突入した回転ツールAは、図4及び図7の(c)に示すように、塑性化領域W2を形成しつつ、第二タブ部3に向かって突合部J1に沿って移動され、攪拌ピンA2によって摩擦攪拌を行って突合部J1を接合する。そして、回転ツールA、つまり、攪拌ピンA2は、突合部J1と第二タブ部3と接合面J3を横切って第二タブ部3に突入する。
【0041】
接合面J3を横切って第二タブ部3に突入した攪拌ピンA2は、そのまま第二タブ部3を移動され、折り返し位置T2に到達する(図4及び図7の(c))。そして、その攪拌ピンA2は、折り返し位置T2で折り返されて、先ほど横切った接合面J3に向かって相対移動し、再び接合面J3を横切って、突合部J1に突入される。このとき、回転ツールAは、塑性化領域W2を再び通過して塑性化領域W3に変化させつつ移動する。このようにすると、攪拌ピンA2が、接合面J3を2回横切ることになるため、1回目に横切った際に突合部J1に酸化皮膜を巻き込んでいたとしても、2回目に横切る際に、巻き込まれている酸化皮膜を攪拌し、分断してしまう。そのため、接合面J3の近くの突合部J1の接合品質を向上させることができる。
【0042】
このように、接合面J3を横切って突合部J1に再び突入した回転ツールAは、そのまま突合部J1で攪拌ピンA2を引き抜かれると、突合部J1に引き抜き穴(図8の(b)に示す抜き穴Q1に相当。)を残してしまう。そのため、最終位置Eが第二タブ部3に設定されている。図5及び図8の(a)に示すように、突合部J1に突入した回転ツールAは、突合部J1に設定されている折り返し位置T3に到達すると、折り返して再び接合面J3に向かって相対移動され、接合面J3を横切って、第二タブ部3に突入する。このとき、回転ツールAは、塑性化領域W3を再び通過して塑性化領域W4に変化させつつ移動する。このように、攪拌ピンA2が3回接合面J3を横切ることになるため、酸化皮膜がより確実に分断される。
【0043】
そして、図6及び図8の(b)に示すように、回転ツールAは、第二タブ部3に設定されている最終位置Eに到達すると、回転されたまま上昇されて攪拌ピンA2を終了位置Eから離脱される。なお、終了位置Eにおいて攪拌ピンA2を上方に離脱させると、攪拌ピンA2と略同形の抜き穴Q1が不可避的に形成されることになるが、本実施形態では、そのまま残置する。なお、本実施形態では、第二タブ部3において、折り返し位置T2と最終位置Eとを異なる位置に設定したが、同一位置に設定してももちろん構わない。
【0044】
以上のように、開始位置Sを設定した突合部J1から挿入された攪拌ピンA2は、第一タブ部2を2回横切るとともに、第二タブ部3を3回横切って、第二タブ部3に設定された最終位置Eから引き抜かれる。攪拌ピンA2は金属部材1,1、第一タブ部2及び第二タブ部3から一度も途中で離脱されないので、攪拌ピンA2が摩擦攪拌しつつ移動して形成する移動軌跡は、一筆書きの移動軌跡(ビード)になっている。そのため、攪拌ピンA2は、折り返し位置T1〜T3で折り返した後は、折り返す前の移動軌跡を辿るように移動されて、塑性化領域W1〜W4を形成することによって、金属要素1,1同士を突合部J1で接合することが可能となる。
【0045】
また、開始位置Sと終了位置Eとの間は、折り返し位置T1〜T3で直線的に一直線上を折り返しているため、回転ツールAの移動距離を最小限に抑えることができ。そのため、摩擦攪拌接合工程を効率よく行うことが可能となり、さらには、回転ツールAの磨耗量を低減することが可能となる。
【0046】
したがって、本実施形態によれば、第一タブ部2及び第二タブ部3の近くの突合部J1に残りやすい酸化皮膜を分断し、突合部J1の接合品質を向上することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、回転ツールAの回転方向を右回転として説明したが、左回転でも同じである。また、本実施形態では、折り返し位置T1等で折り返した後に、同じ経路を戻るようにした場合を説明したが、第一タブ部2及び第二タブ部での経路はどのような経路を辿っても構わない。例えば、第一タブ部2や第二タブ部3で円を描くような経路を辿って、接合面J2,J3を再度横切るようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、回転ツールAが折り返し位置T1等で折り返すときに、そのまま折り返すように動作するものとして説明したが、折り返し位置T1等で回転ツールAを若干押し下げて攪拌ピンA2を若干深く挿入した後に再び戻して折り返させるように動作させてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、金属要素として、板材としての金属部材1を例に説明したが、前記したように、その形状や寸法に特に制限はない。そこで、以下に、中空部材同士に摩擦攪拌接合を行う場合について説明する。
【0050】
図9の(a)に示すように、この摩擦攪拌接合工程では、アルミニウム合金製の押出形材からなる中空部材41及び中空部材51の突合部J1に摩擦攪拌接合を行う。中空部材41,51は、長尺な直方体形状の外形の枠体46,56によって形成されている。この枠体46,56内には、板体45,55によって隔てられた中空部S1,S2が形成されている。なお、枠体46,56と板体45,55とは、押出形材なので一体に形成されている。
【0051】
図9の(a)(b)に示すように、中空部材41,51の枠体46,56の表面42,52側には、溝42a,52aが形成されている。また、溝42a,52aを挟んで表面42の対岸の位置に帯状の面42b,52bが形成されている。なお、表面42,52は、面42b,52bよりも高い位置に形成されている。中空部材41は、同一断面の押出形状からなり、これらを突き合わせて、突合部J1を中心にして互いに対称になる。また、表面42,52の裏側に位置する図示しない面にも、同じように溝等が形成されているが、図示および説明を省略する。
【0052】
一方、突合部J1,J1bを形成する部分には、凹部43c,53cを挟んで面43a,53aと面43b,53bとが形成されている。面43aと面53aとが突き合わされて突合部J1が形成される。また、面43bと面53bとが突き合わされて突合部J1bが形成される。そして、突合部J1,J1bを隔てるように、凹部43cと凹部53cとによって隙間S3が形成されている。なお、面43a,53aと面43b,53bとの高さ方向の各長さは、攪拌ピンA2(図2参照)が形成する塑性流動化した金属の深さよりも若干長く形成されている。
【0053】
したがって、凹部43c,53cの不陸は隙間S3によって吸収され、また、摩擦攪拌が行われる深さ分の突合部J1,J1bは摩擦攪拌後には塑性流動化されて塑性化領域として一体化してしまうため、突合部J1,J1bの不陸も摩擦攪拌後には吸収されてしまう。その結果、面43aと面53aとが密着し、面43bと面53bとが密着するため、中空部材41,51同士の高品質な接合体を形成することができる。
【0054】
以上の構造の中空部材41,51は、摩擦攪拌接合工程において、まず、図示しない台座上に載せられ、側面47,57の脇に配置される治具91,92で上側の面42,52を押さえられ、治具93とこの治具93の反対側に位置する不図示の同一治具とによって側面47,57を押さえられて固定される。また、中空部材41,51の開口端部側には、タブ材2Aを下から支持する治具94が設置される。
【0055】
そして、治具94の上側に形成された面94aに固定されたタブ材2A(第一タブ材2に相当)の図示しない面と、中空部材41、51の端面とが突き合わされて接合面(接合面J2相当)が形成される。また、中空部材41,51の図示しない反対側の端部側には、第二タブ材3に相当する図示しないタブ材が同じようにして図示しない治具によって配置されている。
【0056】
続いて、図10の(a)に示すように、タブ材2Aの近くの突合部J1に設定された開始位置(図3の開始位置S参照)に回転ツールAの攪拌ピンA2を回転させながら挿入し、接合面を横切ってタブ材2Aに摩擦攪拌を行って、塑性化領域を形成しつつ突合部J1を接合していく。その後、タブ材2Aに設定された折り返し位置(図3の折り返し位置T1参照)で折り返し、再度塑性化領域を摩擦攪拌して接合部を横切って突合部J1の摩擦攪拌による接合を行う(図4参照)。なお、以降の手順は、図4〜6と同じなので、説明を省略する。また、突合部J1の接合後、裏側の突合部J1bにも同じように摩擦攪拌を行って接合を行い、中空部材41と中空部材51とが表裏面で接合される。したがって、中空部材41と中空部材51は、突合部J1と突合部J1bにおいて確実に接合される。
【0057】
また、突合部J1を形成する面42b,52bは、溝42a,52aの底面よりも高く、凸部状に形成されているが、完成部材として必要な強度を発現することが可能な高さと厚みを有している。なお、面42b,52bは、摩擦攪拌後であっても、凸部として残る。また、面42b,52bの幅寸法は、回転ツールAのショルダ径(ショルダ部A1の外径)よりも大きくなるようになっている。なお、突合部J1bも同じである。
【0058】
一方、面42b,52bは、表面42,52よりも低く形成されているため、摩擦攪拌によって面42b,52bに不陸が発生したとしても、表面42,52よりも突出することはない。そのため、摩擦攪拌後の塑性化領域の凸凹した表面が互いに重ならない。したがって、接合体60Aと接合体60Bとをさらに摩擦攪拌接合する場合に、密着させるべき合わせ面を確実に密着させることができるため、接合不良を招くことなく接合することができるようになる。また、ここでは、図示していないが、接合体60A,60Bは、図11中、左右側面の摩擦攪拌を行われる。この場合にも、溝42a等に相当する構造が形成してあることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態に係る金属部材、第一タブ材および第二タブ材の配置を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)のI−I線断面図、(d)は(b)のII−II線断面図である。
【図2】(a)および(b)は回転ツールを開始位置に挿入する状況を説明するための模式的な側面図である。
【図3】実施形態に係る摩擦攪拌接合工程を説明するための平面図である。
【図4】実施形態に係る摩擦攪拌接合工程を説明するための平面図である。
【図5】実施形態に係る摩擦攪拌接合工程を説明するための平面図である。
【図6】実施形態に係る摩擦角は接合工程を説明するための平面図である。
【図7】(a)は図3のIII−III断面図、(b)は図4のIV−IV断面図、(c)は図5のV−V断面図である。
【図8】(a)は図5のVI-VI断面図、(b)は図6のVII-VII断面図である。
【図9】実施形態に係る中空部材同士に摩擦攪拌接合工程を説明するための図であって、(a)は中空部材を示す斜視図、(b)は中空部材の端面の様子を示す要部拡大図、(c)はタブ材を配置する直前の様子を示す斜視図である。
【図10】図9に示す中空部材を摩擦攪拌する手順の一部を示す斜視図である。(a)に開始時の様子を示し、(b)に攪拌ピンの折り返しの様子を示す。
【図11】中空部材の2つの接合体同士をさらに摩擦攪拌接合するときの中空部材の様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 金属部材
2 第一タブ材
3 第二タブ材
2A タブ材
41,42 中空部材
42,52 面
42a,52a 溝
42b,52b 面
43a,43b 面
53a,53b 面
43c,53c 溝
60A,60B 接合体
J1 突合部
J2 接合面
J3 接合面
A 回転ツール
A1 ショルダ部
A2 攪拌ピン
P1 下穴
S3 中空部
W1,W2,W3 塑性化領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌を利用した金属部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材(金属要素)同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合は、回転させた回転ツールを金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである(例えば、特許文献1、2参照)。なお、回転ツールは、円柱状を呈するショルダ部の下端面に攪拌ピン(プローブ)を突設してなるものが一般的である。
【特許文献1】特開2000−343250号公報
【特許文献2】特開2003−164980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、本発明者らは、金属部材の表面やタブ部の表面に存在していた酸化皮膜が、攪拌ピンによって突合部の塑性化領域に巻き込まれ、突合部の側方に位置させたタブ部と突合部との接合面付近に溜まりやすいという性質があることを発見した。
【0004】
そのため、特許文献1のように、摩擦接合部分に仮接合を行わずに摩擦接合する接合方法では、タブ部に挿入された攪拌ピンを移動させて突合部に摩擦攪拌を行い、もう一方のタブ部で摩擦攪拌を終了するため、タブ部から突合部に攪拌ピンを移動させるときに、タブ部の表面や突合部の表面の酸化皮膜を攪拌ピンによって突合部に形成された塑性化領域に巻き込み、接合面付近に酸化皮膜を溜めやすい。
【0005】
一方、特許文献2のように、摩擦接合部分に仮接合を行った後に、その仮接合を行った部分を再び、摩擦攪拌によって本接合を行う接合方法では、タブ部と突合部との接合面に、仮接合及び本接合の2回攪拌ピンを横切らせるため、接合面付近に溜まりやすい酸化皮膜を分断することは可能である。しかしながら、この場合、仮接合と本接合とは工程自体が異なって攪拌ピンの挿抜が工程ごとに必要であるため、工数が多く、接合時間の短時間化や低コスト化に向かない。
【0006】
そこで、本発明は、金属要素同士の突合部の接合面付近の接合品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明に係る接合方法は、金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、前記突合部の側方にタブ部を位置させておき、摩擦攪拌の開始位置に挿入された前記攪拌ピンが終了位置から抜き出されるまでの間に、前記攪拌ピンが前記タブ部と前記突合部との接合面を少なくとも2回横切るように前記攪拌ピンを前記突合部又は前記タブ部において折り返すようにしたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、攪拌ピンが、摩擦攪拌の開始位置に挿入されて終了位置から抜き出されるまでの間に、接合面を少なくとも2回横切ることによって、接合面付近の突合部に残存しやすい酸化皮膜を分断する。そのため、金属要素同士の突合部とタブ部との接合面付近の突合部の接合品質が向上する。
【0009】
なお、攪拌ピンが接合面を一度横切ると、接合面は摩擦攪拌されて存在しなくなる。そのため、攪拌ピンが接合面を2回目以降に再び横切るという意味は、接合面が存在していた箇所を通過するという程度の意味である。また、突合部についても考え方は接合面の場合と同じである。
【0010】
また、金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、前記突合部の側方にタブ部を位置させるとともに、前記突合部に摩擦攪拌の開始位置を設定しておき、前記開始位置に挿入した前記攪拌ピンを前記タブ部に向かって移動させ、前記タブ部と前記突合部との接合面を横切らせた後に前記タブ部で折り返させて、再び前記接合面を横切らせ、その後、前記突合部を移動させることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、攪拌ピンが、突合部に設定された摩擦攪拌の開始位置に挿入されて終了位置から抜き出されるまでの間に、接合面を横切ってタブ部に移動した後に折り返して、再び、接合面を横切ることによって、突合部付近に残存しやすい酸化皮膜を分断するため、接合面付近の突合部の接合品質を少ない工数で向上させることができる。
【0012】
また、金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、前記突合部の側方にタブ部を位置させるとともに、前記突合部の摩擦攪拌を行っている攪拌ピンを前記タブ部に向かって移動させ、前記タブ部と前記突合部との接合面を横切らせた後に前記タブ部で折り返させて、再び前記接合面を横切らせて、前記突合部の摩擦攪拌を行った後に、さらに再び、前記接合面を横切らせて前記タブ部に設定した前記終了位置で抜き出すことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、攪拌ピンが、突合部の摩擦攪拌の開始位置に挿入されて終了位置から抜き出されるまでの間に、接合面を横切ってタブ部を折り返した後に、再び接合面を横切って突合部に移動して折り返し、さらに再び接合面を横切ってタブ部に設定された終了位置から抜き出されることによって、突合部付近に残存しやすい酸化皮膜を分断するため、突合部の接合面付近の接合品質を少ない工数で向上させることができる。
【0014】
なお、以上の構成において、前記金属要素を中空部材としてもよい。また、この場合、前記中空部材の突合面に凹部を成形し、前記中空部材同士の突合部に前記凹部による隙間を形成することが好ましい。このようにすれば、凹部によって突合部に隙間が形成されるため、中空部材の側面の一方の端部側に位置する面同士と他方の端部側に位置する面同士とを密着させて突合部を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る接合方法によれば、金属要素同士の突合部の接合面付近の接合品質を向上させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態として、金属部材(金属要素)同士の突合部に攪拌ピン(プローブ)を挿入して、その攪拌ピンを回転させながら、攪拌ピン及び金属部材同士を相対的に移動させて、突合部に摩擦攪拌を行い、金属部材同士を接合する接合方法について説明する。
【0017】
この実施形態では、図1に示すように、金属部材1,1を直線状に繋ぎ合せる場合を例示する。
まず、接合すべき金属部材1,1を詳細に説明するとともに、この金属部材1,1を接合する際に用いられる第一タブ材2と第二タブ材3を詳細に説明する。
【0018】
金属部材1は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。本実施形態では、一方の金属部材1および他方の金属部材1を、同一組成の金属材料で形成している。金属部材1,1の形状・寸法に特に制限はないが、少なくとも突合部J1における厚さ寸法を同一にすることが望ましい。
【0019】
第一タブ材2および第二タブ材3は、金属部材1,1の突合部J1を挟むように配置されるものであって、それぞれ、金属部材1,1に添設され、金属部材1の側面14側に現れる金属部材1,1の継ぎ目(境界線)を覆い隠す。第一タブ材2および第二タブ材3の材質に特に制限はないが、本実施形態では、金属部材1と同一組成の金属材料で形成している。また、第一タブ材2および第二タブ材3の形状・寸法にも特に制限はないが、本実施形態では、その厚さ寸法を突合部J1における金属部材1の厚さ寸法と同一にしている。
【0020】
次に、図2を参照して、摩擦攪拌を行うための攪拌ピンA2を備える回転ツールAについて詳細に説明する。
図2の(a)に示す回転ツールAは、工具鋼など金属部材1よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部A1と、このショルダ部A1の下端面A11(図2の(b))に突設された攪拌ピンA2とを備えて構成されている。回転ツールAの寸法・形状は、金属部材1の材質や厚さ等に応じて設定すればよい。
【0021】
ショルダ部A1の下端面A11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部A1の外径の大きさに特に制限はない。
【0022】
攪拌ピンA2は、ショルダ部A1の下端面A11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンA2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。
【0023】
続いて、回転ツールAの攪拌ピンA2による摩擦攪拌の原理について説明する。まず、図2の(a)に示すように、金属部材1同士の間の突合部J1の適所に設けた開始位置Sの直上に回転ツールAを位置させ、続いて、回転ツールAを右回転させつつ下降させて攪拌ピンA2を開始位置Sに押し付ける。そして、攪拌ピンA2が突合部J1の表面12に接触すると、摩擦熱によって攪拌ピンA2の周囲にある金属が塑性流動化し、図2の(b)に示すように、攪拌ピンA2が突合部J1部分に挿入される。
【0024】
回転ツールAの回転速度は、攪拌ピンA2の寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材1等の材質や肉厚等に応じて設定されるものであるが、多くの場合、70〜2000(rpm)の範囲内において設定される。
【0025】
以下、本実施形態に係る接合方法を詳細に説明する。本実施形態に係る接合方法は、(1)準備工程、(2)摩擦攪拌接合工程を含むものである。
【0026】
(1)準備工程 :
図1を参照して準備工程を説明する。準備工程は、接合すべき金属部材1,1や当て部材(第一タブ材2および第二タブ材3)を準備する工程であり、本実施形態では、接合すべき金属部材1,1を突き合せる突合工程と、金属部材1,1の突合部J1の両側に第一タブ材2と第二タブ材3を配置するタブ材配置工程と、第一タブ材2と第二タブ材3を溶接により金属部材1,1に仮接合する溶接工程とを具備している。
【0027】
突合工程では、図1の(c)に示すように、一方の金属部材1の側面11に他方の金属部材1の側面11を密着させるとともに、一方の金属部材1の表面12と他方の金属部材1の表面12を面一にし、さらに、一方の金属部材1の裏面13と他方の金属部材1の裏面13を面一にする。
【0028】
タブ材配置工程では、図1の(b)に示すように、金属部材1,1の突合部J1の一端側に第一タブ材2を配置してその当接面21を金属部材1,1の側面14,14に当接させるとともに、突合部J1の他端側に第二タブ材3を配置してその当接面31を金属部材1,1の側面14,14に当接させる。このとき、図1の(d)に示すように、第一タブ材2の表面22と第二タブ材3の表面32を金属部材1の表面12と面一にするとともに、第一タブ材2の裏面23と第二タブ材3の裏面33を金属部材1の裏面13と面一にする。
【0029】
溶接工程では、図1の(a)および(b)に示すように、金属部材1と第一タブ材2とにより形成された入隅部2a,2a(すなわち、金属部材1の側面14と第一タブ材2の側面24とにより形成された角部2a,2a)を溶接して金属部材1と第一タブ材2とを接合し、金属部材1と第二タブ材3とにより形成された入隅部3a,3a(すなわち、金属部材1の側面14と第二タブ材3の側面34とにより形成された角部3a,3a)を溶接して金属部材1と第二タブ材3とを接合する。なお、入隅部2a,3aの全長に亘って連続して溶接を施してもよいし、断続して溶接を施してもよい。
【0030】
準備工程が終了したら、金属部材1,1、第一タブ材2および第二タブ材3を図示せぬ摩擦攪拌装置の架台に載置し、クランプ等の図示せぬ治具を用いて移動不能に拘束する。なお、溶接工程を省略する場合には、図示せぬ摩擦攪拌装置の架台上で、突合工程とタブ材配置工程を実行する。
【0031】
(2)摩擦攪拌接合工程 :
続いて、図3〜図6、図7の(a)〜(c)及び図8の(a)(b)を参照して摩擦攪拌接合工程について詳細に説明する。摩擦攪拌接合工程は、金属部材1,1の突合部J1を接合する工程である。この摩擦攪拌接合工程では、図2に示す回転ツールAを使用し、突合部J1に対して金属部材1の表面12側から摩擦攪拌を行う。
【0032】
この摩擦攪拌接合工程では、開始位置Sに回転ツールAの攪拌ピンA2を挿入(圧入)し、挿入した攪拌ピンA2を途中で離脱させることなく終了位置Eまで移動させる。すなわち、この摩擦攪拌接合工程では、開始位置Sから摩擦攪拌を開始し、終了位置Eまで連続して摩擦攪拌を行う。
【0033】
なお、本実施形態では、第一タブ部2側に位置する突合部J1に摩擦攪拌の開始位置Sを設け、第二タブ材3に終了位置Eを設けているが、開始位置Sと終了位置Eの位置を限定する趣旨ではない。本実施形態では、開始位置Sは突合部J1の適所に、終了位置Eは第一タブ部2又は第二タブ部3の適所に設定されるのであれば、いずれの箇所に設定されてもよい。また、開始位置Sに下穴(図示省略)を形成してもよい。
【0034】
また、本実施形態では、折り返し位置T1(図3、図7の(a)等参照)が第一タブ部2の適所に、折り返し位置T2(図3、4、図7の(b)等参照)が第二タブ部3の適所に、折り返し位置T3(図5、図7の(c)等参照)が突合部J1の適所に設定されるところに特徴がある。
【0035】
まず、図3及び図7の(a)に示すように、開始位置Sの直上に回転ツールAを位置させ、続いて、回転ツールAを右回転させつつ下降させて攪拌ピンA2を開始位置Sに位置決めさせる。そして、回転ツールAの攪拌ピンA2の先端側が、回転しながら金属部材1の表面12に当接し、その表面12から金属が塑性流動化する。そして、このような状態になると、さらに下降する力が加えられている塑性流動化した金属を攪拌ピンA2の周面で押し退けながら、攪拌ピンA2が圧入される。
【0036】
なお、攪拌ピンA2の先端が、金属部材1の表面12に当接した後に、次第に表面12から深くなるように挿入されつつ開始位置Sから移動されるようにして、次第に表面12から金属を塑性流動化させつつ、表面12から挿入されるようにしてもよい。この場合、接合面J2の前までに、攪拌ピンA2がショルダ部A1の下端面A11まで挿入されていればよい。突合部J1は、再び摩擦攪拌されるため、開始時にすべて最深部分まで摩擦攪拌しておく必要がないからである。このようにすれば、開始時の作業時間を短縮することができる。また、同様に開示時の作業時間を短縮することから、開始位置Sを、可能な限り接合面J2に近いところに設定することが好ましい。
【0037】
攪拌ピンA2の全体が金属部材1、1の突合部J1に入り込み、かつ、ショルダ部A1の下端面A11の全面が金属部材1、1の表面12、12に接触したら、図3及び図7の(a)に示すように、摩擦攪拌を行いながら第一タブ材2側と突合部J1との接合面J2に向けて回転ツールA(攪拌ピンA2)を相対移動させ、さらに、接合面J2を横切らせて第一タブ材2に突入させる。なお、回転ツールAを移動させると、その攪拌ピンA2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンA2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域W1が形成される。
【0038】
そして、図3及び図7の(b)に示すように、第一タブ材2側に突入した回転ツールA(攪拌ピンA2)は、折り返し位置T1に到達すると、その折り返し位置T1で折り返されて、先ほど横切った接合面J2に向かって相対移動し、再び接合面J2を横切って、突合部J1に突入される。このとき、回転ツールAは、塑性化領域W1を再び通過して塑性化領域W2に変化させ、塑性化領域W1を通過後には新たに塑性化領域W2を形成しつつ移動する。このようにすると、攪拌ピンA2が、接合面J2を2回横切ることになるため、1回目に横切った際に突合部J1に酸化皮膜を巻き込んでいたとしても、2回目に横切る際に、巻き込まれている酸化皮膜を攪拌し、分断してしまう。そのため、接合面J2の近くの突合部J1の接合品質を向上させることができる。
【0039】
なお、回転ツールAの移動速度(送り速度)は、攪拌ピンA2の寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材1等の材質や肉厚等に応じて設定されるものであるが、多くの場合、30〜300(mm/分)の範囲内において設定される。また、回転ツールAを移動させる際には、ショルダ部A1の軸線を鉛直線に対して進行方向の後ろ側へ僅かに傾斜させてもよいが、傾斜させずに鉛直にすると、回転ツールAの方向転換が容易となり、複雑な動きが可能となる。
【0040】
一方、接合面J2を横切って再び突合部J1に突入した回転ツールAは、図4及び図7の(c)に示すように、塑性化領域W2を形成しつつ、第二タブ部3に向かって突合部J1に沿って移動され、攪拌ピンA2によって摩擦攪拌を行って突合部J1を接合する。そして、回転ツールA、つまり、攪拌ピンA2は、突合部J1と第二タブ部3と接合面J3を横切って第二タブ部3に突入する。
【0041】
接合面J3を横切って第二タブ部3に突入した攪拌ピンA2は、そのまま第二タブ部3を移動され、折り返し位置T2に到達する(図4及び図7の(c))。そして、その攪拌ピンA2は、折り返し位置T2で折り返されて、先ほど横切った接合面J3に向かって相対移動し、再び接合面J3を横切って、突合部J1に突入される。このとき、回転ツールAは、塑性化領域W2を再び通過して塑性化領域W3に変化させつつ移動する。このようにすると、攪拌ピンA2が、接合面J3を2回横切ることになるため、1回目に横切った際に突合部J1に酸化皮膜を巻き込んでいたとしても、2回目に横切る際に、巻き込まれている酸化皮膜を攪拌し、分断してしまう。そのため、接合面J3の近くの突合部J1の接合品質を向上させることができる。
【0042】
このように、接合面J3を横切って突合部J1に再び突入した回転ツールAは、そのまま突合部J1で攪拌ピンA2を引き抜かれると、突合部J1に引き抜き穴(図8の(b)に示す抜き穴Q1に相当。)を残してしまう。そのため、最終位置Eが第二タブ部3に設定されている。図5及び図8の(a)に示すように、突合部J1に突入した回転ツールAは、突合部J1に設定されている折り返し位置T3に到達すると、折り返して再び接合面J3に向かって相対移動され、接合面J3を横切って、第二タブ部3に突入する。このとき、回転ツールAは、塑性化領域W3を再び通過して塑性化領域W4に変化させつつ移動する。このように、攪拌ピンA2が3回接合面J3を横切ることになるため、酸化皮膜がより確実に分断される。
【0043】
そして、図6及び図8の(b)に示すように、回転ツールAは、第二タブ部3に設定されている最終位置Eに到達すると、回転されたまま上昇されて攪拌ピンA2を終了位置Eから離脱される。なお、終了位置Eにおいて攪拌ピンA2を上方に離脱させると、攪拌ピンA2と略同形の抜き穴Q1が不可避的に形成されることになるが、本実施形態では、そのまま残置する。なお、本実施形態では、第二タブ部3において、折り返し位置T2と最終位置Eとを異なる位置に設定したが、同一位置に設定してももちろん構わない。
【0044】
以上のように、開始位置Sを設定した突合部J1から挿入された攪拌ピンA2は、第一タブ部2を2回横切るとともに、第二タブ部3を3回横切って、第二タブ部3に設定された最終位置Eから引き抜かれる。攪拌ピンA2は金属部材1,1、第一タブ部2及び第二タブ部3から一度も途中で離脱されないので、攪拌ピンA2が摩擦攪拌しつつ移動して形成する移動軌跡は、一筆書きの移動軌跡(ビード)になっている。そのため、攪拌ピンA2は、折り返し位置T1〜T3で折り返した後は、折り返す前の移動軌跡を辿るように移動されて、塑性化領域W1〜W4を形成することによって、金属要素1,1同士を突合部J1で接合することが可能となる。
【0045】
また、開始位置Sと終了位置Eとの間は、折り返し位置T1〜T3で直線的に一直線上を折り返しているため、回転ツールAの移動距離を最小限に抑えることができ。そのため、摩擦攪拌接合工程を効率よく行うことが可能となり、さらには、回転ツールAの磨耗量を低減することが可能となる。
【0046】
したがって、本実施形態によれば、第一タブ部2及び第二タブ部3の近くの突合部J1に残りやすい酸化皮膜を分断し、突合部J1の接合品質を向上することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、回転ツールAの回転方向を右回転として説明したが、左回転でも同じである。また、本実施形態では、折り返し位置T1等で折り返した後に、同じ経路を戻るようにした場合を説明したが、第一タブ部2及び第二タブ部での経路はどのような経路を辿っても構わない。例えば、第一タブ部2や第二タブ部3で円を描くような経路を辿って、接合面J2,J3を再度横切るようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、回転ツールAが折り返し位置T1等で折り返すときに、そのまま折り返すように動作するものとして説明したが、折り返し位置T1等で回転ツールAを若干押し下げて攪拌ピンA2を若干深く挿入した後に再び戻して折り返させるように動作させてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、金属要素として、板材としての金属部材1を例に説明したが、前記したように、その形状や寸法に特に制限はない。そこで、以下に、中空部材同士に摩擦攪拌接合を行う場合について説明する。
【0050】
図9の(a)に示すように、この摩擦攪拌接合工程では、アルミニウム合金製の押出形材からなる中空部材41及び中空部材51の突合部J1に摩擦攪拌接合を行う。中空部材41,51は、長尺な直方体形状の外形の枠体46,56によって形成されている。この枠体46,56内には、板体45,55によって隔てられた中空部S1,S2が形成されている。なお、枠体46,56と板体45,55とは、押出形材なので一体に形成されている。
【0051】
図9の(a)(b)に示すように、中空部材41,51の枠体46,56の表面42,52側には、溝42a,52aが形成されている。また、溝42a,52aを挟んで表面42の対岸の位置に帯状の面42b,52bが形成されている。なお、表面42,52は、面42b,52bよりも高い位置に形成されている。中空部材41は、同一断面の押出形状からなり、これらを突き合わせて、突合部J1を中心にして互いに対称になる。また、表面42,52の裏側に位置する図示しない面にも、同じように溝等が形成されているが、図示および説明を省略する。
【0052】
一方、突合部J1,J1bを形成する部分には、凹部43c,53cを挟んで面43a,53aと面43b,53bとが形成されている。面43aと面53aとが突き合わされて突合部J1が形成される。また、面43bと面53bとが突き合わされて突合部J1bが形成される。そして、突合部J1,J1bを隔てるように、凹部43cと凹部53cとによって隙間S3が形成されている。なお、面43a,53aと面43b,53bとの高さ方向の各長さは、攪拌ピンA2(図2参照)が形成する塑性流動化した金属の深さよりも若干長く形成されている。
【0053】
したがって、凹部43c,53cの不陸は隙間S3によって吸収され、また、摩擦攪拌が行われる深さ分の突合部J1,J1bは摩擦攪拌後には塑性流動化されて塑性化領域として一体化してしまうため、突合部J1,J1bの不陸も摩擦攪拌後には吸収されてしまう。その結果、面43aと面53aとが密着し、面43bと面53bとが密着するため、中空部材41,51同士の高品質な接合体を形成することができる。
【0054】
以上の構造の中空部材41,51は、摩擦攪拌接合工程において、まず、図示しない台座上に載せられ、側面47,57の脇に配置される治具91,92で上側の面42,52を押さえられ、治具93とこの治具93の反対側に位置する不図示の同一治具とによって側面47,57を押さえられて固定される。また、中空部材41,51の開口端部側には、タブ材2Aを下から支持する治具94が設置される。
【0055】
そして、治具94の上側に形成された面94aに固定されたタブ材2A(第一タブ材2に相当)の図示しない面と、中空部材41、51の端面とが突き合わされて接合面(接合面J2相当)が形成される。また、中空部材41,51の図示しない反対側の端部側には、第二タブ材3に相当する図示しないタブ材が同じようにして図示しない治具によって配置されている。
【0056】
続いて、図10の(a)に示すように、タブ材2Aの近くの突合部J1に設定された開始位置(図3の開始位置S参照)に回転ツールAの攪拌ピンA2を回転させながら挿入し、接合面を横切ってタブ材2Aに摩擦攪拌を行って、塑性化領域を形成しつつ突合部J1を接合していく。その後、タブ材2Aに設定された折り返し位置(図3の折り返し位置T1参照)で折り返し、再度塑性化領域を摩擦攪拌して接合部を横切って突合部J1の摩擦攪拌による接合を行う(図4参照)。なお、以降の手順は、図4〜6と同じなので、説明を省略する。また、突合部J1の接合後、裏側の突合部J1bにも同じように摩擦攪拌を行って接合を行い、中空部材41と中空部材51とが表裏面で接合される。したがって、中空部材41と中空部材51は、突合部J1と突合部J1bにおいて確実に接合される。
【0057】
また、突合部J1を形成する面42b,52bは、溝42a,52aの底面よりも高く、凸部状に形成されているが、完成部材として必要な強度を発現することが可能な高さと厚みを有している。なお、面42b,52bは、摩擦攪拌後であっても、凸部として残る。また、面42b,52bの幅寸法は、回転ツールAのショルダ径(ショルダ部A1の外径)よりも大きくなるようになっている。なお、突合部J1bも同じである。
【0058】
一方、面42b,52bは、表面42,52よりも低く形成されているため、摩擦攪拌によって面42b,52bに不陸が発生したとしても、表面42,52よりも突出することはない。そのため、摩擦攪拌後の塑性化領域の凸凹した表面が互いに重ならない。したがって、接合体60Aと接合体60Bとをさらに摩擦攪拌接合する場合に、密着させるべき合わせ面を確実に密着させることができるため、接合不良を招くことなく接合することができるようになる。また、ここでは、図示していないが、接合体60A,60Bは、図11中、左右側面の摩擦攪拌を行われる。この場合にも、溝42a等に相当する構造が形成してあることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態に係る金属部材、第一タブ材および第二タブ材の配置を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)のI−I線断面図、(d)は(b)のII−II線断面図である。
【図2】(a)および(b)は回転ツールを開始位置に挿入する状況を説明するための模式的な側面図である。
【図3】実施形態に係る摩擦攪拌接合工程を説明するための平面図である。
【図4】実施形態に係る摩擦攪拌接合工程を説明するための平面図である。
【図5】実施形態に係る摩擦攪拌接合工程を説明するための平面図である。
【図6】実施形態に係る摩擦角は接合工程を説明するための平面図である。
【図7】(a)は図3のIII−III断面図、(b)は図4のIV−IV断面図、(c)は図5のV−V断面図である。
【図8】(a)は図5のVI-VI断面図、(b)は図6のVII-VII断面図である。
【図9】実施形態に係る中空部材同士に摩擦攪拌接合工程を説明するための図であって、(a)は中空部材を示す斜視図、(b)は中空部材の端面の様子を示す要部拡大図、(c)はタブ材を配置する直前の様子を示す斜視図である。
【図10】図9に示す中空部材を摩擦攪拌する手順の一部を示す斜視図である。(a)に開始時の様子を示し、(b)に攪拌ピンの折り返しの様子を示す。
【図11】中空部材の2つの接合体同士をさらに摩擦攪拌接合するときの中空部材の様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 金属部材
2 第一タブ材
3 第二タブ材
2A タブ材
41,42 中空部材
42,52 面
42a,52a 溝
42b,52b 面
43a,43b 面
53a,53b 面
43c,53c 溝
60A,60B 接合体
J1 突合部
J2 接合面
J3 接合面
A 回転ツール
A1 ショルダ部
A2 攪拌ピン
P1 下穴
S3 中空部
W1,W2,W3 塑性化領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、
前記突合部の側方にタブ部を位置させておき、摩擦攪拌の開始位置に挿入された前記攪拌ピンが終了位置から抜き出されるまでの間に、前記攪拌ピンが前記タブ部と前記突合部との接合面を少なくとも2回横切るように前記攪拌ピンを前記突合部又は前記タブ部において折り返すようにしたことを特徴とする接合方法。
【請求項2】
金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、
前記突合部の側方にタブ部を位置させるとともに、前記突合部に摩擦攪拌の開始位置を設定しておき、前記開始位置に挿入した前記攪拌ピンを前記タブ部に向かって移動させ、前記タブ部と前記突合部との接合面を横切らせた後に前記タブ部で折り返させて、再び前記接合面を横切らせ、その後、前記突合部を移動させることを特徴とする接合方法。
【請求項3】
金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、
前記突合部の側方にタブ部を位置させるとともに、前記突合部の摩擦攪拌を行っている攪拌ピンを前記タブ部に向かって移動させ、前記タブ部と前記突合部との接合面を横切らせた後に前記タブ部で折り返させて、再び前記接合面を横切らせて、前記突合部の摩擦攪拌を行った後に、さらに再び、前記接合面を横切らせて前記タブ部に設定した前記終了位置で抜き出すことを特徴とする接合方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の接合方法において、
前記金属要素を中空部材としたことを特徴とする接合方法。
【請求項5】
請求項4に記載の接合方法において、
前記中空部材の突合面に凹部を成形し、前記中空部材同士の突合部に前記凹部による隙間を形成することを特徴とする接合方法。
【請求項1】
金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、
前記突合部の側方にタブ部を位置させておき、摩擦攪拌の開始位置に挿入された前記攪拌ピンが終了位置から抜き出されるまでの間に、前記攪拌ピンが前記タブ部と前記突合部との接合面を少なくとも2回横切るように前記攪拌ピンを前記突合部又は前記タブ部において折り返すようにしたことを特徴とする接合方法。
【請求項2】
金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、
前記突合部の側方にタブ部を位置させるとともに、前記突合部に摩擦攪拌の開始位置を設定しておき、前記開始位置に挿入した前記攪拌ピンを前記タブ部に向かって移動させ、前記タブ部と前記突合部との接合面を横切らせた後に前記タブ部で折り返させて、再び前記接合面を横切らせ、その後、前記突合部を移動させることを特徴とする接合方法。
【請求項3】
金属要素同士の突合部に回転ツールの攪拌ピンを挿入して、前記攪拌ピンを回転させながら前記攪拌ピン及び前記金属要素同士を相対的に移動させて前記突合部に摩擦攪拌を行い、前記金属要素同士を接合する接合方法であって、
前記突合部の側方にタブ部を位置させるとともに、前記突合部の摩擦攪拌を行っている攪拌ピンを前記タブ部に向かって移動させ、前記タブ部と前記突合部との接合面を横切らせた後に前記タブ部で折り返させて、再び前記接合面を横切らせて、前記突合部の摩擦攪拌を行った後に、さらに再び、前記接合面を横切らせて前記タブ部に設定した前記終了位置で抜き出すことを特徴とする接合方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の接合方法において、
前記金属要素を中空部材としたことを特徴とする接合方法。
【請求項5】
請求項4に記載の接合方法において、
前記中空部材の突合面に凹部を成形し、前記中空部材同士の突合部に前記凹部による隙間を形成することを特徴とする接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−302416(P2008−302416A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154237(P2007−154237)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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