説明

接点用弾性体およびその製造方法ならびにスイッチ部材

【課題】
製造効率のより高い導電性弾性体あるいはそれを備えたスイッチ部材を得る。
【解決手段】
本発明は、少なくとも導電性材料と弾性体材料とを含む接点用弾性体14であって、一方に突出する突出部位30aと、その突出部位30aの反対側に形成されその突出部位30aよりも平らな平面部位30bとを有する導電性弾性体30と、その導電性弾性体30の平面部位30bの表面に形成され、上記突出部位30aと区別するためのマーク31と、を備える接点用弾性体14である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点用弾性体およびその製造方法、ならびに当該接点用弾性体を備えたスイッチ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導電性弾性体を接点部材に用いた様々な装置が開発されている。例えば、その一例として、互いに分離配置された接点用電極の上方に半球状の導電性ゴムを対向配置し、当該導電性ゴムの球面部を接点用電極上に接触させることにより、導電性ゴムに加えられた外力を検出する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる装置は、1つのスイッチ部材の裏面上において多方向に複数の導電性ゴムを貼り付け、各導電性ゴムと対向する位置にそれぞれ接点用電極を形成したプリント回路基板をスイッチ部材と対向配置する構成を有する。上記装置によれば、スイッチ部材の特定部位を押した際に、その特定部位と対向して配置される接点用電極の電気抵抗がその押圧の大きさに応じて変化するので、その電気抵抗の大きさを測定することにより、スイッチ部材の操作位置およびその位置における押圧の大きさを認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−083819
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来技術には、次のような問題がある。上記の半球状の導電性ゴムは、カーボンブラックを未加硫ゴムと混練した混練物を金型成形したものであり、その色は黒一色である。導電性ゴムの大きさがある程度大きい場合には、その突出部位と、その反対側の平面部位とを肉眼あるいは手触りで判別できるが、最近の携帯機器の小型化あるいは薄型化に起因して導電性ゴムがより小さくなると、その突出部位や平面部位を判別することが極めて難しくなる。その結果、導電性ゴムをスイッチ部材の裏面に接着等の方法で固定する場合に、本来は平面部位を接着面とすべきところを、突出部位を接着面とするといった製造上のミスが生じやすい。また、半球状の導電性ゴムは黒一色なので、その一部が欠けあるいは突出するような部分があっても判別しにくい。このため、不良品が混在していてもわかりにくいという問題もある。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みなされたもので、製造効率のより高い接点用弾性体あるいはそれを備えたスイッチ部材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、少なくとも導電性材料と弾性体材料とを含む接点用弾性体であって、一方に突出する突出部位と、その突出部位の反対側に形成されその突出部位よりも平らな平面部位とを有する導電性弾性体と、その導電性弾性体の平面部位の表面に形成され、突出部位と区別するためのマークと、を備える接点用弾性体である。
【0008】
本発明の別の一形態は、マークを平面部位の外周に沿って形成した接点用弾性体である。
【0009】
本発明の別の一形態は、導電性弾性体の外形が半球形状であって、その導電性弾性体の平面部位において、マークをリング形状に印刷した接点用弾性体である。
【0010】
本発明の別の一形態は、マークを、平面部位の中央部分において、外方向に突出する凸形状若しくは内方に窪む凹形状にて形成した接点用弾性体である。
【0011】
本発明の一形態は、上述のいずれかの接点用弾性体を1または2以上備えるスイッチ部材である。
【0012】
本発明の一形態は、導電性材料と弾性体材料とを混ぜた成形体用材料から、一方に突出する突出部位と、その突出部位の反対側に形成されその突出部位よりも平らな平面部位とを有する導電性弾性体を成形する成形工程と、平面部位の表面に、突出部位と区別するためのマークを形成するマーク形成工程とを含む接点用弾性体の製造方法である。
【0013】
本発明の別の一形態は、成形工程を、導電性弾性体を複数連接した形状の連接体を成形する工程とし、マーク形成工程を、その連接体を構成する導電性弾性体の各平面部位に相当する位置にマークを形成する工程とし、マーク形成工程の後の連接体から接点用弾性体を分離する分離工程を、さらに含む接点用弾性体の製造方法である。
【0014】
本発明の一形態は、マーク形成工程を、分離工程によって接点用弾性体を分離した残りの部分にもマークの一部が残るように、平面部位より大きな外形を有するマークを、平面部位に相当する位置に形成する工程とする接点用弾性体の製造方法である。
【0015】
本発明の一形態は、マーク形成工程を、成形工程において行う接点用弾性体の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造効率のより高い導電性弾性体あるいはそれを備えたスイッチ部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るスイッチ部材を備える携帯端末の正面図である。
【図2】図2は、図1に示すスイッチ部材の裏側から表側の部分を外した状態を示す図である。
【図3】図3は、図1に示すスイッチ部材のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2に示す樹脂シートと接点用弾性体との分解斜視図および接点用弾性体の拡大図である。
【図5】図5は、図4に示す接点用弾性体の製造状況を製造工程に従って例示した図である。
【図6】図6は、図4に示す接点用弾性体の製造工程を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第2の実施の形態に係る接点用弾性体の製造方法において、マークを印刷した後の連接体から、各接点用弾性体を打ち抜き等の方法により分離する状況を示す図である。
【図8】図8は、図7に示す連接体と、当該連接体から分離した各接点用弾性体および残りの部分であるシートとを示す図である。
【図9】図9は、図8に示すマークとは形態の異なるマークを形成した連接体と、当該連接体から分離した各接点用弾性体および残りの部分であるシートとを示す図である。
【図10】図10は、図8および図9に示す各マークとは形態の異なるマークを形成した連接体と、当該連接体から分離した各接点用弾性体および残りの部分であるシートとを示す図である。
【図11】図11は、第3の実施の形態に係る接点用弾性体の製造工程において、各導電性弾性体の平面部位に相当する位置に、外方向に突出した凸状のマークを形成した状態を示す側面図である。
【図12】図12は、第3の実施の形態に係る接点用弾性体の製造工程において、各導電性弾性体の平面部位に相当する位置に、内方に窪んだ凹状のマークを形成した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る接点用弾性体、その製造方法およびその接点用弾性体を備えるスイッチ部材の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
<第1の実施の形態>
1.スイッチ部材の構造
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ部材を備える携帯端末の正面図である。
【0020】
図1に示すように、この実施の形態に係るスイッチ部材1は、携帯端末2に備えられる多方向キーであり、キーの中心から八方向に押圧入力できる。ただし、本発明に係るスイッチ部材を、多方向キーの周囲若しくは下方に配置されるような、単にその裏方向にのみ押圧可能なキーであっても良い。
【0021】
図2は、図1に示すスイッチ部材の裏側から表側の部分を外した状態を示す図である。図3は、図1に示すスイッチ部材のA−A線断面図である。
【0022】
スイッチ部材1は、その表側に配置される操作キーパネル10と、当該操作キーパネル10の裏側に配置されるプリント回路基板20とを備える。操作キーパネル10は、略円板形状の薄型の樹脂シート11と、その樹脂シート11上に固定される円環形状で樹脂製の第一操作板12と、樹脂シート11上であってその第一操作板12の略中央の穴部分に固定される円形で樹脂製の第二操作板13とを備える。第一操作板12と第二操作板13との間には隙間が設けられ、第一操作板12と第二操作板13とを独立して操作しやすいようにしている。樹脂シート11の裏面には、第一操作板12の円環に沿うように、第一操作板12の中心から45度間隔に1個ずつ合計8個の接点用弾性体14が固定されている。接点用弾性体14は、略半球形状を有しており、その球面側先端(突出部位)がプリント回路基板20を向くように、樹脂シート11に固定される。また、樹脂シート11の裏面であって第二操作板13の裏側に対応する領域には、1個の略円柱形状の押圧子15が固定されている。押圧子15は、例えば、樹脂から構成される。押圧子15は、接点用弾性体14よりもスイッチ部材1の表裏方向の高さが低くなるように構成されている。
【0023】
接点用弾性体14は、プリント回路基板20上に接触後に弾性変形できるように、柔軟性に富む材料で構成されている。また、接点用弾性体14には、導電性を付与するために、導電性材料が分散されている。導電性材料としては、カーボン、金属等を例示できるが、粒子径が小さいもの(ナノレベルの粒子)を容易に製造でき、かつその取り扱いが容易なカーボンブラックがより好ましい。また、接点用弾性体14を構成する母材としては、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、天然ゴムを用いることができ、それらの中でも、シリコーンゴムが好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシリコーンゴムの弾性を維持する観点から、シリコーンゴムの材料と当該導電性材料の総重量に対して15〜40重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。
【0024】
プリント回路基板20における各接点用弾性体14の裏側にそれぞれ対応する位置には、接点用電極の一例である櫛歯電極24が配置されている。櫛歯電極24は、多数の歯を有する櫛形状の2つの電極25,26を互いに接触しないように各歯を互い違いにかみ合わせるように配置した電極である。櫛歯電極24の上から接点用弾性体14を押圧させて接触させると、その押圧に応じて櫛歯電極24と接点用弾性体14との接触面積が大きくなり、その結果、電極25と電極26との間の電気抵抗が小さくなる。すなわち、接点用弾性体14は、櫛歯電極24を構成する電極25,26間の電気抵抗を変えることができる可変抵抗機能を発揮する。このような機能を発揮するための接点用電極としては、櫛歯電極24以外の電極、例えば半円状の電極を互いに接触しないように配置させた電極を用いることもできる。
【0025】
プリント回路基板20における押圧子15の下方に対応する位置には、メタルドーム27が配置されている。メタルドーム27の上面位置は、櫛歯電極24のそれよりも高い。メタルドーム27の外周端面は、プリント回路基板20上に形成された円環状の電極28と電気的に接続されている。また、円環状の電極28の内方には、小さなドット形状の電極29が、電極28およびメタルドーム27のいずれにも接触しないように配置される。第二操作板13の上からスイッチ部材1を押圧すると、押圧子15が下方に押され、メタルドーム27をへこませることができ、その結果、メタルドーム27の中央部分が電極29に接触し、電極28と電極29とが電気的に接続される。
【0026】
2.接点用弾性体の構造
図4は、図2に示す樹脂シートと接点用弾性体との分解斜視図および接点用弾性体の拡大図である。
【0027】
接点用弾性体14は、半球状の導電性弾性体30に円環状(リング形状の一例)のマーク31を付けたものである。マーク31は、導電性弾性体30の突出部位30aの反対側にある平面部位30bに付けられている。図中、マーク31は、見やすさを考慮して黒塗りで示しているが、黒色の導電性弾性体30の場合には、マークを白色、グレー、銀色等の色にするのが好ましい。第2の実施の形態でも同様である。また、この実施の形態では、マーク31の外径は、導電性弾性体30の平面部位30bの直径とほぼ等しくなるように設計されている。しかし、マーク31の外径を平面部位30bの直径より小さくすることもできる。マーク31の外径が平面部位30bの直径とほぼ等しい場合、マーク31の内径は、マーク31の外径の60〜90%の範囲となるようにするのが好ましい。マーク31の内径をその外径に近づけるほど、マーク31の線幅が小さくなる。線幅がより小さなマーク31を平面部位30bに形成すると、接点用弾性体14の開口部周辺に欠け等のキズがある場合に、マーク31の一部の線が欠けるため、そのようなキズの有る不良品を発見しやすい。一方、マーク31の内径をその外径より小さくするほど、マーク31の線幅が大きくなる。線幅がより大きなマーク31を平面部位30bに形成すると、マーク31自体を視認しやすくなる。このため、マーク31の一部の線の欠けを発見しやすくすることと、マーク31自体の視認しやすさとの両立を図る上で、上記の60〜90%の範囲が好ましく、さらには、70〜80%の範囲が好ましい。なお、マーク31の内径をゼロとして、マーク31を円形状に形成することも可能である。
【0028】
マーク31は、いかなる方法で形成しても良いが、印刷によって形成するのがより好ましい。印刷方法としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パッド印刷等の各種印刷方法を採用できる。特に、平面部位30bの平滑性が高いほど、スクリーン印刷の方が好ましい。さらに、平面部位30bに凹凸がある場合には、パッド印刷の方が好ましい。また、マーク31を、薄い樹脂フィルム、金属フィルム等で作製し、そのマーク31を、接着剤等を介在させて導電性弾性体30の平面部位30bに貼っても良い。また、マーク31は、導電性弾性体30の平面部位30bに付けていれば、それ以外の球面部位に延出していても良い。
【0029】
3.接点用弾性体の製造方法
図5は、図4に示す接点用弾性体の製造状況を製造工程に従って例示した図である。図6は、図4に示す接点用弾性体の製造工程を示すフローチャートである。
【0030】
まず、導電性材料(好適にはカーボンブラック)と弾性体材料(好適には、未加硫のシリコーンゴム)とを混練して、導電性弾性体の材料を作製する(ステップST1)。次に、当該導電性弾性体の材料を金型内に投入して成形する(ステップST2: 成形工程)。ステップST2では、例えば、図5の(A)から(B)に示すように、浅い凹部41の底面に略半球上の小さな凹部42を多数形成した下金型40を用意し、凹部42および凹部41内にステップST1にて作製した導電性弾性体の材料(成形体用材料の一例)50を入れ、その上から上金型60を下金型40に合わせて金型の型締めを行う。続いて、加熱して、導電性弾性体の材料50を硬化させ、成形を行う。
【0031】
ステップST2の後、金型成形により得られた成形体(連接体)の所定位置に、マーク31を形成する(ステップST3: マーク形成工程)。ステップST3では、例えば、図5の(C)から(D)に示すように、上金型60と下金型40とを開き、複数の導電性弾性体30が一体になった状態の連接体55を取り出す。続いて、印刷用の別の治具(不図示)上に連接体55を固定して、スクリーン印刷等の印刷手法を用いて、各導電性弾性体30の平面部位30bに相当する位置にマーク31を印刷する。ステップST3の後、マーク31を印刷した後の連接体55から、各接点用弾性体14を打ち抜き等の方法により分離する(ステップST4: 分離工程)。例えば、図5の(E)に示すように、各導電性弾性体30同士を連接する部位を切り離すために、円筒形の打ち抜き具を利用して、各接点用弾性体14を連接体55から分離する。なお、マーク形成工程は、成形工程において行うようにしても良い。例えば、成形工程の終了間際に、上金型60に設けられた印刷機構(不図示)あるいはシール添付機構(不図示)を用いて、平面部位30bに相当する位置にマーク31を形成するようにして良い。
【0032】
<第2の実施の形態>
次に、本発明に係る接点用弾性体およびその製造方法の第2の実施の形態について説明する。
【0033】
図7は、第2の実施の形態に係る接点用弾性体の製造方法において、マークを印刷した後の連接体から、各接点用弾性体を打ち抜き等の方法により分離する状況を示す図である。図8は、図7に示す連接体と、当該連接体から分離した各接点用弾性体および残りの部分であるシートとを示す図である。
【0034】
図7に示す連接体55には、各導電性弾性体30の平面部位30bの外径よりも大きな円環状のマーク31が印刷されている。この連接体55から各導電性弾性体30の平面部位30bの外径とほぼ等しい外径を有する円形状にて各接点用弾性体14を打ち抜くと、図8に示すように、打ち抜き後の残りの部分であるシート56にマーク31の外縁部分が円環状に残る。各接点用弾性体14の平面部位30b上の円環状のマーク31の位置ずれのみならず、打ち抜き後のシート56上のマーク31の残りを調べることにより、正確に各接点用弾性体14を打ち抜くことができたかどうかを確認することができる。具体的には、各接点用弾性体14の平面部位30b上の円環状のマーク31の一部が欠け若しくはその厚さが薄くなっているか、あるいはシート56上の円環状のマーク31の一部が欠け若しくはその厚さが薄くなっていると、その部分の接点用弾性体14を正確に打ち抜くことができなかったことになる。このように、接点用弾性体14とシート56の両方で不良品の存在を確認できるので、不良品を発見する確率が高くなる。
【0035】
図9および図10は、それぞれ、図8に示すマークとは形態の異なるマークを形成した連接体と、当該連接体から分離した各接点用弾性体および残りの部分であるシートとを示す図である。
【0036】
図9に示す連接体55には、各導電性弾性体30の平面部位30bの外径よりも大きな円環状のマーク31aとそのマーク31aの内方の略中心に配置されるドット状のマーク31bが印刷されている。また、図10に示す連接体55には、各導電性弾性体30の平面部位30bの外径よりも大きな円環状のマーク31aとそのマーク31aの内方に配置されるクロス状のマーク31cが印刷されている。これらの連接体55から各導電性弾性体30の平面部位30bの外径とほぼ等しい外径を有する円形状にて各接点用弾性体14を打ち抜くと、図9および図10に示すように、打ち抜き後の残りの部分であるシート56にマーク31aの外縁部分が円環状に残る。各接点用弾性体14の平面部位30b上の円環状のマーク31aの位置ずれのみならず、打ち抜き後のシート56上のマーク31aの残りを調べることにより、正確に各接点用弾性体14を打ち抜くことができたかどうかを確認することができるので、不良品を発見する確率が高くなる。なお、マーク31b,31cは、目視での判別のみならず、画像認識装置を用いて読み取る方法にて判別するようにしても良い。
【0037】
<第3の実施の形態>
次に、本発明に係る接点用弾性体およびその製造方法の第3の実施の形態について説明する。
【0038】
図11は、第3の実施の形態に係る接点用弾性体の製造工程において、各導電性弾性体の平面部位の中央部分に相当する位置に、外方向に突出した凸状のマークを形成した状態を示す側面図である。図12は、第3の実施の形態に係る接点用弾性体の製造工程において、各導電性弾性体の平面部位の中央部分に相当する位置に、内方に窪んだ凹状のマークを形成した状態を示す断面図である。
【0039】
図11および図12に示すように、印刷にてマーク31,31a,31b,31cを形成せず若しくはマーク31,31a,31b,31cの形成と併せて、各導電性弾性体30の平面部位30bの中央部分に相当する位置に凸状のマーク70あるいは凹状のマーク71を形成することによっても、各接点用弾性体14の打ち抜きが正確であったかどうかを確認できる。具体的には、打ち抜き後の各接点用弾性体14の平面部位30bの中央部分に凸状のマーク70若しくは凹状のマーク71が存在していれば、正確に打ち抜いたものと判断する一方で、平面部位30bの中央から外れた位置に凸状のマーク70若しくは凹状のマーク71が存在していれば、正確に打ち抜くことができなかったものと判断することができる。凸状のマーク70あるいは凹状のマーク71は、第1の実施の形態にて説明した成形工程において好適に使用する上金型60の成形面に、内方に窪む凹部あるいは外方向に突出する凸部を形成しておくことにより、容易に形成することができる。この場合、マーク形成工程は、成形工程において行われることになる。ただし、成形工程後に、平面部位30bへのマーク形成に必要な成形を別途行っても良い。
【0040】
<その他の形態>
以上、本発明の好適な各実施の形態について説明したが、本発明は、上述の各実施の形態に限定されることなく、種々の変形を施した形態にて実施可能である。
【0041】
例えば、接点用弾性体14は、カーボンブラック等の導電性材料と未加硫のシリコーンゴム等の弾性体材料のみではなく、例えば、成形助剤等の第三成分を含んでいても良い。接点用弾性体14は、突出部位30aとして球面部を有しているが、先端が尖った形状、あるいは先端側ほど狭くなっていき最先端部が平面となっている形状でも良い。また、平面部位30bは、完全な平面に限定されず、突出部位30aよりも平らであれば、多少の突出若しくは窪みのある面であっても良い。
【0042】
マーク31,31a,31b,31cの色は、前述のように、導電性弾性体30が黒色である場合には、その色と対照的な色となるように、白色、グレー若しくは銀色であるのが好ましい。しかし、マーク31,31a,31b,31cの色を黄色、赤色、緑色としても良い。さらに、導電性弾性体30が黒色以外の色の場合には、マーク31,31a,31b,31cの色を、当該黒色以外の色と隣接した際に区別できるような色としても良い。また、マーク31,31a,31b,31cの形状は、円環状あるいは円形ではなく、四角い輪等の多角環状(リング形状の一例)あるいは四角形等の多角形状であっても良い。特に、導電性弾性体30の平面部位30bが円形ではなく、三角形、四角形等の多角形である場合には、その形状に合わせることもできる。マーク31,31a,31b,31cは平面部位30bの外周に沿って形成するのが好ましいが、外周に沿わないように形成することもできる。
【0043】
本発明に係る接点用弾性体の製造方法は、連接体55から各接点用弾性体14を分離するのではなく、連接体55を経ずに、最初から各導電性弾性体30を作製し、その平面部位30bにマーク31,31a,31b,31cを形成するようにしても良い。また、導電性材料と弾性体材料とを混ぜるステップST1は、必須の工程ではなく、導電性材料と弾性体材料とを予め混ぜた成形体用の材料を市場から入手して、成形工程以降の各工程を行うようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、各種機器のスイッチ部材に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 スイッチ部材
14 接点用弾性体
30 導電性弾性体
30a 突出部位
30b 平面部位
31 マーク
31a マーク
31b マーク
31c マーク
50 導電性弾性体の材料(成形体用材料)
55 連接体
56 シート(残りの部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性材料と弾性体材料とを含む接点用弾性体であって、
一方に突出する突出部位と、その突出部位の反対側に形成されその突出部位よりも平らな平面部位とを有する導電性弾性体と、
その導電性弾性体の上記平面部位の表面に形成され、上記突出部位と区別するためのマークと、
を備えることを特徴とする接点用弾性体。
【請求項2】
前記マークは、前記平面部位の外周に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の接点用弾性体。
【請求項3】
前記導電性弾性体の外形は半球形状であって、
前記導電性弾性体の前記平面部位において、前記マークはリング形状に印刷されていることを特徴とする請求項2に記載の接点用弾性体。
【請求項4】
前記マークは、前記平面部位の中央部分において、外方向に突出する凸形状若しくは内方に窪む凹形状にて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の接点用弾性体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接点用弾性体を1または2以上備えることを特徴とするスイッチ部材。
【請求項6】
導電性材料と弾性体材料とを混ぜた成形体用材料から、一方に突出する突出部位と、その突出部位の反対側に形成されその突出部位よりも平らな平面部位とを有する導電性弾性体を成形する成形工程と、
上記平面部位の表面に、上記突出部位と区別するためのマークを形成するマーク形成工程と、
を含むことを特徴とする接点用弾性体の製造方法。
【請求項7】
前記成形工程は、前記導電性弾性体を複数連接した形状の連接体を成形する工程であり、
前記マーク形成工程は、その連接体を構成する前記導電性弾性体の各平面部位に相当する位置に前記マークを形成する工程であり、
前記マーク形成工程の後の上記連接体から前記接点用弾性体を分離する分離工程を、さらに含むことを特徴とする請求項6に記載の接点用弾性体の製造方法。
【請求項8】
前記マーク形成工程は、前記分離工程によって前記接点用弾性体を分離した残りの部分にも前記マークの一部が残るように、前記平面部位より大きな外形を有する前記マークを、前記平面部位に相当する位置に形成する工程であることを特徴とする請求項7に記載の接点用弾性体の製造方法。
【請求項9】
前記マーク形成工程は、前記成形工程において行われることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の接点用弾性体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−34920(P2011−34920A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182647(P2009−182647)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】