接着フィルムの貼付方法および太陽電池モジュールの製造方法
【課題】貼り付け工程及び引き剥がし工程に要する時間を短縮した場合においても、接着フィルムのずれを発生させることがない貼付方法を提供する。
【解決手段】離型紙5cを有する接着フィルム5aを基板1の表裏にそれぞれ熱転写して接着後、この接着フィルム5aから離型紙5cを剥離し、基板1の表裏に接着フィルム5aを粘着させる接着フィルムの貼付方法において、基板1を冷却した支持ステージ70に支持した後、離型紙5cを有する接着フィルム5aを基板1の表裏にそれぞれ配置し、離型紙5c側から基板1に熱圧着に必要とされる温度に加熱されたヘッド部61、62で、基板1表裏から加熱圧着した後、ヘッド61、62を離型フィルム5cから離間させ、基板1を冷却した支持ステージ70で急速に冷却させる。
【解決手段】離型紙5cを有する接着フィルム5aを基板1の表裏にそれぞれ熱転写して接着後、この接着フィルム5aから離型紙5cを剥離し、基板1の表裏に接着フィルム5aを粘着させる接着フィルムの貼付方法において、基板1を冷却した支持ステージ70に支持した後、離型紙5cを有する接着フィルム5aを基板1の表裏にそれぞれ配置し、離型紙5c側から基板1に熱圧着に必要とされる温度に加熱されたヘッド部61、62で、基板1表裏から加熱圧着した後、ヘッド61、62を離型フィルム5cから離間させ、基板1を冷却した支持ステージ70で急速に冷却させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、離型紙を有する接着フィルムを用いて電気的な接続を図る際の基板に対する接着フィルムの貼付方法およびこの接着フィルムの貼付方法を用いた太陽電池モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数の太陽電池がその表裏面の電極に電気的に接続された配線部材により電気的に接続された構造を有している。この太陽電池モジュールを作製する際に、太陽電池の電極と配線部材との接続には、従来、半田が用いられている。半田は、導通性、固着強度等の接続信頼性に優れ、安価で汎用性があることから広く用いられている。
【0003】
一方、環境保護の観点等から、太陽電池において半田を使用しない配線の接続方法も用いられている。例えば、接着フィルムを用いて太陽電池と配線材とを接続する方法が知られている。
【0004】
接着フィルムを用いた配線の接続は、まず、接着フィルムを太陽電池の電極上に貼り着ける必要がある。通常、接着フィルムは離型紙とともに接着フィルムシートとしてリールに巻回されている。そして、リールから接着フィルムシートを送り出し、この送り出された接着フィルムシートが貼付装置を用いて太陽電池に加熱圧着され、その後、離型紙を引き剥がして太陽電池の電極上に接着フィルムが貼り着けられる。
【0005】
しかしながら、この離型紙を引き剥がす際に、接着フィルムの温度が高いと接着フィルムが離型紙側に残り、接着フィルムの貼り付け不良となる場合がある。
【0006】
貼り付け不良となる原因としては以下のことが考えられる。貼り付け工程及び引き剥がし工程に長い間時間をかけた場合には、接着フィルムと基板との界面が自然冷却でも十分に冷えてこの界面での接着強度が十分であり、貼り付け不良の発生は抑制される。
【0007】
これに対して、貼り付け工程及び引き剥がし工程に要する時間を短縮した場合には、自然冷却では、接着フィルムと基板との界面が十分に冷えず、接着フィルムと基板との界面での接着力が離型紙を引き剥がす際の力にまけて、離型紙側に接着フィルムが残って貼り付け不良が発生する。
【0008】
そこで、離型紙の剥ぎ取り時に、被接合物の表面に粘着されている接着フィルムを確実に被接合物側に残せるようにし、剥がれミスを防止した方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−155246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した特許文献1には、離型紙の剥ぎ取り前に、接着フィルムの離型紙側から送風機により冷却して、所定温度以下になったときに、離型紙を引き剥がしている。
【0011】
しかしながら、太陽電池に貼付される接着フィルムは1mmから2mm程度と細く、送風機による風により、接着フィルムがずれるという問題が生じる。
【0012】
この発明は、貼り付け工程及び引き剥がし工程に要する時間を短縮した場合においても、接着フィルムのずれを発生させることなく、貼り付け不良を無くすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、離型紙を有する接着フィルムを基板の表裏にそれぞれ熱転写して接着後、この接着フィルムから離型紙を剥離し、基板の表裏に接着フィルムを粘着させる接着フィルムの貼付方法において、前記基板を冷却したステージに支持した後、離型紙を有する接着フィルムを基板の表裏にそれぞれ配置し、前記離型紙側から前記基板に熱圧着に必要とされる温度に加熱された加熱圧着装置で、基板表裏から加熱圧着した後、加熱圧着装置を離型フィルムから離間させ、前記基板を冷却したステージで冷却させることを特徴とする。
【0014】
前記接着フィルムの温度が所定温度以下になったときに、前記離型紙を接着フィルムから引き剥がせばよい。
【0015】
また、前記基板の表面側を冷却する冷却部材を更に備え、前記基板表面側の加熱圧着装置の離間に対応して前記冷却部材で基板表面を冷却するように構成することができる。
【0016】
また、この発明は、太陽電池を冷却したステージに支持した後、離型紙を有する接着フィルムを太陽電池の表裏にそれぞれ配置し、前記離型紙側から前記太陽電池に熱圧着に必要とされる温度に加熱された加熱圧着装置で、太陽電池表裏から加熱圧着した後、加熱圧着装置を離型フィルムから離間させ、前記太陽電池を冷却したステージで冷却させた後、前記接着フィルムから離型紙を剥離し、前記基板の表裏に接着フィルムを粘着させ、それぞれ配線材を前記接着フィルム上に載せ、接着フィルムを加熱して熱硬化させて太陽電池の電極と前記配線材を固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、基板は冷却された支持ステージに支持されているため、接着フィルムの貼り付けられた温度上昇を抑制できるため、貼り付け不良が低減できる。
また、支持ステージでの冷却機構のため、タクトタイムを落とすことなく接着フィルムの貼り付けが行える。また、ブローなどの冷風による冷却でないため、接着フィルムのずれなどの発生も防げる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態に用いられる接着フィルムの貼付装置の一例を示す模式図である。
【図2】この発明の実施形態に用いられる接着フィルムの貼付装置の一例を示しシートの送り方向と直交する方向から見た模式図である。
【図3】この発明に用いられる接着フィルムシートを示す模式的断面図である。
【図4】この発明により接着フィルムを貼り着けた太陽電池を示す平面図である。
【図5】この発明により製造された太陽電池モジュールの要部を示す平面図である。
【図6】この発明により製造された太陽電池モジュールの要部を示す概略断面図である。
【図7】太陽電池の電極と配線材とを接着フィルムを用いて接続するこの発明の太陽電池モジュールの製造方法を工程別に示す模式図である。
【図8】太陽電池の電極と配線材とを接着フィルムを用いて接続するこの発明の太陽電池モジュールの製造方法を工程別に示す模式図である。
【図9】太陽電池の電極と配線材とを導電性接着フィルムを用いて接続した太陽電池モジュールを示す模式図である。
【図10】この発明により製造された太陽電池モジュールの概略を示す断面図である。
【図11】この発明の他の実施形態に用いられる接着フィルムの貼付装置の一例を示す模式図である。
【図12】この発明の他の実施形態に用いられる接着フィルムの貼付装置の一例を示しシートの送り方向と直交する方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0020】
図1及び図2は、この発明の実施形態に用いられる接着フィルムの貼付装置の一例を示す模式図である。
【0021】
被貼付部材である太陽電池1は、複数枚、図示しない収納トレイに収納されていて、その太陽電池1が図示しない吸着機構を有する繰り出し装置により、一枚ずつ取り出され、支持ステージ70に位置決めされて接着フィルム貼付部60に設置される。
【0022】
接着フィルム5aと離型紙5cとで構成される接着フィルムシート5を巻回した接着フィルムシート供給リール51と離型紙巻き取りリール52を備え、案内ロール55、56、57により、供給リール51から送り出された接着フィルムシート5が太陽電池1への接着フィルム貼付部60を経て離型紙巻き取りリール52に送られる。尚、案内ロール55、55は、後述する接着フィルム5aとの接触面積ができるだけ小さくなるように構成されている。
【0023】
この実施形態では、このような接着フィルムシートの供給機構を図1に示すように、太陽電池1の表裏側にそれぞれ配置することで、太陽電池1を裏返すことなく太陽電池1の表裏に接着フィルムを貼り着けるように構成している。
【0024】
接着フィルムシート5は、図3に示すように、テープ状の離型紙5cに接着フィルム5aが保持されている。この実施形態の接着フィルムシート5は、例えば、導電性接着フィルムを用いることができる。導電性接着フィルムシート5としては、図3の模式的断面図に示すように、樹脂接着成分5bとその中に分散した導電性粒子5dとを少なくとも含んで接着フィルム5aが構成されている。導電性粒子5dが分散された樹脂接着成分5bがポリイミドなどからなる離型紙5c上に設けられている。樹脂接着成分5bは熱硬化性樹脂を含有する組成物からなり、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂を用いることができる。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いるか2種以上を組み合わせて用いられ、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂が好ましい。
【0025】
導電性粒子5dとしては、例えば、金粒子、銀粒子、銅粒子及びニッケル粒子などの金属粒子、或いは、金メッキ粒子、銅メッキ粒子及びニッケルメッキ粒子などの導電性又は絶縁性の核粒子の表面を金属層などの導電層で被覆してなる導電性粒子が用いられる。
【0026】
接着フィルムシート5は、供給リール51より繰り出され、接着フィルム5aのみ切断機構54により予め定められた所定寸法に切断される。切断機構54は、カッター54aとローラ54bとで構成される。接着フィルム5aのみ予め所定寸法に切断された接着フィルムシート5は、押圧機構である接着フィルム貼付部60に供給される。
【0027】
接着テープ貼付部60は、切断機構54で所定の長さに切断された接着フィルムシート5が太陽電池1の表裏の電極の所定位置にそれぞれ位置決めされ、接着テープ貼付部60の上下の押圧機構のヘッド部61、62により押圧される。ヘッド部61、62は、接着フィルム5aを仮圧着する温度、例えば、80℃程度に内蔵するヒータにより加熱されている。離型紙5cを介した接着フィルム5aがヘッド部61、62により太陽電池1の方向へ押圧され、太陽電池1の電極に接着フィルム5aが貼付される。
【0028】
太陽電池1は、支持ステージ70に支持されており、表面側に供給された接着性フィルムシート5は上部に位置する押圧機構のヘッド部62により、離型紙5cを介して太陽電池1の方向に接着フィルム5aが押圧される。
【0029】
又、支持ステージ70の裏面側から押圧機構のヘッド部61が通過する部分には、開口部72が設けられており、この開口部72からヘッド部61が太陽電池1の方向に進み、離型紙5cを介して太陽電池1の方向に接着フィルム5aが押圧される。すなわち、太陽電池1は、上下の押圧機構により、所定の押圧力が加えられる。
【0030】
そして、ヘッド部61、62には、ヒータが内蔵されており、接着フィルム5aを仮固定する高温状態に維持する。この高温状態の時には、離型紙5cと接着フィルム5aとの間の接着力が強く、離型紙5cを引き剥がすとき、太陽電池1から接着フィルム5aを引き離してしまう虞がある。
【0031】
そこで、この実施形態においては、支持ステージ70自体を冷却して、太陽電池1の全体を冷却して、ヘッド部61、62が離間したときに、接着フィルム5aの温度が所定温度以下、例えば、40℃〜50℃に急激に低下させるように構成している。
【0032】
このため、支持ステージ70は、例えば、熱伝導の良好なアルミニウム等で構成され、冷却装置71により、例えば、10℃の温度に冷却される。そして、この支持ステージ70により、熱圧着される部分以外の太陽電池1の温度を下げている。冷却装置71としては、ペルチェ素子や冷却用パイプなどを支持ステージ70内部に配設し、支持ステージ70を10℃の温度に冷却している。
【0033】
支持ステージ70が冷却されているので、ヘッド部61、62を離型紙5cから離すと、太陽電池1は冷却された支持ステージ70により、急激に冷やされ、離型紙5cを引き剥がしても良い温度以下に接着フィルム5aの温度が低下する。このため、低下時までの時間が大幅に短縮できる。そして、その温度以下になると剥離ローラ63、63が移動し、離型紙5cを接着フィルム5aの端部で引き剥がし、そのまま供給ローラ51の方向に剥離ローラ63、63が移動し、太陽電池1上における離型紙5cは接着シート5aから引き剥がされ、太陽電池1上に接着シート5aが貼り付けられる。
【0034】
上記のように、太陽電池1は冷却された支持ステージ70に支持されているため、接着フィルム5aの貼り付けられた温度上昇を抑制できるため、貼り付け不良が低減できる。支持ステージ70での冷却機構のため、タクトタイムを落とすことなく接着フィルムの貼り付けが行える。また、ブローなどの冷風による冷却でないため、接着フィルム5aのずれなどの発生も防げる。
【0035】
表裏に接着シート5aが貼り付けられた太陽電池1は、次の配線材を接続するための工程に送られる。
【0036】
続いて、接着フィルム5aを貼り着けた太陽電池1に配線材120を接着する方法に付き説明する。
【0037】
太陽電池モジュールは、複数の板状の太陽電池1を備えている。この太陽電池1は、例えば、厚みが0.15mm程度の単結晶シリコンや多結晶シリコンなどで構成される結晶系半導体からなり、1辺が104mm〜125mm程度の略正方形を有するが、これに限るものではなく、他の太陽電池を用いても良い。この太陽電池1は、図4、図5に示すように、太陽電池1の表裏の所定領域には集電極115、119が形成されている。
【0038】
この太陽電池1内には、例えば、n型領域とp型領域が形成され、n型領域とp型領域との界面部分でキャリア分離用の電界を形成するための接合部が形成されている。このn型領域とp型領域は、単結晶シリコンや多結晶シリコン等の結晶半導体、GaAsやInP等の化合物半導体、非晶質状態或いは微結晶状態を有する薄膜SiやCuInSe等の薄膜半導体等の太陽電池用に用いられる半導体を単独、或いは組み合わせて形成することができる。一例として互いに逆導電型を有する単結晶シリコンと非晶質シリコン層との間に真性な非晶質シリコン層を介挿し、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面の特性を改善したいわゆるHIT型太陽電池が用いられる。
【0039】
上記した集電極115、119は、光の入射により太陽電池1内の光電変換部で生成されたキャリアを収集するための電極である。集電極115、119は、例えば、銀ペーストをスクリーン印刷して、百数十度の温度で硬化させて形成される。尚、集電極115、119はバスバー電極を備えていても良い。
【0040】
集電極115、119に配線材120を電気的に接続する。この配線材120を集電極115、119に接続するために接着フィルム5aを用いる。配線材120を接着する位置に、上記したように、接着フィルム5aが貼付される。接着フィルム5aは、接続する配線材120の幅と同一若しくは少し幅の細いものが用いられる。例えば、配線材120の幅は、0.5mm〜3mmであれば、接着フィルム5aの幅も配線材120の幅に対応して0.5mm〜3mmにする。この実施形態においては、図5に示すように、3本の配線材120を用いている。このため、図4に示すように、配線材120が接着される位置に配線材120の幅に対応した幅の3本の接着フィルム5aが太陽電池1の表裏に貼り着けられている。
【0041】
接着フィルム5aに配線材120を押圧し、押圧しながら加熱処理を施して接着フィルム5aの接着層を熱硬化して配線材120を集電極115、119に接続する。
【0042】
図6に示すように、この複数の太陽電池1の各々は、互いに隣接する他の太陽電池と扁平形状の銅箔などで構成された配線材120によって電気的に接続されている。即ち、配線材120の一方端側が所定の太陽電池1の上面側の集電極115に接続されるとともに、他方端側がその所定の太陽電池1に隣接する別の太陽電池1の下面側の集電極119に接続される。これら太陽電池1は、配線材120で直列に接続され、太陽電池モジュール10から渡り配線や取り出し線を介して所定の出力、例えば、200Wの出力が発生するように構成される。
【0043】
図7に示すように、この複数の太陽電池1の各々を互いに隣接する他の太陽電池1と配線材120によって電気的に接続する。即ち、配線材120の一方端側が所定の太陽電池1の上面側の集電極115に接続されるとともに、他方端側がその所定の太陽電池1に隣接する別の太陽電池の下面側の集電極119に接続するように、太陽電池1の表裏に貼り着けた接着フィルム5aにそれぞれ配線材120を置く。そして、低温、低圧力で配線材120を仮圧着させて仮固定する。この配線材を仮固定する工程は、太陽電池1を低圧力、例えば、0.2MPa程度の圧力でヒータブロック81、81を用いて押圧し、配線材120を太陽電池1側にそれぞれ押し付ける。そして、ヒータブロック81、81の温度を樹脂接着成分が熱硬化しない温度での低温加熱、例えば90℃程度の温度で1秒程度加熱して配線材120を仮圧着固定させ、配線材120を仮固定した太陽電池1は、搬送ステージ82に送られ、搬送ステージ82を移動し、仮固定した状態の太陽電池ストリングを形成する。
【0044】
ここで、導電性粒子5dを含む導電性樹脂フィルム5aを用いる場合には、導電性粒子5dを集電極115(119)の表面及び配線材120の表面の両方を接触させることにより、集電極115(119)と配線材120との電気的接続を行うように、ヒータブロック81、81で配線材120を集電極115(119)に圧着する。
【0045】
この圧着と加熱は、ヒータを内蔵する金属ブロックを押し当て所定の圧力並びに温度に加熱する方法と、押圧ピンなどの押圧部材と熱風を吹き当てることにより、所定の圧力並びに温度に加熱する方法とから適宜最適な方法を用いればよい。
【0046】
続いて、配線材120を本圧着固定する。この工程は、図8に示すように、ヒータブロック91を高圧力、例えば、3MPa程度の圧力でヒータブロック81上に載置された太陽電池1側に配線材120を押し付ける。そして、ヒータブロック91、91の温度を樹脂接着成分が熱硬化する温度での高温加熱、例えば、120℃以上200℃以下の温度に加熱して配線材120を本圧着固定させ、配線材120を固定して太陽電池1を電気的に接続して配列する。尚、ヒータブロック91、91と仮固定状態の太陽電池ストリングとの間には離型作用のあるポリテトラフルオロエチレン製のシート92を配置している。
【0047】
加熱温度としては、例えば、スループット等を考慮して200℃の温度とし、10秒の加熱により、樹脂接着成分を熱硬化して太陽電池の集電極と配線材とを電気的、機械的に接続する。
【0048】
この高温、高圧力による圧着と加熱は、ヒータを内蔵する金属ブロックを押し当て所定の圧力並びに温度に加熱する方法と、押圧ピンなどの押圧部材と熱風を吹き当てることにより、所定の圧力並びに温度に加熱する方法とから適宜最適な方法を用いればよい。
【0049】
なお、上記した実施形態では、接着フィルムとして導電性接着フィルムを用いているが、樹脂フィルムとしては導電性粒子を含まないものも用いることができる。導電性粒子を含まない樹脂接着剤を用いる場合には、集電極115(119)の表面の一部を配線材120の表面に直接接触させることによって、電気的な接続を行う。この場合、配線材120として銅箔版等の導電体の表面に、錫(Sn)や半田等の集電極115(119)より柔らかい導電膜を形成したものを用い、集電極115(119)の一部を導電膜中にめり込ませるようにして接続することが好ましい。
【0050】
このようにして、配線材120により複数の太陽電池1を接続したものを、ガラスからなる表面部材41と耐侯性フィルム又はガラス、透光性プラスチックのような透光性を有する部材からなる裏面部材42との間に、EVA(ethylene vinylacetate、エチレン酢酸ビニル)等の透光性を有する封止材43で挟んで重ね合わせる。そして、ラミネート装置により、太陽電池1を表面部材41と裏面部材42との間に封止材シート43により封止する。その後、炉入れて、150℃程度の温度で10分ほどキュアし、架橋反応を進ませ封止材43と表面部材41及び裏面部材42との接着性を上げて、図9、図10に示す太陽電池モジュールが製造される。
【0051】
上記太陽電池モジュール10は、必要に応じて外周にシール材を用いてアルミニウムなどからなる外枠20に嵌め込まれる。この外枠20は、アルミニウム、ステンレス又は鋼板ロールフォーミング材等で形成されている。必要に応じて端子ボックス(図示せず)が、例えば裏面部材42の表面に設けられる。
【0052】
尚、上記した実施形態においては、太陽電池1上に3本の配線部材120を用いて接続する例について説明したが、配線部材120は3本に限らず、2本以上の配線材120を用いる場合には、この発明を適用することができる。
【0053】
次に、この発明の他の実施形態につき、図11及び図12を参照して説明する。図1及び図2に示した実施形態においては、支持ステージ70を冷却装置71で冷却している。これに対して、この第2の実施形態は、太陽電池1の表面側を冷却する冷却板75を更に備え、太陽電池1を表裏から冷却するものである。その他の構成は、図1及び図2に示すものと同じ構成であり、ここでは説明の重複を避けるために、同一符号を付し、説明を割愛する。
【0054】
冷却板75には、表面側から押圧機構のヘッド部62が通過する部分には、開口部77が設けられている。この開口部77からヘッド部62が上下動可能に構成されている。
【0055】
この冷却板75は、ペルチェ素子や冷却用パイプなどで構成される冷却装置76で10℃程度に冷却され、太陽電池1に対して、図中矢印で示すように、上下動可能に構成されている。この冷却板75は、表面側のヘッド部62の離間に対応して冷却板75が下降し、太陽電池1の表面と当接する。
【0056】
そして、裏面側の支持ステージ70の冷却と表面側の冷却板75により、太陽電池1を急速に冷却し、接着フィルム5aの温度を所定温度以下に低下して、引き剥がしに要する時間を短縮する。冷却工程が終了すると、冷却板75は、上に移動し退避する。
【0057】
このように太陽電池1の表裏から冷却することで、さらにタクトタイムを短縮できる。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 太陽電池
115、119 集電極
120 配線材
5 接着フィルムシート
5a 接着フィルム
5c 離型紙
60 接着テープ貼付部
61,62 ヘッド部
70 支持ステージ
71 冷却装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、離型紙を有する接着フィルムを用いて電気的な接続を図る際の基板に対する接着フィルムの貼付方法およびこの接着フィルムの貼付方法を用いた太陽電池モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数の太陽電池がその表裏面の電極に電気的に接続された配線部材により電気的に接続された構造を有している。この太陽電池モジュールを作製する際に、太陽電池の電極と配線部材との接続には、従来、半田が用いられている。半田は、導通性、固着強度等の接続信頼性に優れ、安価で汎用性があることから広く用いられている。
【0003】
一方、環境保護の観点等から、太陽電池において半田を使用しない配線の接続方法も用いられている。例えば、接着フィルムを用いて太陽電池と配線材とを接続する方法が知られている。
【0004】
接着フィルムを用いた配線の接続は、まず、接着フィルムを太陽電池の電極上に貼り着ける必要がある。通常、接着フィルムは離型紙とともに接着フィルムシートとしてリールに巻回されている。そして、リールから接着フィルムシートを送り出し、この送り出された接着フィルムシートが貼付装置を用いて太陽電池に加熱圧着され、その後、離型紙を引き剥がして太陽電池の電極上に接着フィルムが貼り着けられる。
【0005】
しかしながら、この離型紙を引き剥がす際に、接着フィルムの温度が高いと接着フィルムが離型紙側に残り、接着フィルムの貼り付け不良となる場合がある。
【0006】
貼り付け不良となる原因としては以下のことが考えられる。貼り付け工程及び引き剥がし工程に長い間時間をかけた場合には、接着フィルムと基板との界面が自然冷却でも十分に冷えてこの界面での接着強度が十分であり、貼り付け不良の発生は抑制される。
【0007】
これに対して、貼り付け工程及び引き剥がし工程に要する時間を短縮した場合には、自然冷却では、接着フィルムと基板との界面が十分に冷えず、接着フィルムと基板との界面での接着力が離型紙を引き剥がす際の力にまけて、離型紙側に接着フィルムが残って貼り付け不良が発生する。
【0008】
そこで、離型紙の剥ぎ取り時に、被接合物の表面に粘着されている接着フィルムを確実に被接合物側に残せるようにし、剥がれミスを防止した方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−155246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した特許文献1には、離型紙の剥ぎ取り前に、接着フィルムの離型紙側から送風機により冷却して、所定温度以下になったときに、離型紙を引き剥がしている。
【0011】
しかしながら、太陽電池に貼付される接着フィルムは1mmから2mm程度と細く、送風機による風により、接着フィルムがずれるという問題が生じる。
【0012】
この発明は、貼り付け工程及び引き剥がし工程に要する時間を短縮した場合においても、接着フィルムのずれを発生させることなく、貼り付け不良を無くすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、離型紙を有する接着フィルムを基板の表裏にそれぞれ熱転写して接着後、この接着フィルムから離型紙を剥離し、基板の表裏に接着フィルムを粘着させる接着フィルムの貼付方法において、前記基板を冷却したステージに支持した後、離型紙を有する接着フィルムを基板の表裏にそれぞれ配置し、前記離型紙側から前記基板に熱圧着に必要とされる温度に加熱された加熱圧着装置で、基板表裏から加熱圧着した後、加熱圧着装置を離型フィルムから離間させ、前記基板を冷却したステージで冷却させることを特徴とする。
【0014】
前記接着フィルムの温度が所定温度以下になったときに、前記離型紙を接着フィルムから引き剥がせばよい。
【0015】
また、前記基板の表面側を冷却する冷却部材を更に備え、前記基板表面側の加熱圧着装置の離間に対応して前記冷却部材で基板表面を冷却するように構成することができる。
【0016】
また、この発明は、太陽電池を冷却したステージに支持した後、離型紙を有する接着フィルムを太陽電池の表裏にそれぞれ配置し、前記離型紙側から前記太陽電池に熱圧着に必要とされる温度に加熱された加熱圧着装置で、太陽電池表裏から加熱圧着した後、加熱圧着装置を離型フィルムから離間させ、前記太陽電池を冷却したステージで冷却させた後、前記接着フィルムから離型紙を剥離し、前記基板の表裏に接着フィルムを粘着させ、それぞれ配線材を前記接着フィルム上に載せ、接着フィルムを加熱して熱硬化させて太陽電池の電極と前記配線材を固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、基板は冷却された支持ステージに支持されているため、接着フィルムの貼り付けられた温度上昇を抑制できるため、貼り付け不良が低減できる。
また、支持ステージでの冷却機構のため、タクトタイムを落とすことなく接着フィルムの貼り付けが行える。また、ブローなどの冷風による冷却でないため、接着フィルムのずれなどの発生も防げる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態に用いられる接着フィルムの貼付装置の一例を示す模式図である。
【図2】この発明の実施形態に用いられる接着フィルムの貼付装置の一例を示しシートの送り方向と直交する方向から見た模式図である。
【図3】この発明に用いられる接着フィルムシートを示す模式的断面図である。
【図4】この発明により接着フィルムを貼り着けた太陽電池を示す平面図である。
【図5】この発明により製造された太陽電池モジュールの要部を示す平面図である。
【図6】この発明により製造された太陽電池モジュールの要部を示す概略断面図である。
【図7】太陽電池の電極と配線材とを接着フィルムを用いて接続するこの発明の太陽電池モジュールの製造方法を工程別に示す模式図である。
【図8】太陽電池の電極と配線材とを接着フィルムを用いて接続するこの発明の太陽電池モジュールの製造方法を工程別に示す模式図である。
【図9】太陽電池の電極と配線材とを導電性接着フィルムを用いて接続した太陽電池モジュールを示す模式図である。
【図10】この発明により製造された太陽電池モジュールの概略を示す断面図である。
【図11】この発明の他の実施形態に用いられる接着フィルムの貼付装置の一例を示す模式図である。
【図12】この発明の他の実施形態に用いられる接着フィルムの貼付装置の一例を示しシートの送り方向と直交する方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0020】
図1及び図2は、この発明の実施形態に用いられる接着フィルムの貼付装置の一例を示す模式図である。
【0021】
被貼付部材である太陽電池1は、複数枚、図示しない収納トレイに収納されていて、その太陽電池1が図示しない吸着機構を有する繰り出し装置により、一枚ずつ取り出され、支持ステージ70に位置決めされて接着フィルム貼付部60に設置される。
【0022】
接着フィルム5aと離型紙5cとで構成される接着フィルムシート5を巻回した接着フィルムシート供給リール51と離型紙巻き取りリール52を備え、案内ロール55、56、57により、供給リール51から送り出された接着フィルムシート5が太陽電池1への接着フィルム貼付部60を経て離型紙巻き取りリール52に送られる。尚、案内ロール55、55は、後述する接着フィルム5aとの接触面積ができるだけ小さくなるように構成されている。
【0023】
この実施形態では、このような接着フィルムシートの供給機構を図1に示すように、太陽電池1の表裏側にそれぞれ配置することで、太陽電池1を裏返すことなく太陽電池1の表裏に接着フィルムを貼り着けるように構成している。
【0024】
接着フィルムシート5は、図3に示すように、テープ状の離型紙5cに接着フィルム5aが保持されている。この実施形態の接着フィルムシート5は、例えば、導電性接着フィルムを用いることができる。導電性接着フィルムシート5としては、図3の模式的断面図に示すように、樹脂接着成分5bとその中に分散した導電性粒子5dとを少なくとも含んで接着フィルム5aが構成されている。導電性粒子5dが分散された樹脂接着成分5bがポリイミドなどからなる離型紙5c上に設けられている。樹脂接着成分5bは熱硬化性樹脂を含有する組成物からなり、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂を用いることができる。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いるか2種以上を組み合わせて用いられ、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂が好ましい。
【0025】
導電性粒子5dとしては、例えば、金粒子、銀粒子、銅粒子及びニッケル粒子などの金属粒子、或いは、金メッキ粒子、銅メッキ粒子及びニッケルメッキ粒子などの導電性又は絶縁性の核粒子の表面を金属層などの導電層で被覆してなる導電性粒子が用いられる。
【0026】
接着フィルムシート5は、供給リール51より繰り出され、接着フィルム5aのみ切断機構54により予め定められた所定寸法に切断される。切断機構54は、カッター54aとローラ54bとで構成される。接着フィルム5aのみ予め所定寸法に切断された接着フィルムシート5は、押圧機構である接着フィルム貼付部60に供給される。
【0027】
接着テープ貼付部60は、切断機構54で所定の長さに切断された接着フィルムシート5が太陽電池1の表裏の電極の所定位置にそれぞれ位置決めされ、接着テープ貼付部60の上下の押圧機構のヘッド部61、62により押圧される。ヘッド部61、62は、接着フィルム5aを仮圧着する温度、例えば、80℃程度に内蔵するヒータにより加熱されている。離型紙5cを介した接着フィルム5aがヘッド部61、62により太陽電池1の方向へ押圧され、太陽電池1の電極に接着フィルム5aが貼付される。
【0028】
太陽電池1は、支持ステージ70に支持されており、表面側に供給された接着性フィルムシート5は上部に位置する押圧機構のヘッド部62により、離型紙5cを介して太陽電池1の方向に接着フィルム5aが押圧される。
【0029】
又、支持ステージ70の裏面側から押圧機構のヘッド部61が通過する部分には、開口部72が設けられており、この開口部72からヘッド部61が太陽電池1の方向に進み、離型紙5cを介して太陽電池1の方向に接着フィルム5aが押圧される。すなわち、太陽電池1は、上下の押圧機構により、所定の押圧力が加えられる。
【0030】
そして、ヘッド部61、62には、ヒータが内蔵されており、接着フィルム5aを仮固定する高温状態に維持する。この高温状態の時には、離型紙5cと接着フィルム5aとの間の接着力が強く、離型紙5cを引き剥がすとき、太陽電池1から接着フィルム5aを引き離してしまう虞がある。
【0031】
そこで、この実施形態においては、支持ステージ70自体を冷却して、太陽電池1の全体を冷却して、ヘッド部61、62が離間したときに、接着フィルム5aの温度が所定温度以下、例えば、40℃〜50℃に急激に低下させるように構成している。
【0032】
このため、支持ステージ70は、例えば、熱伝導の良好なアルミニウム等で構成され、冷却装置71により、例えば、10℃の温度に冷却される。そして、この支持ステージ70により、熱圧着される部分以外の太陽電池1の温度を下げている。冷却装置71としては、ペルチェ素子や冷却用パイプなどを支持ステージ70内部に配設し、支持ステージ70を10℃の温度に冷却している。
【0033】
支持ステージ70が冷却されているので、ヘッド部61、62を離型紙5cから離すと、太陽電池1は冷却された支持ステージ70により、急激に冷やされ、離型紙5cを引き剥がしても良い温度以下に接着フィルム5aの温度が低下する。このため、低下時までの時間が大幅に短縮できる。そして、その温度以下になると剥離ローラ63、63が移動し、離型紙5cを接着フィルム5aの端部で引き剥がし、そのまま供給ローラ51の方向に剥離ローラ63、63が移動し、太陽電池1上における離型紙5cは接着シート5aから引き剥がされ、太陽電池1上に接着シート5aが貼り付けられる。
【0034】
上記のように、太陽電池1は冷却された支持ステージ70に支持されているため、接着フィルム5aの貼り付けられた温度上昇を抑制できるため、貼り付け不良が低減できる。支持ステージ70での冷却機構のため、タクトタイムを落とすことなく接着フィルムの貼り付けが行える。また、ブローなどの冷風による冷却でないため、接着フィルム5aのずれなどの発生も防げる。
【0035】
表裏に接着シート5aが貼り付けられた太陽電池1は、次の配線材を接続するための工程に送られる。
【0036】
続いて、接着フィルム5aを貼り着けた太陽電池1に配線材120を接着する方法に付き説明する。
【0037】
太陽電池モジュールは、複数の板状の太陽電池1を備えている。この太陽電池1は、例えば、厚みが0.15mm程度の単結晶シリコンや多結晶シリコンなどで構成される結晶系半導体からなり、1辺が104mm〜125mm程度の略正方形を有するが、これに限るものではなく、他の太陽電池を用いても良い。この太陽電池1は、図4、図5に示すように、太陽電池1の表裏の所定領域には集電極115、119が形成されている。
【0038】
この太陽電池1内には、例えば、n型領域とp型領域が形成され、n型領域とp型領域との界面部分でキャリア分離用の電界を形成するための接合部が形成されている。このn型領域とp型領域は、単結晶シリコンや多結晶シリコン等の結晶半導体、GaAsやInP等の化合物半導体、非晶質状態或いは微結晶状態を有する薄膜SiやCuInSe等の薄膜半導体等の太陽電池用に用いられる半導体を単独、或いは組み合わせて形成することができる。一例として互いに逆導電型を有する単結晶シリコンと非晶質シリコン層との間に真性な非晶質シリコン層を介挿し、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面の特性を改善したいわゆるHIT型太陽電池が用いられる。
【0039】
上記した集電極115、119は、光の入射により太陽電池1内の光電変換部で生成されたキャリアを収集するための電極である。集電極115、119は、例えば、銀ペーストをスクリーン印刷して、百数十度の温度で硬化させて形成される。尚、集電極115、119はバスバー電極を備えていても良い。
【0040】
集電極115、119に配線材120を電気的に接続する。この配線材120を集電極115、119に接続するために接着フィルム5aを用いる。配線材120を接着する位置に、上記したように、接着フィルム5aが貼付される。接着フィルム5aは、接続する配線材120の幅と同一若しくは少し幅の細いものが用いられる。例えば、配線材120の幅は、0.5mm〜3mmであれば、接着フィルム5aの幅も配線材120の幅に対応して0.5mm〜3mmにする。この実施形態においては、図5に示すように、3本の配線材120を用いている。このため、図4に示すように、配線材120が接着される位置に配線材120の幅に対応した幅の3本の接着フィルム5aが太陽電池1の表裏に貼り着けられている。
【0041】
接着フィルム5aに配線材120を押圧し、押圧しながら加熱処理を施して接着フィルム5aの接着層を熱硬化して配線材120を集電極115、119に接続する。
【0042】
図6に示すように、この複数の太陽電池1の各々は、互いに隣接する他の太陽電池と扁平形状の銅箔などで構成された配線材120によって電気的に接続されている。即ち、配線材120の一方端側が所定の太陽電池1の上面側の集電極115に接続されるとともに、他方端側がその所定の太陽電池1に隣接する別の太陽電池1の下面側の集電極119に接続される。これら太陽電池1は、配線材120で直列に接続され、太陽電池モジュール10から渡り配線や取り出し線を介して所定の出力、例えば、200Wの出力が発生するように構成される。
【0043】
図7に示すように、この複数の太陽電池1の各々を互いに隣接する他の太陽電池1と配線材120によって電気的に接続する。即ち、配線材120の一方端側が所定の太陽電池1の上面側の集電極115に接続されるとともに、他方端側がその所定の太陽電池1に隣接する別の太陽電池の下面側の集電極119に接続するように、太陽電池1の表裏に貼り着けた接着フィルム5aにそれぞれ配線材120を置く。そして、低温、低圧力で配線材120を仮圧着させて仮固定する。この配線材を仮固定する工程は、太陽電池1を低圧力、例えば、0.2MPa程度の圧力でヒータブロック81、81を用いて押圧し、配線材120を太陽電池1側にそれぞれ押し付ける。そして、ヒータブロック81、81の温度を樹脂接着成分が熱硬化しない温度での低温加熱、例えば90℃程度の温度で1秒程度加熱して配線材120を仮圧着固定させ、配線材120を仮固定した太陽電池1は、搬送ステージ82に送られ、搬送ステージ82を移動し、仮固定した状態の太陽電池ストリングを形成する。
【0044】
ここで、導電性粒子5dを含む導電性樹脂フィルム5aを用いる場合には、導電性粒子5dを集電極115(119)の表面及び配線材120の表面の両方を接触させることにより、集電極115(119)と配線材120との電気的接続を行うように、ヒータブロック81、81で配線材120を集電極115(119)に圧着する。
【0045】
この圧着と加熱は、ヒータを内蔵する金属ブロックを押し当て所定の圧力並びに温度に加熱する方法と、押圧ピンなどの押圧部材と熱風を吹き当てることにより、所定の圧力並びに温度に加熱する方法とから適宜最適な方法を用いればよい。
【0046】
続いて、配線材120を本圧着固定する。この工程は、図8に示すように、ヒータブロック91を高圧力、例えば、3MPa程度の圧力でヒータブロック81上に載置された太陽電池1側に配線材120を押し付ける。そして、ヒータブロック91、91の温度を樹脂接着成分が熱硬化する温度での高温加熱、例えば、120℃以上200℃以下の温度に加熱して配線材120を本圧着固定させ、配線材120を固定して太陽電池1を電気的に接続して配列する。尚、ヒータブロック91、91と仮固定状態の太陽電池ストリングとの間には離型作用のあるポリテトラフルオロエチレン製のシート92を配置している。
【0047】
加熱温度としては、例えば、スループット等を考慮して200℃の温度とし、10秒の加熱により、樹脂接着成分を熱硬化して太陽電池の集電極と配線材とを電気的、機械的に接続する。
【0048】
この高温、高圧力による圧着と加熱は、ヒータを内蔵する金属ブロックを押し当て所定の圧力並びに温度に加熱する方法と、押圧ピンなどの押圧部材と熱風を吹き当てることにより、所定の圧力並びに温度に加熱する方法とから適宜最適な方法を用いればよい。
【0049】
なお、上記した実施形態では、接着フィルムとして導電性接着フィルムを用いているが、樹脂フィルムとしては導電性粒子を含まないものも用いることができる。導電性粒子を含まない樹脂接着剤を用いる場合には、集電極115(119)の表面の一部を配線材120の表面に直接接触させることによって、電気的な接続を行う。この場合、配線材120として銅箔版等の導電体の表面に、錫(Sn)や半田等の集電極115(119)より柔らかい導電膜を形成したものを用い、集電極115(119)の一部を導電膜中にめり込ませるようにして接続することが好ましい。
【0050】
このようにして、配線材120により複数の太陽電池1を接続したものを、ガラスからなる表面部材41と耐侯性フィルム又はガラス、透光性プラスチックのような透光性を有する部材からなる裏面部材42との間に、EVA(ethylene vinylacetate、エチレン酢酸ビニル)等の透光性を有する封止材43で挟んで重ね合わせる。そして、ラミネート装置により、太陽電池1を表面部材41と裏面部材42との間に封止材シート43により封止する。その後、炉入れて、150℃程度の温度で10分ほどキュアし、架橋反応を進ませ封止材43と表面部材41及び裏面部材42との接着性を上げて、図9、図10に示す太陽電池モジュールが製造される。
【0051】
上記太陽電池モジュール10は、必要に応じて外周にシール材を用いてアルミニウムなどからなる外枠20に嵌め込まれる。この外枠20は、アルミニウム、ステンレス又は鋼板ロールフォーミング材等で形成されている。必要に応じて端子ボックス(図示せず)が、例えば裏面部材42の表面に設けられる。
【0052】
尚、上記した実施形態においては、太陽電池1上に3本の配線部材120を用いて接続する例について説明したが、配線部材120は3本に限らず、2本以上の配線材120を用いる場合には、この発明を適用することができる。
【0053】
次に、この発明の他の実施形態につき、図11及び図12を参照して説明する。図1及び図2に示した実施形態においては、支持ステージ70を冷却装置71で冷却している。これに対して、この第2の実施形態は、太陽電池1の表面側を冷却する冷却板75を更に備え、太陽電池1を表裏から冷却するものである。その他の構成は、図1及び図2に示すものと同じ構成であり、ここでは説明の重複を避けるために、同一符号を付し、説明を割愛する。
【0054】
冷却板75には、表面側から押圧機構のヘッド部62が通過する部分には、開口部77が設けられている。この開口部77からヘッド部62が上下動可能に構成されている。
【0055】
この冷却板75は、ペルチェ素子や冷却用パイプなどで構成される冷却装置76で10℃程度に冷却され、太陽電池1に対して、図中矢印で示すように、上下動可能に構成されている。この冷却板75は、表面側のヘッド部62の離間に対応して冷却板75が下降し、太陽電池1の表面と当接する。
【0056】
そして、裏面側の支持ステージ70の冷却と表面側の冷却板75により、太陽電池1を急速に冷却し、接着フィルム5aの温度を所定温度以下に低下して、引き剥がしに要する時間を短縮する。冷却工程が終了すると、冷却板75は、上に移動し退避する。
【0057】
このように太陽電池1の表裏から冷却することで、さらにタクトタイムを短縮できる。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 太陽電池
115、119 集電極
120 配線材
5 接着フィルムシート
5a 接着フィルム
5c 離型紙
60 接着テープ貼付部
61,62 ヘッド部
70 支持ステージ
71 冷却装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型紙を有する接着フィルムを基板の表裏にそれぞれ熱転写して接着後、この接着フィルムから離型紙を剥離し、基板の表裏に接着フィルムを粘着させる接着フィルムの貼付方法において、前記基板を冷却したステージに支持した後、離型紙を有する接着フィルムを基板の表裏にそれぞれ配置し、前記離型紙側から前記基板に熱圧着に必要とされる温度に加熱された加熱圧着装置で、基板表裏から加熱圧着した後、加熱圧着装置を離型フィルムから離間させ、前記基板を冷却したステージで冷却させることを特徴とする接着フィルムの貼付方法。
【請求項2】
前記接着フィルムの温度が所定温度以下になったときに、前記離型紙を接着フィルムから引き剥がすことを特徴とする請求項1に記載の接着フィルムの貼付方法。
【請求項3】
前記基板の表面側を冷却する冷却部材を更に備え、前記基板表面側の加熱圧着装置の離間に対応して前記冷却部材で基板表面を冷却することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接着フィルムの貼付方法。
【請求項4】
太陽電池を冷却したステージに支持した後、離型紙を有する接着フィルムを太陽電池の表裏にそれぞれ配置し、前記離型紙側から前記太陽電池に熱圧着に必要とされる温度に加熱された加熱圧着装置で、太陽電池表裏から加熱圧着した後、加熱圧着装置を離型フィルムから離間させ、前記太陽電池を冷却したステージで冷却させた後、前記接着フィルムから離型紙を剥離し、前記基板の表裏に接着フィルムを粘着させ、それぞれ配線材を前記接着フィルム上に載せ、接着フィルムを加熱して熱硬化させて太陽電池の電極と前記配線材を固定することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項1】
離型紙を有する接着フィルムを基板の表裏にそれぞれ熱転写して接着後、この接着フィルムから離型紙を剥離し、基板の表裏に接着フィルムを粘着させる接着フィルムの貼付方法において、前記基板を冷却したステージに支持した後、離型紙を有する接着フィルムを基板の表裏にそれぞれ配置し、前記離型紙側から前記基板に熱圧着に必要とされる温度に加熱された加熱圧着装置で、基板表裏から加熱圧着した後、加熱圧着装置を離型フィルムから離間させ、前記基板を冷却したステージで冷却させることを特徴とする接着フィルムの貼付方法。
【請求項2】
前記接着フィルムの温度が所定温度以下になったときに、前記離型紙を接着フィルムから引き剥がすことを特徴とする請求項1に記載の接着フィルムの貼付方法。
【請求項3】
前記基板の表面側を冷却する冷却部材を更に備え、前記基板表面側の加熱圧着装置の離間に対応して前記冷却部材で基板表面を冷却することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接着フィルムの貼付方法。
【請求項4】
太陽電池を冷却したステージに支持した後、離型紙を有する接着フィルムを太陽電池の表裏にそれぞれ配置し、前記離型紙側から前記太陽電池に熱圧着に必要とされる温度に加熱された加熱圧着装置で、太陽電池表裏から加熱圧着した後、加熱圧着装置を離型フィルムから離間させ、前記太陽電池を冷却したステージで冷却させた後、前記接着フィルムから離型紙を剥離し、前記基板の表裏に接着フィルムを粘着させ、それぞれ配線材を前記接着フィルム上に載せ、接着フィルムを加熱して熱硬化させて太陽電池の電極と前記配線材を固定することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−132295(P2011−132295A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290750(P2009−290750)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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