説明

接着フィルム

【課題】短絡が起こり難い接着フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の接着フィルム10は第一、第二の接着剤層11、12を有しており、第一の接着剤層11に導電性粒子15が分散され、第一の接着剤層11の膜厚が導電性粒子15の粒径の2倍未満になっている。導電性粒子15は第一の接着剤層11中で2個以上積み重ならないので、第一、第二の端子35、45が導電性粒子15を挟み込む時に、導電性粒子15が横方向に移動しない。従って、隣接する第一、第二の端子35、45間の導電性粒子15密度が高くならず、短絡が起こらない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異方導電性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に電気部品や配線板を接続する際には異方導電性接着剤が用いられている。異方導電性接着剤はバインダーと、バインダー中に分散された導電性粒子とを有している。
基板の端子が配置された面と、電気部品の端子が配置された面の間に異方導電性接着剤を配置し、加熱押圧すると、軟化したバインダーが基板の端子と電気部品の端子の間から押し退けられ、導電性粒子が基板の端子と電気部品の端子の間に挟みこまれ、基板と電気部品が電気的に接続される。
【0003】
しかし、バインダーが押し退けられるときには、導電性粒子の一部がバインダーと一緒に押し退けられ、押し退けられた導電性粒子が基板の隣接する端子間、又は、電気部品の隣接する端子間に流れ込み、隣接する端子間が導電性粒子で短絡することがある。
また、導電性粒子が基板の端子と電気部品の端子との間から押し退けられると、基板の端子と電気部品の端子とで、導電性粒子が挟み込まれる数が少なくなり、導通信頼性も劣る。
【特許文献1】特開2006−32335号公報
【特許文献2】特開平7−230840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、短絡を起こさずに、電気部品を基板に接続可能な接着フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、それぞれ熱硬化性樹脂を含有し、互いに密着された第一、第二の接着剤層を有し、前記第一の接着剤層は、硬化が開始する硬化開始温度以下での最低粘度が、前記第二の接着剤層の、硬化が開始する硬化開始温度以下での最低粘度よりも高くされ、前記第一、第二の接着剤層を基板と電気部品側にそれぞれ向け、前記基板と前記電気部品同士を加熱押圧すると、前記電気部品が前記基板に接続される接着フィルムであって、前記第一の接着剤層には導電性粒子が分散され、前記第一の接着剤層の膜厚は、前記導電性粒子の平均粒径の2倍未満にされた接着フィルムである。
本発明は接着フィルムであって、前記第二の接着剤層の前記最低粘度は、前記導電性粒子が含有された状態の前記第一の接着剤層の前記最低粘度の0.05倍以上0.2倍以下にされた接着フィルムである。
本発明は接着フィルムであって、前記第一の接着剤層が前記最低粘度となる温度と、前記第二の接着剤層が前記最低粘度となる温度の差が10℃以下である接着フィルムである。
【0006】
図5は接着剤の粘度と温度の関係を示すグラフであり、同図の横軸は接着剤の温度を示し、縦軸は粘度(MPa)である。尚、図5の縦軸は対数表示である。
熱硬化性樹脂を含有する接着剤が昇温すると、図5に示すように、接着剤はある温度範囲までは、温度が高くなる程粘度が低下するが、ある温度(ここでは約100℃)を超えると、熱硬化性樹脂の重合が開始して接着剤が硬化するため、粘度が上昇に転じる。
【0007】
本発明で最低粘度とは、熱硬化性樹脂の重合が開始する硬化開始温度時の粘度、即ち、低下から上昇に転じる時の粘度である。
図5の符号Aは導電性粒子が分散された状態の接着剤(第一の接着剤層)の粘度と温度の関係を示し、同図の符号Nは導電性粒子が分散されていない接着剤(第二の接着剤層)の粘度と温度の関係を示している。
【0008】
第一、第二の接着剤層は熱硬化性樹脂の他に、熱可塑性樹脂等を含有しているが、熱硬化性樹脂の種類や配合量、熱可塑性樹脂の種類や配合量を変えることで、図5に示したように、第一の接着剤層の最低粘度を、第二の接着剤層の最低粘度よりも高くすることができる。
【0009】
第一の接着剤層は、少なくとも最低粘度に達する前までは、第二の接着剤層よりも粘度が高いから、少なくとも硬化開始前は、第二の接着剤層に比べて流動性が低く、第一の接着剤層に分散された導電性粒子の移動性も低い。
【0010】
第一、第二の接着剤層には、熱硬化性樹脂の重合を促進するために、硬化剤を添加することが望ましい。第一、第二の接着剤層に用いる熱硬化性樹脂の種類や配合量、硬化剤の種類や配合量を変えることで、図5に示すように、第一の接着剤層の硬化開始温度と、第二の接着剤層の硬化開始温度の差を10℃以下にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
対向する端子間から導電性粒子が押し退けられる量が少なくなるので、対向する端子間に捕捉される導電性粒子の数が増え、隣接する端子間が導電性粒子で短絡しないので、導通信頼性の高い接続体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1の符号10は本発明の接着フィルムの一例を示している。
接着フィルム10は、第一の接着剤層11と、第一の接着剤層11の表面に配置された第二の接着剤層12と、第一の接着剤層11に分散された導電性粒子15とを有している。導電性粒子15は第一の接着剤層11だけに分散されており、第二の接着剤層12には導電性粒子は分散されていない。
【0013】
ここでは、接着フィルム10の第二の接着剤層12側の面に、剥離フィルム19が密着配置されており、図2に示すように、剥離フィルム19が密着した状態の接着フィルム10を巻き取ってロール18を形成すると、第一の接着剤層11の表面が剥離フィルム19の裏面に密着する。
【0014】
図3(a)の符号3は被着体である基板の一例を示している。基板3は、例えば、LCDパネル等であって、ガラス板のような基板本体31と、基板本体31の表面上に配置された複数の第一の端子35とを有している。
【0015】
図2に示すように、ロール18から接着フィルム10を繰り出し、第一の接着剤層11を剥離フィルム19裏面から剥離させて、第一の接着剤層11の表面を露出させ、接着フィルム10を所定形状に切り出す。
【0016】
切り出した接着フィルム10の第一の接着剤層11が露出する面を、基板3の第一の端子35が露出する面に密着させ、仮貼りする(図3(b))。
切り出した接着フィルム10に剥離フィルム19が密着している場合は、仮貼り前、又は仮貼り後に、剥離フィルム19を剥離し、第二の接着剤層12表面を露出させる。
【0017】
図3(c)の符号4は基板3に接続される被着体であって、基板3よりも平面形状が小さい電気部品4を示しており、電気部品4は部品本体41と、部品本体41の一面に配置された複数の第二の端子45とを有している。
【0018】
各第一の端子35の中心位置間の距離(ピッチ)と、各第二の端子45の中心位置間の距離(バンプ間スペース)は等しくなっており、各第一の端子35の真上位置に、第二の端子45がそれぞれ位置するように、電気部品4を位置あわせし、図3(d)に示すように、電気部品4の第二の端子45が配置された側の面を、第二の接着剤層12表面に密着させ、仮固定する。
【0019】
基板3の表面と電気部品4の表面には、隣接する第一の端子35間と、隣接する第二の端子45間にそれぞれ凹部が形成されており、凹部の深さが、基板3表面と電気部品4の表面にそれぞれ突出する第一、第二の端子35、45の高さになっている。
【0020】
第一の端子35の高さは、第二の端子45の高さよりも低く、仮固定された状態では、第一の端子35間の凹部底面には第一の接着剤層11が密着しているか、離間していたとしても、第一の接着剤層11との間の距離は、第二の端子45間の凹部の底面と第二の接着剤層12との間の距離よりも短い。
【0021】
この状態で、基板3と電気部品4のいずれか一方又は両方に加熱手段を押し当て、仮固定の時よりも高い温度で加熱しながら押圧して本圧着を行うと、第一の端子35間の凹部底面は第一の接着剤層11とほぼ密着するから、第一の接着剤層11が加熱されて軟化しても、第一の接着剤層11は、対向する第一、第二の端子35、45間から、隣接する第一の端子35間に押し退けられない。
しかも、第一の接着剤層11の最低粘度は第二の接着剤層12の最低粘度よりも高いから、第一の接着剤層11はより一層隣接する第一の端子35間に流れ込み難い。
【0022】
これに対し、第二の端子45間の凹部底面は第二の接着剤層12と離間しているから、加熱によって第二の接着剤層12が軟化すると、第二の接着剤層12は対向する第一、第二の端子35、45間から隣接する第二の端子45間に押し退けられる。
【0023】
第二の接着剤層12には導電性粒子15が分散されていないか、分散されていたとしてもその密度は第一の接着剤層11よりも小さい。従って、隣接する第二の端子45間に第二の接着剤層12が押し退けられても、第二の端子45間は短絡しない。
【0024】
第二の端子45の高さは、第二の接着剤層12の膜厚と、導電性粒子15の平均粒径の合計よりも大きく、第二の端子45は第二の接着剤層12を押し退けて、先端が第一の接着剤層11に到達し、更に第一の接着剤層11を押し退けて、第一、第二の端子35、45で導電性粒子15が挟み込まれる(図4)。
【0025】
第一の接着剤層11の膜厚は導電性粒子15の粒径の2倍未満にされており、導電性粒子15は第一の接着剤層11の膜厚方向に2個以上積み重ならないから、第一、第二の端子35、45で導電性粒子15を挟み込む時に、導電性粒子15が第一、第二の端子35、45間から横方向に移動しない。
【0026】
第一、第二の端子35、45間に捕捉される導電性粒子15数は多くなるから、第一、第二の端子35、45間の導通抵抗が下がり、導電性粒子15が横方向に移動しないから、隣接する第一の端子35間や、隣接する第二の端子45間が短絡しない。
【0027】
第一、第二の端子35、45が電気的に接続された状態で更に加熱押圧を続け、第一、第二の接着剤層11、12がそれぞれ硬化開始温度以上に昇温すると、第一、第二の接着剤層11、12が、第一、第二の端子35、45の周囲を取り囲んだ状態で硬化し、電気部品4が基板3に機械的にも接続される。
【実施例】
【0028】
<接着剤の作成>
固形樹脂であるフェノキシ樹脂を溶剤(トルエン/酢酸エチル=1/1)に溶解させて固形分30重量%の溶解品を得た。
次いで、溶解品に、硬化剤と、エポキシ樹脂と、無機フィラーと、シランカップリング剤と、導電性粒子とを、フェノキシ樹脂に対する配合割合が、下記表1の「ACF」の欄に記載した配合割合になるように添加、混合し、最終的に固形分が40重量%になるようトルエンで調整した接続材料の溶解品を作成した。
【0029】
【表1】

【0030】
上記表1中、商品名「HX3941HP」は旭化成ケミカルズ(株)社製のマイクロカプセル型アミン系エポキシ硬化剤であり、商品名「EP828」はジャパンエポキシレジン(株)社製のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂であり、商品名「YP70」は東都化成社製のビスフェノールAとビスフェノールBを主骨格に含有するフェノキシ樹脂であり、商品名「FX280」は東都化成社製のフルオレン骨格フェノキシ樹脂であり、商品名「KBE403」は信越化学工業(株)社製のエポキシシランであり、商品名「AUL704」は積水化学工業(株)社製のNi/Auメッキ樹脂粒子(平均粒径4μm)である。
【0031】
2本の円柱状のステンレス棒の間に乾燥後の接続材料の膜厚がそれぞれ18μm、8μm、4μmとなるようなゲージを挟み込み、50μm厚みの剥離フィルム(帝人社製の商品名「UH−4」)上に接続材料の溶解品を乗せ、溶解品が乗せられた剥離フィルムを上記ステンレス棒の間を通した後、温度90℃のオーブンに3分間放置し溶剤を揮発させる事で、3種類の膜厚18μm、8μm、4μmの接着剤層(ACF)を形成した。
【0032】
次に、配合割合を、上記表1の「NCF−1」、「NCF−2」の欄に記載したものに変え、膜厚を8μmと14μmに変えた以外は、上記ACFと同様の方法で接着剤層(NCF−1、NCF−2)を作成した。
【0033】
<粘度測定>
上記表1のACF、NCF−1、NCF−2に示す配合割合で作成した接着剤層をそれぞれ重ね合わせて100μm厚にした物を用いて、応力制御型レオメーター(Haake社製RS150)を用い、最低粘度と、最低粘度に到達するときの温度(到達温度)とを測定した。尚、コーンとしては直径8mm、角度2度のものを使用し、測定範囲は30℃〜250℃とした。測定結果を下記表2に記載する。
【0034】
【表2】

【0035】
上記表1と表2から分かるように、導電性粒子15の有無に関わらず、導電性粒子15以外の組成が同じACFと、NCF−1は、最低粘度と到達温度が同じであったこれに対し、NCF−2は、ACFとNCF−1と到達粘度は同じであるが、最低粘度が小さかった。
【0036】
NCF−2は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と硬化剤の配合割合、熱可塑性樹脂であるフェノキシ樹脂の種類と配合割合、無機フィラーの配合割合が、ACF、NCF−1とは異なることから、熱硬化性樹脂、硬化剤、熱可塑性樹脂、無機フィラー等の接着剤成分の種類や配合量を変えることで、最低粘度を変更可能なことが分かる。
【0037】
<接着フィルムの作成>
膜厚4μmのACFと、膜厚14μmのNCF−1、NCF−2を、下記表3の組み合わせで貼り合わせて、実施例1、比較例2の接着フィルムを作成した。
【0038】
【表3】

【0039】
膜厚18μmのACFを比較例1の接着フィルムとした。更に、ACF中の導電性粒子の密度を、1mm2当たり8000個から、3000個に変えた以外は、実施例1と同じ構成で実施例2の接着フィルムを作成した。
【0040】
<実装工程>
被着体として、ICチップ(評価用IC、材質:シリコン、寸法:6.0mm×6.0mm、厚さ:0.4mm、バンプ:金スタッド、バンプ厚:20μm、バンプ面積:60μm×60μm、バンプ間スペース20μm、ピッチ:80μm)と、ITOコーティングガラス(評価用ITOガラス、コーニング社製、品名:1737F、ガラスサイズ:縦50mm×横30mm×厚さ0.5mm、ITOパッドサイズ:60μm×60μm、ピッチ:80μm)を用意した。
【0041】
まずITOコーティングガラス上で、7.0mm×7.0mmにカットされた実施例1、2、比較例1、2の接着フィルムに、緩衝材(70μm厚テフロン)を介して圧着機(ツールサイズ8.0mm×8.0mm)を押し当て、80℃、1MPa、2秒間の仮圧着条件で仮貼りした。
【0042】
続いてICチップをアライメントしてITOコーティングガラス上に仮固定したのち、仮貼りに用いたものを同じ圧着機を、緩衝材(厚さ70μmテフロン)を介してICチップに押し当て、190℃、3MPa、10秒間の本圧着条件で、加熱押圧し、ICチップをITOコーティングガラスに接続し、実施例1、2、比較例1、2の接続体を得た。
尚、バンプとITOパッドは表面の大きさが60μm×60μmであるから、バンプとITOパッドが接続される接続面積は3600μm2である。
【0043】
これら4種類の接続体について、下記「粒子捕捉数」と「捕捉効率」と、「導通抵抗」と、「ショート発生率」を調べた。
【0044】
[粒子捕捉数]
本圧着後に、20個のバンプについて、各バンプの下に残っている導電性粒子を数えた。
【0045】
[捕捉効率]
捕捉効率は、本圧着後に何個の粒子がどれだけ捕捉されたかをパーセンテージで示した値である。具体的には、ICチップを仮固定した際に、20個のバンプについて、各バンプ下に存在する導電性粒子の数(平均)を調べ、その導電性粒子の数と、本圧着後の粒子捕捉数(平均)とを下記式(1)に代入し、求めた。
【0046】
捕捉効率(%)=(本圧着後の粒子捕捉数)/(ICチップ仮固定後にICチップバンプ下に存在する粒子数)×100……式(1)
[導通抵抗]
本圧着後に、ICチップのバンプとITOパッド間の導通抵抗(単位:Ω)を求めた。「粒子捕捉数」の最大値、最小値、平均と、「捕捉効率」と、「導通抵抗」の測定結果を下記表4に記載する。
【0047】
【表4】

【0048】
上記表4から明らかなように、実施例1、2は比較例1、2に比べて捕捉効率が高かった。実施例2は、導電性粒子密度が実施例1や比較例1、2の半分しかないにも関わらず、粒子捕捉数や導通抵抗が比較例1、2と同程度であった。
【0049】
以上のことから、第一の接着剤層の最低粘度を第二の接着剤層の最低粘度よりも高くし、かつ、第一の接着剤層の膜厚を導電性粒子の粒径の2倍未満程度と小さくすれば、導電性粒子の密度を高くしなくても、高い導通信頼性が得られることが分かる。
【0050】
[ショート発生率]
実施例1、2、比較例1、2の接着フィルムを用いて、上記ICチップとITOコーティングガラスを接続する際に、バンプとITOパッドとが水平方向に10μm離れるようにミスアライメントした以外は、上記「実装工程」と同じ条件で接続体を作成した。隣接するITOパッド間に30Vの電圧を加え絶縁抵抗を測定し、絶縁抵抗が1.0×10-6Ω以下をショートとし、ショート発生数を数えた(初期)。
【0051】
接続体を導電状態で85℃、湿度85%の環境下で500時間放置した後、ショート発生数を数えた(高温高湿放置)。200箇所でショート発生数を数え、初期と高温高湿放置後のショート発生率(%)を求めた。その結果を下記表5に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
上記表5から明らかなように、実施例1、2は、比較例1、2に比べて初期も高温高湿後のショート発生率が少なく、導電性粒子が対向する端子間から、隣接する端子間に移動する量が少ないことが分かる。
【0054】
以上は、フィルム状に成形した第一、第二の接着剤層11、12を貼りあわせて接着フィルム10を作成したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、第二の接着剤層12の材料を溶剤に溶解又は分散させた塗液を作成し、該塗液を第一の接着剤層11の表面に塗布後、乾燥すれば、第二の接着剤層12を第一の接着剤層11表面に密着配置することができる。
【0055】
更に、第一の接着剤層11の材料と、導電性粒子15を溶剤に溶解又は分散させた塗液を作成し、該塗液を第二の接着剤層12の表面に塗布後、乾燥すれば、第二の接着剤層12の表面に第一の接接着剤層11を密着配置することができる。
第一、第二の接着剤層11、12は、同じ剥離フィルム19の表面と裏面に密着する場合に限定されず、それぞれ別々の剥離フィルム19に密着させてもよい。
【0056】
接着フィルム10を仮貼りする被着体は基板3に限定されず、電気部品4の第二の端子45が配置された側の面を、第二の接着剤層12表面に密着させて仮貼りしてから、第一の接着剤層12の表面に、基板3の第一の端子35が配置された面を密着させて仮固定を行ってもよい。
【0057】
接着剤をフィルム化せず、導電性粒子15が分散されたペースト状の接着剤を、基板3に直接塗布して第一の接着剤層11を形成してから、第一の接着剤層11表面に第二の接着剤層12を密着配置してもよい。
【0058】
更に、電気部品4にペースト状の接着剤を塗布して第二の接着剤層12を形成した後、第二の接着剤層12表面に第一の接着剤層11を密着配置してもよい。
第一、第二の接着剤層11、12の材料は、上記表1に記載されたものに限定されない。例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂以外にも、ウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等種々のものを用いることができる。
【0059】
熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂以外にも、熱可塑性ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等種々のものを用いることができる。
硬化剤も特に限定されず、例えば熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、マイクロカプセル化されたアミン系硬化剤を用いればエポキシ樹脂がアニオン重合し、オニウム塩やオキセタンを硬化剤に用いればエポキシ樹脂がカチオン重合し、また熱硬化性ポリエステルの場合は有機過酸化物を硬化剤に用いればラジカル重合する。
【0060】
熱硬化性樹脂の種類によっては、第一、第二の接着剤層11、12に硬化剤を添加する必要も無いが、硬化剤を添加した方が硬化速度が速くなる。
導電性粒子15も特に限定されず、金属粒子、樹脂粒子の表面に金属メッキ層が形成されたもの等種々のものを用いることができる。
【0061】
第一、第二の接着剤層11、12には、特に、熱可塑性樹脂や、シランカップリング剤や無機フィラーを添加する必要がないが、熱可塑性樹脂を添加した方が第一、第二の接着剤層11、12の接着力が向上し、シランカップリング剤を添加した方が第一、第二の接着剤層11、12と被着体の密着性が向上し、無機フィラーを添加した方が難燃性や隣接する端子間の絶縁性が向上する。
【0062】
更に、加熱によって粘度が低下するのであれば、第一、第二の接着剤層11、12の両方に熱硬化性樹脂を含有させる必要も無く、例えば、第一、第二の接着剤層11、12のいずれか一方又は両方に熱硬化性樹脂を含有させず、樹脂成分として熱可塑性樹脂だけを含有させてもよい。
第一の接着剤層11の膜厚は特に限定されないが、導電性粒子15の平均粒径の2倍未満が望ましく、特に導電性粒子15の平均粒径の50%以上150%以下が望ましい。
【0063】
第一、第二の接着剤層11、12は、DSC(示差走査熱分析)の発熱ピーク温度領域が60℃〜140℃であることが望ましい。60℃よりも低い場合は、接着フィルム10を被着体に仮貼り、又は仮固定する際に、第一、第二の接着剤層11、12が硬化してしまう虞があり、140℃よりも高い場合は、本圧着に要する時間が20秒を超え、量産性が悪くなる。尚、DSCの発熱ピークが出現する温度は硬化開始温度であり、即ち、本発明では硬化開始温度が60℃以上140℃以下であることが望ましい。
【0064】
第一、第二の接着剤層11、12で硬化開始温度に差がありすぎると、第一、第二の端子35、45が導電性粒子15を挟み込む前に、どちらかの接着剤層が硬化してしまう虞があるので、第一の接着剤層11の硬化開始温度と、第二の接着剤層12の硬化開始温度の差は、10℃以下が望ましい。
【0065】
第一、第二の接着剤層11、12の最低粘度は、10Pa・s以上100000Pa・s以下が望ましい。10Pa・s未満の場合は、粘度が低下したときに気泡を巻き込みやすく、100000Pa・sより高い場合は被着体を押し込めず、良好な接続抵抗を得られない場合がある。
【0066】
第二の接着剤層12の最低粘度は、第一の接着剤層11の最低粘度よりも低ければ特に限定されないが、第一の接着剤層11の最低粘度の0.05倍以上0.2倍以下であることがより望ましい。
【0067】
本発明の接着フィルム10を用いて接続する被着体は特に限定されず、例えば、電気部品4は半導体チップの他にも、抵抗素子、COF(Chip On Film)デバイス、TAB(Tape Automated Bonding)デバイス等がある。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の接着フィルムの一例を示す断面図
【図2】接着フィルムをロールに巻き取った状態を示す側面図
【図3】(a)〜(d):電気部品を基板に接続する工程を説明する断面図
【図4】電気部品が基板に接続された状態を示す断面図
【図5】粘度と温度の関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0069】
3……基板 4……電気部品 10……接着フィルム 11……第一の接着剤層 12……第二の接着剤層 15……導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を含有し、互いに密着された第一、第二の接着剤層を有し、
前記第一の接着剤層は、硬化が開始する硬化開始温度以下での最低粘度が、
前記第二の接着剤層の、硬化が開始する硬化開始温度以下での最低粘度よりも高くされ、
前記第一、第二の接着剤層を基板と電気部品側にそれぞれ向け、前記基板と前記電気部品同士を加熱押圧すると、前記電気部品が前記基板に接続される接着フィルムであって、
前記第一の接着剤層には導電性粒子が分散され、
前記第一の接着剤層の膜厚は、前記導電性粒子の平均粒径の2倍未満にされた接着フィルム。
【請求項2】
前記第二の接着剤層の前記最低粘度は、前記導電性粒子が含有された状態の前記第一の接着剤層の前記最低粘度の0.05倍以上0.2倍以下にされた請求項1記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記第一の接着剤層が前記最低粘度となる温度と、前記第二の接着剤層が前記最低粘度となる温度の差が10℃以下である請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の接着フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−7443(P2009−7443A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168964(P2007−168964)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】