説明

接着剤、それを用いたタイヤコード、及び、接着剤の製造方法

【課題】熱処理による発煙量を抑えることができ、かつ、水溶性を維持した接着剤、およびそれを用いたタイヤコード及ぶ接着剤の製造方法を提供する。
【解決手段】接着剤は、レゾルシンモノマー2〜9重量%を含むレゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、アンモニアと、ゴムラテックスとを含み、pH7〜11に調整されている。レゾルシンホルムアルデヒド樹脂はレゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーを分子量調整剤を添加して反応させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤、それを用いたタイヤコード、及び、接着剤の製造方法に関する。特に、繊維とゴムとの接着に好適な接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル繊維等からなるタイヤコードと、タイヤ用ゴムとの接着には、レゾルシン、ホルムアルデヒド及びゴムラテックスを含むRFL(レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス)接着剤が用いられている。特に、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を用いることにより、接着力が向上することが知られている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭63−249784号公報
【特許文献1】特公昭63−61433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、未反応のレゾルシンモノマーを多く含んでしまう。そのため、タイヤコードにRFL接着剤を付着させて熱処理すると大量の煙が発生してしまい、環境保全の観点から好ましくなかった。未反応のレゾルシンモノマー量を減らすためには、接着剤に含まれるレゾルシンホルムアルデヒド樹脂そのものの量を減らす、蒸留によりレゾルシンモノマーを除いたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を抽出する、レゾルシンとホルムアルデヒドの反応を進めるといった対策が考えられる。
【0004】
しかし、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂量を減らすと接着力が低下してしまう、蒸留により抽出する手法では手間とコストがかかる、レゾルシンとホルムアルデヒドの反応を進めると水溶性が低下し、水性接着剤として使用し難い、接着力が低下する等の新たな課題を生じた。
【0005】
そこで、本発明は、熱処理による発煙量を抑えることができ、かつ、水溶性を維持した接着剤、それを用いたタイヤコード及び接着剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る接着剤は、レゾルシンモノマー2〜9重量%を含むレゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、アンモニアと、ゴムラテックスとを含み、pH7〜11に調整されていることを特徴とする。
【0007】
このような接着剤によれば、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂に含まれるレゾルシンモノマー量が低く抑えられているため、熱処理による発煙量を抑えることができる。しかも、接着剤は、アンモニアを含み、pH7〜11に調整されているため、水溶性を維持することできる。
【0008】
アンモニアは、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂に含まれることができる。この場合、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、pH7〜10に調整されていることが好ましい。これによれば、接着剤の水溶性を向上できる。
【0009】
接着剤は、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂を20〜60重量%含むことが好ましい。これによれば、接着剤の接着力を向上できる。
【0010】
更に、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーを分子量調節剤を添加して反応させたものであることが好ましい。これによれば、レゾルシンモノマー量を低く抑えたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を容易に得ることができる。
【0011】
本発明に係るタイヤコードは、このような接着剤を付着させたことを特徴とする。これによれば、接着剤に含まれるレゾルシンホルムアルデヒド樹脂のレゾルシンモノマー量が低く抑えられているため、タイヤコードを熱処理した際の発煙量を抑えることができる。
【0012】
本発明に係る接着剤の製造方法は、レゾルシンモノマー2〜9重量%を含むレゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、アンモニア水と、ゴムラテックスとを混合し、pH7〜11に調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱処理による発煙量を抑えることができ、かつ、水溶性を維持した接着剤、それを用いたタイヤコード及び接着剤の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本実施形態に係る接着剤は、レゾルシン、ホルムアルデヒド及びゴムラテックスを含むRFL(レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス)接着剤である。接着剤は、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、アンモニアと、ゴムラテックスとを含む。
【0015】
レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーとを縮合反応させた縮合物である。レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、未反応のレゾルシンモノマー量を2〜9重量%含む。
【0016】
レゾルシンモノマー量が2重量%未満となると、熱処理による発煙量は抑えられるものの、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂を製造する過程において、その物性制御が非常に困難になってしまう。例えば、製造の作業性を維持するために物性を制御することで、製造コストが増大するおそれがある。一方、レゾルシンモノマー量が9重量%を越えると、熱処理による発煙量が増大してしまい、環境保全の観点から好ましくない。より好ましいレゾルシンモノマー量は3〜7重量%であり、更に好ましいレゾルシンモノマー量は4〜6重量%である。
【0017】
レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーとを酸性触媒により水中で反応させて縮合させることにより得られる。レゾルシンモノマー量を抑え、高分子化されたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、レゾルシンモノマーに対するホルムアルデヒドモノマーの配合量を高めることにより生成できる。例えば、レゾルシンモノマーに対するホルムアルデヒドモノマーのモル比を低くし、レゾルシンモノマーに対するホルムアルデヒドモノマーのモル比、レゾルシン/ホルムアルデヒドが、1.0/0.2〜1.0/0.8となるように、レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーを混合することができる。レゾルシン/ホルムアルデヒドは、1.0/0.3〜1.0/0.7とすることがより好ましい。
【0018】
あるいは、レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーに分子量調節剤を添加して反応させることによっても、レゾルシンモノマー量を抑えたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を生成することができる。これによれば、蒸留、精製等の追加工程を行うことなく、レゾルシンモノマー量が2〜9重量%に抑えられたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を容易に得ることができる。
【0019】
分子量調節剤としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等を用いることができる。特に、塩化カルシウムは、取り扱い易く、モノマー量低減効果が高く、好ましい。
【0020】
分子量調節剤は、レゾルシンモノマー1.0モルに対し、0.1〜10.0モル添加することが好ましい。より好ましい添加量は、レゾルシンモノマー1.0モルに対して0.5〜6.0モルであり、更に好ましい添加量は、レゾルシンモノマー1.0モルに対して2.0〜5.0モルである。
【0021】
分子量調節剤を用いる場合、レゾルシンモノマーに対するホルムアルデヒドモノマーのモル比、レゾルシン/ホルムアルデヒドは、1.0/0.2〜1.0/0.8となるように、レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーを混合することができる。レゾルシン/ホルムアルデヒドは、1.0/0.3〜1.0/0.7とすることがより好ましい。
【0022】
いずれの方法の場合にも、酸性触媒としては、塩酸や硫酸等を用いることができる。反応温度、反応時間は、分子量調節剤を用いない場合には、15〜30℃、1〜100時間とすることが好ましい。より好ましくは、20〜30℃、10〜80時間とする。分子量調節剤を用いる場合、反応温度は、0〜100℃、反応時間は、0.1〜10時間とすることが好ましい。より好ましくは、30〜70℃、0.5〜5時間とする。
【0023】
更に、得られたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を、レゾルシンの二量体や三量体を洗浄するためのレゾルシン洗浄液で洗浄してもよい。レゾルシン洗浄液としては、例えば、塩化カルシウム水溶液を用いることができる。塩化カルシウム水溶液の濃度は35〜45重量%とすることができる。
【0024】
レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、20〜60重量%含まれていることが好ましい。接着剤に含まれるレゾルシンホルムアルデヒド樹脂そのものの量を低下させると、未反応のレゾルシンモノマー量も低下し、発煙量は低減されるものの、接着力が低下するおそれがある。接着剤は、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂を20重量%以上含むことにより、接着力を非常に高めることができる。一方、接着剤が、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂を60重量%を越えるほど含んでも、接着力の大幅な増加は見られず、コストの増大を招くおそれがある。接着剤は、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂を30〜45重量%含むことがより好ましく、35〜43重量%含むことが更に好ましい。
【0025】
ゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン共重合体ラテックス等を用いることができる。ゴムラテックスは、40〜80重量%含まれていることが好ましい。接着剤は、ゴムラテックスを40〜80重量%含むことにより、タイヤコードとゴムとの接着を確保できる。接着剤は、ゴムラテックスを55〜70重量%含むことがより好ましい。
【0026】
接着剤は、アンモニアを含み、pH7〜11に調整されている。これにより、接着剤は水溶性を維持することができる。pHが7未満であると、接着剤が固化してしまう。pHが11を越えると、接着性能が悪化してしまう。接着剤は、pH8〜10に調整されていることがより好ましく、pH9〜10に調整されていることが更に好ましい。接着剤は、pH調整のために、アンモニアに加えて、苛性ソーダ(NaOH)等を含むこともできる。
【0027】
レゾルシンホルムアルデヒド樹脂とゴムラテックスに、アンモニア水を添加し、混合することにより、接着剤はアンモニアを含むことができる。あるいは、アンモニアを含むレゾルシンホルムアルデヒド樹脂とゴムラテックスとを混合することにより、接着剤はアンモニアを含むことができる。例えば、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂にアンモニア水を添加して蒸留する(以下「アンモニア処理」という)ことにより、アンモニアを含むレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を生成できる。あるいは、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂とアンモニア水とを攪拌することによっても、アンモニアを含むレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を生成できる。
【0028】
この場合、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、pH7〜10に調整されていることが好ましい。レゾルシンホルムアルデヒド樹脂のpHを7〜10とすることにより、接着剤の水溶性を向上させることができる。レゾルシンホルムアルデヒド樹脂のpHは8〜9であることがより好ましい。
【0029】
使用するアンモニア水の濃度は、1〜35重量%であることが好ましい。アンモニア水の濃度が1〜35重量%であると、アンモニア水の配合環境上、好ましい。より好ましいアンモニア水の濃度は、20〜32重量%である。更に、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、レゾルシンモノマー、ホルムアルデヒドモノマー、微量の分子量調整剤(例えば、塩化カルシウム等)、溶剤(例えば、MEK:メチルエチルケトン等)等を含むことができる。
【0030】
このように接着剤は、レゾルシンモノマー2〜9重量%を含むレゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、アンモニア水と、ゴムラテックスとを混合して、pH7〜11に調整することにより製造できる。アンモニア水を混合するタイミングは限定されず、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、ゴムラテックスと、アンモニア水とを同時に混合してもよく、最初に、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂とアンモニア水とを混合してもよい。
【0031】
更に、接着剤は、レゾルシンモノマー、ホルマリンモノマー等を含むことができる。例えば、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、アンモニア水と、ゴムラテックスに、更に、レゾルシンモノマーとホルマリンモノマーを混合することにより、接着剤を製造できる。この場合も、レゾルシンモノマーとホルマリンモノマーを混合するタイミングは限定されない。
【0032】
このような接着剤は、繊維とゴムとの接着に用いることができる。ゴムに繊維を接着することによりゴムを補強できる。例えば、タイヤ、コンベヤベルト、ホース等に用いられるゴムに、本実施形態の接着剤を用いて繊維を接着させることができる。
【0033】
繊維の種類は限定されず、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリケトン等を用いることができる。繊維の形態も限定されず、フィラメント、撚糸、コード、織物、不織物等の形態の繊維を用いることができる。
【0034】
特に、接着剤はタイヤコードの製造に好適に使用できる。タイヤコードは、例えば、2本の1670dtexのポリエステル繊維を、撚り数40回/10cmで撚ることにより、コードとしたものを用いることができる。
【0035】
接着剤は、接着剤を含む水溶液(以下「接着剤水溶液」という)に調整されて使用される。接着剤水溶液の濃度は、5〜30重量%であることが好ましい。接着剤水溶液の濃度は、10〜25重量%であることがより好ましく、15〜20重量%であることが更に好ましい。
【0036】
繊維を接着剤水溶液に浸漬したり、繊維に接着剤水溶液を塗布したりすることにより、繊維に接着剤水溶液を付着させる。接着剤水溶液を付着させた繊維は、乾燥され、熱処理される。乾燥は、例えば、100〜200℃で5〜200秒間行うことができる。乾燥温度は、140〜190℃とすることがより好ましい。熱処理は、例えば、200〜270℃で5〜200秒間行うことができる。熱処理温度は、220〜260℃とすることがより好ましい。このようにして、接着剤を付着させたタイヤコードを得ることができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の接着剤によれば、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂に含まれるレゾルシンモノマー量が低く抑えられているため、熱処理による発煙量を抑えることができる。しかも、接着剤は、アンモニアを含み、pH7〜11に調整されているため、水溶性を維持することできる。そのため、水性接着剤として良好に使用でき、高い接着力を得ることができる。即ち、熱処理による発煙量の低下、高い水溶性、高い接着力を、比較的低コストで同時に実現することができる。特にこのような接着剤を付着させたタイヤコードは、タイヤコードを熱処理した際の発煙量を抑えることができる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
〔接着剤の製造方法〕
(実施例1)レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーを、表1に示すモル比で配合し、酸性触媒(塩酸)により縮合させてレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を生成した。反応温度は25℃、反応時間は48時間とした。得られたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、レゾルシンモノマーと、ホルムアルデヒドモノマーと、アンモニア水と、ゴムラテックス(ビニルピリジン)とを表1に示す配合で混合した。尚、アンモニア水は、接着剤に含まれるアンモニア量が表1に示す値となるように配合した。
【0040】
(実施例2〜4)レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーを、表1に示すモル比で配合し、酸性触媒(塩酸)により縮合させてレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を生成した。但し、実施例3,4は、分子量調節剤(塩化カルシウム)も添加した。実施例2の反応温度、反応時間は実施例1と同様とした。実施例3,4は、反応温度50℃、反応時間3時間とした。
【0041】
得られたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂にアンモニア水を添加して蒸留し、アンモニアを含むレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を生成した。尚、アンモニア水は、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂のpHが表1に示す値となるように配合した。
【0042】
得られたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、レゾルシンモノマーと、ホルムアルデヒドモノマーと、ゴムラテックス(ビニルピリジン)とを表1に示す配合で混合した。実施例2,4は、更に苛性ソーダも配合した。実施例3は、更にアンモニア水を、接着剤に含まれるアンモニア量が表1に示す値となるように配合した。
【0043】
(比較例1,2)レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーを、表1に示すモル比で配合し、酸性触媒(塩酸)により縮合させてレゾルシンホルムアルデヒド樹脂を生成した。得られたレゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、レゾルシンモノマーと、ホルムアルデヒドモノマーと、苛性ソーダと、ゴムラテックス(ビニルピリジン)とを表1に示す配合で混合した。
【0044】
〔タイヤコードの製造方法〕
ポリエステルのタイヤコード(PET1670dtex/2、撚り数40回/10cm:2本の1670dtexのポリエステル繊維を、撚り数40回/10cmで撚ったもの)を準備した。接着剤を20重量%含む接着剤水溶液を調整した。接着剤水溶液に、準備したタイヤコードを浸漬して引き上げ、タイヤコードに接着剤水溶液を付着させた。
【0045】
接着剤水溶液が付着したタイヤコードを、140℃で100秒間乾燥した。その後、熱処理機を用いて、接着剤が付着したタイヤコードを、1kg/本の張力(コードテンション)をかけ、245℃で90秒間熱処理し、接着剤が付着されたタイヤコードを製造した。
【0046】
〔評価方法〕
レゾルシンホルムアルデヒド樹脂に含まれるレゾルシンモノマー量を、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー:Gel Permeation Chromatography)により測定した。レゾルシンホルムアルデヒド樹脂及び接着剤のpHを、pHメーターにより測定した。
【0047】
得られた接着剤の接着力を、JIS K6301に従って評価した。接着力は、比較例2の接着力を指数にして100%とし、示した。又、タイヤコード製造工程における熱処理時の発煙量を目視により評価した。評価は3名の試験官により行い、「C:煙がよく見える」、「B:注意深く見ると煙が見える」、「A:ほとんど煙が見えない(かすかに見える)」、「S:全く煙が見えない」の4段階で評価した。表1に、配合及び評価結果を示す。
【表1】

【0048】
実施例1〜4の接着剤は、いずれもアンモニアを含み、pHが7〜11の範囲内に調整されていた。そのため、実施例1〜4の接着剤は、接着剤水溶液を調整する際に高い水溶性を示した。又、実施例1〜4の接着剤は、接着力も高かった。更に、実施例1〜4の接着剤は、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂に含まれるレゾルシンモノマー量が2〜9重量%の範囲内に抑えられていた。そのため、実施例1〜4の接着剤は、熱処理時の発煙量が非常に少なかった。このように、実施例1〜4の接着剤は、熱処理による発煙量を抑えることができ、かつ、水溶性を維持することができ、接着力も十分であった。
【0049】
一方、比較例1,2の接着剤は、アンモニアを含んでいないため、水溶性が低かった。特に、比較例1の接着剤は、接着剤水溶液を調整する際に、接着剤に含まれるレゾルシンホルムアルデヒド樹脂が沈殿してしまった。又、比較例2の接着剤は、レゾルシンホルムアルデヒド樹脂に含まれるレゾルシンモノマー量が多く、発煙量が非常に多かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシンモノマー2〜9重量%を含むレゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、アンモニアと、ゴムラテックスとを含み、pH7〜11に調整されていることを特徴とする接着剤。
【請求項2】
前記アンモニアは、前記レゾルシンホルムアルデヒド樹脂に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、pH7〜10に調整されていることを特徴とする請求項2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、20〜60重量%含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
前記レゾルシンホルムアルデヒド樹脂は、レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーを分子量調節剤を添加して反応させたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の接着剤を付着させたことを特徴とするタイヤコード。
【請求項7】
レゾルシンモノマー2〜9重量%を含むレゾルシンホルムアルデヒド樹脂と、アンモニア水と、ゴムラテックスとを混合し、pH7〜11に調整することを特徴とする接着剤の製造方法。

【公開番号】特開2006−328279(P2006−328279A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156174(P2005−156174)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】