接着剤供給装置及び接着剤供給方法
【課題】接着剤の流動を防止して、均一な貼り合わせ厚を確保できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供する。
【解決手段】表示装置を構成する一対のワークS1の少なくとも一方に対して、接着剤Rを供給する接着剤供給装置であって、ワークの片面に、面状に広がるように接着剤Rを供給する供給部10と、供給部10による供給とともに、供給された接着剤Rの一部若しくは全部を仮硬化させる仮硬化処理部11と、を有している。
【解決手段】表示装置を構成する一対のワークS1の少なくとも一方に対して、接着剤Rを供給する接着剤供給装置であって、ワークの片面に、面状に広がるように接着剤Rを供給する供給部10と、供給部10による供給とともに、供給された接着剤Rの一部若しくは全部を仮硬化させる仮硬化処理部11と、を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、表示装置を構成する一対のワークを貼り合わせるために、ワークに接着剤を供給する技術に改良を施した接着剤供給装置及び接着剤供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶ディスプレイは、液晶モジュール、操作用のタッチパネル、表面を保護する保護パネル(カバーパネル)等を積層することにより構成されている。これらの液晶モジュール、タッチパネル、保護パネル等(以下、ワークと呼ぶ)は、液晶ディスプレイの筐体に組み込まれる。
【0003】
かかるワークの貼り合わせには、接着シートを用いる方法と樹脂の接着剤を用いる方法がある。接着シートは、接着剤に比べて比較的高価であり、剥離紙の剥離等の工程が必要となる。このため、近年のコスト削減の要求などから、接着剤を用いた貼り合わせが主流となってきている。
【0004】
また、積層される各ワークの間に空気の層が入ると、外光反射により、液晶の表示面の視認性が低下する。これに対処するため、各ワークを貼り合せる際に、接着剤によって各ワークの間(ギャップ)を埋めることにより、接着層を形成することが行われている。
【0005】
かかる接着層は、各ワークの間のスペーサとして、ワークを保護する機能を有する。また、液晶ディスプレイの大型化などから、ワークも大面積となり、変形が生じやすい。このため、変形を吸収してワークを保護するために、接着層に要求される厚みが増える傾向にある。たとえば、数100μm厚が要求されるようになってきている。
【0006】
かかる厚みを確保すると、必要な接着剤の量が増える。すると、ワークに供給された接着剤が流動して、ワークからはみ出しやすくなる。そこで、流動の少ない高粘度の樹脂(レジン)を用いる方法が考えられる。しかし、かかる場合にも、接着剤の塗布位置等、プロセス条件調整を厳密に行わないと、貼り合わせ時に、接着剤が所定の領域からはみ出してしまう場合がある。
【0007】
これに対処するため、あらかじめ、塗布領域を規定する外周に、高粘度のレジン、仮硬化レジン等によってシールを形成するシール方式がある(特許文献1参照)。これは、ワークに、レジンによる接着剤を枠状に塗布して仮硬化させることにより、シールを形成し、内側にレジンによる接着剤を充填して、ワークを貼り合わせるものである。このシール方式では、外周にシールがあるので、貼り合わせ時の接着剤の流動によるはみ出しを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−66711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のシール方式によって形成したシールと、内部に充填した接着剤との間には、境界が残る可能性がある。たとえば、液晶ディスプレイなどの表示装置において、ユーザの視野範囲内に、先に硬化したシールと、内部の接着剤との境界が入ると、画面の視認性が阻害される。しかし、画面の大型化の要請と、部材自体の小型化の要請から、ワークにおける視野範囲外に、シールのためのスペースを十分に確保することは困難である。
【0010】
また、たとえば、シールの接着剤の硬化を促進させ過ぎると、接着剤のクッション性や粘着性が失われる。すると、貼り合わせ時に、上下のワークが馴染まず、貼り合わせ厚の均一性を損ねる可能性がある。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、接着剤の流動を防止して、均一な貼り合わせ厚を確保できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、表示装置を構成する一対のワークの少なくとも一方に対して、接着剤を供給する接着剤供給装置において、ワークの片面に、面状に広がるように接着剤を供給する供給部と、前記供給部による供給とともに、供給された接着剤の一部若しくは全部を仮硬化させる仮硬化処理部と、を有することを特徴とする。
【0013】
以上のような発明では、ワークの片面に面状に広がるように接着剤を供給するとともに、仮硬化させるので、接着剤の流動が抑制され、塗布形状のくずれやワーク外へのはみ出しが防止される。また、供給中に仮硬化させるので、タクトタイムを短縮できる。そして、仮硬化により、接着剤のクッション性及び粘着性は維持されている。このため、貼り合わせ時の接着力に問題はなく、均一な貼り合わせ厚を確保できる。また、接着剤中に境界が存在しないので、表示装置における視野範囲の視認性は損なわれない。さらに、シールのための手段を装備した上で、シール作成用の接着剤と内部充填用の接着剤を別々に用意して供給する必要がないので、タクトタイムを短縮でき、コストも節約できる。
【0014】
他の態様は、前記仮硬化処理部は、前記供給部とともに移動可能に設けられていることを特徴とする。
以上のような態様では、供給部とともに仮硬化処理部を移動させることにより、接着剤の供給に追従させて、仮硬化を行うことができる。
【0015】
他の態様は、前記仮硬化処理部は、前記供給部から独立して移動可能に設けられていることを特徴とする。
以上のような態様では、供給部から独立して移動することにより、所望の範囲を仮硬化させることができる。また、供給された接着剤の広がり具合に応じて、適切なタイミングで仮硬化を行うことができる。
【0016】
他の態様は、前記接着剤は、電磁波の照射により硬化する接着剤であり、前記仮硬化処理部は、接着剤に電磁波を照射する照射部を有することを特徴とする。
以上のような態様では、照射部の照射により、容易に仮硬化させることができる。
【0017】
他の態様は、前記接着剤は、紫外線硬化型の樹脂であり、前記照射部は、大気中で接着剤に紫外線を照射する紫外線照射装置を有することを特徴とする。
以上のような態様では、大気中で紫外線を照射することで、酸素阻害等により仮硬化が容易に実現できる。
【0018】
他の態様は、電磁波の照射範囲が可変に設けられていることを特徴とする特徴とする。
以上のような態様では、照射範囲を変えることにより、所望の領域のみを仮硬化させることができる。
【0019】
なお、上記の各態様は、接着剤供給方法の発明としても捉えることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上、説明したように、本発明によれば、接着剤の流動を防止して、均一な貼り合わせ厚を確保できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態における接着剤供給開始時(A)、終了時(B)を示す説明図である。
【図2】図1の実施形態における貼合部の真空引き時(A)、貼り合わせ時(B)を示す説明図である。
【図3】図1の実施形態において、接着剤の塗布直後から仮硬化処理を行う態様を示す説明図である。
【図4】図1の実施形態における供給部と仮硬化処理部とを示す斜視図である。
【図5】図1の実施形態における接着剤と視野範囲との関係を示す断面図である。
【図6】図1の実施形態において、接着剤の塗布と仮硬化処理とを交互に行う態様を示す説明図である。
【図7】バー状の仮硬化処理部を用いた一実施形態において、接着剤の塗布直後から仮硬化を行う態様を示す説明図である。
【図8】バー状の仮硬化処理部を用いた一実施形態において、接着剤の塗布と仮硬化処理を交互に行う態様を示す説明図である。
【図9】仮硬化処理部によって、枠状に仮硬化処理を行う一例を示す説明図である。
【図10】仮硬化処理部によって、枠状に仮硬化処理を行う一例を示す説明図である。
【図11】仮硬化処理部によって、直線状に仮硬化処理を行う一例を示す説明図である。
【図12】仮硬化処理部によって、多数の線状(A)若しくは点状(B)に仮硬化処理を行う一例を示す説明図である。
【図13】多数の線状に接着剤を供給する供給部の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[A.構成]
まず、本実施形態の接着剤供給装置(以下、本装置と呼ぶ)の構成を説明する。本装置は、図1及び図2に示すように、接着剤供給部1、貼合部2等を有している。貼り合わせの対象となるワークS1、S2は、たとえば、液晶ディスプレイのタッチパネルと保護パネルのように、表示装置を構成するワークとする。また、ワークS1は、これらの接着剤供給部1及び貼合部2との間を、搬送部3によって移動可能に設けられている。
【0023】
本実施形態で用いる接着剤としては、たとえば、紫外線(UV)硬化樹脂を用いることが考えられる。接着剤供給部1は、供給部10、仮硬化処理部11等を有している。供給部10は、たとえば、タンクTに収容された接着剤Rを、配管を介してワークS1に滴下するディスペンサを備えている。ディスペンサは、たとえば、走査装置(図示せず)によって移動可能に構成されている。
【0024】
仮硬化処理部11は、たとえば、図示しないUV光源からのUV光を、光ファイバを介して接着剤Rに照射する照射部を有している。なお、照射部自体を光源としてもよい。
【0025】
この照射部は、たとえば、スポット的若しくは細線状に照射させる光学部材を備えている。光学部材としては、たとえば、集光レンズ、スリット等が適用可能である。照射強度は、光源の強度調整による他、かかる光学部材によって調整可能である。照射口径、照射幅等も、かかる光学部材によって調整可能である。
【0026】
照射部による照射は、酸素阻害等により接着剤Rの硬化が仮硬化(半硬化等の未硬化部分が残留した状態を広く含む)となるように、大気中で行われるように構成されている。
【0027】
硬化処理部11は、たとえば、供給部10に取り付けられており、供給部10の移動とともに接着剤Rの供給方向に移動可能に設けられている。また、仮硬化処理部11は、供給部10の移動方向(供給方向)に直交する方向に、走査装置(図示せず)によって、移動可能に設けられている。仮硬化処理部11を、走査装置若しくは昇降機構によって昇降可能に設け、この昇降によって、照射部の照射強度、照射口径、照射幅等を調整することも可能である。
【0028】
貼合部2は、図2に示すように、ワークS1の接着剤Rに対して、ワークS2を貼り合わせる貼合装置20を有している。貼合装置20は、たとえば、真空チャンバ21、押圧装置22等を有している。
【0029】
真空チャンバ21は、貼り合わされるワークS1、S2の周囲を覆い、搬送部3との間を密閉することにより、真空室を構成するチャンバである。真空チャンバ21には、真空源(減圧装置)である減圧ポンプ(図示せず)が、配管を介して接続されている。また、真空チャンバ21は、図示しない昇降機構によって、昇降可能に設けられている。
【0030】
押圧装置22は、ワークS2を押圧することにより、ワークS1に対してワークS2を貼り付ける装置である。この押圧装置22は、たとえば、ワークS2を保持する保持部、保持部を昇降させる昇降機構などにより構成されている。
【0031】
搬送部3は、ワークS1を、接着剤供給部1から貼合部2へと搬送する搬送装置30を有している。搬送装置30としては、たとえば、ターンテーブル、コンベア等及びその駆動機構が考えられる。ただし、上記各部の間でワークを搬送可能な装置であれば、どのような装置であってもよい。この搬送装置30は、載置部31に載置した状態で、ワークS1を搬送する。
【0032】
[B.作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図1〜5を参照して説明する。なお、図3における仮硬化処理部11の位置及び角度は、作用の説明のための便宜的な表示に過ぎない。
【0033】
まず、図1に示すように、搬送装置30は、前工程から載置部31に載置されたワークS1を、接着剤供給部1に搬送する。接着剤供給部1においては、図1(A)、図3(A)に示すように、供給部10が、ワークS1の片面に対して、面状に接着剤Rを供給する。
【0034】
たとえば、図4に示すように、ディスペンサのノズルからワークS1に接着剤Rを供給(塗布、滴下)する。このディスペンサが、走査装置によって移動することにより、ワークS1の広範な領域に、接着剤Rが行き渡るように供給を開始する。
【0035】
なお、接着剤Rは、貼り合わせのために必要な面状に塗布されればよい。たとえば、ワークの片面の全体に行き渡るように塗布してもよいし、一部に塗布されていない領域があってもよい。また、「全体に行き渡る」ように塗布する場合であっても、必ずしも、接着剤が面の縁に完全に達していなければならないわけではない。接着剤がわずかに縁に達していない部分があったとしても、全体に接着剤が行き渡っていると言ってもよい。
【0036】
たとえば、後述する図5のワークS2側のように、接着剤Rが面の縁にわずかに達していない場合でも、「全体に行き渡る」という概念に含まれる。つまり、たとえば、ワークS1に供給した接着剤Rの端が、図5のワークS2の縁と接着剤Rの端との関係のような状態となったとしても、「全体に行き渡る」と言ってもよい。
【0037】
供給部10とともに移動する仮硬化処理部11は、照射部からUV光を接着剤Rに照射して行く。たとえば、仮硬化処理部11は、供給部10とともに塗布方向に移動しながら、これに直交する方向に走査装置によって往復動する。これにより、図1(B)、図3(B)、図4に示すように、塗布済みの接着剤Rの全面に、UV光が照射されていく。
【0038】
UV光の照射は、大気中で行われるので、酸素阻害等により硬化の進行が遅くなり、適度な仮硬化状態の仮硬化部Hが得られる。このように、接着剤RをワークS1の端部まで供給しながら、供給済みの接着剤Rの全体を仮硬化部Hとする。
【0039】
その後、搬送装置30は、接着剤Rが供給されたワークS1を、貼合部2に搬送する。貼合部2においては、図2(A)に示すように、押圧装置22にワークS2を保持した真空チャンバ21が下降して、ワークS1、S2の周囲が密閉される。そして、減圧ポンプが作動することにより、真空チャンバ21内の減圧(排気)が開始する。
【0040】
真空引き完了後は、押圧装置22が下降することにより、ワークS1に対して、ワークS2が押し付けられる(図2(B))。このとき、接着剤Rの全体は、仮硬化部Hとなっているため、潰れによる流動が抑制される一方で、クッション性が維持されている。このため、貼り合わせ時の歪み等は吸収され、貼り合わせ厚の均一性を実現できる。また、仮硬化部Hは、表面の粘着性は維持されているので、ワークS2に対する接着力に問題はない。
【0041】
その後、排気路の開放等により真空破壊が行われ、真空チャンバ21が上昇することにより、貼り合わされたワークS1、S2は大気開放される。さらに、搬送装置30が、ワークS1、S2を貼合部2から次工程へと搬出する。たとえば、搬送装置30は、ワークS1、S2を、UV光の照射により接着剤Rを本硬化させる硬化部へと移動させる。
【0042】
[C.効果]
以上のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。すなわち、ワークS1の片面に面状に広がるように接着剤Rを供給するとともに、仮硬化部Hを形成させるので、接着剤Rの流動が防止される。また、接着剤Rの供給とともに仮硬化部Hを形成するので、塗布完了後に硬化処理を行う場合に比べて、タクトタイムを短縮できる。さらに、仮硬化部Hは、クッション性は維持されるので、貼り合わせ時の歪み等が吸収され、均一な接着層を形成できる。
【0043】
同じ接着剤Rを全面に供給した後、全面を仮硬化部Hとするので、たとえば、図5に示すように、ユーザの視野範囲W内に境界が残留することはなく、画面の視認性に影響がない。シール用の接着剤と内部充填用の接着剤とを別々に用意して供給する必要がないので、この点でもタクトタイムを短縮でき、コストも節約できる。
【0044】
さらに、たとえば、一般的に、真空貼り合わせを行う場合、未硬化の接着剤Rから発生するアウトガスによって、真空引きの速度が低下してしまう場合がある。しかし、本実施形態では、接着剤Rを仮硬化部Hとしているので、アウトガスの発生を抑制でき、真空引きの速度低下を防止できる。
【0045】
[D.他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。たとえば、仮硬化処理部11を、走査装置によって、供給部10とは独立に移動可能に設けることにより、接着剤Rの塗布と仮硬化とを交互に行うことも可能である。
【0046】
たとえば、図6(A)に示すように、供給部10が所定量移動して接着剤RをワークS1に塗布した後、一時停止する。そして、図6(B)に示すように、塗布済みの接着剤Rに対して、仮硬化処理部11の照射部がUV光を照射しながら移動することにより、接着剤Rを仮硬化部Hとする。
【0047】
次に、図6(C)に示すように、供給部10が所定量移動して接着剤RをワークS1に塗布した後、一時停止する。そして、図6(D)に示すように、塗布済みの接着剤Rに対して、仮硬化処理部11の照射部がUV光を照射しながら移動することにより、接着剤Rを仮硬化部Hとする。
【0048】
以上を繰り返すことにより、ワークS1への接着剤Rの供給とともに、仮硬化部Hを形成できる。これにより、接着剤Rの供給後、広がりがある程度落ち着いた状態で、仮硬化をさせることができる。
【0049】
また、図7及び図8に示すように、仮硬化処理部11に、UV光を線状に照射するバー状の照射部を用いることが考えられる。図7(A)(B)は、図3と同様に、供給部10とともに移動しながら、仮硬化処理部11によって、UV光の照射を行うものである。これにより、駆動部分を少なくしつつ、接着剤Rの塗布と仮硬化を高速で行うことができる。
【0050】
図8(A)〜(D)は、バー状の照射装置である仮硬化処理部11を、走査装置によって、供給部10から独立して移動可能に設けた一例である。この態様によれば、図6(A)〜(D)と同様に、塗布と仮硬化を交互に行うことができる。この場合にも、仮硬化のためのUV光の照射を高速で行うことができる。
【0051】
なお、図6及び図8に示すように、仮硬化処理部11を供給部10から独立して移動可能に設けた場合、若しくは仮硬化処理部11と供給部10との間隔を長くした場合、塗布と仮硬化に時間差を持たせることができる。たとえば、供給部10により連続して(一時停止なく)接着剤Rを供給するとともに、仮硬化処理部11により連続して(一時停止なく)仮硬化させるが、接着剤Rの供給開始と仮硬化処理部11による仮硬化の開始に時間差を設けることにより、接着剤Rが十分に面状に広がった後に仮硬化させることができる。
【0052】
また、図9〜図12に示すように、接着剤Rの一部に仮硬化部Hを形成して、接着剤Rの流動防止を図ることができる。たとえば、図9(A)(B)は、供給部10による接着剤の供給とともに、複数(単数でもよい)の仮硬化処理部11を、接着剤Rの塗布領域の縁に沿って移動させながら、UV光を照射する態様である。これにより、塗布領域の縁を枠状の仮硬化部として、流動を防止することができる。
【0053】
さらに、バー状の仮硬化処理部11を用いる態様もある。たとえば、図10(A)に示すように、仮硬化処理部11によるUV光の照射範囲を、接着剤Rの塗布領域の開始端と終了端においては、塗布領域の全幅に亘るように設定する。開始端と終了端の間は、図10(B)に示すように、塗布領域の両端のみを照射するように設定する。
【0054】
このような照射領域の変更は、バーの長手方向に配置された複数の光源の発光の有無若しくは照射部の発光の有無を制御することにより実現できる。また、照射範囲を選択的に変更できるシャッター、マスク等の遮蔽部を備えることによっても実現できる。これにより、接着剤Rの塗布領域の縁を枠状の仮硬化部Hとして、流動を防止することができる。
【0055】
なお、仮硬化部Hは、必ずしも枠状に形成する必要はない。図11(A)〜(D)に示すように、接着剤Rの塗布領域の少なくとも一部の縁に形成しても、流動防止効果は得られる。
【0056】
このように、電磁波の照射により仮硬化部Hを形成する領域は、非常に狭い範囲とするとが可能である。これにより、仮硬化部Hと未硬化部との境界を、図4に示した視野範囲W外とすることができる。
【0057】
さらに、図12(A)(B)に示すように、塗布領域に複数の線状、点状等に仮効果部Hを形成してもよい。これは、図4のような仮硬化処理部11の照射部が移動する毎に照射するか、図7のようなバー状の照射部の発光若しくは遮蔽のタイミングを制御することによって、実現できる。この場合も、面状に同時に供給された同一の接着剤の一部を仮硬化させるに過ぎないため、視認可能な境界は、ほとんど残らない。
【0058】
仮硬化の態様は、方形、円形、楕円形、その他の多角形、曲線円形等、特定の形状に仮硬化させたり、散点的に仮硬化させたりしてもよい。仮硬化させる領域は、必ずしも閉じた領域を構成していなくてもよい。上記のように、直線状であってもよいし、屈曲線状、曲線状であってもよい。
【0059】
なお、本発明において、「供給部による供給とともに、仮硬化させる」とは、少なくとも、接着剤の供給開始から終了までの間(供給中)に仮硬化処理が開始していればよい。接着剤は、ワークの片面に面状に供給できればよく、ワークの片面の全体であっても部分であってもよい。
【0060】
また、接着剤の供給部の構成、供給方法は、ワークの片面に面状に行き渡るように塗布できればよい。供給部を走査して線状に塗布する場合、上下、前後左右、回転等、どのように移動させるかは自由である。図13に示すように、供給部10が接着剤Rを、多数の線状に塗布するものであってもよい。この場合、独立したディスペンサを多数連ねたものでもよい。その他、ローラによって塗布する装置、スキージによって塗布する装置、スピン塗布する装置等、種々の装置が適用可能である。
【0061】
使用する接着剤の種類は、紫外線硬化型の樹脂には限定されない。電磁波や熱の照射により硬化する樹脂が一般的であるが、現在又は将来において利用可能なあらゆる接着剤に適用可能である。この場合、接着剤の種類に応じて、仮硬化処理部を、照射装置、加熱装置、乾燥装置等に変えることになる。
【0062】
また、貼合部、搬送部についても、現在又は将来において利用可能なあらゆる方法、装置が適用可能である。たとえば、貼合部について、ワークを保持する構造も、たとえば、メカチャック、静電チャック、真空チャック、粘着チャック等、どのような構造であってもよい。真空貼り合わせを行う空間も、下側の部材が昇降して密閉、開放を行う構造でも、ワークの通路のみが開閉する構造でもよい。さらに、必ずしも真空貼合装置でなくてもよく、大気中で貼り合わせを行う装置でもよい。
【0063】
搬送装置も、たとえば、ターンテーブル、コンベア、送り機構等、どのような構造であってもよい。載置部は、たとえば、サセプタ等が考えられるが、ワークを支持できる支持体として機能するものであれば、どのような材質、形状であってもよい。水平方向に支持するものには限らない。ワークの搬送方法も、載置部に載置される場合には限定されない。移動する台上に直接載置されていてもよい。なお、ワークの移動について、作業者が手作業で行ってもよい。
【0064】
また、貼り合せ対象となるワークは、カバーパネルと液晶モジュールのように、表示装置を構成するワークであって、片面に接着剤を面状に塗布して貼り合わせるものであれば、その大きさ、形状、材質等は問わない。ワークの一方に接着剤を供給する場合のみならず、双方に供給する場合にも適用可能である。この場合、双方のワークに接着剤を供給する場合、一方のワークの接着剤のみ仮硬化させても、双方のワークの接着剤を仮硬化させてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…接着剤供給部
2…貼合部
3…搬送部
10…供給部
11…仮硬化処理部
20…貼合装置
21…真空チャンバ
22…押圧装置
30…搬送装置
31…載置部
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、表示装置を構成する一対のワークを貼り合わせるために、ワークに接着剤を供給する技術に改良を施した接着剤供給装置及び接着剤供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶ディスプレイは、液晶モジュール、操作用のタッチパネル、表面を保護する保護パネル(カバーパネル)等を積層することにより構成されている。これらの液晶モジュール、タッチパネル、保護パネル等(以下、ワークと呼ぶ)は、液晶ディスプレイの筐体に組み込まれる。
【0003】
かかるワークの貼り合わせには、接着シートを用いる方法と樹脂の接着剤を用いる方法がある。接着シートは、接着剤に比べて比較的高価であり、剥離紙の剥離等の工程が必要となる。このため、近年のコスト削減の要求などから、接着剤を用いた貼り合わせが主流となってきている。
【0004】
また、積層される各ワークの間に空気の層が入ると、外光反射により、液晶の表示面の視認性が低下する。これに対処するため、各ワークを貼り合せる際に、接着剤によって各ワークの間(ギャップ)を埋めることにより、接着層を形成することが行われている。
【0005】
かかる接着層は、各ワークの間のスペーサとして、ワークを保護する機能を有する。また、液晶ディスプレイの大型化などから、ワークも大面積となり、変形が生じやすい。このため、変形を吸収してワークを保護するために、接着層に要求される厚みが増える傾向にある。たとえば、数100μm厚が要求されるようになってきている。
【0006】
かかる厚みを確保すると、必要な接着剤の量が増える。すると、ワークに供給された接着剤が流動して、ワークからはみ出しやすくなる。そこで、流動の少ない高粘度の樹脂(レジン)を用いる方法が考えられる。しかし、かかる場合にも、接着剤の塗布位置等、プロセス条件調整を厳密に行わないと、貼り合わせ時に、接着剤が所定の領域からはみ出してしまう場合がある。
【0007】
これに対処するため、あらかじめ、塗布領域を規定する外周に、高粘度のレジン、仮硬化レジン等によってシールを形成するシール方式がある(特許文献1参照)。これは、ワークに、レジンによる接着剤を枠状に塗布して仮硬化させることにより、シールを形成し、内側にレジンによる接着剤を充填して、ワークを貼り合わせるものである。このシール方式では、外周にシールがあるので、貼り合わせ時の接着剤の流動によるはみ出しを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−66711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のシール方式によって形成したシールと、内部に充填した接着剤との間には、境界が残る可能性がある。たとえば、液晶ディスプレイなどの表示装置において、ユーザの視野範囲内に、先に硬化したシールと、内部の接着剤との境界が入ると、画面の視認性が阻害される。しかし、画面の大型化の要請と、部材自体の小型化の要請から、ワークにおける視野範囲外に、シールのためのスペースを十分に確保することは困難である。
【0010】
また、たとえば、シールの接着剤の硬化を促進させ過ぎると、接着剤のクッション性や粘着性が失われる。すると、貼り合わせ時に、上下のワークが馴染まず、貼り合わせ厚の均一性を損ねる可能性がある。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、接着剤の流動を防止して、均一な貼り合わせ厚を確保できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、表示装置を構成する一対のワークの少なくとも一方に対して、接着剤を供給する接着剤供給装置において、ワークの片面に、面状に広がるように接着剤を供給する供給部と、前記供給部による供給とともに、供給された接着剤の一部若しくは全部を仮硬化させる仮硬化処理部と、を有することを特徴とする。
【0013】
以上のような発明では、ワークの片面に面状に広がるように接着剤を供給するとともに、仮硬化させるので、接着剤の流動が抑制され、塗布形状のくずれやワーク外へのはみ出しが防止される。また、供給中に仮硬化させるので、タクトタイムを短縮できる。そして、仮硬化により、接着剤のクッション性及び粘着性は維持されている。このため、貼り合わせ時の接着力に問題はなく、均一な貼り合わせ厚を確保できる。また、接着剤中に境界が存在しないので、表示装置における視野範囲の視認性は損なわれない。さらに、シールのための手段を装備した上で、シール作成用の接着剤と内部充填用の接着剤を別々に用意して供給する必要がないので、タクトタイムを短縮でき、コストも節約できる。
【0014】
他の態様は、前記仮硬化処理部は、前記供給部とともに移動可能に設けられていることを特徴とする。
以上のような態様では、供給部とともに仮硬化処理部を移動させることにより、接着剤の供給に追従させて、仮硬化を行うことができる。
【0015】
他の態様は、前記仮硬化処理部は、前記供給部から独立して移動可能に設けられていることを特徴とする。
以上のような態様では、供給部から独立して移動することにより、所望の範囲を仮硬化させることができる。また、供給された接着剤の広がり具合に応じて、適切なタイミングで仮硬化を行うことができる。
【0016】
他の態様は、前記接着剤は、電磁波の照射により硬化する接着剤であり、前記仮硬化処理部は、接着剤に電磁波を照射する照射部を有することを特徴とする。
以上のような態様では、照射部の照射により、容易に仮硬化させることができる。
【0017】
他の態様は、前記接着剤は、紫外線硬化型の樹脂であり、前記照射部は、大気中で接着剤に紫外線を照射する紫外線照射装置を有することを特徴とする。
以上のような態様では、大気中で紫外線を照射することで、酸素阻害等により仮硬化が容易に実現できる。
【0018】
他の態様は、電磁波の照射範囲が可変に設けられていることを特徴とする特徴とする。
以上のような態様では、照射範囲を変えることにより、所望の領域のみを仮硬化させることができる。
【0019】
なお、上記の各態様は、接着剤供給方法の発明としても捉えることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上、説明したように、本発明によれば、接着剤の流動を防止して、均一な貼り合わせ厚を確保できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態における接着剤供給開始時(A)、終了時(B)を示す説明図である。
【図2】図1の実施形態における貼合部の真空引き時(A)、貼り合わせ時(B)を示す説明図である。
【図3】図1の実施形態において、接着剤の塗布直後から仮硬化処理を行う態様を示す説明図である。
【図4】図1の実施形態における供給部と仮硬化処理部とを示す斜視図である。
【図5】図1の実施形態における接着剤と視野範囲との関係を示す断面図である。
【図6】図1の実施形態において、接着剤の塗布と仮硬化処理とを交互に行う態様を示す説明図である。
【図7】バー状の仮硬化処理部を用いた一実施形態において、接着剤の塗布直後から仮硬化を行う態様を示す説明図である。
【図8】バー状の仮硬化処理部を用いた一実施形態において、接着剤の塗布と仮硬化処理を交互に行う態様を示す説明図である。
【図9】仮硬化処理部によって、枠状に仮硬化処理を行う一例を示す説明図である。
【図10】仮硬化処理部によって、枠状に仮硬化処理を行う一例を示す説明図である。
【図11】仮硬化処理部によって、直線状に仮硬化処理を行う一例を示す説明図である。
【図12】仮硬化処理部によって、多数の線状(A)若しくは点状(B)に仮硬化処理を行う一例を示す説明図である。
【図13】多数の線状に接着剤を供給する供給部の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[A.構成]
まず、本実施形態の接着剤供給装置(以下、本装置と呼ぶ)の構成を説明する。本装置は、図1及び図2に示すように、接着剤供給部1、貼合部2等を有している。貼り合わせの対象となるワークS1、S2は、たとえば、液晶ディスプレイのタッチパネルと保護パネルのように、表示装置を構成するワークとする。また、ワークS1は、これらの接着剤供給部1及び貼合部2との間を、搬送部3によって移動可能に設けられている。
【0023】
本実施形態で用いる接着剤としては、たとえば、紫外線(UV)硬化樹脂を用いることが考えられる。接着剤供給部1は、供給部10、仮硬化処理部11等を有している。供給部10は、たとえば、タンクTに収容された接着剤Rを、配管を介してワークS1に滴下するディスペンサを備えている。ディスペンサは、たとえば、走査装置(図示せず)によって移動可能に構成されている。
【0024】
仮硬化処理部11は、たとえば、図示しないUV光源からのUV光を、光ファイバを介して接着剤Rに照射する照射部を有している。なお、照射部自体を光源としてもよい。
【0025】
この照射部は、たとえば、スポット的若しくは細線状に照射させる光学部材を備えている。光学部材としては、たとえば、集光レンズ、スリット等が適用可能である。照射強度は、光源の強度調整による他、かかる光学部材によって調整可能である。照射口径、照射幅等も、かかる光学部材によって調整可能である。
【0026】
照射部による照射は、酸素阻害等により接着剤Rの硬化が仮硬化(半硬化等の未硬化部分が残留した状態を広く含む)となるように、大気中で行われるように構成されている。
【0027】
硬化処理部11は、たとえば、供給部10に取り付けられており、供給部10の移動とともに接着剤Rの供給方向に移動可能に設けられている。また、仮硬化処理部11は、供給部10の移動方向(供給方向)に直交する方向に、走査装置(図示せず)によって、移動可能に設けられている。仮硬化処理部11を、走査装置若しくは昇降機構によって昇降可能に設け、この昇降によって、照射部の照射強度、照射口径、照射幅等を調整することも可能である。
【0028】
貼合部2は、図2に示すように、ワークS1の接着剤Rに対して、ワークS2を貼り合わせる貼合装置20を有している。貼合装置20は、たとえば、真空チャンバ21、押圧装置22等を有している。
【0029】
真空チャンバ21は、貼り合わされるワークS1、S2の周囲を覆い、搬送部3との間を密閉することにより、真空室を構成するチャンバである。真空チャンバ21には、真空源(減圧装置)である減圧ポンプ(図示せず)が、配管を介して接続されている。また、真空チャンバ21は、図示しない昇降機構によって、昇降可能に設けられている。
【0030】
押圧装置22は、ワークS2を押圧することにより、ワークS1に対してワークS2を貼り付ける装置である。この押圧装置22は、たとえば、ワークS2を保持する保持部、保持部を昇降させる昇降機構などにより構成されている。
【0031】
搬送部3は、ワークS1を、接着剤供給部1から貼合部2へと搬送する搬送装置30を有している。搬送装置30としては、たとえば、ターンテーブル、コンベア等及びその駆動機構が考えられる。ただし、上記各部の間でワークを搬送可能な装置であれば、どのような装置であってもよい。この搬送装置30は、載置部31に載置した状態で、ワークS1を搬送する。
【0032】
[B.作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図1〜5を参照して説明する。なお、図3における仮硬化処理部11の位置及び角度は、作用の説明のための便宜的な表示に過ぎない。
【0033】
まず、図1に示すように、搬送装置30は、前工程から載置部31に載置されたワークS1を、接着剤供給部1に搬送する。接着剤供給部1においては、図1(A)、図3(A)に示すように、供給部10が、ワークS1の片面に対して、面状に接着剤Rを供給する。
【0034】
たとえば、図4に示すように、ディスペンサのノズルからワークS1に接着剤Rを供給(塗布、滴下)する。このディスペンサが、走査装置によって移動することにより、ワークS1の広範な領域に、接着剤Rが行き渡るように供給を開始する。
【0035】
なお、接着剤Rは、貼り合わせのために必要な面状に塗布されればよい。たとえば、ワークの片面の全体に行き渡るように塗布してもよいし、一部に塗布されていない領域があってもよい。また、「全体に行き渡る」ように塗布する場合であっても、必ずしも、接着剤が面の縁に完全に達していなければならないわけではない。接着剤がわずかに縁に達していない部分があったとしても、全体に接着剤が行き渡っていると言ってもよい。
【0036】
たとえば、後述する図5のワークS2側のように、接着剤Rが面の縁にわずかに達していない場合でも、「全体に行き渡る」という概念に含まれる。つまり、たとえば、ワークS1に供給した接着剤Rの端が、図5のワークS2の縁と接着剤Rの端との関係のような状態となったとしても、「全体に行き渡る」と言ってもよい。
【0037】
供給部10とともに移動する仮硬化処理部11は、照射部からUV光を接着剤Rに照射して行く。たとえば、仮硬化処理部11は、供給部10とともに塗布方向に移動しながら、これに直交する方向に走査装置によって往復動する。これにより、図1(B)、図3(B)、図4に示すように、塗布済みの接着剤Rの全面に、UV光が照射されていく。
【0038】
UV光の照射は、大気中で行われるので、酸素阻害等により硬化の進行が遅くなり、適度な仮硬化状態の仮硬化部Hが得られる。このように、接着剤RをワークS1の端部まで供給しながら、供給済みの接着剤Rの全体を仮硬化部Hとする。
【0039】
その後、搬送装置30は、接着剤Rが供給されたワークS1を、貼合部2に搬送する。貼合部2においては、図2(A)に示すように、押圧装置22にワークS2を保持した真空チャンバ21が下降して、ワークS1、S2の周囲が密閉される。そして、減圧ポンプが作動することにより、真空チャンバ21内の減圧(排気)が開始する。
【0040】
真空引き完了後は、押圧装置22が下降することにより、ワークS1に対して、ワークS2が押し付けられる(図2(B))。このとき、接着剤Rの全体は、仮硬化部Hとなっているため、潰れによる流動が抑制される一方で、クッション性が維持されている。このため、貼り合わせ時の歪み等は吸収され、貼り合わせ厚の均一性を実現できる。また、仮硬化部Hは、表面の粘着性は維持されているので、ワークS2に対する接着力に問題はない。
【0041】
その後、排気路の開放等により真空破壊が行われ、真空チャンバ21が上昇することにより、貼り合わされたワークS1、S2は大気開放される。さらに、搬送装置30が、ワークS1、S2を貼合部2から次工程へと搬出する。たとえば、搬送装置30は、ワークS1、S2を、UV光の照射により接着剤Rを本硬化させる硬化部へと移動させる。
【0042】
[C.効果]
以上のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。すなわち、ワークS1の片面に面状に広がるように接着剤Rを供給するとともに、仮硬化部Hを形成させるので、接着剤Rの流動が防止される。また、接着剤Rの供給とともに仮硬化部Hを形成するので、塗布完了後に硬化処理を行う場合に比べて、タクトタイムを短縮できる。さらに、仮硬化部Hは、クッション性は維持されるので、貼り合わせ時の歪み等が吸収され、均一な接着層を形成できる。
【0043】
同じ接着剤Rを全面に供給した後、全面を仮硬化部Hとするので、たとえば、図5に示すように、ユーザの視野範囲W内に境界が残留することはなく、画面の視認性に影響がない。シール用の接着剤と内部充填用の接着剤とを別々に用意して供給する必要がないので、この点でもタクトタイムを短縮でき、コストも節約できる。
【0044】
さらに、たとえば、一般的に、真空貼り合わせを行う場合、未硬化の接着剤Rから発生するアウトガスによって、真空引きの速度が低下してしまう場合がある。しかし、本実施形態では、接着剤Rを仮硬化部Hとしているので、アウトガスの発生を抑制でき、真空引きの速度低下を防止できる。
【0045】
[D.他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。たとえば、仮硬化処理部11を、走査装置によって、供給部10とは独立に移動可能に設けることにより、接着剤Rの塗布と仮硬化とを交互に行うことも可能である。
【0046】
たとえば、図6(A)に示すように、供給部10が所定量移動して接着剤RをワークS1に塗布した後、一時停止する。そして、図6(B)に示すように、塗布済みの接着剤Rに対して、仮硬化処理部11の照射部がUV光を照射しながら移動することにより、接着剤Rを仮硬化部Hとする。
【0047】
次に、図6(C)に示すように、供給部10が所定量移動して接着剤RをワークS1に塗布した後、一時停止する。そして、図6(D)に示すように、塗布済みの接着剤Rに対して、仮硬化処理部11の照射部がUV光を照射しながら移動することにより、接着剤Rを仮硬化部Hとする。
【0048】
以上を繰り返すことにより、ワークS1への接着剤Rの供給とともに、仮硬化部Hを形成できる。これにより、接着剤Rの供給後、広がりがある程度落ち着いた状態で、仮硬化をさせることができる。
【0049】
また、図7及び図8に示すように、仮硬化処理部11に、UV光を線状に照射するバー状の照射部を用いることが考えられる。図7(A)(B)は、図3と同様に、供給部10とともに移動しながら、仮硬化処理部11によって、UV光の照射を行うものである。これにより、駆動部分を少なくしつつ、接着剤Rの塗布と仮硬化を高速で行うことができる。
【0050】
図8(A)〜(D)は、バー状の照射装置である仮硬化処理部11を、走査装置によって、供給部10から独立して移動可能に設けた一例である。この態様によれば、図6(A)〜(D)と同様に、塗布と仮硬化を交互に行うことができる。この場合にも、仮硬化のためのUV光の照射を高速で行うことができる。
【0051】
なお、図6及び図8に示すように、仮硬化処理部11を供給部10から独立して移動可能に設けた場合、若しくは仮硬化処理部11と供給部10との間隔を長くした場合、塗布と仮硬化に時間差を持たせることができる。たとえば、供給部10により連続して(一時停止なく)接着剤Rを供給するとともに、仮硬化処理部11により連続して(一時停止なく)仮硬化させるが、接着剤Rの供給開始と仮硬化処理部11による仮硬化の開始に時間差を設けることにより、接着剤Rが十分に面状に広がった後に仮硬化させることができる。
【0052】
また、図9〜図12に示すように、接着剤Rの一部に仮硬化部Hを形成して、接着剤Rの流動防止を図ることができる。たとえば、図9(A)(B)は、供給部10による接着剤の供給とともに、複数(単数でもよい)の仮硬化処理部11を、接着剤Rの塗布領域の縁に沿って移動させながら、UV光を照射する態様である。これにより、塗布領域の縁を枠状の仮硬化部として、流動を防止することができる。
【0053】
さらに、バー状の仮硬化処理部11を用いる態様もある。たとえば、図10(A)に示すように、仮硬化処理部11によるUV光の照射範囲を、接着剤Rの塗布領域の開始端と終了端においては、塗布領域の全幅に亘るように設定する。開始端と終了端の間は、図10(B)に示すように、塗布領域の両端のみを照射するように設定する。
【0054】
このような照射領域の変更は、バーの長手方向に配置された複数の光源の発光の有無若しくは照射部の発光の有無を制御することにより実現できる。また、照射範囲を選択的に変更できるシャッター、マスク等の遮蔽部を備えることによっても実現できる。これにより、接着剤Rの塗布領域の縁を枠状の仮硬化部Hとして、流動を防止することができる。
【0055】
なお、仮硬化部Hは、必ずしも枠状に形成する必要はない。図11(A)〜(D)に示すように、接着剤Rの塗布領域の少なくとも一部の縁に形成しても、流動防止効果は得られる。
【0056】
このように、電磁波の照射により仮硬化部Hを形成する領域は、非常に狭い範囲とするとが可能である。これにより、仮硬化部Hと未硬化部との境界を、図4に示した視野範囲W外とすることができる。
【0057】
さらに、図12(A)(B)に示すように、塗布領域に複数の線状、点状等に仮効果部Hを形成してもよい。これは、図4のような仮硬化処理部11の照射部が移動する毎に照射するか、図7のようなバー状の照射部の発光若しくは遮蔽のタイミングを制御することによって、実現できる。この場合も、面状に同時に供給された同一の接着剤の一部を仮硬化させるに過ぎないため、視認可能な境界は、ほとんど残らない。
【0058】
仮硬化の態様は、方形、円形、楕円形、その他の多角形、曲線円形等、特定の形状に仮硬化させたり、散点的に仮硬化させたりしてもよい。仮硬化させる領域は、必ずしも閉じた領域を構成していなくてもよい。上記のように、直線状であってもよいし、屈曲線状、曲線状であってもよい。
【0059】
なお、本発明において、「供給部による供給とともに、仮硬化させる」とは、少なくとも、接着剤の供給開始から終了までの間(供給中)に仮硬化処理が開始していればよい。接着剤は、ワークの片面に面状に供給できればよく、ワークの片面の全体であっても部分であってもよい。
【0060】
また、接着剤の供給部の構成、供給方法は、ワークの片面に面状に行き渡るように塗布できればよい。供給部を走査して線状に塗布する場合、上下、前後左右、回転等、どのように移動させるかは自由である。図13に示すように、供給部10が接着剤Rを、多数の線状に塗布するものであってもよい。この場合、独立したディスペンサを多数連ねたものでもよい。その他、ローラによって塗布する装置、スキージによって塗布する装置、スピン塗布する装置等、種々の装置が適用可能である。
【0061】
使用する接着剤の種類は、紫外線硬化型の樹脂には限定されない。電磁波や熱の照射により硬化する樹脂が一般的であるが、現在又は将来において利用可能なあらゆる接着剤に適用可能である。この場合、接着剤の種類に応じて、仮硬化処理部を、照射装置、加熱装置、乾燥装置等に変えることになる。
【0062】
また、貼合部、搬送部についても、現在又は将来において利用可能なあらゆる方法、装置が適用可能である。たとえば、貼合部について、ワークを保持する構造も、たとえば、メカチャック、静電チャック、真空チャック、粘着チャック等、どのような構造であってもよい。真空貼り合わせを行う空間も、下側の部材が昇降して密閉、開放を行う構造でも、ワークの通路のみが開閉する構造でもよい。さらに、必ずしも真空貼合装置でなくてもよく、大気中で貼り合わせを行う装置でもよい。
【0063】
搬送装置も、たとえば、ターンテーブル、コンベア、送り機構等、どのような構造であってもよい。載置部は、たとえば、サセプタ等が考えられるが、ワークを支持できる支持体として機能するものであれば、どのような材質、形状であってもよい。水平方向に支持するものには限らない。ワークの搬送方法も、載置部に載置される場合には限定されない。移動する台上に直接載置されていてもよい。なお、ワークの移動について、作業者が手作業で行ってもよい。
【0064】
また、貼り合せ対象となるワークは、カバーパネルと液晶モジュールのように、表示装置を構成するワークであって、片面に接着剤を面状に塗布して貼り合わせるものであれば、その大きさ、形状、材質等は問わない。ワークの一方に接着剤を供給する場合のみならず、双方に供給する場合にも適用可能である。この場合、双方のワークに接着剤を供給する場合、一方のワークの接着剤のみ仮硬化させても、双方のワークの接着剤を仮硬化させてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…接着剤供給部
2…貼合部
3…搬送部
10…供給部
11…仮硬化処理部
20…貼合装置
21…真空チャンバ
22…押圧装置
30…搬送装置
31…載置部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置を構成する一対のワークの少なくとも一方に対して、接着剤を供給する接着剤供給装置において、
ワークの片面に、面状に広がるように接着剤を供給する供給部と、
前記供給部による供給とともに、供給された接着剤の一部若しくは全部を仮硬化させる仮硬化処理部と、
を有することを特徴とする接着剤供給装置。
【請求項2】
前記仮硬化処理部は、前記供給部とともに移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の接着剤供給装置。
【請求項3】
前記仮硬化処理部は、前記供給部から独立して移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の接着剤供給装置。
【請求項4】
前記接着剤は、電磁波の照射により硬化する接着剤であり、
前記仮硬化処理部は、接着剤に電磁波を照射する照射部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤供給装置。
【請求項5】
前記接着剤は、紫外線硬化型の樹脂であり、
前記照射部は、大気中で接着剤に紫外線を照射する紫外線照射装置を有することを特徴とする請求項4記載の接着剤供給装置。
【請求項6】
電磁波の照射範囲が可変に設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の接着剤供給装置。
【請求項7】
表示装置を構成する一対のワークに対して、接着剤を供給する接着剤供給方法において、
少なくとも一方のワークの片面に、面状に広がるように接着剤を供給するとともに、供給された接着剤の一部若しくは全部を仮硬化させることを特徴とする接着剤供給方法。
【請求項8】
接着剤が面状に広がった後に仮硬化するように、接着剤がワークに接した時点と仮硬化を開始する時点とに時間差があることを特徴とする請求項7記載の接着剤供給方法。
【請求項1】
表示装置を構成する一対のワークの少なくとも一方に対して、接着剤を供給する接着剤供給装置において、
ワークの片面に、面状に広がるように接着剤を供給する供給部と、
前記供給部による供給とともに、供給された接着剤の一部若しくは全部を仮硬化させる仮硬化処理部と、
を有することを特徴とする接着剤供給装置。
【請求項2】
前記仮硬化処理部は、前記供給部とともに移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の接着剤供給装置。
【請求項3】
前記仮硬化処理部は、前記供給部から独立して移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の接着剤供給装置。
【請求項4】
前記接着剤は、電磁波の照射により硬化する接着剤であり、
前記仮硬化処理部は、接着剤に電磁波を照射する照射部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤供給装置。
【請求項5】
前記接着剤は、紫外線硬化型の樹脂であり、
前記照射部は、大気中で接着剤に紫外線を照射する紫外線照射装置を有することを特徴とする請求項4記載の接着剤供給装置。
【請求項6】
電磁波の照射範囲が可変に設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の接着剤供給装置。
【請求項7】
表示装置を構成する一対のワークに対して、接着剤を供給する接着剤供給方法において、
少なくとも一方のワークの片面に、面状に広がるように接着剤を供給するとともに、供給された接着剤の一部若しくは全部を仮硬化させることを特徴とする接着剤供給方法。
【請求項8】
接着剤が面状に広がった後に仮硬化するように、接着剤がワークに接した時点と仮硬化を開始する時点とに時間差があることを特徴とする請求項7記載の接着剤供給方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−71281(P2012−71281A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219946(P2010−219946)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】
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