説明

接着剤組成物及び弾性体の接着方法

【課題】ハードディスク装置用ガスケットに使用する接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)紫外線硬化型化合物、(B)光重合開始剤、(C)下記一般式(I)又は(II)で表されるフルオレニリデン系化合物及び(D)2〜6個のメルカプト基を有するポリチオール化合物を含有する接着剤組成物であって、(D)成分の配合量が(C)成分に対して50〜10000倍質量である、前記接着剤組成物。


(式中、R1、R2、R3、R4は、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基又はジフェニルアミノ基を示す。また、n、m、n’、m’は、0〜4の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及び弾性体の接着方法に関する。
さらに詳しくは、金属等の被着体と弾性体とを接着する組成物であって、弾性体を接着剤層を介して非着体と接着させるに際して、接着剤層の塗布状況を視認することができるうえ、紫外線照射後には無色透明となり外観を損なわず、かつ、十分な接着性を発揮する接着剤組成物、さらには、該接着剤組成物からなる制震材、該接着剤組成物からなるハードディスク装置用ガスケット、該ガスケットを用いたハードディスク装置、及び前記接着剤組成物を用いた弾性体の接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤は種々のものを接着するために用いられ、通常、透明、白色又は薄い色のものが好まれる。従って、接着剤を塗布した部分と塗布していない部分の境界が不明瞭となることや、接着剤の塗り方が不十分でかすれた部分の存在やドット状に抜けたような部分があっても認識することができず、接着が不十分となる場合があった。
例えば、コンピュータのハードディスク装置等の電子機器においては、ガスケットを使って塵の侵入を防ぐことが一般に行われ、ガスケット等の弾性材が金属製のカバー体等に接着剤層を介して接着されて用いられる。金属製のカバー体は、光を乱反射するために接着剤層を視認しにくく、さらに弾性材が黒色の場合には、さらに視認し難い。従って、接着剤層の形成が不十分であることが認識されずに、ガスケット付きのカバー体が製造されるため、不良品の発生を事前に防止することが困難となる。
【0003】
そこで、接着剤に蛍光剤を含有させ、接着剤の塗布位置、塗布量といった塗布状態を目視しやすくした蛍光性接着剤(特許文献1参照)や、接着剤に蛍光剤及び/又は畜光剤を含有させた、暗所でも接着剤が塗布されている場所と塗布されていない場所を判別できる接着剤(特許文献2参照)等が提案されている。さらには、可視光領域に吸収を持ち可視光を照射することにより消色しながらラジカルを発生する光硬化触媒を含有する接着剤組成物(特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−331438号公報
【特許文献2】特開平7−34050号公報
【特許文献3】特開平8−120227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1又は2に記載の接着剤組成物を、例えばガスケット材料等として好適に用いられる紫外線硬化性樹脂に適用すると、配合される蛍光材料等が紫外線を吸収するために、紫外線硬化性樹脂の硬化性に悪影響を及ぼす恐れがある。また、接着剤層が着色されているため、需要が低い。特許文献3に記載の接着剤組成物は、特殊な光硬化触媒を使用しなければならないという制限がある。
そこで本発明の課題は、可視光線下で接着剤層の塗布状況を視認することができるうえ、製品の提供時には接着剤層が無色となって外観を損なわない接着剤組成物であり、公知の光重合開始剤を幅広く使用でき、且つ十分な接着性を発揮し得る接着剤組成物、さらには、該接着剤組成物からなる制震材、該接着剤組成物からなるハードディスク装置用ガスケット、該ガスケットを用いたハードディスク装置、及び前記接着剤組成物を用いた弾性体の接着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、接着剤組成物に特定の2種の化合物を含有させることで上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[13]を提供するものである。
[1](A)紫外線硬化型化合物、(B)光重合開始剤、(C)下記一般式(I)又は(II)で表されるフルオレニリデン系化合物及び(D)2〜6個のメルカプト基を有するポリチオール化合物を含有する接着剤組成物であって、(D)成分の配合量が(C)成分に対して50〜10000倍質量である、前記接着剤組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基又はジフェニルアミノ基を示す。また、n、m、n’、m’は、それぞれ独立して、0〜4の整数を示す。)
[2]前記紫外線硬化型化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型化合物である、上記[1]に記載の接着剤組成物。
[3](メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型化合物が、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型化合物である、上記[2]に記載の接着剤組成物。
[4](メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型化合物が、紫外線硬化型オリゴマーである、上記[2]又は[3]に記載の接着剤組成物。
[5]紫外線硬化型オリゴマーが、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマー及びその水素添加物の中から選ばれる少なくとも1種である、上記[4]に記載の接着剤組成物。
[6]光重合開始剤が、分子内開裂型及び/又は水素引抜き型である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の接着剤組成物。
【0009】
[7]ポリチオール化合物が、水酸基2〜6個を有する多価アルコールのβ−メルカプトプロピオン酸又はβ−メルカプトブタン酸エステル化物である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[8]さらに増粘剤を、(A)成分100質量部に対して0.1〜15質量部含有する、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[9]ハードディスク装置のガスケット用である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[10]カバー体に接着剤層を介して弾性体が接着された制振材であって、接着剤層が上記[1]〜[8]のいずれかに記載の接着剤組成物からなる制振材。
[11]カバー体に接着剤層を介して弾性体が接着されたハードディスク装置用ガスケットであって、接着剤層が上記[1]〜[8]のいずれかに記載の接着剤組成物からなるハードディスク装置用ガスケット。
[12]上記[11]に記載のガスケットを用いたハードディスク装置。
[13]被着体に接着剤層を介して弾性体を接着するに際し、弾性体を形成するための弾性材組成物中に光重合開始剤を含有させ、接着剤層を形成するための接着剤組成物中に(A)紫外線硬化型化合物、(B)光重合開始剤、(C)下記一般式(I)又は(II)で表されるフルオレニリデン系化合物、及び(D)2〜6個のメルカプト基を有するポリチオール化合物を前記(C)成分に対して50〜10000倍質量含有させ、前記弾性材組成物及び前記接着剤組成物に紫外線を照射することによって接着剤組成物の色を消失させながら弾性体を被着体に接着することを特徴とする、弾性体の接着方法。
【0010】
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4、n、m、n’、m’は、前記定義の通りである。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の接着剤組成物を被着体と弾性体との接着剤として用いると、可視光線下で接着剤層の塗布状況を視認することができるが、製品の提供時(硬化後)には無色となり、外観上の問題が無い。さらに、該接着剤組成物は、被着体と弾性体とを十分な強度で接着させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、(A)紫外線硬化型化合物、(B)光重合開始剤、(C)後述する一般式(I)又は(II)で表されるフルオレニリデン系化合物及び(D)2〜6個のメルカプト基を有するポリチオール化合物を含有する接着剤組成物であって、(D)成分の配合量が(C)成分に対して50〜10000倍質量の接着剤組成物である。
以下、本発明の接着剤組成物の各成分について説明する。
【0013】
[(A)成分]
(A)成分である紫外線硬化型化合物としては、例えば、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する単量体、プレポリマー、オリゴマー、又は樹脂を用いる。
上記単量体としては、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル類、不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類、不飽和カルボン酸アミド、その他の単量体が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。また、プレポリマー及びオリゴマーとしては、ウレタン系(メタ)アクリレート、ポリエステル系(メタ)アクリレート、ポリエーテル系(メタ)アクリレート、エポキシ系(メタ)アクリレート、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートのプレポリマー及びオリゴマー、並びにそれらの水素添加物等が挙げられ、ウレタン系(メタ)アクリレートのオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートのオリゴマーが好ましい。
上記樹脂としては、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂等のアクリレート系樹脂;シロキサン等の珪素樹脂;ポリエステル;エポキシ樹脂等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0014】
前記エポキシアクリレート系樹脂は、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系樹脂を部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレート樹脂も用いることができる。
前記エポキシ樹脂としては、光硬化型エポキシ樹脂として慣用されるものを用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂のようなビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等の2官能以上の各種エポキシ樹脂が挙げられる。
【0015】
前記ウレタンアクリレート系樹脂としては、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタン樹脂を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
前記ポリエステルアクリレート系樹脂としては、多塩基酸と3価アルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル基を導入することにより得ることができる。
【0016】
以上の中でも、紫外線硬化型化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型化合物が好ましく、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型化合物がより好ましく、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類及び分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン系(メタ)アクリレートのオリゴマーやエポキシ系(メタ)アクリレートのオリゴマーがさらに好ましい。
【0017】
(反応性希釈剤)
本発明の接着剤組成物には、(A)成分として粘度の高い樹脂を用いる場合に、塗工適正を付与する目的等のため、反応性希釈剤として、少なくとも一つの液体光重合性モノビニルモノマーを含有させることができる。該接着剤組成物の粘度を低下させ、塗布を容易にするためであり、接着剤の光硬化の際に重合し得るものである。
具体的には、酢酸ビニル等のビニルエステル、アクリルモノマー、N−ビニルモノマー等が挙げられる。アクリルモノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル等が挙げられる。N−ビニルモノマーとしては、例えばN,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
接着剤組成物中の反応性希釈剤の含有量は、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。
【0018】
[(B)光重合開始剤]
(B)成分である光重合開始剤としては、公知のものを広く用いることができ、特に制限されるものではない。
例えば分子内開裂型の光重合開始剤が挙げられ、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル系光重合開始剤;2,2−ジエトキシアセトフェノン、4’−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−ドデシル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−エチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のアントラキノン系光重合開始剤;アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。
また、その他水素引き抜き型の光重合開始剤としてベンゾフェノン/アミン系光重合開始剤、ミヒラーケトン/ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン/アミン系光重合開始剤等を挙げることができる。また未反応光重合開始剤のマイグレーションを避けるため非抽出型光重合開始剤を用いることができる。例えばアセトフェノン系開始剤を高分子化したもの、ベンゾフェノンにアクリル基の二重結合を付加したものがある。
これらの光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
(B)成分である光重合開始剤の配合量に特に制限は無いが、接着剤組成物中、0.1〜10質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
【0019】
[(C)成分]
(C)成分としてのフルオレニリデン系化合物は、以下の一般式(I)又は(II)で表される化合物である。
【化3】

【0020】
上記一般式(I)及び(II)中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基又はジフェニルアミノ基を示す。これらの中でも、紫外線照射前後の色の変化をより明確に確認し易いという観点から、ジフェニルアミノ基が好ましい。
炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
また、n、m、n’、m’は、それぞれ独立して、0〜4の整数を示し、全て0であるか又は全て1であることが好ましい。
また、上記フルオレニリデン系化合物は、接着剤組成物に可溶な状態であることが、分散性及び保存安定性の観点から好ましい。
前記フルオレニリデン系化合物の好ましい例を以下に挙げるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0021】
【化4】

【0022】
(C)成分であるフルオレニリデン系化合物の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.0001〜0.05質量部が好ましく、0.0001〜0.02質量部がより好ましく、0.0005〜0.02質量部がさらに好ましい。この範囲であれば、接着剤の塗布状況を十分に視認することができ、また、接着剤層の硬化不良を抑制でき、十分な接着がなされる。
【0023】
[(D)成分]
(D)成分としてのポリチオール化合物は、2〜6個のメルカプト基(−SH基)を有するものであれば特に制限は無い。メルカプト基の数は、接着性及び消色効果の観点から、2〜4個であることが好ましく、4個であることがより好ましい。また、弾性接着剤としての力学物性の観点から、接着剤組成物中に存在するアクリル基の数とメルカプト基の数との比が100/5〜100/40であることが好ましく、100/10〜100/30であることがより好ましい。ここで、アクリル基の数は、アクリレートの分子量より算出した値である。但し、アクリレートがポリマーの場合は、分子量として、スチレン換算の数平均分子量を用いる。該(D)成分は、接着剤組成物の硬化後の接着剤層を無色にし、同時に、接着剤層に十分な接着力を付与するために必須の成分である。
ポリチオール化合物としては、例えば、炭素数2〜20程度のアルカンジチオール等の脂肪族ポリチオール類;キシリレンジチオール等の芳香族ポリチオール類;アルコール類のハロヒドリン付加物のハロゲン原子をメルカプト基で置換してなるポリチオール類;ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール類;分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコール類と、チオグリコール酸、β−メルカプトプロピオン酸、又はβ−メルカプトブタン酸とのエステル化物からなるポリチオール類等が挙げられる。
【0024】
これらのポリチオール類の中で、反応性が良く、かつ化学構造の制御が容易という観点から、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールの、チオグリコール酸エステル化物、β−メルカプトプロピオン酸エステル化物又はβ−メルカプトブタン酸エステル化物が好ましく、特にβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物、β−メルカプトブタン酸エステル化物が好ましい。
上記の分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコール類としては、炭素数2〜20のアルカンジオール、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0025】
前記炭素数2〜20のアルカンジオールは、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。該アルカンジオールとしては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,12−ドデカンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
ポリ(オキシアルキレン)グリコールとしては、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0026】
(D)成分のポリチオール化合物の具体例としては、エチレングリコールジ(チオグリコレート)、エチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、トリメチレングリコールジ(チオグリコレート)、トリメチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、トリメチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、プロピレングリコールジ(チオグリコレート)、プロピレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、1,3−ブタンジオールジ(チオグリコレート)、1,3−ブタンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、1,3−ブタンジオールジ(β−メルカプトブタネート)、1,4−ブタンジオールジ(チオグリコレート)、1,4−ブタンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールジ(β−メルカプトブタネート)、ネオペンチルグリコールジ(チオグリコレート)、ネオペンチルグリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ネオペンチルグリコールジ(β−メルカプトブタネート)、1,6−ヘキサンジオールジ(チオグリコレート)、1,6−ヘキサンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、1,6−ヘキサンジオールジ(β−メルカプトブタネート)、1,8−オクタンジオールジ(チオグリコレート)、1,8−オクタンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、1,8−オクタンジオールジ(β−メルカプトブタネート)、1,9−ノナンジオールジ(チオグリコレート)、1,9−ノナンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、1,9−ノナンジオールジ(β−メルカプトブタネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(チオグリコレート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(β−メルカプトプロピオネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(β−メルカプトブタネート)、ジエチレングリコールジ(チオグリコレート)、ジエチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、トリエチレングリコールジ(チオグリコレート)、トリエチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、トリエチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、ポリエチレングリコールジ(チオグリコレート)、ポリエチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、ジプロピレングリコールジ(チオグリコレート)、ジプロピレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ジプロピレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、トリプロピレングリコールジ(チオグリコレート)、トリプロピレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、トリプロピレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、ポリプロピレングリコールジ(チオグリコレート)、ポリプロピレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ポリプロピレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ(チオグリコレート)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ(β−メルカプトブタネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールエチレンオキサイド付加物のジ(チオグリコレート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールエチレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトプロピオネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールエチレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトブタネート)、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(チオグリコレート)、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトプロピオネート)、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトブタネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールプロピレンオキサイド付加物のジ(チオグリコレート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールプロピレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトプロピオネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールプロピレンオキサイド付加物の(β−メルカプトブタネート)、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジ(チオグリコレート)、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトプロピオネート)、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトブタネート)、グリセロールトリ(チオグリコレート)、グリセロールトリ(β−メルカプトプロピオネート)、グリセロールトリ(β−メルカプトブタネート)、ジグリセロールテトラ(チオグリコレート)、ジグリセロールテトラ(β−メルカプトプロピオネート)、ジグリセロールテトラ(β−メルカプトブタネート)、トリメチロールプロパントリ(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリ(β−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(β−メルカプトブタネート)、ジトリメチロールプロパンテトラ(チオグリコレート)、ジトリメチロールプロパンテトラ(β−メルカプトプロピオネート)、ジトリメチロールプロパンテトラ(β−メルカプトブタネート)、ペンタエリスリトールテトラ(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラ(β−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(β−メルカプトブタネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(β−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(β−メルカプトブタネート)等が好ましく挙げられる。
【0027】
これらのポリチオール化合物の中で、入手容易性及び得られるエラストマーの性能の観点から、ポリ(β−メルカプトプロピオネート)体、ポリ(β−メルカプトブタネート)体が好ましく、前記同様の観点から、ポリエチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(β−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(β−メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、ペンタエリスリトールテトラ(β−メルカプトブタネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(β−メルカプトブタネート)がより好ましい。
【0028】
前記(D)成分のポリチオール化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分であるポリチオール化合物の配合量は、(C)成分に対して、50〜10000倍質量であり、100〜7000倍質量が好ましく、200〜5000倍質量がより好ましく、300〜4200倍質量がさらに好ましい。また、同時に、(D)成分であるポリチオール化合物の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、2〜15質量部がより好ましく、2〜7質量部がさらに好ましい。
(D)成分が上記配合量であれば、硬化後の接着剤層を十分に無色にすることができ、同時に、十分な接着力が付与される。
【0029】
[(E)その他の成分]
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、増粘剤や無機系充填剤等を配合することができる。
増粘剤としては、アマイドワックス、水添ひまし油系又はこれらの混合物等が挙げられる。より具体的には、ひまし油(主成分がリシノール酸の不乾性油)の水添品である水添ひまし油[例えば、商品名:ADVITROL 100(ズードケミー触媒株式会社製)、商品名:ディスパロン305(楠本化成株式会社製)]及びアンモニアの水素をアシル基で置換した化合物である高級アマイドワックス[例えば、商品名:ディスパロン6500(楠本化成株式会社製)]等が挙げられる。これらの中でも、架橋密度を高めて硬度が大きくなる可能性があるアミンが存在しない、水添ひまし油が好ましい。
増粘剤を配合する場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部がさらに好ましい。
また、無機系充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ベントナイト、マイカ、アルミナ、カオリン、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、ガラス粉、セラミック粉、ガラスバルーン等の無機中空フィラー等が挙げられる。
無機系充填剤を配合する場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜40質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がさらに好ましい。
【0030】
本発明の接着剤組成物を、被着体と弾性体との接着用に用いると、可視光線下で接着剤層の塗布状況を視認することができるうえ、製品の提供時(硬化後)には無色となり、外観上の問題が無いため、工業的に有用である。さらに、該接着剤組成物は、被着体と弾性体とを十分な強度で接着させることができる。
以下、弾性体の接着方法について説明する。
【0031】
<弾性体の接着方法>
弾性体を形成するための弾性材組成物中に光重合開始剤を含有させ、接着剤層を形成するための接着剤組成物中に(A)紫外線硬化型化合物、(B)光重合開始剤、(C)フルオレニリデン系化合物、及び(D)2〜6個のメルカプト基を有するポリチオール化合物を前記(C)成分に対して50〜10000倍質量含有させ、前記弾性材組成物及び前記接着剤組成物に紫外線を照射することによって、接着剤組成物の色を消失させながら弾性体を被着体に接着することができる。
【0032】
(弾性材組成物)
弾性材組成物を構成する弾性材としては特に限定されないが、ウレタン、エポキシ系重合体、シリコーン、ポリイソプレン、水添ポリイソプレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソブチレン、フッ素含有ゴム、及びこれらを変性したものを主成分とすることが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、本発明の弾性材としては、アクリル変性されたウレタンを主成分とするものが好ましい。アクリル変性されたウレタンとしては、ポリエーテルポリオールのウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルポリオールのウレタンアクリレートオリゴマー、あるいは、エーテル基及びエステル基の両方を分子中に有するウレタンアクリレートオリゴマー、及びカーボネート基を有するカーボネートジオールのウレタンアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0033】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール及び1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ビスフェノールA等に、エチレンオキシド又はプロピレンオキシド等が付加した化合物を用いることができる。
【0034】
前記ポリエステルポリオールは、アルコール成分と酸成分とを反応させて得ることができ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及び1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ビスフェノールA等にエチレンオキシド又はプロピレンオキシド等が付加した化合物、あるいは、ε−カプロラクトンが付加した化合物等をアルコール成分とし、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸等の二塩基酸及びその無水物を酸成分として使用することができる。
上記のアルコール成分、酸成分及びε−カプロラクトンの三者を同時に反応させることによって得られる化合物も、ポリエステルポリオールとして用いることができる。
【0035】
また、前記カーボネートジオールは、ジアリールカーボネート又はジアルキルカーボネートとジオール類とのエステル交換反応によって得ることができる。
ジアリールカーボネート又はジアルキルカーボネートとしては、例えばジフェニルカーボネート、ビス−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、フェニル−トルイル−カーボネート、フェニル−クロロフェニル−カーボネート、2−トリル−4−トリル−カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。
ジオール類としては、例えば1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール(以下、これらをジオール化合物と総称する。)や、前記ジオール化合物とシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸との反応生成物、さらには、前記ジオール化合物とε−カプロラクトンとの反応生成物であるポリエステルジオール等が挙げられる。
このようにして得られるカーボネートジオールは、分子中にカーボネート構造を一つ有するモノカーボネートジオール又は分子中にカーボネート構造を二つ以上有するポリカーボネートジオールである。
【0036】
本発明で用いる弾性材として好ましく用いられるアクリル変性されたウレタンは、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールのウレタンアクリレートオリゴマーである。該ウレタンアクリレートオリゴマーの製造に用いられる有機ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、メチレンジイソシアネート、トリレンジソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0037】
弾性材組成物には、光重合開始剤を配合させるが、該光重合開始剤としては、接着剤組成物中の(B)成分として例示したものと同様のものが挙げられる。また、クレー、珪藻土、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、カオリン、アルミナ、グラファイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系添加剤;各種の金属粉、ガラス粉、セラミックス粉、粒状あるいは粉末ポリマー等の粒状あるいは粉末状固体充填剤;その他の各種の天然又は人工の短繊維、長繊維(例えば、ガラスファイバー、金属ファイバー、その他各種のポリマーファイバー等)等を配合することができる。
また、弾性材組成物には、さらに必要に応じて、難燃剤、抗菌剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、粘着付与剤(タッキファイヤー)、接着剤性エラストマー、熱可塑性エラストマー又は樹脂等の添加剤を添加することもできる。
なお、弾性材組成物は、無機系の充填材及び/又は有機系の増粘剤を配合することにより、粘度を調整することができる。無機系充填剤としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ベントナイト、マイカ、合成スメクタイト等が挙げられ、また有機系増粘剤としては水添ひまし油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン等が挙げられる。
【0038】
上記弾性材組成物に紫外線を照射することにより、前記弾性材を得ることができる。
紫外線源としては、有電極方式としてメタルハライドランプ、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯等を、無電極方式としてエキシマランプ、メタルハライドランプ等を挙げることができる。
紫外線の照度は100〜300mW/cm2が好ましく、積算光量は5000〜15000mJ/cm2が好ましいが、特にこの範囲に制限されるものではなく、硬化反応の進行度合いに応じて適宜調整することができる。紫外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気あるいは酸素濃度を低下させた雰囲気が好ましいが、通常の空気雰囲気でも紫外線硬化性ガスケット材を用いた場合には、十分硬化させることができる。照射雰囲気温度は、通常10〜200℃が好ましい。
なお、後述するように、弾性材組成物への紫外線の照射は、接着剤組成物と一緒に行なうか、又は接着剤組成物を短時間の紫外線照射又は低出力の紫外線照射によって半硬化させた後に行なうことが好ましい。
【0039】
(被着体)
前記被着体としては特に制限はなく、用途に応じて適宜選定される。
本発明の接着剤組成物は、ハードディスク装置用ガスケットの接着剤層として、及び制震材の接着剤層として有用であることより、例えば、被着体をガスケット用途、つまりガスケットのカバー体(カバープレート)として用いるのであれば、被着体として、金属や熱可塑性樹脂等の合成樹脂を選択することができる。また、制振材用途に用いる場合には、主にゴム材料や熱可塑性樹脂等の合成樹脂、場合によっては金属を被着体として選択することができる。
【0040】
前記金属としては、例えばニッケルめっきアルミニウム、ニッケルめっき鋼、冷延鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金等の中から適宜選択して用いることができる。また、マグネシウムを射出成形したものも用いることができる。耐食性の観点から、無電解ニッケルめっき処理を施した金属が好ましく、ニッケルめっきアルミニウム、ニッケルめっき鋼がより好ましい。
無電解ニッケルめっき処理の方法としては、従来金属素材に適用されている公知の方法、例えば硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、乳酸、プロピオン酸等を適当な割合で含有するpH4〜5程度で、かつ温度85〜95℃程度の水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴中に、金属板を浸漬する方法等を用いることができる。
【0041】
前記合成樹脂としては、例えばアクリロニトリルスチレン(AS)樹脂;アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂;ポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリプロピレン複合体等のオレフィン系樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル;アクリル系樹脂;ポリアセタール;ポリカーボネート;液晶ポリマー;ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
被着体と弾性体との接着性を向上させるために、被着体が合成樹脂製の場合、予め被着体を表面処理することができる。表面処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理等が挙げられる。プラズマ処理には、キーエンス社製のプラズマ照射器等の装置を用いることができる。
被着体をガスケット用途、つまりガスケットのカバー体(カバープレート)として用いる場合、該表面処理を施すことが好ましい。
【0043】
本発明の弾性体の接着方法においては、被着体に接着剤組成物を塗布し、その上に弾性材組成物を塗布した後、紫外線を照射して硬化させることが好ましい。
接着剤組成物を被着体に塗布する際の粘度は、25℃において、10〜1000mPa・sの範囲が好ましい。10mPa・s以上であると接着剤組成物が硬化前に流れだす等の問題がなく、まただれがないため、寸法安定性が良好である。一方、1000mPa・s以下であると塗布性が良好である。以上の観点から、該接着剤の25℃における粘度は100〜500mPa・sの範囲がより好ましい。
弾性材組成物の粘度については、塗布できる範囲で特に限定されないが、通常、50℃での粘度が1〜1000Pa・sの範囲であることが好ましい。50℃での粘度がこの範囲内であると、流動性が適度であり、弾性体の形状を保持することができるとともに、弾性体の形状の賦形が行いやすい。該粘度は上述の反応性希釈剤及び無機充填剤の添加量等によって制御することができる。
【0044】
(接着剤組成物の被着体への塗布)
接着剤組成物の被着体への塗布方法については特に制限はなく、スタンプによる転写、印刷法、ディスペンシング法等を用いることができる。これらのうち、容易に所望の形状に塗布することができ、しかも弾性体の形状に合わせて精密に接着剤を塗布することができる点で、ディスペンシング法が好ましい。ディスペンシング法により、接着剤組成物を押し出す装置としては、空圧式押し出し装置、機械的なラムプレス押し出し装置、プランジャー式押し出し装置等を使用することができる。
接着剤組成物の塗布量は、弾性体が被着体に良好に接着する範囲であれば特に制限はないが、硬化後の接着剤層の層厚が50〜200μmの範囲となるように塗布することが好ましい。層厚が50μm以上であれば、十分な接着が可能であり、かつシール性も良好である。また、200μm以下であれば、深部まで十分な硬化が可能であり、また経済的にも有利である。同様の観点から、硬化後の接着剤層の層厚は、50〜100μmの範囲がより好ましい。
【0045】
上記の方法等で被着体に塗布された接着剤組成物は、(C)成分の存在により、接着剤を塗布した部分と塗布していない部分の境界が明瞭であり、接着剤の塗り方が不十分でかすれた部分の存在やドット状に抜けたような部分があっても、追加塗布が容易である。
また、紫外線等の照射装置及び画像認識装置等の検出部を設けておき、接着剤組成物の塗布状態を自動的に検査することもできる。
(弾性材組成物の接着剤組成物上への塗布)
次に、接着剤組成物の上に弾性材組成物を塗布するが、塗布の方法としては、接着剤組成物と同様の方法が挙げられ、その中でも、ディスペンシンク法が好ましい。
【0046】
(紫外線の照射)
本発明では、弾性材組成物を接着剤組成物の上に塗布した後に、紫外線を照射して、弾性材組成物及び接着剤組成物を硬化させる方法をとることが好ましい。このように、接着剤組成物及び弾性材組成物を塗布した後に紫外線を照射することによって、一度に両者を硬化させることができるため、作業性が良く、効率的である。
一方、接着剤組成物を塗布した後、短時間の紫外線照射又は低出力の紫外線照射によって半硬化させ、その後に弾性材組成物を塗布することもできる。
かかる紫外線の照射により、弾性材組成物及び接着剤組成物を硬化させるのみならず、本発明の接着剤組成物の色が消えて無色になる。これは、前記の通り、接着剤組成物に特定量の(D)成分を配合していることに起因する。また、紫外線照射後の弾性体と被着体との接着力は優れているが、これも接着剤組成物に特定量の(D)成分を配合していることに起因する。
紫外線源、紫外線の照度、紫外線の積算光量、紫外線を照射する雰囲気、及び照射雰囲気温度等の条件及び好適範囲については、前記した弾性材組成物への紫外線照射の場合と同様である。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0048】
合成例1(化合物2の合成)
【化5】

(操作1−1)
フルオレンをDMFに溶解した。三口フラスコ中で、鉱油に含有された2.4当量の水素化ナトリウムを、ヘキサンを用いてデカントし、予めN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解したフルオレンを加え、室温で攪拌した。次いで、予めDMFに溶解した2.1当量のパラアルデヒドを加え、室温で3時間攪拌した。
得られた反応混合液を1N塩酸で中和した後、ベンゼンで抽出し、水及び食塩水で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去した後、エタノールで再結晶し、ろ別してから乾燥させ、上記ジヒドロキシ化合物を得た。
【0049】
【化6】

(操作1−2)
三口フラスコ中で、上記ジヒドロキシ化合物をクロロホルムに溶解した後、2.5当量の四臭化炭素及び三臭化リンを添加し、室温で6時間攪拌した。クロロホルムで抽出し、水及び食塩水で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、上記ジブロモ化合物を得た。
【0050】
【化7】

(操作1−3)
フルオレンをDMFに溶解した。三口フラスコ中で、鉱油に含有された2.4当量の水素化ナトリウムを、ヘキサンを用いてデカントし、予めDMFに溶解したフルオレンを加え、室温で攪拌した。次いで、予めDMFに溶解した1当量の前記ジブロモ化合物を加え、室温で3時間攪拌した。
得られた反応混合液を1N塩酸で中和した後、ベンゼンで抽出し、水及び食塩水で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2を得た。
【0051】
合成例2(化合物3の合成)
【化8】

(操作2−1)
三口フラスコ中でフルオレンをクロロホルムに溶解した後、該フラスコを冷水で冷却しながら2.1当量の臭素をゆっくりと添加し、室温で3時間攪拌した。得られた反応混合液に1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液を加えることにより、残存する臭素を還元した。
得られた反応混合液を炭酸水素ナトリウムで中和した後、クロロホルムで抽出し、水及び食塩水で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去した後、エタノール/ベンゼンで再結晶し、ろ別してから乾燥させ、上記臭素化物を得た。
【0052】
【化9】

(操作2−2)
窒素雰囲気下、三口フラスコ中で上記臭素化物をo−キシレンに溶解した後、1.1当量のジフェニルアミンとナトリウム−t−ブトキシドを添加した。そこへ、予め調製したパラジウム触媒のo−キシレン溶液を1ミリ当量加えて反応を開始し、6時間還流した。
得られた反応混合液からo−キシレンを除去した後、ベンゼンで抽出し、水及び食塩水で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去した後、ベンゼンで再結晶し、ろ別してから乾燥させ、2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレンを得た。
【0053】
【化10】

(操作2−3)
酸素雰囲気下、三口フラスコ中で2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレンをベンゼンに溶解した後、1.1当量の水酸化ナトリウムと触媒量のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを加えて、室温で24時間攪拌した。
得られた反応混合液をベンゼンで抽出し、水及び食塩水で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去した後、ベンゼンで再結晶し、ろ別してから乾燥させ、2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレノンを得た。
【0054】
【化11】

(操作2−4)
窒素雰囲気下、三口フラスコ中で2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレンをテトラヒドロフラン(THF)に溶解した後、氷を含有したアセトンで冷却しながらブチルリチウムを添加し、1時間攪拌した。そこへ、予めTHFに溶解しておいた2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレノンをゆっくり添加し、室温で3時間攪拌した。
得られた反応混合液からTHFを8割程度留去した。クロロホルムで抽出し、水及び食塩水で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、上記の化合物4前駆体を得た。
【0055】
【化12】

(操作2−5)
酢酸を入れた三口フラスコに上記化合物4前駆体を入れ、酢酸中に分散させた後、触媒量のメタンスルホン酸を添加して24時間還流した。
得られた反応混合液を炭酸水素ナトリウムで中和した後、クロロホルムで抽出し、水及び食塩水で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、化合物4を得た。
【0056】
実施例1〜5、比較例1〜4(接着剤組成物)
下記表1に示すとおり(各成分の数値は質量部を示す。)に各成分を混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物は、表1に示すとおりの色を呈していた。
こうして得られた接着剤組成物を、厚さが2mmになるように被着体(ニッケルメッキプレート)に塗布し、硬化させた。硬化は、温度25℃にて紫外線(センエンジニアリング社製、紫外線照射機「UV1501BA−LT」、同社製メタルハライドランプ「SE−1500M」を使用)を、照度150mW/cm2、照射時間60秒の条件で行った。該被着体を固定し、硬化体の引き上げ部分をPETフィルムで補強した後、引張速度50mm/分の条件で、180度の方向に引っ張り、剥離強度(N/25mm)を測定して接着性の指標とした。
【0057】
【表1】

【0058】
*1:エネルギー線硬化型オリゴマー、商品名「ライトタックPUA−KH32M」[2官能ウレタン系アクリレートオリゴマー、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート及び「イルガキュア(登録商標)2959」(光重合開始剤;(B)成分)の混合物]、共栄社化学株式会社製
*2:商品名「CN104LC」、成分;ビスフェノール系エポキシアクリレート、サートマー社製
*3:「イルガキュア(登録商標)2959」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製
*4:ビフルオレニリデン(化合物1)、シグマアルドリッチ社製
*5:合成例1で得た化合物2
*6:合成例2で得た化合物3
*7:商品名「PEMP」、成分;ペンタエリスリトールテトラ(β−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学株式会社製
*8:商品名「ADVITROL 100」、成分;水添ひまし油、ズードケミー触媒株式会社製
*9:t−ブチルアルコール、和光純薬工業株式会社
*10:ナトリウム−t−ブトキシド、和光純薬工業株式会社
*11:紫外線照射前に消色した。
【0059】
表1より、本発明の接着剤組成物はUV照射後に消色しており、接着性も高い。
一方、(C)成分の量が多いと、UV照射後も色が消えなかった。また、(D)成分を用いなかった場合も、UV照射後に色が消えず、接着性も低くなった。(D)成分の代わりにt−ブチルアルコールやナトリウム−t−ブトキシド等の求核試薬を用いたところ、t−ブチルアルコールでは消色せず、またナトリウム−t−ブトキシドではUV照射「前」に消色してしまい、いずれによっても本発明の課題を解決することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の接着剤組成物は、カバー体に接着剤層を介して弾性体が接着された制振材の接着剤層として有用である。また、カバー体に接着剤層を介して弾性体が接着されたハードディスク装置用ガスケットの接着剤層としても有用であり、該ガスケットは、ハードディスク装置に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)紫外線硬化型化合物、(B)光重合開始剤、(C)下記一般式(I)又は(II)で表されるフルオレニリデン系化合物及び(D)2〜6個のメルカプト基を有するポリチオール化合物を含有する接着剤組成物であって、(D)成分の配合量が(C)成分に対して50〜10000倍質量である、前記接着剤組成物。
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基又はジフェニルアミノ基を示す。また、n、m、n’、m’は、それぞれ独立して、0〜4の整数を示す。)
【請求項2】
前記紫外線硬化型化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型化合物が、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型化合物である、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型化合物が、紫外線硬化型オリゴマーである、請求項2又は3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
紫外線硬化型オリゴマーが、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマー及びその水素添加物の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
光重合開始剤が、分子内開裂型及び/又は水素引抜き型である、請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項7】
ポリチオール化合物が、水酸基2〜6個を有する多価アルコールのβ−メルカプトプロピオン酸又はβ−メルカプトブタン酸エステル化物である、請求項1〜6のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項8】
さらに増粘剤を、(A)成分100質量部に対して0.1〜15質量部含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項9】
ハードディスク装置のガスケット用である、請求項1〜8のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項10】
カバー体に接着剤層を介して弾性体が接着された制振材であって、接着剤層が請求項1〜8のいずれかに記載の接着剤組成物からなる制振材。
【請求項11】
カバー体に接着剤層を介して弾性体が接着されたハードディスク装置用ガスケットであって、接着剤層が請求項1〜8のいずれかに記載の接着剤組成物からなるハードディスク装置用ガスケット。
【請求項12】
請求項11に記載のガスケットを用いたハードディスク装置。
【請求項13】
被着体に接着剤層を介して弾性体を接着するに際し、弾性体を形成するための弾性材組成物中に光重合開始剤を含有させ、接着剤層を形成するための接着剤組成物中に(A)紫外線硬化型化合物、(B)光重合開始剤、(C)下記一般式(I)又は(II)で表されるフルオレニリデン系化合物、及び(D)2〜6個のメルカプト基を有するポリチオール化合物を前記(C)成分に対して50〜10000倍質量含有させ、前記弾性材組成物及び前記接着剤組成物に紫外線を照射することによって接着剤組成物の色を消失させながら弾性体を被着体に接着することを特徴とする、弾性体の接着方法。
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4、n、m、n’、m’は、前記定義の通りである。)

【公開番号】特開2011−105852(P2011−105852A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262127(P2009−262127)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】