説明

接着強度測定方法

【課題】接着剤の接着強度を、正確かつ再現性よく測定することができる接着強度測定方法を提供すること。
【解決手段】本発明の接着強度測定方法は、一対の接着対象物1、2同士を接着剤4で接着し、接着剤4の接着強度を測定する方法であって、第1の接着対象物1上に、接着剤4を供給する領域(貯留空間32)を規定する規定部材3を配置する第1の工程と、前記領域内に、接着剤4を供給する第2の工程と、接着剤4に接触させるとともに、規定部材3を介して、第1の接着対象物1に第2の接着対象物2を対向して配置する第3の工程と、接着剤4を硬化させる第4の工程と、第1の接着対象物1を第2の接着対象物2に対して相対的に離間する方向に移動させ、第1の接着対象物1と第2の接着対象物2のいずれかと接着剤4とが剥離したときの引張荷重を測定する第5の工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着強度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接着対象物と接着剤との接着強度を測定する方法としては、例えば、2つの接着対象物の間に接着剤を塗布してこれらを接着し、次いで、接着対象物同士を引き離す方向に、徐々に荷重を加える方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法では、徐々に荷重を加え続けて、接着対象物と接着剤との間に剥離が生じたときの荷重を測定することにより、接着剤の接着強度を求めることができる。
このような接着強度の測定では、接着剤の塗布条件、具体的には、接着剤の塗布面積や塗布厚み等が変化することにより、荷重の測定値に影響する。このため、測定された接着強度の再現性が低下するおそれがある。
【0003】
また、接着強度を、複数個の接着対象物の間で比較する場合、各接着対象物において接着剤の塗布条件を揃える必要がある。しかしながら、接着対象物に接着剤を塗布する際に、接着剤の塗布面積や塗布厚みを均一に制御することは容易ではない。このため、各接着対象物の間で塗布条件にバラツキが生じ、荷重の測定値の信頼性が十分に確保できないという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003-130771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、接着剤の接着強度を、正確かつ再現性よく測定することができる接着強度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接着強度測定方法は、一対の接着対象物同士を接着剤で接着し、該接着剤の接着強度を測定する接着強度測定方法であって、
前記一対の接着対象物のうちの一方の接着対象物上に、前記接着剤を供給する領域を規定する規定部材を配置する第1の工程と、
前記領域内に、前記接着剤を供給する第2の工程と、
前記接着剤に接触させるとともに、前記規定部材を介して、前記一方の接着対象物に他方の接着対象物を対向して配置する第3の工程と、
前記接着剤を硬化させる第4の工程と、
前記一方の接着対象物を、前記他方の接着対象物に対して相対的に離間する方向に移動させ、前記一対の接着対象物のうちのいずれか一方と前記接着剤とが剥離したときの引張荷重を測定する第5の工程とを有することを特徴とする。
これにより、接着剤の接着強度を、正確かつ再現性よく測定することができる。
【0007】
本発明の接着強度測定方法では、前記規定部材は、貫通孔を有する板状体で構成されていることが好ましい。
これにより、貫通孔の内側に接着剤を確実に貯留することができ、接着剤を供給する領域を容易に規定することができる。
本発明の接着強度測定方法では、前記規定部材は、その前記他方の接着対象物に臨む面が、実質的に前記接着剤に対する接着性を示さない低接着性を有することが好ましい。
これにより、接着剤を、規定部材の上面より高くなるよう貯留空間に供給しても、本来測定されるべき接着強度を確実に測定することができる。
【0008】
本発明の接着強度測定方法では、前記規定部材は、撥液性を示す撥液材料を主材料として構成されたものであることが好ましい。
この場合、規定部材は、その表面全体が、実質的に接着剤に対する接着性を示さない低接着性を有するものとなる。これにより、規定部材の上面からはみ出した余分な接着剤が、規定部材と第1の接着対象物との間隙と、規定部材と第2の接着対象物との間隙の双方に侵入しても、接着強度の測定に影響が及ぶのを防止することができる。その結果、より正確で再現性の高い接着強度の測定を行うことができる。
【0009】
本発明の接着強度測定方法では、前記規定部材は、その前記他方の接着対象物に臨む面に、撥液処理が施されたものであることが好ましい。
これにより、撥液処理を施すことが可能な材料であれば、種々の目的に応じて、規定部材の構成材料を自由に選択することができる。
本発明の接着強度測定方法では、前記規定部材は、前記一方の接着対象物に対する固定手段を有することが好ましい。
これにより、第2の工程において、貯留空間に接着剤を供給する際に、規定部材の位置がズレるのを防止することができる。これにより、接着剤を、第1の接着対象物の目的とする位置に確実に供給することができる。
【0010】
本発明の接着強度測定方法では、前記固定手段は、前記規定部材の前記一方の接着対象物に臨む面に形成された接着剤層で構成されていることが好ましい。
これにより、規定部材を第1の接着対象物に対して、より確実に固定することができる。また、規定部材と第1の接着対象物との密着性が向上するので、貯留空間に接着剤を供給した際に、規定部材と第1の接着対象物との間に、余分な接着剤が不本意に侵入するのを防止することができる。これにより、余分な接着剤が、接着強度の測定値に影響が及ぶのを防止し、より正確かつ再現性の高い測定を行うことができる。
【0011】
本発明の接着強度測定方法では、前記領域は、平面視において、その形状が円形をなしていることが好ましい。
かかる形状をなす貫通孔の内側に供給された接着剤は、その縁部が丸みを帯びたものとなる。したがって、接着強度を測定する際に、接着界面の一部に応力が集中するのを防止することができる。これにより、接着剤と接着対象物との間の剥離が連鎖的に進展するのを抑制することができ、より正確で高い再現性の測定を行うことができる。
【0012】
本発明の接着強度測定方法では、前記規定部材は、樹脂材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、樹脂材料は、比較的可撓性に富んでいるため、接着強度を測定する際に接着対象物に歪みが生じた場合でも、その歪みに追従して変形することができる。このため、規定部材が、接着対象物や接着剤に対して意図しない応力が発生するのを防止し、測定強度の測定値が、本来測定されるべき値(真正値)から乖離するのを防止することができる。
本発明の接着強度測定方法では、前記第2の工程において、前記規定部材の厚さを設定することにより、前記領域内に供給される前記接着剤の量を調整することが好ましい。
これにより、所望の厚さの接着剤に対する接着強度の測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の接着強度測定方法を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の接着強度測定方法の第1実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明の接着強度測定方法の第1実施形態を示す模式図(斜視図)である。なお、以下の説明では、図1および図2の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0014】
本発明の接着強度測定方法は、一対の接着対象物同士を接着剤で接着したときの接着剤の接着強度を測定する方法である。
具体的には、この接着強度測定方法は、一対の接着対象物のうちの第1の接着対象物上に、接着剤を供給する領域を規定する規定部材を配置する第1の工程と、領域内に、接着剤を供給する第2の工程と、規定部材を介して、第1の接着対象物に第2の接着対象物を対向して配置する第3の工程と、供給した接着剤を硬化させる第4の工程と、第1の接着対象物と第2の接着対象物のいずれかが接着剤と剥離したときの引張荷重を測定する第5の工程とを有する。以下、これらの工程を順に説明する。
【0015】
[1]まず、図1(a)に示すように、第1の接着対象物1と第2の接着対象物2とからなる一対の接着対象物1、2を用意する。
接着対象物1、2は、本発明の接着強度測定方法を用いて、接着剤との接着強度の測定に供されるものである。
そして、一対の接着対象物1、2は、同種の材料で構成されたものでもよく、異種の材料で構成されたものでもよい。
【0016】
一対の接着対象物1、2が、異種の材料で構成されている場合、本発明によって、一対の接着対象物1、2のうち、接着剤との接着強度が低い方の接着強度を測定することができる。したがって、この場合、構成材料が異なる2つの接着対象物1、2について、接着強度の相対比較を行うことができる。
このような接着対象物1、2は、本実施形態では、平面視が長方形をなす板状の部材であるが、例えば、ブロック状、柱状等の形状をなす部材であってもよい。また、接着対象物1、2は、接着剤を供給し得る平坦面を有する形状をなすものが好ましい。これにより、未硬化状態の接着剤を安定して保持することができ、接着強度の測定作業が容易となる。
【0017】
次に、図1(b)に示すように、第1の接着対象物1上に、規定部材3を配置する(第1の工程)。
規定部材3は、第1の接着対象物1上に接着剤を供給する際に、その供給する領域を規定するものである。
図1に示す規定部材3は、平面視で、第1の接着対象物1とほぼ同等の幅を有するとともに、第1の接着対象物1より長さの短くなっている。
本実施形態では、この規定部材3の一方の端部33を、第1の接着対象物1の長手方向の端部11、すなわち短辺に揃えるように配置する。
【0018】
規定部材3の構成材料としては、例えば、各種樹脂材料、各種金属材料、各種セラミックス材料等が挙げられるが、特に樹脂材料が好ましい。樹脂材料は、比較的可撓性に富んでいるため、後述する工程で接着強度を測定する際に、接着対象物に歪みが生じた場合でも、その歪みに追従して変形することができる。このため、規定部材3が、接着対象物や接着剤に対して意図しない応力が発生するのを防止し、測定強度の測定値が、本来測定されるべき値(真正値)から乖離するのを防止することができる。
また、規定部材3の構成材料は、接着剤と化学反応を生じないものが好ましい。これにより、化学変化による接着剤の変質を防止し、接着強度の測定値が変化するのを防止することができる。
【0019】
また、規定部材3のほぼ中央部には、貫通孔31が設けられている。後述する工程において、規定部材3を第1の接着対象物1上に配置した状態で、この貫通孔31の内側に接着剤を供給することにより、第1の接着対象物1の上面と貫通孔31とにより画成された貯留空間32に、接着剤を確実に貯留することができる。これにより、接着剤を供給する領域を容易に規定することができる。
【0020】
図1(b)に示す貫通孔31は、平面視で円形(円形状)をなしている。かかる形状をなす貫通孔31の内側に供給された接着剤は、その縁部が丸みを帯びたものとなる。したがって、接着強度を測定する際に、接着界面の一部に応力が集中するのを防止することができる。これにより、接着剤と接着対象物との間の剥離が連鎖的に進展するのを抑制することができ、より正確で高い再現性の測定を行うことができる。
なお、円形状とは、真円に限らず、例えば、楕円形、長円形等でもよい。
【0021】
[2]次に、図1(c)に示すように、貯留空間32に、未硬化状態の接着剤4を供給する(第2の工程)。
貫通孔31の内側に供給された接着剤4は、貯留空間32に貯留される。このとき、接着剤4を、規定部材3の上面とほぼ同じ高さ(厚さ)となるように供給するのが好ましい。これにより、後述する工程において、接着剤と第2の接着対象物とを確実に接触させることができるとともに、余分な接着剤4が生じるのを防止することができる。
また、この場合、規定部材3の厚さを設定することにより、貯留空間32に貯留される接着剤4の厚さを調整することができる。これにより、後述する工程において、所望の厚さの接着剤4に対する接着強度の測定を行うことができる。
【0022】
なお、貯留空間32に接着剤4を供給した後、接着剤4が硬化を開始しない程度の時間、放置するようにしてもよい。これにより、接着剤4中に含まれた気泡が自然排出されるため、接着剤4と一対の接着対象物との間の接触面積を、できるだけ広くとることができる。その結果、より正確で再現性の高い接着強度の測定を行うことができる。
このような気泡の除去(脱気)は、例えば、接着剤4に対して超音波を照射すること等によっても、行うことができる。
【0023】
また、規定部材3は、その上面(第2の接着対象物に臨む面)35が、実質的に接着剤4に対する接着性を示さない低接着性を有するのが好ましい。これにより、接着剤4を、規定部材3の上面より高くなるよう貯留空間32に供給しても、本来測定されるべき接着強度を確実に測定することができる。すなわち、規定部材3の上面からはみ出した余分な接着剤4は、後述する工程において、規定部材3と第2の接着対象物2との間隙に侵入するが、この余分な接着剤4は、規定部材3に対する接着性をほとんど示さない。したがって、余分な接着剤4が、接着強度の測定値に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0024】
なお、低接着性を有する面は、規定部材3の下面(第1の接着対象物に臨む面)36であっても、前述と同様の作用・効果が得られる。
また、上記の効果を考慮すると、接着剤4を貯留空間32に供給する際、その供給量を厳密に規定しなくても、正確で再現性の高い測定を行うことができる。したがって、接着剤4の供給量に対する許容範囲が拡大し、接着剤4の供給作業をより容易に行うことができる。
さらに、接着剤4を貯留空間32に供給する際、例え、接着剤4を規定部材3の上面35に供給してしまった場合にも、接着剤4を容易に除去することができるため、接着剤4の供給作業を効率よく行うことができる。
【0025】
また、このような低接着性を有する規定部材3には、撥液性を示す撥液材料を主材料として構成されたものが好ましく用いられる。この場合、規定部材3は、その表面全体が、実質的に接着剤4に対する接着性を示さない低接着性を有するものとなる。これにより、規定部材3の上面からはみ出した余分な接着剤4が、規定部材3と第1の接着対象物1との間隙と、規定部材3と第2の接着対象物2との間隙の双方に侵入しても、接着強度の測定に影響が及ぶのを防止することができる。その結果、より正確で再現性の高い接着強度の測定を行うことができる。
【0026】
また、前述のような低接着性を有する規定部材3には、その上面35に撥液処理を施されたものも好ましく用いられる。この場合、撥液処理を施すことが可能な材料であれば、種々の目的に応じて、規定部材3の構成材料を自由に選択することができる。
撥液処理としては、例えば、前述したような撥液材料による被膜の形成、フッ素プラズマ処理等が挙げられる。
【0027】
[3]次に、図1(d)に示すように、貯留空間32に供給した接着剤4に接触するように、規定部材3を介して、第1の接着対象物1に第2の接着対象物2を対向して配置する(第3の工程)。
第2の接着対象物2は、前述した一対の接着対象物のうちの他方のものである。また、図1(d)に示す第2の接着対象物2は、第1の接着対象物1と同形状をしている。
本実施形態では、この第2の接着対象物2の長手方向の端部21を、規定部材3の端部33と反対側の端部34に揃えるように配置する。
【0028】
[4]次に、貯留空間32に供給した接着剤4を硬化させる(第4の工程)。これにより、接着剤4の硬化物を介して、第1の接着対象物1と第2の接着対象物2とが接着され、図1(e)に示すような試験サンプル5が得られる。
接着剤4を硬化させる方法としては、接着剤4の構成材料に応じて選択され、特に限定されないが、例えば、放置による硬化、加熱による硬化、紫外線照射による硬化、外気遮断による硬化等の方法を用いることができる。
【0029】
[5]次に、図2に示すように、荷重測定装置100に試験サンプル5を取り付け、第1の接着対象物1を、第2の接着対象物2に対して相対的に離間する方向に引っ張る。そして、引張荷重を徐々に増大させたとき、第1の接着対象物1と第2の接着対象物2のいずれかが接着剤4と剥離したときの引張荷重を測定する(第5の工程)。
図2に示す荷重測定装置100は、装置本体101と、一対の支柱102、102と、クロスヘッド103と、ロードセル104と、制御部105とを有している。
【0030】
装置本体101は、その上面に、チャック部106を備えている。このチャック部106が、試験サンプル5の一端を、例えば狭持すること等により、固定することができる。
一対の支柱102、102は、それぞれ、装置本体101の両端に鉛直方向に沿って設けられている。
クロスヘッド103は、一対の支柱102、102間に掛け渡されており、支柱102に沿って、上下に移動可能となっている。
【0031】
ロードセル(荷重変換器)104は、クロスヘッド103の下面に設けられている。ロードセル104は、加わる荷重を、電気信号に変換し、制御部105に伝送する機能を有する。
また、ロードセル104は、その下面に、チャック部107を備えている。このチャック部107により、試験サンプル5の他端を固定することができる。
【0032】
制御部105は、クロスヘッド103を上下に駆動する駆動機構(図示せず)の動作を制御したり、ロードセル104から伝送された電気信号を荷重に変換して表示する機能を有する。
このような荷重測定装置100では、チャック部106、107間に加わる荷重、すなわち、ロードセル104に加わる荷重を、リアルタイムに測定することができる。
【0033】
以下、このような荷重測定装置100を用いて、試験サンプル5の接着強度を測定する手順を説明する。
まず、試験サンプル5の一端をチャック部106に、他端をチャック部107に、それぞれ固定する。
次に、ロードセル104に加わる荷重をモニタリングしつつ、クロスヘッド103を徐々に鉛直上方に移動させることにより、試験サンプル5に徐々に引張荷重を加える。
そして、第1の接着対象物1と第2の接着対象物2のいずれかが接着剤4と剥離したときの引張荷重(180度剥離荷重)を測定する。
以上のようにして、試験サンプル5の接着強度を測定することができる。
【0034】
このように本発明では、接着剤4を供給する領域を規定する規定部材3を介して、一対の接着対象物1、2同士を接着剤4で固定してなる試験サンプル5を用いて接着強度の測定を行うようにしたため、接着剤4の供給条件、具体的には、接着剤4の面積や厚み等を確実に制御することができる。このため、常に一定の供給条件で接着剤4を供給することが容易となり、接着強度の測定を正確かつ高い再現性で行うことができる。
【0035】
また、本発明によれば、複数個の試験サンプル5間で、接着強度の比較を行う場合、各試験サンプル5間の作製条件のバラツキを防止することができるため、高い信頼性を確保しつつ接着強度の測定を行うことができる。
なお、得られた引張荷重[N]の測定値を、貫通孔31の面積[m]、すなわち、接着剤4と接着対象物1、2との接着面積[m]で割ることにより、接着強度(180度剥離強度)[Pa]を求めることもできる。
【0036】
<第2実施形態>
次に、本発明の接着強度測定方法の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の接着強度測定方法の第2実施形態を示す模式図(斜視図)である。なお、以下の説明では、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0037】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の接着強度測定方法は、第1の工程において、規定部材の構成が異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、図3に示すように、規定部材3は、第1の接着対象物1に配置した際に、第1の接着対象物1に対して規定部材3を固定する固定手段37を有している。これにより、規定部材3を第1の接着対象物1に確実に固定することができる。
このように、第1の工程において、規定部材3を第1の接着対象物1に固定することができるため、第2の工程において、貯留空間32に接着剤4を供給する際に、規定部材3の位置がズレるのを防止することができる。これにより、接着剤4を、第1の接着対象物1の目的とする位置に確実に供給することができる。
【0038】
この固定手段37としては、例えば、接着剤、粘着(接着)テープ等を用いることができるが、特に、固定手段37は、規定部材3の下面(第1の接着対象物1に臨む面)36に形成され、接着剤で構成された接着剤層であるのが好ましい。これにより、規定部材3を第1の接着対象物1に対して、より確実に固定することができる。
また、規定部材3と第1の接着対象物1との密着性が向上するので、貯留空間32に接着剤4を供給した際に、規定部材3と第1の接着対象物1との間に、余分な接着剤4が不本意に侵入するのを防止することができる。これにより、余分な接着剤4が、接着強度の測定値に影響が及ぶのを防止し、より正確かつ再現性の高い測定を行うことができる。
【0039】
<第3実施形態>
次に、本発明の接着強度測定方法の第3実施形態について説明する。
図4は、本発明の接着強度測定方法の第3実施形態を示す模式図(斜視図)である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0040】
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の接着強度測定方法は、接着対象物の形状が異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、図4に示す第1の接着対象物1および第2の接着対象物2は、それぞれ、その長手方向の途中でほぼ90度屈曲したL字状の形状をなしている。
【0041】
また、第1の接着対象物1の端部12と、第2の接着対象物2の端部22を、それぞれ、規定部材3の端部33に揃えるように配置する。このとき、第1の接着対象物1の端部12と反対側の端部13と、第2の接着対象物2の端部22と反対側の端部23とが、互いに反対方向を向くように配置する。
これにより、図4に示すような試験サンプル5が得られる。
このような試験サンプル5の端部22付近と端部23付近を、荷重測定装置100の2つのチャック部にそれぞれ固定する。そして、第1の接着対象物1を、第2の接着対象物2に対して相対的に離間する方向に引っ張ることにより、第1の接着対象物1と第2の接着対象物2のいずれかが接着剤4と剥離したときの引張荷重を測定することができる。
【0042】
以上、本発明の接着強度測定方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、接着強度測定方法は、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
なお、接着剤に代えて、粘着剤等を用いることもできる。この場合、第4の工程を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の接着強度測定方法の第1実施形態を示す模式図(斜視図)である。
【図2】本発明の接着強度測定方法の第1実施形態を示す模式図(斜視図)である。
【図3】本発明の接着強度測定方法の第2実施形態を示す模式図(斜視図)である。
【図4】本発明の接着強度測定方法の第3実施形態を示す模式図(斜視図)である。
【符号の説明】
【0044】
1……第1の接着対象物 11、12、13……端部 2……第2の接着対象物 21、22、23……端部 3……規定部材 31……貫通孔 32……貯留空間 33、34……端部 35……上面 36……下面 37……固定手段 4……接着剤 5……試験サンプル 100……荷重測定装置 101……装置本体 102……支柱 103……クロスヘッド 104……ロードセル 105……制御部 106、107……チャック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の接着対象物同士を接着剤で接着し、該接着剤の接着強度を測定する接着強度測定方法であって、
前記一対の接着対象物のうちの一方の接着対象物上に、前記接着剤を供給する領域を規定する規定部材を配置する第1の工程と、
前記領域内に、前記接着剤を供給する第2の工程と、
前記接着剤に接触させるとともに、前記規定部材を介して、前記一方の接着対象物に他方の接着対象物を対向して配置する第3の工程と、
前記接着剤を硬化させる第4の工程と、
前記一方の接着対象物を、前記他方の接着対象物に対して相対的に離間する方向に移動させ、前記一対の接着対象物のうちのいずれか一方と前記接着剤とが剥離したときの引張荷重を測定する第5の工程とを有することを特徴とする接着強度測定方法。
【請求項2】
前記規定部材は、貫通孔を有する板状体で構成されている請求項1に記載の接着強度測定方法。
【請求項3】
前記規定部材は、その前記他方の接着対象物に臨む面が、実質的に前記接着剤に対する接着性を示さない低接着性を有する請求項1または2に記載の接着強度測定方法。
【請求項4】
前記規定部材は、撥液性を示す撥液材料を主材料として構成されたものである請求項3に記載の接着強度測定方法。
【請求項5】
前記規定部材は、その前記他方の接着対象物に臨む面に、撥液処理が施されたものである請求項3に記載の接着強度測定方法。
【請求項6】
前記規定部材は、前記一方の接着対象物に対する固定手段を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の接着強度測定方法。
【請求項7】
前記固定手段は、前記規定部材の前記一方の接着対象物に臨む面に形成された接着剤層で構成されている請求項6に記載の接着強度測定方法。
【請求項8】
前記領域は、平面視において、その形状が円形をなしている請求項1ないし7のいずれかに記載の接着強度測定方法。
【請求項9】
前記規定部材は、樹脂材料を主材料として構成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の接着強度測定方法。
【請求項10】
前記第2の工程において、前記規定部材の厚さを設定することにより、前記領域内に供給される前記接着剤の量を調整する請求項1ないし9のいずれかに記載の接着強度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−240327(P2007−240327A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63227(P2006−63227)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】