説明

接着性オルガノポリシロキサン組成物

【課題】湿熱耐久性に優れ、高温高湿雰囲下、更には、塩化カルシウムもしくはそれ以外の塩、およびそれらの水溶液(塩水)等に曝されても接着性能が経時で低下することのない接着性組成物及び、該接着性組成物の硬化物で接着又はシールされた構造体を提供する。
【解決手段】下記(A)〜(E)を含有する接着性オルガノポリシロキサン組成物(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン100質量部(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを(A)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たりケイ素原子に結合した該水素原子の量が0.5〜10個となる量(C)ヒドロシリル化反応用触媒(D)下記一般式(1)で表されるシラン化合物0.1〜10質量部


(E)酸無水物0.1〜4質量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着性オルガノポリシロキサン組成物に関するものであり、詳細には、比較的低温で硬化し、プライマーを使用しなくても金属、プラスチックなどの基材に対し良好に接着する事ができる自己接着型のオルガノポリシロキサン組成物に関し、特に湿熱耐久性に優れ、高温高湿雰囲気下、更には塩化カルシウムもしくは塩化カルシウム水溶液(塩水)等に曝された場合においても気密性能を失う事の無い接着性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物で接着又はシールされた構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を含有するオルガノハイドロジェンシロキサンとを含む付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物を白金系触媒の存在下で付加反応させて弾性硬化物を得ることはよく知られており、各種の組成物が提案されている。
【0003】
しかし、これらの組成物から得られる硬化物はいずれも金属、樹脂などに対する接着性に劣るため、これを電気回路のポッティングもしくはコーティング、モーター用コイルの含浸、テレビセット用フライバックトランスの含浸、半導体チップの回路基板への接合、フィルム状もしくは織物状樹脂などの含浸もしくはコーティング、または構造体の接合部のシールに用いた場合、硬化物と基材の界面に剥離が発生し、必要とする特性が得られないなどの不利な点があった。
【0004】
そのため、種々の基材に対して良好な接着性を有する付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物を得るべく、従来から検討が行われてきた。例えば、特許文献1には、ビニル基含有ジオルガノポリシロキサン、エポキシ基および/またはエステル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ならびにエポキシ基またはエステル基を含有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む付加硬化型組成物が記載されている。また、特許文献2には、トリアルコキシシリル基、オキシラン基およびヒドロシリル基を1分子中に有するオルガノポリシロキサンを含有する付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物が記載されている。しかし、これら従来の付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物の接着性能は、他の樹脂系接着剤、例えばエポキシ系接着剤と比較すると充分ではなかった。
【0005】
特許文献3には、下記式で表されるシラン化合物を配合した付加硬化型の接着性組成物が記載されており、該組成物は低温硬化で優れた接着性を有する硬化物を提供することが記載されている。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素原子又はアルキル基、Rは置換基若しくは非置換の一価炭化水素基、Rはアルキル基又はアルコキシアルキル基、aは0〜2の整数、nは0〜2の整数である)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭53−13508号公報
【特許文献2】特公昭59−5219号公報
【特許文献3】特開平5−148471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献3に記載の接着性組成物は、湿熱耐久性に劣り、高温高湿雰囲気下、更には降雪地域において融雪剤として用いられる塩化カルシウムもしくは塩化カルシウム水溶液(塩水)等に曝された場合、接着性能が経時で低下するという問題点があった。その為、接着性能の更なる向上が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、湿熱耐久性に優れ、高温高湿雰囲下、更には、塩化カルシウムもしくはそれ以外の塩、およびそれらの水溶液(塩水)等に曝されても接着性能が経時で低下することのない接着性オルガノポリシロキサン組成物及び、該接着性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物で接着又はシールされた構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため種々検討を行い、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物において、(D)下記一般式(1)で表されるシラン化合物と(E)酸無水物とを併せて配合することにより、その接着耐久性能が飛躍的に向上することを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、下記(A)〜(E)を含有する接着性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン (A)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たりケイ素原子に結合した該水素原子の量が0.5〜10個となる量、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒 触媒有効量
(D)下記一般式(1)で表されるシラン化合物 0.1〜10質量部
【化2】

(式中、R及びRは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは、置換または非置換の、炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシアルキル基であり、aは0〜2の整数であり、nは0〜2の整数である)
(E)酸無水物 0.1〜4質量部。
更に本発明は、上記接着性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物で接着又はシールされた構造体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接着性オルガノポリシロキサン組成物は、比較的低温でも硬化し、プライマーを使用しなくても金属、プラスチック等の基材に強固に接着する硬化物を形成することができる。従って、本発明の接着性オルガノポリシロキサン組成物は、電気電子機器の周辺部品や車載用部品のための接着剤、ポッティング材、コーティング材、シーリング材として有用である。特に、本発明の接着性オルガノポリシロキサン組成物は、高温高湿雰囲下、更には、降雪地域において融雪剤として用いられる塩化カルシウムもしくはそれ以外の塩、およびそれらの水溶液(塩水)等に曝されても気密性能を失うことのない硬化物を提供することができるため、車載用部品のケースのためのシーリング材として良好に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
【0013】
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分は本発明の組成物のベースポリマーであり、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。(A)成分の分子構造は特に制限されるものではなく、直鎖状構造、環状構造が挙げられ、これらの構造は分岐を有していてもよい。特には、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0014】
(A)成分の25℃における粘度は、100〜500,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特には、500〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。粘度が上記範囲内であると、組成物の取扱作業性と該組成物から得られるシリコーンゴムの物理的強度とを十分に確保することができる。粘度は回転粘度計で測定すればよい。
【0015】
ケイ素原子に結合したアルケニル基は炭素原子数が2〜8、さらには2〜4のものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられる。中でもビニル基であることが好ましい。該オルガノポリシロキサンが直鎖状構造を有する場合、アルケニル基は分子鎖末端および分子鎖側鎖のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよい。
【0016】
ケイ素原子に結合するアルケニル基以外の有機基は、非置換またはハロゲン置換された一価炭化水素基であればよく、例えば、メチル基、エチル基、ブロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びヘプチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等の炭素原子数6〜14のアリール基;ベンジル基、及びフェネチル基等の炭素原子数7〜14のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜3のハロゲン化アルキル基が挙げられる。中でもメチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0017】
直鎖状のジオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンが挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。環状構造または分岐構造を有するオルガノポリシロキサンとしては、式:RSiO0.5(Rはアルケニル基以外の非置換または置換の一価炭化水素基である。以下同様。)で示されるシロキサン単位と式:RSiO0.5(Rはアルケニル基である。以下同様。)で示されるシロキサン単位と式:RSiOで示される単位と式:SiOで示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:RSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiOで示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:RSiOで示されるシロキサン単位と式:SiOで示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RSiOで示されるシロキサン単位と式:RSiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:RSiO1.5で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0018】
上記式中、Rはアルケニル基以外の有機基として上述したものであり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及びヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のアリール基;ベンジル基、及びフェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。また、Rは、炭素原子数が2〜8、さらには2〜4であるアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、及びへプテニル基が挙げられる。
【0019】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分は分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個、好ましくは4〜100個、より好ましくは5〜50個程度)有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A)成分と反応する架橋剤として作用する。(B)成分は、従来公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであればよく、分子構造は特に制限されるものではない。例えば、線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが使用できる。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンが線状構造を有する場合、SiH基は分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0020】
(B)成分の一分子中のケイ素原子の数(重合度)は、好ましくは2〜1,000、より好ましくは3〜300、更により好ましくは4〜150である。また、(B)成分の25℃における粘度は、好ましくは0.1〜5,000mPa・s、より好ましくは0.5〜1,000mPa・s、更に好ましくは5〜500mPa・sである。粘度は回転粘度計で測定すればよい。
【0021】
本発明の(B)成分としては、例えば、下記平均組成式で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが用いられる。
[化3]
SiO(4−a−b)/2
(式中、Rは、脂肪族不飽和基を除く、非置換または置換の、炭素原子数1〜14、好ましくは1〜10の、ケイ素原子に結合した一価炭化水素基であり、aおよびbは、好ましくは0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦3.0、より好ましくは、0.9≦a≦2.0、0.01≦b≦1.0、かつ1.0≦a+b≦2.5を満足する正数である)
【0022】
上記Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロビル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換した基、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0023】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは公知の製法によって製造すればよい。例えば、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラハイドロシクロテトラシロキサン(場合によっては、該シクロテトラシロキサンとオクタメチルシクロテトラシロキサンとの混合物)と、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等の末端基源となるシロキサン化合物とを、あるいは、オクタメチルシクロテトラシロキサンと1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に−10〜+40℃程度の温度で平衡化反応させることによって得ることができる。
【0024】
該(B)成分としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:RSiO0.5(Rは(A)成分について定義および例示したとおりである。以下同様。)で示されるシロキサン単位と式:RHSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiOで示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiOで示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiOで示されるシロキサン単位と式:RSiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:HSiO1.5で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0025】
(B)成分の配合量は、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たり、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)の量が0.5〜10個、好ましくは1〜8個となる量である。(B)成分の配合量が少なすぎると組成物が十分に硬化せず、接着性が不十分となる場合があり、逆に多すぎると得られるシリコーンゴムの耐熱性が劣る場合がある。
【0026】
(C)ヒドロシリル化反応用触媒
(C)成分のヒドロシリル化反応用触媒は付加反応を促進するものであればよく、従来公知の触媒を使用すればよい。例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサンもしくはアセチレン化合物との配位化合物等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒が使用できる。特に好ましくは白金系触媒である。
【0027】
(C)成分の配合量は、ヒドロシリル化反応用触媒としての触媒有効量であれば特に制限されないが、(A)成分および(B)成分の合計量に対して、触媒金属元素に換算して質量基準で好ましくは0.1〜1,000ppm、より好ましくは1〜500ppm、更により好ましくは10〜100ppmの範囲である。添加量が少なすぎると触媒効果が不十分となることがあり、多すぎても触媒効果は変わらず、返って不経済となることがある。
【0028】
(D)シラン化合物
(D)成分は下記一般式(1)で表されるシラン化合物である。
【化4】

本発明において該シラン化合物は接着促進剤として作用する。該シラン化合物を配合する事により、比較的低温、例えば60℃程度の温度でも十分に硬化し、各種基材に対して優れた接着性を有する硬化物を提供することができる。
【0029】
前記一般式(1)において、R及びRは、互いに独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基である。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等を例示する事ができ、メチル基、エチル基が好ましい。また、RとRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。Rは、置換もしくは非置換の、炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、及びデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシル基、ナフチル基等のアリール基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ベンジル基、及びフェニルエチル基等のアラルキル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、及びシアノエチル基等のハロゲン置換やシアノ置換炭化水素基等を例示する事が出来る。Rは、炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基またはアルコキシアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、及びヘキシル基が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基メトキシエチル基、エトキシメチル基、及びエトキシエチル基等を例示する事が出来る。これらの中で、メチル基、エチル基が特に好ましい。aは0〜2の整数であり、好ましくは0、1である。nは0〜2の整数である。
【0030】
中でも以下に示すシラン化合物が好ましい。下記式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、Buはブチル基、Phはフェニル基、及びCyはシクロヘキシル基を意味する。また、aは0〜2の整数であり、より好ましくは0または1である。
[化5]
(MeO)3−a(Me)Si−CH−COOMe
(MeO)3−a(Me)Si−CH−COOEt
(MeO)3−a(Me)Si−CH−COOPr
(MeO)3−a(Me)Si−CH−COOC17
(MeO)3−a(Me)Si−CH−COOPh
(MeO)3−a(Me)Si−CH−COOCy
(MeO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOMe
(MeO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOEt
(MeO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOPr
(MeO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOPh
(MeO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOBu
(MeO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOC17
(MeO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOCHCH(Et)C
(MeO)3−a(Me)Si−CH(Et)−COOMe
(MeO)3−a(Me)Si−CH(Et)−COOEt
(MeO)3−a(Me)Si−CH(Et)−COOMe
(MeO)3−a(Me)Si−(CH−COOMe
(MeO)3−a(Me)Si−(CH−COOEt
(MeO)3−a(Me)Si−(CH−COOMe
(MeO)3−a(Me)Si−(CH−COOEt
(MeO)3−a(Et)Si−CH(Me)−COOMe
(MeO)3−a(Et)Si−CH(Me)−COOEt
(MeO)3−a(Et)Si−CH(Me)−COOBu
(MeO)3−a(Ph)Si−CH(Me)−COOMe
(MeO)3−a(Ph)Si−CH(Me)−COOEt
(MeO)3−a(Ph)Si−CH(Me)−COOC17
(EtO)3−a(Me)Si−CH−COOMe
(EtO)3−a(Me)Si−CH−COOEt
(EtO)3−a(Me)Si−CH−COOPr
(EtO)3−a(Me)Si−CH−COOC17
(EtO)3−a(Me)Si−CH−COOPh
(EtO)3−a(Me)Si−CH−COOCy
(EtO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOMe
(EtO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOEt
(EtO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOBu
(EtO)3−a(Me)Si−CH(Me)−COOCHCH(Et)C
(EtO)3−a(Et)Si−CH(Me)−COOEt
(EtO)3−a(Ph)Si−CH(Me)−COOMe
【0031】
より好ましくは下記に示すシラン化合物が挙げられる。
[化6]
(MeO)(Me)Si−CH(Me)−COOPh
(MeO)(Me)Si−CH(Me)−COOCHCH(Et)C
(MeO)(Me)Si−CH−COOMe
(MeO)(Me)Si−CH(Et)−COOMe
(MeO)(Me)Si−CH(Et)−COOEt
(MeO)(Me)Si−CH(Et)−COOMe
(MeO)(Et)Si−CH(Me)−COOMe
(MeO)(Et)Si−CH(Me)−COOEt
(MeO)(Et)Si−CH(Me)−COOBu
(MeO)(Ph)Si−CH(Me)−COOMe
(MeO)(Ph)Si−CH(Me)−COOEt
(MeO)(Ph)Si−CH(Me)−COOC17
(EtO)(Ph)Si−CH(Me)−COOMe
(EtO)(Et)Si−CH(Me)−COOEt
(MeO)Si−CH−COOMe
(MeO)Si−CH(Me)−COOCHCH(Et)C
(MeO)Si−(CH−COOMe
(MeO)Si−(CH−COOEt
(MeO)Si−(CH−COOMe
(MeO)Si−(CH−COOEt
(EtO)Si−CH(Me)−COOEt
【0032】
シラン化合物の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部の範囲である。上記下限値未満の場合には十分な接着性能を得ることができず、上記上限値超では経済的に不利になる。
【0033】
(E)酸無水物
酸無水物と上記(D)成分とを併せて配合することにより接着性組成物の接着性能が飛躍的に向上する。特に、湿熱耐久性及び耐薬品性に優れた硬化物を提供することができる。酸無水物は、室温で固体状でも液体状でもよく、フッ素原子を含むものであってもよい。本発明の酸無水物としては、環状脂肪族酸無水物、または芳香族酸無水物が好ましい。環状脂肪族酸無水物としては、無水コハク酸、アリルこはく酸無水物、ドデセニル無水コハク酸(DDSA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MeTHPA)、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物等が挙げられる。芳香族酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等が挙げられる。また、アクリル酸無水物、メタクリロイル酸無水物、酪酸無水物等を使用することもできる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
中でも、下記構造式で表される酸無水物、またはアリルこはく酸無水物が好ましい。
【化7】

【0035】
酸無水物の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1〜4質量部、好ましくは0.2〜3質量部の範囲である。酸無水物の配合量が上記下限値未満では、十分な接着性能が得られず、また上記上限値より多いと硬化性が低下したり、コスト的に不利になることがある。
【0036】
〔その他の成分〕
本発明の接着性オルガノポリシロキサン組成物は、上記(A)〜(E)成分に加え、任意の成分として制御剤を配合することができる。制御剤は、付加反応触媒に対して硬化抑制効果を有する化合物として知られている従来公知の制御剤を使用することができる。例えば、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物、硫黄含有化合物、1−エチニル−1−ヘキサノールなどのアセチレン系化合物、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、トリアリルイソシアヌル酸、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが挙げられる。制御剤による硬化遅延効果の度合は、制御剤の化学構造によって異なる。制御剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜調整すればよい。通常、(A)成分100質量部に対して0.001〜5質量部、好ましくは0.005〜2質量部で配合する。制御剤の配合量が少なすぎると貯蔵安定性向上効果や反応制御効果が不十分となることがあり、配合量が多すぎると該組成物の硬化が著しく遅くなることがある。
【0037】
また、その他の成分として、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、タルク、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機充填剤、および、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面処理した充填剤が挙げられる。特には、ヘキサメチルジシラザンで処理されたシリカが好適である。また、充填剤としては、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダーなども挙げられる。充填剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜調整すればよい。通常、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは3〜50質量部で配合する。尚、高い熱伝導性が要求される場合は、500質量部程度まで配合してもよい。
【0038】
更に、本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲において、ケイ素原子に結合した水素原子またはアルケニル基を一分子中に一個含有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子およびアルケニル基のどちらをも含有しないオルガノポリシロキサン、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、可塑剤、チキソトロピー付与剤、顔料、染料、防かび剤等を配合してもよい。
【0039】
本発明の接着性オルガノポリシロキサン組成物は、上記(A)〜(E)成分、及び必要に応じてその他の成分を、プラネタリーミキサー、品川ミキサー、万能混練機、ニーダー等の混合手段によって均一に混練することにより調製することができる。(D)成分及び(E)成分の配合方法は特に制限されない。例えば、(D)成分または(E)成分をそのままの状態でシリコーン組成物に添加・分散させてもよいし、(D)成分または(E)成分を適当な溶媒に溶かした上でシリコーン組成物に添加・分散させてもよい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、t−アミルアルコール、ブチルセロソルブ、3−メチル−3−メトキシブタノール、ダイアセトンアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルフォキシドなどの溶媒を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明の接着性オルガノポリシロキサン組成物は、比較的低温で硬化し、プライマーを使用しなくても金属及びプラスチック基材、特には、アルミニウムやポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等に対して、強固に接着する硬化物を提供することができる。従って、該組成物は、電気電子機器の周辺部品や車載用部品のための接着剤、ポッティング材、コーティング材、及びシーリング材などとして使用することができる。
【0041】
本発明の組成物は、用途に応じて所定の基材上に塗布した後、加熱することにより硬化させることができる。組成物の硬化条件は使用する組成物の量に従い適宜選択すればよいく、特に制限されるものではない。通常、硬化温度は60〜180℃、特には100〜150℃であり、硬化時間は硬化温度等の成形条件により異なるが、通常、1分〜4時間程度である。本発明の組成物は、比較的低温、例えば60℃程度の温度でも十分に硬化し、各種基材に対して優れた接着性を有する硬化物を提供することができる。
【0042】
本発明の組成物を硬化して得られる硬化物は、飽和塩水中及び/または高温高湿雰囲気下に曝されてもその接着性能を維持することができる。即ち、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物は、該硬化物を飽和塩水中に23℃下で浸漬後、及び/または、該硬化物を温度85℃以上、相対湿度85%以上の高温高湿雰囲気下に長時間、例えば500時間程度曝した後の、硬化物のJIS K 6850に準拠した引張せん断接着力を、硬化物を飽和塩水中に浸漬前及び高温高湿下に曝す前のせん断接着力の80%以上、特には90%以上に保持することができる。引張せん断接着力はJIS K 6850に規定する「接着剤―剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法」に準じて測定することができる。また、該硬化物は、飽和塩水中に23℃下で浸漬された後、及び/または、該硬化物を温度85℃以上、相対湿度85%以上の高湿雰囲気下に長時間、例えば500時間程度置かれた後において、せん断接着力0.5MPa以上、特には0.9MPa以上を有することができる。尚、本発明において飽和塩水とは、塩化カルシウムもしくはそれ以外の塩を用いて調製された飽和水溶液である。
【0043】
本発明は上記組成物を基材上に塗布し、硬化して得られる構造体を提供する。基材は金属及びプラスチック基材であり、金属としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、ステンレススチール、真鍮等が挙げられる。プラスチック基材としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ウレタン(PU)樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ナイロン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶樹脂等が挙げられる。特には、アルミニウムやポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂が好適である。
【0044】
本発明の接着性オルガノポリシロキサン組成物は、比較的低温で硬化し、プライマーを使用しなくても金属、プラスチック等の基材に強固に接着する硬化物を提供することができる。従って、本発明の接着性オルガノポリシロキサン組成物は、接着剤、ポッティング材、コーティング材をはじめ、シーリング材、例えば電気電子機器の周辺部品や車載用部品ケースのような、金属および/または樹脂からなる構造体のシーリング材として有用である。また、本発明の接着性オルガノポリシロキサン組成物は湿熱耐久性に優れ、高温高湿雰囲下、更には、降雪地域において融雪剤として用いられる塩化カルシウムもしくはそれ以外の塩、およびそれらの水溶液(塩水)等に曝されても気密性能を失うことのない硬化物を提供することができるため、車載用部品のケースのシーリング材として良好に使用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において「部」は「質量部」を意味する。また、粘度は25℃において回転粘度計を用いて測定した値である。
【0046】
[実施例1]
下記(A)〜(E)成分及びその他の成分を、下記に示す配合量で混合してオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が10Pa・sジメチルポリシロキサン、 100部
(B)分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(粘度が10mPa・s、SiH基含有量=0.7質量%) 2.0部
((B)成分中のSiH基/(A)成分中のビニル基(モル比)=2.5)
(C)塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体 (A)および(B)成分の合計量に対して、白金金属元素に換算して質量基準で30ppm
(D)下記に示すシラン化合物(a) 2.0部
[化8]
(MeO)Si−CH−COOMe (a)
(E)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA) 0.5部
(F)その他の成分
制御剤:3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール 0.15部
疎水性シリカ:ヘキサメチルジシラザンで処理されたシリカ(比表面積120m/g)15部
【0047】
[実施例2]
(D)シラン化合物(a)を以下に示すシラン化合物(b)
[化9]
(MeO)(Me)Si−CH−COOMe (b)
に替えた以外は実施例1と同様の組成で各成分を混合し、オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0048】
[実施例3]
(D)シラン化合物(a)を以下に示すシラン化合物(c)
[化10]
(EtO)Si−CH(Me)−COOEt (c)
に替えた以外は実施例1と同様の組成で各成分を混合し、オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0049】
[実施例4]
(D)シラン化合物(a)2.0部を以下に示すシラン化合物(d)
[化11]
(MeO)Si−CH(Me)−COOCHCH(Et)C(d)
2.5部に替えた以外は実施例1と同様の組成で各成分を混合し、オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0050】
[実施例5]
(D)シラン化合物(a)2.0部を以下に示すシラン化合物(e)
[化12]
(MeO)(Me)Si−CH(Me)−COOCHCH(Et)C(e)
に替えた以外は実施例1と同様の組成で各成分を混合し、オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0051】
[実施例6]
(D)シラン化合物(a)を以下に示すシラン化合物(f)に替え、
[化13]
(MeO)(Me)Si−CH(Me)−COOPh (f)
(E)酸無水物を下記化合物(j)
【化14】

に替えた以外は実施例1と同様の組成で各成分を混合し、オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0052】
[比較例1]
(D)成分を含有しない以外は実施例1と同様の組成で各成分を混合し、オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0053】
[比較例2]
(D)シラン化合物(a)を以下に示すシラン化合物(g)
【化15】

に替えた以外は実施例1と同様の組成で各成分を混合し、オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0054】
[比較例3]
(D)シラン化合物(a)を以下に示すシラン化合物(h)2.5部
【化16】

に替えた以外は実施例1と同様の組成で各成分を混合し、オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0055】
[比較例4]
(D)シラン化合物(a)2.0部を以下に示すシラン化合物(i)0.5部
[化17]
CH=CH−Si−(OMe)(i)
に替えた以外は実施例1と同様の組成で各成分を混合し、オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0056】
[比較例5]
(E)成分を含有しない以外は実施例1と同様の組成で各成分を混合し、オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0057】
せん断接着力測定
アルミダイキャスト(ADC12)及びPBT(ポリブチレンテレフタレート)製テストピース各2枚の間に、調整した各組成物を2mm厚になるように流し込み、100℃にて1時間加熱して硬化させた。硬化物を室温に戻して、JIS K 6850に規定する「接着剤―剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法」に準じ、ショッパー型引張り試験機を用い、引張り速度50mm/分の条件でせん断接着力を測定した。次いで、せん断接着力を測定した後、各サンプルの破壊状態を目視にて観察し、硬化物の凝集破壊率を求めた。
【0058】
耐久性試験
前記と同様の方法で、アルミダイキャスト(ADC12)及びPBT(ポリブチレンテレフタレート)製テストピースの各々を用いた試験用サンプルを作製した。上水を用いて常温(23℃)の塩化カルシウム飽和水溶液を作製し、該飽和水溶液中に各試験用サンプルを浸漬させた。3分浸漬した後、85℃/85%R.Hの条件に設定した恒温恒湿器中に該試験用サンプルを静置し、500時間経過後の硬化物のせん断接着力および凝集破壊率の測定を上記と同様の方法により行った。
【0059】
アルミダイキャスト(ADC12)に対する接着力試験の結果を表1に示す。
【0060】
[表1]

【0061】
PBT(ポリブチレンテレフタレート)に対する接着力試験の結果を表2に示す。
【0062】
[表2]

【0063】
表1および表2に示すとおり、本発明のシラン化合物(D)を含有しない組成物から調製される比較例1の硬化物は初期段階において基材に対する接着性が悪い。本発明のシラン化合物(D)のみ含有し、酸無水物(E)を含有しない組成物から調製される比較例5の硬化物(即ち、特開平5−148471号公報に記載の接着性組成物の硬化物)は、耐久性試験後に硬化物の接着強度および凝集破壊率が低下しており、接着性能を維持することができない。また、本発明のシラン化合物に替えてエポキシ系またはアリル系の接着性付与剤を配合した組成物から調製される比較例2〜4の硬化物は、耐久性試験により接着性能を維持することができない。さらに、試験基材にアルミダイキャストを用いた試験において、比較例1〜5の硬化物は、耐久性試験後にアルミダイキャストの剥離界面が塩で腐食され黒色に変色していた。これに対し、実施例の硬化物はシラン化合物(D)と酸無水物(E)を併用することによって、いずれの基材に対しても初期から高い接着性能を示し、かつ、耐久性試験後においても高い接着性能を維持していた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の接着性オルガノポリシロキサン組成物は、比較的低温で硬化し、プライマーを使用しなくても金属及びプラスチック基材に対して強固に接着する硬化物を形成することができ、かつ、高温高湿雰囲下、更には、降雪地域において融雪剤として用いられる塩化カルシウムもしくはそれ以外の塩、およびそれらの水溶液(塩水)等に曝されても気密性能を失うことのない硬化物を提供することができる。従って、本発明の組成物は、電気電子機器の周辺部品や車載用部品のための接着剤、ポッティング材、コーティング材、及びシーリング材、特には、車載用部品のケースのためのシーリング材として良好に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)を含有する接着性オルガノポリシロキサン組成物
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン (A)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たりケイ素原子に結合した該水素原子の量が0.5〜10個となる量、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒 触媒有効量
(D)下記一般式(1)で表されるシラン化合物 0.1〜10質量部
【化1】

(式中、R及びRは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは、置換または非置換の、炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシアルキル基であり、aは0〜2の整数であり、nは0〜2の整数である)
(E)酸無水物 0.1〜4質量部。
【請求項2】
請求項1記載の接着性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物で接着又はシールされた構造体。

【公開番号】特開2012−251087(P2012−251087A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125429(P2011−125429)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】