説明

接着性水性エマルジョン組成物、及びこれを用いた積層体

【課題】EVOH系フィルム及び木質材料等の多孔質基材への接着性が高く、かつ、耐熱性や耐水性を有する接着性水性エマルジョン組成物を得ることを目的とする。
【解決手段】エチレン含量が35〜70重量%で、テトラヒドロフラン不溶分が80重量%未満のエチレン−ビニルエステル共重合体からなる(A)成分、エチレン含量が35重量%未満で、テトラヒドロフラン不溶分が80重量%以上、ガラス転移温度が−20〜10℃のエチレン−酢酸ビニル−多官能性単量体共重合体からなる(B)成分、平均粒子径が30〜200nmであり、ガラス転移温度が30〜80℃又は鉛筆硬度が3H〜6Hの極性基含有樹脂からなる(C)成分の各成分を含有し、上記(A)成分100重量部(固形分)あたり、上記(B)成分を30〜200重量部(固形分)、及び上記(C)成分を1〜50重量部(固形分)を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、接着性水性エマルジョン組成物、及びこれを用いることにより得られる、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)からなる層又はエチレン−ビニルアルコール樹脂(EVOH)からなる層を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、木質材料は、吸湿性が高く、吸湿によって反りが生じる場合がある。この吸湿を防止するため、木質材料の表面に、メラミン系、フェノール系、ウレタン系接着剤を介して、ポリエチレンシート、ポリ塩化ビニルシート等を積層させて、積層体とすることが、特許文献1に記載されている。
【0003】
ところで、防湿性を向上させるフィルムとしては、エチレン−ビニルアルコール系フィルム(EVOH系フィルム)が知られている。そして、このフィルムを上記特許文献1の樹脂フィルムとして使用することが考えられる。しかし、ここに記載の接着剤を用いた場合、EVA系フィルムの接着強度が必ずしも、十分ではない。
【0004】
これに対し、EVOH系フィルムを接着する接着剤として、ウレタンプレポリマーにグリコール系硬化剤を添加して完全硬化させた接着剤が特許文献2に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−167811号公報
【特許文献2】特開昭58−208047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の接着剤は、木質材料に対する浸透性が小さく、木質材料への接着強度が十分でない。
【0007】
また、特許文献1や特許文献2に記載の接着剤は、耐熱性や耐水性の面で十分な効果を有さない。
【0008】
そこで、この発明は、かかる問題点を解決し、EVOH系フィルム及び木質材料等の多孔質基材への接着性が高く、かつ、耐熱性や耐水性を有する接着性水性エマルジョン組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、エチレン含量が35〜70重量%で、テトラヒドロフラン不溶分が80重量%未満のエチレン−ビニルエステル共重合体からなる(A)成分、エチレン含量が35重量%未満で、テトラヒドロフラン不溶分が80重量%以上、ガラス転移温度が−20〜10℃のエチレン−酢酸ビニル−多官能性単量体共重合体からなる(B)成分、平均粒子径が30〜200nmであり、ガラス転移温度が30〜80℃又は鉛筆硬度が3H〜6Hの極性基含有樹脂からなる(C)成分の各成分を含有し、上記(A)成分100重量部(固形分)あたり、上記(B)成分を30〜200重量部(固形分)、及び上記(C)成分を1〜50重量部(固形分)を含有することにより、上記の課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、(A)成分を含有させることにより、EVA系フィルムやEVOH系フィルムへの接着性を高めることができ、(C)成分を含有させることにより、接着剤層の応力集中を緩和して、EVA系フィルムへの接着性を高めることができる。また、(B)成分を含有させることにより、耐熱性や耐水性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかる接着性水性エマルジョン組成物は、下記の(A)成分〜(C)成分を含有してなる組成物である。
【0012】
[(A)成分]
上記(A)成分は、エチレン−ビニルエステル共重合体からなる成分である。このビニルエステルとしては、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。
【0013】
上記(A)成分のエチレン含量は、35重量%以上であり、40重量%以上が好ましい。35重量%より少ないと、EVAやEVOHへの接着力が低下する傾向がある。一方、エチレン含量の上限は、70重量%であり、60重量%が好ましい。70重量%より多いと、EVAエマルジョンの製造が困難となる傾向がある。
【0014】
上記(A)成分を用いることにより、EVAフィルムやEVOHフィルムへの接着性を高めることができる。
【0015】
[(B)成分]
上記(B)成分は、エチレン−酢酸ビニル−多官能性単量体共重合体からなる成分である。上記多官能性単量体としては、アクリル基、メタクリル基及びアリル基から選ばれる少なくとも1つの官能基を複数個有する単量体が挙げられる。官能基の数が1つだと、架橋反応が生じないからである。なお、好ましい官能基数は、2つ以上4つ以下である。官能基の数が4を超えて多いと、架橋反応が制御しにくくなり、加工時にも溶融しない粒子が生成し、フィルム・シート成形時のブツや欠陥の原因となることがある。
【0016】
このような単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0017】
上記(B)成分のテトラヒドロフラン不溶分(THF不溶分)は、80重量%以上であり、90重量%以上が好ましい。80重量%より少ないと、耐熱性が不十分となる傾向がある。
【0018】
また、上記(B)成分のガラス転移温度(Tg)は、−20℃以上であり、−10℃以上が好ましい。−20℃より低いと、耐熱性が不十分となる傾向がある。一方、Tgの上限は、10℃であり、5℃が好ましい。10℃より高いと、造膜性が低下する傾向がある。
【0019】
上記(B)成分を含有させることにより、耐熱性を向上させることができ、また、均一な造膜が可能となることで、耐水性を改良することができる。
【0020】
[(C)成分]
上記(C)成分は、極性基含有樹脂からなる成分である。上記極性基含有樹脂としては、極性基として、ウレタン基、オキサゾリン基、グリシジル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する単量体を重合した樹脂が挙げられる。
【0021】
このような極性基含有樹脂の具体例としては、ポリ(オキサゾリン)樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル・ウレタン複合樹脂等が挙げられる。
【0022】
上記(C)成分は粒状であり、その平均粒子径は、30nm以上であり、50nm以上が好ましい。30nmより小さいと、組成物調製後の粘度上昇が大きく、作業性が劣ると共に、ポットライフが短くなる傾向がある。一方、平均粒子径の上限は、200nmであり、150nmが好ましい。200nmより大きいと、塗工時の造膜性が低下する傾向がある。
【0023】
また、上記(C)成分は、所定範囲のガラス転移温度(Tg)を有するか、所定範囲の鉛筆硬度を有することが必要である。具体的には、Tgは、30℃以上であり、40℃以上が好ましい。一方、Tgの上限は、80℃であり、70℃が好ましい。また、鉛筆硬度は、3H以上の硬さであり、4H以上の硬さが好ましい。一方、鉛筆硬度の上限は、6Hであり、5Hが好ましい。
【0024】
Tgが30℃未満、又は鉛筆硬度が3Hより軟らかいと、剥離時に界面剥離が起こりやすくなる。また、Tgが80℃より高いか、又は鉛筆硬度が6Hより硬いと、造膜性が低下し、接着力が得難くなる傾向がある。
【0025】
上記(C)成分を含有させることにより、EVA系フィルムへの接着性を高めることができる。
【0026】
このような(C)成分としては、アビシア社製:R−9679(ウレタンエマルジョン)、(株)日本触媒製:K−2030E(オキサゾリン系エマルジョン)、中央理化工業(株)製:SU100(アクリルウレタンエマルジョン)等が挙げられる。
【0027】
[(D)成分]
上記(A)成分〜(C)成分に加えて、必要に応じて、(D)成分として、多価イソシアネート化合物を加えてもよい。これを加えることにより、耐熱性、耐水性を一層向上させることができる。
【0028】
この(D)成分の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート及びそのビウレット体やイソシアヌル化物、メチレンジイソシアネート、ポリ(メチレンジイソシアネート)等を挙げることができる。
【0029】
上記(D)成分を含有させることにより、耐水性、耐熱性の向上という特徴を発揮することができる。
【0030】
上記(A)成分と(B)成分との混合比は、上記(A)成分100重量部(固形分)あたり、上記(B)成分は、固形分で、30重量部以上が好ましく、50重量部以上がより好ましい。30重量部より少ないと、耐熱性が悪化する傾向がある。一方、混合量の上限は、200重量部が好ましく、150重量部がより好ましい。200重量部より多いと、接着性が不足することがある。
【0031】
さらに、上記(A)成分と(C)成分との混合比は、上記(A)成分100重量部(固形分)あたり、上記(C)成分は、固形分で、1重量部以上が好ましく、2重量部以上がより好ましい。1重量部より少ないと、界面剥離を起こしやすくなる傾向がある。一方、混合量の上限は、50重量部が好ましく、30重量部がより好ましい。50重量部より多いと、造膜性が不足する傾向がある。
【0032】
また、上記(D)成分を用いる場合、その混合比は、上記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量(固形分)に対し、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。0.5重量%より少ないと、耐熱性、耐水性の改良効果が十分得られないことがある。一方、混合比の上限は、30重量%が好ましく、20重量%がより好ましい。30重量%より多いと、ポットライフ(可使時間)が短くなりやすい。
【0033】
この発明にかかる接着性水性エマルジョンは、例えば、上記の(A)成分〜(C)成分を前もって乳化重合等の重合を行って、それぞれの水分散液を調製し、必要量ずつを混合・撹拌することによって製造することができる。また、上記(D)成分を使用する場合は、上記の(A)成分〜(C)成分の混合液に、(D)成分又はその水溶液を混合・撹拌することによって製造することができる。
【0034】
上記(A)成分は、例えば、耐圧性の反応容器に、水、酢酸ビニルやポリ酢酸ビニル又はポリビニルアルコールを混合し、次いで、エチレンガスを加圧注入し、加温した後、酢酸ビニル及び反応開始剤を添加して重合を行うことにより得られる。
【0035】
また、上記(B)成分は、例えば、耐圧性の反応容器に、水、酢酸ビニルやポリ酢酸ビニル又はポリビニルアルコールを混合し、次いで、エチレンガスを加圧注入し、加温した後、多官能性モノマー、酢酸ビニル及び反応開始剤を添加して重合を行うことにより得られる。
【0036】
さらに、上記(C)成分は、種々の成分があるが、例えば、アクリルウレタン複合エマルジョンは、次の方法で製造することができる。まず、ジオール成分及びアクリル系単量体を混合し、昇温する。次いで、ポリイソシアネート成分及びウレタン重合触媒を連続的に添加して、ウレタン重合を行う。続いて、水を加え、所定温度に保持し、ラジカル重合触媒を加えてラジカル重合を行う。これにより、ポリウレタンとビニル重合体を含むアクリルウレタン複合エマルジョンが得られる。
【0037】
上記の製造方法で得られた接着性水性エマルジョンを用いて、多孔質基材、エチレン−酢酸ビニル樹脂からなる層(EVA層)、エチレン−ビニルアルコール樹脂からなる層(EVOH層)、他の樹脂層から選ばれる2つの層を相互に接着し、積層体を得ることができる。
【0038】
この積層体の具体例としては、EVA層と多孔質基材とを上記接着性水性エマルジョンで接着させた積層体、EVOH層と多孔質基材とを上記接着性水性エマルジョンで接着させた積層体、EVA層とEVOH層とを上記接着性水性エマルジョンで接着させた積層体、EVA層と他の樹脂からなる層とを上記接着性水性エマルジョンで接着させた積層体、EVOH層と他の樹脂からなる層とを上記接着性水性エマルジョンで接着させた積層体等が挙げられる。
【0039】
上記多孔質基材としては、中密度繊維板(MDF)等の木質材料等を挙げることができる。また、上記の他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を用いて、この発明をより具体的に説明する。まず、物性測定方法、評価方法及び使用した原材料について説明する。
【0041】
<物性測定・評価方法>
[エチレン単位含量の測定]
JIS K7192−1999にしたがって、エチレン−酢酸ビニル(EVA)樹脂中の酢酸ビニル含有量を測定し、これを100重量%から差し引くことで、エチレン単位の含有量を算出した。
【0042】
[粘度の測定]
JIS K6828−1996に記載の方法にしたがって、BH型回転粘度計を用い、10rpmの条件で測定した。
【0043】
[不揮発分の測定]
JIS K6828−1996に記載の方法にしたがって測定した。
【0044】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
ビニル重合体中の各構成単量体a,b,…の構成重量分率をWa,Wb,…とし、各構成単位a,b,…の単独重合体のガラス転移温度をTga,Tgb,…としたとき、下記に示すFOXの式で、共重合であるビニル重合体のTgの値を求めた。
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+…
【0045】
[THF不溶分の測定]
試料を1g量り取り、真空乾燥機中で、常温・減圧下で5時間乾燥させた固形物40mgを、テトラヒドロフラン(THF)20mlに溶解させ、24時間放置後、ポリフロンフィルター(ADVANTEC社製:PF100 38A04400)でろ過し、105℃で3時間簡素後のゲル物の重量を測定した。そして、下記の式を用いてTHF不溶分を算出した。
THF不溶分(%)=(40mg−ゲル物の重量)/40mg×100
【0046】
[粒子径]
粒子径測定器(大塚電子(株)製:ELS−8000)を用い、散乱強度が8000−12000となるように、試料をイオン水で希釈し、測定した。
【0047】
[鉛筆硬度]
ガラス板上に、測定対象の試料を0.1mm厚となるようにアプリケーターで塗布し、予備乾燥(23℃×10分)後、80℃×24時間処理し、サンプル板を作成した。
得られたサンプル板を用い、JIS 5600−5−4(引っかき硬度(鉛筆法))に準拠して試験を行った。まず、柔らかい鉛筆から試験を行い、初めて傷が付いた鉛筆の硬度を結果とした。
【0048】
[軟化温度]
JIS K7210(プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトフローレイトの試験方法)に準拠して行った。
まず、後述する基材上に、測定対象の試料1.5〜1.6gをアプリケーターで塗布し、23℃×50%RHで7日間処理し、サンプル皮膜を作成した。
次いで、高化式フローテスター((株)島津製作所製:島津フローテスター(FT−500))にて、1mmφ×1mmLのダイを用い、荷重10kg、ホールド時間を10分として、3℃/分の割合で40℃から300℃まで昇温した際の、プランジャーが降下を開始した温度を、降下量と温度(時間)との関係を記録したチャート上から読み取って、試料の軟化開始温度(℃)とした。
【0049】
[接着強度]
測定対象の試料を、後述するシートに、塗布厚0.1mmのアプリケーターで100g/m塗布し、80℃に設定された熱風循環乾燥機中で1分間乾燥させ、後述する基材と貼り合わせた後、ハンドゴムロールで2往復圧着し、加熱しないヒートロールへ3回通した。その後、23℃、50%RHで3日間養生し、25mm幅に切断して試験片を作成した。なお、上記ヒートロールは、テスター産業(株)製:小型卓上テストラミネーターSA−1010(脱気ロール圧:0.4MPa、ロール速度:4m/分、ロールの種類:スチールロール/ゴムロール、ゴムロールの硬度:60、スチールロールの表面温度:室温と同じ)を用いた。
23℃、50%RHの雰囲気下で、上記試験片のシートの180°角引っ張り接着力を、東洋ボードウィン引張試験機(テンシロン・レオメーター)を用いて、引張速度200mm/minで測定し、剥離強度を測定した(単位:kN/m)。
【0050】
[接着状態]
上記[接着強度]で製造した試験片を手で引き剥がし、目視で剥離状態(界面剥離、基材破壊等)を観察した。
【0051】
[耐熱クリープ]
上記[接着強度]で製造した試験片を、上記シートに貼り合わせ、次いで、上記試験片の一部を上記シートから剥離させ、その剥離面に90°角方向に4.9Nの静荷重をかけて、50℃に設定した熱風循環乾燥機中で1時間静置した。1時間経過後の上記シートの剥離の長さを測定した。
【0052】
[JAS2類浸漬剥離試験]
普通合板の日本農林規格に規定する温水浸漬試験(JAS2類浸漬剥離試験)にしたがって試験を行った。
基材:JAS1類合格合板。
被着体:測定対象試料。
塗工量:100g/m(片面)。
オープンタイム:0分。
閉鎖堆積時間:10分。
圧締:0.005N/mm×16時間。
養生:23°、50%RH(JIS標準状態)。
以上のように貼り合わせた接着体から1辺が75mmの正方形状のものを4片作成する。この試験片を70±3℃の温水中に2時間浸漬した後、60±3℃で3時間乾燥した。
同一接着層における剥離しない部分の長さが、それぞれの側面(接着側面)において、50mm以上であれば合格とした。
【0053】
<原材料>
[(A)成分]
(EVA1の製造)
水120重量部に、酢酸ビニル8重量部、PVA1((株)クラレ製:クラレポバール217(商品名)(重合度1700、ケン化度88モル%)1.6重量部、PVA2((株)クラレ製:クラレポバール205(商品名)(重合度500、ケン化度88モル%)4.9重量部、及び硫酸第一鉄・七水和物0.005重量部を溶解した液を、耐圧性の反応容器に入れた。初期の反応容器中における酢酸ビニル濃度は5.4重量%であった。
次に、反応容器内を窒素ガスで置換し、エチレンで6.7MPaまで加圧し、反応温度を50℃に設定した。続いて、過酸化水素水0.2重量部とロンガリット(ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム)1.06重量部のそれぞれを水で希釈して滴下した。同時に、酢酸ビニル92重量部を10時間連続添加し、圧力を6.7MPaで保ち、温度も50℃を維持した。さらに、未反応酢酸ビニル濃度が1重量%となるまで過酸化水素溶液を添加した後、未反応エチレンガスを除去してエチレン−ビニルエステル重合物の水性エマルジョン(以下、「EVA1」と称する。)を得た。
得られたエチレン−ビニルエステル重合体のエチレン単位は51重量%、酢酸ビニル単位は49重量%、不揮発分は53重量%、粘度は1400mPa・sであった。
【0054】
[(B)成分]
(EVA2の製造)
水85重量部に、酢酸ビニル100重量部、PVA1を3.5重量部、PVA2を1.7重量部、硫酸第一鉄・七水和物0.002重量部、酢酸ナトリウム0.06重量、及び酢酸0.1重量部を溶解した液を、耐圧性の反応容器に入れた。初期の反応容器中における酢酸ビニル濃度は53重量%であった。
次に、反応容器内を窒素ガスで置換し、エチレンで6.5MPaまで加圧し、反応温度を60℃に設定した。続いて、過酸化水素水0.15重量部とロンガリット0.4重量部とを含む水溶液、及び酢酸ビニル5重量部、並びに多官能性モノマーであるトリアリルイソシアヌレート0.2重量部を含む溶液を、それぞれ上記反応容器にほぼ連続的に添加して重合を開始させ、さらに、容器内の液温も60℃に維持して7時間重合を続けた。
重合反応終了後、反応容器を冷却し、未反応エチレンガスを除去した後、生成物を取り出した。得られたエチレン−ビニルエステル重合物の水性エマルジョン(以下、「EVA2」と称する。)中の酢酸ビニル単量体の残留量は1重量%未満であった。
得られたエチレン−ビニルエステル重合体のエチレン単位は30重量%、酢酸ビニル単位は70重量%、不揮発分は55重量%、粘度は3000mPa・sであった。
【0055】
(EVA3の製造)
水85重量部に、酢酸ビニル100重量部、PVA1を3.5重量部、PVA2を1.7重量部、硫酸第一鉄・七水和物0.002重量部、酢酸ナトリウム0.06重量、及び酢酸0.1重量部を溶解した液を、耐圧性の反応容器に入れた。初期の反応容器中における酢酸ビニル濃度は53重量%であった。
次に、反応容器内を窒素ガスで置換し、エチレンで5MPaまで加圧し、反応温度を60℃に設定した。続いて、過酸化水素水0.15重量部とロンガリット0.4重量部とを含む水溶液、並びに多官能性モノマーであるトリアリルイソシアヌレート0.2重量部、及び酢酸ビニル5重量部を含む溶液を、それぞれ上記反応容器にほぼ連続的に添加して重合を開始させ、さらに、容器内の液温も60℃に維持して5時間重合を続けた。重合反応終了後、反応容器を冷却し、未反応エチレンガスを除去した後、生成物を取り出した。得られたエチレン−ビニルエステル重合物の水性エマルジョン(以下、「EVA3」と称する。)中の酢酸ビニル単量体の残留量は1重量%未満であった。
得られたエチレン−ビニルエステル重合体のエチレン単位は18重量%、酢酸ビニル単位は82重量%、不揮発分は55重量%、粘度は3500mPa・sであった。
【0056】
(EVA4の製造)
上記EVA3の製造方法において、酢酸ビニル100重量部中の1重量部をアクリル酸で置き換え、PVA1を3重量部、PVA2を6重量部、エチレン圧力を6.5MPa、重合時間を7時間としたこと以外は、上記EVA3の製造方法と同様にしてエチレン−ビニルエステル重合物の水性エマルジョン(以下、「EVA4」と称する。)を得た。
得られたエチレン−ビニルエステル重合体のエチレン単位は18重量%、酢酸ビニル単位は81重量%、不揮発分は55重量%、粘度は3000mPa・sであった。
【0057】
(EVA5の製造)
EVA3の製造において、トリアリルイソシアヌレートを使用しなかった以外は、EVA3と同様にして水性エマルジョン(EVA5)を得た。得られたEVA5のエチレン単位は18重量%、酢酸ビニル単位は82重量%、不揮発分は55重量%、粘度1300mmPa・sであった。
【0058】
[(C)成分]
(C)成分として、下記の表1に示す材料を用いた。
【0059】
【表1】

【0060】
[(D)成分]
・硬化剤…多価イソシアネート(中央理化工業(株)製:BA−11B)
【0061】
[積層材料]
・基材…多孔性材料(中密度繊維板(MDF)、ホクシン(株)製;TMOEA)
・樹脂シート…エバールシート(クラレトレーディング(株)製:E−20(エチレン:44重量%含有))
【0062】
(実施例1〜4、比較例1〜6)
(A)成分〜(D)成分を表2に示す割合で混合し、撹拌することにより、水性エマルジョン組成物を製造した。
得られた水性エマルジョン組成物を表2に示す多孔性材料に、80g/m(有姿)となるように塗工し、表2に示す樹脂シートを積層して積層体を得た。得られた積層体を用いて、上記の方法にしたがって、各評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0063】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:エチレン含量が35〜70重量%で、テトラヒドロフラン不溶分が80重量%未満のエチレン−ビニルエステル共重合体、
(B)成分:エチレン含量が35重量%未満で、テトラヒドロフラン不溶分が80重量%以上、ガラス転移温度が−20〜10℃のエチレン−酢酸ビニル−多官能性単量体共重合体、
(C)成分:平均粒子径が30〜200nmであり、ガラス転移温度が30〜80℃又は鉛筆硬度が3H〜6Hの極性基含有樹脂、
の各成分を含有し、
上記(A)成分100重量部(固形分)あたり、上記(B)成分を30〜200重量部(固形分)、及び上記(C)成分を1〜50重量部(固形分)を含有してなる接着性水性エマルジョン組成物。
【請求項2】
上記(A)成分のエチレン含量が40〜70重量%である請求項1に記載の接着性水性エマルジョン組成物。
【請求項3】
上記(B)成分中の多官能単量体が、アクリル基、メタクリル基及びアリル基から選ばれる少なくとも1つの基を複数個有する単量体である請求項1又は2に記載の接着性水性エマルジョン組成物。
【請求項4】
上記(C)成分中の極性基が、ウレタン基、オキサゾリン基、グリシジル基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する単量体である請求項1乃至3のいずれかに記載の接着性水性エマルジョン組成物。
【請求項5】
上記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量(固形分)に対し、多価イソシアネート化合物からなる(D)成分を0.5〜30重量%含有してなる請求項1乃至4のいずれかに記載の接着性水性エマルジョン組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の接着性水性エマルジョン組成物を用いて、エチレン−酢酸ビニル樹脂からなる層又はエチレン−ビニルアルコール樹脂からなる層と、多孔質基材とを接着してなる積層体。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の接着性水性エマルジョン組成物を用いて、エチレン−酢酸ビニル樹脂からなる層と、エチレン−ビニルアルコール樹脂からなる層とを接着してなる積層体。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の接着性水性エマルジョン組成物を用いて、エチレン−酢酸ビニル樹脂からなる層又はエチレン−ビニルアルコール樹脂からなる層と、他の樹脂からなる層とを接着してなる積層体。
【請求項9】
上記の他の樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の積層体。


【公開番号】特開2009−173835(P2009−173835A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16466(P2008−16466)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000211020)中央理化工業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】