接続ピンの製造方法
【課題】所定の応力が与えられた場合、半田の破壊なしで接続ピンの破断が誘導できる引張強度を持つ接続ピンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の接続ピンの製造方法は、酸素濃度100ppm以下のチャンバーで300MPa〜400MPaの引張強度を持つように接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階(S10)と、接続ピン製造用ワイヤーを切断し、切断されたワイヤーの一側をプレスすることにより、大径部と棒状部を含む予備接続ピンを形成する段階(S20)と、予備接続ピンに酸化防止用メッキ層を形成する段階(S30)とを含んでなる。
【解決手段】本発明の接続ピンの製造方法は、酸素濃度100ppm以下のチャンバーで300MPa〜400MPaの引張強度を持つように接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階(S10)と、接続ピン製造用ワイヤーを切断し、切断されたワイヤーの一側をプレスすることにより、大径部と棒状部を含む予備接続ピンを形成する段階(S20)と、予備接続ピンに酸化防止用メッキ層を形成する段階(S30)とを含んでなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続ピンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板は、電子部品間の電気的連結によって信号伝達や電源供給などを担当する部品であって、独自的な技術の開発よりは、能動素子および半導体部品の微細化と電子製品の軽薄短小化を受け入れる方向に発展してきた。それと共に、SMT工程などを用いて半導体チップなどの能動素子を実装した高集積パッケージ基板が開発されている実情である。
【0003】
パッケージ基板の場合、外部との電気的連結を提供するために、両面にパッド部が形成される。パッケージ基板は、半田ボール、半田バンプ、ワイヤーまたは接続ピンを用いて外部と電気的に連結される。
【0004】
それらの中でも、接続ピンを用いる場合、パッケージ基板の信頼性検証項目中にピンプルテスト(pin pull test)がある。ピンプルテストは、パッケージ基板の接続ピンがマザーボードなどのソケットに嵌合されるように、パッケージ基板を挿し込み/取り外す検査である。
【0005】
接続ピンをソケットに対して挿し込み/取り外すとき、パッケージ基板と接続ピンに応力が与えられる。接続ピンが加えられた応力に耐えなければ、接続ピンが破断し、接続ピンと半田との界面が加えられた応力に耐えなければ、接続ピンが半田から切り離され、半田とパッド部との界面が加えられた応力に耐えなければ、半田がパッド部から切り離される。すなわち、接続ピン、接続ピンと半田との界面、半田とパッド部との界面のうち、最も弱い部分で破壊が生ずる。
【0006】
この際、接続ピンが半田から切り離される、或いは半田がパッド部から切り離される場合は、パッケージ基板に問題があるものと見なされる。
【0007】
より詳しくは、接続ピンの引張強度があまり大きい場合、信頼性のある半田付けが行われたとしても、半田が破壊される状況が発生する。この際、検査者は、ピンプルテスト(pin pull test)自体の問題ではなく、半田付けが間違っていると判断する。
【0008】
これに対し、半田が破壊される応力以下の応力が与えられて接続ピンが破断すると、単に、ピンプルテストが間違っていると判断する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためのもので、その目的は、所定の応力が与えられた場合、半田の破壊なしで接続ピンの破断が誘導できる引張強度を持つ接続ピンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、酸素濃度100ppm以下のチャンバーで300MPa〜400MPaの引張強度を持つように接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階と、前記接続ピン製造用ワイヤーを切断し、切断された前記ワイヤーの一側をプレスすることにより、大径部と棒状部を含む予備接続ピンを形成する段階と、前記予備接続ピンに酸化防止用メッキ層を形成する段階とを含んでなる、接続ピンの製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明の前記チャンバーは、不活性ガスが充填されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の前記接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階は、300℃〜400℃で90分〜120分間行われることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の前記接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階は、400℃〜500℃で30分〜90分間行われることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の前記酸化防止用メッキ層を形成する段階は、前記予備接続ピンにニッケルメッキ層を形成する段階と、前記ニッケルメッキ層に金メッキ層を形成する段階とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記予備接続ピンを形成する段階の後、前記予備接続ピンの表面を研磨する段階をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る接続ピンの製造方法は、ピンプルテスト(pin pull test)において、接続ピンの破断が誘導できる引張強度を持つ接続ピンを製造することができる。
【0017】
また、本発明は、ワイヤー状態で熱処理工程を行うことにより、熱処理工程が迅速に行われ、且つ生産性が向上する。
【0018】
更に、本発明は、不活性ガスの充填されたチャンバーで熱処理工程を行うことにより、ワイヤーの酸化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によって製造された接続ピンを簡略に示す断面図である。
【図2】本発明によって製造された接続ピンがパッケージ基板のパッド部に結合された状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る接続ピンの製造方法を簡略に示す順序図である。
【図4】本発明に係る接続ピンの製造方法が行われるチャンバーを簡略に示す説明図である。
【図5】本発明に係る熱処理工程における時間、温度および引張強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的、特定の利点および新規の特徴は、添付図面に連関する以下の詳細な説明と好適な実施例からさらに明白になるであろう。
【0021】
これに先立ち、本明細書および請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的で辞典的な意味で解釈されてはならず、発明者が自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0022】
本発明において、各図面の構成要素に参照番号を付加するにおいて、同一の構成要素については、他の図面上に表示されても、出来る限り同一の番号を付することに留意すべきであろう。なお、本発明を説明するにおいて、関連した公知の技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を無駄に乱すおそれがあると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明によって製造された接続ピンを簡略に示す断面図である。図2は、本発明によって製造された接続ピンがパッケージ基板のパッド部に結合された状態を示す断面図である。次に、本発明に係る製造方法を説明するに先立ち、本発明によって形成された接続ピン、および接続ピンの結合されたパッケージ基板について説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明によって形成された接続ピン10は、大径部Hと棒状部Tを含んでなり、一般に「T」字状をする。
【0026】
大径部Hは、パッケージ基板のパッド部220に接続する部分であって、図1に示すように、板状を持つように構成されてもよく、或いは切断されたワイヤーの一側をプレスする金型の形状に応じて半球形の形状を持つように構成されてもよい。
【0027】
棒状部Tは、マザーボードなどに形成されたソケットに挿入される部分であって、略0.25mm〜0.35mmの直径を持つ。
【0028】
接続ピン10は、銅で構成された予備接続ピン12と酸化防止用メッキ層から構成される。酸化防止用メッキ層は、銅よりイオン化傾向は小さい金属から構成される。
【0029】
また、図1に示すように、ニッケルメッキ層14と金メッキ層16が順次形成された2層構造を持つことが好ましい。ニッケルが銅より大きいイオン化傾向を示すとしても、接続ピンの最外層に形成された金メッキ層が銅より小さいイオン化傾向を示すため、接続ピンの酸化を減少させることができる。また、ニッケルは、耐磨耗性に優れる一方、金は、電気伝導性に優れるという利点がある。
【0030】
図2を参照して、接続ピンが結合されるパッケージ基板を検討すると、最外層回路層200に含まれたパッド部220が露出されるように、半田レジスト層300は、開口部を備えている。一方、図2には、パッケージ基板の一部が示されており、パッケージ基板は、コア層を中心として両面に絶縁層100と回路層200が積層された多層基板から構成できる。
【0031】
接続ピンは、半田50を介してパッド部220に結合されるが、半田は、錫/鉛混合物、または錫/銀混合物などから構成される。
【0032】
ピンプルテスト(pin pull test)において、パッケージ基板と接続ピン10に応力が与えられるが、 加えられた応力に接続ピン10が耐えなければ、接続ピン10が破断し、加えられた応力に接続ピン10と半田50との界面が耐えなければ、接続ピン10が半田50から切り離され、 加えられた応力に半田50とパッド部220との界面が耐えなければ、半田50がパッド部220から切り離される。
【0033】
上述した3つのうち、接続ピン10の破断を誘導するために、本発明によって製造された接続ピン10は、300MPa〜400MPaの引張強度を持つ。接続ピン10の引張強度が前記範囲から外れると、接続ピン10に伝達された応力が、半田50とパッド部220へ伝達されて半田50の破壊(上述した3つのうち2つの方式によって)が発生する。それにより、好適な半田付けが行われたにも拘らず、半田付けが間違って半田50が破壊されたと判断する。
【0034】
これに反し、接続ピン10の引張強度が前記範囲より低い場合、幾つかのピンプルテストのみで接続ピン10の破断が発生し、半田付けの適切性を評価することができなくなる。また、接続ピン10の引張強度があまり低いため、接続ピン10、または接続ピン10の結合されたパッケージ基板を取り扱う過程で、接続ピン10の破断が発生するおそれがあって、製品への適用には適しないという問題点がある。
【0035】
図3は、本発明に係る接続ピンの製造方法を簡略に示す順序図、図4は、本発明に係る接続ピンの製造方法が行われるチャンバーを簡略に示す説明図、図5は、本発明に係る熱処理工程における時間、温度および引張強度の関係を示すグラフである。以下、図3〜図5を参照して、300MPa〜400MPaの引張強度を持つ接続ピンの製造方法について説明する。
【0036】
図3に示すように、まず、接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する(S10)。本発明では、熱処理によってワイヤー10’の引張強度を決定することにより、ワイヤー10’から製造された接続ピン10の引張強度も決定される。
【0037】
従来の接続ピンの製造方法では、ワイヤーを切断して接続ピンを製造した後、熱処理を行うから、接続ピン毎に引張強度が異なるという問題点が生じた。そして、接続ピンは、サイズが小さいため、多量の接続ピンを取り扱うのに困るという問題点があった。
【0038】
本発明に係る接続ピンの製造方法は、上述した問題点を解決するために、ワイヤー10’を熱処理して引張強度を決定する。
【0039】
図4には、本発明に係る熱処理を行うためのチャンバー400が示されている。図4を参照して、本発明に係るワイヤー10’の熱処理条件について詳細に検討する。
【0040】
チャンバー400は、ワイヤー10’を供給する供給部410、熱処理済みのワイヤーを処理する巻取部420、およびワイヤー10’に輻射熱を供給する熱源部430が内部に備えられている。熱源部430は、ワイヤー10’に均一な熱を供給するために、図4に示すようにワイヤー10’の上側と下側から輻射熱を供給することができる。そして、巻取部420は、熱処理済みのワイヤー10’を次の工程へ供給するために巻き取る役割を果たす。
【0041】
チャンバー400の内部は、ワイヤー10’の酸化を防止するために、酸素の濃度が100ppm以下であることが好ましい。熱処理時間が長くなる場合、ワイヤー10’に酸化が発生するおそれがあり、酸化が発生する場合、後述のメッキ工程で不良が発生するおそれがあって接続ピン10の機能が失うこともある。したがって、酸素の濃度は、前記範囲のとおりに調節されることが好ましい。
【0042】
さらにワイヤー10’の酸化を防止するために、チャンバー400の内部は、不活性ガスで充填されることが好ましい。不活性ガスは、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)などであってもよい。
【0043】
図5は、本発明に係る熱処理工程における時間、温度および引張強度の関係を示すグラフである。次に、図5に基づいて、本発明に係る熱処理条件について詳細に説明する。
【0044】
ワイヤー10’が300MPa〜400MPaの引張強度を持つようにするために、300℃〜400℃で90分〜120分間熱処理を行うことが好ましい。熱源部430でチャンバー400の温度を300℃〜400℃に維持し、ワイヤー10’の状態で90分〜120分間熱処理する。
【0045】
300℃以下の温度では、最大2時間熱処理を施すとしても、ワイヤー10’の引張強度を450MPaまでしか低めることができないため、本発明の目的に符合する接続ピンを製造することができない。しかも、熱処理時間が長時間かかって、生産性が下落する。そして、300℃で最大90分まで熱処理を施すとしても、同一の結果を得る。
【0046】
図5に示すように、300℃で90分〜120分間熱処理を行うと、約400MPaの引張強度を持ち、400℃で90分〜120分間熱処理を行うと、約300MPaの引張強度を持つことになり、本発明に係る接続ピンを製造することができる。また、90分〜120分間熱処理を行う場合、300℃〜400℃の温度範囲では、400MPa〜300MPaの引張強度を持つ。
【0047】
また、400℃〜500℃で30分〜90分間熱処理を行うと、300MPa〜400MPaの引張強度を持つワイヤーを製造することができる。
【0048】
400℃〜500℃で30分以下の熱処理を行うと、ワイヤーの引張強度が600MPa〜650MPaの範囲を持つので不適であり、500℃で90分以上の熱処理を行うと、ワイヤーの引張強度が300MPa以下に下落するので不適である。
【0049】
そして、温度範囲から外れて120分以上熱処理を行う場合、熱処理時間が接続ピンの製造工程における多くの時間を占めるので、生産性が減少して適しない。
【0050】
さらに、図3を参照して接続ピンの製造方法を説明すると、ワイヤー10’への熱処理が終了すると、ワイヤー10’を切断し、切断されたワイヤー10’の一側をプレスすることにより、大径部Hと棒状部Tを含む予備接続ピン12(図1参照)を形成する(S20)。
【0051】
切断されたワイヤーの一端を、溝部が形成された金型を用いてプレスすることにより、大径部Hを形成し、ワイヤーの他端は棒状部Tを構成する。したがって、大径部Hの形成は、金型に形成された溝部の形状に応じて変形して実施できる。切断されたワイヤーから予備接続ピン12を形成する方法は、公知であって、詳細な説明を省略する。
【0052】
予備接続ピン12が形成されると、酸化防止用メッキ層を形成する(S30)。無電解メッキを介して、酸化防止用メッキ層を形成することができる。酸化防止用メッキ層は、銅よりイオン化傾向が低い金属を薄膜形成法(スパッタリング法またはCVD法)で形成する。
【0053】
この際、予備接続ピン12にニッケルメッキ層14(図1参照)を形成した後、金メッキ層16(図1参照)を形成することがさらに好ましい。それにより、接続ピン10は、耐磨耗性および電気伝導性が向上する。
【0054】
一方、予備接続ピン12を形成した後、予備接続ピンの表面を研磨する段階をさらに含んでもよい。切断されたワイヤーから予備接続ピンを形成するとき、予備接続ピンの表面にバリ(burr)が発生し、或いは切断部分が鋭くなるおそれがある。バレル(barrel)研磨やサンドブラスト(sand blast)などの機械的研磨を介して、予備接続ピンの表面を滑らかに研磨することにより、後続のメッキ層の信頼性を向上させることができる。
【0055】
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の思想および範囲から逸脱することなく様々に修正および変形を加え得るのは、当該分野における通常の知識を有する者には自明である。よって、それらの変形例または修正例は、本発明の特許請求の範囲に属すると理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、所定の応力が与えられた場合、半田の破壊なしで接続ピンの破断が誘導できる引張強度を持つ接続ピンの製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 接続ピン
H 大径部
T 棒状部
12 予備接続ピン
14 ニッケルメッキ層
16 金メッキ層
10’ ワイヤー
50 半田
100 絶縁層
200 回路層
220 パッド部
300 半田レジスト層
400 チャンバー
410 供給部
420 巻取部
430 熱源部
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続ピンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板は、電子部品間の電気的連結によって信号伝達や電源供給などを担当する部品であって、独自的な技術の開発よりは、能動素子および半導体部品の微細化と電子製品の軽薄短小化を受け入れる方向に発展してきた。それと共に、SMT工程などを用いて半導体チップなどの能動素子を実装した高集積パッケージ基板が開発されている実情である。
【0003】
パッケージ基板の場合、外部との電気的連結を提供するために、両面にパッド部が形成される。パッケージ基板は、半田ボール、半田バンプ、ワイヤーまたは接続ピンを用いて外部と電気的に連結される。
【0004】
それらの中でも、接続ピンを用いる場合、パッケージ基板の信頼性検証項目中にピンプルテスト(pin pull test)がある。ピンプルテストは、パッケージ基板の接続ピンがマザーボードなどのソケットに嵌合されるように、パッケージ基板を挿し込み/取り外す検査である。
【0005】
接続ピンをソケットに対して挿し込み/取り外すとき、パッケージ基板と接続ピンに応力が与えられる。接続ピンが加えられた応力に耐えなければ、接続ピンが破断し、接続ピンと半田との界面が加えられた応力に耐えなければ、接続ピンが半田から切り離され、半田とパッド部との界面が加えられた応力に耐えなければ、半田がパッド部から切り離される。すなわち、接続ピン、接続ピンと半田との界面、半田とパッド部との界面のうち、最も弱い部分で破壊が生ずる。
【0006】
この際、接続ピンが半田から切り離される、或いは半田がパッド部から切り離される場合は、パッケージ基板に問題があるものと見なされる。
【0007】
より詳しくは、接続ピンの引張強度があまり大きい場合、信頼性のある半田付けが行われたとしても、半田が破壊される状況が発生する。この際、検査者は、ピンプルテスト(pin pull test)自体の問題ではなく、半田付けが間違っていると判断する。
【0008】
これに対し、半田が破壊される応力以下の応力が与えられて接続ピンが破断すると、単に、ピンプルテストが間違っていると判断する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためのもので、その目的は、所定の応力が与えられた場合、半田の破壊なしで接続ピンの破断が誘導できる引張強度を持つ接続ピンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、酸素濃度100ppm以下のチャンバーで300MPa〜400MPaの引張強度を持つように接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階と、前記接続ピン製造用ワイヤーを切断し、切断された前記ワイヤーの一側をプレスすることにより、大径部と棒状部を含む予備接続ピンを形成する段階と、前記予備接続ピンに酸化防止用メッキ層を形成する段階とを含んでなる、接続ピンの製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明の前記チャンバーは、不活性ガスが充填されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の前記接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階は、300℃〜400℃で90分〜120分間行われることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の前記接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階は、400℃〜500℃で30分〜90分間行われることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の前記酸化防止用メッキ層を形成する段階は、前記予備接続ピンにニッケルメッキ層を形成する段階と、前記ニッケルメッキ層に金メッキ層を形成する段階とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記予備接続ピンを形成する段階の後、前記予備接続ピンの表面を研磨する段階をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る接続ピンの製造方法は、ピンプルテスト(pin pull test)において、接続ピンの破断が誘導できる引張強度を持つ接続ピンを製造することができる。
【0017】
また、本発明は、ワイヤー状態で熱処理工程を行うことにより、熱処理工程が迅速に行われ、且つ生産性が向上する。
【0018】
更に、本発明は、不活性ガスの充填されたチャンバーで熱処理工程を行うことにより、ワイヤーの酸化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によって製造された接続ピンを簡略に示す断面図である。
【図2】本発明によって製造された接続ピンがパッケージ基板のパッド部に結合された状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る接続ピンの製造方法を簡略に示す順序図である。
【図4】本発明に係る接続ピンの製造方法が行われるチャンバーを簡略に示す説明図である。
【図5】本発明に係る熱処理工程における時間、温度および引張強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的、特定の利点および新規の特徴は、添付図面に連関する以下の詳細な説明と好適な実施例からさらに明白になるであろう。
【0021】
これに先立ち、本明細書および請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的で辞典的な意味で解釈されてはならず、発明者が自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0022】
本発明において、各図面の構成要素に参照番号を付加するにおいて、同一の構成要素については、他の図面上に表示されても、出来る限り同一の番号を付することに留意すべきであろう。なお、本発明を説明するにおいて、関連した公知の技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を無駄に乱すおそれがあると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明によって製造された接続ピンを簡略に示す断面図である。図2は、本発明によって製造された接続ピンがパッケージ基板のパッド部に結合された状態を示す断面図である。次に、本発明に係る製造方法を説明するに先立ち、本発明によって形成された接続ピン、および接続ピンの結合されたパッケージ基板について説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明によって形成された接続ピン10は、大径部Hと棒状部Tを含んでなり、一般に「T」字状をする。
【0026】
大径部Hは、パッケージ基板のパッド部220に接続する部分であって、図1に示すように、板状を持つように構成されてもよく、或いは切断されたワイヤーの一側をプレスする金型の形状に応じて半球形の形状を持つように構成されてもよい。
【0027】
棒状部Tは、マザーボードなどに形成されたソケットに挿入される部分であって、略0.25mm〜0.35mmの直径を持つ。
【0028】
接続ピン10は、銅で構成された予備接続ピン12と酸化防止用メッキ層から構成される。酸化防止用メッキ層は、銅よりイオン化傾向は小さい金属から構成される。
【0029】
また、図1に示すように、ニッケルメッキ層14と金メッキ層16が順次形成された2層構造を持つことが好ましい。ニッケルが銅より大きいイオン化傾向を示すとしても、接続ピンの最外層に形成された金メッキ層が銅より小さいイオン化傾向を示すため、接続ピンの酸化を減少させることができる。また、ニッケルは、耐磨耗性に優れる一方、金は、電気伝導性に優れるという利点がある。
【0030】
図2を参照して、接続ピンが結合されるパッケージ基板を検討すると、最外層回路層200に含まれたパッド部220が露出されるように、半田レジスト層300は、開口部を備えている。一方、図2には、パッケージ基板の一部が示されており、パッケージ基板は、コア層を中心として両面に絶縁層100と回路層200が積層された多層基板から構成できる。
【0031】
接続ピンは、半田50を介してパッド部220に結合されるが、半田は、錫/鉛混合物、または錫/銀混合物などから構成される。
【0032】
ピンプルテスト(pin pull test)において、パッケージ基板と接続ピン10に応力が与えられるが、 加えられた応力に接続ピン10が耐えなければ、接続ピン10が破断し、加えられた応力に接続ピン10と半田50との界面が耐えなければ、接続ピン10が半田50から切り離され、 加えられた応力に半田50とパッド部220との界面が耐えなければ、半田50がパッド部220から切り離される。
【0033】
上述した3つのうち、接続ピン10の破断を誘導するために、本発明によって製造された接続ピン10は、300MPa〜400MPaの引張強度を持つ。接続ピン10の引張強度が前記範囲から外れると、接続ピン10に伝達された応力が、半田50とパッド部220へ伝達されて半田50の破壊(上述した3つのうち2つの方式によって)が発生する。それにより、好適な半田付けが行われたにも拘らず、半田付けが間違って半田50が破壊されたと判断する。
【0034】
これに反し、接続ピン10の引張強度が前記範囲より低い場合、幾つかのピンプルテストのみで接続ピン10の破断が発生し、半田付けの適切性を評価することができなくなる。また、接続ピン10の引張強度があまり低いため、接続ピン10、または接続ピン10の結合されたパッケージ基板を取り扱う過程で、接続ピン10の破断が発生するおそれがあって、製品への適用には適しないという問題点がある。
【0035】
図3は、本発明に係る接続ピンの製造方法を簡略に示す順序図、図4は、本発明に係る接続ピンの製造方法が行われるチャンバーを簡略に示す説明図、図5は、本発明に係る熱処理工程における時間、温度および引張強度の関係を示すグラフである。以下、図3〜図5を参照して、300MPa〜400MPaの引張強度を持つ接続ピンの製造方法について説明する。
【0036】
図3に示すように、まず、接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する(S10)。本発明では、熱処理によってワイヤー10’の引張強度を決定することにより、ワイヤー10’から製造された接続ピン10の引張強度も決定される。
【0037】
従来の接続ピンの製造方法では、ワイヤーを切断して接続ピンを製造した後、熱処理を行うから、接続ピン毎に引張強度が異なるという問題点が生じた。そして、接続ピンは、サイズが小さいため、多量の接続ピンを取り扱うのに困るという問題点があった。
【0038】
本発明に係る接続ピンの製造方法は、上述した問題点を解決するために、ワイヤー10’を熱処理して引張強度を決定する。
【0039】
図4には、本発明に係る熱処理を行うためのチャンバー400が示されている。図4を参照して、本発明に係るワイヤー10’の熱処理条件について詳細に検討する。
【0040】
チャンバー400は、ワイヤー10’を供給する供給部410、熱処理済みのワイヤーを処理する巻取部420、およびワイヤー10’に輻射熱を供給する熱源部430が内部に備えられている。熱源部430は、ワイヤー10’に均一な熱を供給するために、図4に示すようにワイヤー10’の上側と下側から輻射熱を供給することができる。そして、巻取部420は、熱処理済みのワイヤー10’を次の工程へ供給するために巻き取る役割を果たす。
【0041】
チャンバー400の内部は、ワイヤー10’の酸化を防止するために、酸素の濃度が100ppm以下であることが好ましい。熱処理時間が長くなる場合、ワイヤー10’に酸化が発生するおそれがあり、酸化が発生する場合、後述のメッキ工程で不良が発生するおそれがあって接続ピン10の機能が失うこともある。したがって、酸素の濃度は、前記範囲のとおりに調節されることが好ましい。
【0042】
さらにワイヤー10’の酸化を防止するために、チャンバー400の内部は、不活性ガスで充填されることが好ましい。不活性ガスは、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)などであってもよい。
【0043】
図5は、本発明に係る熱処理工程における時間、温度および引張強度の関係を示すグラフである。次に、図5に基づいて、本発明に係る熱処理条件について詳細に説明する。
【0044】
ワイヤー10’が300MPa〜400MPaの引張強度を持つようにするために、300℃〜400℃で90分〜120分間熱処理を行うことが好ましい。熱源部430でチャンバー400の温度を300℃〜400℃に維持し、ワイヤー10’の状態で90分〜120分間熱処理する。
【0045】
300℃以下の温度では、最大2時間熱処理を施すとしても、ワイヤー10’の引張強度を450MPaまでしか低めることができないため、本発明の目的に符合する接続ピンを製造することができない。しかも、熱処理時間が長時間かかって、生産性が下落する。そして、300℃で最大90分まで熱処理を施すとしても、同一の結果を得る。
【0046】
図5に示すように、300℃で90分〜120分間熱処理を行うと、約400MPaの引張強度を持ち、400℃で90分〜120分間熱処理を行うと、約300MPaの引張強度を持つことになり、本発明に係る接続ピンを製造することができる。また、90分〜120分間熱処理を行う場合、300℃〜400℃の温度範囲では、400MPa〜300MPaの引張強度を持つ。
【0047】
また、400℃〜500℃で30分〜90分間熱処理を行うと、300MPa〜400MPaの引張強度を持つワイヤーを製造することができる。
【0048】
400℃〜500℃で30分以下の熱処理を行うと、ワイヤーの引張強度が600MPa〜650MPaの範囲を持つので不適であり、500℃で90分以上の熱処理を行うと、ワイヤーの引張強度が300MPa以下に下落するので不適である。
【0049】
そして、温度範囲から外れて120分以上熱処理を行う場合、熱処理時間が接続ピンの製造工程における多くの時間を占めるので、生産性が減少して適しない。
【0050】
さらに、図3を参照して接続ピンの製造方法を説明すると、ワイヤー10’への熱処理が終了すると、ワイヤー10’を切断し、切断されたワイヤー10’の一側をプレスすることにより、大径部Hと棒状部Tを含む予備接続ピン12(図1参照)を形成する(S20)。
【0051】
切断されたワイヤーの一端を、溝部が形成された金型を用いてプレスすることにより、大径部Hを形成し、ワイヤーの他端は棒状部Tを構成する。したがって、大径部Hの形成は、金型に形成された溝部の形状に応じて変形して実施できる。切断されたワイヤーから予備接続ピン12を形成する方法は、公知であって、詳細な説明を省略する。
【0052】
予備接続ピン12が形成されると、酸化防止用メッキ層を形成する(S30)。無電解メッキを介して、酸化防止用メッキ層を形成することができる。酸化防止用メッキ層は、銅よりイオン化傾向が低い金属を薄膜形成法(スパッタリング法またはCVD法)で形成する。
【0053】
この際、予備接続ピン12にニッケルメッキ層14(図1参照)を形成した後、金メッキ層16(図1参照)を形成することがさらに好ましい。それにより、接続ピン10は、耐磨耗性および電気伝導性が向上する。
【0054】
一方、予備接続ピン12を形成した後、予備接続ピンの表面を研磨する段階をさらに含んでもよい。切断されたワイヤーから予備接続ピンを形成するとき、予備接続ピンの表面にバリ(burr)が発生し、或いは切断部分が鋭くなるおそれがある。バレル(barrel)研磨やサンドブラスト(sand blast)などの機械的研磨を介して、予備接続ピンの表面を滑らかに研磨することにより、後続のメッキ層の信頼性を向上させることができる。
【0055】
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の思想および範囲から逸脱することなく様々に修正および変形を加え得るのは、当該分野における通常の知識を有する者には自明である。よって、それらの変形例または修正例は、本発明の特許請求の範囲に属すると理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、所定の応力が与えられた場合、半田の破壊なしで接続ピンの破断が誘導できる引張強度を持つ接続ピンの製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 接続ピン
H 大径部
T 棒状部
12 予備接続ピン
14 ニッケルメッキ層
16 金メッキ層
10’ ワイヤー
50 半田
100 絶縁層
200 回路層
220 パッド部
300 半田レジスト層
400 チャンバー
410 供給部
420 巻取部
430 熱源部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素濃度100ppm以下のチャンバーで300MPa〜400MPaの引張強度を持つように接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階と、
前記接続ピン製造用ワイヤーを切断し、切断された前記ワイヤーの一側をプレスすることにより、大径部と棒状部を含む予備接続ピンを形成する段階と、
前記予備接続ピンに酸化防止用メッキ層を形成する段階とを含んでなることを特徴とする、接続ピンの製造方法。
【請求項2】
前記チャンバーは、不活性ガスが充填されていることを特徴とする、請求項1に記載の接続ピンの製造方法。
【請求項3】
前記接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階は、300℃〜400℃で90分〜120分間行われることを特徴とする、請求項1に記載の接続ピンの製造方法。
【請求項4】
前記接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階は、400℃〜500℃で30分〜90分間行われることを特徴とする、請求項1に記載の接続ピンの製造方法。
【請求項5】
前記酸化防止用メッキ層を形成する段階は、
前記予備接続ピンにニッケルメッキ層を形成する段階と、
前記ニッケルメッキ層に金メッキ層を形成する段階とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の接続ピンの製造方法。
【請求項6】
前記予備接続ピンを形成する段階の後、
前記予備接続ピンの表面を研磨する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の接続ピンの製造方法。
【請求項1】
酸素濃度100ppm以下のチャンバーで300MPa〜400MPaの引張強度を持つように接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階と、
前記接続ピン製造用ワイヤーを切断し、切断された前記ワイヤーの一側をプレスすることにより、大径部と棒状部を含む予備接続ピンを形成する段階と、
前記予備接続ピンに酸化防止用メッキ層を形成する段階とを含んでなることを特徴とする、接続ピンの製造方法。
【請求項2】
前記チャンバーは、不活性ガスが充填されていることを特徴とする、請求項1に記載の接続ピンの製造方法。
【請求項3】
前記接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階は、300℃〜400℃で90分〜120分間行われることを特徴とする、請求項1に記載の接続ピンの製造方法。
【請求項4】
前記接続ピン製造用ワイヤーを熱処理する段階は、400℃〜500℃で30分〜90分間行われることを特徴とする、請求項1に記載の接続ピンの製造方法。
【請求項5】
前記酸化防止用メッキ層を形成する段階は、
前記予備接続ピンにニッケルメッキ層を形成する段階と、
前記ニッケルメッキ層に金メッキ層を形成する段階とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の接続ピンの製造方法。
【請求項6】
前記予備接続ピンを形成する段階の後、
前記予備接続ピンの表面を研磨する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の接続ピンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−69898(P2012−69898A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270812(P2010−270812)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】
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