説明

接続体

【課題】操作の簡略化を図る形態で第1部材と第2部材とを互いに近接又は離間する方向に調整することができ、第1部材と第2部材との間隔の調整代を大きくとることができる接続体を提供する。
【解決手段】第1部材1の雄ねじ部1aが螺合される雌ねじ部2aを有するねじ部材2と、第2部材3が連結されるパイプ部材4とを備え、パイプ部材4の外周面に周溝4aを形成するとともに、ねじ部材2の孔部8の内周面に周溝4aに嵌り込む突部2dを形成し、ねじ部材2の孔部8にパイプ部材4を嵌合して、ねじ部材2を回転操作することにより第1部材1と第2部材3との間隔を調整可能に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材と第2部材とに亘って設けられて、第1部材と第2部材との間隔を調整可能に構成してある接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の接続体として、ターンバックルがある。ターンバックルとしては、ターンバックル本体の一端側に、一方の連結棒の雄ねじ部が螺合される雌ねじ部を形成し、ターンバックル本体の他端側に、他方の連結棒が貫通される貫通孔を形成すると共に、他方の連結棒の端部に、貫通孔の径方向外方側に突出する係止部を形成するものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方の連結棒と他方の連結棒との間隔を調整する操作について説明する。ターンバックル本体の他端側の貫通孔に他方の連結棒を挿通し、ターンバックル本体の一端側の雌ねじ部に一方の連結棒の雄ねじ部を螺合し、ターンバックル本体が一方の連結棒に近接する方向にターンバックル本体を回転操作すると、他方の連結棒の係止部がターンバックル本体に当たる(係止する)。
【0004】
ターンバックル本体を更に回転操作すると、他方の連結棒の係止部とターンバックル本体との係止状態が維持されるため、ターンバックル本体の移動に伴って他方の連結棒も移動する。よって、一方の連結棒と他方の連結棒とを互いに近接する方向に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−105206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のターンバックルにおいては、ターンバックル本体が一方の連結棒から離間する方向にターンバックル本体を回転操作すると、他方の連結棒の係止部がターンバックル本体から離れるため、ターンバックル本体が移動しても他方の連結棒が移動しない。このため、一方の連結棒と他方の連結棒とを互いに離間する方向に調整し難いものであった。
【0007】
本発明の目的は、操作の簡略化を図る形態で第1部材と第2部材とを互いに近接又は離間する方向に調整することができ、第1部材と第2部材との間隔の調整代を大きくとることができる接続体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の接続体の第1特徴構成は、第1部材の雄ねじ部が螺合される雌ねじ部を有するねじ部材と、第2部材が連結されるパイプ部材と、を備え、前記パイプ部材の外周面に周溝を形成するとともに、前記ねじ部材の孔部の内周面に前記周溝に嵌り込む突部を形成し、前記ねじ部材と前記パイプ部材とが相対回転可能で、且つ前記ねじ部材と前記パイプ部材との間隔が変わらないように、前記ねじ部材の孔部に前記パイプ部材を嵌合して、前記ねじ部材を回転操作することにより前記第1部材と前記第2部材との間隔を調整可能に構成してある点にある。
【0009】
本構成によれば、ねじ部材の孔部の内周面に形成された突部がパイプ部材の外周面に形成された周溝に嵌り込むので、パイプ部材に対してねじ部材を一方向に回転操作したとしても、逆方向に回転操作したとしても、突部と周溝との係止状態が維持されるため、ねじ部材とパイプ部材との位置関係は変わらない。よって、ねじ部材を回転操作するだけの簡単な操作で第1部材を第2部材に近接する方向および第2部材から離間する方向に移動させることができ、第1部材と第2部材との間隔を調整することができる。
【0010】
例えば接続体を従来のターンバックルで構成した場合、一方の連結棒と他方の連結棒との間隔の調整代をターンバックルの長さ以上にできない。これに対し、本構成では、パイプ部材の長さを変更することによって、パイプ部材の長さを調整代として、第1部材と第2部材との間隔の調整代を大きくとることができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、第1部材の雄ねじ部が螺合される雌ねじ部を有するねじ部材と、第2部材が連結されるパイプ部材と、を備え、前記ねじ部材の外周面に周溝を形成するとともに、前記パイプ部材の内周面に前記周溝に嵌り込む突部を形成し、前記ねじ部材と前記パイプ部材とが相対回転可能で、且つ前記ねじ部材と前記パイプ部材との間隔が変わらないように、前記ねじ部材に前記パイプ部材を嵌合して、前記ねじ部材を回転操作することにより前記第1部材と前記第2部材との間隔を調整可能に構成してある点にある。
【0012】
本構成によれば、パイプ部材の内周面に形成された突部がねじ部材の外周面に形成された周溝に嵌り込むので、パイプ部材に対してねじ部材を一方向に回転操作したとしても、逆方向に回転操作したとしても、突部と周溝との係止状態が維持されるため、ねじ部材とパイプ部材との位置関係は変わらない。よって、ねじ部材を回転操作するだけの簡単な操作で第1部材を第2部材に近接する方向および第2部材から離間する方向に移動させることができ、第1部材と第2部材との間隔を調整することができる。
【0013】
例えば接続体を従来のターンバックルで構成した場合、一方の連結棒と他方の連結棒との間隔の調整代をターンバックルの長さ以上にできない。これに対し、本構成では、パイプ部材の長さを変更することによって、パイプ部材の長さを調整代として、第1部材と第2部材との間隔の調整代を大きくとることができる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、前記ねじ部材に、前記パイプ部材との当接により前記ねじ部材および前記パイプ部材の互いに接近する方向への移動を規制する規制部を形成してある点にある。
【0015】
本構成によれば、規制部がパイプ部材に当接してあるので、ねじ部材を第2部材から第1部材が離間する方向に回転操作した場合、上述した周溝による規制に加えて、規制部がパイプ部材に当接することによって、ねじ部材およびパイプ部材の互いに接近する方向への移動を規制する。よって、第1部材と第2部材とを互いに離間する方向に調整することを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態における接続体がロッドと取付金具とを接続する状態を示す図である。
【図2】(a)は、接続体を示す平面図である。(b)は、接続体を示す側面図である。
【図3】第1実施形態におけるパイプ部材とねじ部材とを連結する前の状態を示す横断面図である。
【図4】第1実施形態におけるパイプ部材とねじ部材とを連結した後の状態を示す横断面図である。
【図5】第2実施形態におけるパイプ部材とねじ部材とを連結する前の状態を示す横断面図である。
【図6】第2実施形態におけるパイプ部材とねじ部材とを連結した後の状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る接続体について説明する。
図1〜図3に示すように、接続体TB(ターンバックル)は、ロッド1(第1部材の一例)の他端部に形成された右ねじの雄ねじ部1aが螺合される右ねじの雌ねじ部2aを有するねじ部材2と、略U字状の取付金具3(第2部材の一例)の折曲部3aが固着されるパイプ部材4と、を備えている。ロッド1の一端側に形成された屈曲状の取付部1bが変速操作レバー6の下側部分6aに連結されると共に、取付金具3の両端部3bがミッションケース5の変速操作アーム5aの先端に連結されている。これにより、変速操作レバー6の操作に連動してミッションケース5の変速操作アーム5aを操作できるようになっている。さらに、変速操作レバー6の変速位置と変速操作アーム5aの変速位置を合わせるために、ねじ部材2のナット部2bを回転操作してロッド1と取付金具3との間隔を調整できるようになっている。尚、ロッド1の雄ねじ部1aには、ねじ部材2に接触する態様でナット7が螺合されており、ナット7がねじ部材2の回り止めとして機能する。また、ロッド1の雄ねじ部1aおよびねじ部材2の雌ねじ部2aは右ねじのみであり、左ねじを使用する必要がないため、製作コストの低減化を図ることができる。
【0018】
(ねじ部材及びパイプ部材)
図3は、パイプ部材4とねじ部材2とを連結する前の状態を示す図である。図4は、パイプ部材4とねじ部材2とを連結した後の状態を示す図である。パイプ部材4のねじ部材2側の端部の外周面には、円弧状の周溝4aが形成されている。前記ねじ部材2は、軸芯Xに沿って雌ねじ部2aが形成された六角状のナット部2bと、ナット部2bの一側面2e(図2,図3の紙面右側の面)から軸芯Xに沿って延びる筒部2cと、を備えている。ナット部2bと筒状部2cとによってパイプ部材4を内嵌する孔部8が形成されている。孔部8は、その内側面部8aが雌ねじ部2aよりも大径であり、その底面部8b(規制部の一例)がナット部2bの一側面2eから雌ねじ部2a側に入り込むように構成してある。
【0019】
以下、パイプ部材4とねじ部材2とを連結する作業について説明する。予め変速操作レバー6およびミッションケース5の位置に合わせてパイプ部材4を適当な長さにカットしておく。切削等によりパイプ部材4の外周面に、断面円弧状の周溝4aを形成する(図3を参照)。次に、パイプ部材4の端面が孔部8の底面部8bに当接するまでパイプ部材4をねじ部材2の孔部8に内嵌する。その後、スウェージング加工やカシメ加工等により、筒部2cの先端側の一部を減径して、筒部2cの先端側に断面円弧状の絞り部2d(突部の一例)を形成する(図4を参照)。このとき、絞り部2dが周溝4aに嵌り込んでねじ部材2がパイプ部材4に相対回転可能に連結される。
【0020】
これにより、ねじ部材2の絞り部2dがパイプ部材4の周溝4aに嵌り込むので、ねじ部材2(ナット部2b)を一方向または逆方向に回転操作したとしても、絞り部2dと周溝4aとの係止状態が維持されるため、ねじ部材2とパイプ部材4との位置関係は変わらない。よって、ナット部2bを回転操作するだけの簡単な操作でロッド1と取付金具3との間隔を調整することができる。
【0021】
特に、ねじ部材2がロッド1に対して離間する方向にナット部2bを回転操作したときに、絞り部2dが周溝4aに嵌り込むことに加えて、孔部8の底面部8bがパイプ部材4の端面に当接することによって、ねじ部材2およびパイプ部材4の互いに接近する方向への移動を規制する。よって、ロッド1と取付金具3とを互いに離間する方向に調整することを確実に行うことができる。
【0022】
〔第2実施形態〕
この実施形態では、第1実施形態の構成と異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明を省略する。
【0023】
(ねじ部材及びパイプ部材)
図5は、パイプ部材12とねじ部材11とを連結する前のねじ部材11の状態を示す図である。図6は、パイプ部材12とねじ部材11とを連結した後のねじ部材11の状態を示す図である。ねじ部材11には、右ねじの雌ねじ部11aが軸芯Xに沿って貫通する状態で形成されている。ねじ部材11は、六角状のナット部11bと、ナット部11bの一側面11c(規制部の一例)から軸芯Xに沿って延びる筒部11dと、を備えている。筒部11dの外周面には、断面円弧状の周溝11eが形成されている。パイプ部材12のねじ部材11側の端部にリブ部12aを備えている。パイプ部材12とリブ部12aとによってねじ部材11の筒部11dを内嵌する孔部13が形成されている。
【0024】
以下、パイプ部材12とねじ部材11とを連結する作業について説明する。予め変速操作レバー6およびミッションケース5の位置に合わせてパイプ部材12を適当な長さにカットする。次に、パイプ部材12のリブ部12aの端面がねじ部材11のナット部11bの一側面11cに当接すると共に、ねじ部材11の筒部11dの端面が孔部13の底面部13aに当接するまで、パイプ部材12のリブ部12aをねじ部材11の筒部11dに外嵌する。その後、スウェージング加工やカシメ加工等により、パイプ部材12のリブ部12aの中間側の一部を減径して断面円弧状の絞り部12b(突部の一例)を形成する。このとき、絞り部12bが周溝11eに嵌り込んでねじ部材11がパイプ部材12に相対回転可能に連結される。
【0025】
これにより、パイプ部材12の絞り部12bがねじ部材11の周溝11eに嵌り込むので、ねじ部材11(ナット部11b)を一方向および逆方向に回転操作したとしても、絞り部12bと周溝11eとの係止状態が維持されるため、ねじ部材11とパイプ部材12との位置関係は変わらない。よって、ナット部11bを回転操作するだけの簡単な操作でロッド1と取付金具3との間隔を調整することができる。
【0026】
特に、ねじ部材11がロッド1に対して離間する方向にナット部11bを回転操作したときに、絞り部12bが周溝11eに係止することに加えて、ナット部11bの一側面11cがリブ部12aの端面に当接し、孔部13の底面部13aが筒部11dの端面に当接することによって、ねじ部材11およびパイプ部材12の互いに接近する方向への移動を規制する。よって、ロッド1と取付金具3とを互いに離間する方向に調整することを確実に行うことができる。
【0027】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、略U字状の取付金具3がパイプ部材4に固着される構成を例示したが、このような構成に代えて、ロッドがパイプ部材4に固着される構成としてもよい。
【0028】
(2)上記実施形態では、ロッド1の一端側に形成された屈曲状の取付部1bが変速操作レバー6の下側部分6aに連結されると共に、取付金具3の両端部3bがミッションケース5の変速操作アーム5aの先端に連結される構成を例示したが、ロッド1の一端側に形成された屈曲状の取付部1bがミッションケース5の変速操作アーム5aの先端に連結されると共に、取付金具3の両端部3bが変速操作レバー6の下側部分6aに連結される構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、第1部材と第2部材との間隔を調整可能に構成してある各種接続体に適応可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 第1部材
1a 雄ねじ部
2,11 ねじ部材
2a,11a 雌ねじ部
2d,12b 突部
3 第2部材
4,12 パイプ部材
4a,11e 周溝
8 孔部
8b,11c 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材の雄ねじ部が螺合される雌ねじ部を有するねじ部材と、第2部材が連結されるパイプ部材と、を備え、
前記パイプ部材の外周面に周溝を形成するとともに、前記ねじ部材の孔部の内周面に前記周溝に嵌り込む突部を形成し、前記ねじ部材と前記パイプ部材とが相対回転可能で、且つ前記ねじ部材と前記パイプ部材との間隔が変わらないように、前記ねじ部材の孔部に前記パイプ部材を嵌合して、前記ねじ部材を回転操作することにより前記第1部材と前記第2部材との間隔を調整可能に構成してある接続体。
【請求項2】
第1部材の雄ねじ部が螺合される雌ねじ部を有するねじ部材と、第2部材が連結されるパイプ部材と、を備え、
前記ねじ部材の外周面に周溝を形成するとともに、前記パイプ部材の内周面に前記周溝に嵌り込む突部を形成し、前記ねじ部材と前記パイプ部材とが相対回転可能で、且つ前記ねじ部材と前記パイプ部材との間隔が変わらないように、前記ねじ部材に前記パイプ部材を嵌合して、前記ねじ部材を回転操作することにより前記第1部材と前記第2部材との間隔を調整可能に構成してある接続体。
【請求項3】
前記ねじ部材に、前記パイプ部材との当接により前記ねじ部材および前記パイプ部材の互いに接近する方向への移動を規制する規制部を形成してある請求項1又は2に記載の接続体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−74968(P2011−74968A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225281(P2009−225281)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】