説明

接続構造と接続方法

【課題】2以上の被接続部材がセルフピアスリベットを介して接続される接続構造および接続方法に関し、セルフピアスリベットを構成する胴部の十分な巻き上がりによる高いかしめ効果によって高い接続強度を得ることができ、さらに、構成要素である胴部が応力集中等によって破損する危険性がない接続構造と接続方法を提供する。
【解決手段】2重管構造をなす2つの胴部1a,2aのそれぞれの先端が山部1b、2bと谷部1c、2cを交互に有し、それぞれの胴部1a,2aの山部1b,2bが重なり合わないようにずらされて配設されてなるセルフピアスリベット10が複数の被接続部材W1,W2の重ね合わせ箇所に打ち込まれており、打ち込み方向の最終位置にある被接続部材W2の内部においてそれぞれの山部1b、2bが交差しないように放射状に広がって重ね合せ箇所を接続し、接続構造100が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の被接続部材がセルフピアスリベットを介して接続された接続構造と、セルフピアスリベットを用いて接続する接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂に強化用繊維材が混入されてなる繊維強化樹脂部材(繊維強化プラスチック、FRP)は、軽量かつ高強度であることから、自動車産業、建設産業、航空産業など、様々な産業分野で使用されている。
【0003】
そして、繊維強化樹脂部材同士の接合方法に関しては、接着剤を介して接合する方法やボルトによる接合方法、さらにはそれらを組み合わせた接合方法などが一般に用いられている。
【0004】
ところで、部材同士の接合に関し、被接合部材がアルミ板や鋼板等からなる場合に、スポット溶接や摩擦攪拌接合、メカニカルクリンチ、ろう付け、ネジ留めといった様々な接合方法がある中で、セルフピアスリベットによる接合方法が適用されることがある。
【0005】
このセルフピアスリベットによる接合方法は、リベットダイスの頂面にたとえば2枚の金属板を積層姿勢で載置し、端面とこの端面から突出する筒状の胴部(ピアス)とからなるセルフピアスリベットを金属板の上方で位置決めし、パンチでこの胴部を金属板に打ち込むことで胴部を上板に貫通させ、この過程で胴部の先端を外側に塑性変形させながら広げ、さらに胴部を打ち込むことでその先端が下板内でさらに広げられ、この胴部の打ち込み過程で上下の金属板も塑性変形させて双方を胴部を介してインターロック接続するものである。
【0006】
セルフピアスリベットによる接合方法によれば、たとえば金属上板に対して事前に穴あけをおこなう必要がなく、さらに3枚、4枚といった金属板同士の接合も可能であることから、効率的に2以上の金属部材同士を高強度で接合することができる。たとえば、特許文献1には、セルフピアスリベットによるかしめ効果を高めるべく、その胴部の先端部分の厚みを根元部分よりも相対的に薄肉としたものが開示されている。
【0007】
ところで、上記するように様々なメリットを奏するセルフピアスリベットによる接合方法を上記する樹脂部材(繊維強化樹脂部材を含む)からなる2以上の部材の接合に適用せんとする試みもおこなわれている。
【0008】
しかし、このように2つの樹脂部材からなる被接続部材同士の接続にセルフピアスリベットによる接合方法を適用すると、リベットの先端の突き刺さりによってマトリックス樹脂が割れてしまい、リベットと樹脂部材が金属板のように十分に固定され難くなってしまう。このリベット先端によって生じるマトリックス樹脂の割れの原因の一つは、下方の被接続部材の内部で定着する胴部の先端が十分にカールしない(十分に上方に巻き上がらない)ために、下方の被接続部材の内部で下面と胴部の先端の距離が短くなり過ぎ、ここに胴部先端からの圧力が作用するために生じるものと考えられる。
【0009】
また、この胴部の先端のカール不足により、セルフピアスリベットによるかしめ効果が不十分となり易く、所望の接続強度が得られ難いという問題にも繋がる。なお、上記する特許文献1で開示されるようにセルフピアスリベットを構成する胴部がその途中位置から薄肉となる変断面構造のものを適用した場合には、胴部の先端が薄肉であるためにカールし易くなるものの、このように変断面構造のセルフピアスリベットでは、断面変化領域に応力が集中し易いという構造力学上の課題を有しており、胴部そのものの破損に繋がり易いことから好ましいセルフピアスリベットとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−64439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、2以上の被接続部材がセルフピアスリベットを介して接続される接続構造および接続方法に関し、セルフピアスリベットを構成する胴部の十分な巻き上がりによる高いかしめ効果によって高い接続強度を得ることができ、さらに、構成要素である胴部が応力集中等によって破損する危険性がない接続構造と接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明による接続構造は、2重管構造をなす2つの胴部のそれぞれの先端が山部と谷部を交互に有し、それぞれの胴部の山部が重なり合わないようにずらされて配設されてなるセルフピアスリベットが複数の被接続部材の重ね合わせ箇所に打ち込まれており、打ち込み方向の最終位置にある被接続部材の内部においてそれぞれの胴部の先端の山部が交差しないように放射状に広がって前記重ね合せ箇所を接続しているものである。
【0013】
本発明の接続構造は、2以上の被接続部材が筒状の胴部(ピアス)を有するセルフピアスリベットにて接続された構造に関し、胴部が2重管構造であってそれぞれの先端が山部と谷部を交互に有し、かつ双方の山部が重なり合わないようにずらされて配設されているという、これまでにない新規な構造のセルフピアスリベットにて接続されたものである。
【0014】
胴部先端の山部の形状は、胴部の打ち込み方向に向かって先鋭な形状(三角形、半楕円形、半楕円の先端が先鋭の形状など)のものが適用でき、さらに、胴部先端でその周方向に交互に設けられる山部と谷部の数(たとえば山部間のピッチ)は、打ち込まれた内側の胴部の山部が放射状に広がった際に外側の胴部と干渉し難いこと、所望のかしめ効果が得られる数の山部を有していること、などの観点から設定することができる。
【0015】
本発明の接続構造によれば、外側と内側双方の胴部の先端の山部がそれぞれずらされていて、双方の山部が放射状に広がった状態(開いた状態)で打ち込み方向の最終位置にある被接続部材の内部に留まるため、従来のセルフピアスリベットを構成する円筒状の胴部に比して被接続部材の内部で塑性変形して広がり易く、さらには、カールし易くなることから、高いかしめ効果を期待することができる。
【0016】
また、胴部自体はその途中で変断面構造(肉厚が異なる構造)となっていないことから、打ち込みの際に応力集中する部位が存在せず、応力集中によって胴部が破損するといった課題は生じ得ない。
【0017】
なお、二重管構造とすることに加えて、外側の胴部、内側の胴部ともに、従来構造の胴部に比して薄厚に調整しておくのが、山部のカールのし易さの観点から好ましい。たとえば、従来一般のセルフピアスリベットを構成する胴部の肉厚が1mm程度の場合に、外側の胴部、内側の胴部双方の厚みをともに0.5mm程度に設定することができる。
【0018】
また、二重管構造を基本としながらも、さらにその外側もしくは内側に別途の径の異なる胴部が配された三重管構造、四重管構造といった変形例であってもよい。このように三重管構造等の胴部の場合においても、構成部材である複数の胴部それぞれの山部が相互にずらされ、たとえば最も内側の胴部先端の山部が放射状に広がる際に、その外側の2つの胴部と干渉しないように、それぞれの胴部先端の山部の大きさやピッチなどが調整されるのが望ましい。
【0019】
また、接続構造をなす「複数の被接続部材」とは、たとえば2つの被接続部材がともに金属部材(2つのアルミニウム(合金)板、アルミニウム(合金)板と銅(合金)板、鋼板とアルミニウム(合金)板など)、2つの被接続部材の一方が金属部材で他方が樹脂部材(熱硬化性樹脂部材や熱可塑性樹脂部材で繊維材が混入されていないもの、連続繊維、長繊維や短繊維といった繊維材が混入された繊維強化樹脂部材など)、2つの被接続部材がともに樹脂部材などの形態が挙げられる。また、3つ以上の被接続部材も対象であり、上記する金属部材や樹脂部材のいずれか一方、もしくは双方が混在した形態(最上層が金属部材、中間層と最下層が熱可塑性樹脂からなる繊維強化樹脂部材など)が挙げられる。
【0020】
また、本発明は接続方法にも及ぶものであり、この接続方法は、2重管構造をなす複数の胴部のそれぞれの先端が山部と谷部を交互に有し、それぞれの胴部の山部が重なり合わないようにずらされて配設されてなるセルフピアスリベットを用意し、複数の被接続部材の重ね合わせ箇所に対し、外側の胴部の打ち込みを先行させ、時間差を置いて内側の胴部の打ち込みをおこなって打ち込み方向の最終位置にある被接続部材の内部においてそれぞれの胴部の先端の山部を交差しないように放射状に広げて前記重ね合せ箇所を接続するものである。
【0021】
本発明の接続方法では、2重管構造をなす内側および外側それぞれの胴部の打ち込みに時間差を設け、先行して外側の胴部の打ち込みをおこなってその先端の山部を放射状に広げ、次いで内側の胴部の打ち込みをおこなってその先端の山部を放射状に広げることにより、内側の胴部の山部が広がる際に外側の胴部と干渉しない、もしくは干渉し難くすることができ、内側および外側双方の胴部の山部を効果的に放射状に広げることを可能とするものである。
【0022】
ここで、「時間差を置いて」とは、外側の胴部が打ち込まれてその山部が完全に広がった後に内側の胴部を打ち込んで広げることのほか、外側の胴部の山部が塑性変形して広がっている途中で内側の胴部の打ち込みが開始されることなども含む意味であり、内側、外側双方の山部の広がりに関して相互に干渉することが回避できる態様で時間差が設定されるものである。
【0023】
ここで、外側と内側それぞれの胴部を時間差を置いて打ち込む実施の形態としては、大きく以下2つの形態を挙げることができる。
【0024】
その一つの形態は、胴部を打ち込むパンチに特徴をもたせた形態であり、胴部を打ち込むパンチにおいて、その中央領域が内側の胴部の打ち込みに供され、その外側領域には弾性部材を介して環状のパンチが前記中央領域よりも突出するようにして設けてあり、パンチを被接続部材側に摺動させた際に、環状のパンチが先行して外側の胴部を押し込み、時間差を置いてパンチの中央領域が内側の胴部を押し込む形態である。
【0025】
使用されるパンチの形態としては、一つのパンチを基本構成として、その中央領域が内側の胴部を打ち込み、このパンチの外側領域にばね等の弾性部材を介して環状のパンチが配されてパンチの中央領域よりもセルフピアスリベット側に突出した位置に設けてある形態を挙げることができる。なお、ここでいう「弾性部材」には、油圧や空気圧でシリンダ内を摺動するピストンも含む意味であり、パンチの外周領域に環状のシリンダ機構が内蔵されていて、ピストンがパンチの中央領域からセルフピアスリベット側に突出した姿勢となっている形態などを挙げることができる。
【0026】
また、パンチも2重管構造を呈し、内側、外側のパンチがそれぞれ、内側、外側の胴部を押し込むような形態などであってもよい。
【0027】
一方、外側と内側それぞれの胴部を時間差を置いて打ち込む他の実施の形態は、パンチで打ち込まれる二重管構造の胴部に特徴をもたせた形態であり、内側の胴部のパンチによる押圧面が外側の胴部の押圧面よりも被接続部材側に落ち込んでおり、パンチを被接続部材側に摺動させた際に、外側の胴部が先行して押し込まれ、時間差を置いて内側の胴部が押し込まれる形態である。
【0028】
上記するパンチの構造に特徴をもたせた形態、二重管構造の胴部に特徴をもたせた形態のいずれであっても、外側の胴部を打ち込んだ後に所望の時間差を置いて内側の胴部を打ち込むことができ、内側と外側双方の胴部先端の山部を効果的に放射状に広げることができる。
【0029】
上記する本発明の接続方法によれば、二重管構造の胴部を採用しながら、双方の先端の山部をともに効果的に放射状に広げることができ、さらに上方に巻き上がるように塑性変形させることができるため、打ち込み方向の最終位置にある被接続部材の内部における山部の先端で割れが生じ難くなり、かしめ効果によって高い接続強度で2以上の被接続部材の重ね合わせ箇所を接続することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明から理解できるように、本発明の接続構造によれば、2重管構造をなす2つの胴部から構成され、内側と外側の胴部の双方の先端が山部と谷部を交互に有するとともに双方の山部が重なり合わないようにずらされて配設されてなるセルフピアスリベットを適用して2以上の被接続部材の重ね合わせ箇所を接続することにより、2つの胴部の先端の山部が効果的に塑性変形して放射状に広がり、また、カールするような塑性変形も期待することができ、もってかしめ効果に優れ、高い接続強度を有する接続構造を得ることができる。また、本発明の接続方法によれば、外側の胴部を打ち込み、時間差を置いて内側の胴部を打ち込むことにより、内側の胴部の山部が塑性変形して広がる際に外側の胴部と干渉することがなく、内側、外側の胴部の双方の山部を効果的に放射状に広げることができ、高い接続強度を有する接続構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の接続構造の一実施の形態を形成するセルフピアスリベットの一実施の形態の斜視図である。
【図2】図1のII−II矢視図であってセルフピアスリベットの一実施の形態の縦断面図である。
【図3】(a)、(b)、(c)はいずれも、胴部の先端に形成される山部と谷部の実施の形態を示した模式図である。
【図4】本発明の接続方法の一実施の形態を説明した図である。
【図5】(a)は図4のVa−Va矢視図であり、(b)は図4のVb−Vb矢視図である。
【図6】図4に続く本発明の接続方法を説明した図である。
【図7】図6に続く本発明の接続方法を説明した図である。
【図8】(a)は本発明の接続方法で形成された接続構造を説明した模式図であり、(b)は図8aのb−b矢視図である。
【図9】本発明の接続構造の他の実施の形態を形成するセルフピアスリベットの他の実施の形態の縦断面図である。
【図10】本発明の接続方法の他の実施の形態を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の接続構造と接続方法の実施の形態を説明する。なお、図示例は2つの被接続部材の接続構造および接続方法を示したものであるが、3以上の被接続部材の接続構造および接続方法であってもよいことは勿論のことである。
【0033】
(セルフピアスリベットの実施の形態1)
図1は、本発明の接続構造の実施の形態1を形成するセルフピアスリベットの実施の形態1の斜視図であり、図2は、図1のII−II矢視図であってセルフピアスリベットの実施の形態1の縦断面図である。
【0034】
図示するセルフピアスリベット10は、アルミニウムやその合金、鋼などから形成された外側管1と内側管2からなる二重管構造を呈してその全体が構成されている。
【0035】
外側管1は、不図示のパンチで直接押し込まれる頭部1dと、この頭部1dと一体となっている筒状の胴部1a、胴部1aの先端においてその周方向に交互に形成された山部1bと谷部1cから構成されている。
【0036】
内側管2もその基本構成は外側管1と同様であり、頭部2dと、この頭部2dと一体となっている筒状の胴部2a、胴部2aの先端においてその周方向に交互に形成された山部2bと谷部2cから構成されている。
【0037】
そして、外側管1と内側管2の二重管構造において、図1で示すように、外側管1の胴部1aの先端の山部1bと内側管2の胴部2aの先端の山部2bは、交差しないように相互にずらされて位置決めされている(したがって、図1のように外側から見た際に、胴部2aの先端の山部2bは胴部1aの先端の谷部1cから視認できる)。
【0038】
このように双方の山部1b、2bが相互にずらされていることで、後述するように、2つの被接続部材の重ね合わせ箇所に双方の胴部を打ち込み、双方の山部1b、2bが塑性変形して放射方向に広がった際に、外側へ広がろうとする山部2bと外側管1の胴部1aが干渉するのを効果的に解消することができる。
【0039】
また、図3a、図3bおよび図3cはいずれも、胴部の先端に形成される山部と谷部の実施の形態を示した模式図である。
【0040】
図3aで示す山部1bと谷部1cは図1に対応する形態であり、山部1bと谷部1cが三角形を成すように形成されている。一方、図3bで示す山部1b’と谷部1c’はいずれも、半楕円形でかつその先端が先鋭に形成された形状を呈している。また、図3cで示す山部1b”は半楕円状を呈し、谷部1c”は半円状を呈した形態である。
【0041】
いずれの形態であっても、山部と谷部の数(山部のピッチ)は、打ち込まれた内側の胴部2aの山部2b、2b’、2b”が開く際に外側の胴部1aと干渉し難い構成であって、かつ、所望のかしめ効果が得られる数の山部1b、2b、1b’、2b’、1b”、2b”を有した構造を成すように設定される。
【0042】
そして、外側の胴部1a、内側の胴部2aともに、従来構造の胴部に比して薄厚であるのが山部1b、2b等のカール(塑性変形して巻き上がること)のし易さの観点から好ましく、たとえば、従来一般のセルフピアスリベットを構成する胴部の肉厚が1mm程度の場合に、外側の胴部、内側の胴部双方の厚みをともに0.5mm程度に設定するのがよい。
【0043】
このような二重管構造のセルフピアスリベット10を使用して、2つの被接続部材を接続する方法とこの方法によって形成された接続構造を以下で説明する。
【0044】
(接続方法と接続構造の実施の形態1)
図4,6,7はこの順で2つの被接続部材の接続方法を説明するフロー図となっており、図8aはこの接続方法で形成された接続構造を示したものである。
【0045】
まず、リベットダイス5の頂面5a上に2つの被接続部材W1,W2の重ね合わせ箇所を載置し、この重ね合わせ箇所の上方に、シリンダ4内をパンチ3が摺動自在なシリンダ機構を配設する。
【0046】
リベットダイス5は、その平面形状が円形であり(図示略)、被接続部材W2が載置される頂面5aには環状の凹溝5bが形成されている。また、その内部にヒータ等の加熱手段を内蔵した形態であってもよい。この環状の凹溝5bは、セルフピアスリベット10を構成する外側および内側の胴部1a,2aの山部1b、2bの塑性変形(の方向)を案内する作用を奏するものである。
【0047】
図5aは図4のVa−Va矢視図であり、図5bは図4のVb−Vb矢視図であって、パンチ3を別途の平断面で視認した図である。
【0048】
パンチ3は平面円形であり、筒状のシリンダ4の内空形状と相補的な形状を成している。さらに、セルフピアスリベット10を構成する内側管2の頭部2dを押し込む中央領域3aとその外周の外側領域3bから構成されており、外側領域3bには、環状の凹溝3b’が開設されており、ここに複数個のばね3c(弾性部材)が設けてあり、このばね3cに環状のパンチ3dが取り付けられている。
【0049】
図4で示すように、パンチ3の押し込み初期の段階で、パンチ3の中央領域3aに比して環状のパンチ3dがセルフピアスリベット10側に突出しており、したがって、環状のパンチ3dが外側管1の頭部1dに当接している一方、パンチ3の中央領域3aは内側管2の頭部2aから離れている。
【0050】
接続される被接続部材W1,W2は、ともに金属部材である形態(ともにアルミニウム(合金)板、アルミニウム(合金)板と銅(合金)板、鋼板とアルミニウム(合金)板など)、一方が金属部材で他方が樹脂部材である形態、ともに樹脂部材である形態のいずれであってもよい。
【0051】
樹脂部材である場合、そのマトリックス樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA:ナイロン6、ナイロン66など)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの結晶性プラスチック、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ABS樹脂、熱可塑性エポキシなどの非結晶性プラスチックなどの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂のいずれか一種、もしくは熱可塑性樹脂同士、熱硬化性樹脂同士の中の2種以上を混合した材料を適用することができる。
【0052】
また、マトリックス樹脂内に繊維材(短繊維、長繊維、連続繊維)が含有されている場合(したがって、被接続部材が繊維強化樹脂部材)に、その繊維素材としては、ボロンやアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニアなどのセラミック繊維や、ガラス繊維や炭素繊維といった無機繊維、銅や鋼、アルミニウム、ステンレス等の金属繊維、ポリアミドやポリエステルなどの有機繊維のいずれか一種もしくは2種以上の混合材を適用することができる。
【0053】
図4で示すようにセルフピアスリベット10の打ち込み準備が完了したら、図6で示すように、シリンダ4内でパンチ3を摺動させ、パンチ3を下方へ押圧力Qで押し込むことにより、高剛性のばね3cを介して環状のパンチ3dが当接している外側管1の頭部1dを下方へ押し込む(押し込み力Q1)。
【0054】
外側管1がある程度押し込まれるまで、パンチ3の中央領域3aは内側管2の頭部2dに当接しないため、内側管2は押し込まれない状態が続く。
【0055】
図6は、外側管1がある程度押し込まれてその胴部1aの先端の山部1bが内側から圧力qを受けながら塑性変形し、放射状に外側へ広がった状態を示しており、この段階で、時間差を置いてパンチ3の中央領域3aが内側管2の頭部2dと当接する。このように、複数のばね3cは、そのトータルの剛性が環状のパンチ3dを介して外側管1を2つの被接続部材W1,W2の内部に押し込むことを可能とする剛性を有するとともに、図6で示すように、作用する圧力によって環状の凹溝3b’内で縮みながら凹溝3b’内に収容されるような弾性を有するものである。
【0056】
さらにパンチ3を押し込むことにより、図7で示すように、パンチ3の中央領域3aが内側管2の頭部2dを押し込み(押し込み力Q2)、外側管1の打ち込みから時間差を置いて内側管2が2つの被接続部材W1,W2内に打ち込まれ、その先端の山部2bが塑性変形し、外側管1の先端の谷部1cを越えて放射状に広がり、さらに図示のごとくカールして定着される。
【0057】
頭部1d、2dが上方の被接続部材W1の上面と面一になるまでセルフピアスリベット10が打ち込まれ、外側と内側それぞれの山部1b、2bが十分に塑性変形(カール)して下方の被接続部材W2内で定着したら、これを製造システムから取り出すことにより、図8aで示す接続構造100が形成される。
【0058】
なお、リベットダイス5がヒータを内蔵している場合には、たとえば熱可塑性樹脂からなる被接続部材W2をこのヒータでプレヒートして軟化させておき、その後にパンチ3の摺動を実行するようにしてもよい。
【0059】
図8bは図8aのb−b矢視図であり、形成された接続構造100における内側および外側の山部1b、2bを下方から見た図である。
【0060】
図8bで示すように、双方の山部1b、2bが相互にずらされていることで、相互に干渉することなく、双方の山部1b、2bは放射状に外側に塑性変形し、さらにカールして下方の被接続部材W2内に固定されることになる。
【0061】
そして、同図からも明らかなように、外側と内側の山部1b、2bをそれぞれ塑性変形させて放射状に広げることにより、従来一般のセルフピアスリベットのように円筒状の胴部の先端を塑性変形させて放射状に広げる場合に比して胴部先端の変形がスムーズに実行され、上方への巻き上がり(カール)が齎され易くなる。
【0062】
(セルフピアスリベットと接続方法の実施の形態2)
図9は、本発明の接続構造の他の実施の形態を形成するセルフピアスリベットの実施の形態2を示す縦断面図であり、図10は、接続方法の実施の形態2を説明した図である。
【0063】
図9で示すセルフピアスリベット10Aは、内側の胴部2Aの頭部が外側の胴部1Aの頭部よりも被接続部材側に落ち込んでおり、そのための構成として胴部2Aの長さが胴部1Aに比して短く形成されたものである。
【0064】
このセルフピアスリベット10Aを適用することにより、図10で示すように、従来一般のパンチ3Aを使用してシリンダ4内でこれを連続的に摺動させることにより、まず外側管1Aが押し込まれ、次いで時間差を置いて内側管2Aが押し込まれ、双方の胴部の先端の山部がともに放射状に塑性変形することによって不図示の接続構造を形成することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
1,1A…外側管、1a…外側の胴部、1b、1b’、1b”…山部、1c、1c’、1c”…谷部、1d…頭部、2,2A…内側管、2a…内側の胴部、2b…山部、2c…谷部、2d…頭部、3…パンチ、3a…中央領域、3b…外側領域、3b’…環状の凹溝、3c…弾性部材(ばね)、3d…環状のパンチ、4…シリンダ、5…リベットダイス、5a…頂面、5b…凹溝、10、10A…セルフピアスリベット、100…接続構造、W1,W2…被接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2重管構造をなす2つの胴部のそれぞれの先端が山部と谷部を交互に有し、それぞれの胴部の山部が重なり合わないようにずらされて配設されてなるセルフピアスリベットが複数の被接続部材の重ね合わせ箇所に打ち込まれており、打ち込み方向の最終位置にある被接続部材の内部においてそれぞれの胴部の先端の山部が交差しないように放射状に広がって前記重ね合せ箇所を接続している接続構造。
【請求項2】
複数の前記被接続部材がそれぞれ、樹脂部材もしくは繊維強化樹脂材のいずれか一種からなる請求項1または2に記載の接続構造。
【請求項3】
2重管構造をなす2つの胴部のそれぞれの先端が山部と谷部を交互に有し、それぞれの胴部の山部が重なり合わないようにずらされて配設されてなるセルフピアスリベットを用意し、
複数の被接続部材の重ね合わせ箇所に対し、外側の胴部の打ち込みを先行させ、時間差を置いて内側の胴部の打ち込みをおこなって打ち込み方向の最終位置にある被接続部材の内部においてそれぞれの胴部の先端の山部を交差しないように放射状に広げて前記重ね合せ箇所を接続する接続方法。
【請求項4】
胴部を打ち込むパンチにおいて、その中央領域が内側の胴部の打ち込みに供され、その外側領域には弾性部材を介して環状のパンチが前記中央領域よりも突出するようにして設けてあり、パンチを被接続部材側に摺動させた際に、環状のパンチが先行して外側の胴部を押し込み、時間差を置いてパンチの中央領域が内側の胴部を押し込む請求項3に記載の接続方法。
【請求項5】
内側の胴部のパンチによる押圧面が外側の胴部の押圧面よりも被接続部材側に落ち込んでおり、
パンチを被接続部材側に摺動させた際に、外側の胴部が先行して押し込まれ、時間差を置いて内側の胴部が押し込まれる請求項3に記載の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−68233(P2013−68233A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205178(P2011−205178)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】