説明

接触燃焼式ガスセンサの断線故障検出装置

【課題】センサ素子及びレファ素子の両方が断線した場合においても確実に故障検出が可能な接触燃焼式ガスセンサの断線検出装置を提供すること。
【解決手段】直流電源Eに直列接続されたセンサ素子11及びレファ素子12と、センサ素子11及びレファ素子12に対して並列接続された第1の抵抗R1、可変抵抗R3及び第2の抵抗R2の直列接続体とから構成されるブリッジ回路からの出力を、反転入力端子がセンサ素子11及びレファ素子12の接続点に接続され、非反転入力端子が可変抵抗R3の摺動子に接続されたオペアンプ2で増幅してセンサ出力電圧として出力する接触燃焼式ガスセンサ1において、センサ素子11及びレファ素子12の接続点と接地間に抵抗R7が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触燃焼式ガスセンサの断線故障検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ガス警報器のようにセンサ素子のヒーターを駆動してガス濃度を計測する装置において、センサ素子の故障を検知することは、ユーザーにとって重要である。特に、接触燃焼式ガスセンサのように、高温で駆動させる場合は断線等の故障を考慮する必要性が高く、故障を検出した場合、ユーザーに警報音や表示等により報知していた。
【0003】
図4は、ガス警報器に使用されている従来の接触燃焼式ガスセンサのセンサ出力増幅回路を示す回路図である。図4のセンサ出力増幅回路において、接触燃焼式ガスセンサ1は、ブリッジ回路で形成されており、ブリッジ回路は、直流電源Eに直列接続されたセンサ素子11及びレファ素子12と、センサ素子11及びレファ素子12に対して並列接続された抵抗R1、可変抵抗R3及び抵抗R2の直列接続体とから構成される。
【0004】
センサ素子11は、抵抗線として機能する白金線の中央部にコイル部分形状を、白金、パラジウム等の触媒を含有させたセラミック材料で覆ってボール状に形成される。レファ素子12は、白金線の中央部に形成したコイル形状部分を触媒を含有しないセラミック材料で覆ってボール状に形成したものである。センサ素子11は、可燃性ガスであるCH4ガスやブタンガス等が接触すると接触燃焼反応を生じ、その反応により温度が上昇して電気抵抗が大きくなるが、レファ素子12は、接触燃焼反応を起こさない。
【0005】
センサ素子11とレファ素子12の接続点は、抵抗R4を介してオペアンプ2の反転入力端子に接続され、可変抵抗R3の摺動子は、オペアンプ2の非反転入力端子に接続されている。オペアンプ2は、+VDD電源で駆動され、その反転入力端子と出力端子に抵抗R5が接続されている。
【0006】
上述の構成において、センサ素子11の抵抗値Rsenは、検出すべき可燃性ガスの濃度に応じて変化し、その抵抗値変化をブリッジ回路で電圧変化Vsとしてとらえ、オペアンプ2でR5/R4倍に増幅し、センサ出力電圧Voutとしてオペアンプ2の出力端子から出力する。オペアンプ2から出力されるセンサ出力電圧Voutは、ガス警報器のCPU(図示しない)に入力され、CPUの内部メモリに予め記憶された警報電圧上限値VTHH 及び警報電圧下限値VTHL と比較される。このセンサ出力電圧Voutは、以下の(1)式で求められる。
Vout=(Vin−Vs)×R5/R4+Vin・・・(1)
なお、Vinは、オペアンプ2の入力端子における入力電圧であり、可変抵抗R3により任意に設定可能である。
【0007】
次に、センサ出力電圧Voutとガス警報器動作の関係を図5に示す。センサ出力電圧Voutは、通常、警報電圧上限値VTHH と警報電圧下限値VTHL の間の監視領域にあり、この時ガス警報器が鳴動することはない。
【0008】
しかし、高濃度の可燃性ガスが検出された場合やセンサ素子11の断線が起こった場合は、センサ出力電圧Voutが警報電圧上限値VTHH を超え、またレファ素子12の断線が起こった場合は、センサ出力電圧Voutが警報電圧下限値VTHL を下回り、ガス警報器は警報を行う警報状態に移行する。したがって、図4の回路は、センサ素子11またはレファ素子12の断線故障を検出し、警報器を鳴動させるフェールセーフ機能を有しているといえる。
【0009】
センサ素子11の抵抗値Rsenおよびレファ素子12の抵抗値Rrefに対し、抵抗R4及びR5の抵抗値は十分大きく、また、抵抗R4に対して抵抗R5が十分大きな抵抗値だとすれば、センサ素子11またはレファ素子12の断線時のセンサ出力電圧Voutは、以下の(2)または(3)式で求められる。
センサ素子11断線時Vout=VDD−1.5V(Vs=0)・・・(2)
なお、(2)式において、オペアンプ2が、レールツーレールタイプのオペアンプの場合はVout=VDDとなる。
レファ素子12断線時Vout=約0V(Vs=E)・・・(3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、図4の回路では、センサ素子11またはレファ素子12のどちらかが断線した場合は、ガス警報器を鳴動させ、故障を放置することができるが、警報器の実使用上、落下等の過大な衝撃が加わった場合には、センサ素子11及びレファ素子12の同時断線故障が起こることも考えられる。
【0011】
このような場合、抵抗R4及びR5を流れる電流経路が断たれるため、センサ出力電圧Voutは、Vout=Vinとなる。この場合、Vinの設定値にもよるが、図6に示すように、センサ出力電圧Voutは、警報電圧上限値VTHH と警報電圧下限値VTHL の間に位置する可能性があり、センサ故障にもかかわらず、ガス警報器が鳴動しないフェールアウトの動作を示す可能性が高い。
【0012】
たとえば、E=3V、Vin=1.51V、VDD=5V、VTHH =4V、VTHL =1Vとすると、センサ素子11及びレファ素子12の同時断線時は、Vout=1.51Vとなり、警報器は鳴動しないことになる。
【0013】
そこで本発明は、上述した課題に鑑み、センサ素子及びレファ素子の両方が断線した場合においても確実に故障検出が可能な接触燃焼式ガスセンサの断線故障装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、直流電源Eに直列接続されたセンサ素子及びレファ素子と、センサ素子及びレファ素子に対して並列接続された第1の抵抗、可変抵抗及び第2の抵抗の直列接続体とから構成されるブリッジ回路からの出力を、反転入力端子が前記センサ素子及びレファ素子の接続点に接続され、非反転入力端子が前記可変抵抗の摺動子に接続されたオペアンプで増幅してセンサ出力電圧として出力する接触燃焼式ガスセンサにおいて、前記センサ素子及び前記レファ素子の接続点と接地間に抵抗が接続されていることを特徴とする接触燃焼式ガスセンサの断線故障検出装置に存する。
【0015】
請求項1記載の発明においては、直流電源Eに直列接続されたセンサ素子及びレファ素子と、センサ素子及びレファ素子に対して並列接続された第1の抵抗、可変抵抗及び第2の抵抗の直列接続体とから構成されるブリッジ回路からの出力を、反転入力端子がセンサ素子及びレファ素子の接続点に接続され、非反転入力端子が可変抵抗の摺動子に接続されたオペアンプで増幅してセンサ出力電圧として出力する接触燃焼式ガスセンサにおいて、センサ素子及びレファ素子の接続点と接地間に抵抗が接続されている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、直流電源Eに直列接続されたセンサ素子及びレファ素子と、センサ素子及びレファ素子に対して並列接続された第1の抵抗、可変抵抗及び第2の抵抗の直列接続体とから構成されるブリッジ回路からの出力を、反転入力端子がセンサ素子及びレファ素子の接続点に接続され、非反転入力端子が可変抵抗の摺動子に接続されたオペアンプで増幅してセンサ出力電圧として出力する接触燃焼式ガスセンサにおいて、センサ素子及びレファ素子の接続点と接地間に抵抗が接続されているので、従来回路に抵抗を1本追加するだけで、センサ素子及びレファ素子が同時に断線故障を起こした場合、その故障を検出することができる。仮に、何らかの過度の衝撃がガス警報器に加わり、センサ素子及びレファ素子が同時に断線したまま、ガス警報器が使用された場合、従来はガス漏れが発生してもガス警報器が作動しないため人身事故に発展する可能性があったが、本発明では、この問題を解消し、より安全性の高い機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサの断線故障検出装置の構成を示す回路図である。なお、図4の回路と同一の構成要素は同一符号を付して説明する。断線故障検出装置は、図4の回路とほぼ同様の構成を有し、相違する部分は、センサ素子11及びレファ素子12と接地間に抵抗R7を挿入した構成にある。なお、本発明において、抵抗R1及びR2は、それぞれ請求項における第1の抵抗及び第2の抵抗として働く。
【0019】
抵抗R7の抵抗値は次のような設定にする。
(a)この抵抗R7は、センサ素子11の抵抗値Rsenおよびレファ素子12の抵抗値Rrefに対し、十分大きな値とする。図3に示すように、センサ素子11に流れる電流Isenに対し、レファ素子12に流れるIrefは、抵抗R4に流れる電流IR4が加算され、抵抗R7を流れる電流IR7が減算されるため(Iref=Isen+IR4−IR7)、(IR4−IR7)を十分小さくする必要がある。
(b)R7+R4の合成抵抗値は、R5の抵抗値に対して大きすぎないように設定される。すなわち、センサ素子11及びレファ素子12の同時断線時のセンサ出力電圧Voutは、
Vout=Vin+{R5×Vin/(R7+R4)}・・・(4)
となる。Vout=VDD付近にしたいため、上記(4)において、(R7+R4)は小さい方が望ましい。
【0020】
実際には、上記(a)と(b)のバランスを考えて、抵抗R7の抵抗値を決定する必要がある。
【0021】
次に、上述の抵抗R7の設定について具体例を説明する。たとえば、たとえば、E=3V、Vin=1.51V、Vs=1.5V、VDD=5V、VTHH =4V、VTHL =1V、R4=5.1kΩ、R5=180kΩの場合、R7=75kΩに設定する。この場合、
センサ素子11及びレファ素子12の正常時Vout=(Vin−Vs)×R5/R4+Vin=(1.51V−1.5V)×180kΩ/5.1kΩ+1.51V=1.863V・・・(5)
センサ素子11及びレファ素子12同時断線時Vout=Vin+{R5×Vin/(R7+R4)}=1.51V+{180kΩ/(75kΩ+5.1kΩ)}=4.903V・・・(6)
となる。
【0022】
上記(6)式で求められたセンサ素子11及びレファ素子12同時断線時Vout=4.903V>VTHH =4Vとなり、警報器は鳴動して断線故障を報知することができる。
【0023】
このように、本発明によれば、接触燃焼式ガスセンサ1のセンサ素子11及びレファ素子12の同時断線故障の発生時にも、その断線故障を検知してユーザーに報知することができる。
【0024】
以上の通り、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサの断線故障検出装置の構成を示す回路図である。
【図2】図1の断線故障検出装置の動作を説明する図である。
【図3】図1の断線故障検出装置の断線検出動作時の電流の流れを説明する図である。
【図4】従来の接触燃焼式ガスセンサのセンサ出力増幅回路の構成例を示す回路図である。
【図5】図4の回路のガス検出時の動作を説明する図である。
【図6】図4の回路における接触燃焼式ガスセンサの断線故障時の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
1 接触燃焼式ガスセンサ
2 オペアンプ
E 直流電源
11 センサ素子
12 レファ素子
R1 抵抗(第1の抵抗)
R2 抵抗(第2の抵抗)
R3 可変抵抗
R7 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源Eに直列接続されたセンサ素子11及びレファ素子12と、センサ素子11及びレファ素子12に対して並列接続された第1の抵抗R1、可変抵抗R3及び第2の抵抗R2の直列接続体とから構成されるブリッジ回路からの出力を、反転入力端子が前記センサ素子11及びレファ素子12の接続点に接続され、非反転入力端子が前記可変抵抗R3の摺動子に接続されたオペアンプ2で増幅してセンサ出力電圧として出力する接触燃焼式ガスセンサ1において、
前記センサ素子11及び前記レファ素子12の接続点と接地間に抵抗R7が接続されていることを特徴とする接触燃焼式ガスセンサの断線故障検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−205744(P2007−205744A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21855(P2006−21855)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】