説明

接近物検知装置、接近物検知システム、および、接近物検知方法

【課題】車両がイグニッションOFFの状態であっても、車両に乗車している乗員の全員が降車を完了するまで車両への接近物検知を行うことを可能とする技術を提供する。
【解決手段】車両が停止した状態で、車両に搭載されたカメラで得られた撮影画像に基づいて、車両に接近する接近物を検知する。そして車両をイグニッションOFF状態とした場合でも乗員検知手段により車両内に乗員が検知される場合は前記接近物の検知を継続して行い、乗員検知手段により車両内に乗員が検知されない場合は接近物の検知を終了する。これにより、車両をイグニッションOFF状態とした場合でも、乗員検知手段により車両内に乗員が検知される場合は前記接近物の検知を継続して行うことで、車両から乗員が全員降車するまで接近物の検知を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の接近物を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両走行中に当該車両に接近する物体(たとえば車両の左右の後側方に接近する物体)をレーダ装置などを用いて検出し、車両に接近している物体が存在することを車両のユーザである運転者に報知する技術がある。なお、本件発明と関連する技術を説明する資料としては特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−318691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の接近物検知の技術では車両がイグニッションOFFにより停止してしまうと、接近物検知の機能をOFF状態とするため、車両のイグニッションOFF後に乗員が車両から降車する際に接近物を検知できず、降車時に開いた車両のドアが接近物と接触または衝突したり、降車した乗員自身が接近物と衝突するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、車両がイグニッションOFFの状態であっても、車両に乗車している乗員の全員が降車を完了するまで車両への接近物検知を行うことを可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、車両に搭載され、前記車両に接近する接近物を検知する接近物検知装置であって、前記車両の停止状態で、前記車両に搭載されたカメラで得られた撮影画像に基づいて、前記車両に接近する接近物を検知する検知手段と、前記車両の乗員の有無を検知する乗員検知手段と、を備え、前記検知手段は、前記車両をイグニッションOFF状態とした場合でも前記乗員検知手段により前記車両内に乗員が検知される場合は前記接近物の検知を継続して行い、前記車両がイグニッションOFF状態となり、前記乗員検知手段により前記車両内に乗員が検知されない場合は前記接近物の検知を終了する。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の接近物検知装置において、前記車両には、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応してユーザに警告を報知する警報装置が設けられ、前記撮影画像に基づいて、前記車両の複数のドアのうち前記接近物が接近している前記車両のドアを特定する特定手段と、前記特定手段により特定されたドアに対応する警報装置を作動させる作動手段と、をさらに備える。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載の接近物検知装置において、前記車両には、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザがドアのロック/アンロックを切り替える切替部材と、ユーザが前記切替部材の固定状態の解除支持が可能な解除指示部材とが設けられ、前記撮影画像に基づいて、前記車両の複数のドアのうち前記接近物が接近している前記車両のドアを特定する特定手段と、前記特定手段に特定されたドアの前記切替部材をロック側に固定する固定手段と、前記切替部材が固定されている場合に、前記解除指示部材からの前記解除指示を示す信号に応答して、前記切替部材の固定状態を解除する解除手段と、をさらに備える。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項2または3のいずれかに記載の接近物検知装置において、前記カメラは、前記車両の左右双方の側方に配置され、前記特定手段は、前記接近物の像を含む画像を取得したカメラの左右位置に基づいて、前記接近物が接近している前記車両のドアを特定する。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の接近物検知装置において、前記カメラは、自装置が配置される側の前記車両の側方領域における前方から後方までを撮影可能であり、前記検知手段は、前記車両の前方および後方の少なくともいずれか一方から接近する物体を検知する。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項5に記載の接近物検知装置において、前記乗員検知手段はシートセンサであり、前記検知手段は乗員が検知されているシートに対応した前記車両の側方領域の接近物検知を行い、乗員が検知されないシートに対応した前記車両の側方領域の接近物検知を行わない。
【0012】
また、請求項7の発明は、車両に搭載される接近物検知システムであって、請求項2に記載の接近物検知装置と、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザに警告を報知する警報装置と、を備える。
【0013】
また、請求項8の発明は、車両に搭載される接近物検知システムであって、請求項3に記載の接近物検知装置と、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザがドアのロック/アンロックを切り替える切替部材の固定状態の解除指示が可能な解除指示部材とを備える。
【0014】
さらに、請求項9の発明は、車両に搭載され、前記車両に接近する接近物を検知する接近物検知方法であって、前記車両の停止状態で、前記車両に搭載されたカメラで得られた撮影画像に基づいて、前記車両に接近する接近物を検知する検知工程と、前記車両の乗員の有無を検知する乗員検知工程と、を備え、前記検知工程は、前記車両をイグニッションOFF状態とした場合でも前記乗員検知工程により前記車両内に乗員が検知される場合は前記接近物の検知を継続して行い、前記車両がイグニッションOFF状態となり、前記乗員検知手段により前記車両内に乗員が検知されない場合は前記接近物の検知を終了する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1ないし9の発明によれば、車両をイグニッションOFF状態とした場合でも、乗員検知手段により車両内に乗員が検知される場合は前記接近物の検知を継続して行うことで、車両から乗員が全員降車するまで接近物の検知を行える。
【0016】
また、特に請求項2の発明によれば、車両をイグニッションOFF状態とした場合でも乗員検知手段により車両内に乗員が検知される場合は、前記接近物の検知を継続して行うことで、車両から降車する乗員全員に対して接近物の検知を行い、接近物の接近を警告できる。
【0017】
また、特に請求項3の発明によれば、車両をイグニッションOFF状態とした場合でも乗員検知手段により車両内に乗員が検知される場合は前記接近物の検知を継続して行うことで、車両から降車する乗員全員に対して接近物の検知を行う。また、車両への接近物が検知されてドアロックが固定されている状態でも乗員がロック固定解除を行うことでドアロックを解除して車両から降車でき、降車の安全性を確認したにもかかわらず、車両から降車できない乗員の煩わしさを解消できる。
【0018】
また、特に請求項4の発明によれば、接近物の像を含む画像を取得したカメラの左右位置に基づいて、接近物が接近している車両のドアを特定することで、車両の乗員は接近物が車両の左右いずれの側面から接近しているかを簡便かつ正確に検知できる。
【0019】
また、特に請求項5の発明によれば、車両の前方および後方の少なくともいずれか一方から接近する物体を検知することで、より危険な前方あるいは後方から近づいてくる接近物に対応できる。
【0020】
さらに、特に請求項6の発明によれば、乗員が検知されるシートに対応した車両の側方領域の接近物検知を行い、乗員が検知されないシートに対応した車両の側方領域の接近物検知を行わないことで、接近物検知が必要な領域に限定した検知が可能となり、車両の省電力化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、接近物検知システムのブロック図である。
【図2】図2は、車両の各カメラの設置位置を示した図である。
【図3】図3は、車両の座席位置を示した図である。
【図4】図4は、接近物検知モードの起動処理のフローチャートである。
【図5】図5は、接近物検知モードの接近物検知範囲を示した図である。
【図6】図6は、乗員の有無に応じた接近物検知処理のフローチャートである。
【図7】図7は、座席ごとの乗員の有無に応じた接近物検知処理のフローチャートである。
【図8】図8は、接近物検知処理を示した図である。
【図9】図9は、接近物検知の具体例を示した図である。
【図10】図10は、警報装置を備えた接近物検知システムのブロック図である。
【図11】図11は、車両のドアに設けられた警報装置の具体例を示した図である。
【図12】図12は、接近物を検知した場合の警告処理を示した図である。
【図13】図13は、ロック固定解除装置を備えた接近物検知システムのブロック図である。
【図14】図14は、車両のドアに設けられたロック固定解除装置の具体例を示した図である。
【図15】図15は、ドアロック固定解除処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0023】
<第1の実施形態>
<1.構成>
<1−1.接近物検知システム>
図1は、接近物検知システム1のブロック図である。図1に示すように接近物検知システム1は、撮影部10、接近物検知部20、レーダ装置40、および、ナビゲーション装置50を備えて構成されている。
【0024】
撮影部10は車載カメラであり、右サイドカメラ101、左サイドカメラ102、フロントカメラ103、および、リアカメラ104を備えている。これらのカメラはレンズと撮像素子を備えており電子的に画像を取得する。
【0025】
図2は、車両2の各カメラの設置位置を示した図である。車両2は車両のユーザである運転者が車両の側方などを確認するための右ドアミラー4、および、左ドラミラー5を備えている。そして、右ドアミラー4には右サイドカメラ101が備えられ、左ドアミラー5には、左サイドカメラ102が備えられている。各カメラの光軸は車両2の直進方向に対して交差するように車両2の外部方向に向けられている。
【0026】
また、フロントカメラ103は、車両2の前端となるフロントバンパの左右略中心に設けられ、その光軸は車両2の直進方向に向けられている。さらに、リアカメラ104は、車両2の後端となるリアバンパの左右略中心に設けられ、その光軸は車両2の直進方向の逆方向に設けられている。
【0027】
各カメラのレンズは魚眼レンズなどが採用されており、各カメラは180度以上の画角を有している。このため、4つの車載カメラ101、102、103、および、104を利用することで、車両2の全周囲の撮影が可能である。
【0028】
また、車両2は運転席ドアR2、運転席側後部ドアR1、助手席ドアL2、助手席側後部ドアL1を備えている。なお以下、運転席ドアR2、および、運転席側後部ドアR1をあわせて運転席側ドアといい、助手席ドアL2、および、助手席側後部ドアL1を助手席側ドアともいう。
【0029】
なお、本実施の形態では運転席ドア、運転席側後部ドア、助手席ドア、および、助手席側後部ドアの4つのドアを備えている車両について述べるが、車両の種類はこれに限定されることなく、複数のドアを有する車両について本発明は適用され得る。その際、運転席側に備えられるドアを運転席側ドアといい、助手席側に備えられるドアを助手席側ドアという。そして、以下に詳述するように運転席側ドアに対応する接近物検知範囲、助手席側ドアに対応する接近物検知範囲に基づいて、運転席側ドアまたは助手席側ドアのいずれかを特定して接近する物体を検知する。
【0030】
また、以下で記載する接近物検知の処理では、右サイドカメラ101、および、左サイドカメラ102を用いた処理を一例として述べる。
【0031】
図1に戻り、接近物検知部20は、画像生成部201、制御部202、および不揮発性メモリ203を備えている。
【0032】
画像生成部201は、撮影部10で取得されたデータに基づいて、車両2に接近する接近物を含む物体の撮影画像を生成する。なお、物体の車両2への接近は撮影画像の物体を複数フレーム撮影された物体の画像の時間ごとの変化に基づいて判断する。
【0033】
制御部202は画像生成部201で生成された撮影画像の車両2に接近する接近物を検知する。この接近物の検知は、撮影部10の右サイドカメラ101、および、左サイドカメラ102の撮影範囲内で予め設けられた所定範囲内の物体を対象とする。なお、以下、「範囲」を「領域」という場合もある。また、各カメラの撮影範囲内、および、接近物を検知する所定領域については後述する。
【0034】
また、制御部202は取得した撮影画像が右サイドカメラ101、および、左サイドカメラ102のいずれのカメラで撮影されたもので、車両の進行方向の前方または後方に予め設けられた所定領域内のいずれの領域で検知された物体であるかに基づいて、接近物が接近している車両のドアを特定する。さらに制御部202は接近物検知システム1の各部を統括的に制御する。
【0035】
また、制御部202は後述する車速センサ701、シフトセンサ702、イグニッションスイッチ703、ブレーキセンサ704、および、シートセンサ705からの信号を信号入力部601を介して受信する。これらの信号に基づいて、たとえば車両2が停車状態か否かの車両2の状態を判別して接近物の検知を行ったり、車両の座席ごとに乗員の有無を検知する。
【0036】
さらに、制御部202は後述するレーダ装置40からの物体の位置(物体の距離、および、角度)と速度との情報を信号入力部601を介して受信する。このレーダ装置40からの物体の位置と速度との情報に基づいて、車両2の接近物がどれくらい離れた位置からどれくらいの速度で接近しているかに応じて、接近物の危険度合を判定する。
【0037】
不揮発性メモリ203は、制御部202の接近物検知を含む各種の制御機能を実現するプログラムが予め記憶されており、制御部202が処理を実行する際にその処理に応じたプログラムが用いられる。
【0038】
レーダ装置40は制御部401を備えている。レーダ装置40は、ミリ波などの周波数帯の電波を用いて、車両周囲の物体の位置、および、速度を検知する。レーダ装置40に設けられた制御部401は図示しないアンテナから送信された送信波が物体に反射して、受信波としてアンテナで受信された信号を処理して物体の位置(距離および角度)と、速度を信号入力部701を介して接近物検知部20の制御部202へ送信する。
【0039】
ナビゲーション装置50は表示部501、音声出力部502、および、制御部503を備えている。ナビゲーション装置50は車両の乗員が運転する際のナビゲーション機能やオーディオ機能などを有しており、表示部501から地図情報やその他の機能に付随した画像の情報を表示し、音声出力部502ではナビゲーション時の音声案内や、オーディオ使用時の音声出力を行う。
【0040】
また、撮影部10の右サイドカメラ101、および、左サイドカメラ102で撮影され、接近物検知部20の制御部202で接近物として検知された物体に関する画像情報、および、接近物検知に伴い乗員に注意を促す音声案内などをナビ通信部602を介して表示部501、および、音声出力部502を用いて出力する。なお、以下に詳述するイグニッションOFF後の接近物検知処理において、接近物を検知した際に乗員に対して、画像や音声により危険を報知してもよい。これにより、車両2の乗員は車両2へ接近している接近物を視覚および聴覚で認識することができ、車両2から降車する際にドアを開放して接近物に接触したり、衝突する危険を回避できる。
【0041】
制御部503は、ナビゲーション装置の表示部501、および、音声出力部502などの各部の制御や、ナビゲーション機能、および、オーディオ機能などの各種のデータ処理などを行う。
【0042】
信号入力部601は、後述する車速センサ701、シフトセンサ702、イグニッションスイッチ703、ブレーキセンサ704、および、シートセンサ705の情報を接近物検知部20の制御部202へ送信するインターフェイスである。
【0043】
また、ナビ通信部602はナビゲーション装置50と接近物検知部20の制御部202との双方の情報の通信を仲介する。
【0044】
次に、車速センサ701は、車両2の速度を検知して、制御部20へ車速(km/h)の情報を送信する。また、シフトセンサ702は図示しないシフトレバーからの”P”、”D”、”N”、”R”などのシフトポジションが入力される。
【0045】
イグニッションスイッチ703は車両2のイグニッションOFF、アクセサリON、イグニッションON、および、スタータONの4段階の切替位置を有しており、車両2の乗員により切替が可能である。このイグニッションスイッチ703の信号は信号入力部601を介して制御部202に入力される。ここで、車両2のイグニッションOFF状態とは、車両2の図示しないエンジンが停止状態であることをいい、イグニッションON状態とは、車両2のエンジンが起動状態にあることをいう。また、アクセサリON状態とは、エンジンを始動させていない状態で、撮影部10、接近物検知部20、および、ナビゲーション装置50などの各種装置を使用できる状態をいう。
【0046】
ブレーキセンサ704からは運転者がブレーキ操作を行った場合にブレーキ信号が制御部202に入力される。
【0047】
シートセンサ705は、車両2の各座席に設けられたセンサであり、各座席の乗員の有無を検知した信号が、信号入力部601を介して接近物検知部20の制御部202に入力される。なお、本実施形態では車両2の乗員の有無を検知する手段としてシートセンサ705を例に説明を行うが、車両2の各座席の乗員の有無が検知できるセンサであれば、シートセンサ705に限るものではない。
【0048】
図3は車両2の座席の位置を示した図である。運転席D2、助手席S2、運転席側後部座席D1、助手席側後部座席S1、および、中央後部座席M1のそれぞれにシートセンサ705が設けられており、各座席に乗員が座ることによる面圧などを検知して各座席の乗員の有無を検知する。また、後に詳述するように、各座席は接近物検知範囲と対応づけられている。具体的には、運転席側ドアは車両の右側方の検知範囲と対応付けられており、助手席側ドアは車両の左側方の検知範囲と対応付けられている。
【0049】
そして、イグニッションOFF後の接近物検知において、乗員が乗車している座席に対応した車両2の側方領域の接近物検知を行い、乗員が乗車していない座席に対応した車両2の側方領域の接近物検知は行わないことで、接近物検知が必要な領域に限定した検知が可能となり、車両の省電力化が図れる。
【0050】
なお、各座席はその座席に座っている乗員が降車する際のドアと対応付けてもよい。具体的には、運転席D2は運転席ドアR2と対応付けられており、助手席S2は助手席ドアL2、運転席側後部座席D1は運転席側後部ドアR1、助手席側後部座席S1は助手席側後部ドアL1、中央後部座席M1は運転席側後部ドアR1、および、助手席側後部ドアL1と対応付けられる。
【0051】
<2.処理>
<2−1.接近物検知モード起動処理>
次に、車両2への接近物を検知する接近物検知モードの起動処理について述べる。なお、以下に述べる各処理は接近物検知部20の制御部202により行われる。
【0052】
図4は、接近物検知モードの起動処理のフローチャートである。運転者のイグニッションスイッチ703の操作によりアクセサリON後、または、イグニッションON後、30秒経過している場合(ステップS401がYes)、シフトレバーがPレンジか否かをシフトセンサ702の信号に基づいて判断する(ステップS402)。なお、アクセサリON後、または、イグニッションON後、30秒経過していない場合(ステップS401がNo)は、処理を終了する。
【0053】
シフトレバーがPレンジの場合(ステップS402がYes)、車速が1km/h未満か否かを判断する(ステップS406)。車速が1km/h未満の場合(ステップS406がYes)、接近物検知モードをON状態とする(ステップS407)。これにより、車両2の停止状態で乗員が車両2から降車する前に接近物の有無を検知し、接近物が検知された場合は乗員に警告を行うことができ、ドアを開放して接近物に接触したり、衝突する危険を回避できる。車速が1km/h未満でない場合(ステップS406がNo)は、処理を終了する。
【0054】
ステップS402に戻り、シフトレバーがPレンジではない場合(ステップS402がNo)、シフトレバーがDレンジか否かを判断する(ステップS403)。シフトレバーがDレンジでない場合(ステップS403がNo)は、処理を終了する。
【0055】
シフトレバーがDレンジの場合(ステップS403がYes)は、ブレーキセンサ704からのブレーキ信号がON状態か否かを判断する(ステップS404)。ブレーキ信号がON状態の場合(ステップS404がYes)、車速が1km/未満か否かを判断し(ステップS406)、車速が1km/h未満の場合(ステップS406がYes)は、接近物検知モードをON状態とし(ステップS407)、車速が1km/h未満ではない場合(ステップS406がNo)は、処理を終了する。
【0056】
ステップS404に戻り、ブレーキ信号がONではない場合(ステップS404がNo)は、ブレーキセンサ704からの信号に基づいて、パーキングブレーキ信号がON状態か否かを判断する(ステップS405)。パーキングブレーキ信号がON状態ではない場合(ステップS405)は、処理を終了する。パーキングブレーキ信号がON状態の場合(ステップS405がYes)は、車速が1km/h未満か否かを判断し(ステップS406)、車速が1km/h未満の場合(ステップS406がYes)、接近物検知モードをON状態とする。これにより、車両2の停止状態で乗員が車両2から降車する前に接近物の有無を検知し、接近物が検知された場合は乗員に警告を行うことができ、ドアを開放して接近物に接触したり衝突する危険を回避できる。
【0057】
車速が1km/h未満ではない場合(ステップS406がNo)は、処理を終了する。
【0058】
図5は接近物検知モードの接近物検知範囲を示した図である。車両2は、右ドアミラー4に右サイドカメラ101、左ドアミラー5に左サイドカメラ102が設けられている。右サイドカメラ101では撮影範囲RB内のB2、および、B1の破線で示す領域を接近物検知範囲とする。この接近物検知範囲内での接近物の検出は、撮影画像の複数フレームにおける物体の時間ごとの変化に基づいて車両2への接近を判断する。また、左サイドカメラ102では撮影範囲RA内のA2、および、A1の破線で示す領域を接近物検知範囲とする。この接近物検知範囲内での接近物の検出は、撮影画像の複数フレームにおける物体の時間ごとの変化に基づいて車両2への接近を判断する。
【0059】
なおこれらの処理は、撮影部10の右サイドカメラ101、および、左サイドカメラ102で撮影された画像情報に基づいて、接近物検知部20の制御部202により行われる。
【0060】
また、各サイドカメラの破線で示す接近物検知範囲は車両の前後約20m〜30mの位置の物体を検知でき、車両2から左右約1m以内の距離で接近する物体を接近物として検知する。これにより、車両2から20m〜30m離れた位置の接近物でも早期に検知して、乗員が降車の際にドアを開放して接近物に接触や衝突する危険を回避できる。
【0061】
<2−2.乗員の有無に応じた接近物検知処理>
図6は乗員の有無に応じた接近物検知処理のフローチャートである。車両2が接近物検知モードON状態の場合(ステップS601がYes)、車両2がイグニッションOFF状態か否かを判断する(ステップS602)。なお接近物検知モードがON状態ではない場合(ステップS601がNo)は、処理を終了する。
【0062】
ステップS602で車両2がイグニッションOFF状態の場合(ステップS602がYes)は、運転席D2の乗員の有無をシートセンサ705により判定する(ステップS603)。なお、車両2がイグニッションOFF状態ではない場合(ステップS602がNo)は、接近物検知範囲A1、A2、B1、およびB2の接近物検知を継続して行う(ステップS608)。
【0063】
ステップS603で運転席D2の乗員が無しの場合(ステップS603がYes)は、運転席側後部座席D1の乗員の有無をシートセンサ705により判定する(ステップS604)。なお、運転席D2の乗員が有りの場合(ステップ603がNo)は、接近物検知範囲A1、A2、B1およびB2の接近物検知を継続して行う(ステップS608)。
【0064】
ステップS604で運転席側後部座席D1の乗員が無しの場合(ステップS604がYes)は、助手席S2の乗員の有無をシートセンサ705により判定する(ステップS605)。なお、運転席側後部座席D1の乗員が有りの場合(ステップS604がYes)は、接近物検知範囲A1、A2、B1およびB2の接近物検知を継続して行う(ステップS608)。
【0065】
ステップS605で助手席S2の乗員が無しの場合(ステップS605がYes)は、助手席側後部座席S1の乗員の有無をシートセンサ705により判定する(ステップS606)。なお、助手席S2の乗員が有りの場合(ステップS605がYes)は、接近物検知範囲A1、A2、B1およびB2の接近物検知を継続して行う(ステップS608)。
【0066】
ステップS606で助手席側後部座席S1の乗員が無しの場合(ステップS606がYes)は、接近物検知範囲A1、A2、B1、および、B2の接近物検知をOFF状態とする。これにより、車両2の乗員の全員が降車するまで接近物検知を行える。また、車両2の乗員の全員が降車した後に接近物検知をOFF状態とすることで、省電力化が図れる。
【0067】
また、助手席側後部座席S1の乗員が有りの場合(ステップS606がYes)は、接近物検知範囲A1、A2、B1およびB2の接近物検知を継続して行う(ステップS608)。なお、ここで接近物検知をOFF状態とするとは、接近物検知処理に対応する接近物検知システム1の電源をOFF状態にすることをいう。
【0068】
また、上記の処理にあわせて中央後部座席M1の乗員の有無を接近物検知を継続して動作させるか、OFF状態とするかの判断基準として加えてもよい。
【0069】
また、図6に示した処理の各座席の乗員の有無の検出順序はこれに限るものではなく、助手席側の座席から乗員の有無を判断したり、後部座席から乗員の有無を判断してもよいし、各座席ほぼ同時に乗員の有無を判断してもよい。
【0070】
<2−3.座席ごとの乗員の有無に応じた接近物検知処理>
図7は、座席ごとの乗員の有無に応じた接近物検知処理のフローチャートである。上述の図6に示した処理との違いは、運転席側の座席D1およびD2が車両2の右側方の接近物検知範囲B1およびB2と対応しており、助手席側の座席S1およびS2が車両2の左側方の接近物範囲A1およびA2と対応していることである。このような対応に基づいて、乗員が乗車している座席に対応する側方領域の接近物検知を行い、乗員が乗車していない座席に対応する側方領域の接近物検知は行わない。以下、処理について説明する。
【0071】
車両2の接近物検知モードがON状態の場合(ステップS701がYes)、車両2がイグニッションOFF状態か否かを判断する(ステップS702)。なお、接近物検知モードがON状態ではない場合(ステップS701がNo)は、処理を終了する。
【0072】
ステップS702で車両2がイグニッションOFF状態の場合(ステップS702がYes)は、運転席D2の乗員の有無をシートセンサ705により判定する(ステップS703)。なお、車両2がイグニッションOFF状態ではない場合(ステップS702がNo)は、接近物検知範囲A1、A2、B1およびB2の接近物検知を継続して行う(ステップS711)。
【0073】
ステップS703で運転席D2の乗員が無しの場合(ステップS703がYes)は、運転席側後部座席D1の乗員の有無をシートセンサ705により判定する(ステップS704)。なお、運転席D2の乗員が有りの場合(ステップ703がNo)は、接近物検知範囲B1およびB2の接近物検知を継続して行い(ステップS705)、次の処理であるステップS707に進む。
【0074】
ステップS704で運転席側後部座席D1に乗員が無しの場合(ステップS704がYes)は、接近物検知範囲B1およびB2の接近物検知をOFF状態とする。これにより、乗員が乗車していない運転席側の座席に対応して乗員が降車する可能性のない側方領域の接近物検知をOFF状態とすることで、イグニッションOFF状態での車両2の省電力化が図れる。なお、ここで側方領域の接近物検知をOFF状態とするとは、対象となる車両2の側方領域の接近物検知システム1の電源をOFF状態とすることをいう。
【0075】
なお、ステップS704で運転席側後部座席D1の乗員が有りの場合(ステップS704がNo)は、接近物検知範囲B1およびB2の接近物検知を継続して行い(ステップS705)、次の処理であるステップS707に進む。
【0076】
次に、ステップS707で助手席S2の乗員が無しの場合(ステップS707がYes)は、助手席側後部座席S1の乗員の有無を判断する(ステップS708)。なお、助手席S2の乗員が有りの場合(ステップS707がNo)は、接近物検知範囲A1およびA2の接近物検知を継続して行い(ステップS709)、処理を終了する。
【0077】
ステップS708で助手席側後部座席S1の乗員が無しの場合(ステップS708がYes)、接近物検知範囲A1およびA2の接近物検知をOFF状態とする(ステップS710)。これにより、乗員が乗車していない助手席側の座席に対応して乗員が降車する可能性のない側方領域の接近物検知をOFF状態とすることで、イグニッションOFF状態での車両2の省電力化が図れる。
【0078】
なお、上記の処理において中央後部座席M1に乗員が有りの場合は、運転席側の後部ドアまたは助手席側の後部ドアのどちらからも降車する可能性があることから、運転席D2および運転席側後部座席D1の乗員が無しの場合や、助手席S2および助手席側後部座席S1の乗員が無しの場合であっても、接近物検知範囲B1およびB2と、接近物検知範囲A1およびA2の接近物検知を継続して行うこととしてもよい。
【0079】
また、中央後部座席M1に乗員が無しの場合に、図6に示す処理に応じて、運転席D2および運転席側後部座席D1の乗員が無しの場合に検知範囲B1およびB2の接近物検知をOFF状態とし、助手席S2および助手席側後部座席S1の乗員が無しの場合に検知範囲A1およびA2の接近物検知をOFF状態としてもよい。これによりイグニッションOFF状態での車両2の省電力化が図れる。
【0080】
また、図7に示した処理の各座席の乗員の有無の検出順序はこれに限るものではなく、助手席側の座席から乗員の有無を判断したり、後部座席から乗員の有無を判断してもよいし、各座席ほぼ同時に乗員の有無を判断してもよい。
【0081】
<2−4.接近物検知処理>
図8は、接近物検知処理を示したフローチャートである。車両2の接近物検知モードがON状態の場合(ステップS801がYes)、接近物検知範囲(以下、「検知範囲」という。)A1内に車両2への接近物が検知された場合(ステップS802がYes)、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS806)。検知範囲B1内に接近物が検知された場合(ステップS806がYes)は、検知範囲A1および検知範囲B1の車両の左右両側で接近物を検知したこととなり、運転席側ドアと、助手席側ドアの車両2の両側のドアに接近する物体があると判定する(ステップS808)。
【0082】
このような接近物の状況を図9に示す。図9では検知範囲A1にバイク91aが検知された時点から所定時間経過後のバイク91bが検知されるまでの車両2へのバイク91の接近状態に基づいて、バイク91が車両2への接近物であると判定する。その結果、助手席側ドア(助手席ドアL2、および、助手席側後部ドアL1)に接近する物体があると判定する。
【0083】
また、検知範囲B1では車両92aが検知された時点から所定時間経過後の車両92bが検知されるまでの車両2への車両92の接近状態に基づいて、車両92が車両2への接近物であると判定する。その結果、運転席側ドア(運転席ドアR2、および、運転席側後部ドアR1)に接近する物体があると判定する。
【0084】
図8のステップS806に戻って、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されなかった場合(ステップS806がNo)は、検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定し(ステップS807)、検知範囲B2内に接近物が検知された場合(ステップS807がYes)は、車両2の左右両側のドアに接近する物体があると判定する(ステップS808)。また、検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されなかった場合(ステップS807がNo)は、車両2の左ドアである助手席側ドアに接近する物体があると判定する(ステップS809)。
【0085】
次に、ステップS802に戻って、検知範囲A1内に車両2への接近物が検知されなかった場合(ステップS802がNo)は、検知範囲A2内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS803)。
【0086】
検知範囲A2内に車両2への接近物が検知された場合(ステップS803がYes)は、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されたか否かを判断し(ステップS806)、検知範囲B1内に接近物が検知された場合(ステップS806がYes)は、検知範囲A1および検知範囲B1の車両の左右両側で接近物を検知したこととなり、運転席側ドアと、助手席側ドアの車両2の両側のドアに接近する物体があると判定する(ステップS808)。
【0087】
また、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されなかった場合(ステップS806がNo)は、検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定し(ステップS807)、検知範囲B2内に接近物が検知された場合(ステップS807がYes)は、車両2の左右両側のドアに接近する物体があると判定する(ステップS808)。また、検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されない場合(ステップS807がNo)は、車両2の左ドアである助手席側ドアに接近する物体があると判定する(ステップS809)。
【0088】
ステップS803に戻って、検知範囲A2内に車両2への接近物が検知されなかった場合(ステップS803がNo)は、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS804)。検知範囲B1内に車両2への接近物が検知された場合(ステップS804がYes)、車両2の右ドアである運転席側ドアに接近する物体があると判定する(ステップS810)。
【0089】
ステップS804に戻って、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されない場合(ステップS804がNo)は、検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS805)。検知範囲B2内に車両2への接近物が検知された場合(ステップS805がYes)、車両2の右ドアである運転席側ドアに接近する物体があると判定する(ステップS810)。検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されない場合(ステップS805がNo)は、処理を終了する。
【0090】
これにより、車両2の前後左右のいずれの方向からも接近する物体を確実に検知できる。
【0091】
なお、上記の実施の形態中の説明では、車両2のイグニッションOFF後の接近物検知のON/OFFを車両2の乗員の有無に応じて切り替えることについて述べたが、これ以外にも、車両の現在位置に応じて接近物検知のON/OFFを切り替えてもよい。具体的には車両2のナビゲーション装置50の地図情報を介して車両2の現在位置に基づいて接近物検知のON/OFFを切り替える。 例えば、車両2の現在位置がガソリンスタンドである場合は、車両2の接近物検出範囲内に接近物が接近する可能性は少ないものとして、イグニッションOFF後は車両2に乗員が有りの場合でも、接近物検知をOFF状態としてもよい。これにより、車両2の位置に基づいて、イグニッションOFF後の車両2の省電力化が図れる。
【0092】
また、車両2の一方の側方が道路に面しており接近物が接近する可能性があるが、車両2の他方の側方は接近物が接近する可能性のない場合(たとえば、車両2の他方の側方がガードレールや壁などで接近物の接近の可能性がない場合)は、接近物の接近の可能性がある一方の側方のみ接近物検知をON状態として、接近物の接近の可能性がない他方の側方の接近物検知をOFF状態としてもよい。これにより、車両2の位置に基づいて、イグニッションOFF後の車両2の省電力化が図れる。
<第2の実施形態>
<1.構成>
<1−1.接近物検知システム>
本実施形態は図10に示すように上述の第1の実施形態の接近物検知システムの構成に新たに警報装置30を付加したものである。また、第1の実施形態で述べた接近物検知部20の制御部202の各処理についても同様に行われる。以下では、第1の実施形態と異なる点について述べ、同様の構成および処理については記載を省略する。
【0093】
図10に示す警報装置30はLED(Light Emitting Diode)などの発光体で視覚的に乗員へ危険を報知する。そして、接近物の危険度合に応じて異なる態様で作動する。この警報装置30は、車両が備えるドアR1、R2、L1、および、L2のそれぞれに対応して設けられている。警報装置30は対応するドア自身、および、ドア近傍に配置される。たとえば、警報装置30は、車両2のドア部(たとえば車両2のドアのドアノブ付近)に設けられる。これにより車両2の乗員が降車する前に確実に危険を報知できる。
【0094】
また、たとえば、警報装置30は車両2のピラー部(運転席や助手席の場合はAピラー、後部座席の場合はBピラー、および、Cピラーなど)に設けてもよい。このように、警報装置30は乗員が車両2から降車する前に注意を促す位置に設けられており、これにより乗員が降車の際にドアを開放して接近物に接触や衝突する危険を回避できる。
【0095】
図11はドア部およびピラー部に設けられた警報装置の具体例を示した図である。車両2の運転席ドアR2には、ドアR2を開閉する際のドアノブ901が設けられている。そして、ドアノブ付近にはドアR2のロックON、および、ロックOFFを行うドアロック902が設けられている。そしてドアノブ901の付近に、車両2への接近物が検知された際に乗員に報知する警報装置30aが設けられている。これにより、乗員が車両2から降車するためにドアノブを用いてドア開閉操作を行う前に警報装置30aにより接近物の検知を乗員に報知できる。
【0096】
また、警報装置30は車両2のピラー部に設けてもよく、車両2のAピラーに警報装置30bを設けたり、車両2のBピラーに警報装置30cを設けることで車両2の乗員が車両2から降車するためのドア開閉操作を行う前に乗員へ接近物の検知を報知できる。
【0097】
なお、このような警報装置30a、30b、30cは組み合わせて設けてもよいし、別々に設けてもよい。さらに、車両2への接近物の検知はこのような警報装置30のLEDによる報知とあわせて、ナビゲーション装置50の表示部を用いた報知を行ってもよいし、音声出力部502を用いて音声による接近物検知の報知を行ってもよく、警告部30のLEDの色の変化に合わせてナビゲーション装置に表示内容や音声出力のパターンを変更してもよい。これにより、乗員に対して接近物検知の報知を詳細に、かつ、確実に行うことができる。
【0098】
また、警報装置30は音声のみの出力装置であってもよい。なお、上記実施の形態では車両2のドアは開閉式のドアを例に述べたが、車両2のドアはスライド式のドアであってもよく、車両2への接近物検知を警報装置30により乗員に報知することでスライド式のドアを開けて乗員が降車した後に接近物との接触や衝突することを回避できる。
【0099】
<2。処理>
<2−1.警告処理>
図12は、接近物を検知した場合の警告処理を示したフローチャートである。なお、この処理は接近物検知部20の制御部202により行われる。車両2の接近物検知モードがON状態の場合(ステップS1201がYes)、車両2の接近物検知範囲において、接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS1202)。なお、接近物検知モードがON状態ではない場合(ステップS1201がNo)は、処理を終了する。
【0100】
ステップS1202に戻って、接近物を検知した場合(ステップS1202がYes)は、車両2の接近物が検知された側のドアのドアロックがON状態か否かを判定する(ステップS1203)。なお、接近物が検知されていない場合(ステップS1202がNo)は、処理を終了する。
【0101】
ステップ1203に戻って、車両2の接近物が検知された側のドアのドアロックがON状態の場合(ステップS1203がYes)、接近物は接近しているが、ドアロックがONの状態であり降車できない状態にあることを乗員に報知するために、車両2のドア部、および、ピラー部に設けられた警報装置30のLEDを緑色に点灯させる(ステップS1206)。これにより、車両2への接近物存在とドアロックがON状態のため乗員が降車できない状態であることを報知できる。
【0102】
車両2の接近物が検知された側のドアロックがON状態でない場合(ステップS1203がNo)は、接近物の距離が車両2から所定距離範囲内、および、接近物が所定速度以上の場合(ステップS1204がYes)は、危険度合いが高いと判定される。このため、乗員に警告を報知するために車両2のドア部、および、ピラー部に設けられた警報装置30のLEDを赤色に点灯させる(ステップS1205)。これにより、車両2への接近物の存在により乗員が降車すると車両2のドアと接近物が接触または衝突する危険があることを乗員に報知できる。
【0103】
ステップS1204に戻って、接近物の距離が車両2から所定距離範囲内、および、接近物が所定速度以上ではない場合(ステップS1204がNo)は、危険度合いが低いと判定される。このため、乗員に注意を促すために車両2のドア部、および、ピラー部に設けられた警報装置30のLEDを黄色に点灯させる(ステップS1207)。これにより、車両2から接近物が所定の距離(たとえば15m以上)離れており、かつ、接近物の速度が所定の速度以下(たとえば10km/h以下)である場合において、接近物が検知されていた場合でも乗員の判断で安全を確認した後に車両2から降車できる。このように接近物の状況に応じて乗員が降車をスムーズに行うことができる。
<第3の実施形態>
<1.構成>
<1−1.接近物検知システム>
本実施形態は図13に示すように上述の第1の実施形態の接近物検知システムの構成として新たにロック固定解除装置80を付加したものであり、それに伴いドア90のドアノブ901およびロック切替部902を構成として表したものである。また、第1の実施形態で述べた接近物検知部20の制御部202の各処理についても同様に行われる。以下では第1の実施形態と異なる点について述べ、同様の構成および処理については記載を省略する。
【0104】
図14は、ロック固定解除装置80の車両への設置例である。図13で説明するロック固定解除装置80とドアR2のドアノブ901、および、ロック切替部902は、図12に示すロック固定解除装置80とドア90のドアノブ901、および、ロック切替部902に対応している。また、ロック固定解除装置80は、車両が備えるドアR1、R2、L1、および、L2のそれぞれに対応して設けられており、対応するドア自身、および、ドアの前後方向に配置される。
【0105】
図14では車両2のドア90のうち運転席のドアR2を例に述べる。このドアR2にはドアを開く際に用いるドアノブ901が設けられており、ドアノブ901の付近にはドアR2のロック/アンロックを切り替えるロック切替部902が設けられている。
【0106】
そして、ドアノブ901の付近に、ユーザが押すことでロック切替部902のロック側の固定が解除されるボタン、または、ユーザが接触することでロック切替部902のロック側の固定が解除される静電センサなどで構成されるロック固定解除装置80aが設けられている。これにより、車両2への接近物が検知されてドアR2のロック切替部902がロック側に固定された状態でも、乗員がロック固定解除装置80aへの所定の操作を行うことでロック切替部902のロック側への固定状態を解除できる。
【0107】
その結果、乗員はロック切替部902をアンロック側に切り替えた後、ドアノブ901を引いて、車両2から降車できる。これにより、接近物が車両2から所定距離以上離れていたり、接近物の車両2に接近する速度が所定速度以下の場合、つまり乗員が車両2から降車しても車両2のドア90および乗員と接近物との接触および衝突の危険がない場合でも、乗員が降車の安全性を確認したにもかかわらず、車両2から降車できない乗員の煩わしさを解消できる。
【0108】
また、ロック固定解除装置80はドア90の近傍の他にドア90の前後方向(前方または後方)に設けてもよい。具体的には、ロック固定解除装置80b(Aピラーに設置。)、および、ロック固定解除装置80c(Bピラーに設置。)のように車両2のピラーに設けてもよい。たとえば、運転席の場合は、車両2の右側(運転席側)のAピラーおよびBピラー、助手席の場合は、車両2の左側(助手席側)のAピラーおよびBピラー、運転席側の後部座席の場合は、車両2の右側(運転席側)のBピラーおよびCピラー、助手席側の後部座席の場合は、車両2の左側(助手席側)のBピラーおよびCピラーに設けてもよい。
【0109】
このように車両2の運転席、助手席、または、後部座席などのそれぞれの乗車位置に対応した降車安全性を確認しやすい位置にロック固定解除装置80を設置することで、乗員は降車前に降車時の安全性を確実に目視確認してから、ロック切替部902のロック側への固定状態を解除して車両2から降車できる。
【0110】
また、上記実施の形態では車両2のドアは開閉式のドアを例に述べたが、車両2のドアはスライド式のドアであってもよい。
【0111】
<2.処理>
<2−1.ドアロック固定解除処理>
図15は、ドアロック固定解除処理のフローチャートである。なお、図14で述べる処理は接近物検知部20の制御部202により行われる。車両2の接近物検知モードがON状態の場合(ステップS1501がYes)、車両2の接近物検知範囲において、接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS1502)。なお、接近物検知モードがON状態ではない場合(ステップS1501がNo)は、処理を終了する。
【0112】
ステップS1502に戻って、接近物を検知した場合(ステップS1502がYes)は、車両2の接近物が検知された側のドア90のロック切替部902がロック側となっているか否かを判定する(ステップS1503)。なお、接近物が検知されていない場合(ステップS1502がNo)は、処理を終了する。
【0113】
ステップ1503に戻って、車両2の接近物が検知された側のドア90のロック切替部902がロック側となっている場合(ステップS1503がYes)、車両2の運転席側ドア(図2に示すドアR2およびR1)のロック切替部902がロック側に固定されているか否かを判定する(ステップS1505)。なお、ステップS1503において、車両2の接近物が検知された側のドア90のロック切替部902がロック側となっていない場合(ステップS1503がNo)は、車両2の接近物が検知された側のドアのロック切替部902を自動的にアンロック側からロック側へと切り替える(ステップS1504)。
【0114】
ステップS1505に戻って、車両2の運転席側ドア90のロック切替部902がロック側に固定されている場合(ステップS1505がYes)で、乗員がロック固定解除装置80のボタンを押下した場合(ステップS1506がYes)は、ロック切替部902のロック側の固定状態を解除する(ステップS1507)。これにより、車両2の右側(運転席側)に接近物が検知されて、ドア90のロック切替部902がロック側に固定されている状態であっても、検知された接近物が車両2から所定距離以上離れていたり、接近物の車両2に接近する速度が所定速度以下の場合、つまり乗員が車両2から降車しても車両2のドア90および乗員と接近物との接触および衝突の危険がない場合に、乗員が車両2から降車できない煩わしさを解消できる。
【0115】
なお、ステップS1505において、車両2の運転席側ドアのロック切替部902がロック側に固定されていない場合(ステップS1505がNo)や、ステップS1506において、乗員がロック固定解除装置80のボタンを押下していない場合(ステップS1506がNo)は、次の処理へ移る。
【0116】
次に、車両2の助手席側ドア(図2に示すドアL2およびL1)のロック切替部902がロック側に固定されているか否かを判定する(ステップS1508)。
【0117】
車両2の助手席側ドアのロック切替部902がロック側に固定されている場合(ステップS1508がYes)で、乗員がロック固定解除装置80のボタンを押下した場合(ステップS1509がYes)は、ロック切替部902のロック側の固定状態を解除する(ステップS1510)。これにより、車両2の左側(助手席側)に接近物が検知されて、ドアのロック切替部902がロック側に固定されている状態であっても、検知された接近物が車両2から所定距離以上離れていたり、接近物の車両2に接近する速度が所定速度以下の場合、つまり乗員が車両2から降車しても車両2のドアおよび乗員と接近物との接触および衝突の危険がない場合に、乗員が車両2から降車できない煩わしさを解消できる。
【0118】
なお、ステップS1509において、乗員がロック固定解除装置80のボタンを押下していない場合(ステップS1509がNo)は、処理を終了する。
【0119】
また、図15で説明した処理は、車両2の運転席側ドアのロック切替部902がロック側に固定されているか否かを判定(ステップS1505)した後に、車両2の助手席側ドアのロック切替部902がロック側に固定されているか否かを判定(ステップS1508)しているが、この処理の順序は逆の順序でもよいし、運転席側ドアおよび助手席側ドアの処理を同時に行ってもよい。
【0120】
また、ロック固定解除装置80の作動はユーザがボタンを押下した場合について述べたが、ロック固定解除装置80の作動がユーザの静電センサの接触によるなどのその他の方法による作動としてもよい。
【0121】
また、本実施形態では、接近物が接近していることを検知した場合は、その接近物の接近方向に対応する車両2の左右のドア90(運転席側ドア、および、助手席側ドア)で、ドア90のロック切替部902のロック側の固定や、ロック側の固定解除を行うことについて述べたが、シートセンサ705を用いて、乗員の乗車が検知されているシートに対応したドアのみについて、ロック切替部902のロック側の固定や、ロック側の固定解除の処理を行うこととしてもよい。これにより、車両2の省電力化を実現できる。
【符号の説明】
【0122】
1・・・・・接近物検知システム
2・・・・・車両
10・・・・撮影部
20・・・・接近物検知部
40・・・・レーダ装置
50・・・・ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両に接近する接近物を検知する接近物検知装置であって、
前記車両の停止状態で、前記車両に搭載されたカメラで得られた撮影画像に基づいて、前記車両に接近する接近物を検知する検知手段と、
前記車両の乗員の有無を検知する乗員検知手段と、
を備え、
前記検知手段は、前記車両をイグニッションOFF状態とした場合でも前記乗員検知手段により前記車両内に乗員が検知される場合は前記接近物の検知を継続して行い、
前記車両がイグニッションOFF状態となり、前記乗員検知手段により前記車両内に乗員が検知されない場合は前記接近物の検知を終了すること、
を特徴とする接近物検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の接近物検知装置において、
前記車両には、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応してユーザに警告を報知する警報装置が設けられ、
前記撮影画像に基づいて、前記車両の複数のドアのうち前記接近物が接近している前記車両のドアを特定する特定手段と、
前記特定手段により特定されたドアに対応する警報装置を作動させる作動手段と、
をさらに備えること、
を特徴とする接近物検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の接近物検知装置において、
前記車両には、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザがドアのロック/アンロックを切り替える切替部材と、ユーザが前記切替部材の固定状態の解除支持が可能な解除指示部材とが設けられ、
前記撮影画像に基づいて、前記車両の複数のドアのうち前記接近物が接近している前記車両のドアを特定する特定手段と、
前記特定手段に特定されたドアの前記切替部材をロック側に固定する固定手段と、
前記切替部材が固定されている場合に、前記解除指示部材からの前記解除指示を示す信号に応答して、前記切替部材の固定状態を解除する解除手段と、
をさらに備えること、
を特徴とする接近物検知装置。
【請求項4】
請求項2または3のいずれかに記載の接近物検知装置において、
前記カメラは、前記車両の左右双方の側方に配置され、
前記特定手段は、前記接近物の像を含む画像を取得したカメラの左右位置に基づいて、前記接近物が接近している前記車両のドアを特定すること、
を特徴とする接近物検知装置。
【請求項5】
請求項4に記載の接近物検知装置において、
前記カメラは、自装置が配置される側の前記車両の側方領域における前方から後方までを撮影可能であり、
前記検知手段は、前記車両の前方および後方の少なくともいずれか一方から接近する物体を検知すること、
を特徴とする接近物検知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の接近物検知装置において、
前記乗員検知手段はシートセンサであり、前記検知手段は乗員が検知されているシートに対応した前記車両の側方領域の接近物検知を行い、乗員が検知されないシートに対応した前記車両の側方領域の接近物検知を行わないこと、
を特徴とする接近物検知装置。
【請求項7】
車両に搭載される接近物検知システムであって、
請求項2に記載の接近物検知装置と、
前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザに警告を報知する警報装置と、
を備えることを特徴とする接近物検知システム。
【請求項8】
車両に搭載される接近物検知システムであって、
請求項3に記載の接近物検知装置と、
前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザがドアのロック/アンロックを切り替える切替部材の固定状態の解除指示が可能な解除指示部材と
を備えることを特徴とする接近物検知システム。
【請求項9】
車両に搭載され、前記車両に接近する接近物を検知する接近物検知方法であって、
前記車両の停止状態で、前記車両に搭載されたカメラで得られた撮影画像に基づいて、前記車両に接近する接近物を検知する検知工程と、
前記車両の乗員の有無を検知する乗員検知工程と、
を備え、
前記検知工程は、前記車両をイグニッションOFF状態とした場合でも前記乗員検知工程により前記車両内に乗員が検知される場合は前記接近物の検知を継続して行い、
前記車両がイグニッションOFF状態となり、前記乗員検知手段により前記車両内に乗員が検知されない場合は前記接近物の検知を終了すること、
を特徴とする接近物検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−113366(P2011−113366A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270121(P2009−270121)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】