説明

描画システム

【課題】 画面上に文字や絵を描画する場合の描画属性の調整を描画端末装置の操作で行うことができる描画システムを提供する。
【解決手段】 この描画システムは、端末装置の位置と角度を求めるための信号を送信する描画端末装置2と、描画端末装置2からの信号を受信する受信器3と、受信した信号から求めた描画端末装置2の位置と角度に基づいて描画端末装置2による描画位置の演算および描画属性の調整を行う演算調整装置4と、演算した描画位置および調整した描画属性にしたがって描画内容を画面1に表示する表示装置5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画端末装置を用いて画面上に文字や絵を描画することができる描画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の描画システムは、例えばパーソナルコンピュータ(PC)とそれを操作するマウス等により実現されている。現在のマウスでは、マウスの位置(2次元)のほか、表示画面のスクロール等を行うことができるホイールが装備されている。このようなマウスを用いて描画する場合、その描画属性、たとえば描画する色を変更するためには、画面上で一旦、描画領域から色選択用の操作領域またはメニュー領域にマウスカーソルを移動して描画する色を選択する必要がある。そのため、多色で描画するには、マウスカーソルを描画領域と操作領域で何回も往復移動しなければならない。また、メニュー領域が多重化されていると操作はさらに複雑になる。さらに、描画に関連してキーボードを操作する必要がある場合、マウスから手を離してキーボードを操作しなければならない。
【0003】
一方、別の描画システムとして、ペンの3次元位置や角度を計算で求め、その計算値に基づいてペンの移動経路を画面に表示して描画することが考えられる。このペンの3次元位置や角度は、例えば特許文献1に記載の位置計測システムにより求めることができる。この技術は、互いの位置関係が判明している4個以上の光源と、各光源からの光を透過して球面収差により光リング像を形成する光学レンズ系と、光学レンズ系により形成された光リング像を検出する撮像素子と、撮像素子により検出された光リング像の検出情報および各光源の位置関係に基づいて各光源の位置を計測する演算装置とを備えて構成される。このような技術を用いて、上記のような光源を設置したペンで、通常のペンと同様な感覚で描画することができる。
【特許文献1】特開2008−58204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、画面上に文字や絵を描画する場合の描画属性の調整を描画端末装置の操作で行うことができる描画システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の描画システムを提供する。
(1)端末装置の位置と角度を求めるための信号を送信する描画端末装置と、前記描画端末装置からの信号を受信する受信器と、前記受信した信号から求めた前記描画端末装置の位置と角度に基づいて前記描画端末装置による描画位置の演算および描画属性の調整を行う演算調整装置と、前記演算した描画位置および前記調整した描画属性にしたがって描画内容を画面に表示する表示装置とを備えた描画システム。
(2)前記演算調整装置が、前記描画端末装置の3次元座標系における3つの座標軸のうちの少なくとも1つの座標軸回りの回転角度に基づいて前記描画属性を調整する上記(1)記載の描画システム。
(3)前記描画端末装置の位置と角度を求めるための信号が、前記描画端末装置に設けられた互いの位置関係が既知の4つ以上の光源をもつ光源セットから発生される上記(1)または(2)記載の描画システム。
(4)前記演算調整装置が、前記描画端末装置の指示方向に対応する座標軸の正方向と負方向で異なる描画属性を調整する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の描画システム。
(5)前記指示方向に対応する座標軸の正方向か負方向かを求めるための信号が、前記描画端末装置に設けられた指示方向識別用光源から発生される上記(4)記載の描画システム。
(6)前記表示装置が、前記調整可能な描画属性の内容を前記画面に表示する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の描画システム。
(7)前記調整された描画属性が画面上で強調表示される上記(6)記載の描画システム。
(8)互いの位置関係が既知の4つ以上の光源をもつ光源セットを設置した描画端末装置と、前記光源を撮像するカメラと、前記撮像した画像から求めた前記描画端末装置の位置と角度に基づいて前記描画端末装置による描画位置の演算および描画属性の調整を行う演算調整装置と、前記演算した描画位置および前記調整した描画属性にしたがって描画内容を画面に表示する表示装置とを備えた描画システム。
(9)前記光源セットの4つ以上の光源のうち、少なくとも3つ以上の光源が同一平面上にあり、少なくとも1つ以上の光源がその平面上から離隔した地点にある上記(8)記載の描画システム。
(10)前記描画端末装置が、前記描画端末装置の指示方向に対応する座標軸の正方向か負方向を識別するための指示方向識別用光源を備える上記(8)または(9)記載の描画システム。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る描画システムによれば、画面上に文字や絵を描画する場合の描画属性の調整を描画端末装置の操作で行うことができる。
請求項2に係る描画システムによれば、本構成を有しないものに比べ、描画属性の調整の操作性を向上することができる。
請求項3に係る描画システムによれば、本構成を有しないものに比べ、描画端末装置の位置と角度を高精度に計測することができる。
請求項4に係る描画システムによれば、本構成を有しないものに比べ、調整可能な描画属性の数を増やすことができる。
請求項5に係る描画システムによれば、本構成を有しないものに比べ、描画端末装置の向きを簡単に判断することができる。
請求項6に係る描画システムによれば、ユーザによる描画操作の利便性を向上することができる。
請求項7に係る描画システムによれば、ユーザによる描画操作の現状確認を容易にすることができる。
請求項8に係る描画システムによれば、画面上に文字や絵を描画する場合の描画属性の調整を描画端末装置の操作で行うことができる。
請求項9に係る描画システムによれば、光源配置の自由度を増大することができる。
請求項10に係る描画システムによれば、本構成を有しないものに比べ、描画端末装置の向きを簡単に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明に係る描画システムの一実施例を示す図である。本実施例は、端末装置の位置と角度を求めるための信号を送信する描画端末装置2と、描画端末装置2からの信号を受信する受信器3(カメラ30)と、受信した信号から求めた描画端末装置2の位置と角度に基づいて描画端末装置2による描画位置の演算および描画属性の調整を行う演算調整装置4と、演算した描画位置および調整した描画属性にしたがって描画内容を画面1に表示する表示装置5とを備える。本例では、描画端末装置2を用いて、図示のように、画面1上に黒色でABCの文字を描画しているが、この描画属性は描画端末装置2を操作することにより変更可能である。描画属性は、例えば描画する線の色、および描画した線を消す消しゴムを含み、さらに描画する線の太さ、明るさ、あるいはコントラスト等を含むことができるが、これらに限定されない。描画属性の調整は、演算調整装置4により、描画端末装置2の3次元座標系における3つの座標軸(x、y、z軸)のうちの少なくとも1つの座標軸回りの回転角度に基づいて行われる。調整可能な描画属性の内容は、表示装置5により、図示のように描画属性6、7として画面1に表示することができ、また調整された描画属性は画面中で強調表示することができる。選択可能目印8は、描画端末装置2で現在調整(選択)可能な描画属性を示すものである。なお、本実施例では、描画端末装置2は、画面上に接触して描画しているが、その指示方向と画面1との交点が描画点とされることから、描画端末装置2を画面1から離して例えば指示器(ポインタ)のように操作して画面上に描画することもできる。
【0008】
図1の実施例では、描画端末装置2の位置と角度を求めるための信号は、描画端末装置2に設けられた互いの位置関係が既知の4つ以上の光源をもつ光源セットから発生される。この場合、受信器3としては、描画端末装置2に設けられた光源を撮像するための例えばCCDやCMOSセンサ等の2次元撮像素子を搭載したデジタルカメラ等のカメラ30を用いることができる。以下、描画端末装置2の構成例について説明する。
【0009】
図2は、本実施例で使用可能な描画端末装置の一構成例を示す図である。本例の描画端末装置2は、操作用ボタン41と、互いの位置関係が既知の4つの光源a1,a2,a3,a4をもつ光源セットaと、操作用ボタン41が操作されたことを伝達するための位置関係が既知の光源bと、光源の発光を制御する発光制御装置42(配線は図示省略)とを有する。これらの光源としては、例えば発光ダイオード(LED)を用いることができるが、これに限定されない。描画端末装置2において光源セット(各光源)の位置関係は既知なので、描画端末装置2の位置と角度は、それに設置された光源セットの位置と角度を算出することで得られる。その算出方法は後述する。
【0010】
描画端末装置2の角度は、その3次元座標系における3つの座標軸(x、y、z軸)回りの回転角度で表される。本例では、図示のように、描画端末装置2の指示方向40をz軸、水平方向をx軸、垂直方向をy軸とする。光源セットaは、本例ではxz平面に配置される。描画属性の調整は、描画端末装置2のx、y、z軸のうちの少なくとも1つの軸回りの回転角度に基づいて行うことができる。各軸の回転角度は、光源セットaの角度(向き)から求めることができる。描画端末装置2の操作用ボタン41は、描画端末装置2のx軸、y軸またはz軸回りの描画属性の選択のために操作される。操作方法は、例えば、描画端末装置2の図示しない電源投入後、操作用ボタン41を一度押すとz軸回りの描画属性の選択が可能となり、二度押すとその選択が確定される。三度押すとx軸回りの描画属性の選択が可能となり、四度押すとその選択が確定される。五度押すとy軸回りの描画属性の選択が可能となり、六度押すとその選択が確定される。その後はボタンを押す毎に上記順番を繰り返す。ボタン41の押し方を奇数度とそれに続く偶数度で短時間に行うことで、それに対応する描画属性の操作を飛ばすことができる。また、現在選択可能な描画属性はどれかを画面1上に選択可能目印8(図1)で示すこともできる。本例では、このようにして、各x、y、z軸回りの回転角度に応じて描画属性の選択を可能とするものであるが、操作方法はこれに限定されず、例えば操作用ボタン41を各軸に対応させて複数個設けてもよいし、ボタン以外の操作手段を用いてもよい。
【0011】
図3は、描画端末装置のx、y、z軸回りの回転角度と描画属性の対応関係の一例を示す図である。まず、z軸回りの回転角度については、回転角度−5°〜+5°は、描画属性が黒色で、この角度範囲はデフォルトとされる。そして、描画端末装置2をz軸回りに+5°〜+10°回転すると描画属性は赤色になり、+10°〜+15°回転すると青色になり、+15°〜+20°回転すると白色になる。逆に、描画端末装置2をz軸回りに−10°〜−5°回転すると描画属性は消しゴムになり、−15°〜−10°回転すると黒色太線になり、−20°〜−15°回転すると黒色細線になる。
【0012】
次に、x軸回りの回転角度については、図3に示すように、回転角度−5°〜+5°では、描画属性として、明るさが50%とされ、回転角度+5°〜+20°では、明るさが50〜100%とされ、回転角度−20°〜−5°では、明るさが0〜50%とされる。この場合、回転角度が+5°より大きいかまたは−5°より小さい範囲では、描画の明るさが連続的または段階的に明るくまたは暗くされる。さらに、y軸回りの回転角度については、回転角度−5°〜+5°では、描画属性として、コントラストが50%とされ、回転角度+5°〜+20°では、コントラストが50〜100%とされ、回転角度−20°〜−5°では、コントラストが0〜50%とされる。この場合も、回転角度が+5°より大きいかまたは−5°より小さい範囲では、描画のコントラストが連続的または段階的に強くまたは弱くされる。
【0013】
以上の角度範囲は、上記数値に限定されず、変更可能である。また、上記各軸回りの回転角度と描画属性の対応関係は、上記組み合わせに限定されず、別の組み合わせとしてもよい。なお、上記回転角度の+側は、例えば該当する座標軸の正方向に右手親指を向けて他の指で軸を握ったときに他の指が巻かれる方向であり、−側はその逆方向である。
【0014】
図4(a)、(b)は、表示装置により画面に表示される描画属性の内容の一例を示す図である。図1に示すように、上記図3で選択可能な描画属性6,7の内容が、画面1上に表示される。図4(a)のように、描画属性6は、描画可能な色として、白色61,青色62,赤色63,黒色64があり、また描画した線を消す消しゴム65,黒色太線66,黒色細線67を含む。ここで、選択(調整)された描画属性は、画面上で強調表示することができる。本例では、青色62の描画属性が強調表示68されている。また、図4(b)のように、描画属性7は、描画の明るさおよびコントラストを含む。本例では、明るさおよびコントラストが、選択値71,72に示すように、ともに50%に設定されている。以下、描画端末装置2の位置と角度の算出方法等について説明する。
【0015】
図5は、3つの光源を有する光源セットの3次元位置の演算方法の一例を示す図である。本例では、4つの光源を例えば正方形の角に配置し、そのうち3つの光源の組み合わせを2つ考える。各々の3点を用いて、以下の計算から2つの解を導出する。その2つの解の内一つは光源位置が全く同じ値を示すので、それを正解とする。これにより、光源セットの位置と角度を決定することができる。
まず、図において、光源a1,a2,a3の画像面51上の画像位置c1,c2,c3とカメラの光学中心52との関係から、カメラ座標系における光源位置の方向ベクトルdi(i=1,2,3)を算出する。diは規格化した単位ベクトルとする。
【0016】
光源a1,a2,a3の空間の位置ベクトルをp1,p2,p3とすると、これらはdiの延長線上に存在するので、その係数をt1,t2,t3として、
p1=t1・d1
p2=t2・d2 式1
p3=t3・d3
で表すことができる。
【0017】
三角形の形状は最初からわかっており、その長さを各々
p1p2=L1
p2p3=L2 式2
p3p1=L3
とすると次式が得られる。式中「^」は累乗を表す。
(t1x1-t2x2)^2+(t1y1-t2y2)^2+(t1z1-t2z2)^2=L1^2
(t2x2-t3x3)^2+(t2y2-t3y3)^2+(t2z2-t3z3)^2=L2^2 式3
(t3x3-t1x1)^2+(t3y3-t1y1)^2+(t3z3-t1z1)^2=L3^2
【0018】
整理すると
t1^2-2t1t2(x1x2+y1y2+z1z2)+t2^2-L1^2=0
t2^2-2t2t3(x2x3+y2y3+z2z3)+t3^2-L2^2=0 式4
t3^2-2t3t1(x3x1+y3y1+z3z1)+t1^2-L3^2=0
が得られ、次式となる。式中「sqrt」は平方根を表す。
t1=A1・t2±sqrt((A1^2-1)・t2^2+L1^2)
t2=A2・t3±sqrt((A2^2-1)・t3^2+L2^2) 式5
t3=A3・t1±sqrt((A3^2-1)・t1^2+L3^2)
ここで、A1,A2,A3は次式のとおりである。
A1=x1x2+y1y2+z1z2
A2=x2x3+y2y3+z2z3 式6
A3=x3x1+y3y1+z3z1
【0019】
実数解を持つために、式5の平方根の中が正になる。
t1≦ sqrt(L3^2/(1-A3^2))
t2≦ sqrt(L1^2/(1-A1^2)) 式7
t3≦ sqrt(L2^2/(1-A2^2))
【0020】
この条件を満たす実数t1、t2、t3を順次、式5に代入し、式5が成立するすべてのt1,t2,t3を算出する。次に上記の式1からp1,p2,p3を、即ち、光源の3次元位置を算出する。光源が3つの場合には二つの解ができるが、本例の場合は光源が4つあるので、他の3つの光源について上記と同様の計算を行い別の2つの解を導出する。その2つの解の内一つは光源位置が全く同じ値を示すので、それを正解とする。このように、光源が4点以上ある場合には、答えを一つに同定することができるので、4つの光源a1,a2,a3,a4を有する光源セットの位置と角度を決定することができる。
【0021】
図6は、本実施例で使用可能な描画端末装置の他の構成例を示す図である。上記説明は4つ以上の光源が同一平面上にある場合であるが、4つ以上の光源のうち、少なくとも3つ以上の光源が同一平面上にあり、少なくとも1つ以上の光源がその平面上から離隔した地点にある場合も同様に演算することができる。本例の描画端末装置2は、3つの光源a1,a2,a3が同一平面上にあり、1つの光源a4’がその平面上から離隔した地点にある。光源a4’は、例えば光源セットaの平面上から突出する突出部43の先端に設けられる。この突出部43の位置と高さは既知で、例えば3つの光源a1,a2,a3の重心に置くことができるが、これに限定されない。この場合も、同一平面上の3つの光源a1,a2,a3を用いて、前述と同様の計算を行い2つの解を導出する。そして、この2つの解の光源a1,a2,a3の位置から光源a4’のそれぞれの位置を計算する。この計算値とカメラで撮影した光源a4’の画像面上の位置の実際値とを比較し、この計算値と実際値とが対応する解を正解とする。このような方法を用いても、光源セットの位置と角度を決定することができる。光源セットの位置と角度の算出方法は上記方法に限定されるものではなく、例えば前述の特許文献1に記載の方法あるいはそれ以外の方法を用いてもよい。
【0022】
演算調整装置4は、以上のようにして光源セット(描画端末装置)の位置と角度を求める。演算調整装置4における描画端末装置2の描画位置は次のようにして演算される。まず、光源セット(描画端末装置)の位置と角度を求めることにより、描画端末装置の指示方向と画面1の交点を算出し、この交点の位置を表示装置5によりモニタあるいはプロジェクタ等の画面1で描画として表示する。描画端末装置2の各軸回りの回転角度は、上記で求めた光源セットの角度から得られる。
【0023】
図7は、本発明に係る描画システムの他の実施例を示す図である。本実施例は、描画端末装置2の指示方向を図1の実施例の場合と逆方向にして、それとは異なる描画属性を選択可能とした点で図1の実施例とは異なるが、その他の点では図1の実施例と同様である。図7に示すように、描画端末装置2は、図1の場合とは逆方向に向けられ、図示のように、画面1上に黒色でDEFの文字を描画している。この場合、画面1上に描画属性9が図1の描画特性6に代えて表示される。この描画属性9の内容を述べる前に、本実施例に用いる描画端末装置2の構成例を説明する。
【0024】
図8は、図7の実施例で使用可能な描画端末装置の一構成例を示す図である。本実施例が図2の描画端末装置と異なる点は、描画端末装置2のz軸の負方向を指示方向44とするところにある。指示方向がz軸の正方向(40)か負方向(44)かを求めるための信号を発生するために、描画端末装置2は指示方向識別用光源cを備える。その他の点は、図2の描画端末装置と同様である。本例の指示方向識別用光源cの位置関係は予め決められている。光源cの点灯は、例えば操作用ボタン41を描画属性選択等の操作に必要な時間よりも長い予め決められた時間の間押し続けることにより行われるが、これに限定されず、別の専用ボタンを設けてもよい。本描画システムでは、画面1の位置関係は既知なので、受信器3(カメラ30)を介して、演算調整装置4にて光源cの点灯の有無を判断することができる。
【0025】
図9は、描画端末装置の向きがz軸の正方向の場合と負方向の場合のz軸回りの回転角度と描画属性の対応関係の一例を示す図である。ここで、光源cが点灯されていない場合は、描画端末装置2の指示方向(向き)がz軸の正方向であり、描画属性は図3の場合と同様である。これに対して、光源cが点灯されている場合は、描画端末装置2の指示方向はz軸の負方向であり、図9のz軸・負方向の欄に示すように、次のように描画属性が調整される。すなわち、z軸回りの回転角度−5°〜+5°は、描画属性が黒色で、この角度範囲はデフォルトとされる。これは描画端末装置の向きに関係なく共通である。そして、描画端末装置2をz軸回りに+5°〜+10°回転すると描画属性は黒色一点鎖線になり、+10°〜+15°回転すると黒色破線になり、+15°〜+20°回転すると黒色点線になる。逆に、描画端末装置2をz軸回りに−10°〜−5°回転すると描画属性は黒・赤色組合せになり、−15°〜−10°回転すると赤・青色組合せになり、−20°〜−15°回転すると黒・赤・青色組合せになる。この複数色の組合せとしては、例えば各色が並列して描画される場合、あるいは各色が捻れて描画される場合があるが、これに限定されず、各種の描画方法を用いることができる。この色組合せの中身は、演算調整装置4に予め記憶しておき、必要に応じて描画属性として設定することができる。なお、x軸およびy軸回りの回転角度と描画属性の対応関係は図3の場合と同様とすることができる。
【0026】
図10は、表示装置により画面に表示される描画属性の内容の他の例を示す図である。上記図9で説明したとおり、描画端末装置2の向きがz軸の負方向の場合、選択可能な描画属性9は、図10に示すように、黒色点線91、黒色破線92、黒色一点鎖線93、黒色94、黒・赤色組合せ95、赤・青色組合せ96、黒・赤・青色組合97である。ここで、選択(調整)された描画属性は、画面上で強調表示することができる。本例では、赤・青色組合せ96の描画属性が強調表示98されている。この描画属性9の内容は、図7に示すように、画面1上に表示される。
【0027】
以上の実施例では、描画端末装置2は図2、図6、図8に示すような形態としたが、これに限定されず、板形状、角柱形状、円柱形状あるいは卵形等のマウス形状としてもよい。また、描画端末装置2の複数の側面または領域に軸回り回転角度に対応して描画属性が分かるように例えば描画される色等をそれぞれ塗ることができる。さらに、属性が変化したことを画面に表示することができ、あるいは音、振動または装置の屈曲などでユーザに知らせることもできる。以上の実施例において、演算調整装置4としてはパーソナルコンピュータ(PC)等のコンピュータを用いることができる。また、描画端末装置2に用いる光源に代えて、無線マウスと同様の信号送信を行う無線送信器を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る描画システムの一実施例を示す図である。
【図2】本実施例で使用可能な描画端末装置の一構成例を示す図である。
【図3】描画端末装置のx、y、z軸回りの回転角度と描画属性の対応関係の一例を示す図である。
【図4】(a)、(b)は、表示装置により画面に表示される描画属性の内容の一例を示す図である。
【図5】3つの光源を有する光源セットの3次元位置の演算方法の一例を示す図である。
【図6】本実施例で使用可能な描画端末装置の他の構成例を示す図である。
【図7】本発明に係る描画システムの他の実施例を示す図である。
【図8】図7の実施例で使用可能な描画端末装置の一構成例を示す図である。
【図9】描画端末装置の向きがz軸の正方向の場合と負方向の場合のz軸回りの回転角度と描画属性の対応関係の一例を示す図である。
【図10】表示装置により画面に表示される描画属性の内容の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 画面
2 描画端末装置
3 受信器(カメラ30)
4 演算調整装置
5 表示装置
6、7、9 描画属性
8 選択可能目印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置の位置と角度を求めるための信号を送信する描画端末装置と、前記描画端末装置からの信号を受信する受信器と、前記受信した信号から求めた前記描画端末装置の位置と角度に基づいて前記描画端末装置による描画位置の演算および描画属性の調整を行う演算調整装置と、前記演算した描画位置および前記調整した描画属性にしたがって描画内容を画面に表示する表示装置とを備えた描画システム。
【請求項2】
前記演算調整装置が、前記描画端末装置の3次元座標系における3つの座標軸のうちの少なくとも1つの座標軸回りの回転角度に基づいて前記描画属性を調整する請求項1記載の描画システム。
【請求項3】
前記描画端末装置の位置と角度を求めるための信号が、前記描画端末装置に設けられた互いの位置関係が既知の4つ以上の光源をもつ光源セットから発生される請求項1または2記載の描画システム。
【請求項4】
前記演算調整装置が、前記描画端末装置の指示方向に対応する座標軸の正方向と負方向で異なる描画属性を調整する請求項1ないし3のいずれかに記載の描画システム。
【請求項5】
前記指示方向に対応する座標軸の正方向か負方向かを求めるための信号が、前記描画端末装置に設けられた指示方向識別用光源から発生される請求項4記載の描画システム。
【請求項6】
前記表示装置が、前記調整可能な描画属性の内容を前記画面に表示する請求項1〜5のいずれかに記載の描画システム。
【請求項7】
前記調整された描画属性が画面上で強調表示される請求項6記載の描画システム。
【請求項8】
互いの位置関係が既知の4つ以上の光源をもつ光源セットを設置した描画端末装置と、前記光源を撮像するカメラと、前記撮像した画像から求めた前記描画端末装置の位置と角度に基づいて前記描画端末装置による描画位置の演算および描画属性の調整を行う演算調整装置と、前記演算した描画位置および前記調整した描画属性にしたがって描画内容を画面に表示する表示装置とを備えた描画システム。
【請求項9】
前記光源セットの4つ以上の光源のうち、少なくとも3つ以上の光源が同一平面上にあり、少なくとも1つ以上の光源がその平面上から離隔した地点にある請求項8記載の描画システム。
【請求項10】
前記描画端末装置が、前記描画端末装置の指示方向に対応する座標軸の正方向か負方向を識別するための指示方向識別用光源を備える請求項8または9記載の描画システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−157146(P2010−157146A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335641(P2008−335641)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】