説明

描画装置、および、物品の製造方法

【課題】 所定方向に配列された基板上の複数のショット領域に対して並行して描画を行う描画装置におけるオーバーレイ精度と生産性との両立。
【解決手段】 荷電粒子線のアレイで該描画を行う描画装置は、該基板を保持するステージと、荷電粒子光学系と、該基板上の描画領域を変更するように該ステージと該荷電粒子光学系との間の該所定方向における相対移動を行わせる駆動手段と、制御手段と、を有する。該荷電粒子光学系は、該所定方向にスペースをもって離散的に配列された複数のサブアレイを該基板に入射させ、かつ、複数のサブアレイセットをそれぞれ偏向する複数の偏向器を有する。 該制御手段は、該複数のショット領域の境界をまたぐサブアレイにより該境界の一方の側の領域と該境界の他方の側の領域とが、並行して描画されず、かつ、該ステップ移動を介して順次描画されるように、該荷電粒子光学系と該駆動手段とを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の荷電粒子線で基板に描画を行う描画装置、および、それを用いた物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路等のデバイスの製造に用いられる描画装置として、複数の荷電粒子線(荷電粒子線のアレイ)で基板に描画を行う描画装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
そのような描画装置は、スループットを増大させるために荷電粒子線の本数を増やすと、複数の荷電粒子線を基板に投影するための光学系の収差や製造誤差、経時変化に対処するのが困難となる。このため、荷電粒子線のアレイを構成するサブアレイごとに荷電粒子線の偏向を行う偏向器を備えた描画装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−7538号公報
【特許文献2】特許第3647128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のようにサブアレイごとに荷電粒子線の偏向を行う偏向器を備えた場合、サブアレイがスペースをもって配置されることになる。また、これに限らず、荷電粒子線用の光学素子(レンズや偏向器等)は、それに含まれる電極等の薄板の撓みを低減するため、所定の間隔でスペーサまたは梁を配置する場合がある。これらの理由から、荷電粒子線のアレイは、サブアレイがスペースをもって配置されてなる場合がある。
【0006】
そのような荷電粒子線のアレイを、基板上に既に形成された複数のショット領域にわたって照射させ、サブアレイによる描画領域を繋ぎ合わせて複数のショット領域に描画を行うのがスループット上有利である。
【0007】
しかしながら、つぎの点に留意しなければならない。すなわち、複数の荷電粒子線の軌道は、サブアレイごとに備えた偏向器により、サブアレイ単位で補正できる点である。そして、当該サブアレイ単位での補正は、基板上に既に形成されたショット領域の位置や形状にサブアレイにより描画されるパターンを重ね合わせるためにも用いられうる点である。このため、1つのショット領域の位置や形状に基づいて軌道を調整された1つのサブアレイで2つのショット領域にわたって並行して描画を行うことは、オーバーレイ精度(重ね合わせ精度)の観点からは好ましくない。それを回避するためには、基板上に形成されたショット領域のサイズ、サブアレイのサイズ、および、サブアレイ間のスペースのサイズの間に所定の関係を持たせればよい。例えば、サブアレイのサイズとスペースのサイズとを1:1に設定し、ショット領域のサイズをサブアレイ間のピッチの自然数倍となるように設定すればよい。ところが、そのような設定は、製造すべきチップのサイズの自然数倍にショット領域のサイズが設定されるのが通常であることから、チップのサイズに制約を与えてしまうことになる。
【0008】
また、サブアレイの外縁の荷電粒子線が直線上に配列されていない(配列に凹凸を有する)場合、ショット領域は矩形であるため、サブアレイによる描画範囲の境界とショット領域の境界とを一致させることはできない。その場合、2つのショット領域にわたって1つのサブアレイで並行して描画を行うのを回避するには、上記凹凸の幅だけ間隔を空けてショット領域を配置する必要がある。そうすると、基板上に配置できるショット領域の数が減少し、生産性の点で好ましくない。
【0009】
本発明は、以上に例示したような課題に鑑みてなされたものであり、基板上に既に形成された複数のショット領域に対して並行して描画を行う描画装置であってオーバーレイ精度と生産性との両立に有利な描画装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、所定方向に配列された基板上の複数のショット領域に対して並行して、かつ、前記所定方向における前記基板のステップ移動を介在させて、荷電粒子線のアレイで描画を行う描画装置であって、
前記基板を保持するステージと、
前記ステージに保持された基板に前記アレイを入射させる荷電粒子光学系と、
前記基板上の描画領域を変更するように前記ステージと前記荷電粒子光学系との間の前記所定方向における相対移動を行わせる駆動手段と、
制御手段と、を有し、
前記荷電粒子光学系は、前記アレイとして、前記所定方向にスペースをもって離散的に配列された複数のサブアレイを前記基板に入射させ、かつ、前記複数のサブアレイの少なくとも1つをそれぞれ含む複数のサブアレイセットをそれぞれ偏向する複数の偏向器を有し、
前記制御手段は、前記複数のサブアレイのうち前記複数のショット領域の境界をまたぐサブアレイにより前記境界の一方の側の領域と前記境界の他方の側の領域とが、並行して描画されず、かつ、前記ステップ移動を介して順次描画されるように、前記荷電粒子光学系と前記駆動手段とを制御する、
ことを特徴とする描画装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、基板上に既に形成された複数のショット領域に対して並行して描画を行う描画装置であってオーバーレイ精度と生産性との両立に有利な描画装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る描画装置の構成例を示す図
【図2】基板上に形成されたショット領域に対するサブアレイの配置例を示す図(実施形態1)
【図3】描画装置の1つのショット領域において順次描画が行われる複数組の描画領域を例示する図
【図4】描画装置の複数のショット領域に対して描画装置が描画を行う順序を例示する図
【図5】サブアレイ内のビーム配列の一例(長方格子配列)とそれによる描画態様を示す図
【図6】基板上に形成されたショット領域に対するサブアレイの配置例を示す図(実施形態2)
【図7】描画装置の1つのショット領域において順次描画が行われる複数組の描画領域を例示する図
【図8】基板上に形成されたショット領域に対するサブアレイの配置例を示す図(実施形態3)
【図9】描画装置の1つのショット領域において順次描画が行われる複数組の描画領域を例示する図
【図10】サブアレイ内のビーム配列の一例(千鳥格子配列)とそれによる描画態様を示す図
【図11】基板上に形成されたショット領域に対するサブアレイの配置例を示す図(実施形態4)
【図12】描画装置の1つのショット領域において順次描画が行われる複数組の描画領域を例示する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、原則として、全図を通じ同一の部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
[実施形態1]
図1は、実施形態に係る描画装置の構成例を示す図であって、荷電粒子線のアレイ(複数の荷電粒子線)で基板に描画を行う描画装置の構成例を示すものである。本実施形態では、荷電粒子線として電子線を用いる場合について説明するが、電子線はイオン線など他の荷電粒子線に置換可能である。図1において、COSは、後述するステージに保持された基板に電子線のアレイを投射する投射系(荷電粒子光学系)である。111は、クロスオーバ112を形成する電子源(荷電粒子源)である。114、115は、クロスオーバ112から発散した電子(荷電粒子)の軌道を示す。クロスオーバ112から発散した電子は、電界および磁界の少なくとも一方を生成するコリメーターレンズ113の作用により平行なビームとなり、116に入射する。116は、アパーチャアレイであって、アパーチャアレイ116に入射した電子線は複数の電子線に分割され、電子線のアレイ(荷電粒子線のアレイ)となる。アパーチャアレイ116には、例えば、2次元状に規則的かつ離散的に配列された複数の開口(例えば円形状開口)が形成されている。ここで、電子線のアレイは、電子線のサブアレイが所定のスペースをもって離散的に配列されたものとなっている。ここで、サブアレイ内の電子線の配列や、サブアレイ間のスペースは、アパーチャアレイ116内の開口の配列によって決まるものである。なお、サブアレイやスペースのサイズは、荷電粒子線のアレイを荷電粒子線のサブアレイから構成する要因から決められる。当該要因としては、サブアレイごとに荷電粒子線の偏向を行う偏向器のサイズ、または、荷電粒子線光学系の光学素子(レンズや偏向器等)に含まれる電極等の薄板の撓みを低減するために配置されるスペーサまたは梁のサイズや間隔等を例示することができる。
【0015】
アパーチャアレイ116により形成された電子線アレイは、開口(例えば円形状開口)のアレイが形成された3枚の電極板(不図示)から構成される静電レンズアレイ117に入射する。静電レンズアレイ117がクロスオーバを形成する位置には、アパーチャアレイ116と同様の配列を有する開口アレイが形成されたブランキング偏向器アレイ118が配置されている。ブランキング偏向器アレイ118は、電子線アレイ中の電子線を個別に偏向する。ブランキング偏向器アレイ118により偏向された電子線124は、ストッピングアパーチャアレイ119により遮蔽される。ストッピングアパーチャアレイ119には、アパーチャアレイ116と同様の配列を有する開口アレイが形成されている。ブランキング偏向器アレイ118は、ブランキング制御回路105により制御され、ブランキング動作のために各電子線を個別に偏向する。ブランキング制御回路105は、ブランキング指令生成回路104によって生成されるブランキング信号に基づいてブランキングの制御を行う。なお、描画パターンは、描画パターン発生回路102により生成され、当該描画パターンは、ビットマップ変換回路103によりビットマップデータに変換される。当該ビットマップデータに基づいてブランキング指令生成回路104は上記のブランキング信号を生成する。
【0016】
ブランキング偏向器アレイ118により偏向されずにストッピングアパーチャアレイ119を通過した電子線は、静電レンズアレイ121により基板122上にクロスオーバ110の像を形成する。123は、ステージ部であって、基板122を保持する可動のステージと、基板122上の描画領域を変更するように当該ステージと投射系COSとの間の所定方向における相対移動を行わせるアクチュエータ(駆動手段)とを含む。
【0017】
120は、電子線のサブアレイごとに構成された偏向器を含む偏向器アレイであって、各偏向器は、サブアレイを偏向させることにより、基板122上におけるサブアレイ内の電子線の位置125をX−Y面内において移動させる。なお、偏向器アレイ120は、サブアレイごとに設けられるのに限られず、例えば、複数のサブアレイ(サブアレイセット)を単位として設けられてもよく、また、各電子線を単位として設けられてもよい。106は、上述のビットマップデータに基づいて偏向信号を生成する偏向信号生成回路である。107は、偏向信号生成回路106によって生成された偏向信号に基づいて偏向器アレイ120の駆動信号を生成する偏向アンプである。
【0018】
ステージ部123は、ステージ制御回路110により制御される。ステージ制御回路110は、ステージ制御信号生成回路109が生成するステージ制御信号に基づいてステージの位置決めの制御を行う。ステージ制御信号生成回路109は、上述のビットマップデータに基づいてステージ制御信号を生成する。ステージの位置は、レーザ測長器等の計測器(不図示)により計測され、その計測の結果は、ステージの位置決めの制御に用いられる。基板122は、描画中、ステージの移動(副走査)と並行して電子線のアレイにより走査(主走査)される。このため、ステージ制御回路110によるステージの位置決め制御と、上述の偏向アンプ107による偏向器アレイ120の制御と、上述のブランキング制御回路105によるブランキング偏向器アレイ118の制御とは、同期してなされる。このようにして、電子線のアレイにより基板122に描画が行われる。
【0019】
なお、コリメーターレンズ113、静電レンズアレイ117は、レンズ制御回路101により制御され、静電レンズアレイ121は、レンズ制御回路108により制御される。また、以上説明した回路101ないし110による描画動作は、コントローラー100の制御の下でなされる。
【0020】
図2は、本実施形態において、基板上に既に形成されたショット領域に対するサブアレイ(サブアレイによる描画領域)の配置例を示す図である。上述したアパーチャアレイ116により、電子線のアレイは、基板122上において、サブアレイが所定のスペースをもって離散的に配列されたものとなる。サブアレイによる描画領域200(サブアレイ描画領域)は、X軸方向にCX、Y軸方向にCYの代表幅を有し、X軸方向・Y軸方向にそれぞれ幅SX・幅SYのスペースを空けて格子状に離散的に配置される。ここで、X軸方向およびY軸方向は、互いに直交する2つの方向である。なお、X軸方向およびY軸方向は、必ずしも直交する必要はなく、互いに交差する2つの方向であってもよい。各軸方向において、スペースの幅(ノミナルサイズ;第3の幅)は、後述する少なくとも1つのスペースを除いてサブアレイ描画領域の幅(ノミナルサイズ;第2の幅)のn倍(nは自然数または正の整数;本実施例では1倍)の幅に設定されている。複数のサブアレイにより、X軸方向に幅GX、Y軸方向に幅GYを有する最大ショット領域201(描画装置の最大ショット領域)に対して描画を行うことができる。
【0021】
最大ショット領域201内において、基板上に既に形成されているショット領域205の配置は、その境界203、204が幅DX2、幅DY2の範囲内に配置されるような配置とする。なお、DX2は、サブアレイ描画領域200の左端からのX軸方向の幅を示し、DY2は、サブアレイ描画領域200の上端からのY軸方向の幅を示している。また、203は、ショット領域205のX軸方向における境界を示し、204は、ショット領域205のY軸方向における境界を示している。ここで、DX2・DY2の範囲にそれぞれ隣接するスペース(特定スペース)の幅SX2・幅SY2は、それぞれ他のスペースの幅SX・幅SYより狭い。SX2は、SX2=SX−DX2となるように設定され、SY2は、SY2=SY−DY2となるように設定されている。
【0022】
図2は、単純な構成として、SX=CX、SY=CY、描画装置の最大ショット領域201内に、基板上に既に形成された3×3=9個のショット領域205が内包される場合を示している。ここで、サブアレイの配列は、投射系COS中のアパーチャアレイ116等の構造により決まっている為、容易には変更できない。一方、基板上に既に形成されたショット領域205は、1または複数のチップ領域を含む。そして、チップのサイズは、生産性を左右するパラメータでもあるため、できるだけ小さく、かつ、回路規模に比例して任意に設定したいという要求もある。このため、そうして決められたショット領域205に対して、以上のようなサブアレイ配置にすると、サブアレイ描画領域サイズのn倍から、それより幅DX2(幅DY2)だけ小さいサイズまでの範囲のサイズのショット領域205に対応することができる。したがって、チップサイズの自由度の制約を軽減することにもなる。幅DX2、幅DY2は、広くする方が当該自由度の点では好ましい。しかし、そうすると、描画に使用されない可能性のある多数の電子線を生成する(冗長な電子線を増加させる)ことになることを考慮すると、幅DX2、幅DY2は、狭くする方が好ましい。よって、例えば、ターゲットとするショット領域205のサイズの範囲を設定し、その範囲から幅DX2、幅DY2を決定し、ショット領域205の最大サイズからサブアレイ描画領域のサイズ(幅CX、幅CY)を決定するのがよい。なお、DX2(DY2)は、サブアレイ描画領域の幅未満(第2の幅未満)の所定の幅としうる。
【0023】
また、描画装置の最大ショット領域201が、ある軸方向において2つ以下のショット領域205しか内包しない場合、その軸方向は、ショット領域の境界203(204)がサブアレイ描画領域200の境界と一致するようにショット領域を配置してもよい。その場合が常であるならば、その軸方向は、スペースの幅をすべて同じにしてもよい。
【0024】
なお、実施形態の説明において、特に断らない限り、種々のサイズや寸法は、ノミナル値(公称値または設計値)を示すものとする。そして、実施形態の説明において示される数式(文字式)は、そのようなノミナル値の間の関係を示すものとする。
【0025】
次に、図2のサブアレイ配置により描画装置のショット領域に対して描画を行う態様について説明する。図3は、描画装置の1つのショット領域において順次描画が行われる複数組の描画領域を例示する図である。図3において、サブアレイ毎の描画領域に<1>〜<4>の符号を付与し、並行して描画が行われる描画領域には同一の符号を付している。各サブアレイ描画領域は、後述の描画方法に従って描画が行われる。基板上に既に形成されたショット領域205と各サブアレイとの間の初期状態(描画を開始するときの状態)での位置関係が図2で示したものである場合、まず、<1>で示された描画領域の組<1>の描画が行われる。その際、ショット領域205の境界203(204)をまたぐサブアレイ描画領域については、境界203(204)より右端(下端)側の領域のみ、対応するショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。境界203(204)より左端(上端)側の領域は、描画を行わない。描画装置の最大ショット領域201とその内部に配置された全ショット領域205の外縁との間の領域も描画を行わない。境界203、204をまたがないサブアレイ描画領域については、サブアレイ描画領域が包含されるショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。なお、前述したように、サブアレイ描画領域200の境界と一致するように境界203または204を配置した場合は、該当する軸方向では、複数のショット領域をまたぐサブアレイ描画領域は存在しない。
【0026】
つづいて、ステージ部123を距離CYだけY軸方向にステップ移動させ、<2>で示される描画領域の組に対して、描画領域の組<1>と同様に描画を行う。すなわち、ショット領域205の境界203(204)をまたぐサブアレイ描画領域については、境界203(204)より右端(下端)側の領域のみ、対応するショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。境界203(204)より左端(上端)側の領域は、描画を行わない。描画装置の最大ショット領域201とその内部に配置された全ショット領域205の外縁との間の領域も描画を行わない。境界203、204をまたがないサブアレイ描画領域については、サブアレイ描画領域が包含されるショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。描画領域の組<1>・<2>に対してそれぞれステージ部123を距離CXだけX軸方向にステップ移動させて得られる描画領域の組<3>・<4>についても、描画領域の組<1>・<2>と同様に描画を行う。そうすることで、描画装置の最大ショット領域201内の各ショット領域205(9つのショット領域205)に対して描画が完了する。なお、スループットの観点から、描画領域の組<1>〜<4>をその数字の昇順で描画するのがよいが、描画領域の組<1>〜<4>の描画は、必ずしもこの順序で行う必要はない。
【0027】
図4は、描画装置の複数のショット領域に対して描画装置が描画を行う順序を例示する図である。図2・図3を参照して説明したように、X軸方向に幅GX、Y軸方向に幅GYを有する描画装置の最大ショット領域201内に内包される複数のショット領域205が描画された。そのように描画された複数のショット領域205の組の全領域を描画装置のショット領域400とする。描画装置のショット領域400は、図4に示されるように、基板122上に配列される。描画装置は、そのショット領域400の描画が終了するたびにステージ部123をステップ移動させ、図中矢印で示されるような順序で複数のショット領域400に対して順次描画を行う。
【0028】
図5は、基板122上におけるサブアレイ内のビーム配列の一例(正方格子配列または長方格子配列)とそれによる描画態様を示す図である。荷電粒子線500は、基板122上において、X軸方向にピッチPcx、Y軸方向にピッチPcをもって配列された、いわゆる長方格子状の配列となっている。図5は、3行3列の電子線で構成されているサブアレイを例示しているが、電子線の行数や列数は、それには限られない。
【0029】
そのように配列された複数の電子線(サブアレイ)による描画は、X軸方向においては、主として偏向器アレイ120による電子線の偏向(幅Dxにわたるラスタスキャン;主走査)によりなされる。また、Y軸方向においては、主としてステージ部123の移動(幅Pcにわたるスキャン;副走査)によりなされる。幅Dxは、偏向器アレイ120の偏向幅以下の値にするのが好ましい。そうすることで、幅Dxの領域を複数回に分割して順次描画する等の処理が不要となり、Y軸方向におけるステージの移動(副走査)の回数の少なさ(スループット)の点で有利となる。X軸方向のピッチPcxに対応する領域は、幅Dxでのステージ部123のステップ移動を介在させて、幅Dxの領域ごとに順次描画する。また、ピッチPcxは、幅Dxの自然数倍に設定すればよい。それに限らず、偏向器アレイ120による電子線の偏向幅をDxより大きくすることにより、境界領域をオーバーラップさせて描画してもよい。その場合、オーバーラップ領域での各描画においてドーズ量に勾配をもたせることにより、繋ぎ誤差を低減することができる。本実施形態のような長方格子配列のサブアレイを用いる場合、各サブアレイの描画領域は、矩形状の境界を有した領域となる。
【0030】
本実施形態によれば、ショット領域の境界の一方の側の領域と他方の側の領域とを1つのサブアレイで並行して描画することなく、個々のショット領域に対する重ね合わせに必要な情報に基づいて、個々のショット領域を効率的に描画することができる。
【0031】
[実施形態2]
図6は、本実施形態において、基板上に既に形成されたショット領域に対するサブアレイ(サブアレイによる描画領域)の配置例を示す図である。実施形態1の構成(図2)とは異なる点に関して説明する。実施形態1では、例えばY軸方向において、サブアレイ描画領域間のスペースの幅SYを一部幅SY2に狭めた構成としているのに対し、本実施形態では、スペースの幅SYは変えずに、サブアレイ描画領域のY軸方向の幅CYを一部幅CY2に拡げた構成にしている。各軸方向において、スペースの幅(ノミナルサイズ;第3の幅)は、後述する少なくとも1つのサブアレイを除くサブアレイによる描画領域200の幅(ノミナルサイズ;第2の幅)のn倍(nは正の整数;本実施形態では1倍)の幅に設定されている。複数のサブアレイにより、X軸方向に幅GX、Y軸方向に幅GYを有する最大ショット領域201に対して描画を行うことができる。最大ショット領域201内において、基板上に既に形成されているショット領域205の配置は、その境界203、204が幅DX2、幅DY2の範囲内に配置されるような配置とする。なお、DX2は、サブアレイ描画領域200(特定サブアレイの描画領域)の右端からのX軸方向の幅を示し、DY2は、サブアレイ描画領域200(特定サブアレイの描画領域)の下端からのY軸方向の幅を示している。ここで、DX2・DY2の範囲をそれぞれ含むサブアレイ描画領域の幅CX2・幅CY2は、それぞれ他のサブアレイ描画領域の幅CX・幅CYより広い。CX2は、CX2=CX+DX2となるように設定され、CY2は、CY2=CY+DY2となるように設定されている。図6は、単純な構成として、SX=CX、SY=CY、描画装置の最大ショット領域201内に、基板上に既に形成された3×3=9個のショット領域205が内包される場合を示している。
【0032】
また、描画装置の最大ショット領域201が、ある軸方向において2つ以下のショット領域205しか内包しない場合、その軸方向は、ショット領域の境界203(204)がサブアレイ描画領域200の境界と一致するようにショット領域を配置してもよい。その場合が常であるならば、その軸方向は、サブアレイ描画領域の幅をすべて同じにしてもよい。
【0033】
図7は、描画装置の1つのショット領域において順次描画が行われる複数組の描画領域を例示する図である。図7において、サブアレイ毎の描画領域に<1>〜<4>の符号を付与し、並行して描画が行われる描画領域には同一の符号を付している。各サブアレイ描画領域は、後述の描画方法に従って描画が行われる。基板上に既に形成されたショット領域205と各サブアレイとの間の初期状態(描画を開始するときの状態)での位置関係が図6で示したものである場合、まず、<1>で示された描画領域の組<1>の描画が行われる。その際、ショット領域205の境界203(204)をまたぐサブアレイ描画領域については、境界203(204)より左端(上端)側の領域のみ、対応するショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。境界203(204)より右端(下端)側の領域は、描画を行わない。描画装置の最大ショット領域201とその内部に配置された全ショット領域205の外縁との間の領域も描画を行わない。境界203、204をまたがないサブアレイ描画領域については、サブアレイ描画領域が包含されるショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。なお、前述したように、サブアレイ描画領域200の境界と一致するように境界203または204を配置した場合は、該当する軸方向では、複数のショット領域をまたぐサブアレイ描画領域は存在しない。
【0034】
つづいて、ステージ部123を距離CYだけY軸方向にステップ移動させ、<2>で示される描画領域の組に対して、描画領域の組<1>と同様に描画を行う。すなわち、ショット領域205の境界203(204)をまたぐサブアレイ描画領域については、境界203(204)より左端(上端)側の領域のみ、対応するショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。境界203(204)より右端(下端)側の領域は、描画を行わない。描画装置の最大ショット領域201とその内部に配置された全ショット領域205の外縁との間の領域も描画を行わない。境界203、204をまたがないサブアレイ描画領域については、サブアレイ描画領域が包含されるショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。描画領域の組<1>・<2>に対してそれぞれステージ部123を距離CXだけX軸方向にステップ移動させて得られる描画領域の組<3>・<4>についても、描画領域の組<1>・<2>と同様に描画を行う。そうすることで、描画装置の最大ショット領域201内の各ショット領域205(9つのショット領域205)に対して描画が完了する。なお、スループットの観点から、描画領域の組<1>〜<4>をその数字の昇順で描画するのがよいが、描画領域の組<1>〜<4>の描画は、必ずしもこの順序で行う必要はない。
【0035】
本実施形態によれば、ショット領域の境界の一方の側の領域と他方の側の領域とを1つのサブアレイで並行して描画することなく、個々のショット領域に対する重ね合わせに必要な情報に基づいて、個々のショット領域を効率的に描画することができる。
【0036】
[実施形態3]
図8は、本実施形態において、基板上に既に形成されたショット領域に対するサブアレイ(サブアレイによる描画領域)の配置例を示す図である。実施形態1の構成とは異なる点に関して説明する。サブアレイ描画領域の形状は、実施形態1(図2)では矩形であるのに対し、本実施形態では、外縁に凹凸のある非矩形である。サブアレイ描画領域が非矩形である場合についての課題と解決手段について以下に説明する。
【0037】
本実施形態においては、電子線のアレイは、アパーチャアレイ116により、基板122上において、サブアレイによる描画領域800(サブアレイ描画領域)が所定のスペースをもって離散的に配列されたものとなる。サブアレイ描画領域800は、Y軸方向にDYの幅にわたる凹凸を有する外縁をもった非矩形の形状をしている。そして、X軸方向にCX、Y軸方向にCYの代表幅を有する。サブアレイ描画領域800は、X軸方向・Y軸方向にそれぞれ幅SX・幅SYのスペースを空けて格子状に離散的に配置される。各軸方向において、スペースの幅(ノミナルサイズ;第3の幅)は、後述する少なくとも1つのスペースを除いてサブアレイ描画領域800の幅(ノミナルサイズ;第2の幅)のn倍(nは正の整数:本実施例では1倍)の幅に設定されている。複数のサブアレイにより、X軸方向に幅GX、Y軸方向に幅GYを有する最大ショット領域201に対して描画を行うことができる。サブアレイ描画領域800の境界に凹凸がないX軸方向においては、基板上に既に形成されたショット領域205の境界203がサブアレイ描画領域800の境界と一致するようにショット領域205(基板122)を配置する。サブアレイ描画領域800の境界に凹凸を有するY軸方向においては、サブアレイ描画領域800の上端から幅DY2(DY2≧DY)だけサブアレイ描画領域800の下端寄りにショット領域205の境界204が位置するように、ショット領域205を配置する。さらに、ショット領域205の境界204に隣接するスペース(特定スペース)のY軸方向の幅SY2は、他のスペースのY軸方向の幅SYより狭い幅(SY2=SY−DY2)に設定する。
【0038】
ここで、サブアレイ内のビーム配列が図10を参照して後述するような千鳥格子配列である場合、幅DY2は、1千鳥ブロック(後述)のY軸方向代表幅Pcとしてもよい。しかし、凹凸部のY軸方向の幅であるPc−Pcy(=DY;第1の幅)とするのが良い(最も無駄が少ない)。なお、幅DY2は、第1の幅以上かつ第2の幅未満としうる。図8は、単純な構成として、SX=CX、SY=CY、最大ショット領域201内に2×2=4個のショット領域205が内包される場合のサブアレイ描画領域800とショット領域の境界203、204との配置関係を示している。実施形態1のような矩形形状のサブアレイ描画領域200の場合は、ある軸方向において2つ以下のショット領域205しか最大ショット領域201が内包しないならば、次のようにすればよい。すなわち、その軸方向において、ショット領域205の境界がサブアレイ描画領域の境界と一致するようにショット領域205を配置すればよい。しかし、本実施形態のように、サブアレイ描画領域が凹凸の境界を有する場合は、ショット領域205が矩形形状であるため、サブアレイ描画領域の境界とショット領域205の境界とを一致させることができない。そこで、サブアレイ描画領域が凹凸の境界を有する軸については、上述した本実施形態の配置にすればよい。なお、ある軸方向において最大ショット領域201内に3つ以上のショット領域205を内包する場合のサブアレイの配置は、本実施形態および実施形態1の双方の考え方(態様)を適用したものとすればよい。
【0039】
図9は、描画装置の1つのショット領域において順次描画が行われる複数組の描画領域を例示する図である。図9において、サブアレイ毎の描画領域に<1>〜<4>の符号を付与し、並行して描画が行われる描画領域には同一の符号を付している。各サブアレイ描画領域は、後述の描画方法に従って描画が行われる。基板上に既に形成されたショット領域205と各サブアレイとの間の初期状態(描画を開始するときの状態)での位置関係が図8で示したものである場合、まず、<1>で示された描画領域の組<1>の描画が行われる。その際、ショット領域205の境界204をまたぐサブアレイ描画領域については、境界204より下端側の領域のみ、対応するショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。境界204より上端側の領域は、描画を行わない。描画装置の最大ショット領域201とその内部に配置された全ショット領域205の外縁との間の領域も描画を行わない。境界204をまたがないサブアレイ描画領域については、サブアレイ描画領域が包含されるショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。なお、前述したように、X軸方向においては、サブアレイ描画領域800の境界と一致するように境界203を配置したから、複数のショット領域をまたぐサブアレイ描画領域は存在しない。
【0040】
つづいて、ステージ部123を距離CYだけY軸方向にステップ移動させ、<2>で示される描画領域の組に対して描画を行う。描画領域の組<1>と同様に、ショット領域205の境界204をまたぐサブアレイ描画領域については、境界204より下端側の領域のみ、対応するショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。境界204より上端側の領域は、描画を行わない。描画装置の最大ショット領域201とその内部に配置された全ショット領域205の外縁との間の領域も描画を行わない。境界204をまたがないサブアレイ描画領域については、サブアレイ描画領域が包含されるショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。描画領域の組<1>・<2>に対してそれぞれステージ部123を距離CXだけX軸方向にステップ移動させて得られる描画領域の組<3>・<4>についても、描画領域の組<1>・<2>と同様に描画を行う。そうすることで、描画装置の最大ショット領域201内の各ショット領域205(4つのショット領域205)に対して描画が完了する。なお、スループットの観点から、描画領域の組<1>〜<4>をその数字の昇順で描画するのがよいが、描画領域の組<1>〜<4>の描画は、必ずしもこの順序で行う必要はない。
【0041】
図10は、サブアレイ内のビーム配列の一例(千鳥格子配列)とそれによる描画態様を示す図である。実施形態1、2の構成とは異なる点に関して説明する。荷電粒子線500は、X軸方向にピッチPcx、Y軸方向にピッチPcyをもって配列され、また、ピッチPcyだけ隔たった隣接する2つの行の間では、電子線がX軸方向に距離Dxだけ互いにずれて配列されており、いわゆる千鳥格子状の配列となっている。換言すれば、X軸方向に延びる電子線の配列(行)をY軸方向にピッチPcy、X軸方向に距離Dxずつ順次ずらして配列することにより得られる配列となっている。距離Dxは、ピッチPcxの[1/k]倍の距離(kは2以上の整数)を選択するのが好ましい。その場合、1行における電子線の位置は、(Pcx/Dx)行を1周期として繰り返されることになる。この1周期に対応するY軸方向の幅Pcを有する電子線の束を1千鳥ブロックと呼ぶことにすると、本実施形態では、Y軸方向に並ぶ複数段の千鳥ブロックをもって1つのサブアレイを構成している。図10は、1千鳥ブロックが4行の電子線で構成され、サブアレイが3段の千鳥ブロックで構成されている例を示しているが、千鳥ブロックを構成する電子線の行数やサブアレイを構成する千鳥ブロックの段数は、その限りではない。なお、サブアレイは、Y軸方向における各端から所定の幅(第1の幅;Pc)の荷電粒子線の配列が互いに相補的である。
【0042】
そのように配列された複数の電子線(サブアレイ)による描画は、X軸方向においては、主として偏向器アレイ120による電子線の偏向(幅Dxにわたるラスタスキャン;主走査)によりなされる。また、Y軸方向においては、主としてステージの移動(幅Pcにわたるスキャン;副走査)によりなされる。幅Dxは、偏向器アレイ120の偏向幅以下の値にするのが好ましい。そうすることで、幅Dxの領域を複数回に分割して順次描画する等の処理が不要となり、Y軸方向におけるステージの移動(副走査)の回数の少なさ(スループット)の点で有利となる。また、ピッチPcxは、幅Dxの自然数倍に設定すればよい。それに限らず、偏向器アレイ120による電子線の偏向幅をDxより大きくすることにより、境界領域をオーバーラップさせて描画してもよい。その場合、オーバーラップ領域での各描画においてドーズ量に勾配をもたせることにより、繋ぎ誤差を低減することができる。
【0043】
本実施形態のような千鳥格子配列のサブアレイの場合、各サブアレイによる描画領域は、Y軸方向における境界が、1千鳥ブロックに対応した鋸歯状の境界となる。なお、X軸方向を主走査方向、Y軸方向を副走査方向としたが、その逆であってもよい。
【0044】
本実施形態によれば、サブアレイの荷電粒子線を有効に利用するのに有利な描画装置を提供することができる。実施形態1において図5のビーム配列(長方格子配列)を用いた描画装置との主な違いは、サブアレイ描画領域内の描画方式にある。実施形態1の長方格子配列の場合、主走査方向において幅Pcxの領域を幅Dxの複数の領域に分割して順次描画するため、多数回(Pcx/Dx回)のステージの移動(副走査)が必要である。一方、本実施形態の千鳥格子配列の場合、主走査方向において幅Pcxの領域を少数回(1回)のステージの移動(副走査)のみで描画できるため、スループットの点で有利となる。ところが、サブアレイによる描画領域は非矩形形状となるため、図8を参照して説明したような態様で描画を行うものである。
【0045】
本実施形態によれば、ショット領域の境界の一方の側の領域と他方の側の領域とを1つのサブアレイで並行して描画することなく、個々のショット領域に対する重ね合わせに必要な情報に基づいて、個々のショット領域を効率的に描画することができる。
【0046】
[実施形態4]
図11は、本実施形態において、基板上に既に形成されたショット領域に対するサブアレイ(サブアレイによる描画領域)の配置例を示す図である。実施形態3の構成とは異なる点に関して説明する。
【0047】
実施形態3では、Y軸方向において、サブアレイ描画領域間のスペースの幅SYを一部幅SY2に狭めた構成としているのに対し、本実施形態では、スペースの幅SYは変えずに、サブアレイ描画領域のY軸方向の幅CYを一部幅CY2に拡げた構成にしている。各軸方向において、スペースの幅(ノミナルサイズ;第3の幅)は、後述する少なくとも1つのサブアレイを除くサブアレイによる描画領域200の幅(ノミナルサイズ;第2の幅)の自然数倍(本実施形態では1倍)の幅に設定されている。複数のサブアレイにより、X軸方向に幅GX、Y軸方向に幅GYを有する最大ショット領域201に対して描画を行うことができる。サブアレイ描画領域800の境界に凹凸がないX軸方向においては、基板上に既に形成されたショット領域205の境界203がサブアレイ描画領域800の境界と一致するようにショット領域205(基板122)を配置する。サブアレイ描画領域800の境界に凹凸を有するY軸方向においては、次のようにする。すなわち、基板上に既に形成されているショット領域205の境界204がサブアレイ描画領域800の下端から幅DY2(DY2≧DY)だけサブアレイ描画領域800の上端よりに位置するように、ショット領域205(基板122)を配置する。なお、DY2は、サブアレイ描画領域800の下端からのY軸方向の幅を示している。ここで、DY2の範囲を含むサブアレイ描画領域(特定サブアレイの描画領域)の幅CY2は、他のサブアレイ描画領域の幅CYより広い。CY2は、CY2=CY+DY2となるように設定されている。ここで、サブアレイ内のビーム配列が図10に例示したような千鳥格子配列の場合、サブアレイ描画領域のY軸方向代表幅は、1千鳥ブロック単位で増減することができるため、幅DY2は、1千鳥ブロックのY方向代表幅Pcにするのが好ましい。図11は、単純な構成として、SX=CX、SY=CY、描画装置の最大ショット領域201内に、基板上に既に形成された2×2=4個のショット領域205が内包される場合を示している。なお、ある軸方向において最大ショット領域201内に3つ以上のショット領域205を内包する場合のサブアレイの配置は、本実施形態および実施形態2の双方の考え方(態様)を適用したものとすればよい。
【0048】
図12は、描画装置の1つのショット領域において順次描画が行われる複数組の描画領域を例示する図である。図12において、サブアレイ毎の描画領域に<1>〜<4>の符号を付与し、並行して描画が行われる描画領域には同一の符号を付している。各サブアレイ描画領域は、後述の描画方法に従って描画が行われる。基板上に既に形成されたショット領域205と各サブアレイとの間の初期状態(描画を開始するときの状態)での位置関係が図11で示したものである場合、まず、<1>で示された描画領域の組<1>の描画が行われる。その際、ショット領域205の境界204をまたぐサブアレイ描画領域については、境界204より上端側の領域のみ、対応するショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。境界204より下端側の領域は、描画を行わない。描画装置の最大ショット領域201とその内部に配置された全ショット領域205の外縁との間の領域も描画を行わない。境界204をまたがないサブアレイ描画領域については、サブアレイ描画領域が包含されるショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。なお、前述したように、X軸方向においては、サブアレイ描画領域800の境界と一致するようにショット領域205の境界203を配置したから、複数のショット領域をまたぐサブアレイ描画領域は存在しない。
【0049】
つづいて、ステージ部123を距離CYだけY軸方向にステップ移動させ、<2>で示される描画領域の組に対して描画を行う。描画領域の組<1>と同様に、ショット領域205の境界204をまたぐサブアレイ描画領域については、境界204より上端側の領域のみ、対応するショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。境界204より下端側の領域は、描画を行わない。描画装置の最大ショット領域201とその内部に配置された全ショット領域205の外縁との間の領域も描画を行わない。境界204をまたがないサブアレイ描画領域については、サブアレイ描画領域が包含されるショット領域205に対するアライメント計測結果等の重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行う。描画領域の組<1>・<2>に対してそれぞれステージ部123を距離CXだけX軸方向にステップ移動させて得られる描画領域の組<3>・<4>についても、描画領域の組<1>・<2>と同様に描画を行う。そうすることで、描画装置の最大ショット領域201内の各ショット領域205(4つのショット領域205)に対して描画が完了する。なお、スループットの観点から、描画領域の組<1>〜<4>をその数字の昇順で描画するのがよいが、描画領域の組<1>〜<4>の描画は、必ずしもこの順序で行う必要はない。
【0050】
本実施形態によれば、ショット領域の境界の一方の側の領域と他方の側の領域とを1つのサブアレイで並行して描画することなく、個々のショット領域に対する重ね合わせに必要な情報に基づいて、個々のショット領域を効率的に描画することができる。
【0051】
[実施形態5]
本発明の実施形態に係る物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。該製造方法は、感光剤が塗布された基板の該感光剤に上記の描画装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板に描画を行う工程)と、当該工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含みうる。さらに、該製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。例えば、以上の説明では、基板上に既に形成された複数のショット領域に対して並行して描画を行う場合を説明した。しかしながら、本発明は、それには限定されず、基板上に複数のショット領域が未だ形成されていない状態で描画を行う場合にも適用可能である。その場合は、例えば、基板上に既に形成された複数のショット領域の替わりに、仮想的なノミナルの複数のショット領域を基板上に設定(想定)し、当該仮想的な複数のショット領域に対して描画を行うようにすればよい。その場合、ショット領域の境界をまたぐサブアレイ描画領域については、境界の一方の側の領域のみ、対応するショット領域に対する重ね合わせに必要な情報に基づいて描画を行えばよい。なお、このような描画は、例えば、後に基板上に複数のショット領域を形成する露光装置(描画装置)に関して、当該露光装置(描画装置)が形成した複数のショット領域の位置や形状に関する情報を予め取得しておくことにより行いうる。
【符号の説明】
【0053】
123 ステージ部(ステージおよび駆動手段)
COS 投射系(荷電粒子光学系)
100 コントローラー(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に配列された基板上の複数のショット領域に対して並行して、かつ、前記所定方向における前記基板のステップ移動を介在させて、荷電粒子線のアレイで描画を行う描画装置であって、
前記基板を保持するステージと、
前記ステージに保持された基板に前記アレイを入射させる荷電粒子光学系と、
前記基板上の描画領域を変更するように前記ステージと前記荷電粒子光学系との間の前記所定方向における相対移動を行わせる駆動手段と、
制御手段と、を有し、
前記荷電粒子光学系は、前記アレイとして、前記所定方向に離散的に配列された複数のサブアレイを前記基板に入射させ、かつ、前記複数のサブアレイの少なくとも1つをそれぞれ含む複数のサブアレイセットをそれぞれ偏向する複数の偏向器を有し、
前記制御手段は、前記複数のサブアレイのうち前記複数のショット領域の境界をまたぐサブアレイにより前記境界の一方の側の領域と前記境界の他方の側の領域とが、並行して描画されず、かつ、前記ステップ移動を介して順次描画されるように、前記荷電粒子光学系と前記駆動手段とを制御する、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記複数のサブアレイのそれぞれは、前記所定方向における各端から所定の幅(第1の幅)の荷電粒子線の配列が互いに相補的である、ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記所定方向において、前記複数のサブアレイのそれぞれによる描画領域は、所定の幅(第2の幅)を有し、複数の前記描画領域の間のスペースは、少なくとも1つのスペースを除いて前記第2の幅のn倍(nは正の整数)の幅(第3の幅)を有し、前記少なくとも1つのスペース(特定スペース)は、前記第1の幅以上かつ前記第2の幅未満の幅だけ前記第3の幅より狭い幅を有する、ように前記荷電粒子光学系は構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記所定方向において、少なくとも1つのサブアレイを除く前記複数のサブアレイのそれぞれによる描画領域は、所定の幅(第2の幅)を有し、複数の前記描画領域の間のスペースは、前記第2の幅のn倍(nは正の整数)の幅を有し、前記少なくとも1つのサブアレイによる描画領域(特定描画領域)は、前記第1の幅以上かつ前記第2の幅未満の幅だけ前記第2の幅より広い幅を有する、ように前記荷電粒子光学系は構成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の描画装置。
【請求項5】
前記複数のサブアレイのそれぞれは、荷電粒子線が長方格子状に配列されてなる、ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項6】
前記所定方向において、前記複数のサブアレイのそれぞれによる描画領域は、所定の幅(第2の幅)を有し、複数の前記描画領域の間のスペースは、少なくとも1つのスペースを除いて前記第2の幅のn倍(nは正の整数)の幅(第3の幅)を有し、前記少なくとも1つのスペース(特定スペース)は、前記第2の幅未満の所定の幅だけ前記第3の幅より狭い幅を有する、ように前記荷電粒子光学系は構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の描画装置。
【請求項7】
前記所定方向において、少なくとも1つのサブアレイを除く前記複数のサブアレイのそれぞれによる描画領域は、所定の幅(第2の幅)を有し、前記スペースは、前記第2の幅のn倍(nは正の整数)の幅を有し、前記少なくとも1つのサブアレイによる描画領域(特定描画領域)は、前記第2の幅未満の所定の幅だけ前記第2の幅より広い幅を有する、ように前記荷電粒子光学系は構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の描画装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記所定方向において、前記特定スペースに隣接するいずれかの描画領域を、前記境界をまたぐように配置した状態で、前記複数のショット領域に対する描画が開始するように、前記荷電粒子光学系と前記駆動手段とを制御する、ことを特徴とする請求項3または請求項6に記載の描画装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記所定方向において、前記特定描画領域を、前記境界をまたぐように配置した状態で、前記複数のショット領域に対する描画が開始するように、前記荷電粒子光学系と前記駆動手段とを制御する、ことを特徴とする請求項4または請求項7に記載の描画装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の描画装置を用いて基板に描画を行う工程と、
前記工程で描画を行われた基板を現像する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−45838(P2013−45838A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181578(P2011−181578)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】