説明

描画装置、色要素付き基板の製造方法、電気光学装置および電子機器

【課題】筋ムラの無い色要素付き基板を製造することができる描画装置、色要素付き基板の製造方法、電気光学装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の描画装置は、バンク付き基板10Aと、液滴吐出手段103とを、色要素領域18R、18G、18Bの短辺方向に相対的に移動させ、色要素膜形成用の液状材料をノズル25から液滴90として吐出して色要素領域18R、18G、18Bに付与する液状材料付与工程を行う。液状材料付与工程では、短辺方向に並ぶ色要素領域列19のうちの同色の色要素領域18に対して順次液状材料を付与するに際し、その色要素領域列19上を相対的に通過するN個(ただし、Nは、2以上の所定の整数)のノズル25のうち、対象とする色要素領域18ごとに無作為に選択されたM個(ただし、Mは、1≦M≦N−1なる関係を満足する所定の整数)のノズル25から液滴90を吐出して当該色要素領域18に付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置、色要素付き基板の製造方法、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置のカラーフィルタ基板のような色要素付き基板を製造するに際し、インクジェット描画装置を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、基板上に形成されたバンクによって囲まれてなる色要素領域(サブピクセル)の各々に対し、インクジェット描画装置によって色要素膜形成用の液状材料を付与する。すなわち、インクジェット描画装置によって、液状材料を液滴として吐出し、この液滴を各色要素領域に着弾させる。その後、各色要素領域に付与された液状材料を固化または硬化させて色要素膜を形成する。
【0003】
特許文献1に記載の方法では、色要素の長手方向と、液滴吐出ヘッドのノズル列とが平行となった状態で両者を相対的に走査し、各色要素にインク滴を吐出する(特許文献1の図4(A)参照)。このような方法で製造した色要素付き基板には、色ムラが走査方向に沿って連続してなるいわゆる筋ムラが生じ易いという問題がある。この筋ムラが生じると、画像表示装置としたとき、画面に筋が入ったように見えてしまい、画質を損ねる。
【0004】
【特許文献1】特開平9−101412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、筋ムラの無い色要素付き基板を製造することができる描画装置、色要素付き基板の製造方法、電気光学装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の描画装置は、行列状に並ぶ多数の略長方形の色要素領域がバンクにより区画されて形成されたバンク付き基板を保持するステージと、
前記色要素領域の長辺方向に関して異なる位置に配された複数のノズルを有する液滴吐出手段と、
前記ステージと前記液滴吐出手段とを相対的に移動させる移動手段と、
前記液滴吐出手段および前記移動手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記ステージに保持された前記バンク付き基板と、前記液滴吐出手段とを、前記色要素領域の短辺方向に相対的に移動させ、色要素膜形成用の液状材料を前記ノズルから液滴として吐出して前記色要素領域に付与する液状材料付与工程を行う描画装置であって、
前記液状材料付与工程では、前記短辺方向に並ぶ色要素領域列のうちの同色の色要素領域に対して順次液状材料を付与するに際し、その色要素領域列上を相対的に通過するN個(ただし、Nは、2以上の所定の整数)のノズルのうち、対象とする色要素領域ごとに無作為に選択されたM個(ただし、Mは、1≦M≦N−1なる関係を満足する所定の整数)のノズルから液滴を吐出して当該色要素領域に付与するように作動することを特徴とする。
これにより、筋ムラの無い色要素付き基板を製造することができる描画装置を提供することができる。
【0007】
本発明の描画装置では、前記液滴吐出手段は、複数のノズルが等間隔で前記長辺方向に沿って延在してなるノズル列が複数列並行している部分を有し、前記ノズル列のノズルピッチをPとし、前記並行するノズル列の数をQ列としたとき、前記Q列のノズル列は、それらの列方向にP/Qずつ位置をずらして配置されていることが好ましい。
これにより、より高精細な描画を行うことができ、より高い画質が得られる色要素付き基板を製造することができる。
【0008】
本発明の色要素付き基板の製造方法は、行列状に並ぶ多数の略長方形の色要素領域がバンクにより区画されて形成されたバンク付き基板と、前記色要素領域の長辺方向に関して異なる位置に配された多数のノズルを有する液滴吐出手段とを、前記色要素領域の短辺方向に相対的に移動させ、色要素膜形成用の液状材料を前記ノズルから液滴として吐出して前記色要素領域に付与する液状材料付与工程と、
前記色要素領域に付与された液状材料を固化または硬化させて色要素膜を形成する成膜工程とを有する色要素付き基板の製造方法であって、
前記液状材料付与工程では、前記短辺方向に並ぶ色要素領域列のうちの同色の色要素領域に対して順次液状材料を付与するに際し、その色要素領域列上を相対的に通過するN個(ただし、Nは、2以上の所定の整数)のノズルのうち、対象とする色要素領域ごとに無作為に選択されたM個(ただし、Mは、1≦M≦N−1なる関係を満足する所定の整数)のノズルから液滴を吐出して当該色要素領域に付与することを特徴とする。
これにより、筋ムラの無い色要素付き基板を製造することができる。
【0009】
本発明の電気光学装置は、本発明の色要素付き基板の製造方法により製造された色要素付き基板を備えることを特徴とする。
これにより、筋ムラが発生しない、高画質の電気光学装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の電気光学装置を備えることを特徴とする。
これにより、筋ムラが発生しない、高画質の電気光学装置を搭載した電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の描画装置、色要素付き基板の製造方法、電気光学装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、色要素付き基板の一例として、液晶表示装置の構成要素であるカラーフィルタ基板10に本発明を適用した場合を代表して説明する。
まず、本発明の色要素付き基板の製造方法を実施する本発明の描画装置を図1ないし図6に基づき説明する。
図1に示すように、描画装置(インクジェット描画装置)1は、複数の液滴吐出ヘッド2をキャリッジ105に搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103を水平な一方向(以下、「X軸方向」と言う)に移動させるキャリッジ移動機構(移動手段)104と、後述するバンク付き基板10Aを保持するステージ106と、ステージ106をX軸方向に垂直であって水平な方向(以下、「Y軸方向」と言う)に移動させるステージ移動機構(移動手段)108と、制御手段112とを備えている。
【0011】
また、描画装置1の近傍には、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の液状材料111をそれぞれ貯留する3個のタンク101が設置されている。各タンク101と、液滴吐出手段103とは、液状材料111を送液する流路となるチューブ110を介して接続されている。各タンク101に貯留された液状材料111は、例えば圧縮空気の力によって、液滴吐出手段103の各液滴吐出ヘッド2に送液(供給)される。
【0012】
本発明において「液状材料」とは、色要素付き基板の色要素膜を形成するための材料を含み、液滴吐出ヘッド2のノズル25から吐出可能な粘度を有するものである。この場合、材料が水性であると油性であるとを問わない。また、ノズル25から吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が分散していても全体として流動体であればよい。すなわち、液状材料は、色要素膜の構成材料が溶媒中に溶解または分散されてなるものであって、溶液であっても分散液(サスペンションやエマルション)であってもよい。
【0013】
本実施形態における液状材料111は、カラーフィルタ基板10の色要素領域18R、18G、18Bに色要素膜であるフィルタ膜を形成するための顔料が有機溶剤中に溶解または分散してなる有機溶剤インクである。
なお、以下の説明では、赤、緑、青の液状材料111を区別して言うときには、111R、111G、111Bの符号を付し、色を区別しないで総称して言うときには、単に「液状材料111」と言う。
【0014】
キャリッジ移動機構104の作動は、制御手段112により制御される。なお、制御手段112の詳細な構成および機能は、後述する。本実施形態のキャリッジ移動機構104は、液滴吐出手段103をZ軸方向(鉛直方向)に沿って移動させ、高さを調整する機能も有している。さらに、キャリッジ移動機構104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有しており、これにより、液滴吐出手段103のZ軸回りの角度を微調整することができる。
【0015】
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、カラーフィルタ基板10を製造するためのバンク付き基板10Aをその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
ステージ移動機構108は、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させ、その作動は、制御手段112により制御される。さらに、本実施形態のステージ移動機構108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有しており、これにより、ステージ106に載置されたバンク付き基板10AのZ軸回りの傾斜を微調整して真っ直ぐになるように補正することができる。
【0016】
上述のように、液滴吐出手段103は、キャリッジ移動機構104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、ステージ移動機構108によってY軸方向に移動させられる。つまり、キャリッジ移動機構104およびステージ移動機構108の作動によって、ステージ106上のバンク付き基板10Aと、液滴吐出手段103との相対位置を変わるので、バンク付き基板10Aに対し液滴吐出手段103を相対的に走査することができる。
【0017】
描画装置1は、ステージ移動機構108の作動により、ステージ106上に保持されたバンク付き基板10AをY軸方向に移動させ、液滴吐出手段103の下を通過させつつ、液滴吐出手段103の各液滴吐出ヘッド2のノズル25から液状材料111の液滴を吐出して、バンク付き基板10A上の各色要素領域18R、18G、18Bに着弾させるように作動する。この動作を「主走査」と言う。また、以下では、Y軸方向のことを「走査方向」とも言う。
【0018】
なお、液滴吐出手段103全体としてバンク付き基板10Aに対し液状材料111を吐出可能なX軸方向の長さ(以下、「全吐出幅」と言う)よりも、バンク付き基板10AのX軸方向の幅が小さいものである場合には、液滴吐出手段103とバンク付き基板10Aとの主走査を1回行うことにより、バンク付き基板10Aの全体に対して液状材料111の付与、すなわち描画を行うことができる。
【0019】
これに対し、液滴吐出手段103の全吐出幅よりも、バンク付き基板10AのX軸方向の幅が大きいものである場合には、キャリッジ移動機構104を作動して液滴吐出手段103をX軸方向へ移動させることによって、液滴吐出手段103とバンク付き基板10AとのX軸方向の相対位置関係を変えた後、主走査を再度行う。液滴吐出手段103とバンク付き基板10AとのX軸方向の相対位置関係を変えることを「副走査」と呼ぶ。主走査および副走査を繰り返し行うことにより、液滴吐出手段103の全吐出幅よりも、バンク付き基板10AのX軸方向の幅が大きいものである場合であっても、バンク付き基板10Aの全面に対して液状材料111の付与、すなわち描画を行うことができる。
【0020】
図2は、図1に示す描画装置1における液滴吐出手段103と、バンク付き基板10Aとを示す平面図である。
図2に示すように、液滴吐出手段103は、複数の液滴吐出ヘッド2がキャリッジ105に搭載された構成となっている。図2中では、キャリッジ105を仮想線(二点鎖線)で表している。また、液滴吐出ヘッド2を示す実線は、液滴吐出ヘッド2のノズル面(ノズルプレート128)の位置を示している。
【0021】
液滴吐出手段103には、赤色の液状材料111Rを吐出する第1ヘッド21R、第2ヘッド22R、第3ヘッド23R、第4ヘッド24Rの4個の液滴吐出ヘッド2と、緑色の液状材料111Gを吐出する第1ヘッド21G、第2ヘッド22G、第3ヘッド23G、第4ヘッド24Gの4個の液滴吐出ヘッド2と、青色の液状材料111Bを吐出する第1ヘッド21B、第2ヘッド22B、第3ヘッド23B、第4ヘッド24Bの4個の液滴吐出ヘッド2との、計12個の液滴吐出ヘッド2が設置されている。
以下の説明では、これらの液滴吐出ヘッド2を総称する場合には、「液滴吐出ヘッド2」と言い、個々を区別して説明する必要がある場合には、「第1ヘッド21R、第2ヘッド22R、・・・」のように言う。
【0022】
なお、図2に示すような液滴吐出ヘッド2の配列の仕方は、一例であり、これに限定されないことは言うまでもない。
また、本実施形態の描画装置1は、赤、緑、青の各色の液滴吐出ヘッド2を備え、赤、緑、青の描画を同時に行うものであるが、本発明の描画装置は、いずれか一色のみの描画を行うものであってもよい。
【0023】
図2に示すバンク付き基板10Aは、ストライプ配列のカラーフィルタ基板10を製造するためのものである。このバンク付き基板10Aには、赤の色要素領域(サブピクセル)18Rと、緑の色要素領域(サブピクセル)18Gと、青の色要素領域(サブピクセル)18Bとがそれぞれ多数設けられている。各色要素領域18R、18G、18Bは、ほぼ長方形をなしている。
【0024】
このバンク付き基板10Aは、色要素領域18R、18G、18Bの長辺方向がX軸方向に平行になり、短辺方向がY軸方向に平行になるような姿勢でステージ106上に保持される。バンク付き基板10A上には、Y軸方向に沿っては3色の色要素領域18R、18G、18Bがこの順に繰り返し配列され、X軸方向に沿っては色要素領域18R、18G、18Bが各色ごとに連続して配列されている。Y軸方向に並ぶ一組の色要素領域18R、18G、18Bは、製造されたカラーフィルタ基板10の一画素分に相当する。
なお、バンク付き基板10Aについては、後にさらに詳述する。
【0025】
図3は、図1に示す描画装置1の液滴吐出手段103の一部を示す底面図である。
図3に示すように、液滴吐出ヘッド2のノズル面(ノズルプレート128)には、多数のノズル(ノズル孔)25が形成されている。これらのノズル25は、走査方向に垂直な方向に沿ってノズルピッチPで等間隔に直線的に並び、ノズル列26を形成している。一つの液滴吐出ヘッド2には、2列のノズル列26が半ピッチ(P/2)ずれて並行して設けられている。一つの液滴吐出ヘッド2に形成されるノズル25の数は、特に限定されないが、通常、数十〜数百個程度とされる。
【0026】
赤色の液状材料111Rを吐出する第1ヘッド21Rおよび第3ヘッド23Rは、並行して設置されている。これにより、同一の色要素領域18Rに対し、第1ヘッド21Rおよび第3ヘッド23Rのノズル25から相次いで液滴を付与することができる。
また、第1ヘッド21Rのノズル列26と、第3ヘッド23Rのノズル列26とは、1/4ピッチ(P/4)ずれて並行して配置されている。このような構成により、第1ヘッド21Rおよび第3ヘッド23Rを合わせると、走査方向に垂直な方向に関してP/4間隔でノズル25が並ぶこととなるので、高精細な描画を行うことができる。
【0027】
図2に示すように、液滴吐出手段103には、第2ヘッド22Rと第4ヘッド24Rとが並行して位置する部分や、第1ヘッド21Rと第4ヘッド24Rとが並行して位置する部分があり、これらの部分も上記と同様に機能する。
さらに、緑色の液状材料111Gを吐出する第1ヘッド21G〜第4ヘッド24Gや、青色の液状材料111Bを吐出する第1ヘッド21B〜第4ヘッド24Bも、赤色のものと同様な位置関係で配置されており、同様に機能する。
【0028】
なお、本発明における液滴吐出手段103では、ノズル列26が複数本並行する場合、その本数は、4本に限らず、何本でもよい。並行するノズル列26の本数をQ本としたき、それらのQ列のノズル列26は、列方向にP/Qずつ位置をずらして配置すればよい。また、液滴吐出手段103は、各色ごとのノズル列26が並行する部分を有さず、各色ごとにノズル列26が1本だけのものでもよい。
【0029】
図4は、図1に示す描画装置1における液滴吐出ヘッド2を示す図であり、(a)が斜視図、(b)が断面側面図である。以下、図4を参照して、液滴吐出ヘッド2の内部構成について説明する。
図4(a)および(b)に示すように、液滴吐出ヘッド2は、インクジェットヘッドである。より具体的には、液滴吐出ヘッド2は、振動板126と、ノズルプレート128とを備えている。振動板126と、ノズルプレート128との間には、タンク101から孔131を介して供給される液状材料111が常に充填される液たまり129が位置している。
【0030】
また、振動板126と、ノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122とによって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル25に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル25の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から液状材料111が供給される。
【0031】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、キャビティ120内に充填された液状材料111の圧力を変化させる駆動素子としての振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bと、を含む。この1対の電極124A、124Bとの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル25から液状材料111が吐出される。なお、ノズル25からZ軸方向に液状材料111が吐出されるように、ノズル25の形状が調整されている。
【0032】
制御手段112は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル25から吐出される液状材料111の体積が、制御手段112からの信号に応じてノズル25毎に制御されてもよい。
なお、液滴吐出ヘッド2は、図示のような圧電アクチュエータを駆動素子とするものに限らず、静電アクチュエータを用いるものや、電気熱変換素子を用いて液状材料111の熱膨張を利用して液滴を吐出する構成のものであってもよい。
【0033】
次に、制御手段112の構成を説明する。図5に示すように、制御手段112は、入力バッファメモリ200と、記憶手段202と、処理部204と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208と、キャリッジ位置検出手段302と、ステージ位置検出手段303とを備えている。
バッファメモリ200と処理部204とは相互に通信可能に接続されている。処理部204と記憶手段202とは、相互に通信可能に接続されている。処理部204と走査駆動部206とは相互に通信可能に接続されている。処理部204とヘッド駆動部208とは相互に通信可能に接続されている。また、走査駆動部206は、キャリッジ移動機構104およびステージ移動機構108と相互に通信可能に接続されている。同様にヘッド駆動部208は、複数の液滴吐出ヘッド2のそれぞれと相互に通信可能に接続されている。
【0034】
入力バッファメモリ200は、外部情報処理装置から、液状材料111の液滴を吐出する位置に関するデータ、すなわち描画パターンデータを受け取る。入力バッファメモリ200は、この描画パターンデータを処理部204に供給し、処理部204は、描画パターンデータを記憶手段202に格納する。記憶手段202は、RAM、磁気記録媒体、光磁気記録媒体等で構成される。
【0035】
キャリッジ位置検出手段302は、キャリッジ105、すなわち液滴吐出手段103のX軸方向の位置(移動距離)を検出し、その検出信号を処理部204へ入力する。
ステージ位置検出手段303は、ステージ106、すなわちバンク付き基板10AのY軸方向の位置(移動距離)を検出し、その検出信号を処理部204へ入力する。
キャリッジ位置検出手段302、ステージ位置検出手段303は、例えばリニアエンコーダ、レーザー測長器等で構成される。
【0036】
処理部204は、キャリッジ位置検出手段302およびステージ位置検出手段303の検出信号に基づき、走査駆動部206を介して、キャリッジ移動機構104およびステージ移動機構108の作動を制御(クローズドループ制御)し、液滴吐出手段103の位置と、バンク付き基板10Aの位置とを制御する。
さらに、処理部204は、ステージ移動機構108の作動を制御することにより、ステージ106すなわちバンク付き基板10Aの移動速度を制御する。
【0037】
また、処理部204は、前記描画パターンデータに基づいて、吐出タイミング毎のノズル25のオン・オフを指定する選択信号SCをヘッド駆動部208へ与える。ヘッド駆動部208は、選択信号SCに基づいて、液状材料111の吐出に必要な吐出信号ESを液滴吐出ヘッド2に与える。この結果、液滴吐出ヘッド2における対応するノズル25から、液状材料111が液滴として吐出される。
制御手段112は、CPU、ROM、RAMを含んだコンピュータであってもよい。この場合には、制御手段112の上記機能は、コンピュータによって実行されるソフトウェアプログラムによって実現される。もちろん、制御手段112は、専用の回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
【0038】
次に制御手段112におけるヘッド駆動部208の構成と機能を説明する。
図6(a)に示すように、ヘッド駆動部208は、1つの駆動信号生成部203と、複数のアナログスイッチASとを有する。図6(b)に示すように、駆動信号生成部203は、駆動信号DSを生成する。駆動信号DSの電位は、基準電位Lに対して時間的に変化する。具体的には、駆動信号DSは、吐出周期EPで繰り返される複数の吐出波形Pを含む。ここで、吐出波形Pは、ノズル25から1つの液滴を吐出するために、対応する振動子124の一対の電極間に印加されるべき駆動電圧波形に対応する。
駆動信号DSは、アナログスイッチASのそれぞれの入力端子に供給される。アナログスイッチASのそれぞれは、ノズル25のそれぞれに対応して設けられている。つまり、アナログスイッチASの数とノズル25の数とは同じである。
【0039】
処理部204は、ノズル25のオン・オフを表す選択信号SCを、アナログスイッチASのそれぞれに与える。ここで、選択信号SCは、アナログスイッチAS毎に独立にハイレベルおよびローレベルのどちらかの状態を取り得る。一方、アナログスイッチASは、駆動信号DSと選択信号SCとに応じて、振動子124の電極124Aに吐出信号ESを供給する。具体的には、選択信号SCがハイレベルの場合には、アナログスイッチASは電極124Aに吐出信号ESとして駆動信号DSを伝播する。一方、選択信号SCがローレベルの場合には、アナログスイッチASが出力する吐出信号ESの電位は基準電位Lとなる。振動子124の電極124Aに駆動信号DSが与えられると、その振動子124に対応するノズル25から液状材料111が吐出される。なお、それぞれの振動子124の電極124Bには基準電位Lが与えられている。
【0040】
図6(b)に示す例の場合には、2つの吐出信号ESのそれぞれにおいて、吐出周期EPの2倍の周期2EPで吐出波形Pが現れるように、2つの選択信号SCのそれぞれにおいてハイレベルの期間とローレベルの期間とが設定されている。これによって、対応する2つのノズル25のそれぞれから、周期2EPで液状材料111が吐出される。また、これら2つのノズル25に対応する振動子124のそれぞれには、共通の駆動信号生成部203からの共通の駆動信号DSが与えられている。このため、2つのノズル25からほぼ同じタイミングで液状材料111が吐出される。
【0041】
図7および図8は、バンク付き基板10Aを用いてカラーフィルタ基板10を製造する方法を示す断面図であり、色要素領域18R、18G、18Bの短辺に平行な切断面、すなわち走査方向に平行な切断面での断面図である。
図7に示すように、バンク付き基板10Aは、光透過性を有するガラス基板12と、このガラス基板12上に形成されたバンク13とを有している。ガラス基板12上には、バンク13により、行列状に並ぶ赤、緑、青の各色の多数の色要素領域18R、18G、18Bが区画されて形成されている。
【0042】
色要素領域18Rは、赤の波長域の光線のみを透過する色要素膜であるフィルタ膜111FRが形成されるべき領域であり、色要素領域18Gは、緑の波長域の光線のみを透過する色要素膜であるフィルタ膜111FGが形成されるべき領域であり、色要素領域18Bは、青の波長域の光線のみを透過する色要素膜であるフィルタ膜111FBが形成されるべき領域である。なお、以下の説明では、赤、緑、青の色要素領域を区別して言うときには、18R、18G、18Bなる符号を付し、色を区別しないときには、「色要素領域18」と総称して言う場合がある。
【0043】
バンク13は、遮光性を有する基部14と、基部14上に形成された撥液部15とで構成されている。
基部14は、ブラックマトリクスとして機能する。撥液部15の表面は、基部14の表面よりも液状材料111に対する撥液性が大きくなっている。また、撥液部15の幅は、基部14より狭くなっている。
【0044】
以下、バンク付き基板10Aの製造方法の一例について説明する。
まず、スパッタ法または蒸着法によって、ガラス基板12上に金属薄膜を形成する。この金属材料としては、例えば、金属クロム、酸化クロム等が挙げられる。その後、フォトリソグラフィー工程によってこの金属薄膜を格子状に残存させることにより、基部14が得られる。
【0045】
続いて、ガラス基板12、基部14を覆うように、ネガ型の感光性樹脂組成物からなるレジスト層を塗布する。そして、そのレジスト層の上に、撥液部15に対応するストライプパターンに形成されたマスクフィルム密着させながら、このレジスト層を露光する。その後、レジスト層の未露光部分をエッチング処理で取り除くことで、撥液部15が得られる。以上の工程によって、バンク13が形成され、バンク付き基板10Aが得られる。
撥液部15の構成材料としては、特に限定されないが、優れた撥液性を得る観点からは、フッ素系樹脂を用いるのが好ましい。
また、バンク13の全体を、黒色の樹脂材料(樹脂ブラック)で構成してもよい。
また、バンク13表面の撥液性や、ガラス基板12表面の撥液性を調整することを目的として、撥液化処理や親液化処理を施してもよい。撥液化処理としては、例えば、4フッ化メタンを用いたプラズマ処理が挙げられ、親液化処理としては、例えば、大気圧下の酸素プラズマ処理が挙げられる。
【0046】
本実施形態の色要素付き基板の製造方法は、上述したようにしてガラス基板12上にバンク13を形成してなるバンク付き基板10A上の色要素領域18R、18G、18Bに対して、液状材料(カラーフィルタ材料)111R、111G、111Bを付与する液状材料付与工程と、色要素領域18R、18G、18Bに付与された液状材料111R、111G、111Bを固化または硬化させて色要素膜であるフィルタ膜111FB、111FB、111FBを形成する成膜工程とを有している。
【0047】
液状材料111R、111G、111Bは、前述したように、フィルタ膜111FR、111FG、111FBの構成材料である顔料が有機溶剤中に溶解または分散してなる有機溶剤インクである。液状材料111中の溶媒としては、例えば、BCTAC、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル等の多価アルコールのエーテル等が好ましく用いられる。また、液状材料111R、111G、111Bには、例えばアクリル樹脂等の樹脂が含まれていてもよい。
【0048】
以下、液状材料付与工程、成膜工程を順次説明する。
−液状材料付与工程−
色要素領域18R、18G、18Bが形成されたバンク付き基板10Aは、描画装置1のステージ106上に運ばれ、ステージ106に保持される。描画装置1は、ステージ移動機構108を作動させてバンク付き基板10AをY軸方向に移動させて液滴吐出手段103の下を通過させながら、液滴吐出ヘッド2から液状材料111R、111G、111Bの液滴をそれぞれ吐出して、色要素領域18R、18G、18Bに付与する。
【0049】
このとき、各液滴吐出ヘッド2の各ノズル25からの液滴の吐出タイミングは、色要素領域18Rに対しては、赤色の液状材料111Rの液滴を着弾させ、色要素領域18Gに対しては、緑色の液状材料111Gの液滴を着弾させ、色要素領域18Bに対しては、青色の液状材料111Bの液滴を着弾させるようなタイミングに制御される(図7(a)〜(c)参照)。
【0050】
各色要素領域18には、それぞれ、複数の液滴が付与される。一つの色要素領域18に付与される液状材料111の総量は、形成すべきフィルタ膜の膜厚に応じて、予め設定されており、その量は、色要素領域18の容積より多くなっている。よって、図8(d)に示すように、各色要素領域18R、18G、18Bに付与された液状材料111R、111G、111Bは、バンク13の上面を超えて盛り上がった状態になる。
【0051】
−成膜工程−
各色要素領域18R、18G、18Bに液状材料111R、111G、111Bが付与されたら、バンク付き基板10Aを図示しない乾燥装置へ搬送する。そして、この乾燥装置内で、各色要素領域18R、18G、18B内の液状材料111R、111G、111B中の溶媒を蒸発させて乾燥させ、固化または硬化させる。これにより、図8(e)に示すように、各色要素領域18R、18G、18B上にフィルタ膜111FR、111FG、111FBが得られる。なお、描画装置1での液状材料111R、111G、111Bの付与と、乾燥装置での乾燥とを繰り返し行い、積層することによって最終的なフィルタ膜111FR、111FG、111FBを形成してもよい。
その後、バンク付き基板10Aを図示しないオーブン内に搬送し、このオーブンにて、フィルタ膜111FR、111FG、111FBを再加熱(ポストベーク)する。
【0052】
次いで、バンク付き基板10Aを図示しない保護膜形成装置へ搬送し、この保護膜形成装置にて、図8(f)に示すように、フィルタ膜111FR、111FG、111FB、およびバンク13を覆う保護膜(オーバーコート)20を形成する。
フィルタ膜111FR、111FG、111FB、およびバンク13を覆う保護膜20が形成された後に、乾燥装置にて保護膜20を完全に乾燥させる。さらに、図示しない硬化装置にて保護膜20を加熱して完全に硬化することで、カラーフィルタ基板10が得られる。
【0053】
図9は、本発明における液状材料付与工程を説明するための模式的な図であり、液滴吐出ヘッド2のノズル面(ノズルプレート128)の一部と、バンク付き基板10Aの色要素領域18R、18G、18Bとを拡大して示す平面図である。図10は、図9中のA−A線断面図、B−B線断面図およびC−C線断面図である。なお、液滴吐出ヘッド2のノズル面は、バンク付き基板10Aに対向する方向、すなわち鉛直下方に向いているが、図9中では、見易くするために、液滴吐出ヘッド2のノズル面を実線で示している。
【0054】
以下、図9および図10を参照して、本発明における液状材料付与工程についてさらに説明する。各色の色要素領域18に対する液状材料付与工程は、互いに同様であるので、以下では、代表して赤の色要素領域18Rの場合についてのみ説明する。
また、以下の説明では、短辺方向に並ぶ色要素領域18の列を「色要素領域列19」と呼ぶ。図9中には、3列の色要素領域列19が示されている。
【0055】
図9に示す例では、液状材料付与工程においてバンク付き基板10Aに対し液滴吐出手段103を走査したとき、1列の色要素領域列19当たり、その上空を5個のノズル25が相対的に通過する。よって、この色要素領域列19内の赤色の色要素領域18Rに対しは、その上空を通過する5個のノズル25を用いて液状材料111Rの液滴90を付与することができる。
【0056】
本発明では、一つの色要素領域列19上を通過する5個のノズル25のうち、液状材料111Rを付与しようとする色要素領域18Rごとに無作為に(ランダムに)選択された3個のノズル25から液滴90を吐出して、この3滴の液滴90をその色要素領域18Rに着弾させるように制御することを特徴とする。描画装置1の制御手段112は、例えば、予め記憶された乱数表を用いることにより、上述のような制御を行うことができる。
【0057】
このような制御により、各色要素領域18Rに付与された3滴の液滴90の着弾位置は、色要素領域18Rごとにランダムになる。その結果、図10に示すように、各色要素領域18Rにおける液状材料111Rの液厚の分布も色要素領域18Rごとにランダムになる。この後に成膜工程を行い、液状材料111Rを乾燥させて固化または硬化させると、得られるフィルタ膜111FRの色要素領域18R内での膜厚の分布は、乾燥前の液状材料111Rの分布とほぼ同様になるので、フィルタ膜111FRの色要素領域18R内での膜厚の分布を色要素領域18Rごとにランダムにすることができる。
【0058】
このようなことから、本発明によってカラーフィルタ基板10を製造した場合、色要素領域18R内におけるフィルタ膜111FRの膜厚の厚い部分(あるいは薄い部分)の位置が色要素領域列19ごとに一致することがないので、カラーフィルタ基板10の面内で色要素領域18Rの色ムラが走査方向に沿って連続することを防止することができる。すなわち、いわゆる筋ムラが生じるのを確実に防止することができる。
【0059】
なお、1回の主走査で色要素領域18内に必要量の液状材料111を付与することができない場合には、主走査を複数回繰り返し行うことにより、必要量の液状材料111を付与することができる。
その際には、図9を用いて説明したような制御を、各回の主走査の都度、行うのが好ましい。
【0060】
次に、本発明の作用効果の理解を助けるため、図11および図12を参照して、比較例の液状材料付与工程について説明する。
図11は、比較例の液状材料付与工程を説明するための模式的な図、図12は、図11中のD−D線断面図、E−E線断面図およびF−F線断面図である。
図11に示すように、比較例の液状材料付与工程では、そして、色要素領域列19上を通過する5個のノズル25のうち、中央の3個のノズル25から液滴90を吐出し、この3滴の液滴90をその色要素領域18Rに着弾させている。
【0061】
すなわち、比較例では、色要素領域列19内の各色要素領域18Rに対しては、いずれも同じ位置の3個のノズル25が吐出した3滴の液滴90を付与する。よって、同じ色要素領域列19内の色要素領域18においては、3滴の液滴90の着弾位置は同じく揃った位置となる。その結果、図12に示すように、各色要素領域18Rにおける液状材料111Rの液厚の分布は、色要素領域列19ごとに揃った位置となる。
【0062】
この場合、色要素領域18Rに液滴90を吐出する3個のノズル25は、色要素領域18Rの長辺方向に関して正確に中心を通る訳ではないので、液状材料111Rの液厚が最も厚くなったトップ91の位置は、色要素領域列19ごといずれかの側に偏ることが多い。図示の例では、図12中の左側の色要素領域列19における色要素領域18Rでは、トップ91の位置が右に偏っており、図12中の中央の色要素領域列19では、トップ91の位置が左に偏っており、図12中の右側の色要素領域列19では、トップ91の位置が左に偏っている。
【0063】
この後に成膜工程を行い、液状材料111Rを乾燥させて固化または硬化させると、得られるフィルタ膜111FRの色要素領域18R内での膜厚の分布は、乾燥前の液状材料111Rの分布とほぼ同様になるので、比較例の場合には、フィルタ膜111FRの膜厚の分布が色要素領域列19列ごとに揃った状態となる。すなわち、図11および図12中の左側の色要素領域列19では、いずれの色要素領域18Rでも、フィルタ膜111FRの膜厚が最大となる部分がトップ91の位置と同様に右に偏った状態となり、図12中の中央の色要素領域列19では、いずれの色要素領域18Rでも、フィルタ膜111FRの膜厚が最大となる部分が左に偏った状態となり、図12中の右側の色要素領域列19では、いずれの色要素領域18Rでも、フィルタ膜111FRの膜厚が最大となる部分が左に偏った状態となる。
【0064】
このようなことから、比較例の液状材料付与工程を経て製造されたカラーフィルタ基板10の場合には、色要素領域18R内におけるフィルタ膜111FRの膜厚の分布に起因する色ムラの位置が色要素領域列19ごと揃ってしまう。このため、その色ムラがカラーフィルタ基板10の面内で走査方向に沿って連続し、これが原因となって、図12中に示すような位置に、いわゆる筋ムラとなって現れてしまうという問題がある。
【0065】
これに対し、本発明の場合には、前述したように、このような筋ムラの発生を確実に防止することができる。
なお、図9に示す例では、一つの色要素領域列19上を相対的に通過する5個のノズル25のうちから色要素領域18Rごとに無作為に選択した3個のノズル25から液滴90を吐出するよう制御しているが、本発明では、一つの色要素領域列19上を相対的に通過するノズル25の数は、5個に限らず、複数であれば何個でもよく、また、液滴90を吐出するノズル25の数は、一つの色要素領域列19上を相対的に通過するノズル25の数より少なく、かつ1個以上であれば何個でもよい。すなわち、本発明では、Nを2以上の所定の整数とし、Mを1≦M≦N−1なる関係を満足する所定の整数とし、一つの色要素領域列19上を相対的に通過するノズル25の数をN個とした場合、対象とする色要素領域18ごとに、N個のノズル25のうちからM個のノズル25を無作為に選択し、そのM個のノズルから液滴90を吐出してその色要素領域18に付与するようにすればよい。
【0066】
以上説明したような本発明は、カラーフィルタ基板10の製造に限らず、例えばエレクトロルミネッセンス表示装置等の他方式の画像表示装置の製造にも適用することができる。
図13および図14は、本発明の色要素付き基板を有機エレクトロルミネッセンス表示装置30に適用した場合の色要素付き基板の製造方法を示す断面図である。以下、本発明により有機エレクトロルミネッセンス表示装置30を製造する場合について説明するが、前述したカラーフィルタ基板10を製造する場合との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0067】
図13および図14に示すバンク付き基板30Aは、有機エレクトロルミネッセンス表示装置30を製造するための基板である。このバンク付き基板30A上には、ストライプ配列で行列状に並ぶ赤、緑、青の各色の多数の色要素領域38R、38G、38Bが設けられ、各色要素領域38R、38G、38Bは、バンク40により囲まれて形成され、ほぼ長方形をなしている。色要素領域38Rは、赤の波長域の光線を発光する色要素膜である発光膜211FRが形成されるべき領域であり、色要素領域38Gは、緑の波長域の光線を発光する色要素膜である発光膜211FGが形成されるべき領域であり、色要素領域38Bは、青の波長域の光線を発光する色要素膜である発光膜211FBが形成されるべき領域である。
【0068】
具体的には、バンク付き基板30Aは、ガラス基板32と、ガラス基板32上に形成された回路素子層34と、回路素子層34上に形成された複数の画素電極36と、複数の画素電極36の間に形成されたバンク40とを有している。ガラス基板32は、可視光に対して光透過性を有している。複数の画素電極36のそれぞれは、可視光に対して光透過性を有する電極であり、例えば、ITO(Indium-Tin Oxide)電極である。また、複数の画素電極36は、回路素子層34上にマトリクス状に配置されており、それぞれが色要素領域38R、38G、38Bを規定する。バンク40は、回路素子層34上に形成された無機物バンク402と、該無機物バンク402上に形成された有機物バンク401とで構成されている。
【0069】
回路素子層34は、ガラス基板32上で所定の方向に延びる複数の走査電極と、複数の走査電極を覆うように形成された絶縁膜42と、絶縁膜42上に位置するともに複数の走査電極が延びる方向に対して直交する方向に延びる複数の信号電極と、走査電極および信号電極の交点付近に位置する複数のスイッチング素子44と、複数のスイッチング素子44を覆うように形成されたポリイミドなどの層間絶縁膜45とを有する層である。それぞれのスイッチング素子44のゲート電極44Gおよびソース電極44Sは、それぞれ対応する走査電極および対応する信号電極と電気的に接続されている。層間絶縁膜45上には複数の画素電極36が位置する。層間絶縁膜45には、各スイッチング素子44のドレイン電極44Dに対応する部位にスルーホール44Vが設けられており、このスルーホール44Vを介して、スイッチング素子44と、対応する画素電極36との間の電気的接続が形成されている。また、バンク40に対応する位置にそれぞれのスイッチング素子44が位置している。
【0070】
このようなバンク付き基板30Aは、公知の製膜技術とパターニング技術とを用いて製造することができる。なお、各画素電極36のそれぞれの上に、対応する正孔輸送層37R、37G、37Bを形成してもよい。正孔輸送層37R、37G、37Bが、画素電極36と、後述の発光膜211FR、211FG、211FBとの間に位置すれば、エレクトロルミネッセンス表示装置の発光効率が高くなる。
【0071】
−液状材料付与工程−
上記のようにして色要素領域38R、38G、38Bが形成されたバンク付き基板30Aに対し、図13(a)〜(c)に示すように、前述したカラーフィルタ基板10の場合と同様に、本発明の描画装置1を用いて、各色要素領域38R、38G、38Bに対し、それぞれ、液状材料211R、211G、211Bを付与する。
【0072】
液状材料211Rは、赤色の有機発光材料を含むものであり、液状材料211Gは、緑色の有機発光材料を含むものであり、液状材料211Bは、青色の有機発光材料を含むものである。液状材料211R、211G、211Bは、有機エレクトロルミネッセンス表示装置30の区画の発光膜211FR、211FG、211FBの構成材料である発光材料が有機溶剤中に溶解または分散してなるものである。
【0073】
−成膜工程−
その後、バンク付き基板30Aを乾燥装置へ移送して、各色要素領域38R、38G、38Bに付与された液状材料211R、211G、211B中の溶媒を蒸発させて乾燥することにより、図14(e)に示すように、各色要素領域38R、38G、38B上に発光膜211FR、FG、FBが得られる。
次に、発光膜211FR、211FG、211FB、およびバンク40を覆うように対向電極46を設ける。対向電極46は陰極として機能する。
【0074】
その後、封止基板48とバンク付き基板30Aとを、互いの周辺部で接着することで、図14(f)に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置30が得られる。なお、封止基板48とバンク付き基板30Aとの間には不活性ガス49が封入されている。
有機エレクトロルミネッセンス表示装置30において、発光膜211FR、211FG、211FBから発光した光は、画素電極36と、回路素子層34と、ガラス基板32と、を介して射出する。このように回路素子層34を介して光を射出するエレクトロルミネッセンス表示装置は、ボトムエミッション型の表示装置と呼ばれる。
【0075】
上記のような有機エレクトロルミネッセンス表示装置30では、前記カラーフィルタ基板10と同様の理由により、筋ムラの発生を確実に防止することができるので、高い画質が得られる。
以上、本発明を液晶表示装置(カラーフィルタ基板)や、エレクトロルミネッセンス表示装置に適用した場合について説明したが、本発明は、これらに限定されず、例えば、プラズマ表示装置の背面基板や、電子放出素子を備えた画像表示装置(SED(Surface-Conduction Electron-Emitter Display)またはFED(Field Emission Display)と呼ばれることもある)にも適用することができる。
【0076】
<本発明の電子機器の実施形態>
前述したような方法で製造されたカラーフィルタ基板10を備えた液晶表示装置や、前述したような方法で製造されたエレクトロルミネッセンス表示装置等の画像表示装置1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図15は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0077】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
【0078】
図16は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
図17は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0079】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0080】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0081】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0082】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0083】
以上、本発明の描画装置、色要素付き基板の製造方法、電気光学装置および電子機器を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、描画装置、色要素付き基板の製造方法、電気光学装置および電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の描画装置の実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示す描画装置における液滴吐出手段と、バンク付き基板とを示す平面図。
【図3】図1に示す描画装置の液滴吐出手段の一部を示す底面図。
【図4】図1に示す描画装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)が斜視図、(b)が断面側面図。
【図5】図1に示す描画装置における制御手段の構成を示すブロック図。
【図6】(a)はヘッド駆動部を示す模式図、(b)はヘッド駆動部における駆動信号、選択信号および吐出信号を示すタイミングチャート。
【図7】バンク付き基板を用いてカラーフィルタ基板を製造する方法を示す断面図。
【図8】バンク付き基板を用いてカラーフィルタ基板を製造する方法を示す断面図。
【図9】本発明における液状材料付与工程を説明するための模式的な図。
【図10】図9中のA−A線断面図、B−B線断面図およびC−C線断面図。
【図11】比較例の液状材料付与工程を説明するための模式的な図。
【図12】図11中のD−D線断面図、E−E線断面図およびF−F線断面図。
【図13】本発明の色要素付き基板を有機エレクトロルミネッセンス表示装置に適用した場合の色要素付き基板の製造方法を示す断面図。
【図14】本発明の色要素付き基板を有機エレクトロルミネッセンス表示装置に適用した場合の色要素付き基板の製造方法を示す断面図。
【図15】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図。
【図16】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図。
【図17】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0085】
1……描画装置 2……液滴吐出ヘッド 21R、21G、21B……第1ヘッド 22R、22G、22B……第2ヘッド 23R、23G、23B……第3ヘッド 24R、24G、24B……第4ヘッド 25……ノズル 26……ノズル列 91、92……液滴 101……タンク 103……液滴吐出手段 104……キャリッジ移動機構 105……キャリッジ 106……ステージ 108……ステージ移動機構 110……チューブ 111、111R、111G、111B、211R、211G、211B……液状材料 112……制御手段 120……キャビティ 122……隔壁 124……振動子 124A、124B……電極 124C……ピエゾ素子 126……振動板 128……ノズルプレート 129……液たまり 130……供給口 131……孔 200……バッファメモリ 202……記憶手段 203……駆動信号生成部 204……処理部 206……走査駆動部 208……ヘッド駆動部 AS……アナログスイッチ DS……駆動信号 SC……選択信号 ES……吐出信号 10A、10B、30A……バンク付き基板 10……カラーフィルタ基板 12、32……ガラス基板 13……バンク 14……基部 15……撥液部 18R、18G、18B、38R、38G、38B……色要素領域 19……色要素領域列 20……保護膜 90……液滴 91……トップ 111FR、111FG、111FB……フィルタ膜 30……有機エレクトロルミネッセンス表示装置 34……回路素子層 36……画素電極 37R、37G、37B……正孔輸送層 40……バンク 401……有機物バンク 402……無機物バンク 42……絶縁膜 44……スイッチング素子 44G……ゲート電極 44S……ソース電極 44D……ドレイン電極 44V……スルーホール 45……層間絶縁膜 46……対向電極 48……封止基板 49……不活性ガス 211FR、211FG、211FB……発光膜 302……キャリッジ位置検出手段 303……ステージ位置検出手段 1000……画像表示装置 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に並ぶ多数の略長方形の色要素領域がバンクにより区画されて形成されたバンク付き基板を保持するステージと、
前記色要素領域の長辺方向に関して異なる位置に配された複数のノズルを有する液滴吐出手段と、
前記ステージと前記液滴吐出手段とを相対的に移動させる移動手段と、
前記液滴吐出手段および前記移動手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記ステージに保持された前記バンク付き基板と、前記液滴吐出手段とを、前記色要素領域の短辺方向に相対的に移動させ、色要素膜形成用の液状材料を前記ノズルから液滴として吐出して前記色要素領域に付与する液状材料付与工程を行う描画装置であって、
前記液状材料付与工程では、前記短辺方向に並ぶ色要素領域列のうちの同色の色要素領域に対して順次液状材料を付与するに際し、その色要素領域列上を相対的に通過するN個(ただし、Nは、2以上の所定の整数)のノズルのうち、対象とする色要素領域ごとに無作為に選択されたM個(ただし、Mは、1≦M≦N−1なる関係を満足する所定の整数)のノズルから液滴を吐出して当該色要素領域に付与するように作動することを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記液滴吐出手段は、複数のノズルが等間隔で前記長辺方向に沿って延在してなるノズル列が複数列並行している部分を有し、前記ノズル列のノズルピッチをPとし、前記並行するノズル列の数をQ列としたとき、前記Q列のノズル列は、それらの列方向にP/Qずつ位置をずらして配置されている請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
行列状に並ぶ多数の略長方形の色要素領域がバンクにより区画されて形成されたバンク付き基板と、前記色要素領域の長辺方向に関して異なる位置に配された多数のノズルを有する液滴吐出手段とを、前記色要素領域の短辺方向に相対的に移動させ、色要素膜形成用の液状材料を前記ノズルから液滴として吐出して前記色要素領域に付与する液状材料付与工程と、
前記色要素領域に付与された液状材料を固化または硬化させて色要素膜を形成する成膜工程とを有する色要素付き基板の製造方法であって、
前記液状材料付与工程では、前記短辺方向に並ぶ色要素領域列のうちの同色の色要素領域に対して順次液状材料を付与するに際し、その色要素領域列上を相対的に通過するN個(ただし、Nは、2以上の所定の整数)のノズルのうち、対象とする色要素領域ごとに無作為に選択されたM個(ただし、Mは、1≦M≦N−1なる関係を満足する所定の整数)のノズルから液滴を吐出して当該色要素領域に付与することを特徴とする色要素付き基板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の色要素付き基板の製造方法により製造された色要素付き基板を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−208542(P2006−208542A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17924(P2005−17924)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】